特許異議申立
2017-700179
グリセリルモノアルキルエーテルによる油溶性成分の安定化方法及びこれを含む化粧料
- 審判番号
- 2017-700179
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2012-076157
- 登録番号
- 特許第5981192号(P5981192)
- 請求日
- 2017年02月24日
- 審決日
- 2017年11月01日
- 公報発行日
- 2018年01月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ポーラ化成工業株式会社
- 【権利者代理人】佐貫 伸一
- 【権利者代理人】川口 嘉之
- 【権利者代理人】丹羽 武司
- 【権利者代理人】下田 俊明
- 【権利者代理人】諌山 雅美
- 【異議申立人】田中 和幸
- 審判長/審判官
- 審判長 大熊 幸治
- 審判官 須藤 康洋
- 審判官 長谷川 茜
- 分類
- P1651.113-YAA(A61K) / P1651.121-YAA(A61K) / P1651.536-YAA(A61K) / P1651.537-YAA(A61K) / P1651.85 -YAA(A61K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第2条
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5981192号発明「グリセリルモノアルキルエーテルによる油溶性成分の安定化方法及びこれを含む化粧料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
1 特許第5981192号の特許請求の範囲を,訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項[1~6]について,訂正することを認める。
2 特許第5981192号の請求項1~4及び6に係る特許を維持する。
3 特許第5981192号の請求項5に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
【理 由】
1 主な手続の経緯等
特許第5981192号(請求項の数は6。以下「本件特許」という。)は,平成24年3月29日にされた特許出願に係るものであって,平成28年8月5日にその特許権が設定登録されたものである。
その後,平成29年2月24日に特許異議申立人田中和幸(以下,単に「異議申立人」という。)より本件特許の請求項1~6に係る発明についての特許に対して特許異議の申立てがされ,同年5月19日付けで取消理由(以下,「当審取消理由」という。)が通知され,同年7月24日に特許権者より意見書が提出されるとともに訂正請求書が提出されることで特許請求の範囲の訂正が請求がされ,同年9月8日に異議申立人より意見書が提出された。
2 本件訂正の可否
(1) 特許権者の請求の趣旨
結論第1項に同旨。
(2) 訂正の内容
訂正請求書並びにそれに添付された訂正特許請求の範囲によれば,特許権者の求める訂正は,実質的に,以下のとおりである。
【訂正事項】 特許請求の範囲を,請求項5を削除することを含め,以下のとおり訂正する。(決定注:なお,【訂正事項】は,訂正請求書によらず,本決定において整理したもの。)
・ 本件訂正前
「【請求項1】
下記化学式Iで表されるグリセリルモノアルキルエーテル,非イオン性界面活性剤,及び油溶性紫外線吸収剤を水系化粧料に配合することを特徴とする,前記水系化粧料に前記油溶性紫外線吸収剤を可溶化させて安定的に配合する方法。
【化1】
R-O-CH2-CHOH-CH2OH (I)
(式I中,Rは直鎖状又は分枝状で,炭素数が3~14の飽和又は不飽和のアルキル基を示す。)
【請求項2】
前記グリセリルモノアルキルエーテルが,1-ヘプチルグリセリルエーテル,1-(2-エチルヘキシル)グリセリルエーテル,1-オクチルグリセリルエーテル,1-デシルグリセリルエーテル及び1-ドデシルグリセリルエーテルより選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記グリセリルモノアルキルエーテルの含有量が,化粧料全量中0.2~0.5重量%であることを特徴とする,請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記油溶性紫外線吸収剤が,UVAあるいはUVB領域に吸収波長領域を有することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記非イオン性界面活性剤が,ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油,ポリオキシエチレンアルキルエーテル,ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル,及びショ糖脂肪酸エステルより選択されることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の方法により水系化粧料に油溶性紫外線吸収剤を安定的に配合する工程を含む,水系化粧料の製造方法。」
