特許異議申立
2021-700495
壁高欄施工方法と壁高欄
- 審判番号
- 2021-700495
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-035305
- 登録番号
- 6791895
- 請求日
- 2021年05月24日
- 審決日
- 2022年01月28日
- 公報発行日
- 2022年05月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社横河ブリッジ
- 【権利者代理人】小林 正英
- 【権利者代理人】小林 正治
- 【異議申立人】原田 祐子
- 審判長/審判官
- 審判長 森次 顕
- 審判官 有家 秀郎
- 審判官 土屋 真理子
- 分類
- P1651.851-YAA(E01D) / P1651.857-YAA(E01D) / P1651.113-YAA(E01D) / P1651.121-YAA(E01D) / P1651.161-YAA(E01D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第113条第2号、特許法第29条の2、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6791895号発明「壁高欄施工方法と壁高欄」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6791895号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔5-7、9〕、8について訂正することを認める。
特許第6791895号の請求項1ないし9に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6791895号の請求項1ないし8に係る特許についての出願は、平成30年2月28日に出願され、令和2年11月9日にその特許権の設定登録がされ、同年同月25日に特許掲載公報が発行された。
その後、令和3年5月24日に、特許異議申立人 原田 祐子(以下、「申立人」という。)により、特許異議申立書(以下「申立書」という。)の提出がされ、請求項1ないし8に係る特許に対して特許異議の申立てがされた。
その後の経緯は、次のとおりである。
令和3年8月5日付け: 取消理由通知書(同年同月19日発送)
同年10月15日: 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年11月10日: 特許権者による手続補正書(方式)の提出
(同年10月15日の訂正請求書における、訂正
の請求に係る請求項の数を補正)
同年12月24日: 申立人による意見書の提出
第2 訂正の適否
1 訂正請求の趣旨と訂正の内容
令和3年10月15日の訂正請求(以下、「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)は、特許第6791895号の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項5ないし9について訂正することを求めるものであって、その訂正の内容は以下のとおりである。(下線は訂正箇所を示す。)
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項5に「前記高さ調整ボルトは、前記高さ調整用インサートへの螺合量を調整することにより、突出長を調整することができ、」との記載を追加する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項5に「前記高さ調整ボルトは、その下端が前記突部材の下端よりも上方に位置しており、」との記載を追加する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項8に「請求項5から請求項7のいずれか1項に記載の壁高欄において、」とあるうち、請求項5を引用するものについて独立形式に改め、「橋梁のコンクリート床版の橋軸直角方向側方に設けられる壁高欄において、プレキャスト下部高欄とプレキャスト上部高欄を備え、前記プレキャスト下部高欄の上面に一本の凹溝又は一列に並ぶ複数の凹穴が設けられ、前記プレキャスト上部高欄の底面に一本又は一列に並ぶ複数本の突部材が下向きに突設されるとともに高さ調整用インサートが埋設され、当該高さ調整用インサートに、当該プレキャスト上部高欄の底面よりも下側に突出するように高さ調整ボルトが螺合され、前記プレキャスト上部高欄の突部材がプレキャスト下部高欄の凹溝又は凹穴に収まり、前記突部材が収まった凹溝又は凹穴及び当該凹溝又は凹穴に連通する部材間空隙に充填されて養生硬化された間詰め材によってプレキャスト下部高欄とプレキャスト上部高欄とが一体化され、」に訂正する。
(4)訂正事項4
訂正事項3に伴い、訂正前の請求項8のうち、請求項6又は7を引用する部分を新たな請求項9として、「請求項6又は請求項7記載の壁高欄において、壁高欄の凹溝又は凹穴に、突部材及び間詰め材が収まる収容部を備えた埋設部材が設けられ、前記突部材は前記埋設部材の収容部に収まり、前記埋設部材の収容部及び当該収容部に連通する部材間空隙に充填されて養生硬化された間詰め材によってプレキャスト下部高欄とプレキャスト上部高欄とが一体化された、ことを特徴とする壁高欄。」と記載する。
2 訂正の目的の適否、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無、訂正の単位、及び独立特許要件について
(1)訂正事項1及び2について
ア 訂正の目的について
訂正事項1及び2は、訂正前の請求項5に係る発明において、「高さ調整ボルト」について、「前記高さ調整用インサートへの螺合量を調整することにより、突出長を調整することができ」ること、及び、「その下端が前記突部材の下端よりも上方に位置して」いることを、限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
上記アで説示したとおり、訂正事項1及び2は、訂正前の請求項5に係る発明について限定を行うものであり、発明のカテゴリーや対象又は目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 新規事項の有無について
願書に添付された明細書の段落【0016】には、「あるいは、高さ調整ボルト6はあらかじめプレキャスト上部高欄2に埋設された高さ調整用インサート7に螺合してきても良い。高さ調整ボルト6はプレキャスト上部高欄2に埋設された高さ調整用インサート7に螺合して、プレキャスト上部高欄2の高さを調整するものである。」と記載され、段落【0045】には、「前記高欄配置工程では、プレキャスト上部高欄2の突部材5がプレキャスト下部高欄1の凹溝4に設けられた埋設部材10の収容部10aに収まるように、プレキャスト上部高欄2をプレキャスト下部高欄1の上側に配置する。高さ調整が必要な場合は、プレキャスト上部高欄2をプレキャスト下部高欄1の上側に配置したのち、高さ調整ボルト6の高さ調整用インサート7への螺合量を調整する。」と記載されている。
「あらかじめプレキャスト上部高欄2に埋設された高さ調整用インサート7に螺合」されて、「プレキャスト下部高欄1の上側に配置」される「プレキャスト上部高欄2の高さを調整」する「高さ調整ボルト6」について、プレキャスト上部高欄2から下向きに突出する長さが変わることで、「プレキャスト下部高欄1」に対する「プレキャスト上部高欄2の高さを調整」することが明らかであることをふまえると、訂正事項1において、「高さ調整ボルト」について、「前記高さ調整用インサートへの螺合量を調整することにより、突出長を調整することができ」ると限定する点は、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内である。
また、「高さ調整ボルト6」により「プレキャスト下部高欄1」に対する「プレキャスト上部高欄2の高さを調整」した状態で、「プレキャスト上部高欄2の突部材5がプレキャスト下部高欄1の凹溝4に設けられた埋設部材10の収容部10aに収まる」ことから、「プレキャスト下部高欄1の凹溝4」内に入る「突部材5」の「高さ調整ボルト6」の下端に比較して、「プレキャスト下部高欄1」に対する「プレキャスト上部高欄2の高さを調整」する「高さ調整ボルト6」の下端が、上方に位置することは明らかであることをふまえると、訂正事項2において、高さ調整ボルト」について、「その下端が前記突部材の下端よりも上方に位置して」いると限定する点は、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内である。
したがって、訂正事項1及び2による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。
(2)訂正事項3について
ア 訂正の目的について
訂正事項3は、訂正前の請求項8に係る発明において、訂正前の請求項5から請求項7のいずれかを引用するもののうち、訂正前の請求項5を引用するものを選択し、他の請求項の記載を引用しない形式に書き改めるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮、及び同ただし書第4号に規定する、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを、目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
上記アで説示したとおり、訂正事項3は、訂正前の請求項8に係る発明について、訂正前の請求項5を引用するものに限定するとともに、他の請求項の記載を引用しないものとするものであり、発明のカテゴリーや対象又は目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 新規事項の有無について
上記アで説示したとおり、訂正事項3は、訂正前の請求項8に係る発明について、訂正前の請求項5を引用するものに限定するとともに、他の請求項の記載を引用しないものとするものであるから、訂正事項3による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。
(3)訂正事項4について
ア 訂正の目的について
訂正事項4は、訂正前の請求項8に係る発明において、訂正前の請求項5から請求項7のいずれかを引用するもののうち、訂正前の請求項6又は請求項7を引用するものを選択し、新たな請求項9とするものであるから、訂正前の請求項8に係る発明について、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を、目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
上記アで説示したとおり、訂正事項4は、訂正前の請求項8に係る発明について、訂正前の請求項6又は請求項7を引用するものに限定し、新たな請求項9とするものであり、発明のカテゴリーや対象又は目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 新規事項の有無について
上記アで説示したとおり、訂正事項4は、訂正前の請求項8に係る発明について、訂正前の請求項6又は請求項7を引用するものに限定し、新たな請求項9とするものであるから、訂正事項4による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。
(4)独立特許要件について
本件においては、訂正前の全ての請求項1ないし8について、特許異議の申立てがされているので、訂正事項1ないし4により、訂正前の請求項5及び8に係る発明に対応する訂正後の請求項5及び8ないし9に係る発明について、特許請求の範囲の減縮が行われていても、訂正の適否の要件として、訂正後の請求項5及び8ないし9に係る発明について、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(5)訂正の単位、及び訂正後の請求項8について別の訂正単位とする求めについて
