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特許異議申立

2017-700247

燃料電池の燃料改質器用または燃料電池の熱交換器用フェライト系ステンレス鋼およびその製造方法

審判番号
2017-700247
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2014-154023
登録番号
特許第6006759号(P6006759)
請求日
2017年03月09日
審決日
2017年06月15日
公報発行日
2017年07月28日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】新日鐵住金ステンレス株式会社
  • 【権利者代理人】特許業務法人樹之下知的財産事務所
  • 【異議申立人】山田 宏基
審判長/審判官
  • 審判長 鈴木 正紀
  • 審判官 宮本 純
  • 審判官 土屋 知久
分類
P1651.113-Y (C22C) / P1651.121-Y (C22C)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6006759号発明「燃料電池の燃料改質器用または燃料電池の熱交換器用フェライト系ステンレス鋼およびその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6006759号の請求項に係る特許を維持する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 特許6006759号(以下「本件特許」という。)の請求項1~5に係る特許についての出願は、平成26年 7月29日に特許出願され、平成28年 9月16日にその特許権の設定登録がされ、同年10月12日にその特許公報が発行され、その後、その特許に対し、平成29年 3月 9日に特許異議申立人山田宏基(以下「申立人」という。)により特許異議申立書(以下「申立書」という。)が提出されたものである。 第2 本件発明 本件特許の請求項1~5に係る発明(以下それぞれ「本件発明1~5」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「 【請求項1】 質量%にて、Cr:11~25%、C:0.03%以下、Si:2%以下、Mn:2%以下、Al:0.5~4.0%、P:0.05%以下、S:0.01%以下、N:0.03%以下、Ti:0.5%以下を含み、更にGa:0.1%以下、Mg:0.01%以下、Zn:0.05%以下の1種または2種以上を含み、Ga+Mg+Zn≧0.0025%を満たし、残部がFeおよび不可避的不純物からなるフェライト系ステンレス鋼であって、当該フェライト系ステンレス鋼は、その表面が酸化膜で被覆されてなることを特徴とする耐Cr被毒性に優れた燃料電池の燃料改質器用または燃料電池の熱交換器用フェライト系ステンレス鋼。 【請求項2】 質量%にて、更に、Sn:0.5%以下、Sb:0.5%以下の1種または2種含有していることを特徴とする請求項1に記載の耐Cr被毒性に優れた燃料電池の燃料改質器用または燃料電池の熱交換器用フェライト系ステンレス鋼。 【請求項3】 質量%にて、Si:0.3%以上、Al:1.5%以上、Ti:0.1%以上を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の耐Cr被毒性に優れた燃料電池の燃料改質器用または燃料電池の熱交換器用フェライト系ステンレス鋼。 【請求項4】 質量%にて、更に、Ni:1%以下、Cu:1%以下、Mo:2%以下、W:1%以下、Co:0.5%以下、Nb:0.5%以下、V:0.5%以下、Zr:0.5%以下、B:0.005%以下、Ca:0.005%以下、La:0.1%以下、Y:0.1%以下、Hf:0.1%以下、REM:0.1%以下の1種または2種以上含有していることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の耐Cr被毒性に優れた燃料電池の燃料改質器用または燃料電池の熱交換器用フェライト系ステンレス鋼。 【請求項5】 請求項1~4のいずれか一項に記載の組成を有するステンレス鋼材を、酸素または水素を含む雰囲気中において、700~1100℃の範囲で熱処理することにより、前記ステンレス鋼材の表面に酸化皮膜を形成することを特徴とする耐Cr被毒性に優れた燃料電池の燃料改質器用または燃料電池の熱交換器用フェライト系ステンレス鋼の製造方法。」 第3 申立理由の概要 申立人は、証拠として、下記甲第1号証~甲第3号証を提出し、以下の申立理由1~2によって請求項1~5に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。 