・ 本件訂正後
「【請求項1】
下記化学式Iで表されるグリセリルモノアルキルエーテル,非イオン性界面活性剤を化粧料全量中0.1~1重量%,及び油溶性紫外線吸収剤を水系化粧料に配合することを特徴とし,
前記非イオン性界面活性剤が,ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油,ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル,及びショ糖脂肪酸エステルから選択される,前記水系化粧料に前記油溶性紫外線吸収剤を可溶化させて安定的に配合する方法。
【化1】
R-O-CH2-CHOH-CH2OH (I)
(式I中,Rは直鎖状又は分枝状で,炭素数が7~12の飽和又は不飽和のアルキル基を示す。)
【請求項2】
前記グリセリルモノアルキルエーテルが,1-ヘプチルグリセリルエーテル,1-(2-エチルヘキシル)グリセリルエーテル,1-オクチルグリセリルエーテル,1-デシルグリセリルエーテル及び1-ドデシルグリセリルエーテルより選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記グリセリルモノアルキルエーテルの含有量が,化粧料全量中0.2~0.5重量%であることを特徴とする,請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記油溶性紫外線吸収剤が,UVAあるいはUVB領域に吸収波長領域を有することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項に記載の方法により水系化粧料に油溶性紫外線吸収剤を安定的に配合する工程を含む,水系化粧料の製造方法。」
(3) 本件訂正の可否についての判断
ア 請求項1についての訂正
この訂正は,請求項1に係る発明を構成する「水系化粧料」に配合される「非イオン性界面活性剤」の配合割合について,訂正前において特定していなかったものを「化粧料全量中0.1~1重量%」とすることで,その配合割合を限定するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。しかも,上述の限定事項については,例えば願書に添付した明細書の【0015】に記載がある。
また,この訂正は,請求項1に係る発明の「非イオン性界面活性剤」について,「前記非イオン性界面活性剤が,ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油,ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル,及びショ糖脂肪酸エステルから選択される」と限定するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。しかも,上述の限定事項については,例えば願書に添付した特許請求の範囲の【請求項5】や,同明細書の【0015】に記載がある。
さらに,この訂正は,請求項1に係る発明の「化学式Iで表されるグリセリルモノアルキルエーテル」の構造式中のRの炭素数について,訂正前において「3~14」であったものを「7~12」とすることで,その数値範囲を限定するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。しかも,上述の限定事項については,例えば願書に添付した明細書の【0009】に記載がある。
よって,請求項1についての訂正は,特許法(以下,単に「法」という場合がある。)120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項を目的とするものであり,願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであるから,同条9項で準用する法126条5項で規定する要件を満たすといえる。また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもないから,同126条6項で規定する要件を満たすと判断される。
イ 請求項5についての訂正
