特許拒絶査定不服審判
2017-003167
流し込み施肥用肥料袋、及び流し込み施肥方法
- 審判番号
- 2017-003167
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2013-015442
- 請求日
- 2017年03月03日
- 審決日
- 2018年02月19日
- 公報発行日
- 2018年04月27日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】多木化学株式会社
- 【請求人代理人】特許業務法人YKI国際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 小野 忠悦
- 審判官 住田 秀弘
- 審判官 西田 秀彦
- 分類
- P18 .121-WY (A01G) / P18 .571-WY (A01G) / P18 .572-WY (A01G) / P18 .574-WY (A01G) / P18 .581-WY (A01G)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第3項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2013- 15442「流し込み施肥用肥料袋、及び流し込み施肥方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 8月14日出願公開、特開2014-143968、請求項の数(12)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成25年1月30日の出願であって、平成28年8月15日付けで拒絶理由通知がされ、平成28年10月5日に手続補正がされ、平成28年11月28日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成29年3月3日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。
第2 原査定の概要
原査定(平成28年11月28日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
理由
(進歩性)この出願の請求項1-14に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1.特開2000-143378号公報
2.実願昭63-129124号(実開平2-49815号)のマイクロフィルム
第3 審判請求時の補正について
(1)補正事項
審判請求時の補正は、次のとおりである。(下線は補正事項を示す。)
ア 補正事項1
請求項1に「固形肥料が肥料袋に充填された肥料製品を、圃場の水口からの水の直撃を受ける場所に、前記肥料製品の袋表裏面が地面に対して略平行となるように設置する流し込み施肥方法用の流し込み施肥用肥料製品にかかる流し込み施肥用肥料袋であって、」を追加する。
イ 補正事項2
補正前の請求項1に「固形肥料が充填される充填部と、前記充填部を密閉する封止部と、を備えた流し込み施肥用肥料袋であって、」とあるのを、「前記肥料袋は固形肥料が充填される充填部と、前記充填部を密閉する封止部と、を備え、」と補正する。
ウ 補正事項3
補正前の請求項8に「肥料製品を圃場の水口に設置して」とあるのを、「肥料製品を、圃場の水口からの水の直撃を受ける場所に、前記肥料製品の袋表裏面が地面に対して略平行となるように設置して」と補正する。
エ 補正事項4
補正前の請求項9及び請求項14を削除する。
オ 補正事項5
補正前の請求項10を請求項9に繰り上げ、「肥料製品を、圃場の水口に設置して」とあるのを、「肥料製品を、圃場の水口からの水の直撃を受ける場所に、前記肥料製品の袋表裏面が地面に対して平行となるように設置して」と補正する。
カ 補正事項6
補正前の請求項11、12、13を請求項10、11、12に繰り上げ、補正前の請求項11に「請求項10に記載の方法において、」とあるのを、請求項10において「請求項9に記載の方法において、」と補正し、同じく請求項12に「請求項11に記載の方法において、」とあるのを、請求項11において「請求項10に記載の方法において、」と補正し、同じく請求項13に「請求項10~12の何れか1項に記載の方法において、」とあるのを、請求項12において「請求項9~11に記載の何れか1項に記載の方法において、」と補正する。
(2)補正の適否
ア 補正事項1について
