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特許異議申立

2021-700555

電解槽、電解装置、電解方法、水素製造方法

審判番号
2021-700555
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2018-564673
登録番号
6797940
請求日
2021年06月08日
審決日
2022年07月01日
公報発行日
2022年09月30日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】旭化成株式会社
  • 【権利者代理人】杉村 憲司
  • 【権利者代理人】神 紘一郎
  • 【異議申立人】山田 宏基
審判長/審判官
  • 審判長 池渕 立
  • 審判官 太田 一平
  • 審判官 井上 猛
分類
P1651.55 -YAA(C25B) / P1651.121-YAA(C25B) / P1651.537-YAA(C25B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第5項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第126条第6項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第17条の2第3項、特許法第126条第4項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第6797940号発明「電解槽、電解装置、電解方法、水素製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6797940号の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7、11~19〕、〔8~9〕、〔10〕について訂正することを認める。 特許第6797940号の請求項1~19に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6797940号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~19に係る特許についての出願は、2018年(平成30年)1月26日(優先権主張 平成29年1月26日 2件)を国際出願日とする出願であって、令和2年11月20日にその特許権の設定登録がなされ、同年12月9日にその特許掲載公報が発行されたものであり、本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和 3年 6月 8日差出 : 特許異議申立人山田宏基(以下、「申立 人」という。)による請求項1~19( 全請求項)に係る特許に対する特許異議 の申立て 令和 3年 9月27日付 : 取消理由通知 令和 3年11月26日 : 特許権者による意見書及び訂正請求書の 提出 令和 4年 2月 4日差出 : 申立人による意見書の提出 第2 令和 3年11月26日提出の訂正請求書に係る訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)について 1 訂正の内容 本件訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は以下のとおりである。なお、下線は当審が付した。「・・・」は記載の省略を表す。以下同じ。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「前記電極室の前記所与の方向の長さAが、0.40m以上4.0m以下であり、前記電極室の前記隔壁に垂直な方向の長さBが、0.0030m以上0.030m以下であり、前記複数の整流板の間隔Cが、0.050m以上0.1m以下であり、前記電極室の前記所与の方向に垂直な面における断面積Dが、0.00050m2以上0.0050m2以下であり、{(2×D)/(B+C)}が、0.015m以上0.050m以下である」と記載されているのを、「前記電極室の前記所与の方向の長さAが、0.40m以上4.0m以下であり、前記電極室の前記隔壁と前記隔膜の間の前記隔壁に垂直な方向の長さBが、0.0030m以上0.030m以下であり、前記複数の整流板の間隔Cが、0.050m以上0.1m以下であり、前記電極室の前記所与の方向に垂直な面における整流板で仕切られた断面積Dが、0.00050m2以上0.0050m2以下であり、{(2×D)/(B+C)}が、0.015m以上0.050m以下である」に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に「前記電極室の前記所与の方向の長さAが、0.40m以上4.0m以下であり、前記電極室の前記隔壁に垂直な方向の長さBが、0.0030m以上0.030m以下であり、前記複数の整流板の間隔Cが、0.050m以上0.1m以下であり、前記電極室の前記所与の方向に垂直な面における断面積Dが、0.00050m2以上0.0050m2以下であり、{(2×D)/(B+C)}が、0.015m以上0.050m以下である」と記載されているのを、「前記電極室の前記所与の方向の長さAが、0.40m以上4.0m以下であり、前記電極室の前記隔壁と前記隔膜の間の前記隔壁に垂直な方向の長さBが、0.0030m以上0.030m以下であり、前記複数の整流板の間隔Cが、0.050m以上0.1m以下であり、前記電極室の前記所与の方向に垂直な面における整流板で仕切られた断面積Dが、0.00050m2以上0.0050m2以下であり、{(2×D)/(B+C)}が、0.015m以上0.050m以下である」に訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項8に「前記電極室の前記隔壁に垂直な方向の長さBが、0.0030m以上0.030m以下であり、」と記載されているのを「前記電極室の前記隔壁と前記隔膜の間の前記隔壁に垂直な方向の長さBが、0.0030m以上0.030m以下であり、」に訂正し、「式(1):Re=Q/(電極室当たりの整流板の数+1)×{(2×D)/(B+C)}/(ν×D)(式中、Qは、電極室当たりの電解液の流量(m3/秒)を示し、νは、電解液の動粘度(m2/秒)を示す)」と記載されているのを「式(1):Re=Q/(電極室当たりの整流板の数+1)×{(2×D)/(B+C)}/(ν×D)(式中、Qは、電極室当たりの電解液の流量(m3/秒)を示し、νは、電解液の動粘度(m2/秒)を示し、Dは前記電極室の前記所与の方向に垂直な面における整流板で仕切られた断面積(m2)を示す)」に訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項10に「前記電極室の前記所与の方向の長さAが、0.40m以上4.0m以下であり、前記電極室の前記隔壁に垂直な方向の長さBが、0.0030m以上0.030m以下であり、前記複数の整流板の間隔Cが、0.050m以上0.1m以下であり、前記電極室の前記所与の方向に垂直な面における断面積Dが、0.00050m2以上0.0050m2以下であり、{(2×D)/(B+C)}が、0.015m以上0.050m以下である」と記載されているのを、「前記電極室の前記所与の方向の長さAが、0.40m以上4.0m以下であり、前記電極室の前記隔壁と前記隔膜の間の前記隔壁に垂直な方向の長さBが、0.0030m以上0.030m以下であり、前記複数の整流板の間隔Cが、0.050m以上0.1m以下であり、前記電極室の前記所与の方向に垂直な面における整流板で仕切られた断面積Dが、0.00050m2以上0.0050m2以下であり、{(2×D)/(B+C)}が、0.015m以上0.050m以下である」に訂正する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項16に「前記陰極及び前記陽極を固定するためのリブが複数取り付けられ、リブピッチが50mm以上150mm以下である、請求項11~15のいずれか1項に記載の電解槽。」と記載されているのを、「前記陰極及び前記陽極を固定するためのリブが複数取り付けられ、リブピッチが50mm以上150mm以下であり、前記リブが前記隔壁に取り付けられ且つ前記陰極又は前記陽極と物理的に接続する整流板である、請求項11~15のいずれか1項に記載の電解槽。」に訂正する。 (6)訂正事項6 明細書の段落【0231】に「隔壁の陽極室側に、高さ25mm、厚み1.5mmのニッケル製の陽極側整流板(陽極側リブ)を5枚、隔壁の陰極室側に、高さ25mm、厚み1.5mmのニッケル製の陰極側整流板(陰極側リブ)を5枚、溶接により、95mmの間隔(外枠-整流板距離は95.5mm)で、取り付けた。」と記載されているのを、「隔壁の陽極室側に、厚み1.5mmのニッケル製の陽極側整流板(陽極側リブ)を5枚、隔壁の陰極室側に、厚み1.5mmのニッケル製の陰極側整流板(陰極側リブ)を5枚、溶接により、95mmの間隔(外枠-整流板距離は95.5mm)で、取り付けた。」に訂正する。 2 訂正の適否 (1)訂正事項1 ア 訂正の目的の適否 訂正事項1に係る請求項1についての訂正は、訂正前の請求項1の「前記電極室の前記隔壁に垂直な方向の長さB」との記載における「長さB」が、どことどこの間の長さを意味しているのかについて、「隔壁」と「隔膜」の間の長さであると明瞭にするものであり、さらに、訂正前の請求項1の「前記電極室の前記所与の方向に垂直な面における断面積D」との記載における「断面積D」が、「前記電極室の前記所与の方向に垂直な面」内の具体的にどの領域の面積を意味しているのかについて、「整流板で仕切られた」領域であると明瞭にするものである。 したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。 イ 新規事項の有無 (ア)本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件明細書等」という。)には、以下の事項が記載されている。 a 「 【0023】 【図1】 本実施形態のアルカリ水電解用複極式電解槽の一例の全体について示す側面図である。 【図2】 本実施形態のアルカリ水電解用複極式電解槽の一例のゼロギャップ構造を図1に示す破線四角枠の部分について示す側面図である。 【図3】 本実施形態のアルカリ水電解用複極式電解槽の一例の電極室部分について示す平面図である。・・・」 b 「 【0027】 そして、本実施形態における複極式電解槽50では、隔壁1と外枠3と隔膜4とにより電解液が通過する電極室5が画成されており、電極室5には隔壁1に沿う所与の方向D1に対して平行に配置される複数の整流板6が設けられている(図2、図3参照)。言い換えれば、電極室5には互いに平行に並べられた複数の整流板6が隔壁1に沿う所与の方向D1に平行に設けられている(図2、図3参照)。」 c 「 【0047】 特に、図1~図3に示した例では、複数の整流板6が、隔壁1に沿う所与の方向D1(図示の例では、電解液通過方向)に垂直な方向に、一定の間隔(ピッチ)で設けられている。 【0048】 また、一例の複極式電解槽50では、整流板6は、電極室5の高さとほぼ同じ長さを有し、隔壁1に垂直に設けられている。整流板6は、必須ではないが、電解槽の重量を削減する等の目的で、隔壁1に沿う所与の方向D1(図示の例では、電解液通過方向)について所定のピッチで貫通孔を有している。 【0049】 ここで、本実施形態のアルカリ水電解用複極式電解槽50では、電極室5の隔壁に沿う所与の方向の長さAが、0.40m以上4.0m以下であり、電極室5の隔壁1に垂直な方向の長さBが、0.0030m以上0.030m以下であり、複数の整流板6の間隔Cが、0.050m以上0.19m以下である。」 d 「 【0055】 なお、上記断面積Dは、電極室5の隔壁1に沿う所与の方向D1に垂直な面における断面形状が略矩形である場合、(前述の長さB)×(前述の間隔C)としてよい。 また、上記{(2×D)/(B+C)}は、一般的に前記断面形状が略矩形である場合、水力直径Dhを示すものであり、断面積Dと合わせて流体の流れ状態に相関する因子である。」 e 「 【0187】 なお、式(3)中のA、B、C、Dは、本実施形態の複極式電解槽50について定めた値であり、具体的には、Aは、電極室5の隔壁1に沿う所与の方向D1の長さであり、Bは、電極室5の電極2に垂直な方向の長さであり、Cは、複数の整流板6の間隔であり、Dは、B×Cで表される、電極室5の隔壁1に沿う所与の方向D1に垂直な面における断面積である。 そして、A、B、C、Dの好適範囲は、本実施形態の複極式電解槽50について前述のとおりとしてよい。すなわち、電解セルのA、B、C、Dの設計に応じて、電極室当たりの電解液の流量Qを、電解液レイノルズ数Reが10~1800の範囲になるように、制御すればよい。」 f 「 【図2】 [図:0001388360000001.jpg] 」 g 「 【図3】 [図:0001388360000002.jpg] 」 (イ)上記(ア)a~c、fから、上記「長さB」は、「隔壁1と外枠3と隔膜4とにより」「画成される」「電解液が通過する電極室5」の「隔壁1に垂直な方向の長さB」であるから、「隔壁1」と「隔膜4」の間の長さを意味していると認められる。 (ウ)また、上記(ア)a、c~gから、上記「断面積D」は、電極室5の隔壁1に沿う所与の方向D1に垂直な面における断面形状が略矩形である場合に、上記「長さB」×「複数の整流板6の間隔C」と規定されるものであるから、「電極室5」の「所与の方向D1」に垂直な面における、間隔Cで設けられた「複数の整流板6」で仕切られた領域の面積を意味していると認められる。 (エ)したがって、訂正事項1に係る請求項1についての訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項1に係る請求項1についての訂正は、発明特定事項である「前記電極室の前記隔壁に垂直な方向の長さB」及び「前記電極室の前記所与の方向に垂直な面における断面積D」の条件を限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。 (2)訂正事項2 ア 訂正の目的の適否 上記(1)アと同様の理由で、訂正事項2に係る請求項2についての訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。 イ 新規事項の有無 上記(1)イと同様の理由で、訂正事項2に係る請求項2についての訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記(1)ウと同様の理由で、訂正事項2に係る請求項2についての訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。 (3)訂正事項3 ア 訂正の目的の適否 上記(1)アと同様の理由で、訂正事項3に係る請求項8についての訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。 イ 新規事項の有無 上記(1)イと同様の理由で、訂正事項3に係る請求項8についての訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記(1)ウと同様の理由で、訂正事項3に係る請求項8についての訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。 (4)訂正事項4 ア 訂正の目的の適否 上記(1)アと同様の理由で、訂正事項4に係る請求項10についての訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。 イ 新規事項の有無 上記(1)イと同様の理由で、訂正事項4に係る請求項10についての訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記(1)ウと同様の理由で、訂正事項4に係る請求項10についての訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。 (5)訂正事項5 ア 訂正の目的の適否 訂正事項5に係る請求項16についての訂正は、訂正前の請求項16における「リブ」が、訂正前の請求項1、2に記載された「整流板」と同一の構成であるか否か不明であった点について、「整流板」と同一の構成であることを明瞭にするものである。 したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。 イ 新規事項の有無 (ア)本件明細書等には、以下の事項が記載されている。 a 「 【0146】 -整流板- 本実施形態のアルカリ水電解用複極式電解槽50では、隔壁1に整流板6(陽極整流板6a、陰極整流板6c)が取り付けられ、整流板6が電極2と物理的に接続されていることが好ましい。かかる構成によれば、整流板6が電極2の支持体(リブ)となり、ゼロギャップ構造Zを維持しやすい。また、整流板6は隔壁1と電気的につながっていることが好ましい。また、整流板6を設けることでは、電極室5内における気液の流れの乱れにより電極室に生じる対流を低減して、局所的な電解液の温度の上昇を抑制することができる。・・・」 b 「 【0152】 隣接する陽極整流板6a同士の間隔、又は隣接する陰極整流板6c同士の間隔は、電解圧力や陽極室5aと陰極室5cの圧力差等を勘案して決められる。 隣接する整流板間の間隔Cは、50mm以上190mm以下であり、より好ましくは50mm以上150mm以下であり、さらに好ましくは60mm以上120mm以下である。陽極整流板6a同士の間隔、又は隣接する陰極整流板6c同士の間隔が狭すぎれば電解液やガスの流動を阻害するだけでなくコストも高くなる欠点がある。整流板を電極と接続されたリブとする場合、リブピッチが50mm以上であると、電極裏面へのガス抜けが良好となる。また広すぎると、陽極室5aと陰極室5cとのわずかな差圧で保持している電極2(陽極2aや陰極2c)が変形する等の欠点が生じる。リブピッチが150mm以下であると電極がたわみにくくなる。 リブピッチは、複数の整流板が一定の間隔(ピッチ)で設けられている場合には、その間隔(ピッチ)をいい(図3参照)、複数の整流板が一定の間隔(ピッチ)で設けられていない場合には、設けられた複数の整流板同士の間隔の平均をいう。また、隣接する2つの整流板間においてその間隔が整流板の延在方向について変化している(一定でない)場合には、当該隣接する2つの整流板間の間隔の平均としてよい。」 (イ)上記(ア)a~bから、訂正事項5に係る請求項16についての訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項5に係る請求項16についての訂正は、発明特定事項である「前記陰極及び前記陽極を固定するためのリブが複数取り付けられ、リブピッチが50mm以上150mm以下である」における「リブピッチが50mm以上150mm以下である」「複数」の「リブ」の態様を限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。 (6)訂正事項6 ア 訂正の目的の適否 (ア)訂正事項6に係る明細書の段落【0231】についての訂正は、訂正前の明細書の段落【0231】に記載される「高さ25mm、」との記載を削除するものである。 (イ)ここで、訂正前の明細書には、以下の事項が記載されている。 a 「 【0234】 -電解室- 電極室の隔壁に垂直な方向の長さ(電極室の深さ)は、陽極室で25mmであり、陰極室で25mmであった。 【0235】 -ゼロギャップ構造- 前述のとおり、複極式電解槽を組み立てることによって、図2に示すような、陰極と陽極とを隔膜の両側から押し付けて接触させ、ゼロギャップ構造を形成した。 陽極側では陽極のみを用い、陰極側は「陰極-導電性弾性体-集電体」の組み合わせを用い、ゼロギャップ構造の詳細は、実施例A1と同様とした。」 b 「 【図2】 [図:0001388360000003.jpg] 」 (ウ)上記(1)イにおいて検討したように、上記(イ)aにおける「電極室の隔壁に垂直な方向の長さ」(長さB)は、隔壁と隔膜の間の長さを意味しているから、上記(イ)aにおける「25mm」は、上記(イ)bにおける隔壁1と隔膜4の間の長さということになる。 (エ)一方、上記(イ)a、bから明らかなように、隔壁1と隔膜4の間には、「陽極2a」や、「陰極2c」、「導電性弾性体2e」、及び「集電体2r」が存在する。そして、「陽極2a」、「陰極2c」、「導電性弾性体2e」、及び「集電体2r」のそれぞれの厚みが0でないことは明らかであるから、隔壁1と隔膜4の間で取り付け可能となる整流板の長さは、上記「隔壁1と隔膜4の間の長さ」(25mm)よりも小さくなることも明らかである。 (オ)そうすると、取り付け可能となる整流板の長さが25mmより小さいのに、高さ25mmの整流板を取り付けたとする訂正前の明細書の段落【0231】は、明らかな矛盾を含むものである。 (カ)したがって、訂正事項6に係る明細書の段落【0231】についての訂正は、上記矛盾を生じさせている「高さ25mm、」との誤記を訂正するものであると認められる。 (キ)以上から、訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものに該当する。 イ 新規事項の有無 訂正事項6は、訂正前の明細書の段落【0231】の誤記を削除するものであるから、本件明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項6は、訂正前の明細書の段落【0231】の誤記を訂正するものであり、訂正事項1~5で訂正された特許請求の範囲との対応関係を明瞭にするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第4項及び第6項に適合する。 (7)一群の請求項について ア 請求項3~7、11~19は、それぞれ、請求項1を直接又は間接的に引用しており、請求項1に連動して訂正される。 また、請求項3~7、11~19は、それぞれ、請求項2を直接又は間接的に引用しており、請求項2に連動して訂正される。 したがって、共通の請求項3~7、11~19を有するこれらは組み合わされ、1つの一群の請求項になるため、最終的に、本件訂正前の請求項1~7、11~19は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 イ 請求項9が請求項8を直接的に引用しており、請求項8に連動して訂正されるから、本件訂正前の請求項8~9は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 ウ そして、本件訂正請求は、上記一群の請求項〔1~7、11~19〕、〔8~9〕と単一の請求項〔10〕についてされたものであるから、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。 エ そして、本件訂正は、請求項間の引用関係の解消を目的とするものではなく、特定の請求項に係る訂正事項について別の訂正単位とする求めもないから、訂正後の請求項〔1~7、11~19〕、〔8~9〕、〔10〕を訂正単位として訂正の請求をするものである。 (7)独立特許要件について 特許異議の申立ては、訂正前の全ての請求項である請求項1~19に対してされているので、訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。 (8)明細書の訂正に関係する請求項 訂正事項6は、本件特許の実施例における誤記を訂正するものであるから、訂正前の請求項1~19に対応する明細書の記載を訂正するものであるといえる。 そうすると、本件訂正請求は、訂正前の全ての請求項である請求項1~19を請求の対象としているのであるから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するものである。 3 本件訂正請求についての結言 上記のとおり、本件訂正による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において読み替えて準用する同法第126条第4項乃至第6項の規定に適合するものである。 したがって、明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7、11~19〕、〔8~9〕、〔10〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 上記第2で検討したとおり、本件訂正は適法になされたものであるから、本件訂正請求により訂正された請求項1~19に係る発明(以下、「本件発明1」等といい、総称して「本件発明」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~19に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。 「 【請求項1】 陽極と、陰極と、前記陽極と前記陰極とを隔離する隔壁と、前記隔壁を縁取る外枠とを備える複数のエレメントが隔膜を挟んで重ね合わせられ、前記隔膜が前記陽極及び前記陰極と接触してゼロギャップ構造が形成され、前記隔壁と前記外枠と前記隔膜とにより画成される電極室に互いに平行に並べられた複数の整流板が前記隔壁に沿う所与の方向に平行に設けられた電解槽であり、 前記電極室の前記所与の方向の長さAが、0.40m以上4.0m以下であり、前記電極室の前記隔壁と前記隔膜の間の前記隔壁に垂直な方向の長さBが、0.0030m以上0.030m以下であり、前記複数の整流板の間隔Cが、0.050m以上0.1m以下であり、 前記電極室の前記所与の方向に垂直な面における整流板で仕切られた断面積Dが、0.00050m2以上0.0050m2以下であり、{(2×D)/(B+C)}が、0.015m以上0.050m以下である、 ことを特徴とする、電解槽。 【請求項2】 陽極と、陰極と、前記陽極と前記陰極とを隔離する隔壁と、前記隔壁を縁取る外枠とを備える複数のエレメントが隔膜を挟んで重ね合わせられ、前記隔膜が前記陽極及び前記陰極と接触してゼロギャップ構造が形成され、前記隔壁と前記外枠と前記隔膜とにより画成される電極室に互いに平行に並べられた複数の整流板が前記隔壁に沿う所与の方向に平行に設けられた電解槽であり、 前記電極室の前記所与の方向の長さAが、0.40m以上4.0m以下であり、前記電極室の前記隔壁と前記隔膜の間の前記隔壁に垂直な方向の長さBが、0.0030m以上0.030m以下であり、前記複数の整流板の間隔Cが、0.050m以上0.1m以下であり、 前記電極室の前記所与の方向に垂直な面における整流板で仕切られた断面積Dが、0.00050m2以上0.0050m2以下であり、{(2×D)/(B+C)}が、0.015m以上0.050m以下である、 ことを特徴とする、アルカリ水電解用電解槽。 【請求項3】 前記整流板の少なくとも一部が導電性を有し、前記整流板が前記電極と物理的及び電気的に接続されている、請求項1又は2に記載の電解槽。 【請求項4】 隣接する前記エレメント間において前記外枠同士の間に前記隔膜を有するガスケットが挟持され、前記ガスケットは、厚みが3.0mm~10mm、100%変形時の弾性率が1.0MPa~10MPaである、請求項1~3のいずれか一項に記載の電解槽。 【請求項5】 前記陽極又は前記陰極と前記隔壁との間に、導電性弾性体及び集電体が、前記導電性弾性体が前記陽極又は前記陰極と前記集電体とに挟まれるように、設けられている、請求項1~4のいずれか一項に記載の電解槽。 【請求項6】 前記導電性弾性体が、ニッケル製のクッションマットである、請求項5に記載の電解槽。 【請求項7】 請求項1~6のいずれか一項に記載の電解槽と、電解液を循環させるための送液ポンプと、電解液と水素及び/又は酸素とを分離する気液分離タンクと、水を補給するための水補給器とを含むことを特徴とする、電解装置。 【請求項8】 陽極と、陰極と、前記陽極と前記陰極とを隔離する隔壁と、前記隔壁を縁取る外枠とを備える複数のエレメントが隔膜を挟んで重ね合わせられ、前記隔膜が前記陽極及び前記陰極と接触してゼロギャップ構造が形成され、前記隔壁と前記外枠と前記隔膜とにより画成される電極室に互いに平行に並べられた複数の整流板が前記隔壁に沿う所与の方向に平行に設けられた電解槽であり、前記電極室の前記所与の方向の長さAが、0.40m以上4.0m以下であり、前記電極室の前記隔壁と前記隔膜の間の前記隔壁に垂直な方向の長さBが、0.0030m以上0.030m以下であり、前記複数の整流板の間隔Cが、0.050m以上0.19m以下である、アルカリ水電解用電解槽と、電解液を循環させるための送液ポンプと、電解液と水素及び/又は酸素とを分離する気液分離タンクと、水を補給するための水補給器とを含む、電解装置を用いて、下記式(1) 式(1):Re=Q/(電極室当たりの整流板の数+1)×{(2×D)/(B+C)}/(ν×D) (式中、Qは、電極室当たりの電解液の流量(m3/秒)を示し、νは、電解液の動粘度(m2/秒)を示し、Dは前記電極室の前記所与の方向に垂直な面における整流板で仕切られた断面積(m2)を示す) から算出される電解液レイノルズ数Reを10~1800として電解液を循環させることによって電解を行う ことを特徴とする、水電解方法。 【請求項9】 前記電解槽内の前記電解液の温度を、80℃~130℃とする、請求項8に記載の水電解方法。 【請求項10】 アルカリを含有する水を電解槽により水電解し、水素を製造する水素製造方法において、 前記電解槽は、陽極と、陰極と、前記陽極と前記陰極とを隔離する隔壁と、前記隔壁を縁取る外枠とを備える複数のエレメントが隔膜を挟んで重ね合わせられ、前記隔膜が前記陽極及び前記陰極と接触しており、前記隔壁と前記外枠と前記隔膜とにより画成される電極室に互いに平行に並べられた複数の整流板が前記隔壁に沿う所与の方向に平行に設けられた電解槽であり、 前記電極室の前記所与の方向の長さAが、0.40m以上4.0m以下であり、前記電極室の前記隔壁と前記隔膜の間の前記隔壁に垂直な方向の長さBが、0.0030m以上0.030m以下であり、前記複数の整流板の間隔Cが、0.050m以上0.1m以下であり、 前記電極室の前記所与の方向に垂直な面における整流板で仕切られた断面積Dが、0.00050m2以上0.0050m2以下であり、{(2×D)/(B+C)}が、0.015m以上0.050m以下である、 ことを特徴とする、水素製造方法。 【請求項11】 前記陽極及び前記陰極を含む複数の前記エレメントが、多孔膜である前記隔膜を挟んで重ね合わされ、 前記陰極と、前記陰極の隔膜側とは反対側に順に設けられた前記導電性弾性体及び陰極集電体とを含む陰極複合体、及び/又は、前記陽極と、前記陽極の隔膜側とは反対側に順に設けられた前記導電性弾性体及び陽極集電体とを含む陽極複合体、を備えており、 前記陽極と前記陰極集電体との距離及び/又は前記陰極と前記陽極集電体との距離が1.0mm以上6.0mm以下であり、 前記導電性弾性体の密度が0.1g/cm3以上4.5g/cm3以下であり、 前記ゼロギャップ構造において、前記隔膜と、前記陽極及び/又は前記陰極との間にかかる面圧が8kN/m2以上100kN/m2以下である、 ことを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の電解槽。 【請求項12】 前記導電性弾性体の線径が0.1mm以上0.5mm以下である、請求項11に記載の電解槽。 【請求項13】 前記隔膜の平均透水孔径が0.01μm以上1.0μm以下である、請求項11又は12に記載の電解槽。 【請求項14】 前記隔膜の厚みが100μm以上600μm以下である、請求項11~13のいずれか1項に記載の電解槽。 【請求項15】 前記隔膜の気孔率が30%以上70%以下である、請求項11~14のいずれか1項に記載の電解槽。 【請求項16】 前記陰極及び前記陽極を固定するためのリブが複数取り付けられ、リブピッチが50mm以上150mm以下であり、 前記リブが前記隔壁に取り付けられ且つ前記陰極又は前記陽極と物理的に接続する整流板である、請求項11~15のいずれか1項に記載の電解槽。 【請求項17】 前記エレメントの通電面の面積S1が0.1m2以上10m2以下である、請求項11~16のいずれか1項に記載の電解槽。 【請求項18】 前記エレメントの厚みdが10mm以上100mm以下である、請求項11~17のいずれか1項に記載の電解槽。 【請求項19】 電解セルを50個以上500個以下含む、請求項11~18のいずれか1項に記載の電解槽。」 第4 特許異議申立理由について 1 申立理由の概要 申立人は、証拠方法として、いずれも本願優先日前に日本国内または外国において頒布された、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記2に示す甲第1号証~甲第9号証(以下、「甲1」~「甲9」という。)を提出し、以下の申立理由1~4により、本件訂正前の請求項1~19に係る本件特許は取り消されるべきものである旨主張している。 (1)申立理由1(進歩性) ア 本件訂正前の請求項1、2、8、10に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲2~甲5に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本件訂正前の請求項1、2、8、10に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。 イ 本件訂正前の請求項3~7、9、11~19に係る発明は、甲1に記載された発明並びに甲2~甲5及び甲7~甲9に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本件訂正前の請求項3~7、9、11~19に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。 (2)申立理由2(新規事項) 令和 2年 6月17日提出の手続補正書でした補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしておらず、本件訂正前の請求項1、2、10に係る特許は、同法第113条第1号に該当し取り消されるべきものである。 (3)申立理由3(サポート要件) ア 本件訂正前の請求項1、3~6、11~19に係る発明は、「電解槽」の発明であるが、発明の詳細な説明には、アルカリ水電解に使用する電解槽(アルカリ水電解用電解槽)が記載されているに過ぎず、アルカリ水電解用以外に使用する電解槽に関しては記載されていないから、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、本件訂正前の請求項1、3~6、11~19に係る特許は、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。 イ 本件訂正前の請求項1、2、8、10に係る発明は、電極室の所与の方向の長さAの数値範囲は「0.40m以上4.0m以下」と規定されているが、発明の詳細な説明には、長さAの数値範囲の上限値付近の実施例が欠落しており、その数値範囲の全体に渡って本件発明の課題を解決することができると当業者が認識できるように記載されたものでないから、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、本件訂正前の請求項1、2、8、10に係る特許は、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。 ウ 本件訂正前の請求項1、2、10に係る発明は、電極室の所与の方向に垂直な面積におけるDは「0.00050m2以上0.0050m2以下」と規定されているが、発明の詳細な説明には、断面積Dの数値範囲の下限値付近及び上限値付近の実施例が欠落しており、その数値範囲の全体に渡って本件発明の課題を解決することができると当業者が認識できるように記載されたものでないから、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、本件訂正前の請求項1、2、10に係る特許は、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。 (4)申立理由4(明確性) 本件訂正前の請求項1、2、10に係る発明は、発明特定事項の内容に技術的な欠陥があり、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に適合するものではないから、本件訂正前の請求項1、2、10に係る特許は、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。 2 証拠方法 甲1:国際公開第2013/191140号 甲2:特開2000-144467号公報 甲3:特開平8-100286号公報 甲4:特開2010-111947号公報 甲5:疋田晴夫、改定新版化学工学通論I、初版、第19刷、株式会社朝倉書店、1995年4月20日、第33頁~第39頁 甲6:吉田広志、特許法における補正・訂正に関する裁判例の分析と提言(2・完)-新規事項追加禁止を中心に-、知的財産法政策学研究、北海道大学情報法政策学研究センター、2009年3月26日、第22号、第87頁~第136頁 甲7:特開昭51-068477号公報 甲8:特開2014-009385号公報 甲9:特開2016-094650号公報 第5 取消理由について 本件訂正前の請求項1~19に係る特許に対して、令和 3年 9月27日付けで通知した取消理由通知により、当審が特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。 (1)取消理由1(明確性) ア 本件訂正前の請求項1、2、8、10には、「前記電極室の前記隔壁に垂直な方向の長さB」と記載されているが、「長さB」とは、「電極室」におけるどことどこの間の「隔壁に垂直な方向の長さ」を意味しているのか不明である。 したがって、本件訂正前の請求項1、2、8、10及び本件訂正前の請求項1、2、8を直接または間接的に引用する本件訂正前の請求項3~7、9、11~19に係る発明は、明確でないから、同発明に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 イ 本件訂正前の請求項1、2、10には、「前記電極室の前記所与の方向に垂直な面における断面積D」と記載されており、「断面積D」が「所与の方向に垂直な面」における「電極室」の領域の面積であって、当該領域は、「電極室」の隔壁に垂直な方向(長さBの方向)における両端部と、「電極室」の所与の方向に垂直かつ隔壁に沿う方向(間隔Cの方向)の両端部とによって囲まれた領域であると認められる。 しかし、 (ア)上記アと同様の理由で、「電極室」の「隔壁に垂直な方向の長さ」(長さB)がどのように定まるのか不明であり、 (イ)「電極室」の所与の方向と垂直かつ隔壁に沿う方向(間隔Cの方向)の距離、すなわち、「所与の方向に垂直な面」のうち「断面積D」を求めるための隔壁に沿う方向の長さは、どことどこの間の長さであるのかも不明である。 そのため、結果として、「断面積D」がどのように定まるのかも不明である。 したがって、本件訂正前の請求項1、2、10及び本件訂正前の請求項1、2、10を直接または間接的に引用する本件訂正前の請求項3~7、11~19に係る発明は、明確でないから、同発明に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 ウ 本件訂正前の請求項8には、 「式(1):Re=Q/(電極室当たりの整流板の数+1)×{(2×D)/(B+C)}/(ν×D) (式中、Qは、電極室当たりの電解液の流量(m3/秒)を示し、νは、電解液の動粘度(m2/秒)を示す)」 と記載されているが、「D」が何の値を表すのか特定されておらず不明である。 したがって、本件訂正前の請求項8及び本件訂正前の請求項8を引用する本件訂正前の請求項9に係る発明は、明確でないから、同発明に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 エ 本件訂正前の請求項16には、「前記陰極及び前記陽極を固定するためのリブが複数取り付けられ、リブピッチが50mm以上150mm以下である」と記載されているが、「リブ」とは、同項が間接的に引用する本件訂正前の請求項1、2に記載された「整流板」と同一の構成であるのか、それとも「リブ」は前記「整流板」とは別の構成であるのかが不明である。 したがって、本件訂正前の請求項16及び本件訂正前の請求項16を直接または間接的に引用する本件訂正前の請求項17~19に係る発明は、明確でないから、同発明に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 第6 当審の判断 当審は、本件訂正請求により訂正された本件発明について、当審による取消理由はいずれも解消し、また、申立人が主張するその余の申立理由によっても、本件特許を取り消すことはできないと判断する。 1 取消理由1のア(明確性)について 本件訂正によって、本件発明1、2、8、10では、「電極室の」「隔壁に垂直な方向の長さB」が、「前記隔壁と前記隔膜の間」と特定された。 そのため、本件発明1、2、8、10では、電極室の隔壁に垂直な方向の長さBが、隔壁と隔膜の間の長さを意味することが明確になった。 したがって、上記取消理由1のアは、解消した。 2 取消理由1のイ(明確性)について 本件訂正によって、本件発明1、2、10では、 (1)「電極室の」「隔壁に垂直な方向の長さB」が、「前記隔壁と前記隔膜の間」と特定され、 (2)「電極室の」「所与の方向に垂直な面」における「断面積D」が、「整流板で仕切られた」部分であると特定された。 そうすると、本件発明1、2、10では、 (3)「断面積D」を求めるための「電極室の」「隔壁に垂直な方向の長さB」が、隔壁と隔膜の間の長さであること、及び (4)「所与の方向に垂直な面」のうち「断面積D」を求めるための隔壁に沿う方向の長さは、複数の隣接する整流板同士の間の長さ(間隔C)であること、 が明確となった。 したがって、「断面積D」がどのように定まるのかも、明確となった。 よって、上記取消理由1のイは、解消した。 3 取消理由1のウ(明確性)について 本件訂正によって、本件発明8では、「Dは前記電極室の前記所与の方向に垂直な面における整流板で仕切られた断面積(m2)を示す」ことが特定された。 そのため、本件発明8では、「D」が、電極室の所与の方向に垂直な面における整流板で仕切られた断面積(m2)の値を表すことが明確となった。 よって、上記取消理由1のウは、解消した。 4 取消理由1のエ(明確性)について 本件訂正によって、本件発明16では、「前記リブが前記隔壁に取り付けられ且つ前記陰極又は前記陽極と物理的に接続する整流板である」ことが特定された。 そのため、本件発明16では、「リブ」が「整流板」であることが明確となった。 よって、上記取消理由1のエは、解消した。 5 申立理由1のア(進歩性)について (1)甲1の記載、及び甲1に記載された発明 ア 甲1には、「複極式アルカリ水電解ユニット、及び電解槽」(発明の名称)に関して、次の記載がある。 (ア) 「 【請求項1】 アルカリ水からなる電解液を電解して酸素及び水素を得る電解槽を構成する複極式アルカリ水電解ユニットであって、 前記複極式アルカリ水電解ユニットは、 酸素発生用の多孔質体からなる陽極と、 水素発生用の陰極と、 前記陽極と前記陰極とを区画する導電性隔壁と、 前記導電性隔壁を取り囲む外枠と、を備え、 前記導電性隔壁及び/又は前記外枠の上部には、ガス及び電解液の通過部が設けられており、 前記導電性隔壁及び/又は前記外枠の下部には、電解液の通過部が設けられていることを特徴とする複極式アルカリ水電解ユニット。 【請求項2】 前記陽極又は陰極は、導電性弾性体を介して、前記導電性隔壁に支持されていることを特徴とする請求項1記載の複極式アルカリ水電解ユニット。 【請求項3】 前記陽極又は陰極は、導電性支持体を介して、前記導電性隔壁に支持されていることを特徴とする請求項1記載の複極式アルカリ水電解ユニット。」 (イ) 「 【請求項12】 前記導電性隔壁から延び、少なくとも前記外枠の一部を覆う金属薄板部を備え、 前記外枠は、前記金属薄板部に固定されて一体構造となることを特徴とする請求項1~11のいずれか一項に記載の複極式アルカリ水電解ユニット。 【請求項13】 前記金属薄板部は、前記陽極側で前記外枠に重なる陽極側フランジパンと、前記陰極側で前記外枠に重なる陰極側フランジパンと、を有し、 前記外枠は、前記陽極側フランジパンのフランジ部と前記陰極側フランジパンのフランジ部との間に挟まれており、 前記導電性隔壁の前記陽極側の表面を含む陽極側基準面から前記陽極側フランジパンのフランジ面までの間隔、及び、前記導電性隔壁の前記陰極側の表面を含む陰極側基準面から前記陰極側フランジパンのフランジ面までの間隔が、5mm以上40mm以下であることを特徴とする請求項12記載の複極式アルカリ水電解ユニット。」 (ウ)「 【請求項15】 前記外枠の陽極側表面と隔壁の陽極側表面までの間隔及び前記外枠の陰極側表面と隔壁の陰極側表面までの間隔が、5mm以上40mm以下であることを特徴とする請求項1~11又は14のいずれか一項に記載の複極式アルカリ水電解ユニット。」 (エ)「 【請求項23】 前記導電性隔壁には、前記陽極、前記陰極、又は前記集電体を固定するためのリブが取り付けられていることを特徴とする請求項19~21のいずれか一項に記載の複極式アルカリ水電解ユニット。」 (オ)「 【請求項26】 アルカリ水からなる電解液を電解して酸素、及び水素を得るための電解槽であって、 請求項1~25のいずれか一項に記載の複数の複極式アルカリ水電解ユニットと、 陽極用給電端子及び陽極が設けられた陽極ターミナルユニットと、 陰極用給電端子及び陰極が設けられた陰極ターミナルユニットと、 複数のイオン透過性隔膜と、を備え、 前記複極式アルカリ水電解ユニットは、前記陽極ターミナルユニットと前記陰極ターミナルユニットとの間に配置され、 前記イオン透過性隔膜は、前記陽極ターミナルユニットと前記複極式アルカリ水電解ユニットとの間、隣接して並ぶ複極式アルカリ水電解ユニット同士の間、及び前記複極式アルカリ水電解ユニットと前記陰極ターミナルユニットとの間に配置されることを特徴とする電解槽。」 (カ)「 【0007】 電解により水素を製造する方法としては、アルカリ水電解装置は、他の水電解装置に比べると設備費が安価であること、すでに商業プラントとして実績があることなどから、大規模水素製造装置として期待されている。しかし、再生可能エネルギーのような短時間で電圧や電流が大きく変動する電力を用いて、従来以上に設備コストが安く、性能の良いアルカリ水電解装置とするにはまだ多くの課題がある。 【0008】 アルカリ水電解において、性能を向上させるためには、エネルギーロスを削減することが重要である。エネルギーロスとしては、陰極の過電圧、陽極の過電圧、隔膜のオーム損、電解液によるオーム損、電解セルの構造抵抗によるオーム損などがあげられる。これらのロスを削減し、電解ユニットの構造を改良することにより電解電流密度を高くすることができれば、設備も小型化できるので建設費も大幅に削減できる。しかし、従来のアルカリ水電解の電流密度は「非特許文献2」に示されるように、1340A/m2~2000A/m2と低く、そのため電解セルの数も多く設備が大型化し、設備コストが高かった。また、バイポーラプレートを用いているので大きな負荷変動のある不安定電源を用いて電解する場合ガス抜けが悪くなる等の可能性もあり、更には電極が劣化する可能性もある。」 (キ)「 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0018】 上述の通り、従来の電解槽では、大型のアルカリ水電解ユニットにおいては、不安定な電源を用いて、高電流密度低電圧で安定した電解を行うことが難しばかりでなく、電解槽の組み立てが面倒で、設備コストも高くなり易かった。 【0019】 本発明は、隔壁、電極、外枠を一体で備えることにより高電流密度電解を可能にするだけでなく、電解槽の組み立てを簡便にすることを目的としている。その結果、電極面積が1セル当たり0.1m2から3m2以上の大型電解槽でも安定した電解を行うことができる。また、設備費が安く、安定した電解を行うことのできる複極式アルカリ水電解ユニット、及び電解槽を提供することができる。」 (ク)「 【課題を解決するための手段】 【0020】 本発明者等は、鋭意検討した結果、複極式アルカリ水電解ユニットの隔壁を取り囲む外枠を設けることにより3kA/m2以上の高電流密度で電解しても、イオン透過性隔膜や電極(陽極及び陰極)を破損せず、簡便に組みたて可能で、設備費も抑えることができることを知見して本発明に至った。 【0021】 すなわち、本発明の一側面に係る複極式アルカリ水電解ユニットは、アルカリ水からなる電解液を電解して酸素、及び水素を得るための電解槽に組み込まれる複極式アルカリ水電解ユニットであって、酸素発生用の多孔質体からなる陽極と、水素発生用の陰極と、陽極と陰極とを区画する導電性隔壁と、導電性隔壁を取り囲む外枠と、を備え、導電性隔壁及び/又は外枠の上部には、ガス及び電解液の通過部が設けられており、導電性隔壁及び/又は外枠の下部には、電解液の通過部が設けられていることを特徴とする。」 (ケ)「 【0033】 一実施形態においては、導電性隔壁から延び、少なくとも外枠の一部を覆う金属薄板部を備え、外枠は、金属薄板部に固定されて一体構造となっていてもよい。このように、アルカリ水電解ユニットでは、陽極と陰極及び導電性隔壁と外枠とが一体構造となっているので、例えば、複極式アルカリ水電解ユニットを多数配置し、その各々間にイオン透過性隔膜、ガスケットを挟んで電解槽を構成する際に、構成部品が少ない分、電解槽の確実な組み立てを非常に簡便に行うことができる。また、電解槽の組み立てを確実に行えるということは、導電性隔壁、外枠、陽極等で構成される陽極室空間、導電性隔壁、外枠、陰極等により構成される陰極室空間を、精度良く確保し易くなる。また、ガスの滞留の抑制、電解液と発生ガスを抜き出す際の圧力損失の低減にも効果的であり、高電流密度での電解を実現し易くなる。その結果、所望の水素発生量を確保できる電解槽を製造する際のアルカリ水電解ユニットの数を減少でき、設備コストの削減にもつながる。 【0034】 上記構成において、導電性隔壁と陰極又は陽極との間に配置されると共に、導電性隔壁に対して陽極や陰極を移動可能に支持する導電性の弾性体を備えるようにして、ゼロギャップ構造を実現することも可能である。電解槽を形成するために、隣接するアルカリ水電解ユニット同士の間にイオン透過性隔膜を配置し、一方のアルカリ水電解ユニットの陰極と他方のアルカリ水電解ユニットの陽極とでイオン透過性隔膜を挟み付けた場合に、導電性隔壁に対して陰極又は陽極を移動可能に支持する導電性の弾性体を備えることで、陰極、イオン透過性隔膜、及び陽極を均一に密着できる。その結果、発生するガスは陰極や陽極の背面から抵抗なく抜き出せるだけでなく、気泡の滞留や、発生ガスを払い出す際の振動などを防止でき、電解電圧が非常に低い状態で安定した電解が長期間に渡り可能となる。」 (コ)「 【0045】 一実施形態においては、導電性隔壁には、陽極、陰極、又は集電体を固定するためのリブが取り付けられていてもよい。」 (サ)「 【0054】 (電解槽の構成) 図1~図3及び図11~図12に示されるように、本実施形態に係る電解槽100は、アルカリ水からなる電解液を電解して酸素、及び水素を得るための装置であり、電解槽100は各部材によって構成される電解セル101を備え、電解セル101は、タイロッド15(図2参照)で締め付けられることで各部材が一体化されている。 【0055】 電解セル101は、端からプレスフランジ5、プレスフランジガスケット6、及び陽極ターミナルユニット8が順番に並べられ、更に、陽極ガスケット9、イオン透過性隔膜10、陰極ガスケット11、複極式アルカリ水電解ユニット12が、この順番で並べて配置されている。陽極ガスケット9から複極式アルカリ水電解ユニット12までは、設計生産量に必要な数だけ繰り返し配置される。なお、図2では、繰り返し配置される陽極ガスケット9、イオン透過性隔膜10、陰極ガスケット11、及び複極式アルカリ水電解ユニット12のうち、便宜的にイオン透過性隔膜10、及び複極式アルカリ水電解ユニット12のみを示している。 【0056】 陽極ガスケット9から複極式アルカリ水電解ユニット12までを必要数だけ繰り返し配置した後(図1参照)、再度、陽極ガスケット9、イオン透過性隔膜10、陰極ガスケット11を並べて配置し、最後に陰極ターミナルユニット13、絶縁プレート41、エンドプレスフランジ14をこの順番で配置して電解セル101が構成される。電解セル101は、全体をタイロッド15で締め付けることにより一体化され、電解槽100となる。電解セル101を構成する配置は、陽極側からでも陰極側からでも任意に選択でき、本実施形態の順序に限定されるものではない。つまり、電解セル101は、複極式アルカリ水電解ユニット12が陽極ターミナルユニット8と陰極ターミナルユニット13との間に配置され、イオン透過性隔膜10は、陽極ターミナルユニット8と複極式アルカリ水電解ユニット12との間、隣接して並ぶ複極式アルカリ水電解ユニット12同士の間、及び複極式アルカリ水電解ユニット12と陰極ターミナルユニット13との間に配置された態様を具現化している。」 (シ)「 【0061】 (複極式アルカリ水電解ユニット) 第1実施形態に係る複極式アルカリ水電解ユニット(以下、「電解ユニット」という)12について、図4、及び図5を参照して詳しく説明する。図4は電解ユニット12の平面図であり、図5は図4のV-V線断面図である。電解ユニット12は、陽極18側と陰極19側とを区画する円板状の導電性隔壁(以下、「隔壁」という)22を備え、隔壁22の外縁に沿って、隔壁22を取り囲むように環状の外枠フレーム(外枠)16が配置されている。 【0062】 隔壁22の外周には、隔壁22から延びて外枠フレーム16の一部を覆うように当接する陽極側フランジパン23が設けられている。また、隔壁22の外周には、隔壁22から延びて外枠フレーム16の一部を覆うように当接する陰極側フランジパン24が設けられている。陽極側フランジパン23と陰極側フランジパン24とによって、外枠フレーム16に取り付けられる金属薄板部102が構成される。 ・・・ 【0068】 図4、及び図5に示されるように、隔壁22の上部において、陽極側フランジパン23の内側(下方)には、陽極上部カバープレート28Aが設けられている。陽極上部カバープレート28Aは、陽極側フランジパン23に沿った弓型(円弧と弦とで形成される形状)のカバー本体28aと、カバー本体28aの下端で屈曲して隔壁22に当接する出口壁28bとを有し、出口壁28bには陽極上部孔42Aが形成されている。陽極側フランジパン23と、隔壁22と、陽極上部カバープレート28Aとにより陽極室出口空間部17Aが形成されている。陽極上部孔42Aは陽極室103の上部に連通している。 【0069】 同様に、隔壁22の上部において、陰極側フランジパン24の内側(下方)には、陰極上部カバープレート28Bが設けられている。陰極上部カバープレート28Bは、陰極側フランジパン24に沿った弓型(円弧と弦とで形成される形状)のカバー本体28cと、カバー本体28cの下端で屈曲して隔壁22に当接する出口壁28dとを有し、出口壁28dには陰極上部孔42Bが形成されている。陰極側フランジパン24と、隔壁22と、陰極上部カバープレート28Bとにより陰極室出口空間部17Bが形成されている。陰極上部孔42Bは陰極室105の上部に連通している。 【0070】 また、隔壁22の下部において、陽極側フランジパン23の内側には、陽極下部カバープレート33Aが設けられている。陽極下部カバープレート33Aは、陽極側フランジパン23に沿った弓型(円弧と弦とで形成される形状)のカバー本体33aと、カバー本体33aの上端で屈曲して隔壁22に当接する入口壁33bとを有し、入口壁33bには陽極下部孔43Aが形成されている。