本件訂正請求書における請求の趣旨によると、本件訂正では、訂正前の請求項5から8に対応する、訂正後の請求項5から9について、訂正をすることが求められているところ、訂正前の請求項8は、訂正前の請求項5を引用し、訂正事項1及び2によって記載が訂正される請求項5に連動して訂正されるものであり、訂正前の請求項6及び7は、訂正前の請求項8が訂正前の請求項6又は7を引用するから、訂正前の請求項5ないし8は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項と認めることができる。
特許権者は、訂正後の請求項8については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することを求めている。
上記(2)に示したとおり、訂正後の請求項8に係る訂正事項3は、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とし、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものでなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであるとともに、訂正後の請求項8は、他の請求項と引用関係にないものであるから、訂正後の請求項8について、訂正後の請求項5ないし7及び9とは別途訂正する求めは、認めることができる。
3 小括
以上のとおり、本件訂正は全て認めることができ、訂正後の請求項8について別途の訂正単位とする求めも認めることができるから、本件訂正について、上記結論のとおり訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり、本件訂正請求による訂正は全て認められたので、本件特許の請求項1ないし9に係る発明(以下、各々を「本件発明1」等といい、請求項1ないし9に係る発明をまとめて「本件発明」という。)は、令和3年10月15日付け訂正請求書に添付された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された、次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
橋梁のコンクリート床版の橋軸直角方向側方に壁高欄を橋軸方向に施工する壁高欄施工方法において、
底面側に下向きに突出する一本又は一列に並ぶ複数本の突部材を備えたプレキャスト上部高欄を、上面側に一本の凹溝又は一列に並ぶ複数の凹穴を備えたプレキャスト下部高欄の上側に、プレキャスト上部高欄の突部材がプレキャスト下部高欄の凹溝又は凹穴に収まるように配置し、
前記突部材が収まった凹溝又は凹穴及び当該凹溝又は凹穴に連通する部材間空隙に間詰め材を充填し、
前記間詰め材を養生し硬化することによってプレキャスト下部高欄とプレキャスト上部高欄を一体化する、
ことを特徴とする壁高欄施工方法。
【請求項2】
橋梁のコンクリート床版の橋軸直角方向側方に壁高欄を橋軸方向に施工する壁高欄施工方法において、
底面側に一本の凹溝又は一列に並ぶ複数の凹穴を備えたプレキャスト上部高欄を、上面側に上向きに突出する一本又は一列に並ぶ複数本の突部材を備えたプレキャスト下部高欄の上側に、プレキャスト下部高欄の突部材がプレキャスト上部高欄の凹溝又は凹穴に収まるように配置し、
前記突部材が収まった凹溝又は凹穴及び当該凹溝又は凹穴に連通する部材間空隙に間詰め材を充填し、
前記間詰め材を養生し硬化することによってプレキャスト下部高欄とプレキャスト上部高欄を一体化する、
ことを特徴とする壁高欄施工方法。
【請求項3】
橋梁のコンクリート床版の橋軸直角方向側方に壁高欄を橋軸方向に施工する壁高欄施工方法において、
底面に一本の凹溝又は一列に並ぶ複数の凹穴及び下向きに突出する一本又は一列に並ぶ複数本の突部材を備えたプレキャスト上部高欄を、上面側に一本の凹溝又は一列に並ぶ複数の凹穴及び上向きに突設する一本又は一列に並ぶ複数本の突部材を備えたプレキャスト下部高欄の上側に、プレキャスト下部高欄の突部材がプレキャスト上部高欄の凹溝又は凹穴に収まり、プレキャスト上部高欄の突部材がプレキャスト下部高欄の凹溝又は凹穴に収まるように配置し、
突部材が収まった凹溝又は凹穴及び当該凹溝又は凹穴に連通する部材間空隙に間詰め材を充填し、
前記間詰め材を養生し硬化することによってプレキャスト下部高欄とプレキャスト上部高欄を一体化する、
ことを特徴とする壁高欄施工方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の壁高欄施工方法において、
凹溝又は凹穴に収容部を備えた埋設部材が埋設され、
プレキャスト上部高欄を、前記埋設部材の収容部に突部材が収まるようにプレキャスト下部高欄の上側に配置し、
前記埋設部材の収容部及び当該収容部に連通する部材間空隙に間詰め材を充填し、
前記間詰め材を養生し硬化することによってプレキャスト下部高欄とプレキャスト上部高欄を一体化する、
ことを特徴とする壁高欄施工方法。
【請求項5】
橋梁のコンクリート床版の橋軸直角方向側方に設けられる壁高欄において、
プレキャスト下部高欄とプレキャスト上部高欄を備え、
前記プレキャスト下部高欄の上面に一本の凹溝又は一列に並ぶ複数の凹穴が設けられ、
前記プレキャスト上部高欄の底面に一本又は一列に並ぶ複数本の突部材が下向きに突設されるとともに高さ調整用インサートが埋設され、当該高さ調整用インサートに、当該プレキャスト上部高欄の底面よりも下側に突出するように高さ調整ボルトが螺合され、
前記高さ調整ボルトは、前記高さ調整用インサートへの螺合量を調整することにより、突出長を調整することができ、
前記高さ調整ボルトは、その下端が前記突部材の下端よりも上方に位置しており、
前記プレキャスト上部高欄の突部材がプレキャスト下部高欄の凹溝又は凹穴に収まり、
前記突部材が収まった凹溝又は凹穴及び当該凹溝又は凹穴に連通する部材間空隙に充填されて養生硬化された間詰め材によってプレキャスト下部高欄とプレキャスト上部高欄とが一体化された、
ことを特徴とする壁高欄。
【請求項6】
橋梁のコンクリート床版の橋軸直角方向側方に設けられる壁高欄において、
プレキャスト下部高欄とプレキャスト上部高欄を備え、
前記プレキャスト下部高欄の上面に一本又は一列に並ぶ複数本の突部材が上向きに突設され、
前記プレキャスト上部高欄の底面に一本の凹溝又は一列に並ぶ複数の凹穴が設けられ、
前記プレキャスト下部高欄の突部材はプレキャスト上部高欄の凹溝又は凹穴に収まり、
前記突部材が収まった凹溝又は凹穴及び当該凹溝又は凹穴に連通する部材間空隙に同じ時間硬化型の間詰め材が充填されて連続する塊として養生硬化され、当該連続する塊として養生硬化した間詰め材によってプレキャスト下部高欄とプレキャスト上部高欄とが一体化された、
ことを特徴とする壁高欄。
【請求項7】
橋梁のコンクリート床版の橋軸直角方向側方に設けられる壁高欄において、
プレキャスト下部高欄とプレキャスト上部高欄を備え、
前記プレキャスト下部高欄の上面に一本又は一列に並ぶ複数本の突部材及び一本の凹溝又は一列に並ぶ複数の凹穴が設けられ、
前記プレキャスト上部高欄の底面に一本又は一列に並ぶ複数本の突部材及び一本の凹溝又は一列に並ぶ複数の凹穴が設けられ、
前記プレキャスト下部高欄の突部材はプレキャスト上部高欄の凹溝又は凹穴に収まり、
前記プレキャスト上部高欄の突部材はプレキャスト下部高欄の凹溝又は凹穴に収まり、
前記突部材が収まった凹溝又は凹穴及び当該凹溝又は凹穴に連通する部材間空隙に充填されて養生硬化された間詰め材によってプレキャスト下部高欄とプレキャスト上部高欄とが一体化された、
ことを特徴とする壁高欄。
【請求項8】
橋梁のコンクリート床版の橋軸直角方向側方に設けられる壁高欄において、
プレキャスト下部高欄とプレキャスト上部高欄を備え、
前記プレキャスト下部高欄の上面に一本の凹溝又は一列に並ぶ複数の凹穴が設けられ、
前記プレキャスト上部高欄の底面に一本又は一列に並ぶ複数本の突部材が下向きに突設されるとともに高さ調整用インサートが埋設され、当該高さ調整用インサートに、当該プレキャスト上部高欄の底面よりも下側に突出するように高さ調整ボルトが螺合され、
前記プレキャスト上部高欄の突部材がプレキャスト下部高欄の凹溝又は凹穴に収まり、
前記突部材が収まった凹溝又は凹穴及び当該凹溝又は凹穴に連通する部材間空隙に充填されて養生硬化された間詰め材によってプレキャスト下部高欄とプレキャスト上部高欄とが一体化され、
壁高欄の凹溝又は凹穴に、突部材及び間詰め材が収まる収容部を備えた埋設部材が設けられ、
前記突部材は前記埋設部材の収容部に収まり、
前記埋設部材の収容部及び当該収容部に連通する部材間空隙に充填されて養生硬化された間詰め材によってプレキャスト下部高欄とプレキャスト上部高欄とが一体化された、
ことを特徴とする壁高欄。
【請求項9】
請求項6又は請求項7記載の壁高欄において、
壁高欄の凹溝又は凹穴に、突部材及び間詰め材が収まる収容部を備えた埋設部材が設けられ、
前記突部材は前記埋設部材の収容部に収まり、
前記埋設部材の収容部及び当該収容部に連通する部材間空隙に充填されて養生硬化された間詰め材によってプレキャスト下部高欄とプレキャスト上部高欄とが一体化された、
ことを特徴とする壁高欄。」
第4 申立書に添付して提出された証拠、特許異議申立理由の概要、及び取消理由の概要
1 申立書に添付して提出された証拠
甲第1号証; 藤岡泰輔外3名 拡径鉄筋を接合構造に有するプレキャス
ト壁高欄の開発、第26回プレストレストコンクリートの
発展に関するシンポジウム論文集、第205-208頁、
公益社団法人プレストレストコンクリート工学会、
2017年10月27日発刊
甲第2号証; 特開平11-350439号公報
甲第3号証; 特開2016-160690号公報
甲第4号証; 特開平4-55504号公報
甲第5号証; RCプレキャスト壁高欄で工程を約半分に短縮、
道路構造物ジャーナルNET、[online]、
株式会社鋼構造出版、インターネットURL:
<https://www.kozobutsu-hozen-journal.net/walks/11347/>
2015年5月1日
甲第6号証; 特開2018-141341号公報
甲第7号証; PC床版施工の手引き プレキャストPC床版編
第42-43頁、社団法人 日本橋梁建設協会、
平成16年3月
以下、甲第1号証などを、「甲1」などという。
2 特許異議申立理由の概要
特許異議申立理由の概要は、次のとおりである。
(1)甲1を主たる引用例とした、新規性; 請求項1に対して
本件特許の訂正前の請求項1に係る発明は、甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、同条同項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件の訂正前の請求項1に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)甲1を主たる引用例とした、進歩性; 請求項1ないし8に対して
本件特許の訂正前の請求項1ないし8に係る発明は、甲1に記載された発明、及び、甲2ないし甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件の訂正前の請求項1ないし8に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(3)甲6による拡大先願; 請求項5に対して