補正事項1は、補正前の請求項1に「固形肥料が肥料袋に充填された肥料製品を、圃場の水口からの水の直撃を受ける場所に、前記肥料製品の袋表裏面が地面に対して略平行となるように設置する流し込み施肥方法用の流し込み施肥用肥料製品にかかる流し込み施肥用肥料袋であって、」という事項を追加して、流し込み施肥用肥料袋について具体的に限定する補正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、本件出願の出願当初の特許請求の範囲に、「【請求項10】・・・前記肥料製品の袋表裏面が地面に対して略平行となるように、前記肥料製品を設置することを特徴とする流し込み施肥方法。」と、同じく明細書に、「【0039】表示18を非端縁領域17内に形成することにより、開口部20が水口102から流入する水の直撃を受け難くすることができる。・・・」などと記載されていることから、補正事項1は、当初明細書等に記載された事項であり、新規事項を追加するものではない。
イ 補正事項2について
補正事項2は、補正事項1で「流し込み施肥用肥料袋」等を追加したことに伴い、重複することとなった補正前の「流し込み施肥用肥料袋」を「前記肥料袋」に補正した上で、文を整合させるものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
そして、新規事項を追加するものではないことは明らかである。
ウ 補正事項3
補正事項3は、肥料製品の設置について、「圃場の水口からの水の直撃を受ける場所に、前記肥料製品の袋表裏面が地面に対して略平行となるよう」との態様に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、本件出願の当初明細書の特許請求の範囲に、「【請求項10】・・・前記肥料製品の袋表裏面が地面に対して略平行となるように、前記肥料製品を設置することを特徴とする流し込み施肥方法。」と、同じく明細書に、「【0039】表示18を非端縁領域17内に形成することにより、開口部20が水口102から流入する水の直撃を受け難くすることができる。・・・」などと記載されていることから、補正事項4は、当初明細書等に記載された事項であり、新規事項を追加するものではない。
エ 補正事項4
補正事項4は、請求項の削除を目的とするものであって、新規事項を追加するものではないことは明らかである。
オ 補正事項5
補正事項5は、上記補正事項4で請求項9を削除したことに伴い、請求項10を繰り上げて請求項9とした上で、肥料製品の設置について、「圃場の水口からの水の直撃を受ける場所に、前記肥料製品の袋表裏面が地面に対して略平行となるよう」との態様に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、本件出願の当初明細書の特許請求の範囲に、「【請求項10】・・・前記肥料製品の袋表裏面が地面に対して略平行となるように、前記肥料製品を設置することを特徴とする流し込み施肥方法。」と、同じく明細書に、「【0039】表示18を非端縁領域17内に形成することにより、開口部20が水口102から流入する水の直撃を受け難くすることができる。・・・」などと記載されていることから、補正事項5は、当初明細書等に記載された事項であり、新規事項を追加するものではない。
カ 補正事項6
補正事項6は、上記補正事項4で請求項9を削除したことに伴い、補正前の請求項11、12、13を請求項10、11、12と繰り上げた上に、各繰り上げた請求項が引用する請求項を整合させるものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
そして、新規事項を追加するものではないことは明らかである。
キ 独立特許要件
「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1-12に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。
(3)まとめ
補正事項1~4は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。
第4 本願発明
本願請求項1-12に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明12」」といい、全体を「本願発明」という。)は、平成29年3月3日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-12に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。