甲第1号証:特開2010-222638号公報 甲第2号証:特開2010-159487号公報 甲第3号証:特開2002-294397号公報 申立理由1 本件特許の請求項1、3~5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明と同一であるから、その特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものである。 申立理由2 本件特許の請求項1~5に係る発明は、甲第1号証及び甲第2~3号証に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。 第4 判断 1 甲各号証の記載事項 (1)甲第1号証について (1-1)甲第1号証の記載事項 本件特許に係る出願前に日本国内において頒布された、上記甲第1号証には以下の事項が記載されている(なお、下線は当審が付与したものであり、「・・・」は記載の省略を表す。以下同様。)。 1ア 「【請求項1】 質量%にて、 C:0.02%未満、 Si:0.15超~0.7%、 Mn:0.3%以下、 P:0.035%以下、 S:0.003%以下、 Cr:13~20%、 Al:1.5~6%、 N:0.02%以下、 Ti:0.03~0.5%以下、 Nb:0.6%以下、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、 鋼中の固溶Ti量を[Ti],固溶Nb量を[Nb]とし、13≦Cr≦16の場合は下記(a)式を満足し、16<Cr≦20の場合は下記(b)式を満足することを特徴とする燃料電池用Al含有耐熱フェライト系ステンレス鋼。 0≦[Ti]≦[Nb]+0.05,0<[Nb]≦0.6・・・(a) 0≦[Ti]≦1/2×[Nb]+0.15,0<[Nb]≦0.6・・・(b) 【請求項2】 前記鋼が、さらに質量%にて、Zr:0.1%以下,La:0.1%以下,Y:0.1%以下,REM:0.1%以下,B:0.005%以下、Mg:0.005%以下、Ca:0.005%以下の1種または2種以上含有していることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用Al含有耐熱フェライト系ステンレス鋼。」(【特許請求の範囲】) 1イ 「これら燃料電池では、水素を供給するための燃料としてメタン,天然ガス,都市ガス,プロパン,灯油等の炭化水素系燃料を使用する。このような燃料を使用して空気と混合した場合、燃料改質器をはじめ、これらの機器につながる配管や高温熱交換器などの部位は、多くの水蒸気と酸素を含む高温環境に曝される。これら改質器、熱交換器、ガス配管、電池まわりを構成する金属材料には、SUS310S,SUS316L系,SUS304系のオーステナイト系ステンレス鋼や高Niの耐熱オーステナイト系ステンレス鋼が主として使用されてきた。 近年、SOFCのシステム改良が著しく進み,従来の1000℃付近から700~900℃の低温作動で高出力運転が可能となっている。これらシステムの普及には上述したオーステナイト系ステンレスから安価でかつ9~10万時間以上の装置寿命を保証できる信頼性の高い金属材料への変更が望まれており、その課題は、多くの水蒸気と酸素を含む高温環境での耐酸化性,装置寿命の視点からクリ-プ破断寿命であり,これらの課題を克服できる耐熱フェライト系ステンレス鋼が候補になっている。」(【0003】~【0004】) 1ウ「【実施例】 以下に、本発明の鋼が鋼板の場合である実施例について述べる。 表3に成分を示すAl含有フェライト系ステンレス鋼を溶製し、熱間圧延を行い板厚4.0~5.0mmの熱延板を製造した。鋼No.1~9は本発明の規定する成分範囲を有するものである。鋼No.10~17は、本発明の規定する成分範囲から外れるものである。 【表3】 鋼No.1~4、10~17は、熱延板焼鈍を省略して冷間圧延して1.2mm厚とし,仕上げ焼鈍は850~950℃とし,焼鈍後の冷却はガス冷却(10℃/秒)あるいは水冷(>100℃/秒)とした。鋼No.5~9は、1000℃で熱延板焼鈍を行い,冷間圧延して1.0mm厚とし,仕上げ焼鈍は900~1000℃とした。焼鈍後の冷却はガス冷却(10℃/秒),水冷(>100℃/秒),空冷(5℃/秒)とした。 得られた鋼板は、前記の要領で[Ti],[Nb]の測定,高水蒸気・高酸素雰囲気下での1050℃,300hrの加速酸化試験による酸化増量、加速酸化試験材を用いた750℃加熱・冷却の熱サイクルによる酸化皮膜表面の剥離率を測定した。本発明の目標とする耐酸化性は、加速酸化試験と加熱・冷却に伴う熱サイクルを経ても酸化皮膜表面の剥離が殆ど生じない(剥離率10ケ/cm2以下)である。また、750℃、初期応力10MPaの条件下でのクリ-プ破断時間を求めた。クリ-プ寿命の到達目標は4000hrを目安とした。 得られた結果を表4に示す。・・・ 【表4】 試番4、5、8、11、13、14、16、19、20、22、23は本発明の規定する成分範囲と[Ti],[Nb]を満たすものであり,本発明の規定する緩冷却を施したものである。これらは、本発明の目標とする耐酸化性を有し,クリ-プ破断寿命も良好である。