本件特許の訂正前の請求項5に係る発明は、甲6により出願公開がされた先願である特願2017-37639号の願書に最初に添付された明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許出願の発明者が上記先願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許出願の時において、その出願人が上記先願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件の請求項5に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
3 取消理由通知の概要
令和3年8月5日付け取消理由通知に記載した取消理由の概要は、上記2(3)の特許異議申立理由と同様である。
第5 取消理由及び特許異議申立理由で引用された証拠の記載
1 甲1
(1)記載事項、及び記載より看取される事項
甲1には、以下の事項が記載されている。(下線は当審において付与した。以下同様。)
ア 第205頁 「1.はじめに」
「床版更新事業におけるさらなる急速施工を実現する一手法として,プレキャスト壁高欄(以下,PCa壁高欄)の採用が挙げられる。・・・本稿では,この拡径鉄筋を接合構造に応用し,施工の単純化を目指した新しいPCa壁高欄の開発について報告する。」
イ 第205頁 「2.接合構造の概要」
「PCa壁高欄の概念図を図-1に示す。PCa壁高欄基部の接合構造は,拡径鉄筋をPCa壁高欄下面より突出させ,地覆部に設けた箱抜き孔に挿入し定着する構造とした。・・・両接合構造には,PCa壁高欄組立て時の施工性と誤差を考慮し接合目地を設け,その接合目地間にモルタルを充填することで接合構造を成立させた。・・・・なお,今回開発したPCa壁高欄は,床版部との接合位置が地覆上面と下面の二つのタイプがある。本稿では,図-1に示す前者の開発について概説する。」
ウ 第205頁 図-1
「
[図:0001384130000001.jpg]
」
エ 図-1より看取される事項
上記ウに示した図-1において、図中に記載される「地覆」は、上記イ及び下記オにおける「地覆部」を指すことが明らかであることをふまえると、同図-1より、次の事項が看取される。
・床版の橋軸方向に直交する方向の側方上部に設けられた地覆部の上に、PCa壁高欄が接合され、地覆部とPCa壁高欄とにより、床版上に立設する壁が構成される。
・橋軸方向に隣り合うPCa壁高欄は、橋軸方向の接合目地を介して、接合される。
・PCa壁高欄は、下面より突出する、2列に並ぶ複数本の拡径鉄筋を備える。
・地覆部上面側には、2列に並ぶ複数の箱抜き孔が設けられている。
オ 第205頁-第206頁 「3.実物大モデルによる施工性能試験」
「・・・・一方,地覆部の拡径鉄筋を挿入する箱抜き孔は,鋼製スパイラルシースで形成し,このシースは治具により固定して平面位置と横断勾配を調整した。シースは,将来的に接合構造の劣化因子となることと,拡径鉄筋を確実に地覆部にモルタル定着するため,コンクリート打設後に撤去した。・・・・PCa壁高欄同士を接合する試験体の組立て状況を写真-1に示す。PCa壁高欄の組立て作業は,PCa壁高欄を仮支持するボルトの高さ調整→モルタルの練混ぜ→箱抜き孔へのモルタル投入→PCa壁高欄の据付け・位置調整→仮固定の手順とした。隣接するPCa壁高欄についても,同様の施工手順で組立て作業を行った。仮固定完了後,各接合目地の型枠を組立ててモルタルを注入した。・・・前節で述べたとおり,地覆部に設けた箱抜き孔に充填するモルタルは,PCa壁高欄を据付ける前に箱抜き孔に先行投入する。そのため,拡径鉄筋は確実に地覆部に定着される。」
(2)記載された発明
ア 甲1方法発明
上記(1)より、甲1には、次の方法の発明(以下、「甲1方法発明」という。)が記載されている。
「プレキャスト壁高欄(以下,PCa壁高欄)を採用し、施工を単純化し、床版の橋軸方向に直交する方向の側方上部に設けられた地覆部の上に、PCa壁高欄が接合され、地覆部とPCa壁高欄とにより、床版上に立設する壁が構成され、橋軸方向に隣り合うPCa壁高欄は、橋軸方向の接合目地を介して、接合される、床版更新の施工方法において、
PCa壁高欄は、下面より突出する、2列に並ぶ複数本の拡径鉄筋を備え、
地覆部上面側には、2列に並ぶ複数の箱抜き孔が設けられ、
PCa壁高欄基部の接合構造は、拡径鉄筋をPCa壁高欄下面より突出させ、地覆部に設けた箱抜き孔に挿入し定着する構造とし、接合構造には、PCa壁高欄組立て時の施工性と誤差を考慮し接合目地を設け、その接合目地間にモルタルを充填することで接合構造を成立させ、
地覆部の拡径鉄筋を挿入する箱抜き孔は、鋼製スパイラルシースで形成し、シースは、将来的に接合構造の劣化因子となることと、拡径鉄筋を確実に地覆部にモルタル定着するため、コンクリート打設後に撤去しており、
PCa壁高欄の組立て作業は、PCa壁高欄を仮支持するボルトの高さ調整→モルタルの練混ぜ→箱抜き孔へのモルタル投入→PCa壁高欄の据付け・位置調整→仮固定の手順とし、仮固定完了後、接合目地の型枠を組立ててモルタルを注入し、
地覆部に設けた箱抜き孔に充填するモルタルは、PCa壁高欄を据付ける前に箱抜き孔に先行投入するため、拡径鉄筋は確実に地覆部に定着される、
床版更新の施工方法。」
イ 甲1発明
上記(1)アの甲1方法発明により、床版、地覆部及びPCa壁高欄が更新されることが明らかであることをふまえると、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)も、記載されている。
「甲1方法発明により更新される、床版、地覆部及びPCa壁高欄。」
2 甲2
甲2には、以下の事項が記載されている。
ア 「【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態の防護柵を図によって説明する。図1から図3において、符号1は、防護柵である。この防護柵1は、車両の走行レーンに沿って道路の両側あるいは中央に設置されるものである。この防護柵1は、路盤2に構築された基礎3上に立設されており、基礎3に接合されて舗装部4に一部が埋設されるプレキャスト製の下壁部11と、この下壁部11の上方側のプレキャスト製の上壁部12とに分割された構造とされている。これら下壁部11と上壁部12との間には、その長手方向へ間隔をあけて複数の接合部13が設けられており、これら接合部13によって下壁部11と上壁部12とが上下に連結されている。なお、これら下壁部11及び上壁部12には、それぞれその内部に図示しない鉄筋が配設されている。
【0009】この接合部13は、下壁部11に設けられたインサートナット14と、上壁部11に設けられた連結棒15とを有するもので、このインサートナット14にねじ込まれた連結棒15によって下壁部11の上部に上壁部12が接合されている。この連結棒15は、弾性を有する異型鉄筋からなるものでその先端部におねじ部が形成されており、このおねじ部が前記インサートナット14にねじ込まれて連結されている。なお、この連結棒15のおねじ部には、締め付け用のナット15aが設けられており、このナット15aの締結力によって連結棒15が緩むことなくインサートナット14へ確実に締結固定されている。
【0010】連結棒15は、上壁部12の上下に形成されたグラウトホール16内に配設され、このグラウトホール16に充填されたモルタル17によって上壁部12に固定されている。また、上壁部12には、下壁部11との接合面における連結棒15の周囲に凹部18からなる空間部19が形成されており、この空間部19には、発泡材20が嵌め込まれている。なお、前記グラウトホール16にも、その下端部に発泡材20が設けられている。また、上壁部12の下面には、鉄板あるいは樹脂板等からなる板体21が設けられており、この板体21によって下壁部11と上壁部12との接触抵抗が低減され、上壁部12のスライドが円滑に行われるようになっている。
・・・・
【0013】そして、上記のように構築された防護柵1によれば、車両が衝突して、上壁部12に衝撃が加わると、図4に示すように、この衝撃力によって下壁部11に上壁部12を連結している連結棒15が空間部19内にて弾性変形し、上壁部12が下壁部11に対してスライドする。つまり、このように、車両が防護柵1に衝突すると、連結棒15が変形して、上壁部12が下壁部11に対してスライドすることにより、その車両の衝突時の衝撃力が吸収、分散される。これにより、この防護柵1に衝突した車両への反力を低減させることができ、車両へのダメージを大幅に低減させることができる。」
イ 「
[図:0001384130000002.jpg]
」
ウ 「
[図:0001384130000003.jpg]
」
エ 上記図1及び図2より看取できる事項
上記図1及び図2より、「下壁部11」から突出する「連結棒15」、及び「連結棒15」が挿入される「上壁部12」の「グラウトホール16」がそれぞれ一列に並ぶ複数のものである様子が、看取される。
3 甲3
甲3には、以下の事項が記載されている。
ア 「【0035】
(プレキャスト壁高欄の設置工法)
次に、本実施形態に係るプレキャスト壁高欄の設置工法について説明する。
なお、床版2のためのコンクリート材としてはプレキャストコンクリートが用いられる場合を想定する。この場合、連続繊維補強材3はプレキャストコンクリート工場内で床版2のプレキャストコンクリートの製作時に一体に設けられ、現場に搬入され、設置される。床版2が場所打ちコンクリートの場合には、床版2のコンクリート打設前に連続繊維補強材3を配置しておけばよい。
【0036】
図4から図7は設置された床版2にプレキャスト壁材4を設置する工程を示す図である。
まず、図4に示すように、クレーンなどによって吊り上げられたプレキャスト壁材4を、床版2の側端部2aに立設された複数の連続繊維補強材3がプレキャスト壁材4の複数の貫通孔4aに下から挿入するように位置を合せながら降下させ、図5に示すように、プレキャスト壁材4を床版2の側端部2aの上に空隙6aを介して設置する。このとき、ライナープレートまたは硬質ゴムなどの高さ調整用の冶具(図示せず)を用いて、橋軸方向に連続するプレキャスト壁材4の各ブロックの上端面の高さを揃えるための微調整が行われる。同様に各ブロックの幅員方向での位置を揃えるための微調整も行われる。
【0037】
微調整の完了後、図6に示すように、空隙6aに無収縮モルタルなどの充填材6が充填される。このとき、プレキャスト壁材4の接合面4cに設けられたせん断キー形成室4b内にも充填材6が充填されることによって第2のせん断キー6bが得られる。
【0038】
次に、図7に示すように、プレキャスト壁材4の各貫通孔4a内にセメント系充填材5が充填される。このセメント系充填材5の充填は、プレキャスト壁材4の各貫通孔4aが重力方向に穿たれていることで、プレキャスト壁材4の貫通孔4aの上側の開口部からのセメント系充填材5の注入によって行われる。これにより、貫通孔4a内に連続繊維補強材3を安定して定着させることができる。
以上で、道路橋防護柵であるプレキャスト壁高欄1の設置が完了する。」
イ 「
[図:0001384130000004.jpg]
」
ウ 「
[図:0001384130000005.jpg]
」
エ 「
[図:0001384130000006.jpg]
」
4 甲4
甲4には、以下の事項が記載されている。
ア 第2頁右上欄最終行-第3頁左上欄第15行
「<イ>壁高欄
第1図に本発明で使用するプレキャスト製の壁高欄1を示す。
断面L字形の壁高欄1は、その長手方向の両端またはその途上に複数の箱抜部11を有すると共に、各箱抜部11内には壁部12と地覆部13に跨がってL型フレーム3が設置してある。
<ロ>L型フレーム
第2図に桁本体2上に壁高欄1を載置したときの横断面を示し、第3図にL型フレーム3の平面図を示す。
L型フレーム3は、上口のみを開放した鋼製の函体からなり、函体を構成するL字形の側面31、31の外面に複数のジベル筋32が突設してあり、さらに側面31の上部に壁部12の水平鉄筋を貫通するための孔33が開設してある。
これにより壁高欄1とL型フレーム3の合成が図れる。