【請求項1】
固形肥料が肥料袋に充填された肥料製品を、圃場の水口からの水の直撃を受ける場所に、前記肥料製品の袋表裏面が地面に対して略平行となるように設置する流し込み施肥方法用の流し込み施肥用肥料製品にかかる流し込み施肥用肥料袋であって、
前記肥料袋は固形肥料が充填される充填部と、前記充填部を密閉する封止部と、を備え、
前記充填部は、袋表面側から平面視したときに略矩形形状(以下、当該略矩形形状を形成する第1辺の長さをL1、第2辺の長さをL2、且つ、L1≦L2とする)を呈し、
流し込み施肥を行う際に前記充填部に形成される切り込み開口部の形成予定位置を特定する切り込み開口部用表示が、袋表裏面の少なくとも一方において、前記略矩形形状の周縁の幅0.1×L1の領域を除いた非端縁領域内に形成されることを特徴とする流し込み施肥用肥料袋。
【請求項2】
請求項1に記載の肥料袋において、
前記切り込み開口部用表示は、直線状、曲線状、波形状、鋸歯状、凸レンズ状、凹レンズ状、楕円状又は多角形状であることを特徴とする流し込み施肥用肥料袋。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の肥料袋において、
前記切り込み開口部用表示は、最長部の長さが0.5cm~7cmであることを特徴とする流し込み施肥用肥料袋。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載の肥料袋において、
前記充填部の四隅の角を起点とした場合に、
前記切り込み開口部用表示は、前記袋表裏面の少なくとも一方の前記非端縁領域のうち、前記第1辺上の前記各起点から0.1×L1の位置及び0.4×L1の位置から前記第2辺に対して略平行に引いた第1の仮想線と、前記第2辺上の前記各起点から0.1×L1の位置及び0.4×L1の位置から前記第1辺に対して略平行に引いた第2の仮想線とに囲まれた各特定領域に少なくとも1箇所ずつ形成されることを特徴とする流し込み施肥用肥料袋。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載の肥料袋において、
前記切り込み開口部用表示は、直線状であり、前記第1辺又は前記第2辺に対して略平行に形成されることを特徴とする流し込み施肥用肥料袋。
【請求項6】
請求項1~4の何れか1項に記載の肥料袋において、
前記切り込み開口部用表示は、直線状であり、前記充填部の対角線に沿って形成されることを特徴とする流し込み施肥用肥料袋。
【請求項7】
請求項1~6の何れか1項に記載の肥料袋に、固形肥料が充填された流し込み施肥用肥料製品。
【請求項8】
請求項7に記載の肥料製品を、圃場の水口からの水の直撃を受ける場所に、前記肥料製品の袋表裏面が地面に対して略平行となるように設置して流し込み施肥を行う方法であって、
前記肥料袋の前記切り込み開口部の形成予定位置に前記切り込み開口部を形成することを特徴とする流し込み施肥方法。
【請求項9】
充填部と前記充填部を密閉する封止部とを備えた肥料袋に、
固形肥料が充填された肥料製品を、圃場の水口からの水の直撃を受ける場所に、前記肥料製品の袋表裏面が地面に対して略平行となるように設置して流し込み施肥を行う方法であって、
前記充填部が、袋表面側から平面視したときに略矩形形状(以下、当該略矩形形状を形成する第1辺の長さをL1、第2辺の長さをL2、且つ、L1≦L2とする)を呈するときに、
袋表裏面の少なくとも一方において、前記略矩形形状の周縁の幅0.1×L1の領域を除いた非端縁領域内に、切り込み開口部を形成することを特徴とする流し込み施肥方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法において、
前記切り込み開口部は、直線状、曲線状、波形状、鋸歯状、凸レンズ状、凹レンズ状、楕円状又は多角形状であることを特徴とする流し込み施肥方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法において、
前記切り込み開口部は、最長部の長さが0.5cm~7cmであることを特徴とする流し込み施肥方法。
【請求項12】
請求項9~11の何れか1項に記載の方法において、
前記充填部の四隅の角を起点とした場合に、
前記袋表裏面の少なくとも一方の前記非端縁領域のうち、前記第1辺上の前記各起点から0.1×L1の位置及び0.4×L1の位置から前記第2辺に対して略平行に引いた第1の仮想線と、前記第2辺上の前記各起点から0.1×L1の位置及び0.4×L1の位置から前記第1辺に対して略平行に引いた第2の仮想線とに囲まれた各特定領域に、前記切り込み開口部を少なくとも1箇所ずつ形成することを特徴とする流し込み施肥方法。