これより,本発明の成分範囲を満たし,本発明で規定する製造条件を実施すれば本発明の目標とする耐酸化性とクリ-プ破断寿命を兼備することができる。 」(【0036】~【0040】) 1エ「【産業上の利用可能性】 本発明によれば、鋼の成分,TiとNbの鋼中での固溶状態を規定することにより,高合金化や高価な元素の添加に頼ることなく,燃料電池用として要求される耐酸化性とクリ-プ破断寿命を兼備する、燃料電池用Al含有耐熱フェライト系ステンレス鋼およびその製造方法を提供することができる。本発明のAl含有耐熱フェライト系ステンレス鋼は、特殊な製造方法に依らず,仕上げ焼鈍後の緩冷却あるいは更に熱処理を施すにより工業的に生産することができる。」(【0045】) (1-2)甲第1号証に記載された発明 上記(1-1)の摘記事項について検討する。 ア 上記1アによれば、請求項2において、さらに含有される成分が、Mg1種である時には、この請求項に係る燃料電池用Al含有耐熱フェライト系ステンレス鋼は、以下のとおりである。 質量%にて、 C:0.02%未満、 Si:0.15超~0.7%、 Mn:0.3%以下、 P:0.035%以下、 S:0.003%以下、 Cr:13~20%、 Al:1.5~6%、 N:0.02%以下、 Ti:0.03~0.5%以下、 Nb:0.6%以下、 Mg:0.005%以下、 残部がFeおよび不可避的不純物からなり、 鋼中の固溶Ti量を[Ti],固溶Nb量を[Nb]とし、13≦Cr≦16の場合は下記(a)式を満足し、16<Cr≦20の場合は下記(b)式を満足すること。 0≦[Ti]≦[Nb]+0.05,0<[Nb]≦0.6・・・(a) 0≦[Ti]≦1/2×[Nb]+0.15,0<[Nb]≦0.6・・・(b) イ 上記1イによれば、燃料電池の燃料改質器、熱交換器等を構成する金属材料として耐熱オーステナイト系ステンレスから耐熱フェライト系ステンレスへの変更が望まれており、優れた耐酸化性を有し、クリープ破断寿命が良好なフェライト系ステンレスを得ることが課題である。 ウ そして、上記イの課題を解決するものとして、上記1ア、すなわち上記アの検討によれば「質量%にて、 C:0.02%未満、 Si:0.15超~0.7%、 Mn:0.3%以下、 P:0.035%以下、 S:0.003%以下、 Cr:13~20%、 Al:1.5~6%、 N:0.02%以下、 Ti:0.03~0.5%以下、 Nb:0.6%以下、 Mg:0.005%以下、 残部がFeおよび不可避的不純物からなり、 鋼中の固溶Ti量を[Ti],固溶Nb量を[Nb]とし、13≦Cr≦16の場合は下記(a)式を満足し、16<Cr≦20の場合は下記(b)式を満足する燃料電池用Al含有耐熱フェライト系ステンレス鋼。 0≦[Ti]≦[Nb]+0.05,0<[Nb]≦0.6・・・(a) 0≦[Ti]≦1/2×[Nb]+0.15,0<[Nb]≦0.6・・・(b)」が記載され、上記1エ【表3】には、その実施例として、「質量%にて、Cr:18.1%、C:0.005%、Si:0.45%、Mn:0.27%、Al:1.9%、P:0.032%、S:0.0005%、N:0.008%、Ti:0.17%以下、Mg:0.001%より少ない割合、Nb:0.01%、Ca:0.001%より少ない割合、残部がFeおよび不可避的不純物からなる燃料電池用Al含有耐熱フェライト系ステンレス鋼」(実施例9)が記載されており(なお【表3】における鋼No9のMg、Ca含量の数値は正確には読み取れないが、0.001よりも小さいことは明らかである。)、上記1エの【表4】によれば、実施例9(鋼No9)に相当する試板23のものは、剥離率(すなわち、酸化皮膜表面の剥離率が低い(10ヶ/cm2以下))、クリープ破断寿命が良好であることが確認される。 エ 上記1ア~1ウの記載事項および上記ア~ウの検討によれば甲第1号証には、以下の甲1発明1及び甲1発明2が記載されているものと認められる。 <甲1発明1> 「質量%にて、Cr:18.1%、C:0.005%、Si:0.45%、Mn:0.27%、Al:1.9%、P:0.032%、S:0.0005%、N:0.008%、Ti:0.17%以下、Mg:0.001%より少ない割合、Nb:0.01%、Ca:0.001%より少ない割合、 残部がFeおよび不可避的不純物からなるフェライト系ステンレス鋼であって、 表面に酸化皮膜が形成されている、燃料電池の燃料改質器、熱交換器用フェライト系ステンレス鋼。」 <甲1発明2> 「質量%にて、Cr:13~20%、C:0.02%未満、Si:0.15超~0.7%、Mn:0.3%以下、Al:1.5~6%、P:0.035%以下、S:0.003%以下、N:0.02%以下、Ti:0.03~0.5%以下、Mg:0.005%以下、Nb:0.6%以下、 残部がFeおよび不可避的不純物からなるフェライト系ステンレス鋼であって、 鋼中の固溶Ti量を[Ti],固溶Nb量を[Nb]とし、13≦Cr≦16の場合は下記(a)式を満足し、16<Cr≦20の場合は下記(b)式を満足し、表面に酸化皮膜が形成されている、燃料電池の燃料改質器、熱交換器用フェライト系ステンレス鋼。 