陽極側フランジパン23と、隔壁22と、陽極下部カバープレート33Aとにより陽極室入口空間部25Aが形成されている。陽極下部孔43Aは陽極室103の下部に連通している。 【0071】 同様に、隔壁22の下部において、陰極側フランジパン24の内側(上方)には、陰極下部カバープレート33Bが設けられている。陰極下部カバープレート33Bは、陰極側フランジパン24に沿った弓型(円弧と弦とで形成される形状)のカバー本体33cと、カバー本体33cの上端で屈曲して隔壁22に当接する入口壁33dとを有し、入口壁33dには陰極下部孔43Bが形成されている。陰極側フランジパン24と、隔壁22と、陰極下部カバープレート33Bとにより陰極室入口空間部25Bが形成されている。陰極下部孔43Bは陰極室105の下部に連通している。 」 (ス)「 【0078】 隔壁22には陽極リブ20と陰極リブ21が取り付けられている。陽極リブ20と陰極リブ21には、陽極18又は陰極19を支えるだけでなく、電流を隔壁22から陽極18又は陰極19へ伝える役割があるので、一般的に導電性の金属が用いられる。例えば、ニッケルメッキを施した軟鋼、ステンレススチール、ニッケル等が利用できる。また陽極リブ20及び陰極リブ21の厚みも、コストや製作性、強度等も考慮して0.5mm~5mmの範囲から選ばれる。 【0079】 隣接する陽極リブ20同士の間隔、又は隣接する陰極リブ21同士の間隔は、電解圧力や陽極室103と陰極室105の圧力差等を勘案して決められる。陽極リブ20同士の間隔、又は隣接する陰極リブ21同士の間隔が狭すぎれば電解液やガスの流動を阻害するだけでなくコストも高くなる欠点がある。また広すぎると、陽極室103と陰極室105とのわずかな差圧で保持している電極(陽極18や陰極19)が変形したり、陽極リブ20や陰極リブ21の数が少なくなることによる電気抵抗が増したりするなどの欠点が生じる。したがって通常、50mm~150mmの範囲で決めるのが好ましい。陽極リブ20や陰極リブ21の隔壁22への取り付けについてはレーザー溶接やTig溶接方法等が用いられる。」 (セ)「 【0083】 陽極室103は、陽極側フランジパン23の周壁部23a、隔壁22、陽極上部カバープレート28A、陽極下部カバープレート33A、及び陽極18によって形成され、これらの寸法、形状によって容積が決まる。また、陰極室105は、陰極側フランジパン24の周壁部24a、隔壁22、陰極上部カバープレート28B、陰極下部カバープレート33B、及び陰極19によって形成され、これらの寸法、形状によって容積が決まる。 【0084】 アルカリ水の電解運転中は、陽極18及び陰極19からガスが発生することもあり、陽極室103、及び陰極室105内は、ガスと液で満たされる。そのガスと液の比(ガス液比)は、電流密度が高くなればなるほど大きくなる。また、陽極18及び陰極19の容積が小さいほどガス液比は大きくなる傾向がある。ガス液比が大きくなりすぎると電解液の循環が悪くなり、陽極室103、及び陰極室105内にガスゾーンが生じ、電気抵抗を増大させる可能性がある。更には、ガスの透過量を増大させる等の悪影響が生じ、電圧の上昇やガス純度の低下などにつながる可能性がある。 【0085】 そのため、陽極室深さ、及び陰極室深さは、設計電解条件に応じて決定することが望ましい。陽極室深さや陰極室深さが深くなり過ぎると、多数の電解ユニット12を直列に配置した場合、電解槽100が長くなり大きなスペースが必要になるだけでなく、設備費も高くなる。また浅過ぎれば、ガス液比が高くなりすぎ、先に述べたような悪影響が生ずる。ここで、陽極室深さは、隔壁22の陽極18側の表面を含む陽極側基準面Fxから陽極側フランジパン23のフランジ面Faまでの間隔Da(図3、及び図6参照)であり、陰極室深さは、隔壁22の陰極19側の表面を含む陰極側基準面Fyから陰極側フランジパン24のフランジ面Fa(当審注:Fbの誤記である。)までの間隔Dbである。そして、陽極室深さを示す間隔Da、及び陰極室深さを示す間隔Dbとしては、5mm~40mmの範囲が好ましく、10mm~20mmが最も好ましい。」 (ソ)「 【0142】 通常のアルカリ水電解においては、イオン透過性膜と、陽極や陰極との間には隙間がある。そのため、この部分には電解液の他に大量の気泡が存在し、電気抵抗が非常に高くなっている。電解セルにおける大幅な電解電圧の低減を図るためには、陽極と陰極の間隔(以下、「極間距離」と言う)を出来るだけ小さくして、陽極と陰極の間に存在する電解液やガス気泡の影響をなくすことが最も効果的である。しかるに従来は、極間距離は1~3mm程度が普通であった(以下、この程度の極間距離を有する電解セルを「ファイナイトギャップ電解セル」と言う)。極間距離を小さくするための手段は既にいくつか提案されているが、大型の電解槽においては、一般に1m2以上の通電面積を有しており、陽極と陰極を完全に平滑にして製作精度の公差をほぼゼロmmとすることは不可能である。従ってただ単に極間距離を小さくしていくだけでは、陽極と陰極の間に存在するイオン透過性隔膜を電極により押し切ることがあった。また無理に極間距離を近づけても、電極全面にわたり極間距離がイオン透過性隔膜の厚みとほぼ同じ距離で、陽極とイオン透過性隔膜、陰極とイオン透過性隔膜の間に隙間の殆ど無い状態(以下「ゼロギャップ」と言う)に保つことのできる精度で製作することは難しく、理想的なゼロギャップは得られなかった。」 (タ)「 【0145】 次に、第2の実施形態に係る電解ユニット120について、図8~図10を参照して説明する。電解ユニット120は、上述のゼロギャップ構造を実現可能な形態である。なお、第2の実施形態に係る電解ユニット120において、上述の電解ユニット12と同様の要素や部材については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。 【0146】 電解ユニット120では、陽極39の剛性を陰極38に比べて強くしておき、特にイオン透過性隔膜10を押しつけても変形の少ない構造としている。一方で、陰極38については、イオン透過性隔膜10を押しつけると変形する柔軟な構造とすることで、電解セル101の製作精度上の公差や電極(陽極39、陰極38)の変形等による凹凸を吸収してゼロギャップを保つような構造としている。 【0147】 具体的には、陰極リブ21の先端に集電体36を取り付け、その集電体36の上面側、つまり、隔壁22側とは反対となる側に導電性のクッションマット(クッションマット層)37を取り付け、さらに、その上面側、つまり、クッションマット37に隣接してイオン透過性隔膜10側となる部分に0.5mm以下の厚みのゼロギャップ用の陰極38を重ねた少なくとも3層構造になっている。本実施形態では、集電体36とクッションマット37とによって弾性体が構成される。」 (チ)「 【0167】 また、上述の第1実施形態の変形例に係る電解ユニット12A,12Bや第2実施形態に係る電解ユニット120のように、ゼロギャップ構造を採用することにより、陰極19,38、イオン透過性隔膜10、及び陽極18,39を均一に密着できる。その結果、発生するガスは陰極19,38や陽極18,39の背面から抵抗なく抜き出せるだけでなく、気泡の滞留や、発生ガスを払い出す際の振動などを防止でき、電解電圧が非常に低い状態で安定した電解が長期間に渡り可能となる。」 (ツ)「 【0199】 (実施例3) 電解ユニット12の代わりに図8~図10に示される第2実施形態と同様な電解ユニット120を3セル使用し、図1の如く一方の端にプレスフランジ5、プレスフランジガスケット6、陽極ターミナルユニット8を配置し、もう一方の端には、陰極ターミナルユニット13、絶縁プレート41を取り付けたエンドプレスフランジ14を配列し、図2と同様な電解槽100を組み立てた。 【0200】 電解ユニット12は外径700mmの円形で、陽極18及び陰極19の面積は0.25m2とした。また、陽極室103の深さ(陽極室深さ)は15mm、陰極室105の深さ(陰極室深さ)は15mmとし、陽極側フランジパン23、陰極側フランジパン24の材質を、いずれもニッケルとした。高さ15mm、厚み1.5mmのニッケル製の陽極リブ20と、高さ13.5mm、厚み1.5mmのニッケル製の陰極リブ21を溶接により取り付けたニッケル製の隔壁22の厚みは1mmとした。 【0201】 電解ユニット12に装着した陽極39には、厚さ1.5mmのニッケルのエキスパンドメタルをロールによりプレスして1.0mm厚みに平滑化した基材上にプラズマ溶射により酸化ニッケルをコーティングして、電極の厚みを1.5mmとした。 【0202】 ゼロギャップモジュール(ゼロギャップ構造)としては図8の構造とした。即ち、集電体36としてニッケルエキスパンドメタルで厚み1.2mm、開口部の横方向長さ8mm、縦方向長さ5mmのものを用いた。クッションマット37として、0.1mmのニッケルワイヤー4本を用いて織物とし、更に波型に加工して厚さ9mmのものを、集電体上に5ヵ所スポット溶接して固定した。ゼロギャップ用の陰極38としては、線形0.15mmで40メッシュのニッケル製金網に酸化ルテニウムを主成分としたコーティングを3ミクロン施したものを用いた。 【0203】 電解ユニット12の陽極39側の上部には、幅3mm、長さ10mmの角形の陽極上部孔42Aを設けた厚さ3mmのニッケル製の陽極上部カバープレート28Aを取り付けた。また陰極38側の上部には、幅3mm、長さ10mmの角形の陰極上部孔42Bを設けた厚さ3mmのニッケル製の陰極上部カバープレート28Bを取り付けた。 【0204】 陽極上部カバープレート28A及び陰極上部カバープレート28Bには、断面積相当径70mm、内面を0.5mm厚みEPDMゴムでコーティングの陽極液及びガス通過パイプ31及び陰極液及びガス通過パイプ32を設け、陽極液・ガス排出孔34及び陰極液・ガス排出孔35として幅10mm、長さ50mmのスリットを設けた。隔壁22にも、上部に陽極液、陰極液、ガスが通過するための開口部を、陽極液及びガス通過パイプ31と陰極液及びガス通過パイプ32と同じ位置に同じ大きさで設けた。 【0205】 このような電解槽100に、イオン透過性隔膜10として当量重量950g/eqのフッ素系スルホン酸膜でPTFE芯材を有する厚み200ミクロンのイオン交換膜を装着し、23%NaOHを電解液として、80℃、電流密度2kA/m2~6kA/m2で1週間電解し、電圧と水素ガス純度を測定した。水素ガス純度は、ガスクロマトグラフィー法により測定した。 【0206】 表3に結果を示した。6kA/m2の高電流密度においても、急激な電圧上昇もなく安定した電解ができるだけでなく電解電圧も低かった。 【表3】 [図:0001388360000004.jpg] 」 (テ)「 【図1】 [図:0001388360000005.jpg] 」 (ト)「 【図2】 [図:0001388360000006.jpg] 」 (ナ)「 【図3】 [図:0001388360000007.jpg] 」 (ニ)「 【図4】 [図:0001388360000008.jpg] 」 (ヌ)「 【図5】 [図:0001388360000009.jpg] 」 (ネ)「 【図8】 [図:0001388360000010.jpg] 」 (ノ)「 【図9】 [図:0001388360000011.jpg] 」 (ハ)「 【図10】 [図:0001388360000012.jpg] 」 イ 甲1に記載された発明 (ア)上記ア(ア)~(ク)によれば、甲1に記載された発明は、大型のアルカリ水電解ユニットにおいて再生可能エネルギーのような負荷変動のある不安定電源を用いる場合に、高電流密度低電圧で安定した電解を行うことが難しいという課題を解決することを目的とし、複極式アルカリ水電解ユニットの隔壁を取り囲む外枠を設けることにより前記目的を達成することを意図するものである。 (イ)そして、上記ア(ア)~(オ)及び(ケ)~(ハ)、特に、第2の実施形態及びその実施例である上記ア(ソ)~(ツ)及び(ネ)~(ハ)によれば、上記(ア)の目的を達成する構成として、酸素発生用の多孔質体からなる陽極39と、水素発生用の陰極38と、陽極39と陰極38とを区画する隔壁22と、隔壁22を取り囲む出口壁28b、28d及び入口壁33b、33dと、隔壁22に取り付けられている、高さ15mm、厚み1.5mmの陽極リブ20及び高さ13.5mm、厚み1.5mmの陰極リブ21と、陰極リブ21と陰極38の間に位置する集電体36及びクッションマット37と、隔壁22から延びて外枠フレーム16の一部を覆うように当接する陽極側フランジパン23及び陰極側フランジパン24と、を備える複極式アルカリ水電解ユニット120と、複極式アルカリ水電解ユニット120同士の間に配置され陰極38及び陽極39と密着するイオン透過性膜10と、陽極側フランジパン23の周壁部23a、隔壁22、陽極上部カバープレート28A、陽極下部カバープレート33A、及び陽極38によって形成された陽極室103と、陰極側フランジパン24の周壁部24a、隔壁22、陰極上部カバープレート28B、陰極下部カバープレート33B、及び陰極39によって形成された陰極室105とを有し、イオン透過性膜10、陰極38、及び陽極39がゼロギャップ構造を形成し、隣接する陽極リブ20同士の間隔、又は隣接する陰極リブ21同士の間隔が、50mm~150mmの範囲であり、隔壁22の陽極39側の表面を含む陽極側基準面Fxから陽極側フランジパン23のフランジ面Faまでの間隔Daである陽極室103の深さは15mmであり、隔壁22の陰極19側の表面を含む陰極側基準面Fyから陰極側フランジパン24のフランジ面Faまでの間隔Dbである陰極室105の深さは15mmであり、隔壁22及び/又は外枠16の上部には、ガス及び電解液の通過部が設けられており、隔壁22及び/又は前記外枠16の下部には、電解液の通過部が設けられている電極槽100が記載されていると認められる。 (ウ)また、上記ア(ア)~(オ)及び(ケ)~(ハ)、特に、第2の実施形態及びその実施例である上記ア(ソ)~(ツ)及び(ネ)~(ハ)によれば、上記(ア)の目的を達成する構成として、上記(イ)の電解槽100を用いて、23%NaOHアルカリ水を電解液として電解し、水素を製造する水電解方法、又は水素製造方法が記載されていると認められる。 (エ)そうすると、甲1には、以下の発明(それぞれ、「甲1-1発明」~「甲1-3発明」という。)が記載されていると認められる。 a 甲1-1発明 「 酸素発生用の多孔質体からなる陽極39と、 水素発生用の陰極38と、 前記陽極39と前記陰極38とを区画する隔壁22と、 前記隔壁22を取り囲む出口壁28b、28d及び入口壁33b、33dと、 を備える複極式アルカリ水電解ユニット120同士が、イオン透過性膜10を挟んで重ね合わせられ、 前記イオン透過性膜10が前記陽極39及び前記陰極38が密着してゼロギャップ構造を形成し、 陽極側フランジパン23の周壁部23a、前記隔壁22、陽極上部カバープレート28A、陽極下部カバープレート33A、及び前記陽極38によって形成された陽極室103と、 陰極側フランジパン24の周壁部24a、前記隔壁22、陰極上部カバープレート28B、陰極下部カバープレート33B、及び前記陰極39によって形成された陰極室105と、 隔壁22に取り付けられおり、高さ15mm、厚み1.5mmの陽極リブ20及び高さ13.5mm、厚み1.5mmの陰極リブ21と、 を有し、 隣接する陽極リブ20同士の間隔、又は隣接する陰極リブ21同士の間隔が、50mm~150mmの範囲であり、 隔壁22の陽極39側の表面を含む陽極側基準面Fxから陽極側フランジパン23のフランジ面Faまでの間隔Daである陽極室103の深さは15mmであり、 隔壁22の陰極38側の表面を含む陰極側基準面Fyから陰極側フランジパン24のフランジ面Faまでの間隔Dbである陰極室105の深さは15mmである、 アルカリ水電解用電極槽100。」 b 甲1-2発明 「 酸素発生用の多孔質体からなる陽極39と、 水素発生用の陰極38と、 前記陽極39と前記陰極38とを区画する隔壁22と、 前記隔壁22を取り囲む出口壁28b、28d及び入口壁33b、33dと、 を備える複極式アルカリ水電解ユニット120同士が、イオン透過性膜10を挟んで重ね合わせられ、 前記イオン透過性膜10が前記陽極39及び前記陰極38が密着してゼロギャップ構造を形成し、 陽極側フランジパン23の周壁部23a、前記隔壁22、陽極上部カバープレート28A、陽極下部カバープレート33A、及び前記陽極38によって形成された陽極室103と、 陰極側フランジパン24の周壁部24a、前記隔壁22、陰極上部カバープレート28B、陰極下部カバープレート33B、及び前記陰極39によって形成された陰極室105と、 隔壁22に取り付けられおり、高さ15mm、厚み1.5mmの陽極リブ20及び高さ13.5mm、厚み1.5mmの陰極リブ21と、 を有し、 隣接する陽極リブ20同士の間隔、又は隣接する陰極リブ21同士の間隔が、50mm~150mmの範囲であり、 隔壁22の陽極39側の表面を含む陽極側基準面Fxから陽極側フランジパン23のフランジ面Faまでの間隔Daである陽極室103の深さは15mmであり、 隔壁22の陰極38側の表面を含む陰極側基準面Fyから陰極側フランジパン24のフランジ面Faまでの間隔Dbである陰極室105の深さは15mmである、 アルカリ水電解用電極槽100を用いて、23%NaOHアルカリ水を電解液として電解を行う水電解方法。」 c 甲1-3発明 「 酸素発生用の多孔質体からなる陽極39と、 水素発生用の陰極38と、 前記陽極39と前記陰極38とを区画する隔壁22と、 前記隔壁22を取り囲む出口壁28b、28d及び入口壁33b、33dと、 を備える複極式アルカリ水電解ユニット120同士が、イオン透過性膜10を挟んで重ね合わせられ、 前記イオン透過性膜10が前記陽極39及び前記陰極38が密着してゼロギャップ構造を形成し、 陽極側フランジパン23の周壁部23a、前記隔壁22、陽極上部カバープレート28A、陽極下部カバープレート33A、及び前記陽極38によって形成された陽極室103と、 陰極側フランジパン24の周壁部24a、前記隔壁22、陰極上部カバープレート28B、陰極下部カバープレート33B、及び前記陰極39によって形成された陰極室105と、 隔壁22に取り付けられおり、高さ15mm、厚み1.5mmの陽極リブ20及び高さ13.5mm、厚み1.5mmの陰極リブ21と、 を有し、 隣接する陽極リブ20同士の間隔、又は隣接する陰極リブ21同士の間隔が、50mm~150mmの範囲であり、 隔壁22の陽極39側の表面を含む陽極側基準面Fxから陽極側フランジパン23のフランジ面Faまでの間隔Daである陽極室103の深さは15mmであり、 隔壁22の陰極38側の表面を含む陰極側基準面Fyから陰極側フランジパン24のフランジ面Faまでの間隔Dbである陰極室105の深さは15mmである、 アルカリ水電解用電極槽100を用いて、23%NaOHアルカリ水を電解液として電解し、水素を製造する水素製造方法。」 (2)甲2の記載事項 ア 甲2には、以下の事項が記載されている。 (ア)「 【請求項1】 電極とリブ間、若しくは電極と隔壁間を、屈曲した板ばね部材で結合する可動性の電極を設けた電解槽において、板ばね屈曲部からリブと板ばね結合部、若しくは隔壁と板ばね結合部までの長さをL2、該屈曲部から電極と板ばね結合部までの長さをL1としたときに、L1/L2の値が0.2~0.9の範囲であることを特徴とする電解槽」 (イ)「 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明はイオン交換膜法電解槽に関するものであり、さらには電極間距離を短くして電解電圧を低減させる電解槽に関するものである。 【0002】 【従来の技術】イオン交換膜法電解槽は、海水の電気透析による食塩製造や、食塩の電気分解による苛性ソーダと塩素の製造等に広く用いられている。この中で、食塩の電気分解により、苛性ソーダと塩素を得る塩素アルカリ食塩電解法を例にとると、図7に示すように、イオン交換膜11を挾んで陰極12と陽極14とを設け、陰極12の側に陰極リブ13および隔壁6を備え、陽極14の側に陽極リブ15および隔壁6を備えたものである。電解槽には通常3~5キロアンペア/m2の非常に大きな電流をイオン交換膜を挟んだ陽極と陰極の間に通電して、食塩水を電気分解している。」 (ウ)「 【0004】電解電圧を低減させるためには、イオン交換膜を挟んで、電極間距離をできるだけ短くすることが望ましい。しかし、陰極、陽極の両電極の製作精度と、電解室枠の組立て精度の限界、および運転時の加熱による熱変形歪みにより、陽極と陰極に挾んで設置しているイオン交換膜に電極を接触させず損傷を与えない平均電極間距離は、2mm~3mm以上となることが通常である。よって電解電圧を低減するために平均電極間距離を特に2mm以下に短縮すると、電極がイオン交換膜に局所的に押し付けられ、イオン交換膜を局所的に押しつぶしたり、電極がイオン交換膜とこすれることでイオン交換膜に切り傷やピンホールなどの損傷を与え、運転が不能となる場合が多い。このため電極とイオン交換膜とを実質的に接触させたり、あるいは、極めて短い距離に電極間を保持するために、電解槽の電極とリブ間、あるいは電極と隔壁間を板ばね部材で結合する方法が提案されている。例えば、特開平5-306484号公報に示す如く、電極と電解槽の隔壁若しくはリブを櫛状の板ばね部材で結合する方法や、特開昭58-37183号公報に示す如く、電極の支持構造を穿孔され外側へ屈曲された先端部を有する平面可撓型押圧部材で形成する方法、特公昭62-3236号公報に示す如く、可撓性の空隙性電極を板ばね等の導電性支持体で支持する方法が提案されている。」 (エ)「 【0006】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、電極間距離を短くし、電極とイオン交換膜とを実質的に接触させた場合でも、イオン交換膜の損傷を生じることなく、電解電圧を低減できる電解槽を提供することを目的とする。 」 (オ)「 【0010】図1は、本発明の方法によって、電極とリブ間を屈曲した板ばね部材で結合した電解槽の一部を切り取った斜視図である。電極4とリブ5を板ばね2で結合してある。図2は、本発明の電解槽の一部を切り取った断面図である。図3は、本発明の電解槽の一実施形態を示す断面図であり、リブを使用せず、電極4と隔壁6を直接板ばね2で結合してある。例えば、陰極側に板ばねを設ける場合、電流は電極(陰極)4から板ばね2を通り、隔壁6へ流れ込む。 【0011】図4は板ばね部材の断面図であり、板ばねは屈曲角度θで曲げられている。板ばね屈曲部3からリブと板ばね結合部8、若しくは隔壁と板ばね結合部9までの長さをL2、該屈曲部3から電極と板ばね結合部7までの長さをL1とすると、L1/L2の値を0.2~0.9の範囲に設定することが好ましく、さらに好ましくは、0.4~0.6の範囲に設定するのが良い。最も好ましくはL1/L2の値を0.53とすることで、この場合はイオン交換膜に対する電極の水平方向の変位を完全になくすことができる。」 (カ)「 【0021】実施例1 電解面積が1.2m×2.4mの大きさの電極エレメントを製作し電解槽を組み立てた。陽極はチタン製で、ロールで圧延し平滑化したエキスパンドメタルの表面にルテニウム、イリジウム、チタニウムからなる塗布液を被覆したものを使用し、チタン製リブ(肉厚1.5mm)に電気抵抗スポット溶接により、接続固定した。リブの間隔は95mmになるようにした。陰極はニッケル製で、ロールで圧延し平滑化した基材肉厚0.5mmのエキスパンドメタルに酸化ニッケルを主成分とした粉末を溶射により被覆した活性陰極を使用した。図3の実施形態に示すように、陰極と陰極室隔壁をニッケル製の板ばね部材で電気抵抗スポット溶接により結合した。板ばねの肉厚は0.2mmとし、陰極と板ばね結合部から板ばね屈曲部までの長さを17mm、該屈曲部から陰極室隔壁と板ばね結合部までの長さを32mm、即ち板ばね全長を49mmとし、板ばね屈曲角度は59度とした。板ばねには、板ばね屈曲部から隔壁と板ばね結合部までの間に、Φ10mmの孔を50mmピッチで設けた。陽極室圧力に対し、陰極室圧力を水柱30cm高く保ち、陽極とイオン交換膜とを密着させた状態とし、陰極とイオン交換膜も密着させ、電極間距離を0mmとした。イオン交換膜は旭化成工業(株)のアシプレックスF4203を使用した。電解温度を90℃、苛性ソーダ濃度を32%とし、電流密度は4.0kA/m2の条件で電解を行った。14日間の電解を行った結果の電解電圧は、2.940Vであった。電解終了後、電解槽を分解しイオン交換膜を観察した結果、損傷は全く見られなかった。」 (キ)「 【図1】 [図:0001388360000013.jpg] 」 (ク)「 【図2】 [図:0001388360000014.jpg] 」 (ケ)「 【図3】 [図:0001388360000015.jpg] 」 (コ)「 [図:0001388360000016.jpg] 」 (3)甲3の記載事項 ア 甲3には、以下の事項が記載されている。 (ア)「 【請求項1】それぞれ背板とメッシュ状の極板とを間隔を置いてほぼ平行に配置してなる陽極室枠と陰極室枠とをその背板を背中合わせにして結合してなる室枠体をイオン交換膜を挾んで複数配置し締め付けてなる複極型イオン交換膜電解槽において、各陽極室枠と陰極室枠の極板より上の背板の上方部分が逆U字形になるようにそれぞれ外側に曲げられ、その逆U字形部分内にU字形の樋状部材が背板と間に通路となる隙間が設けられるように配置固定され、逆U字形部分とU字形の樋状部材で区画される部分が気液分離室となっていることを特徴とする複極型イオン交換膜電解槽。」 (イ)「 【0006】塩化アルカリ電解槽の場合、陽極室31内では塩素ガスが発生し、また陰極室41内では水素ガスが発生し、ガスが液相中に混じった気液混相流が各極室内を上昇し、各極室の上方に設けられた気液分離器29で気相と液相とに分離されてそれぞれ排出口28、28aから極室外に排出される。」 (ウ)「 【0008】 【発明が解決しようとする課題】複極型イオン交換膜電解槽では気液混相流の排出がスムースに行われないと、極室内の上方にガスだまりが生じ、これは極室内に圧力変動を生じさせ、電圧変動の原因にもなる。さらに極室内での圧力変動により隣接するイオン交換膜が振動して極板との接触をくり返してイオン交換膜の劣化を引き起こす原因となる。従って気液分離器で気体と液体とを速やかに分離して極室外に排出する必要があり、気液分離器の性能は重要である。」 (エ)「 【0011】本発明は、極室内の圧力の変動、イオン交換膜の劣化、極室内における電圧変動が生じにくい気液分離器を有する、複極型イオン交換膜電解槽を提供することを目的としている。」 (オ)「 【0016】図1~図3のように、本発明の複極型イオン交換膜電解槽の室枠体1は陽極室枠2と陰極室枠3とを背中合わせに配置し結合したものからなる。陽極室枠2は背板5と、これとほぼ平行に配置されたメッシュ状の陽極板6とよりなり、陽極側背板5と陽極板6との間には間隔を保持するために支持部材7が配置されている。支持部材7には所どころに極液を流通させる孔7aが穿たれている。一方、陰極室枠3も陰極側背板3aと、陰極板3bと、支持部材3cとからなる。なお4はガスケット、1aはイオン交換膜である。」 (カ)「 【0024】各極室枠2、3の大きさは正面(図6)から見た場合、例えば横240cm、縦120cm、幅(厚さ)2cm程度で、気液分離室11の大きさは、外枠9の外側部9cの長さが例えば60mm、上部9bの幅が例えば20mm程度である。樋状部材10の内側部10aの上端と外枠9の上部9bとの間の、入口14となる間隙の寸法Aは10mm程度になされている。寸法Aは気液分離室11の高さの5~30%が好ましく、更に好ましくは10~20%がよい。」 (キ)「 【0028】 【実施例】 <実施例1>本発明の気液分離器を備えた陽、陰極室枠からなる室枠体を用いた複極型イオン交換膜電解槽にて電解試験を実施し、陽極室枠内の圧力変動値を測定した。各極室枠の極板の寸法は幅240cm、高さ120cmで、陽極板には板厚1.7mmのチタンエキスパンドメッシュ、陰極板には板厚1.2mmのニッケルパンチドメッシュを用いた。陽極側背板には厚み1.2mmのチタン板、支持部材には厚み2.0mm、幅30mmのチタン板を用いた。支持部材は縦方向に等間隔で24本背板と極板に溶接して固定した。また陰極側背板には厚み1.2mmのニッケル板、支持部材は厚み1.0mm、幅30mmのニッケル板を用いた。支持部材は電解面の縦方向に等間隔で24本背板と極板に溶接して固定した。」 (ク)「 【図1】 [図:0001388360000017.jpg] 」 (ケ)「 【図2】 [図:0001388360000018.jpg] 」 (コ)「 【図3】 [図:0001388360000019.jpg] 」 (サ)「 【図6】 [図:0001388360000020.jpg] 」 (4)甲4の記載事項 ア 甲4には、以下の事項が記載されている。 (ア)「 【請求項1】 複極式ファイナイト電解セルから複極式ゼロギャップ電解セルを製造する方法であって、該複極式ファイナイト電解セルは、陽極を有する陽極室と陰極を有する陰極室とが背中合わせに配置されており、 前記陰極を導電性プレートとして設定することと、 前記導電性プレートの上にクッションマット層を重ねて設けることと、 前記クッションマット層の上に新たな陰極を重ねて設け、かつ 新たな陰極は、隣接した電解セルの間に配置される陽イオン交換膜と接触するように位置させること、 とを特徴とする製造方法。」 (イ)「 【0001】 本発明は、陽イオン交換膜を用いて塩化アルカリ水溶液を電解する複極式ゼロギャップ電解セルの製造方法に関する。 【背景技術】 【0002】 高電流効率、低電圧で高純度のアルカリ金属水酸化物を生産するためのイオン交換膜法塩化アルカリ電解セルについては、多くの提案がなされている。その中でイオン交換膜を挟んで陽極と陰極が接触している形式のゼロギャップに関するものも提案されている。」 (ウ)「 【0006】 これらの単位電解セルは、単位電解セルと一体となった気液分離室もなく、液及びガスを気液混相のまま上部に抜き出しているため単位電解セル内に振動が発生しイオン交換膜を破損するなどの欠点があった。更に内部に電解液を混合する工夫がなされておらず、そのために電解室内の電解液の濃度分布を均一にするため多量の電解液を循環しなければならない欠点がある。」 (エ)「 【0011】 本発明は、高電流密度のもとに安定した電解を、簡単、確実な構造で可能にする複極式ゼロギャップ電解セルの製造方法を提供することを目的とする。 より詳細には、本発明の目的は、ゼロギャップ型のイオン交換膜法電解槽を用いて、4kA/m2以上の高電流密度で電解する場合、イオン交換膜の破損しにくいゼロギャップ構造を有していて、且つ陽極液と陰極液が一定範囲内の濃度分布を持ち、セル内圧の変動の少ない長期間安定して電解できる複極式ゼロギャップ電解セルの製造方法を提供することである。 本発明の他の目的は、上記目的に加えて、電解セル内のガス振動によるイオン交換膜の破損を防いで長期間安定した電解を可能にする複極式ゼロギャップ電解セルの製造方法を提供することである。」 (オ)「 【0016】 この電解セルは、陽極室と、陽極室に設けた陽極であって、開口率25%から75%のチタン製エクスパンデッドメタルまたはチタン製金網を含む陽極基材で形成され、該陽極基材への触媒の塗布後に、陽極表面上の凹凸の高低差が最大で5μmから50μmであり、厚みが0.7mmから2.0mmである陽極と、陽極室と背中合わせに配置した陰極室と、重ねた少なくとも2つの層を陰極室に有する陰極であって、これらの層が導電性クッションマット層と、水素発生用陰極の層とを含み、該水素発生用陰極層がクッションマット層に隣接するとともに、前記陽イオン交換膜に接触する領域に配置されている陰極とを備えることを特徴とする。 【0017】 上記構成は、陽極とイオン交換膜と陰極の間に適切なゼロギャップを保ち、発生ガスの通過させることによって、イオン交換膜の破損とセル内圧の変動が少なく、安定した電解を長期間に渡って行うことを可能にする。」 (カ)「 【0030】 導電性プレート3は、その上に積層されるクッションマット2や水素発生用陰極1へ電気を伝えるとともに、それらから受ける荷重を支え、陰極から発生するガスを隔壁5側に支障なく通過させる役割がある。従って、この導電性プレートの形状は、エクスパンドメタルや打ち抜き多孔板などが好ましい。開口率は、陰極から発生した水素ガスを支障なく隔壁側に抜き出せるために40%以上あることが好ましい。強度については、リブ4とリブ4の間隔が100mmの場合、その中央部に3mH2Oの圧力がかかっても0.5mm以下の撓みであれば導電性プレートとして使用できる。材質は、耐食性の面からニッケル、ニッケル合金、ステンレススチール、鉄などが利用できるが、導電性の面からニッケルが最も好ましい。」 (キ)「 【0069】 複極式ゼロギャップ電解セル30は、横幅が2400mm、高さが1280mmで、陽極室と、陰極室と、気液分離室7とを有する。陽極室および陰極室は、それぞれ平鍋状の隔壁5によって形成されて、背中合わせに配置される。これら陽極室および陰極室は、隔壁5の上部に設けた折曲部18にフレーム材22を挿入して組み合わされている。各気液分離室は、高さHのL字状仕切部材16を隔壁5に固定して、各電極室の上部に画定されている。」 (ク)「 【図1】 [図:0001388360000021.jpg] 」 (5)甲5の記載事項 ア 甲5には、以下の事項が記載されている。 (ア)「 [図:0001388360000022.jpg] 」 (イ)「 [図:0001388360000023.jpg] 」 (6)本件発明1と甲1-1発明との対比及び判断 ア 甲1-1発明の「酸素発生用の多孔質体からなる陽極39」、「水素発生用の陰極38」、「前記陽極39と前記陰極38とを区画する隔壁22」、「アルカリ水電解用電極槽100」は、それぞれ、本件発明1の「陽極」、「陰極」、「前記陽極と前記陰極とを隔離する隔壁」、「前記隔壁を縁取る外枠」、「電解槽」に相当する。 イ 本件明細書等の段落【0029】によれば、本件発明1の「外枠」は、隔壁の外縁に沿って隔壁を取り囲むように設けられるとされている。そうすると、本件発明1における「隔壁を縁取る外枠」とは、隔壁の外縁部において隔壁を取り囲むことを意味するといえる。 一方、甲1-1発明の出口壁28b、28d及び入口壁33b、33dは、上記(1)ア(ヌ)から、隔壁22の外縁部において、隔壁22を取り囲むように設けられていることが理解される。 したがって、甲1-1発明の「前記隔壁22を取り囲む出口壁28b、28d及び入口壁33b、33d」は、本件発明1の「前記隔壁を縁取る外枠」に相当するといえる。 ウ 甲1-1発明では、陽極39、陰極38、隔壁22、及び外枠16を備える複極式アルカリ水電解ユニット120同士が、イオン透過性膜10を挟んで重ね合わせられていることから、前記複極式アルカリ水電解ユニット120が複数存在することは明らかである。また、本件明細書等の段落【0094】によれば、本件発明1の「隔膜」には、「イオン透過性の膜」が使用されると記載されている。そうすると、甲1-1発明における「複極式アルカリ水電解ユニット120」、「イオン透過性膜10」は、それぞれ、本件発明1の「エレメント」、「隔膜」に相当する。 エ 甲1-1発明では、イオン透過性膜10に陽極39及び陰極38が密着して(すなわち、隙間無く付着して)ゼロギャップ構造を形成しているのであるから、イオン透過性膜10に陽極39及び陰極38が接触しているといえる。 したがって、甲1-1発明の「前記イオン透過性膜10が前記陽極39及び前記陰極38が密着してゼロギャップ構造を形成」することは、本件発明1の「前記隔膜が前記陽極及び前記陰極と接触してゼロギャップ構造が形成」することに相当する。 オ 甲1-1発明における「陽極室103」及び「陰極室105」について (ア)上記(1)ア(シ)、(セ)、(ナ)~(ヌ)によれば、「陽極室103」は、陽極側フランジパン23の周壁部23a、隔壁22、陽極上部カバープレート28A、陽極下部カバープレート33A、及び前記陽極39によって形成されており、特に、上記(1)ア(ナ)、(ヌ)を参照すれば、「陽極室103」は、隔膜22と、上記陽極上部カバープレート28Aにおける出口壁28b及び上記陽極下部カバープレート33Aにおける入口壁33bと、イオン透過性膜10によって画成されていることが理解される。 したがって、甲1-1発明の「陽極室103」は、本件発明1の「電極室」に相当するといえる。 (イ)上記(1)ア(シ)、(セ)、(ナ)~(ヌ)によれば、「陰極室105」は、陰極側フランジパン24の周壁部24a、前記隔壁22、陰極上部カバープレート28B、陰極下部カバープレート33B、及び前記陰極38によって形成されており、特に、上記(1)ア(ナ)、(ヌ)を参照すれば、「陰極室105」は、隔膜22と、上記陰極上部カバープレート28Bにおける出口壁28d及び上記陰極下部カバープレート33Bにおける入口壁33dと、イオン透過性膜10によって画成されていることが理解される。 したがって、甲1-1発明の「陰極室105」は、本件発明1の「電極室」に相当するといえる。 カ 甲1-1発明における「陽極リブ20」及び「陰極リブ21」について、上記(1)ア(ス)によれば、陽極リブ20及び陰極リブ21は、陽極18又は陰極19を支えるだけでなく、電流を隔壁22から陽極18又は陰極19へ伝える役割があるものであり、陽極リブ20同士、又は陰極リブ21同士の間隔が狭すぎれば電解液やガスの流動を阻害するものであると説明されている。