第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は審決で付与した。以下同様。)
ア 「【0021】本発明の多孔性化成肥料は、燐酸成分の少ない化成肥料や窒素とカリのみを含むNK化成肥料であって、嵩密度が低く、即溶性に富み、速効性を有する均一な多孔性の化成肥料であるので、水稲等の追肥用の施肥方法に適した水田への流し込み施肥方法を用いるのに最適である。水田への流し込み施肥方法とは、具体的には水田の水口から灌漑水が流入しているところに、本発明の多孔性化成肥料を投入してやることで、多孔性化成肥料が速やかに灌漑水に溶解しながら、水田に流れ込む灌漑水と共に水田内を移動して、均一に施肥されることとなる施肥方法のことである。多孔性化成肥料の投入法としては、より省力化するため、肥料袋の角に穴を空け、その穴が下に来るように肥料袋を水口に吊しておくことで多孔性化成肥料が投入されるような形にしてやることも可能である。」
イ 従って、上記引用文献1には次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。
「水田への流し込み施肥方法に用いる多孔性化成肥料の肥料袋であって、
角に穴を空け、その穴が下に来るように、灌漑水が流入している水田の水口に吊しておくことで多孔性化成肥料が投入されるような形にする、肥料袋。」
2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「〔実施例〕
この考案の実施例を以下第1図乃至第3図に基づいて説明する。
肥料袋1は、第1図に示すように、両端部を封着された塩化ビニール系の合成樹脂でなるものを使用している。
このような肥料袋1の一端部1aには第1図において夫々破線又は鎖線で示すような逆V字形状の切り取り線2、3が周縁を切り欠いて複数箇所に散布用穴4を形成するように印刷されている。この切り取り線2、3は第1図に示される肥料袋1の表面のみならず裏面においても同様に印刷されていてもよく、ナイフ又は鋏などで散布用穴4を切り取り線2、3に沿って切り欠いて容易に形成することができる。」(明細書4頁11行~5頁7行)
イ 「この考案の肥料袋1を使用して肥料等を散布するには以下のように行う。
先ず、第1図に示すように、肥料袋1の一端部に所定数の散布用穴4を切り取り線2に沿って、ナイフ等で切り欠いて形成し、このような肥料袋1を1~数個用意して第3図に示すように、肥料袋1の他端部1bを挾着保持可能に構成した保持具5によって保持させ、更に連結チェーン6によって保持具5を連結連結棒7(注:「連結連結棒7」は「連結棒7」の誤記と認める。)に遊動自在に吊支する。次に、連結棒7が保持具5と共に地面より吊り上げられて、しかも前記した肥料袋1の少なくとも一端部1aが接地状態となるように吊支チェーン8の長さを調節して、運搬車9の車体10に係止する。この状態で運搬車9の車速を一定に保ちながら農業用地の所望域を移動させると、一定の割合で均一に肥料を散布することができる。」(明細書6頁3~18行)
ウ 「〔効果〕
以上の説明からも明らかなように、この考案の肥料袋によると、肥料袋の一端部に切り取り線に沿って所定の大きさの散布用穴を所定数だけ容易に切り欠いて形成することができるので、散布用穴を形成した所定数の肥料袋を一端部を下向きにして農業用地内で移動させるだけで、地面に肥料等を一定の割合で均一に散布でき、しかも簡単な牽引装置を利用して、散布の費用を低減化することができるという利点がある。」(明細書7頁17行~8頁7行)
エ 上記アないしウからみて、引用文献2には次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されている。
「両端部を封着された合成樹脂でなる肥料袋1であって、
一端部1aに破線又は鎖線で示すような逆V字形状の切り取り線2、3が周縁を切り欠いて複数箇所に散布用穴4を形成するように印刷されており、
肥料等を散布するには、肥料袋1の一端部に所定数の散布用穴4を切り取り線2に沿って、ナイフ等で切り欠いて形成し、
他端部1bを挟着保持可能に構成した保持具5によって保持させ、更に連結チェーン6によって保持具5を連結棒7に遊動自在に吊支し、連結棒7が保持具5と共に地面より吊り上げられて、肥料袋1の少なくとも一端部1aが設置状態となるように吊支チェーン8の長さを調節して、運搬車9の車体10に係止し、この状態で運搬車9の車速を一定に保ちなが農業用地の所望域を移動させると、一定の割合で均一に肥料を散布することができる、肥料袋1。」