0≦[Ti]≦[Nb]+0.05,0<[Nb]≦0.6・・・(a) 0≦[Ti]≦1/2×[Nb]+0.15,0<[Nb]≦0.6・・・(b)」 (2)甲第2号証の記載事項 本件特許に係る出願前に日本国内において頒布された、上記甲第2号証には次の事項が記載されている。 2ア 「【請求項1】 質量%にて、 C:0.001~0.02%、 Si:0.01~0.6%、 Mn:0.01~0.6%、 P:0.005~0.04%、 S:0.0001~0.01%、 Cr:13~22%、 N:0.001~0.02%、 Al:0.005~0.05%、 Sn:0.001~1%、 残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼であって、 該鋼表面においてX線光電子分光分析器で測定されるFe酸化物、Cr酸化物、Sn酸化物、ならびにそれら以外の酸化物のX線強度をそれぞれI(Fe)、I(Cr)、I(Sn)、I(O)とした場合、下記式(1)と式(2)に示す2つの関係を満たすことを特徴とする耐銹性に優れた高純度フェライト系ステンレス鋼。 0<I(Fe)/I(Cr)<5・・・・・式(1)、 0<I(O)/I(Sn)<3 ・・・・・式(2) 【請求項2】 さらに質量%にて、 Ti:0.05~0.35%、 Ni:0.05~0.5%、 Cu:0.05~0.5%、 Nb:0.05~0.7%、 Mo:0.005~0.5%、 Mg:0.0001~0.005%、 B:0.0003~0.005%、 Ca:0.0003~0.005% の1種または2種以上含有していることを特徴とする請求項1に記載の耐銹性に優れた高純度フェライト系ステンレス鋼。 ・・・ 【請求項5】 請求項1~3のいずれか1項に記載の高純度フェライト系ステンレス鋼を熱間鍛造あるいは熱間圧延により熱延鋼材とし、冷間加工と焼鈍を繰り返す鋼材の製造方法において、仕上げ焼鈍を800℃より高温の光輝焼鈍にて行い、その雰囲気ガスが50容量%以上の水素ガスであって、残部が窒素ガス及び不可避的不純物からなり、該雰囲気ガスの露点が-50℃以上、-20℃以下であることを特徴とする耐銹性に優れた高純度フェライト系ステンレス鋼の製造方法。」(【特許請求の範囲】) 2イ 「上述した通り、従来、微量元素を利用した耐食性向上技術は、P単独、SnやSbと高価な希少元素であるCoやNi、Moを複合添加するものであり、製造性、加工性、材料コストの視点から課題がある。一方で、加工性、コストの視点から優れている高純度フェライト系ステンレス鋼は、耐銹性が比較的劣位であった。そのため、高純度フェライト系ステンレス鋼での耐銹性向上が、製造製、加工性、材料コストそして耐銹性を兼ね備えたステンレス鋼材として要求が高い。 そこで本発明の目的は、耐銹性をSUS304と遜色ない程度、あるいはそれを上回るまで向上させた、希少元素の添加に頼らない省合金型の高純度フェライト系ステンレス鋼を提供することにある。」(【0012】) 2ウ 「Mgは、溶鋼中でAlとともにMg酸化物を形成し脱酸剤として作用する他、TiNの晶出核として作用する。TiNは凝固過程においてフェライト相の凝固核となり、TiNの晶出を促進させることで、凝固時にフェライト相を微細生成させることができる。・・・添加する場合は、これら効果を発現する0.0001%以上とする。但し、0.005%を超えると製造性が劣化するため、上限を0.005%とする。好ましくは、製造性を考慮して0.0003~0.002%とする。」(【0044】) 2エ 「本発明によれば、高純度フェライト系ステンレス鋼の優れた加工性を生かしつつ、耐銹性を著しく向上させることが可能となり、オ-ステナイト系ステンレス鋼と比較して経済性に優れた省合金型の高純度フェライト系ステンレス鋼の用途拡大を図ることが出来る。」(【0066】) (3)甲第3号証の記載事項 本件特許に係る出願前に日本国内において頒布された、上記甲第3号証には次の事項が記載されている。 3ア「【発明が解決しようとする課題】 本発明は、上記の様な問題点を解決し、プレス成形性およびめっき密着性の良好な高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板、および、該鋼板を効率よく製造する方法を提供しようとするものである。」(【0011】) 3イ「Be、Mg、Ca、Zrは、酸化物を非常に形成し易い元素であるので、高Siおよび/または高Al鋼のめっき性を劣化させるSi酸化物および/またはAl酸化物の生成を抑制し、その結果、めっき性を改善する。この効果は、Be、Mg、Ca、Zrの1種以上を添加することで生じ、Be、Mg、Ca、Zrの1種以上の合計が0.005%以上で、十分なめっき密着性を得ることができる。この効果を十分に得るためには、これら元素の2種以上を、0.008%以上添加することが望ましい。」(【0037】) 3ウ「【発明の効果】 本発明によれば、プレス成形性およびめっき密着性の良好な高強度溶融亜鉛系めっき鋼板および高強度合金化溶融亜鉛系めっき鋼板を、効率よく製造し、自動車、建築、電気等の部材、その他の用途に供することができる。」