以上は、製作環境の良好な工場などで製作できる。
また、L型フレーム3は底面34に高さ調整用の調整ボルト4が複数貫通して螺着していて、調整ボルト4により壁高欄1の前後および左右の高さ調節機能が付与してある。
尚、35は底面34の複数箇所に開設した締結材5の挿入用の孔であり、36は注入孔である。
<作用>
つぎに施工方法について説明する。
<イ>桁本体の施工(第2図)
公知の施工方に従い、桁本体2を施工する。
桁本体2の施工に際し、壁高欄1の締結予定位置にアンカーボルト51を埋設しておく。
<ロ>壁高欄の仮置き(第2図)
合成構造の壁高欄1を現場に運搬し、調整ボルト4を介して桁本体2上に仮置きする。
壁高欄1の仮置きに際し、壁高欄1の底面を桁本体2上面に密着させずに、両面間をわずかに離しておく。
つぎにL型フレーム3の底面を貫通させて締結材5を挿入し、締結材5の下部をジョイント具52に螺着する。
<ハ>壁高欄の微調整(第2図)
調整ボルト4を操作して壁高欄1のレベルや傾倒を修正する。
修正作業が完了したら、各締結材5に座金53をセットし、定着ナット54で仮締めする。
<ニ>空隙充填(第4図)
壁高欄1の下部周縁部と桁本体2との間をシールし、注入孔36から無収縮性モルタルなどの固結材6を充填する。
固結材6の硬化を待って、定着ナット54を本締めする。
最後に壁高欄1の開口部、すなわちL型フレーム3内に無収縮性モルタルなどの固結材7を充填して施工を完了する。」
イ 第4図
「
[図:0001384130000007.jpg]
」
5 甲5
甲5には、以下の事項が記載されている。
「また、コンクリート床版と壁高欄との接合は床版上面側に配筋されたループ鉄筋にプレキャスト壁高欄の矩形ループ鉄筋を重ね合わせ、かつそれらのループ鉄筋内に、橋軸方向へ連続する複数の補強鉄筋を配置し、高強度モルタルを打設して一体化する。
・・・・
工程は、トラックで製作工場から運ばれてきたプレキャスト壁高欄(標準ブロックで1ブロック当たり長さ4,000ミリ×高さ775ミリ、厚さ250ミリ、重量2.5トン、但し上越新幹線の交差部の隣接径間では高さを979ミリ、厚さを350ミリに増やしているため重量は4.0トンとなる)を○1(当審注:「○1」は原文では丸数字の1。以下同様。)16トン吊りラフタークレーンを使用して仮置きし、○2同様のクレーンを用いて現場に仮据え付けする。仮据え付けの際には壁高欄の下に設けているボルトを使って自立させるとともに高さを調整する。」(第13~22行)
6 甲6
(1)先願1明細書等記載事項
甲6は、本件特許の出願日前の平成29年2月28日に出願された特許出願である特願2017-37639号(以下「先願1」という。)の公開公報であって、本件特許の出願後に出願公開がされたものである。
また、本件特許に係る出願の発明者及び出願人は、先願1の発明者及び出願人と同一でない。
甲6より、先願1の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「先願1明細書等」という。)には、以下の事項が記載されている。
ア 「【0025】
<第1実施形態>
図1及び図2は、それぞれ、第1実施形態に係る壁高欄の取付構造1を示す模式的斜視図及び橋軸方向に直交する断面での断面図である。橋梁に於けるプレキャスト壁高欄部材2は、床版3の橋軸に直交し、橋面に平行な方向(以下、幅方向という)の側端部に、地覆4を介して接合されるとともに、橋軸方向に隣接する他のプレキャスト壁高欄部材2と接合されている。
【0026】
床版3はプレキャストコンクリート部材からなる。プレキャスト床版3の側端部からは、地覆4と床版3とを接合する接合鉄筋5の一部が露出している。接合鉄筋5は、橋軸方向から見てループ形状を呈しており、ループ形状の上部及び幅方向の外側部分がプレキャスト床版3の側端部の上面及び側面から露出している。なお、床版3を施工現場で作成してもよい。また、床版3は、プレストレストコンクリートであってもよく、鉄筋コンクリートであってもよい。
【0027】
地覆4は、工場二次製品であることが好ましい。地覆4は、接合鉄筋5の床版3から露出した部分を埋設するようにコンクリートを打設することによって形成され、床版3の側端部の上面と幅方向の外面とを覆う。
【0028】
プレキャスト壁高欄部材2は、地覆4の上方に配置され、両者のコンクリート部分の間には無収縮モルタル等の目地材6が配置される。プレキャスト壁高欄部材2は、橋軸に直交する方向に延在する縦方向鉄筋7と、橋軸方向に延在する横方向鉄筋8とを有する。プレキャスト壁高欄部材2のコンクリート部分の下面からは、縦方向鉄筋7の下端部が下方に向かって突出しており、地覆4の上面には、下方に向かって非貫通孔が形成されて、縦方向鉄筋7の下端部を受容する受容孔9となっている。縦方向鉄筋7の下端部は、無収縮モルタル等の充填材10によって受容孔9に定着している。1つの受容孔9に1つの縦方向鉄筋7の下端部が受容されることが好ましいが、受容孔9を長孔とし、1つの受容孔9に複数の縦方向鉄筋7の下端部が受容されてもよい。縦方向鉄筋7の下端部の端縁には、機械式定着の定着具11が設けられている。機械式定着の定着具11とは、機械式定着において鉄筋に作用する引張力をコンクリートに伝達するために鉄筋端部に設けられる、鉄筋の延在方向に直交する断面において鉄筋本体よりも断面積の大きな、板又はこぶ状のものを意味する。本実施形態における定着具11は、こぶ状のものであることが好ましく、先端側が後端側よりも細い円錐台形状であって、定着具11が設けられた鉄筋の延在方向に直交する断面において、後端側の断面積が鉄筋の中間部の断面積よりも大きい形状とすることが更に好ましい。」
イ 「【0034】
図3及び図4を参照して、第1実施形態に係る取付構造1の施工手順を説明する。図3は、橋軸に直交する断面視において、施工手順を示しており、図4は、図3(b)に相当する工程を幅方向の内側から見た正面図である。
【0035】
まず、プレキャスト部材として床版3が製造される。次に、図3(a)に示すように地覆4が、工場二次製品として床版3に結合するように製造される。受容孔9は、箱抜き孔として形成されることが好ましく、その内面は、充填材10の付着を高めるために螺旋状のねじが切ってあることが好ましい。
【0036】
地覆4が結合された床版3は、施工現場に搬送され、所定の位置に設置される。図4に示すように、橋軸方向に沿って互いに隣接する床版3のプレキャスト部材は、互いの橋軸方向に延在する互いの主筋17を正面視でループ状に重ね合わせ、そのループに沿って幅方向に延在する補強鉄筋18を設置し、その部分にコンクリートを打設して現場打ちコンクリート部19を形成することによって接合される。
【0037】
次に、図3(b)及び図4に示すように受容孔9に充填材10を充填する。クレーン等により、プレキャスト壁高欄部材2は配置すべき位置の上方まで移動させ、受容孔9に第1縦方向定着筋7a及び第2縦方向定着筋7bが受容され、かつ受容溝15に設置済みの隣接するプレキャスト壁高欄部材2の横方向定着筋8aが受容されるように、プレキャスト壁高欄部材2を下ろしていき、所定の位置に配置する。地覆4の上面には据付用アンカーボルト20が設けられているため、地覆4の上面とプレキャスト壁高欄部材2のコンクリート部分の下面との間には、目地材6を注入するべき空間が形成される。なお、プレキャスト壁高欄部材2を下ろすときに、設置しようとするプレキャスト壁高欄部材2の受容溝15に、設置済みのプレキャスト壁高欄部材2の横方向定着筋8aを挿入することに代えて、設置しようとするプレキャスト壁高欄部材2の横方向定着筋8aを、設置済みのプレキャスト壁高欄部材2の受容溝15に挿入してもよい。この場合は、受容溝15の下端部は、横方向定着筋8aが通過させる必要がないため、下方に向かって閉じていてもよい。
【0038】
図3(c)に示すように、目地材6用及び受容溝15の充填材16用の型枠21を設置する。次に、目地材6の注入ホースを、受容溝15の上部から挿入し、その先端を受容溝15の下端付近に配置し、モルタルポンプにより目地材6を圧送する。目地材6の注入が終わったら、注入ホースの位置を変えずに、又は注入ホースを引き上げながら受容溝15用の充填材16を注入する。
【0039】
この方法によれば、機械式定着の定着具11を有する鉄筋を使用することにより、プレキャスト壁高欄部材2を地覆4及び床版3に接合するための必要な接合強度が得られるため、従来工法で行われていたループ継手や、PC鋼材での連結、コンクリートの打設等を行う必要がない。また、型枠21の設置も目地材6及び充填材16用のものだけで済むため、外部足場設置作業や、型枠21の設置作業が簡易になる。よって、施工現場での作業を大幅に削減でき、工期も短縮できる。」
ウ 「【0063】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、第1実施形態において受容溝の上端側は、充填材注入用のホースを挿入するために開放されているが、別途、挿入口を確保すれば、受容溝の上端側を閉じた形状としてもよい。また、受容孔は、1列としても3列以上としてもよい。各定着筋に設けられた機械式定着の定着具は、同一の形状であっても、異なる形状であってもよい。また、本発明は、橋梁の新設工事、床版の更新工事のいずれにも適用できる。プレキャスト壁高欄部材の、幅方向外側に下方に向かって延出して、床版又は地覆の側面に当接する突起を設けて、この突起を目地材の幅方向外側の型枠として使用してもよい。このような突起を設けることにより、型枠を設けるための外部足場が不要になる。」
(2)先願1明細書等に記載された発明
上記(1)より、先願1明細書等には、次の方法の発明(以下、「先願1発明」という。)が記載されている。
「橋梁に於けるプレキャスト壁高欄部材2が、床版3の橋軸に直交し、橋面に平行な方向(幅方向)の側端部に、地覆4を介して接合された、壁高欄であって、
床版3はプレキャストコンクリート部材からなり、
地覆4は、床版3の側端部の上面と幅方向の外面とを覆い、
プレキャスト壁高欄部材2は、地覆4の上方に配置され、両者のコンクリート部分の間には無収縮モルタルの目地材6が配置され、
プレキャスト壁高欄部材2は、橋軸に直交する方向に延在する縦方向鉄筋7を有し、
プレキャスト壁高欄部材2のコンクリート部分の下面からは、縦方向鉄筋7の下端部が下方に向かって突出しており、地覆4の上面には、下方に向かって非貫通孔が形成されて、縦方向鉄筋7の下端部を受容する受容孔9となっており、縦方向鉄筋7の下端部は、無収縮モルタルの充填材10によって受容孔9に定着しており、1つの受容孔9に1つの縦方向鉄筋7の下端部が受容されており、
受容孔9は、1列であり、
施工手順において、
プレキャスト部材として床版3が製造され、地覆4が、工場二次製品として床版3に結合するように製造され、地覆4が結合された床版3は、施工現場に搬送され、橋軸方向に沿って接合され、
次に、受容孔9に充填材10を充填し、
プレキャスト壁高欄部材2を、配置すべき位置の上方まで移動させ、受容孔9に定着筋7が受容されるように、プレキャスト壁高欄部材2を下ろしていき、所定の位置に配置し、地覆4の上面には据付用アンカーボルト20が設けられているため、地覆4の上面とプレキャスト壁高欄部材2のコンクリート部分の下面との間には、目地材6を注入するべき空間が形成され、
目地材6用の型枠21を設置し、
次に、モルタルポンプにより目地材6を圧送し注入し、
プレキャスト壁高欄部材2を地覆4及び床版3に接合するための必要な接合強度を得た、
壁高欄。」
7 甲7
摘記は省略するが、甲7には、プレキャストPC床版を鋼桁上フランジ上に架設する際、製作時に埋め込まれた高さ調整用金具として、高さ調整ボルトを使用して、鋼桁上フランジとプレキャストPC床版接合部のモルタルを注入する隙間にて、プレキャストPC床版の高さ調整を行うことが、記載されている。
第6 当審の判断
1 取消理由通知に採用した特許異議申立理由(上記第4の2(3)及び3)について