請求項の記載を削除する訂正は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。そして,このような訂正が,設定登録時の願書に添付した明細書及び特許請求の範囲等に記載した事項の範囲内においてするものであり,また実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもないのは明らかである。
ウ 請求項2~4及び6についての訂正
この訂正は,請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2~4及び6について,実質的に請求項1についての訂正と同様に訂正するとともに,請求項6については,請求項5を削除するのにともなってその引用関係を整理するものである。そして,請求項の記載の引用関係を整理する訂正は,明瞭でない記載の釈明を目的とするものと解される。
よって,請求項2~4及び6についての訂正は,法120条の5第2項ただし書1号及び3号に掲げる事項を目的とするものであり,また,同条9項で準用する法126条5項及び6項で規定する要件を満たすと判断される。
(4) 小括
以上のとおりであるから,本件訂正は,法120条の5第2項ただし書1号及び3号に掲げる事項を目的とするものであり,同条9項で準用する法126条5~6項で規定する要件を満たす。
よって,結論の第1項のとおり,本件訂正を認める。
3 本件発明
上記2で検討のとおり本件訂正は認められるので,本件特許の請求項1~4及び6に係る発明は,訂正特許請求の範囲の請求項1~4及び6に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下,請求項の番号に応じて各発明を「本件発明1」などといい,これらを併せて「本件発明」という場合がある。なお,請求項2~4及び6の記載は,これを省略する。)。
「【請求項1】
下記化学式Iで表されるグリセリルモノアルキルエーテル,非イオン性界面活性剤を化粧料全量中0.1~1重量%,及び油溶性紫外線吸収剤を水系化粧料に配合することを特徴とし,
前記非イオン性界面活性剤が,ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油,ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル,及びショ糖脂肪酸エステルから選択される,前記水系化粧料に前記油溶性紫外線吸収剤を可溶化させて安定的に配合する方法。
【化1】
R-O-CH2-CHOH-CH2OH (I)
(式I中,Rは直鎖状又は分枝状で,炭素数が7~12の飽和又は不飽和のアルキル基を示す。)」
4 異議申立人の主張に係る取消理由の概要
異議申立人の主張は,概略,次のとおりである。
(1) 本件特許に係る特許請求の範囲の請求項1~6の記載は,法36条6項2号に規定する要件に適合しない(以下「取消理由1」という。なお,当該要件を「明確性要件」という場合がある。)。
(2) 本件特許に係る特許請求の範囲の請求項1~6の記載は,法36条6項1号に規定する要件に適合しない(以下「取消理由2」という。なお,当該要件を「サポート要件」という場合がある。)。
(3) 本件特許に係る明細書の発明の詳細な説明の記載は,法36条4項1号に規定する要件に適合しない(以下「取消理由3」という。なお,当該要件を「実施可能要件」という場合がある。)。
(4) 本件発明1~6は,法29条1項3号に該当し特許を受けることができない発明である。すなわち,これら発明は,甲1に記載された発明である(以下「取消理由4」という。)。
(5) 本件発明1~6は,法29条2項の規定により特許を受けることができない発明である。すなわち,本件発明1~6は,甲1に記載された発明を主たる引用発明としたとき,この主たる引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである(以下「取消理由5」という。)。
(6) そして,上記取消理由1~5にはいずれも理由があるから,本件の請求項1~6に係る発明についての特許は,法113条2号及び4号に該当し,取り消されるべきものである。
(7) また,証拠方法として書証を申出,以下の文書(甲1~6)を提出する。
・甲1: 特開2007-84464号公報
・甲2: 国際公開第2010/078985号
・甲3: 特表2012-512215号公報
・甲4: 特開2002-20228号公報
・甲5: 特開2003-26560号公報
・甲6: 国際公開第2011/158331号
5 当合議体の判断
当合議体は,以下述べるように,取消理由1~5にはいずれも理由はないと判断する。
(1) 取消理由1について
ア 異議申立人は,請求項1の「安定的に配合する」の意味が不明であるため,請求項1の記載は明確性要件を満足しない旨主張する。