(【0105】) 2 対比・判断 (1) 本件発明1について (1-1) 本件発明1と甲1発明1との対比 ア 本件発明1と甲1発明1とを対比すると、甲1発明1の「質量%にて、 Cr:18.1%、C:0.005%、Si:0.45%、Mn:0.27%、Al:1.9%、P:0.032%、S:0.0005%、N:0.008%、Ti:0.17%以下」「からなる」と、本件発明1の「質量%にて、Cr:11~25%、C:0.03%以下、Si:2%以下、Mn:2%以下、Al:0.5~4.0%、P:0.05%以下、S:0.01%以下、N:0.03%以下、Ti:0.5%以下を含み」とは、「Cr:18.1%、C:0.005%、Si:0.45%、Mn:0.27%、Al:1.9%、P:0.032%、S:0.0005%、N:0.008%、Ti:0.17%以下」で含む点で重複する。 イ 甲1発明1の「残部がFeおよび不可避的不純物からなるフェライト系ステンレス鋼であって、表面に酸化皮膜が形成されている、燃料電池の燃料改質器、熱交換器用フェライト系ステンレス鋼」は、本件発明1の「残部がFeおよび不可避的不純物からなるフェライト系ステンレス鋼であって、当該フェライト系ステンレス鋼は、その表面が酸化膜で被覆されてなることを特徴とする」「燃料電池の燃料改質器用または燃料電池の熱交換器用フェライト系ステンレス鋼」に相当するものである。 (1-2)本件発明1と甲1発明1との一致点と相違点 上記(1-1)の検討から、本件発明1と甲1発明1の一致点と相違点は次のとおりである。 <一致点> 質量%にて、Cr:18.1%、C:0.005%、Si:0.45%、Mn:0.27%、Al:1.9%、P:0.032%、S:0.0005%、N:0.008%、Ti:0.17%を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなるフェライト系ステンレス鋼であって、当該フェライト系ステンレス鋼は、その表面が酸化膜で被覆されてなることを特徴とする燃料電池の燃料改質器用または燃料電池の熱交換器用フェライト系ステンレス鋼。 <相違点> 相違点1:本件発明1では、フェライト系ステンレス鋼は、「更にGa:0.1%以下、Mg:0.01%以下、Zn:0.05%以下の1種または2種以上を含み、Ga+Mg+Zn≧0.0025%を満た」すもの、すなわち、Mg含量については、0.0025%≦Mg≦0.01%であるのに対し、甲1発明1では、フェライト系ステンレス鋼中のMg含量が「0.001%より少ない割合」である点。 相違点2:本件発明1では、フェライト系ステンレス鋼が、「耐Cr被毒性に優れ」ているのに対し、甲1発明1では、そのような特性を有するか不明な点。 相違点3:本件発明1では、Nb、Caを含まないのに対し、甲1発明1では、質量%で、Nbを0.01%、Caを0.001%より少ない割合で含む点。 (1-2-1)相違点についての判断 上記相違点のうち、まず、相違点1について検討する。 ア 甲第2号証には、耐銹性に優れた高純度フェライト系ステンレス鋼において、溶鋼中でAlとともにMg酸化物を形成し脱酸剤として作用する他、TiNの晶出核として作用することから、Mgを0.0001~0.005%にて配合することが記載されているが、Mgが、溶鋼中でAlとともにMg酸化物を形成し脱酸剤として作用することや、TiNの晶出核として作用することから、フェライト系ステンレス鋼において耐Cr被毒性が向上することは何ら記載されてないし、溶鋼中でAlとともにMg酸化物を形成し脱酸剤として作用することや、TiNの晶出核として作用することから、フェライト系ステンレス鋼において耐Cr被毒性が向上することが本件特許出願時において自明な技術事項とも認められない。よって、甲1発明1において、甲第2号証に記載された発明を適用し、甲1発明1に相違点1を構成することは、当業者にとって容易に相当し得るものではない。 イ また、甲第3号証には、高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板において、Mgは、酸化物を非常に形成し易い元素であり、これを0.005%以上で配合することにより高Siおよび/または高Al鋼のめっき性を劣化させるSi酸化物および/またはAl酸化物の生成を抑制し、その結果、めっき性を改善することが記載されているが、Mgが酸化物を非常に形成し易い元素であることから、これをフェライト系ステンレス鋼に配合すると、耐Cr被毒性が向上することは何ら記載されてないし、Mgが酸化物を非常に形成し易い元素であることや高Siおよび/または高Al鋼のめっき性を劣化させるSi酸化物および/またはAl酸化物の生成を抑制する結果、フェライト系ステンレス鋼において耐Cr被毒性が向上することが本件特許出願時において自明な技術事項とも認められない。よって、甲1発明1において、甲第3号証に記載された発明を適用し、甲1発明1に相違点1を構成することは、当業者が容易に相当し得るものではない。 