これから、甲1-1発明における「陽極リブ20」及び「陰極リブ21」は、電解液やガスの流動を制御する機能を有しているとはいえない。一方で、本件明細書の段落【0146】によれば、本件発明1の整流板は、電極室内における気液の流れの乱れにより電極室に生じる対流を低減するものであると説明されている。そうすると、甲1-1発明における「陽極リブ20」及び「陰極リブ21」は、本件発明1の「整流板」に相当しない。 キ 甲1-1発明の「隔壁22の陽極39側の表面を含む陽極側基準面Fxから陽極側フランジパン23のフランジ面Faまでの間隔Daである陽極室103の深さ」及び「隔壁22の陰極38側の表面を含む陰極側基準面Fyから陰極側フランジパン24のフランジ面Faまでの間隔Dbである陰極室105の深さ」について、上記(1)ア(セ)、(ナ)を参照すれば、 (ア)陽極側フランジパン23のフランジ面Faは、陽極39に接続される陽極ガスケット9の表面上に存在する陽極側フランジパン23のフランジ部の表面であるから、陽極室103の深さDaは、少なくとも、隔壁22とイオン透過性膜10の間の長さではなく、本件発明1の「電極室の前記隔壁と前記隔膜の間の前記隔壁に垂直な方向の長さB」に相当しないこと、及び (イ)陰極側フランジパン24のフランジ面Faは、陰極38に接続される陰極ガスケット11の表面上に存在する陰極側フランジパン24のフランジ部の表面であるから、陰極室105の深さDbは、少なくとも、隔壁22とイオン透過性膜10の間の長さではなく、本件発明1の「電極室の前記隔壁と前記隔膜の間の前記隔壁に垂直な方向の長さB」に相当しないこと、 が明らかに読み取れる。 ク そうすると、本件発明1と甲1-1発明とは、以下の点で一致する。 <一致点> 「陽極と、陰極と、前記陽極と前記陰極とを隔離する隔壁と、前記隔壁を縁取る外枠とを備える複数のエレメントが隔膜を挟んで重ね合わせられ、前記隔膜が前記陽極及び前記陰極と接触してゼロギャップ構造が形成され、前記隔壁と前記外枠と前記隔膜とにより画成される電極室が設けられた電解槽。」 ケ そして、本件発明1と甲1-1発明とは、以下の点で相違する。 <相違点1> 本件発明1では、隔壁と外枠と隔膜とにより画成される電極室に互いに平行に並べられた複数の整流板が隔壁に沿う所与の方向に平行に設けられ、電極室の前記所与の方向の長さAが、0.40m以上4.0m以下であり、電極室の隔壁と隔膜の間の隔壁に垂直な方向の長さBが、0.0030m以上0.030m以下であり、複数の整流板の間隔Cが、0.050m以上0.1m以下であり、電極室の前記所与の方向に垂直な面における整流板で仕切られた断面積Dが、0.00050m2以上0.0050m2以下であり、{(2×D)/(B+C)}が、0.015m以上0.050m以下であるのに対し、甲1-1発明では、整流板が設けられておらず、前記A、B、C、Dの値の範囲も規定されておらず、さらに、{(2×D)/(B+C)}の値の範囲も規定されていない点。 コ 以下、相違点1について検討する。 (ア)甲2(特に、上記(2)ア(ア)~(コ)の記載)には、電極4とリブ5間を、屈曲した板ばね部材2で結合する可動性の電極4を設けたイオン交換膜法電解槽において、板ばね屈曲部3からリブ5と板ばね結合部8の長さをL2、板ばね屈曲部3から電極4と板ばね結合部7までの長さをL1としたときに、L1/L2の値が0.2~0.9の範囲とし、電極間距離を短くし、電極とイオン交換膜とを実質的に接触させた場合でも、イオン交換膜の損傷を生じることなく、電解電圧を低減できるイオン交換膜法電解槽が記載されている。 (イ)ここで、甲2には、上記「リブ5」の機能が明記されておらず、特に、気液の流れの乱れにより電極室に生じる対流を低減する機能を有することについて記載されていない。そのため、甲2からでは、甲2の上記「リブ5」が、本件発明1の上記「整流板」には相当するとはいえない。 また、甲2には、上記電極室を画成し、上記A、B、C、Dの値の範囲及び上記{(2×D)/(B+C)}の値の範囲を規定することについて記載されていない。 (ウ)甲3(特に、上記(3)ア(ア)~(サ)の記載)には、背板5、3aとメッシュ状の極板6、3bとを、支持部材7を介して、間隔を置いてほぼ平行に配置してなる陽極室枠2と陰極室枠3とをその背板5、3aを背中合わせにして結合してなる室枠体1をイオン交換膜1aを挾んで複数配置し締め付けてなる複極型イオン交換膜電解槽において、各陽極室枠2と陰極室枠3の極板6、3bより上の背板5、3aの上方部分を逆U字形になるようにそれぞれ外側に曲げ、その逆U字形部分内にU字形の樋状部材10を背板5、3aと間に通路となる隙間が設けられるように配置固定し、逆U字形部分とU字形の樋状部材10で区画される部分が気液分離室8とすることによって、極室内の圧力の変動、イオン交換膜の劣化、極室内における電圧変動が生じにくい気液分離器とした複極型イオン交換膜電解槽が記載されている。 (エ)ここで、甲3の上記「支持部材7」は、極液を流通させる孔7aが穿たれているものの、その機能は、陽極側背板5と陽極板6との間の間隔を保持するものであり、電解液やガスの流動を制御する機能、特に、気液の流れの乱れにより電極室に生じる対流を低減するとまではいえないものである。そのため、甲3からでは、甲3の上記「支持部材7」が、本件発明1の上記「整流板」には相当するとはいえない。 また、甲3には、上記電極室を画成し、上記A、B、C、Dの値の範囲及び上記{(2×D)/(B+C)}の値の範囲を規定することについて記載されていない。 (オ)甲4(特に、上記(4)ア(ア)~(ク)の記載)には、複極式ファイナイト電解セルから複極式ゼロギャップ電解セルを製造する方法であって、陽極11を有する陽極室と陰極1を有する陰極室とを背中合わせに配置して複極式ファイナイト電解セルを形成し、リブ4を用いて強度を確保した上で陰極1を導電性プレート3として設定し、導電性プレート3の上にクッションマット層2を重ねて設け、クッションマット層2の上に新たな陰極1を重ねて設け、かつ新たな陰極1を、隣接した電解セルの間に配置される陽イオン交換膜28と接触するように位置させて、ゼロギャップ型のイオン交換膜法電解槽を用いて4kA/m2以上の高電流密度で電解する場合でもイオン交換膜の破損しにくいゼロギャップ構造を有していて、且つ陽極液と陰極液が一定範囲内の濃度分布を持ち、セル内圧の変動の少ない長期間安定して電解できる複極式ゼロギャップ電解セルの製造方法が記載されている。 (カ)ここで、甲4の上記「リブ4」の機能について、特に、気液の流れの乱れにより電極室に生じる対流を低減する機能を有することが記載されていない。そのため、甲4からでは、甲4の上記「リブ4」が、本件発明1の上記「整流板」には相当するとはいえない。 また、甲4には、上記電極室を画成し、上記A、B、C、Dの値の範囲及び上記{(2×D)/(B+C)}の値の範囲を規定することについて記載されていない。 (キ)甲5(特に、上記(5)ア(ア)~(イ)の記載)には、 a 流体の流れが層流と乱流に分けられ、それがレイノルズ数Reによって判別できること、 b 円管内流動における、レイノルズ数Reは、管の内径をD、質量速度をG、流体の粘度をμとすれば、Re=DG/μで計算できること、 c 管路の断面が円形でない場合には、流れの断面積をS、流体が接触している固体壁周辺の長さ(浸辺長)をlpとして、De=4S/lpで定義される相当直径を採用すれば円管の場合と全く同様に計算できること、 が記載されている。 (ク)ここで、甲5には、本件発明1の上記「整流板」には相当する部材の記載はなく、また、上記電極室を画成し、上記A、B、C、Dの値の範囲及び上記{(2×D)/(B+C)}の値の範囲を規定することについても記載されていない。 (ケ)そうすると、甲2~5を参照しても、甲1-1発明において、 a 複数の整流板を、隔壁と外枠と隔膜とにより画成される電極室に、互いに平行に、かつ、隔壁に沿う所与の方向に平行に設け、 b 電極室の上記所与の方向の長さAを、0.40m以上4.0m以下とし、 c 電極室の隔壁と隔膜の間の隔壁に垂直な方向の長さBを、0.0030m以上0.030m以下とし、 d 複数の整流板の間隔Cを、0.050m以上0.1m以下とし、 e 電極室の上記所与の方向に垂直な面における整流板で仕切られた断面積Dを、0.00050m2以上0.0050m2以下とし、さらに、 f {(2×D)/(B+C)}を、0.015m以上0.050m以下とする、 積極的な動機付けは見いだせない。 (コ)そうすると、上記(ケ)a~fとする動機付けがない、甲1-1発明及び甲2~5に記載された事項からでは、上記(ケ)a~fの組み合わせを実現することを、容易に想到し得るということはできない。 (サ)また、本件明細書には、以下の事項が記載されている。 a 「 【課題を解決するための手段】 【0015】 発明者らは上述の課題を解決するため、アルカリ水電解中の電解液やガスの流れを観察しつつ、鋭意検討をしたところ、電流密度と陽極室及び陰極室での電解液及びガスのバックミキシング現象に相関が見られた。すなわち、電流密度の上昇に応じて、バックミキシング現象が増加し、オーム損が増大する結果が生じることを見出した。また、このとき、電解セル内の電解液の温度の上昇が顕著になり、電解液中に局所的に高温になる箇所が発生することも見出された。 【0016】 そして、発明者らは、電解セルにおける陽極室及び陰極室の高さや厚みを特定の範囲とし、さらに電解液や発生するガスの流れ方向に特定の間隔で整流板を設けることで、ゼロギャップ構造を有する電解槽において、これらのバックミキシングを抑制することを見出した。すなわち、電解液や水素及び酸素のガスの流れを適切な範囲に制御することにより、特に電流密度が高い場合のオーム損の増大を抑制でき、さらに、電極での発熱を適切な範囲に制御できることを見出し、本発明をなすに至った。」 b 「 【0049】 ここで、本実施形態のアルカリ水電解用複極式電解槽50では、電極室5の隔壁に沿う所与の方向の長さAが、0.40m以上4.0m以下であり、電極室5の隔壁1に垂直な方向の長さBが、0.0030m以上0.030m以下であり、複数の整流板6の間隔Cが、0.050m以上0.19m以下である。」 c 「 【0049】 ここで、本実施形態のアルカリ水電解用複極式電解槽50では、電極室5の隔壁に沿う所与の方向の長さAが、0.40m以上4.0m以下であり、電極室5の隔壁1に垂直な方向の長さBが、0.0030m以上0.030m以下であり、複数の整流板6の間隔Cが、0.050m以上0.19m以下である。 d 「 【0051】 本実施形態のアルカリ水電解用複極式電解槽50によれば、上記長さA、上記長さB、上記間隔Cを、上記のとおり規定することで、電解液及びガスの流れを幅広い電解条件で改善し、バックミキシング現象を制御することで、高電流密度運転時の電解過電圧の急激な上昇を抑え、生産性の高いゼロギャップ構造Zを有する複極式電解槽50の設計が可能になる。 ひいては、高電流密度での運転や変動電源での運転で用いてアルカリ水電解を行った際に電解室5出口の高温化を低減することで、電解液の温度の上昇を抑制する、電解室5内における気液の流れの乱れにより電解室5に生じる対流を低減して、局所的な電解液の温度の上昇を抑制することができ、長期に渡って安定して高い電解効率を実現することができる。 【0052】 上記効果をさらに高める観点に加え、電極室5内の気液比の断続的な変動による圧力変動を抑制する観点から、上記長さA、上記長さB、上記間隔Cを、下記の範囲とすることが好適である。 本実施形態では、上記長さAについて、0.40m以上3.0m以下であることが好ましく、0.50m以上2.5m以下であることがさらに好ましく、0.60m以上2.0m以下であることがより好ましい。 本実施形態では、上記長さBについて、0.0050m以上0.025m以下であることが好ましく、0.0060m以上0.023m以下であることがさらに好ましく、0.0070m以上0.020m以下であることがより好ましい。 本実施形態では、上記間隔Cについて、0.060m以上0.12m以下であることが好ましく、0.070m以上0.11m以下であることがさらに好ましく、0.080m以上0.10m以下であることがより好ましい。 上記長さAの範囲、上記長さBの範囲、上記間隔Cの範囲は、本発明の効果を好適に得るうえで、それぞれ個別に選択されてもよい。」 e 「 【0054】 さらに、発明者らは、特に風力や太陽光等の再生可能エネルギーから得られる変動する電源での運転時に、電極室5内の気液比の断続的な変動により、電解液の乱れが増長されることが観測されたことから、これを克服する方法を種々検討した結果、下記好適特徴を見出した。 本実施形態(例えば、上記[1]~[20]の形態等)のアルカリ水電解用複極式電解槽50では、電極室5の隔壁1に沿う所与の方向D1に垂直な面における断面積Dが、0.00050m2以上0.0050m2以下であり、{(2×D)/(B+C)}が、0.015m以上0.050m以下であることが好ましい。」 f 「 【0056】 上記断面積D及び上記{(2×D)/(B+C)}を上記のとおり規定することで、幅広い電解液流量の範囲、電解液温度の範囲において、液及びガスの流れを制御し、気液比の乱れを抑える効果を容易に発現することができる。これにより、気液分離状態が改善され、電極室5内の圧力変動や両極室間の差圧変動を抑制させやすい。 ひいては、電解室5出口の高温化を低減することで、電解液の温度の上昇を抑制する、電解室5内における気液の流れの乱れにより電解室5に生じる対流を低減して、局所的な電解液の温度の上昇を抑制するという本発明の効果を、より高い電流密度、より多くのセル数を有する電解槽50においても、安定して高めることができる。」 g 「 【0198】 (実施例A1) 実施例A1では、下記に説明するとおり、水電解中に発生するガスの流れを視認可能なモデル電解槽を使用して、アルカリ水電解を行った。 【0199】 モデル電解槽を下記のとおり作製した。 図9に、本実施例Aのモデル電解槽の概要を示す。(A)に、モデル電解槽の正面図(左図)及び側面図(右図)を示し、(B)に、モデル電解槽の電極室を形成したアクリル板を斜視図で示し、(C)に、モデル電解槽におけるゼロギャップ構造を示す。 【0200】 -隔壁、外枠、整流板- モデル電解槽を構成する隔壁及び外枠3として、電解セル内部を視認できる透明な材質(アクリル)で構成されているセル枠を用いた。 まず、厚みQ:75mm、横幅R:300mm、縦幅P:1.45m又は2.65mのアクリル板を用意した。 次いで、このアクリル板を、図9(B)に示すように、片面側から電極室となる空間の分(所定の厚み、横幅:250mm、所定の縦幅)だけ削り、所望の長さA及び長さBを有する所望のサイズの電極室を有する箱型のセル枠を準備した。 例えば、長さAを1.2mとした例では、縦幅P:1.45mのアクリル板を用意し、長さAを2.4mとした例では、縦幅P:2.65mのアクリル板を用意した。いずれの場合にも、平面視において、電極室がアクリル板の中央に位置するように、配置した。 そして、整流板として、厚さ3mmのアクリル板を、横幅Rの方向に沿って所望の間隔Cで、2枚~4枚設けた。このとき、2~4枚の整流板は、電極室の横幅Rの方向の中心に関して対称となるように配置した。また、整流板の延在方向の端と電極室との縦幅Pの方向の間隔は、両端において100mmとした。」 h 「 【0220】 実施例A及び比較例Aにおける評価結果を表1に示す。 【0221】 (1)ガス滞留性 電解中の電解セルにおける液・ガス滞留性の評価として、モデル電解槽の目視評価により、電極室内のバックミキシング現象の発生度合を、以下の評価基準で評価した。結果を表1に示す。 <評価基準> A(優れる):発生頻度は少なく、数秒ですぐに消失する B(良好):発生頻度は多いが、数秒ですぐに消失する C(実用可能):発生頻度は多く、5分以上消失しない D(不良):常に発生しており、消失しない 【0222】 (2)セル内温度差 電解中の電解セルにおいて複極式エレメントの電極室内の上下に均等配置した6箇所に挿入した熱電対により電解液の温度を計測し、6箇所における温度差の最大値を算出した。そして、温度差の最大値について以下の評価基準で評価した。結果を表1に示す。 <評価基準> A(優れる):4℃未満 B(良好):4℃以上25℃未満 C(実用可能):25℃以上50℃未満 D(不良):50℃以上 【0223】 (3)気液比の変動による圧力変動 圧力変動の評価として、陰極側出側ホース内の液・ガスの二相流状態を目視により評価した。結果を表1に示す。 <評価基準> A(優れる):層状流で二相が分離している、連続的な流れを形成している B(良好):波状流で二相が分離している、連続的な流れを形成している C(実用可能):スラグ流で二相は分離しておらず、断続的な流れが見られる D(不良):乱れた間欠流で常に断続的な流れが発生している 【0224】 (4)電極たわみ量 電解後の陽極を取り出し、電極のたわみ量を計測した。結果を表1に示す。 <評価基準> A(優れる):0.03mm未満 B(良好):0.03mm以上0.13mm未満 C(実用可能):0.13mm以上2.0mm未満 D(不良):2.0mm以上 【0225】 (5)対電圧 通電開始から60分後の時点でのセル電圧(V)を測定した。結果を表1に示す。」 i 「 [図:0001388360000024.jpg] 」 (シ)上記(サ)a~iから、本件発明1は、上記(ケ)a~fとなるように調整することで、電解中の電解セルにおける液・ガス滞留性(バックミキシング現象の発生度合)を低減させ、電解室内における気液の流れの乱れにより電解室5に生じる対流に起因して発生するセル内の温度差を低減させる等の格別な効果を奏するものである。 (ス)一方、甲1~5には、上記格別な効果に関する記載がないから、甲1~5に記載された事項からでは、本件発明1が上記格別な効果を奏することを予測可能であるともいえない。 (セ)したがって、上記相違点2に係る本件発明1の構成は、甲1-1発明及び甲2~5の記載事項に基いて、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 (ソ)よって、本件発明1は、甲1-1発明及び甲2~5の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 (7)本件発明2と甲1-1発明との対比及び判断 ア 上記第3の特許請求の範囲の記載から明らかなように、本件発明2は、本件発明1の「電解槽」を「アルカリ水電解用電解槽」と、アルカリ電解水用に用途限定しただけのものであり、その余の部分は同じである。 