取消理由通知に採用した特許異議申立理由は、本件訂正前の本件特許の請求項5に係る発明について、甲6により公開がされた先願1の願書に最初に添付された明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許出願の発明者が先願1に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許出願の時において、その出願人が上記先願1の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない、としたものである。
そして、上記第2に判断したとおり、上記取消理由通知より後になされた、請求項5について訂正を行う本件訂正は、認められたので、以下では、本件訂正後の特許請求の範囲の記載に基づいて上記第3に認定した、本件発明5について、上記取消理由通知に採用した特許異議申立理由により取り消されるべきものであるか否かを、判断する。
(1)本件発明5と先願1発明との対比
本件発明5と先願1発明とを対比する。
先願1発明において、「プレキャストコンクリート部材」からなる「床版3」は、「橋梁に於けるプレキャスト壁高欄部材2が、床版3の橋軸に直交し、橋面に平行な方向(幅方向)の側端部に、地覆4を介して接合される、壁高欄」における床版であるから、「床版3」が「橋梁」の「橋面」をなす「コンクリート」の床版の一部であることが明らかであることをふまえると、本件発明5における「橋梁のコンクリート床版」に相当する。
先願1発明において、「壁高欄」は、「プレキャスト壁高欄部材2が、床版3の橋軸に直交し、橋面に平行な方向(幅方向)の側端部に、地覆4を介して接合され」たものであるから、「橋梁」の「橋面」をなす床版の全体からみても、「橋軸に直交」する「幅方向」の「側端部」に、「地覆4」及び「地覆4を介して接合」された「プレキャスト壁高欄部材2」を備えたものとなることが明らかであることをふまえると、本件発明5における「橋梁のコンクリート床版の橋軸直角方向側方に設けられる壁高欄」に相当する。
先願1発明において、「地覆4が結合された床版3」は、「プレキャスト部材として床版3が製造され、地覆4が、工場二次製品として床版3に結合するように製造され、地覆4が結合された床版3」として、「施工現場に搬送」されるものであるから、全体としてプレキャスト部材ということができる。また、先願1発明における「地覆4が結合された床版3」は、その上に「プレキャスト壁高欄部材2」が「接合」されるものであるから、「壁高欄」のうち下部の部材ということができ、本件発明5における「プレキャスト下部高欄」に相当する。先願1発明において、「プレキャスト壁高欄部材2」は、「壁高欄」のうち上部の部材ということができるから、本件発明5における「プレキャスト上部高欄」に相当する。
先願1発明において、「地覆4の上面」に「下方に向かって非貫通孔」として「形成」され、「1列」である「受容孔9」は、本件発明5において、「プレキャスト下部高欄の上面」に設けられた「一本の凹溝又は一列に並ぶ複数の凹穴」に相当する。また、先願1発明において、「1列」である「受容孔9」に対して、「1つの受容孔9に1つの縦方向鉄筋7の下端部が受容」される、「プレキャスト壁高欄部材2のコンクリート部分の下面」から「下方に向かって突出」する「縦方向鉄筋7」は、本件発明5において、「プレキャスト上部高欄の底面」に「下向きに突設」された「一本又は一列に並ぶ複数本の突部材」に相当する。
先願1発明において、「プレキャスト壁高欄部材2のコンクリート部分の下面」から「突出」する「縦方向鉄筋7の下端部」が、「地覆4の上面」に形成された「受容孔9」に「受容」されている構成は、本件発明5において、「前記プレキャスト上部高欄の突部材がプレキャスト下部高欄の凹溝又は凹穴に収ま」る構成に相当する。
先願1発明において、「壁高欄」が、「プレキャスト壁高欄部材2を地覆4及び床版3に接合するための必要な接合強度を得た」ものである構成は、本件発明5において、「プレキャスト下部高欄とプレキャスト上部高欄とが一体化された」構成に相当する。
以上を整理すると、本件発明5と先願1発明とは、次の点で一致する。
「橋梁のコンクリート床版の橋軸直角方向側方に設けられる壁高欄において、
プレキャスト下部高欄とプレキャスト上部高欄を備え、
前記プレキャスト下部高欄の上面に一本の凹溝又は一列に並ぶ複数の凹穴が設けられ、
前記プレキャスト上部高欄の底面に一本又は一列に並ぶ複数本の突部材が下向きに突設され、
前記プレキャスト上部高欄の突部材がプレキャスト下部高欄の凹溝又は凹穴に収まり、
プレキャスト下部高欄とプレキャスト上部高欄とが一体化された、
壁高欄。」
そして、本件発明5と先願1発明とは、以下の点で相違する。
<相違点1>
本件発明5においては、「プレキャスト上部高欄の底面」に「高さ調整用インサートが埋設され、当該高さ調整用インサートに、当該プレキャスト上部高欄の底面よりも下側に突出するように高さ調整ボルトが螺合され、前記高さ調整ボルトは、前記高さ調整用インサートへの螺合量を調整することにより、突出長を調整することができ、前記高さ調整ボルトは、その下端が前記突部材の下端よりも上方に位置して」いるのに対し、
先願1発明においては、「据付用アンカーボルト20」は「地覆4の上面」に設けられており、「突出長を調整」して「高さ調整」をするかは不明である点。
<相違点2>
「プレキャスト下部高欄とプレキャスト上部高欄」との「一体化」に関し、
本件発明5においては、「前記突部材が収まった凹溝又は凹穴及び当該凹溝又は凹穴に連通する部材間空隙に充填されて硬化された間詰め材」によって、プレキャスト下部高欄とプレキャスト上部高欄とが「一体化された」と特定されているのに対し、
先願1発明においては、「受容孔9に充填材10を充填」した後に、「受容孔9に定着筋7が受容されるように、プレキャスト壁高欄部材2を下ろしていき、・・・地覆4の上面とプレキャスト壁高欄部材2のコンクリート部分の下面との間には、目地材6を注入するべき空間が形成」され、「目地材6」は、「目地材6を注入するべき空間が形成され、目地材6用の型枠21を設置」した後に「モルタルポンプ」により「圧送し注入」されるものである点。
(2)相違点についての判断
ア 上記相違点1について
上記相違点1について判断する。
先願1発明における「据付用アンカーボルト20」は、「地覆4の上面には据付用アンカーボルト20が設けられているため、地覆4の上面とプレキャスト壁高欄部材2のコンクリート部分の下面との間には、目地材6を注入するべき空間が形成され」るものではあるが、先願1明細書等において、「突出長を調整」して「高さ調整」を行うことが記載されているものではない。
そして、先願1発明における「据付用アンカーボルト20」を、「突出長を調整」して「高さ調整」を行うものとしたうえで、「地覆4」の側ではなく「プレキャスト壁高欄部材2」の側に設けるものとし、具体的な構造として、「埋設」された「高さ調整用インサート」に「螺合」されて「螺合量を調整することにより、突出長を調整することができ、・・・その下端が前記突部材(定着筋7)の下端よりも上方に位置して」いる構成とするには、機能・設置位置・設置構造及び具体的な配置について変更を重ねる必要があることを考慮すると、先願1発明において、上記相違点1に係る本件発明5の構成を採用することについて、課題解決のための具体化手段における微差程度ということはできない。
イ 上記相違点2について
上記相違点2について判断する。
先願1発明において、「充填材10」は、「プレキャスト壁高欄部材2を下ろしていき」「定着筋7が受容される」前、かつ「目地材6を注入すべき空間が形成され」る前の「受容孔9」に「充填」されるものであり、「目地材6」は、「受容孔9」に「充填材10」が「充填」された後に、「目地材6を注入すべき空間」を形成し、「目地材6用の型枠を設置」した後に「注入」されるものである。そして、先願1発明における「充填材10」と「目地材6」とは、異なる段階で異なる箇所に充填又は注入されたうえで、それぞれ硬化するものである。
これに対して、本件発明5における「間詰め材」は、「突部材が収まった凹溝又は凹穴」と、「前記凹溝又は凹穴に連通する部材間空隙」に「充填されて養生硬化された」ものであるから、硬化後の物の構成としてみても、異なる段階で異なる箇所に充填又は注入された先願1発明における「充填材10」及び「目地材6」が硬化したものとは、相違していると解することが妥当である。そして、本件発明5における「間詰め材」は、充填すべき「突部材が収まった凹溝又は凹穴」と「部材間空隙」とが「連通する」状態で「充填されて養生硬化された」ものであるから、一体性という、「プレキャスト下部高欄とプレキャスト上部高欄と」の「一体化」に関する特性においても、先願1発明において、異なる段階で異なる箇所に充填又は注入された「充填材10」と「目地材6」の硬化物と、相違すると解される。
したがって、上記相違点2は、実質的な相違点である。
(3)取消理由通知に採用した特許異議申立理由についての小括
以上のとおりであるから、本件発明5は、先願1発明と同一ではなく、本件発明5に係る特許は、取消理由通知に採用した特許異議申立理由によって取り消されるべきものではない。
2 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由(上記第4の2(1)及び(2))について
取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由は、訂正前の請求項1に係る発明について、甲1を主たる引用例とした新規性の欠如、及び、訂正前の請求項1ないし8に係る発明について、甲1を主たる引用例とした進歩性の欠如である。
上記第2に判断したとおり、本件訂正は全て認められ、訂正前の特許請求の範囲における請求項1ないし8の記載は、訂正後の特許請求の範囲における請求項1ないし9の記載へと訂正されたので、以下では、本件訂正後の特許請求の範囲の記載に基づいて上記第3に認定した、本件発明1について、甲1を主たる引用例とした新規性欠如又は進歩性欠如の理由により取り消されるべきものであるか否かを、及び、本件発明2ないし9について、甲1を主たる引用例とした進歩性欠如の理由により取り消されるべきものであるか否かを、判断する。
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と、甲1方法発明とを対比する。
(ア)甲1方法発明において、「床版」には「橋軸方向」が存在するから、橋梁に用いられることが技術常識から明らかであること、及び、「床版」の「側方上部に設けられた地覆部」について、「コンクリート打設」が行われることから、「床版」にもコンクリートが用いられていることが技術常識から明らかであることをふまえると、甲1方法発明における「床版」は、本件発明1における「橋梁のコンクリート床版」に相当する。
甲1方法発明において、「地覆部とPCa壁高欄とにより」構成される「床版上に立設する壁」は、本件発明1における「壁高欄」に相当する。
甲1方法発明において、「床版の橋軸方向に直交する方向の側方上部に設けられた地覆部の上に、PCa壁高欄が接合され、地覆部とPCa壁高欄とにより、床版上に立設する壁が構成され、橋軸方向に隣り合うPCa壁高欄は、橋軸方向の接合目地を介して、接合される、床版更新の施工」により、床版の橋軸直角方向側方上部に、地覆部とPCa壁高欄とにより構成された壁が、床版とともに橋軸方向に施工されることは明らかであるから、甲1方法発明における「床版更新の施工方法」は、本件発明1における「床版の橋軸直角方向側方に壁高欄を橋軸方向に施工する壁高欄施工方法」に相当する。
(イ)甲1方法発明において、「PCa壁高欄」は、「地覆部とPCa壁高欄とにより」構成される「床版上に立設する壁」のうち、「地覆部の上」の部分をなすから、本件発明1における「プレキャスト上部高欄」に相当する。甲1方法発明において、「地覆部」は、「地覆部とPCa壁高欄とにより」構成される「床版上に立設する壁」のうち、「PCa壁高欄」より下の部分をなすから、本件発明1における「プレキャスト下部高欄」とは、「下部高欄」という点で共通する。