イ そこで,上記主張の当否について検討するに,本件明細書の記載(特に,【0002】,【0003】,【0020】)を総合すると,請求項1の「(油溶性紫外線吸収剤を可溶化させて)安定的に配合する」とは,油溶性紫外線吸収剤をグリセリルモノアルキルエーテル及び非イオン性界面活性剤と共存させることで,可溶化させ,濁りを生じさせることなく透明状態を維持することと当業者は理解できる。なお,この認定は,異議申立人が特許異議申立書の8頁や26頁において主張するところと同旨である。
ウ よって,請求項1の「安定的に配合する」の意味が不明であるということはできず,異議申立人の上記主張は,その前提において採用できない。取消理由1には理由がない。
(2) 取消理由2について
ア 異議申立人は,非イオン性界面活性剤,油溶性紫外線吸収剤や化学式Iで表されるグリセリルモノアルキルエーテルを使用した水系化粧料について,本件発明の効果が確認できる記載として,本件明細書には,実施例の試験例1及び4以外の記載はなく,しかも試験例1及び4の試験結果と同等の効果が本件発明に包含される全ての水系化粧料に当然に認められると当業者は予測できないから,本件発明はいわゆるサポート要件を満足しない旨主張する。
イ そこで,上記アでの主張の当否について検討するに,本件明細書の記載を総合すると,本件発明の解決課題は,水系化粧料に油溶性紫外線吸収剤を配合するに際し,長期経時の高温又は低温条件下であっても濁りを生じることのないとの効果を発揮するような,油溶性紫外線吸収剤を可溶化させて安定的に配合する方法を提供するものであるといえる。
また,その解決手段として,本件明細書には,例えば次の記載がある。
・「…本発明者は水系化粧料に油溶性成分を安定的に配合する方法を求めて鋭意研究した結果,グリセリルモノアルキルエーテルを配合することにより課題を解決することを見出し,本発明に至った。…」(【0007】)
・「…本発明において用いることができる油溶性成分は,通常化粧料に配合される成分であえば特に制限は無い…」(【0010】)
・「…本発明の方法は,非イオン性界面活性剤を加えることで,本発明の方法の効果をより向上させることが可能である。かかる非イオン性界面活性剤としては,ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油,ポリオキシエチレンアルキルエーテル,ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル,ショ糖脂肪酸エステルなどが例示できるが,これらに限らない。…」(【0015】)
そうすると,当業者は,本件明細書の記載をみれば,通常化粧料に配合される油溶性紫外線吸収剤を水系化粧料に可溶化させて安定的に配合しようとするにあたり,水系化粧料に配合し得るグリセリルモノアルキルエーテルであればいかなるものを用いても課題は解決できること,また同様に,水系化粧料に配合し得る非イオン性界面活性剤であればいかなるものを用いても本件発明が奏する効果をより向上させることができると理解する。しかも,本件明細書に記載の具体的な化合物の組み合わせの中で,油溶性紫外線吸収剤を可溶化させて安定的に配合しない組み合わせが存在するのであれば格別,そのような組み合わせが存在することの立証はない。(なお,本件発明の課題を解決するにあたっては,一義的には,非イオン性界面活性剤の配合は必須ではないと解される。)
そして,上記試験例1及び4は,このような理解のもと,上記解決手段の具体例を記載しているにすぎないといえる。
ウ なお,異議申立人は,平成29年9月8日付け意見書において,本件発明がサポート要件違反であることについて縷々主張するが,これらはいずれも,特許権者による同年7月24日付け意見書における主張を批難するものにすぎないところ,本件発明がサポート要件を満足するのは上述のとおりであるから,異議申立人の上記意見書における主張の当否は,結論を何ら左右しない。
エ よって,試験例1及び4以外の範囲を包含する本件発明はサポート要件違反との異議申立人の主張は,採用できない。取消理由2には理由がない。
(3) 取消理由3について
ア 異議申立人は,非イオン性界面活性剤,油溶性紫外線吸収剤及び化学式Iで表されるグリセリルモノアルキルエーテルの組み合わせは無数に存在するところ,油溶性紫外線吸収剤が具体的に1つ選択された場合に,どのような基準でグリセリルモノアルキルエーテルや非イオン性界面活性剤を選択するかなどの説明が本件明細書にはなく,当業者は本件発明を実施するために過度の試行錯誤を強いられるから,本件発明について,いわゆる実施可能要件を満足しない旨主張する。