ウ 続いて、相違点2について検討する。上記ア、イで示したように、甲第2号証または甲第3号証には、金属材料においてMgを配合することにより、金属材料の耐Cr被毒性が向上することについては、何ら開示されていないし、これが本件特許出願時において自明な技術事項でもないことから、甲1発明1において、甲第2号証または甲第3号証に記載された発明を適用し、甲1発明1に相違点2を構成することは、当業者が容易に想到し得るものではない。 エ 相違点3について検討する。上記1(1)の(1-1)1アに示した特許請求の範囲の請求項1の「質量%にて・・・Nb:0.6%以下、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、鋼中の固溶Ti量を[Ti],固溶Nb量を[Nb]とし、13≦Cr≦16の場合は下記(a)式を満足し、16<Cr≦20の場合は下記(b)式を満足することを特徴とする燃料電池用Al含有耐熱フェライト系ステンレス鋼。 0≦[Ti]≦[Nb]+0.05,0<[Nb]≦0.6・・・(a) 0≦[Ti]≦1/2×[Nb]+0.15,0<[Nb]≦0.6・・・(b)」、及び、上記1(1)の(1-1)1ウにおける「本発明の成分範囲を満たし,本発明で規定する製造条件を実施すれば本発明の目標とする耐酸化性とクリ-プ破断寿命を兼備することができる。」という記載を考慮すると、甲第1号証の請求項1に係る発明において、Nbは必須の構成要素であり、甲1発明1のフェライト系ステンレス鋼において、必須要素のNbを除外することは、甲1発明1の技術的意義を損なうことになるから、甲1発明1において、相違点3を構成することは、当業者が容易に想到し得るものではない。 オ そして、上記ア~エで示したように、甲1発明1において、相違点1~3を当業者が容易に想到し得るものではないが、本件発明1が奏する効果についても以下に検討する。本件発明1が奏する効果は、「過度なAl及びSi添加や予備酸化に頼ることなく改質ガス環境下の高い耐酸化性とCrの蒸発抑止を兼備した燃料電池用フェライト系ステンレス鋼を提供することができる」(発明の詳細な説明【0055】)ことである一方、甲1発明1の効果は、上記1(1)(1-1)で摘記した1エによると「TiとNbの鋼中での固溶状態を規定することにより,高合金化や高価な元素の添加に頼ることなく,燃料電池用として要求される耐酸化性とクリ-プ破断寿命を兼備する、燃料電池用Al含有耐熱フェライト系ステンレス鋼およびその製造方法を提供することができる」こと、甲第2号証に記載された発明の効果は、上記1(2)で摘記した2エによると「Mgは、溶鋼中でAlとともにMg酸化物を形成し脱酸剤として作用する他、TiNの晶出核として作用する。TiNは凝固過程においてフェライト相の凝固核となり、TiNの晶出を促進させることで、凝固時にフェライト相を微細生成させることができる。凝固組織を微細化させることにより、製品のリジングやロ-ピングなどの粗大凝固組織に起因した表面欠陥を防止できる他、加工性の向上をもたらす」、また、上記1(2)で摘記した2オによると「本発明によれば、高純度フェライト系ステンレス鋼の優れた加工性を生かしつつ、耐銹性を著しく向上させることが可能となり、オ-ステナイト系ステンレス鋼と比較して経済性に優れた省合金型の高純度フェライト系ステンレス鋼の用途拡大を図ることが出来る」こと、さらに、甲第3号証に記載された発明の効果は、上記1(3)で摘記した3イによると「Be、Mg、Ca、Zrは、酸化物を非常に形成し易い元素であるので、高Siおよび/または高Al鋼のめっき性を劣化させるSi酸化物および/またはAl酸化物の生成を抑制し、その結果、めっき性を改善する」こと、また、上記1(3)で摘記した3ウによると「プレス成形性およびめっき密着性の良好な高強度溶融亜鉛系めっき鋼板および高強度合金化溶融亜鉛系めっき鋼板を、効率よく製造し、自動車、建築、電気等の部材、その他の用途に供することができる」ことであり、甲各号証いずれもフェライト系ステンレス鋼における改質ガス環境下の高い耐酸化性とCrの蒸発抑止、すなわち、耐Cr被毒性に関する効果について言及されていないことを勘案すると、本件発明1が奏する効果は、甲第1~3号証の記載から予測することができるとはいえない。 カ 以上のように、本件発明1は、甲1発明1と相違点1~3を有することから、甲第1号証に記載された発明ではない。また、甲1発明1において、相違点1~3に係る本件発明1の特定事項とすることは当業者が容易になし得ることではないし、また、本件発明1は、甲第1~3号証から予測できない効果を奏するものであるので、本件発明1は、甲1発明1及び甲第2、3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (1-3)本件発明1と甲1発明2との対比 ア 本件発明1と甲1発明2とを対比すると、甲1発明2の「質量%にて、Cr:13~20%、C:0.02%未満、Si:0.15超~0.7%、Mn:0.3%以下、Al:1.5~6%、P:0.035%以下、S:0.003%以下、N:0.02%以下、Ti:0.03~0.5%以下、Mg:0.005%以下」「からなる」は、本件発明1の「質量%にて、Cr:11~25%、C:0.03%以下、Si:2%以下、Mn:2%以下、Al:0.5~4.0%、P:0.05%以下、S:0.01%以下、N:0.03%以下、Ti:0.5%以下を含み、更にGa:0.1%以下、Mg:0.01%以下、Zn:0.05%以下の1種または2種以上を含み、Ga+Mg+Zn≧0.0025%を満たし」に相当する。 