(ウ)甲1方法発明において、「PCa壁高欄」が、「下面より突出する、2列に並ぶ複数本の拡径鉄筋を備え」る構成と、本件発明1において、「プレキャスト上部高欄」が、「底面側に下向きに突出する一本又は一列に並ぶ複数本の突部材」を備える構成とは、「プレキャスト上部高欄」が、「底面側に下向きに突出する突部材」を備える点で、共通する。甲1方法発明において、「地覆部上面側には、2列に並ぶ複数の箱抜き孔が設けられ」る構成と、本件発明1において、「プレキャスト下部高欄」が、「上面側に一本の凹溝又は一列に並ぶ複数の凹穴を備えた」構成とは、「下部高欄」が、「上面側に凹溝又は凹穴を備えた」点で、共通する。
(エ)甲1方法発明において、「PCa壁高欄基部の接合構造は、拡径鉄筋をPCa壁高欄下面より突出させ、地覆部に設けた箱抜き孔に挿入し定着する」構造とし、「拡径鉄筋は確実に地覆部に定着される」構成と、本件発明1において、「プレキャスト上部高欄を、・・・プレキャスト下部高欄の上側に、プレキャスト上部高欄の突部材がプレキャスト下部高欄の凹溝又は凹穴に収まるように配置し、前記突部材が収まった凹溝又は凹穴及び当該凹溝又は凹穴に連通する部材間空隙に間詰め材を充填し、前記間詰め材を養生し硬化することによってプレキャスト下部高欄とプレキャスト上部高欄を一体化する」構成とは、「プレキャスト上部高欄を」「下部高欄の上側に、プレキャスト上部高欄の突部材が下部高欄の凹溝又は凹穴に収まるように配置し、下部高欄とプレキャスト上部高欄を一体化する」点で、共通する。
以上を整理すると、本件発明1と甲1方法発明とは、次の点で一致する。
「橋梁のコンクリート床版の橋軸直角方向側方に壁高欄を橋軸方向に施工する壁高欄施工方法において、
底面側に下向きに突出する突部材を備えたプレキャスト上部高欄を、上面側に凹溝又凹穴を備えた下部高欄の上側に、プレキャスト上部高欄の突部材が下部高欄の凹溝又は凹穴に収まるように配置し、
下部高欄とプレキャスト上部高欄を一体化する、
壁高欄施工方法。」
そして、本件発明1と甲1方法発明とは、以下の点で相違する。
<相違点A>
「下部高欄」に関し、
本件発明1においては、「プレキャスト下部高欄」と特定されているのに対し、
甲1方法発明においては、「地覆部」が「プレキャスト」であるとは特定されていない点。
<相違点B>
「突部材」及び「凹溝又は凹穴」に関し、
本件発明1においては、「一本」又は「一列に並ぶ複数」のものと特定されているのに対し、
甲1方法発明においては、「2列に並ぶ複数」のものである点。
<相違点C>
施工の順序に関し、
本件発明1においては、「プレキャスト上部高欄」と「プレキャスト下部高欄」とを、「プレキャスト上部高欄の突部材がプレキャスト下部高欄の凹溝又は凹穴に収まるように配置」し、「前記突部材が収まった凹溝又は凹穴及び当該凹溝又は凹穴に連通する部材間空隙」に「間詰め材を充填」し、「前記間詰め材を養生し硬化することによってプレキャスト下部高欄とプレキャスト上部高欄を一体化する」のに対し、
甲1方法発明においては、「地覆部」の「箱抜き孔へのモルタル投入」の後に、「PCa壁高欄の据付け・位置調整」と「仮固定」とを行い、「仮固定完了後、接合目地の型枠を組立ててモルタルを注入」する点。
イ 相違点についての判断
上記相違点について判断する。
(ア)相違点Bについて
事案に鑑み、相違点Bについて判断する。
甲2には、上記第5の2に摘記した事項が記載されており、「下壁部11」から突出する「連結棒15」、及び「連結棒15」が挿入される「上壁部12」の「グラウトホール16」を、一列に並ぶ複数のものとする構成が示されている。しかしながら、甲2に開示される構造は、「発泡材20」及び「板体21」を介在させ、また「連結棒15」についても「弾性を有する」ものとして、「下壁部11」に対する「上壁部12のスライドが円滑に行われるように」したうえで、「連結棒15」の「変形」により「衝撃力」を「吸収、分散」するためのものであるから、甲1方法発明において施工する「PCa壁高欄」と「地覆部」との「接合構造」として採用する動機付けがあるものではない。
甲3ないし甲5及び甲7には、上記第5の3ないし5及び7に示した事項が記載されているが、いずれも甲1方法発明において、上記相違点Bに係る本件発明1の構成を採用することを示唆するものではない。
したがって、相違点Bは実質的な相違点であり、また、相違点Bに係る本件発明1の構成は、甲2ないし甲5及び甲7に記載される事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(イ)相違点Cについて
事案に鑑み、相違点Cについても判断する。
相違点Cは、施工方法の発明における、施工の手順に係る構成に関するから、単なる形式的な相違点ではなく、実質的な相違点である。
また、上記1(2)イにおいて、本件発明5と先願1発明との相違点2について判断したと同様に、上記相違点Cに係る本件発明1の構成により、「突部材が収まった凹溝又は凹穴」と「部材間空隙」とが「連通する」状態で「充填」して、「養生」及び「硬化」された「間詰め材」と、施工の異なる段階で異なる箇所に投入又は注入された「モルタル」とでは、硬化後の一体性についても異なる特性を有すると解されるから、上記相違点Cは、施工の手順のみでなく、「プレキャスト下部高欄」と「プレキャスト上部高欄」の「一体化」という機能にも影響する相違点である。
そして、甲2ないし甲5及び甲7においても、甲1方法発明において、上記相違点Cに係る本件発明1の構成を採用することは、記載も示唆もされていない。
したがって、相違点Cは実質的な相違点であり、また、相違点Cに係る本件発明1の構成は、甲2ないし甲5及び甲7に記載される事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 小括
上記イより、上記相違点B及びCは実質的な相違点であり、甲2ないし甲5及び甲7に記載される事項に基づいて想到容易な構成でないから、その余の相違点Aについて判断するまでもなく、本件発明1は、甲1方法発明と同一ではなく、また、甲1方法発明並びに甲2ないし甲5及び甲7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1において「プレキャスト上部高欄」の「底面側に下向きに突出」するものであった「突部材」を、「プレキャスト下部高欄」の「上面側に上向きに突出」するものとし、本件発明1において「プレキャスト下部高欄」の「上面側」に備えられた「凹溝」又は「凹穴」を、「プレキャスト上部高欄」の「底面側」に備えられるものとした、発明である。
本件発明2と本件発明1との間で変更された上記構成、及び、上記(1)アにおける本件発明1と甲1方法発明との対比をふまえると、本件発明2と甲1方法発明とは、次の点で一致する。
「橋梁のコンクリート床版の橋軸直角方向側方に壁高欄を橋軸方向に施工する壁高欄施工方法において、
プレキャスト上部高欄を、下部高欄の上側に、突部材が凹溝又は凹穴に収まるように配置し、
下部高欄とプレキャスト上部高欄を一体化する、
壁高欄施工方法。」
そして、本件発明2と甲1方法発明とは、以下の点で相違する。なお、以降の相違点の表記について、先に対比・検討した本件発明と甲1方法発明等との相違点と関連する相違点については同じ大文字アルファベット「A」等を用いるとともに、本件発明2等についての相違点であることを「-2」等で示し、先に検討した相違点に付加構成が加わった相違点については、適宜末尾に「a」「b」等を付した。
<相違点A-2>
「下部高欄」に関し、
本件発明2においては、「プレキャスト下部高欄」と特定されているのに対し、
甲1方法発明においては、「地覆部」が「プレキャスト」であるとは特定されていない点。
<相違点B-2a>
「突部材」及び「凹溝又は凹穴」に関し、
本件発明2においては、「突部材」が「プレキャスト下部高欄」の「上面側に上向きに突出する」ように設けられ、「凹溝」又は「凹穴」が「プレキャスト上部高欄」の「底面側」に備えられるのに対し、
甲1方法発明においては、「突出」する「拡径鉄筋」が「PCa壁高欄」の「下面」に備えられ、「箱抜き孔」が「地覆部上面側」に設けられる点。
<相違点B-2b>
「突部材」及び「凹溝又は凹穴」に関し、
本件発明2においては、「一本」又は「一列に並ぶ複数」のものと特定されているのに対し、
甲1方法発明においては、「2列に並ぶ複数」のものである点。
<相違点C-2>
施工の順序に関し、
本件発明2においては、「プレキャスト上部高欄」と「プレキャスト下部高欄」とを、「プレキャスト下部高欄の突部材がプレキャスト上部高欄の凹溝又は凹穴に収まるように配置」し、「前記突部材が収まった凹溝又は凹穴及び当該凹溝又は凹穴に連通する部材間空隙」に「間詰め材を充填」し、「前記間詰め材を養生し硬化することによってプレキャスト下部高欄とプレキャスト上部高欄を一体化する」のに対し、
甲1方法発明においては、「地覆部」の「箱抜き孔へのモルタル投入」の後に、「PCa壁高欄の据付け・位置調整」と「仮固定」とを行い、「仮固定完了後、接合目地の型枠を組立ててモルタルを注入」する点。
イ 相違点についての判断
上記相違点について判断する。
(ア)上記相違点B-2bについて
事案に鑑み、上記相違点B-2bについて判断する。
上記相違点B-2bは、本件発明1と甲1方法発明との相違点Bと実質的に同じ相違点であり、上記(1)イ(ア)において上記相違点Bについて判断したと同様に、甲2ないし甲5及び甲7に記載される事項を考慮しても、当業者にとって想到容易ではない。
(イ)上記相違点C-2について
事案に鑑み、上記相違点C-2についても判断する。
上記相違点C-2は、本件発明1と甲1方法発明との相違点Cと実質的に同じ相違点であり、上記(1)イ(イ)において上記相違点Cについて判断したと同様に、甲2ないし甲5及び甲7に記載される事項を考慮しても、当業者にとって想到容易ではない。
ウ 小括
上記イより、上記相違点B-2b及びC-2は、甲2ないし甲5及び甲7に記載される事項に基づいて想到容易な構成でないから、その余の相違点A-2及びB-2aについて判断するまでもなく、本件発明2は、甲1方法発明並びに甲2ないし甲5及び甲7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件発明3について
本件発明3は、本件発明1において「プレキャスト上部高欄」の「底面側に下向きに突出」するものであった「突部材」を、「プレキャスト上部高欄」の「底面側に下向きに突出」するとともに、「プレキャスト下部高欄」の「上面側に上向きに突出」するものとし、本件発明1において「プレキャスト下部高欄」の「上面側」に備えられた「凹溝」又は「凹穴」を、「プレキャスト下部高欄」の「上面側」に備えられるとともに、「プレキャスト上部高欄」の「底面側」に備えられるものとした、発明である。
本件発明3と本件発明1との間で変更された上記構成、及び、上記(1)アにおける本件発明1と甲1方法発明との対比をふまえると、本件発明3と甲1方法発明とは、次の点で一致する。
「橋梁のコンクリート床版の橋軸直角方向側方に壁高欄を橋軸方向に施工する壁高欄施工方法において、
プレキャスト上部高欄を、下部高欄の上側に、突部材が凹溝又は凹穴に収まるように配置し、
下部高欄とプレキャスト上部高欄を一体化する、
壁高欄施工方法。」
そして、本件発明3と甲1方法発明とは、以下の点で相違する。
<相違点A-3>
「下部高欄」に関し、
本件発明3においては、「プレキャスト下部高欄」と特定されているのに対し、
甲1方法発明においては、「地覆部」が「プレキャスト」であるとは特定されていない点。
<相違点B-3a>
「突部材」及び「凹溝又は凹穴」に関し、