第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明1とを対比する。
引用発明1の「多孔性化成肥料」、「肥料袋」、「水田」、「水口」、「灌漑水が流入している水田の水口」、「流し込み施肥方法」は、それぞれ本願発明1の「固形肥料」、「肥料袋」、「圃場」、「水口」、「水の直撃を受ける場所」、「流し込み施肥方法」に相当する。
引用発明1の「穴」と、本願発明1の「切り込み開口部」とは、「開口部」で共通する。
また、一般的に、肥料袋は充填部と封止部を備え、平面視略矩形形状をしているから、引用発明1は、これらの一般的な構成、つまり、本願発明1の「前記肥料袋は固形肥料が充填される充填部と、前記充填部を密閉する封止部と、を備え、前記充填部は、袋表面側から平面視したときに略矩形形状(以下、当該略矩形形状を形成する第1辺の長さをL1、第2辺の長さをL2、且つ、L1≦L2とする)を呈」する構成を備えるものと認める。
したがって、本願発明1と引用発明1との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
固形肥料が肥料袋に充填された肥料製品を、圃場の水口からの水の直撃を受ける場所に設置する流し込み施肥方法用の流し込み施肥用肥料製品にかかる流し込み施肥用肥料袋であって、
前記肥料袋は固形肥料が充填される充填部と、前記充填部を密閉する封止部と、を備え、
前記充填部は、袋表面側から平面視したときに略矩形形状(以下、当該略矩形形状を形成する第1辺の長さをL1、第2辺の長さをL2、且つ、L1≦L2とする)を呈し、
流し込み施肥を行う際に前記充填部に開口部が形成される流し込み施肥用肥料袋。
(相違点1)本願発明1は、肥料製品の袋表裏面が地面に対して略平行となるように設置するのに対し、引用発明1は、穴が下に来るように肥料袋を吊す点。
(相違点2)本願発明1は、袋表裏面の少なくとも一方において、略矩形形状の周縁の幅0.1×L1の領域を除いた非端縁領域内に、切り込み開口部用表示が形成されるのに対し、引用発明1は、切り込み開口用表示が形成されていない点。
(2)相違点についての判断
引用文献2には引用発明2が記載されており、引用発明2の「切り取り線2、3」は、本願発明1の「切り込み開口用表示」に相当するものである。
しかしながら、引用発明2において、「切り取り線2、3」は「肥料袋1の一端部1a」に位置しているところ、「肥料等を散布するには、肥料袋1の一端部に所定数の散布用穴4を切り取り線2に沿って、ナイフ等で切り欠いて形成し、他端部1bを挟着保持可能に構成した保持具5によって保持させ、更に連結チェーン6によって保持具5を連結連結棒7に遊動自在に吊支し、連結棒7が保持具5と共に地面より吊り上げられて、肥料袋1の少なくとも一端部1aが設置状態となるように吊支チェーン8の長さを調節して、運搬車9の車体10に係止し、この状態で運搬車9の車速を一定に保ちなが農業用地の所望域を移動させると、一定の割合で均一に肥料を散布することができる」という「肥料袋1」の使用形態からみて、肥料袋1を、袋表裏面が地面に対して略平行に設置したり、散布用穴4を肥料袋1の一端部以外の箇所に形成しようと、当業者が思い付くものではない。
また、引用発明1も、「肥料袋の角に穴を空け、その穴が下に来るように肥料袋を水口に吊しておく」ものであって、引用文献1には、肥料袋を、袋表裏面が地面に対して略平行に設置したり、穴を肥料袋の一端部以外の箇所に形成することを示唆する記載はない。
そして、本願発明1が上記相違点2の構成を備えることにより、「開口部20が水口102から流入する水の直撃を受け難くすることができる。特に、開口部20が大きな水圧の直撃を受けると、多量の肥料が当該開口部20から流出する場合があり、さらに種々の条件が重なると、当該開口部20から流入した水が肥料袋10内の肥料全体を撹拌することなく、水の通り道を作って水口102と反対側の開口部20から流出することがある。後者の水の通り道ができたときには、肥料の溶出が不十分となる場合がある。従って、水口102から流入する水やその他の条件に左右されることなく、ある程度安定して肥料の溶出を行うためには、開口部20を非端縁領域17内に形成することが好ましい。」(段落【0039】)との、明細書記載の効果を奏するものと認められる。