イ 本件発明は方法の発明(本件発明6は物を生産する方法の発明)であるところ,方法の発明における発明の実施とは,その方法を使用する行為をいうから(特許法2条3項2号),方法の発明については,例えば明細書にその方法を使用することができることの具体的な記載があるか,そのような記載がなくても,明細書等の記載並びに出願当時の技術常識に基づき当業者がその方法を使用することができるのであれば,実施可能要件を満たすということができる。
そこで,上述の見地を踏まえ,請求人の主張の当否について検討するに,本件発明の特定事項である化学式Iで表されるグリセリルモノアルキルエーテル,非イオン性界面活性剤及び油溶性紫外線吸収剤については,本件明細書の【0009】,【0011】及び【0015】にそれぞれ具体的な化合物が挙げられている。しかも,上記(2)イで述べたとおり,油溶性紫外線吸収剤を可溶化させて安定的に配合しない組み合わせが存在することが具体的に立証されているわけではない。
そうすると,当業者は,本件明細書の記載に基づいて,本件発明に係る方法を使用することができるといえる。仮に,油溶性紫外線吸収剤を可溶化させて安定的に配合しない組み合わせが存在するとしても,本件発明はそのような組み合わせを包含しないだけであって,油溶性紫外線吸収剤を可溶化させて安定的に配合する組み合わせを選択することが過度の試行錯誤を強いるということはできない。
ウ よって,本件発明について,実施可能要件違反との異議申立人の主張は,採用できない。取消理由3には理由がない。
(4) 取消理由4について
異議申立人は,甲1の<化粧水2>に係る実施例のものが本件発明と同一であるから,本件発明は甲1に記載された発明である旨主張するので,まず,本件発明1についての上記主張の当否について検討する。
ア 本件発明1について
(ア) 甲1に記載された発明
甲1には,特に【0057】の<化粧水2>の記載から,次のとおりの発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認める。
「次の成分を化粧水に配合する方法,並びに,次の成分を化粧水に配合する工程を含む化粧水の製造方法。
・ 2-エチルヘキシルグリセリルエーテル 0.30質量%
・ ジプロピレングリコール 3.00質量%
・ エタノール 5.00質量%
・ ポリオキシエチレン(20)ラウリルエーテル 1.00質量%
・ ポリオキシプロピレン(3)ポリオキシエチレン(9)ラウリルエーテル 0.30質量%
・ パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル 0.02質量%
・ グルコース 3.00質量%
・ ソルビトール 0.20質量%
・ ヒアルロン酸 0.01質量%
・ ヒアルロン酸ナトリウム 0.01質量%
・ アミノ酸類 2.00質量%
・ コラーゲン 0.20質量%
・ クエン酸 0.10質量%
・ 精製水 残部」(なお,下線は,本決定の便宜上,当審において付与したもの。)
(イ) 本件発明1と甲1発明との対比,並びに,その相違点など
a 甲1発明の「2-エチルヘキシルグリセリルエーテル」は本件発明1の「化学式Iで表されるグリセリルモノアルキルエーテル」に,「ポリオキシエチレン(20)ラウリルエーテル」並びに「ポリオキシプロピレン(3)ポリオキシエチレン(9)ラウリルエーテル」は「非イオン性界面活性剤」に,「パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル」は「油溶性紫外線吸収剤」に,それぞれ相当する。なお,ここで,甲1発明の「ポリオキシエチレン(20)ラウリルエーテル」及び「ポリオキシプロピレン(3)ポリオキシエチレン(9)ラウリルエーテル」の配合量の合計量は,化粧水(水系化粧料)全量中,1.30(=1.00+0.30)重量%である。
b そうすると,本件発明1と甲1発明との対比から,両発明の一致点並びに相違点は,それぞれ次のとおりであると認める。
・ 一致点
下記化学式Iで表されるグリセリルモノアルキルエーテル,非イオン性界面活性剤,及び油溶性紫外線吸収剤を水系化粧料に配合する方法。
R-O-CH2-CHOH-CH2OH (I)
(式I中,Rは分枝状で,炭素数が8の飽和のアルキル基を示す。)
・ 相違点1
非イオン性界面活性剤について,本件発明1は「ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油,ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル,及びショ糖脂肪酸エステルから選択される」ものを「化粧料全量中0.1~1重量%」配合するのに対し,甲1発明はそのような特定事項を有しておらず,「ポリオキシエチレン(20)ラウリルエーテル」及び「ポリオキシプロピレン(3)ポリオキシエチレン(9)ラウリルエーテル」を合計で「化粧水(水系化粧料)全量中,1.30重量%」配合するものである点。