本件発明3においては、「突部材」が、「プレキャスト上部高欄」の「底面側に下向きに突出」するとともに、「プレキャスト下部高欄」の「上面側に上向きに突出する」ように設けられ、「凹溝」又は「凹穴」が、「プレキャスト下部高欄」の「上面側」に備えられるとともに、「プレキャスト上部高欄」の「底面側」に備えられるのに対し、
甲1方法発明においては、「突出」する「拡径鉄筋」が「PCa壁高欄」の「下面」に備えられ、「箱抜き孔」が「地覆部上面側」に設けられる点。
<相違点B-3b>
「突部材」及び「凹溝又は凹穴」に関し、
本件発明3においては、「一本」又は「一列に並ぶ複数」のものと特定されているのに対し、
甲1方法発明においては、「2列に並ぶ複数」のものである点。
<相違点C-3>
施工の順序に関し、
本件発明3においては、「プレキャスト上部高欄」と「プレキャスト下部高欄」とを、「プレキャスト下部高欄の突部材がプレキャスト上部高欄の凹溝又は凹穴に収まり、プレキャスト上部高欄の突部材がプレキャスト下部高欄の凹溝又は凹穴に収まるように配置」し、「前記突部材が収まった凹溝又は凹穴及び当該凹溝又は凹穴に連通する部材間空隙」に「間詰め材を充填」し、「前記間詰め材を養生し硬化することによってプレキャスト下部高欄とプレキャスト上部高欄を一体化する」のに対し、
甲1方法発明においては、「地覆部」の「箱抜き孔へのモルタル投入」の後に、「PCa壁高欄の据付け・位置調整」と「仮固定」とを行い、「仮固定完了後、接合目地の型枠を組立ててモルタルを注入」する点。
イ 相違点についての判断
上記相違点について判断する。
(ア)上記相違点B-3bについて
事案に鑑み、上記相違点B-3bについて判断する。
上記相違点B-3bは、本件発明1と甲1方法発明との相違点Bと実質的に同じ相違点であり、上記(1)イ(ア)において上記相違点Bについて判断したと同様に、甲2ないし甲5及び甲7に記載される事項を考慮しても、当業者にとって想到容易ではない。
(イ)上記相違点C-3について
事案に鑑み、上記相違点C-3についても判断する。
上記相違点C-3は、本件発明1と甲1方法発明との相違点Cと実質的に同じ相違点であり、上記(1)イ(イ)において上記相違点Cについて判断したと同様に、甲2ないし甲5及び甲7に記載される事項を考慮しても、当業者にとって想到容易ではない。
ウ 小括
上記イより、上記相違点B-3b及びC-3は、甲2ないし甲5及び甲7に記載される事項に基づいて想到容易な構成でないから、その余の相違点A-3及びB-3aについて判断するまでもなく、本件発明3は、甲1方法発明並びに甲2ないし甲5及び甲7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)本件発明4について
本件発明4は、本件発明1ないし3のいずれかの構成を全て有したうえで、さらに付加的な構成を追加したものであるところ、上記(1)ないし(3)に示したとおり、本件発明1ないし3は、甲1方法発明、並びに甲2ないし甲5及び甲7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明4における付加的構成について判断するまでもなく、本件発明4は、甲1方法発明並びに甲2ないし甲5及び甲7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(5)本件発明5について
本件発明5は、本件発明1に対応する物の発明において、「プレキャスト上部高欄」の「底面」に「高さ調整用インサートが埋設」され、「当該高さ調整用インサートに、当該プレキャスト上部高欄の底面よりも下側に突出するように高さ調整ボルトが螺合され、前記高さ調整ボルトは、前記高さ調整用インサートへの螺合量を調整することにより、突出長を調整することができ、前記高さ調整ボルトは、その下端が前記突部材の下端よりも上方に位置して」いるとの構成を追加したものである。
本件発明1と甲1方法発明との対比をふまえて、本件発明5と甲1発明とを対比すると、両者は次の点で一致する。
「橋梁のコンクリート床版の橋軸直角方向側方に設けられる壁高欄において、
下部高欄とプレキャスト上部高欄を備え、
前記下部高欄の上面に凹溝又は凹穴が設けられ、
前記プレキャスト上部高欄の底面に突部材が下向きに突設され、
前記プレキャスト上部高欄の突部材が下部高欄の凹溝又は凹穴に収まり、
下部高欄とプレキャスト上部高欄とが一体化された、
壁高欄。」
そして、本件発明5と甲1発明とは、以下の点で相違する。
<相違点A-5>
「下部高欄」に関し、
本件発明5においては、「プレキャスト下部高欄」と特定されているのに対し、
甲1発明においては、「地覆部」が「プレキャスト」であるとは特定されていない点。
<相違点B-5>
「突部材」及び「凹溝又は凹穴」に関し、
本件発明5においては、「一本」又は「一列に並ぶ複数」のものと特定されているのに対し、
甲1発明においては、「2列に並ぶ複数」のものである点。
<相違点D-5>
「高さ調整」に関し、
本件発明5においては、「プレキャスト上部高欄」の「底面」に「高さ調整用インサートが埋設」され、「当該高さ調整用インサートに、当該プレキャスト上部高欄の底面よりも下側に突出するように高さ調整ボルトが螺合され、前記高さ調整ボルトは、前記高さ調整用インサートへの螺合量を調整することにより、突出長を調整することができ、前記高さ調整ボルトは、その下端が前記突部材の下端よりも上方に位置して」いるのに対し、
甲1発明においては、「高さ調整」がされる「PCa壁高欄を仮支持するボルト」を有するものの、当該「ボルト」の具体的構造、及び高さの調整態様が不明である点。
<相違点E-5>
「プレキャスト下部高欄とプレキャスト上部高欄」との「一体化」に関し、
本件発明5においては、「前記突部材が収まった凹溝又は凹穴及び当該凹溝又は凹穴に連通する部材間空隙に充填されて硬化された間詰め材」によって、プレキャスト下部高欄とプレキャスト上部高欄とが「一体化された」と特定されているのに対し、
甲1発明においては、「地覆部」の「箱抜き孔へのモルタル投入」の後に、「PCa壁高欄の据付け・位置調整」と「仮固定」とを行い、「仮固定完了後、接合目地の型枠を組立ててモルタルを注入」して、PCa壁高欄と地覆部とが定着される点。
イ 相違点についての判断
上記相違点について判断する。
(ア)相違点B-5について
事案に鑑み、相違点B-5について判断する。
上記相違点B-5は、本件発明1と甲1方法発明との相違点Bと実質的に同じ相違点であり、上記(1)イ(ア)において上記相違点Bについて判断したと同様に、甲1発明において上記相違点B-5に係る本件発明5の構成とすることは、甲2ないし甲5及び甲7に記載される事項を考慮しても、当業者にとって想到容易ではない。
(イ)相違点E-5について
事案に鑑み、相違点E-5についても判断する。
上記(1)イ(イ)において、本件発明1と甲1方法発明との相違点Cについて指摘したと同様に、上記相違点E-5に係る本件発明5の構成により、「突部材が収まった凹溝又は凹穴」と「部材間空隙」とが「連通する」状態で「充填」して、「養生」及び「硬化」された「間詰め材」と、甲1発明において、施工の異なる段階で異なる箇所に投入又は注入された「モルタル」とでは、硬化後の一体性についても異なる特性を有すると解されるから、上記相違点E-5は、「硬化」後の「間詰め材」の物としての特性、及び、「下部高欄」と「プレキャスト上部高欄」の「一体化」という機能の両面における相違点である。
そして、甲2ないし甲5及び甲7においても、甲1発明において、上記相違点E-5に係る本件発明5の構成を採用することは、記載も示唆もされていない。
したがって、相違点E-5に係る本件発明5の構成は、甲2ないし甲5及び甲7に記載される事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 小括
上記イより、上記相違点B-5及びE-5は、甲2ないし甲5及び甲7に記載される事項に基づいて想到容易な構成でないから、その余の相違点A-5及びD-5について判断するまでもなく、本件発明5は、甲1発明並びに甲2ないし甲5及び甲7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(6)本件発明6について
本件発明6は、本件発明2に対応する物の発明において、「間詰め材」の「充填」及び「養生硬化」による「プレキャスト下部高欄とプレキャスト上部高欄と」の「一体化」について、「前記突部材が収まった凹溝又は凹穴及び当該凹溝又は凹穴に連通する部材間空隙に同じ時間硬化型の間詰め材が充填されて連続する塊として養生硬化され、当該連続する塊として養生硬化した間詰め材によってプレキャスト下部高欄とプレキャスト上部高欄とが一体化された」と特定したものである。
本件発明2と甲1方法発明との対比をふまえて、本件発明6と甲1発明とを対比すると、両者は次の点で一致する。
「橋梁のコンクリート床版の橋軸直角方向側方に設けられる壁高欄において、
下部高欄とプレキャスト上部高欄を備え、
突部材が凹溝又は凹穴に収まり、
下部高欄とプレキャスト上部高欄とが一体化された、
壁高欄。」
そして、本件発明6と甲1発明とは、以下の点で相違する。
<相違点A-6>
「下部高欄」に関し、
本件発明6においては、「プレキャスト下部高欄」と特定されているのに対し、
甲1発明においては、「地覆部」が「プレキャスト」であるとは特定されていない点。
<相違点B-6a>
「突部材」及び「凹溝又は凹穴」に関し、
本件発明6においては、「突部材」が「プレキャスト下部高欄」の「上面側に上向きに突出する」ように設けられ、「凹溝」又は「凹穴」が「プレキャスト上部高欄」の「底面側」に備えられるのに対し、
甲1発明においては、「突出」する「拡径鉄筋」が「PCa壁高欄」の「下面」に備えられ、「箱抜き孔」が「地覆部上面側」に設けられる点。
<相違点B-6b>
「突部材」及び「凹溝又は凹穴」に関し、
本件発明6においては、「一本」又は「一列に並ぶ複数」のものと特定されているのに対し、
甲1発明においては、「2列に並ぶ複数」のものである点。
<相違点E-6>
「プレキャスト下部高欄とプレキャスト上部高欄」との「一体化」に関し、
本件発明6においては、「前記突部材が収まった凹溝又は凹穴及び当該凹溝又は凹穴に連通する部材間空隙に同じ時間硬化型の充填されて連続する塊として養生硬化され、当該連続する塊として養生硬化した間詰め材」によって、プレキャスト下部高欄とプレキャスト上部高欄とが「一体化された」と特定されているのに対し、
甲1発明においては、「地覆部」の「箱抜き孔へのモルタル投入」の後に、「PCa壁高欄の据付け・位置調整」と「仮固定」とを行い、「仮固定完了後、接合目地の型枠を組立ててモルタルを注入」して、PCa壁高欄と地覆部とが定着される点。
イ 相違点についての判断
上記相違点について判断する。
(ア)上記相違点B-6bについて
事案に鑑み、上記相違点B-6bについて判断する。
上記相違点B-6bは、本件発明5と甲1発明との相違点B-5と実質的に同じ相違点であり、上記(5)イ(ア)において上記相違点B-5について判断したと同様に、甲2ないし甲5及び甲7に記載される事項を考慮しても、当業者にとって想到容易ではない。
(イ)上記相違点E-6について
事案に鑑み、上記相違点E-6についても判断する。
上記相違点E-6に係る本件発明6の構成は、本件発明5と甲1発明との相違点E-5に係る構成について、「養生硬化」した「間詰め材」の特性をさらに限定した構成であるから、上記(5)イ(イ)において上記相違点E-5について判断したと同様に、甲2ないし甲5及び甲7に記載される事項を考慮しても、当業者にとって想到容易ではない。
ウ 小括
上記イより、上記相違点B-6b及びE-6は、甲2ないし甲5及び甲7に記載される事項に基づいて想到容易な構成でないから、その余の相違点A-6及びB-6aについて判断するまでもなく、本件発明6は、甲1発明並びに甲2ないし甲5及び甲7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(7)本件発明7について