イ そして、甲1-1発明の「アルカリ水電解用電極槽100」は、本件発明2の「アルカリ水電解用電解槽」に相当する。 ウ そうすると、上記(6)コの検討と同じ理由で、上記相違点1に係る本件発明2の構成は、甲1-1発明及び甲2~5の記載事項に基いて、当業者が容易に想到し得たものとはいえないから、、本件発明2は、甲1-1発明及び甲2~5の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 (8)本件発明8と甲1-2発明の対比及び判断 ア 本件発明8と甲1-2発明の対比について、本件発明1と甲1-1発明との対比(上記(6)ア~キ)と同様である。 イ そうすると、本件発明8と甲1-2発明とは、以下の点で一致する。 <一致点> 「陽極と、陰極と、前記陽極と前記陰極とを隔離する隔壁と、前記隔壁を縁取る外枠とを備える複数のエレメントが隔膜を挟んで重ね合わせられ、前記隔膜が前記陽極及び前記陰極と接触してゼロギャップ構造が形成され、前記隔壁と前記外枠と前記隔膜とにより画成される電極室が設けられたアルカリ水電解用電解槽を用いて電解を行う水電解方法。」 ウ そして、本件発明8と甲1-2発明とは、以下の点で相違する。 <相違点2> 本件発明8では、隔壁と外枠と隔膜とにより画成される電極室に互いに平行に並べられた複数の整流板が隔壁に沿う所与の方向に平行に設けられ、電極室の前記所与の方向の長さAが、0.40m以上4.0m以下であり、電極室の隔壁と隔膜の間の隔壁に垂直な方向の長さBが、0.0030m以上0.030m以下であり、複数の整流板の間隔Cが、0.050m以上0.1m以下であり、電極室の前記所与の方向に垂直な面における整流板で仕切られた断面積Dが、0.00050m2以上0.0050m2以下であり、{(2×D)/(B+C)}が、0.015m以上0.050m以下であるのに対し、甲1-2発明では、整流板が設けられておらず、前記A、B、C、Dの値の範囲も規定されておらず、さらに、{(2×D)/(B+C)}の値の範囲も規定されていない点。 <相違点3> 本件発明8では、電解液を循環させるための送液ポンプと、電解液と水素及び/又は酸素とを分離する気液分離タンクと、水を補給するための水補給器とを含む、電解装置を用いるのに対し、甲1-2発明では、前記送液ポンプ、気液分離タンク、及び水補給器を含む電解装置について明記されておらず、不明である点。 <相違点4> 本件発明8では、 式(1):Re=Q/(電極室当たりの整流板の数+1)×{(2×D)/(B+C)}/(ν×D) (式中、Qは、電極室当たりの電解液の流量(m3/秒)を示し、νは、電解液の動粘度(m2/秒)を示し、Dは前記電極室の前記所与の方向に垂直な面における整流板で仕切られた断面積(m2)を示す) から算出される電解液レイノルズ数Reを10~1800として電解液を循環させることによって電解を行うのに対し、甲1-2発明では、前記電解液レイノルズ数Reを10~1800として電解液を循環させることについて明記されておらず、不明である点。 エ 以下では、事案に鑑み、相違点2について検討する。 (ア) 上記(6)コの検討と同じ理由で、上記相違点2に係る本件発明8の構成は、甲1-2発明及び甲2~5の記載事項に基いて、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 (イ)したがって、本件発明8は、相違点3~4について検討するまでもなく、甲1-2発明及び甲2~5の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 (9)本件発明10と甲1-3の対比及び判断 ア 本件発明10と甲1-3の対比について、本件発明1と甲1-1発明との対比(上記(6)ア~キ)と同様である。 イ そうすると、本件発明10と甲1-3発明とは、以下の点で一致する。 <一致点> 「アルカリを含有する水を電解槽により水電解し、水素を製造する水素製造方法において、前記電解槽は、陽極と、陰極と、前記陽極と前記陰極とを隔離する隔壁と、前記隔壁を縁取る外枠とを備える複数のエレメントが隔膜を挟んで重ね合わせられ、前記隔膜が前記陽極及び前記陰極と接触してゼロギャップ構造が形成され、前記隔壁と前記外枠と前記隔膜とにより画成される電極室が設けられた電解槽である、水素製造方法。」 ウ そして、本件発明10と甲1-3発明とは、以下の点で相違する。 <相違点5> 本件発明10では、隔壁と外枠と隔膜とにより画成される電極室に互いに平行に並べられた複数の整流板が隔壁に沿う所与の方向に平行に設けられ、電極室の前記所与の方向の長さAが、0.40m以上4.0m以下であり、電極室の隔壁と隔膜の間の隔壁に垂直な方向の長さBが、0.0030m以上0.030m以下であり、複数の整流板の間隔Cが、0.050m以上0.1m以下であり、電極室の前記所与の方向に垂直な面における整流板で仕切られた断面積Dが、0.00050m2以上0.0050m2以下であり、{(2×D)/(B+C)}が、0.015m以上0.050m以下であるのに対し、甲1-3発明では、整流板が設けられておらず、前記A、B、C、Dの値の範囲も規定されておらず、さらに、{(2×D)/(B+C)}の値の範囲も規定されていない点。 エ 以下では、相違点5について検討する。 上記(6)コの検討と同じ理由で、上記相違点5に係る本件発明10の構成は、甲1-3発明及び甲2~5の記載事項に基いて、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 オ したがって、本件発明10は、甲1-3発明及び甲2~5の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 (10)申立人の主張 ア 申立人は、異議申立書において、以下の主張を行っている。 (ア)甲1の段落【0079】に、リブの間隔は(i)ガス滞留性(液やガスの流動を阻害)、(ii)圧変動(電解圧力や陽極室と陰極室との圧力差等を勘案)、(iii)陽極たわみ(電極が変形)、(iv)対電圧(電気抵抗が増したりする)等に影響する旨が記載されているから、前記(i)~(iv)を最適化するために、リブの間隔を適宜設定することは当業者が通常行うことであり、その際に、甲2~4に記載のリブ間隔(0.095m、0.096m、0.10m)を採用して、甲1に記載のリブ同士の間隔(0.050m~0.150m)の上限を0.1mとすることは、当業者が容易に成し得ることである。 (イ)甲5に記載されているように、電極室内の流路の相当直径Deが2D/(B+C)であることは、当業者に周知の技術的事項に過ぎず、電極室の断面積D、および、「{(2×D)/(B+C)}」が液の流動状態(ガス滞留性、セル内温度差、圧変動)に影響することは技術常識であるから、D=(B×C)、および、「{(2×D)/(B+C)}」を設定することは、当業者が通常行う設計事項である。 (ウ)甲1の電解槽に、甲2~5に記載された構成を置き換え又は組み合わせることは、当業者が容易に成し得ることであり、これにより得られる効果も甲1~5の記載から予測可能なものに過ぎない。 イ 以下、上記ア(ア)~(ウ)の主張について検討する。 (ア)主張ア(ア)について a 上記(6)カ等において指摘したように、甲1に記載された「リブ」は、電解液やガスの流動を制御する機能を有しておらず、本件発明1の整流板のように、電極室内における気液の流れの乱れにより電極室に生じる対流を低減するものとは認められない。そのため、甲1発明おいて「リブ」の間隔を最適化し、甲2~4の記載に基づき、「リブ」同士の間隔を0.05m~0.1mとしたところで、上記「リブ」は、本件発明の「整流板」とはいえないから、本件発明の「複数の整流板の間隔Cが、0.050m以上0.1m以下であ」るとの構成を充足しない。 b よって、上記主張ア(ア)は、採用できない。 (イ)主張ア(イ)について a 上記(5)ア(ア)~(イ)に記載されているように、甲5には、管路の断面が円形でない場合においてレイノルズ数を計算する際に、管路の断面積を以下の式で表される相当直径Deとすれば計算できることが示されている。 De = 4×(流れの断面積S)/(流体が接している固体壁周辺の長さlp) b そして、上記式と、本件明細書の段落【0055】及び【0186】の記載を勘案すれば、本件発明における隔壁、隔膜、及び隣り合う整流板で囲まれた領域(管路)の相当直径が{(2×D)/(B+C)}であることは導ける。 c しかし、甲5には、甲1に記載されている管路の相当直径を特定の値に設定する動機について記載されていない。 d 管路の相当直径を本件発明のような特定の値に設定するには、管路を層流にしないと、電解中の電解セルにおける液・ガス滞留性(バックミキシング現象の発生度合)が発生し、電解室内における気液の流れの乱れにより電解室に生じる対流に起因してセル内に温度差が発生するとの知見が必要であるが、前記知見は、本件特許により見いだされたものであり、いずれの甲号証にも記載されていない。 e したがって、甲5の記載を参照しても、甲1発明において、D=(B×C)、および、「{(2×D)/(B+C)}」を特定の値に設定できるとはいえないし、D=(B×C)、および、「{(2×D)/(B+C)}」を特定の値に設定する動機も生じない。 f よって、上記主張ア(イ)は、採用できない。 (ウ)主張ア(ウ)について a 上記(6)コ(シ)において指摘したように、本件発明は、上記(6)コ(ケ)a~fとなるように調整することで、電解中の電解セルにおける液・ガス滞留性(バックミキシング現象の発生度合)を低減させ、電解室内における気液の流れの乱れにより電解室5に生じる対流に起因して発生するセル内の温度差を低減させる等の格別な効果を奏するものである。 b そして、上記(2)~(5)に記載されているように、甲2~5には、電解液やガスの流動を制御する思想、特に、気液の流れの乱れにより電極室に生じる対流を制御する思想はない。 c したがって、甲2~5には、上記aの格別な効果が予測可能といえる具体的な根拠がない。 d よって、上記主張ア(ウ)は、採用できない。 (11)小括 以上の検討から、本件発明1、2、8、10は、甲1発明及び甲2~5の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえず、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものとはいえないから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当しないものであり、取り消すことはできない。 6 申立理由1のイ(進歩性)について (1)本件発明3~7、11~19は、本件発明1または2を直接もしくは間接的に引用するものであり、本件発明1または2をさらに減縮したものである。 (2)また、本件発明9は、本件発明8を引用するものであり、本件発明8をさらに減縮したものである。 (3)ここで、上記5において検討したとおり、本件発明1、2、8は、甲1発明及び甲2~5の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 (4)そうすると、上記(1)~(3)から、本件発明3~7、11~19は、新たな一致点及び相違点の検討、及び前記一致点及び相違点の検討の際に用いられる甲7~9について検討するまでもなく、甲1発明及び甲2~5の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 (5)したがって、本件発明3~7、9、11~19は、甲1発明及び甲2~5、7~9の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえず、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものとはいえないから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当しないものであり、取り消すことはできない。 7 申立理由2(新規事項)について (1)令和 2年 6月17日提出の手続補正書において、請求項1、2、10における複数の整流板の間隔Cの範囲を「0.050m以上0.19m以下」から、「0.050m以上0.1m以下」と変更する補正が行われており、本件発明1、2、10においても、複数の整流板の間隔Cの範囲は「0.050m以上0.1m以下」と変更されたままである。 (2)上記補正の適否を判断するために、本件当初明細書等について検討する。 本件当初明細書等には、以下の事項が記載されている。 ア 「 【0052】 上記効果をさらに高める観点に加え、電極室5内の気液比の断続的な変動による圧力変動を抑制する観点から、上記長さA、上記長さB、上記間隔Cを、下記の範囲とすることが好適である。 本実施形態では、上記長さAについて、0.40m以上3.0m以下であることが好ましく、0.50m以上2.5m以下であることがさらに好ましく、0.60m以上2.0m以下であることがより好ましい。 本実施形態では、上記長さBについて、0.0050m以上0.025m以下であることが好ましく、0.0060m以上0.023m以下であることがさらに好ましく、0.0070m以上0.020m以下であることがより好ましい。 本実施形態では、上記間隔Cについて、0.060m以上0.12m以下であることが好ましく、0.070m以上0.11m以下であることがさらに好ましく、0.080m以上0.10m以下であることがより好ましい。 上記長さAの範囲、上記長さBの範囲、上記間隔Cの範囲は、本発明の効果を好適に得るうえで、それぞれ個別に選択されてもよい。」 イ 「 【0072】 本実施形態の電解槽は、 陽極と、・・・複数の整流板の間隔Cが、0.050m以上0.19m以下である、 ことを特徴とし、・・・」 ウ 「 【0194】(水素製造方法) 本実施形態の水素製造方法は、・・・ 電解槽は、電極室の隔壁に沿う所与の方向の長さAが、0.40m以上4.0m以下であり、電極室の隔壁に垂直な方向の長さBが、0.0030m以上0.030m以下であり、複数の整流板の間隔Cが、0.050m以上0.19m以下である。」 (3)上記(2)ア~ウから、本件当初明細書等には、複数の整流板の間隔Cの範囲の下限を「0.050m」、上限を「0.1m」とすることが記載されていたといえる。 (4)したがって、複数の整流板の間隔Cの範囲として「0.050m以上0.1m以下」は、本件当初明細書等に記載されたものであるといえ、上記(1)の補正は、本件当初明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであり、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていたといえる。 (5)よって、令和 2年 6月17日提出の手続補正書でした補正は、本件当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしているから、本件発明1、2、10に係る特許は、同法第113条第1号に該当せず、取り消すことはできない。 8 申立理由3のア(サポート要件)について (1)本件発明の解決しようとする課題 ア 本件明細書等には、本件発明の解決しようとする課題について、以下の事項が記載されている。 (ア)「 【0003】 再生可能エネルギーは、出力が気候条件に依存するため、その変動が非常に大きいという性質がある。そのため、再生可能エネルギーによる発電で得られた電力を一般電力系統に輸送することが常に可能とはならず、電力需給のアンバランスや電力系統の不安定化等の社会的な影響が懸念されている。 【0004】 そこで、再生可能エネルギーから発電された電力を、貯蔵及び輸送が可能な形に代えて、これを利用しようとする研究が行われている。具体的には、再生可能エネルギーから発電された電力を利用した水の電気分解(電解)により、貯蔵及び輸送が可能な水素を発生させ、水素をエネルギー源や原料として利用することが検討されている。」 (イ)「 【0006】 水の電気分解の方法としては、固体高分子型水電解法、高温水蒸気電解法、アルカリ水電解法等がある。この中で、数十年以上前から工業化されていること、大規模に実施することができること、他の水電解装置に比べると安価であること等から、アルカリ水電解は特に有力なものの一つとされている。 【0007】 しかしながら、アルカリ水電解を今後エネルギーの貯蔵及び輸送のための手段として適応させるためには、前述のとおり出力の変動が大きい電力を効率的且つ安定的に利用して水電解を行うことを可能にする必要がある。そのため、アルカリ水電解用の電解セルや装置の諸課題を解決することが求められている。 【0008】 アルカリ水電解において電解電圧を低く抑えて、水素製造の電力原単位を改善するという課題を解決するためには、電解セルの構造として、特に、隔膜と電極との隙間を実質的に無くした構造である、ゼロギャップ構造と呼ばれる構造を採用することが有効なことはよく知られている(特許文献1、2参照)。ゼロギャップ構造では、発生するガスを電極の細孔を通して電極の隔膜側とは反対側に素早く逃がすことによって、電極間の距離を低減しつつ、電極近傍におけるガス溜まりの発生を極力抑えて、電解電圧を低く抑制している。ゼロギャップ構造は、電解電圧の抑制にきわめて有効であり、種々の電解装置に採用されている。 【0009】 一方、効率的且つ安定的なアルカリ水電解を実現するためには、電極や隔膜の最適な選択、電解セルの構造の最適化等が重要であることも、Detlef Stoltenらにより報告されている(非特許文献1参照)。さらに、近年、ゼロギャップ構造を有するアルカリ水電解用電解セルについて上述の諸課題に取り組む研究が盛んに行われている(特許文献3、4参照)。」 (ウ)「 【発明が解決しようとする課題】 【0012】 しかしながら、前述の従来の電解セルでは、電解装置に与えられる電流密度を大幅に高め、電解設備のスループットを高めて、電解設備について建設コストの削減やフットプリントの改善を図るうえで、問題があることがわかってきた。 【0013】 理論上、電流密度を高めた場合、電解時のオーム損が増加して、電解電圧が上昇することは避けられない。従来の電解セルを用いたアルカリ水電解では、電流密度を例えば2倍、3倍と高めた場合には、電解電圧が大幅に上昇し、電気を水素に変換する際のエネルギー変換効率が大幅に悪化する。さらには、エネルギー変換効率の悪化に伴って電極で発生する熱が増加して、電解液の温度が大幅に上昇する。この場合、隔膜等の電解装置の部材の劣化が特に助長され、長期的な運転に支障が出たり、電解液の沸騰により運転の継続に困難が生じたりする可能性もある。上記事情により、従来の電解装置は、標準的な単位電解面積当たりの電流密度を約2kA/m2程度として、運転されている。