・ 相違点2
本件発明1は「…水系化粧料に…油溶性紫外線吸収剤を可溶化させて安定的に配合する」方法であるのに対し,甲1発明はそのような特定事項を有しない点。
(ウ) 相違点についての検討
まず,上記相違点1について検討するに,上記相違点1は実質的な相違点といわざるを得ない。
(エ) 小括
そうすると,上記相違点2について検討するまでもなく,本件発明1は甲1発明と同一であるとはいえず,よって,甲1に記載された発明ではない。
イ 本件発明2~4及び6について
請求項2~4及び6の記載は請求項1を直接又は間接的に引用するものであるところ,請求項1に係る本件発明1が甲1に記載された発明であるといえないのは上述のとおりであるから,請求項2~4及び6に係る本件発明2~4及び6についても同様に,甲1に記載された発明とはいえない。
ウ まとめ
よって,本件発明1~4及び6は甲1に記載された発明であるから法29条1項3号に該当し特許を受けることができないとの異議申立人の主張に係る取消理由4は,理由がない。
(5) 取消理由5について
ア 本件発明1について
(ア) 甲1発明との対比
本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は,上記(4)において認定のとおりである。
(イ) 相違点についての検討
まず,上記相違点1について検討するに,甲1には,2-エチルヘキシルグリセリルエーテルが持つ特異的な性能に着目し,化粧料に最も適したアルキルグリセリルエーテルとして2-エチルヘキシルグリセリルエーテルを選ぶことで課題を解決することの技術的開示があり(例えば,【請求項1】,【0002】,【0005】,【0006】など),このような開示の下,上述で認定するところの甲1発明が記載されているものの,他方で,非イオン性界面活性剤については,化粧料に通常配合できる任意成分としての開示があるにすぎない(【0027】,【0029】)。
そうすると,化粧料に配合しうる非イオン性界面活性剤として,ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油,ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルあるいはショ糖脂肪酸エステルが,例えば甲5から,本件の出願前に公知であるといえたとしても,甲1発明において,任意成分として配合されている非イオン性界面活性剤である「ポリオキシエチレン(20)ラウリルエーテル」及び「ポリオキシプロピレン(3)ポリオキシエチレン(9)ラウリルエーテル」にことさら着目し,これを「ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油,ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル,及びショ糖脂肪酸エステルから選択される」ものに代えようとすること,また,化粧水(水系化粧料)全量中に「1.30重量%」配合されているものを「0.1~1重量%」に変更しようとすることについて,動機を見いだすことができない。
相違点1に係る構成は,当業者であっても想到容易であるということはできない。
(ウ) 小括
以上のとおりであるから,上記相違点2について検討するまでもなく,本件発明1は,甲1に記載された発明(甲1発明)を主たる引用発明としたとき,甲1発明から想到容易であるということはできない。
イ 本件発明2~4及び6について
請求項2~4及び6の記載は請求項1を直接又は間接的に引用するものであるから,請求項2~4及び6に係る本件発明2~4及び6についても本件発明1と同様に,甲1発明から想到容易であるとはいえない。
ウ まとめ
よって,本件発明1~4及び6は甲1に記載された発明から想到容易であって法29条2項の規定により特許を受けることができないとする取消理由5には,理由がない。
6 当審取消理由について
当審取消理由は,上記取消理由2及び同4と同旨である。そして,当審取消理由に理由がないのは,上記5(2)及び(4)において検討のとおりである。
7 むすび
したがって,異議申立人の主張する取消理由並びに当審取消理由によっては,請求項1~4及び6に係る特許を取り消すことはできない。また,他に当該特許が法113条各号のいずれかに該当すると認めうる理由もない。
請求項5に係る特許については,上述のとおり,請求項5を削除する訂正を含む本件訂正が認容されるため,特許異議申立ての対象となる特許が存在しない。
よって,結論の第2項及び第3項のとおり決定する。
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2017-700179