イ 甲1発明2の「残部がFeおよび不可避的不純物からなるフェライト系ステンレス鋼であって」「表面に酸化皮膜が形成されている、燃料電池の水素を供給するための燃料改質器、熱交換器用フェライト系ステンレス鋼」は、本件発明1の「残部がFeおよび不可避的不純物からなるフェライト系ステンレス鋼であって、当該フェライト系ステンレス鋼は、その表面が酸化膜で被覆されてなることを特徴とする」「燃料電池の燃料改質器用または燃料電池の熱交換器用フェライト系ステンレス鋼」に相当するものである。 (1-4)本件発明1と甲1発明2の一致点と相違点 上記(1-3)の検討から、本件発明1と甲1発明2の一致点と相違点は次のとおりである。 <一致点> 質量%にて、Cr:11~25%、C:0.03%以下、Si:2%以下、Mn:2%以下、Al:0.5~4.0%、P:0.05%以下、S:0.01%以下、N:0.03%以下、Ti:0.5%以下を含み、更にGa:0.1%以下、Mg:0.01%以下、Zn:0.05%以下の1種または2種以上を含み、Ga+Mg+Zn≧0.0025%を満たし、残部がFeおよび不可避的不純物からなるフェライト系ステンレス鋼であって、当該フェライト系ステンレス鋼は、その表面が酸化膜で被覆されてなることを特徴とする燃料電池の燃料改質器用または燃料電池の熱交換器用フェライト系ステンレス鋼。 <相違点> 相違点2’:本件発明1では、フェライト系ステンレス鋼が、「耐Cr被毒性に優れた」であるのに対し、甲1発明2では、そのような特性がない点。 相違点3’:本件発明1では、Nbを含まないのに対し、甲1発明2では、Nbを0.6質量%以下で含む点。 (1-4-1)相違点についての判断 ア 相違点2’は、(1-2)における相違点2と同じものである。この点については、(1-2-1)ウで示したように、甲第2号証または甲第3号証には、耐Cr被毒性が向上することについては、何ら開示されていない。そして、甲1発明2の「Al含有耐熱フェライト系ステンレス鋼」は、一応、「質量%にて」「Mg:0.005%以下」含むものであるが、このMgの添加は、甲第1号証【0031】によると「熱間加工性を改善する」ためのものであると認められることや、実質的なMgの添加は、上記1(1)(1-1)で摘記した1ウにて示される唯一のMg添加例である実施例9によると、本件発明1の範囲から外れる0.001%より少ない割合であることから、甲1発明2が、「耐Cr被毒性に優れた」物性を有するもの、また、「耐Cr被毒性に優れた」物性を有する蓋然性があるとは認められない。よって、相違点2’は、本件発明1と甲1発明2との実質的な相違点であり、また、甲1発明2において、甲第2号証または甲第3号証に記載された発明を適用し、甲1発明2に相違点2’を構成することは、当業者が容易に想到し得るものではない。 イ 相違点3’は、(1-2)における相違点3と同様ものであるので、(1-2-1)エで示した検討と同様に、甲1発明2において、相違点3’を構成することは、当業者が容易に想到し得るものではない。 ウ また、本件発明1が奏する効果については、(1-2-1)オで示したように、甲第1~3号証の記載から予測することができるとはいえないものである。 エ 以上のように、本件発明1は、甲1発明2と実質的な相違点2’~3’を有することから、甲第1号証に記載された発明ではない。また、甲1発明2において、相違点2’~3’に係る本件発明1の特定事項とすることは当業者が容易になし得ることではないし、また、本件発明1は、甲第1~3号証から予測できない効果を奏するものであるので、本件発明1は、甲1発明2及び甲第2~3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (2)本件発明2について 本件発明2は本件発明1を引用するものであり、本件発明1の発明特定事項を有し、さらに「質量%にて、更に、Sn:0.5%以下、Sb:0.5%以下の1種または2種含有していることを特徴とする」という、発明特定事項を備えるものである。よって、上記(1)で検討したように、本件発明2も、少なくとも、甲1発明1と相違点1~3で、甲1発明2と相違点2’~3’で実質的に相違し、本件発明1は、甲1発明1又は甲1発明2と甲第2~3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえないから、これと同様に、本件発明2についても、甲1発明1又は甲1発明2と甲第2~3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。 (3)本件発明3について 本件発明3は本件発明1を引用するものであり、本件発明1の発明特定事項の一部を「質量%にて、Si:0.3%以上、Al:1.5%以上、Ti:0.1%以上を含むことを特徴とする」と更に特定するものである。しかしながら、依然として、本件発明3は、上記(1)で検討したように、少なくとも、甲1発明1と相違点1~3で、甲1発明2と相違点2’~3’で実質的に相違することから、甲第1号証に記載された発明ではない。 また、本件発明1は、甲1発明1又は甲1発明2と甲第2~3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、これと同様に、本件発明3についても、甲1発明1又は甲1発明2と甲第2~3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。 (4)本件発明4について (4-1)本件発明4と甲1発明1との対比・判断 ア 本件発明4は本件発明1を引用するものであり、「質量%にて、更に、Ni:1%以下、Cu:1%以下、Mo:2%以下、W:1%以下、Co:0.5%以下、Nb:0.5%以下、V:0.5%以下、Zr:0.5%以下、B:0.005%以下、Ca:0.005%以下、La:0.1%以下、Y:0.1%以下、Hf:0.1%以下、REM:0.1%以下の1種または2種以上含有していることを特徴とする」ものであるから、本件発明4と甲1発明1とを対比すると、両者は、(1-2)で示した相違点1~2で相違する。 イ ここで、(1-2-1)ア~ウで示したように、甲1発明1において、相違点1~2を構成することは、当業者が容易に想到し得ることではないし、(1-2-1)オと同様に、本件発明4が奏する効果についても、甲第1~3号証の記載から予測することができるとはいえない。 ウ したがって、本件発明4は、甲1発明1と相違点1~2を有することから、甲第1号証に記載された発明ではないし、また、また、甲1発明1及び甲第2~3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。 (4-2)本件発明4と甲1発明2との対比・判断 ア 本件発明4は本件発明1を引用するものであり、「質量%にて、更に、Ni:1%以下、Cu:1%以下、Mo:2%以下、W:1%以下、Co:0.5%以下、Nb:0.5%以下、V:0.5%以下、Zr:0.5%以下、B:0.005%以下、Ca:0.005%以下、La:0.1%以下、Y:0.1%以下、Hf:0.1%以下、REM:0.1%以下の1種または2種以上含有していることを特徴とする」ものであるから、本件発明4と甲1発明2とを対比すると、両者は、(1-4)で示した相違点2’で相違する。 イ ここで、(1-4-1)アで示したように、相違点2’は、本件発明4と甲1発明2との実質的な相違点である。また、甲1発明2において、相違点2’を構成することは、当業者が容易に想到し得ることではないし、(1-4-1)ウと同様に、本件発明4が奏する効果についても、甲第1~3号証の記載から予測することができるとはいえない。 ウ したがって、本件発明4は、甲1発明2と実質的な相違点2’を有することから、甲第1号証に記載された発明ではないし、また、また、甲1発明2及び甲第2~3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。 (5)本件発明5について 本件発明5は本件発明1を引用する製造方法に関する発明であり、本件発明1の発明特定事項を有し、さらに、「酸素または水素を含む雰囲気中において、700~1100℃の範囲で熱処理することにより、前記ステンレス鋼材の表面に酸化皮膜を形成することを特徴とする」という、発明特定事項を備えるものである。よって、本件発明5は、上記(1)で検討したように、少なくとも、甲1発明1と相違点1~3で、甲1発明2と相違点2’~3’で実質的に相違することから、甲第1号証に記載された発明ではない。 また、本件発明1が、甲1発明1又は甲1発明2と甲第2~3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、これと同様に、本件発明5についても、甲1発明1又は甲1発明2と甲第2~3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。 第5 むすび したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~5に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本請求項1~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2017-700247

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