しかしながら、このような低水準以下の電流密度で電解装置を運転しなければならないとすると、電解設備が大型化することとなり、建設コストの上昇やフットプリントの悪化を招く虞があった。 【0014】 そこで、本発明は、ゼロギャップ構造を有する電解槽を用いたアルカリ水電解において、エネルギー変換効率を高めて、電解液の温度の上昇を抑制することを目的とする。」 (エ)「 【0015】 発明者らは上述の課題を解決するため、アルカリ水電解中の電解液やガスの流れを観察しつつ、鋭意検討をしたところ、電流密度と陽極室及び陰極室での電解液及びガスのバックミキシング現象に相関が見られた。すなわち、電流密度の上昇に応じて、バックミキシング現象が増加し、オーム損が増大する結果が生じることを見出した。また、このとき、電解セル内の電解液の温度の上昇が顕著になり、電解液中に局所的に高温になる箇所が発生することも見出された。 【0016】 そして、発明者らは、電解セルにおける陽極室及び陰極室の高さや厚みを特定の範囲とし、さらに電解液や発生するガスの流れ方向に特定の間隔で整流板を設けることで、ゼロギャップ構造を有する電解槽において、これらのバックミキシングを抑制することを見出した。すなわち、電解液や水素及び酸素のガスの流れを適切な範囲に制御することにより、特に電流密度が高い場合のオーム損の増大を抑制でき、さらに、電極での発熱を適切な範囲に制御できることを見出し、本発明をなすに至った。」 (オ)「 【発明の効果】 【0022】 本発明によれば、ゼロギャップ構造を有する電解槽を用いたアルカリ水電解において、エネルギー変換効率を高めて、電解液の温度の上昇を抑制することができる。」 イ 上記ア(ア)~(オ)から、発明の詳細な説明には、ゼロギャップ構造を有する電解槽において、電解セルにおける陽極室及び陰極室の高さや厚みを特定の範囲とし、さらに電解液や発生するガスの流れ方向に特定の間隔で整流板を設けることで、アルカリ水電解を行った場合に、電解液及びガスのバックミキシング現象を抑制し、オーム損の増大を抑制し、電極での発熱を適切な範囲に制御することができる程度に、電解液や水素及び酸素のガスの流れを適切な範囲に制御するという、電解槽の構造そのものに対する課題が記載されていると認められる。 (2)発明の課題を解決する手段 ア 発明の詳細な説明には、上記(1)イの課題を解決する手段に関し、以下の事項が記載されている。 (ア)「 【0034】 本実施形態のアルカリ水電解用複極式電解槽50では、図2に示すとおり、隔膜4が陽極2a及び陰極2cと接触してゼロギャップ構造Zが形成されている。 【0035】 アルカリ水電解において、隔膜4と、陽極2aや陰極2cとの間に隙間がある場合、この部分には電解液の他に電解で発生した大量の気泡が滞留することで、電気抵抗が非常に高くなる。電解セル65における大幅な電解電圧の低減を図るためには、陽極2aと陰極2cの間隔(以下、「極間距離」ともいう。)をできるだけ小さくして、陽極2aと陰極2cの間に存在する電解液や気泡の影響をなくすことが効果的である。 【0036】 そこで、電極2全面にわたり、陽極2aと隔膜4とが互いに接触し、且つ、陰極2cと隔膜4とが互いに接触している状態、又は、電極2全面にわたり、極間距離が隔膜4の厚みとほぼ同じとなる距離で、陽極2aと隔膜4との間及び陰極2cと隔膜4との間に隙間のほとんど無い状態、に保つことのできる、ゼロギャップ構造Zが採用される。」 (イ)「 【0049】 ここで、本実施形態のアルカリ水電解用複極式電解槽50では、電極室5の隔壁に沿う所与の方向の長さAが、0.40m以上4.0m以下であり、電極室5の隔壁1に垂直な方向の長さBが、0.0030m以上0.030m以下であり、複数の整流板6の間隔Cが、0.050m以上0.19m以下である。」 (ウ)「 【0051】 本実施形態のアルカリ水電解用複極式電解槽50によれば、上記長さA、上記長さB、上記間隔Cを、上記のとおり規定することで、電解液及びガスの流れを幅広い電解条件で改善し、バックミキシング現象を制御することで、高電流密度運転時の電解過電圧の急激な上昇を抑え、生産性の高いゼロギャップ構造Zを有する複極式電解槽50の設計が可能になる。 ひいては、高電流密度での運転や変動電源での運転で用いてアルカリ水電解を行った際に電解室5出口の高温化を低減することで、電解液の温度の上昇を抑制する、電解室5内における気液の流れの乱れにより電解室5に生じる対流を低減して、局所的な電解液の温度の上昇を抑制することができ、長期に渡って安定して高い電解効率を実現することができる。」 (エ)「 【0054】 さらに、発明者らは、特に風力や太陽光等の再生可能エネルギーから得られる変動する電源での運転時に、電極室5内の気液比の断続的な変動により、電解液の乱れが増長されることが観測されたことから、これを克服する方法を種々検討した結果、下記好適特徴を見出した。 本実施形態(例えば、上記[1]~[20]の形態等)のアルカリ水電解用複極式電解槽50では、電極室5の隔壁1に沿う所与の方向D1に垂直な面における断面積Dが、0.00050m2以上0.0050m2以下であり、{(2×D)/(B+C)}が、0.015m以上0.050m以下であることが好ましい。 【0055】 なお、上記断面積Dは、電極室5の隔壁1に沿う所与の方向D1に垂直な面における断面形状が略矩形である場合、(前述の長さB)×(前述の間隔C)としてよい。 また、上記{(2×D)/(B+C)}は、一般的に前記断面形状が略矩形である場合、水力直径Dhを示すものであり、断面積Dと合わせて流体の流れ状態に相関する因子である。 【0056】 上記断面積D及び上記{(2×D)/(B+C)}を上記のとおり規定することで、幅広い電解液流量の範囲、電解液温度の範囲において、液及びガスの流れを制御し、気液比の乱れを抑える効果を容易に発現することができる。これにより、気液分離状態が改善され、電極室5内の圧力変動や両極室間の差圧変動を抑制させやすい。 ひいては、電解室5出口の高温化を低減することで、電解液の温度の上昇を抑制する、電解室5内における気液の流れの乱れにより電解室5に生じる対流を低減して、局所的な電解液の温度の上昇を抑制するという本発明の効果を、より高い電流密度、より多くのセル数を有する電解槽50においても、安定して高めることができる。」 (オ)「 【0186】 (アルカリ水電解方法) 本実施形態のアルカリ水電解方法は、本実施形態のアルカリ水電解用電解装置70を用いて、下記式(3)から算出される電解液レイノルズ数Reを10~1800として、電解液を循環させて電解を行う、 式(3):Re=Q/(電極室当たりの整流板の数+1)×{(2×D)/(B+C)}/(ν×D) (式中、Qは、電極室当たりの電解液の流量(m3/秒)を示し、νは、電解液の動粘度(m2/秒)を示す) 【0187】 なお、式(3)中のA、B、C、Dは、本実施形態の複極式電解槽50について定めた値であり、具体的には、Aは、電極室5の隔壁1に沿う所与の方向D1の長さであり、Bは、電極室5の電極2に垂直な方向の長さであり、Cは、複数の整流板6の間隔であり、Dは、B×Cで表される、電極室5の隔壁1に沿う所与の方向D1に垂直な面における断面積である。 そして、A、B、C、Dの好適範囲は、本実施形態の複極式電解槽50について前述のとおりとしてよい。すなわち、電解セルのA、B、C、Dの設計に応じて、電極室当たりの電解液の流量Qを、電解液レイノルズ数Reが10~1800の範囲になるように、制御すればよい。」 (カ)「 【0198】 (実施例A1) 実施例A1では、下記に説明するとおり、水電解中に発生するガスの流れを視認可能なモデル電解槽を使用して、アルカリ水電解を行った。 【0199】 モデル電解槽を下記のとおり作製した。 図9に、本実施例Aのモデル電解槽の概要を示す。(A)に、モデル電解槽の正面図(左図)及び側面図(右図)を示し、(B)に、モデル電解槽の電極室を形成したアクリル板を斜視図で示し、(C)に、モデル電解槽におけるゼロギャップ構造を示す。 【0200】 -隔壁、外枠、整流板- モデル電解槽を構成する隔壁及び外枠3として、電解セル内部を視認できる透明な材質(アクリル)で構成されているセル枠を用いた。 まず、厚みQ:75mm、横幅R:300mm、縦幅P:1.45m又は2.65mのアクリル板を用意した。 次いで、このアクリル板を、図9(B)に示すように、片面側から電極室となる空間の分(所定の厚み、横幅:250mm、所定の縦幅)だけ削り、所望の長さA及び長さBを有する所望のサイズの電極室を有する箱型のセル枠を準備した。 例えば、長さAを1.2mとした例では、縦幅P:1.45mのアクリル板を用意し、長さAを2.4mとした例では、縦幅P:2.65mのアクリル板を用意した。いずれの場合にも、平面視において、電極室がアクリル板の中央に位置するように、配置した。 そして、整流板として、厚さ3mmのアクリル板を、横幅Rの方向に沿って所望の間隔Cで、2枚~4枚設けた。このとき、2~4枚の整流板は、電極室の横幅Rの方向の中心に関して対称となるように配置した。また、整流板の延在方向の端と電極室との縦幅Pの方向の間隔は、両端において100mmとした。」 (キ)「 【0220】 実施例A及び比較例Aにおける評価結果を表1に示す。 【0221】 (1)ガス滞留性 電解中の電解セルにおける液・ガス滞留性の評価として、モデル電解槽の目視評価により、電極室内のバックミキシング現象の発生度合を、以下の評価基準で評価した。結果を表1に示す。 <評価基準> A(優れる):発生頻度は少なく、数秒ですぐに消失する B(良好):発生頻度は多いが、数秒ですぐに消失する C(実用可能):発生頻度は多く、5分以上消失しない D(不良):常に発生しており、消失しない 【0222】 (2)セル内温度差 電解中の電解セルにおいて複極式エレメントの電極室内の上下に均等配置した6箇所に挿入した熱電対により電解液の温度を計測し、6箇所における温度差の最大値を算出した。そして、温度差の最大値について以下の評価基準で評価した。結果を表1に示す。 <評価基準> A(優れる):4℃未満 B(良好):4℃以上25℃未満 C(実用可能):25℃以上50℃未満 D(不良):50℃以上 【0223】 (3)気液比の変動による圧力変動 圧力変動の評価として、陰極側出側ホース内の液・ガスの二相流状態を目視により評価した。結果を表1に示す。 <評価基準> A(優れる):層状流で二相が分離している、連続的な流れを形成している B(良好):波状流で二相が分離している、連続的な流れを形成している C(実用可能):スラグ流で二相は分離しておらず、断続的な流れが見られる D(不良):乱れた間欠流で常に断続的な流れが発生している 【0224】 (4)電極たわみ量 電解後の陽極を取り出し、電極のたわみ量を計測した。結果を表1に示す。 <評価基準> A(優れる):0.03mm未満 B(良好):0.03mm以上0.13mm未満 C(実用可能):0.13mm以上2.0mm未満 D(不良):2.0mm以上 【0225】 (5)対電圧 通電開始から60分後の時点でのセル電圧(V)を測定した。結果を表1に示す。」 (ク)「 [図:0001388360000025.jpg] 」 イ 上記ア(ア)~(ク)に示されているとおり、発明の詳細な説明には、電解槽の構造を、 (ア)陽極と、陰極と、陽極と陰極とを隔離する隔壁と、隔壁を縁取る外枠とを備える複数のエレメントが隔膜を挟んで重ね合わせられ、 (イ)隔膜が陽極及び陰極と接触してゼロギャップ構造が形成され、 (ウ)電極室が隔壁と外枠と隔膜とにより画成され、 (エ)複数の整流板が、電極室に、互いに平行に、かつ、隔壁に沿う所与の方向に平行に設けられ、 (オ)電極室の上記所与の方向の長さAが、0.40m以上4.0m以下であり、 (カ)電極室の隔壁と隔膜の間の隔壁に垂直な方向の長さBが、0.0030m以上0.030m以下であり、 (キ)複数の整流板の間隔Cが、0.050m以上0.19m以下であり、 (ク)電極室の上記所与の方向に垂直な面における整流板で仕切られた断面積Dが、0.00050m2以上0.0050m2以下であり、さらに、 (ケ){(2×D)/(B+C)}が、0.015m以上0.050m以下である、 ようにすることで、上記(1)イの課題を解決できることが示されている。 (3)本件発明1、3~6、11~19についての検討 ア 上記第3の特許請求の範囲の記載を参照すれば明らかなように、本件発明1、3~6、11~19は、上記(2)イ(ア)~(ケ)の構成が全て含まれている構造の電解槽であるから、本件発明1、3~6、11~19は、上記(1)イの課題を解決できるといえる。 (4)本件発明の解決しようとする課題を、本件明細書の段落【0014】の記載とした場合の検討 ア 仮に、申立人が異議申立書において主張しているように、本件発明の解決しようとする課題が、本件明細書の段落【0014】に記載されたとおり、「ゼロギャップ構造を有する電解槽を用いたアルカリ水電解において、エネルギー変換効率を高めて、電解液の温度の上昇を抑制すること」と、アルカリ水電解に用途が限定されたものである場合について検討する。 イ 上記(1)ア(イ)には、本件発明1、3~6、11~19における「ゼロギャップ構造」は、アルカリ水電解用の電解槽に適用される構造であることが示されている。 ウ また、上記(1)イ(オ)、(カ)~(ク)は、本件発明1、3~6、11~19におけるA~Dの値の範囲および{(2×D)/(B+C)}の値の範囲が、アルカリ水電解を行う際の電解液の動粘度ν(m2/秒)と電極室当たりの電解液の流量(m3/秒)を用いて、電解液レイノルズ数Reが10~1800の範囲となるように調整されていることを示しており、これから、本件発明1、3~6、11~19におけるA~Dの値の範囲および{(2×D)/(B+C)}の値の範囲は、アルカリ水電解用の電解槽用の数値範囲ということができる。 エ そうすると、本件発明1、3~6、11~19は、明示的に「アルカリ水電解用電解槽」とされていないものの、実質的に「アルカリ水電解用電解槽」であるといえる。 オ したがって、本件発明の解決しようとする課題が、仮に、本件明細書の段落【0014】に記載されたとおり、「ゼロギャップ構造を有する電解槽を用いたアルカリ水電解において、エネルギー変換効率を高めて、電解液の温度の上昇を抑制すること」であったとしても、本件発明1、3~6、11~19は、前記課題を解決する手段が反映されたものであり、上記アの課題を解決できるといえる。 (5)小括 以上から、本件発明1、3~6、11~19は、発明の詳細な説明に記載されたものであるといえ、特許法第36条第6項第1号に適合しないものであるといえないから、同発明に係る特許は、同法第113条第4号に該当しないものであるため、取り消すことはできない。 9 申立理由3のイ(サポート要件)について (1)上記8で検討したように、本件発明は、電解槽の構造を、上記8(2)イ(ア)~(ケ)のようにすることで、アルカリ水電解を行った場合に、電解液及びガスのバックミキシング現象を抑制し、オーム損の増大を抑制し、電極での発熱を適切な範囲に制御するものである。 (2)そうすると、本件明細書の実施例に、Aの値が1.2mと0.5mの2点しかなく、上限値付近での実施例が欠落していたとしても、上記5(5)ア(ア)~(イ)に記載されたようなレイノルズ数と層流及び乱流との関係、上記8(2)ア(オ)に記載された電解液レイノルズ数Reの値の制御指針、及び上記8(2)ア(ク)における実施例及びで設定されている電解液レイノルズ数Reの設定値を勘案すれば、本件発明の実施例における電解液は安定した層流となっているといえるから、Aの上限値付近において、電解液及びガスのバックミキシング現象を抑制できない程度まで、電解液の挙動が突然大きく変動するということは考えにくい。 (3)そして、上記(2)を覆し、Aの上限値付近で、電解液及びガスのバックミキシング現象を抑制できない程度まで、電解液の挙動が突然大きく変動することを合理的に理解できるような技術常識は認められない。 (4)したがって、本件明細書等の記載から、本件発明が発明の課題を解決できると当業者が認識できるため、本件発明は、発明の詳細な説明に記載されたものである。 よって、本件明細書等の記載からでは、本件発明が発明の課題を解決できると当業者が認識できないから、発明の詳細な説明に記載されたものとはいえないとの申立人の主張は採用できない。 (5)よって、本件発明1、2、8、10は、発明の詳細な説明に記載されたものであり、特許法第36条第6項第1号に適合しないとはいえないから、同発明に係る特許は、同法第113条第4号に該当しないものであり、取り消すことはできない。 10 申立理由3のウ(サポート要件)について (1)上記9の検討と同内容の理由で、本件明細書等の記載から、発明の課題を解決できると当業者が認識できるため、本件発明は、発明の詳細な説明に記載されたものである。 よって、本件明細書等の記載からでは、発明の課題を解決できると当業者が認識できないから、発明の詳細な説明に記載されたものとはいえないとの申立人の主張は採用できない。 (2)よって、本件発明1、2、10は、発明の詳細な説明に記載されたものであり、特許法第36条第6項第1号に適合しないとはいえないから、同発明に係る特許は、同法第113条第4号に該当しないものであり、取り消すことはできない。 11 申立理由4(明確性)について (1)本件発明では、断面積Dは、D=B×Cで表され、Bの範囲は0.0030~0.030mであり、Cの範囲は、0.05~0.1mであるから、Dの範囲の上限は0.0030m2となる。 (2)一方、本件発明のDの範囲は、上記第3の特許請求の範囲に記載されたとおり、0.00050~0.0050m2である。 (3)上記(1)、(2)から、本件発明においては、単に、Dの範囲である「0.00050~0.0050m2」から、D=B×Cで計算される範囲の上限である0.0030m2を超える数値については、本件発明の範囲外であるというにすぎず、そこに、技術的な欠陥や矛盾は認められない。 (4)よって、本件発明1、2、10は、特許を受けようとする発明が明確であり、特許法第36条第6項第2号に適合しないものであるといえないから、同発明に係る特許は、同法第113条第4号に該当しないものであり、取り消すことはできない。 第6 結言 以上のとおりであるから、当審の取消理由及び異議申立理由によっては、本件特許の請求項1~19に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1~19に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、上記結論のとおり決定する。

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2021-700555

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