本件発明7は、本件発明3に対応する物の発明であり、本件発明3と甲1方法発明との対比をふまえて、本件発明7と甲1発明とを対比すると、両者は次の点で一致する。
「橋梁のコンクリート床版の橋軸直角方向側方に設けられる壁高欄において、
下部高欄とプレキャスト上部高欄を備え、
突部材が凹溝又は凹穴に収まり、
下部高欄とプレキャスト上部高欄とが一体化された、
壁高欄。」
そして、本件発明7と甲1発明とは、以下の点で相違する。
<相違点A-7>
「下部高欄」に関し、
本件発明7においては、「プレキャスト下部高欄」と特定されているのに対し、
甲1発明においては、「地覆部」が「プレキャスト」であるとは特定されていない点。
<相違点B-7a>
「突部材」及び「凹溝又は凹穴」に関し、
本件発明7においては、「突部材」が、「プレキャスト上部高欄」の「底面側に下向きに突出」するとともに、「プレキャスト下部高欄」の「上面側に上向きに突出する」ように設けられ、「凹溝」又は「凹穴」が、「プレキャスト下部高欄」の「上面側」に備えられるとともに、「プレキャスト上部高欄」の「底面側」に備えられるのに対し、
甲1発明においては、「突出」する「拡径鉄筋」が「PCa壁高欄」の「下面」に備えられ、「箱抜き孔」が「地覆部上面側」に設けられる点。
<相違点B-7b>
「突部材」及び「凹溝又は凹穴」に関し、
本件発明7においては、「一本」又は「一列に並ぶ複数」のものと特定されているのに対し、
甲1発明においては、「2列に並ぶ複数」のものである点。
<相違点E-7>
「プレキャスト下部高欄とプレキャスト上部高欄」との「一体化」に関し、
本件発明7においては、「前記突部材が収まった凹溝又は凹穴及び当該凹溝又は凹穴に連通する部材間空隙に充填されて硬化された間詰め材」によって、プレキャスト下部高欄とプレキャスト上部高欄とが「一体化された」と特定されているのに対し、
甲1発明においては、「地覆部」の「箱抜き孔へのモルタル投入」の後に、「PCa壁高欄の据付け・位置調整」と「仮固定」とを行い、「仮固定完了後、接合目地の型枠を組立ててモルタルを注入」して、PCa壁高欄と地覆部とが定着される点。
イ 相違点についての判断
上記相違点について判断する。
(ア)上記相違点B-7bについて
事案に鑑み、上記相違点B-7bについて判断する。
上記相違点B-7bは、本件発明5と甲1発明との相違点B-5と実質的に同じ相違点であり、上記(5)イ(ア)において上記相違点B-5について判断したと同様に、甲2ないし甲5及び甲7に記載される事項を考慮しても、当業者にとって想到容易ではない。
(イ)上記相違点E-7について
事案に鑑み、上記相違点E-7についても判断する。
上記相違点E-7は、本件発明5と甲1発明との相違点E-5と実質的に同じ相違点であり、上記(5)イ(イ)において上記相違点E-5について判断したと同様に、甲2ないし甲5及び甲7に記載される事項を考慮しても、当業者にとって想到容易ではない。
ウ 小括
上記イより、上記相違点B-7b及びE-7は、甲2ないし甲5及び甲7に記載される事項に基づいて想到容易な構成でないから、その余の相違点A-7及びB-7aについて判断するまでもなく、本件発明7は、甲1発明並びに甲2ないし甲5及び甲7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(8)本件発明8について
本件発明8は、本件発明1に対応する物の発明において、「プレキャスト上部高欄」の「底面」に「高さ調整用インサートが埋設」され、「当該高さ調整用インサートに、当該プレキャスト上部高欄の底面よりも下側に突出するように高さ調整ボルトが螺合され」いるとの構成、及び、「壁高欄の凹溝又は凹穴に、突部材及び間詰め材が収まる収容部を備えた埋設部材が設けられ、前記突部材は前記埋設部材の収容部に収まり、前記埋設部材の収容部及び当該収容部に連通する部材間空隙に充填されて養生硬化された間詰め材によってプレキャスト下部高欄とプレキャスト上部高欄とが一体化された」との構成を追加したものである。
本件発明1と甲1方法発明との対比をふまえて、本件発明8と甲1発明とを対比すると、両者は次の点で一致する。
「橋梁のコンクリート床版の橋軸直角方向側方に設けられる壁高欄において、
下部高欄とプレキャスト上部高欄を備え、
前記下部高欄の上面に凹溝又は凹穴が設けられ、
前記プレキャスト上部高欄の底面に突部材が下向きに突設され、
前記プレキャスト上部高欄の突部材が下部高欄の凹溝又は凹穴に収まり、
下部高欄とプレキャスト上部高欄とが一体化された、
壁高欄。」
そして、本件発明8と甲1発明とは、以下の点で相違する。
<相違点A-8>
「下部高欄」に関し、
本件発明8においては、「プレキャスト下部高欄」と特定されているのに対し、
甲1発明においては、「地覆部」が「プレキャスト」であるとは特定されていない点。
<相違点B-8>
「突部材」及び「凹溝又は凹穴」に関し、
本件発明8においては、「一本」又は「一列に並ぶ複数」のものと特定されているのに対し、
甲1発明においては、「2列に並ぶ複数」のものである点。
<相違点D-8>
「高さ調整」に関し、
本件発明8においては、「プレキャスト上部高欄」の「底面」に「高さ調整用インサートが埋設」され、「当該高さ調整用インサートに、当該プレキャスト上部高欄の底面よりも下側に突出するように高さ調整ボルトが螺合され」るのに対し、
甲1発明においては、「PCa壁高欄を仮支持するボルト」を有するものの、当該「ボルト」の具体的構造、及び高さの調整態様が不明である点。
<相違点E-8a>
「プレキャスト下部高欄とプレキャスト上部高欄」との「一体化」に関し、
本件発明8においては、「前記突部材が収まった凹溝又は凹穴及び当該凹溝又は凹穴に連通する部材間空隙に充填されて硬化された間詰め材」によって、プレキャスト下部高欄とプレキャスト上部高欄とが「一体化された」と特定されているのに対し、
甲1発明においては、「地覆部」の「箱抜き孔へのモルタル投入」の後に、「PCa壁高欄の据付け・位置調整」と「仮固定」とを行い、「仮固定完了後、接合目地の型枠を組立ててモルタルを注入」して、PCa壁高欄と地覆部とが定着される点。
<相違点E-8b>
「凹溝又は凹穴」、及び、「プレキャスト下部高欄とプレキャスト上部高欄」との「一体化」に関し、
本件発明8においては、「壁高欄の凹溝又は凹穴に、突部材及び間詰め材が収まる収容部を備えた埋設部材が設けられ」ており、上記相違点E-8aに係る本件発明8の構成について、さらに、「前記突部材は前記埋設部材の収容部に収まり、 前記埋設部材の収容部及び当該収容部に連通する部材間空隙に充填されて養生硬化された間詰め材によってプレキャスト下部高欄とプレキャスト上部高欄とが一体化された」ことが特定されているのに対し、
甲1発明においては、「地覆部の拡径鉄筋を挿入する箱抜き孔」を「形成」する際に用いた「鋼製スパイラルシース」は、「将来的に接合構造の劣化因子となることと、拡径鉄筋を確実に地覆部にモルタル定着するため、コンクリート打設後に撤去して」いる点。
イ 相違点についての判断
上記相違点について判断する。
(ア)上記相違点B-8について
事案に鑑み、上記相違点B-8について判断する。
上記相違点B-8は、本件発明5と甲1発明との相違点B-5と実質的に同じ相違点であり、上記(5)イ(ア)において上記相違点B-5について判断したと同様に、甲2ないし甲5及び甲7に記載される事項を考慮しても、当業者にとって想到容易ではない。
(イ)上記相違点E-8aについて
事案に鑑み、上記相違点E-8aについても判断する。
上記相違点E-8aは、本件発明5と甲1発明との相違点E-5と実質的に同じ相違点であり、上記(5)イ(イ)において上記相違点E-5について判断したと同様に、甲2ないし甲5及び甲7に記載される事項を考慮しても、当業者にとって想到容易ではない。
ウ 小括
上記イより、上記相違点B-8及びE-8aは、甲2ないし甲5及び甲7に記載される事項に基づいて想到容易な構成でないから、その余の相違点A-8、D-8及びE-8bについて判断するまでもなく、本件発明8は、甲1発明並びに甲2ないし甲5及び甲7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(9)本件発明9について
本件発明9は、本件発明6又は7の構成を全て有したうえで、さらに付加的な構成を追加したものであるところ、上記(6)及び(7)に示したとおり、本件発明6及び7は、甲1発明、並びに甲2ないし甲5及び甲7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明9における付加的構成について判断するまでもなく、本件発明9は、甲1発明並びに甲2ないし甲5及び甲7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(10)取消理由通知に採用しなかった特許異議申立理由についての小括
以上のとおりであるから、本件発明1ないし9に係る特許は、取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由によって、取り消されるべきものではない。
3 申立人による意見書における主張について
申立人は、令和3年12月24日提出の意見書において、上記1(2)アに判断した本件発明5と先願1発明との相違点1に関し、甲6に記載される「据付用アンカーボルト20」は、当業者であれば、高さ調整を行うことができると認識することができるものであり、本件発明5と先願1発明との相違点1は、甲5及び甲7も参酌すれば、課題解決のための具体化手段における微差である旨を主張している。
当該主張について検討すると、申立人が参照する甲5及び甲7、並びに、甲4には、上記第5の5及び7、並びに4に示した事項が記載されており、それぞれボルトにより高さ調整を行うことが示されている。
しかしながら、甲4が示す「上口のみを開放した鋼製の函体」からなる「L型フレーム3」を有する「断面L字型の壁高欄1」、及び、甲7が示すプレキャストPC床版は、甲6に示される先願1発明の「プレキャスト壁高欄部材2」とは、構造が異なるものである。また、甲5が示す、「コンクリート床版と壁高欄との接合は床版上面側に配筋されたループ鉄筋にプレキャスト壁高欄の矩形ループ鉄筋を重ね合わせ、かつそれらのループ鉄筋内に、橋軸方向へ連続する複数の補強鉄筋を配置し、高強度モルタルを打設して一体化する」接合構造も、甲6に示される先願1発明における「縦方向鉄筋7の下端部」が「受容孔9」に「受容」される接合構造とは、異なるものである。
このような甲4、甲5及び甲7と先願1発明との構造の違いをふまえると、たとえ甲4、甲5及び甲7の記載を考慮しても、先願1明細書等において「突出長を調整」して「高さ調整」を行うことが記載されているものではない、先願1発明における「据付用アンカーボルト20」について、「突出長を調整」して「高さ調整」を行うものとしたうえで、「地覆4」の側ではなく「プレキャスト壁高欄部材2」の側に設けるものとし、具体的な構造として、「埋設」された「高さ調整用インサート」に「螺合」されて「螺合量を調整することにより、突出長を調整することができ、・・・その下端が前記突部材(定着筋7)の下端よりも上方に位置して」いる構成とすることを、上記1(2)アに判断したとおり、課題解決のための具体化手段における微差程度ということはできない。
また、上記本件発明5と先願1発明との相違点2についても、上記1(2)イに判断したとおりであるから、申立人の上記主張について検討しても、本件発明5と先願1発明との同一性について、上記1(3)と異なる判断をすべき事情は見いだせない。
第6 むすび
以上のとおり、本件訂正は全て認められるとともに、本件発明1ないし9に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。
また、他に本件発明1ないし9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2021-700495