してみると、引用文献2に「切り込み線2、3」が記載されているとしても、切り込み開口を端部以外の位置に設ける動機付けがないから、引用発明1の穴を非端縁領域に形成すること、つまり、当該穴の形成予定位置を特定する表示を、非端縁領域内に形成することにより、本願発明1の相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。
以上のことから、相違点1について検討するまでもなく、本願発明1は、引用文献1及び引用文献2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
2 本願発明2~本願発明8について
本願発明2~本願発明8は、本願発明1の構成をすべて含み、さらに限定を加えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、引用文献1及び引用文献2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
3 本願発明9について
(1)対比
本願発明9と引用発明1とを対比する。
引用発明1の「多孔性化成肥料」、「肥料袋」、「水田」、「水口」、「灌漑水が流入している水田の水口」、「流し込み施肥方法」は、それぞれ本願発明9の「固形肥料」、「肥料袋」、「圃場」、「水口」、「水の直撃を受ける場所」、「流し込み施肥方法」に相当する。
引用発明1の「穴」と、本願発明9の「切り込み開口部」とは、「開口部」で共通する。
また、一般的に、肥料袋は充填部と封止部を備え、平面視略矩形形状をしているから、引用発明1は、これらの一般的な構成、つまり、本願発明9の「充填部と前記充填部を密閉する封止部とを備えた肥料袋」、及び「前記充填部が、袋表面側から平面視したときに略矩形形状(以下、当該略矩形形状を形成する第1辺の長さをL1、第2辺の長さをL2、且つ、L1≦L2とする)を呈す」る構成を備えるものと認める。
したがって、本願発明9と引用発明1との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
充填部と前記充填部を密閉する封止部とを備えた肥料袋に、
固形肥料が充填された肥料製品を、圃場の水口からの水の直撃を受ける場所に設置して流し込み施肥を行う方法であって、
前記充填部が、袋表面側から平面視したときに略矩形形状(以下、当該略矩形形状を形成する第1辺の長さをL1、第2辺の長さをL2、且つ、L1≦L2とする)を呈するときに、
袋に開口部を形成する流し込み施肥方法。
(相違点A)本願発明9は、肥料製品の袋表裏面が地面に対して略平行となるように設置するのに対し、引用発明1は、穴が下に来るように肥料袋を吊す点。
(相違点B)本願発明9は、袋表裏面の少なくとも一方において、前記略矩形形状の周縁の幅0.1×L1の領域を除いた非端縁領域内に、切り込み開口部が形成されるのに対し、引用発明1は、肥料袋を吊したときに下に穴が来る点。
(2)相違点についての判断
上記相違点Bは、切り込み開口部用表示と切り込み開口部との違いはあるものの、それらの位置の相違については、上記相違点2と実質的に同じであるから、相違点2と同様の理由により、引用発明1の穴を非端縁領域内に形成することにより、本願発明9の上記相違点Bに係る構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。
したがって、相違点Aについて検討するまでもなく、本願発明9は、引用文献1及び引用文献2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
4 本願発明10~本願発明12について
本願発明10~本願発明12は、本願発明9の構成をすべて含み、さらに限定を加えるものであるから、本願発明9と同様の理由により、引用文献1及び引用文献2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
第7 原査定について
審判請求時の補正により、本願発明1-12は、「固形肥料が肥料袋に充填された肥料製品を、圃場の水口からの水の直撃を受ける場所に、前記肥料製品の袋表裏面が地面に対して略平行となるように設置する流し込み施肥方法用の流し込み施肥用肥料製品にかかる流し込み施肥用肥料袋であって、」という事項を有するものとなっており、当業者であっても、上記第6で説示したように、拒絶理由において引用された引用文献1及び2に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。
第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2017-003167