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特許異議申立

2017-700173

表面コーティングを介しての金属合金の熱間加工性の改善

審判番号
2017-700173
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2013-549437
登録番号
特許第5988442号(P5988442)
請求日
2017年02月23日
審決日
2017年12月12日
公報発行日
2018年03月30日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】エイティーアイ・プロパティーズ・エルエルシー
  • 【権利者代理人】野矢 宏彰
  • 【異議申立人】大坪 隆司
審判長/審判官
  • 審判長 板谷 一弘
  • 審判官 河本 充雄
  • 審判官 土屋 知久
分類
P1651.113-YAA(C22C) / P1651.121-YAA(C22C)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第5988442号発明「表面コーティングを介しての金属合金の熱間加工性の改善」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第5988442号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5、7、9~15、17、18、22、23〕、6、8、16、〔19~21〕、〔24~26、28、29〕、27、39について訂正することを認める。 特許第5988442号の請求項1~5、7~26、28~39に係る特許を維持する。 特許第5988442号の請求項6、27に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 特許第59884424号の請求項1~39に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、2012年1月3日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2011年1月17日 米国(US))を国際出願日とする出願であって、平成28年8月19日に特許権の設定登録がされ、同年9月7日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、平成29年2月23日に特許異議申立人 大坪隆司により特許異議の申立てがされ、当審において同年5月17日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年8月22日に意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)があり、その訂正の請求に対して特許異議申立人から同年10月10日に意見書が提出されたものである。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 本件訂正請求による訂正の内容は、以下の訂正事項1~8のとおりである(当審注:下線は訂正箇所を示すため合議体が付与した。)。 (1) 訂正事項1 請求項1に「を含む方法。」とあるのを、「を含み、 前記ガラス粒子を付着させることが、噴霧、刷毛塗、フローコーティング、散布、ローリング、及び浸漬の少なくとも1つを含む、方法。」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~5、7、9~15、17、18、22、23も同様に訂正する。)。 (2) 訂正事項2 請求項6を削除する。 (3) 訂正事項3 請求項8に「前記ガラス粒子を付着させることに先立って、前記合金加工物を鍛造温度に加熱することを更に含む、請求項1に記載の方法。」とあるのを、「熱クラッキングを低減させるよう合金加工物を処理加工する方法であって、 ガラス織布を前記合金加工物の処理加工される表面の少なくとも一部分上に直接配置することと、 ガラス粒子を前記ガラス織布の少なくとも一部分上に付着させることと、 前記ガラス織布及びガラス粒子を加熱して、前記合金加工物上に、前記合金加工物からの熱損失を低減させる表面コーティングを形成させることと、を含み、 前記ガラス粒子を付着させることに先立って、前記合金加工物を鍛造温度に加熱することを更に含む、方法。」に訂正する。 (4) 訂正事項4 請求項16に「前記ガラス織布及びガラス粒子を加熱して前記合金加工物上に表面コーティングを形成させた後に、ダイ及びロールの少なくとも1つで前記合金加工物に力を加え、前記合金加工物を変形させることを更に含む、請求項1に記載の方法。」とあるのを、「熱クラッキングを低減させるよう合金加工物を処理加工する方法であって、 ガラス織布を前記合金加工物の処理加工される表面の少なくとも一部分上に直接配置することと、 ガラス粒子を前記ガラス織布の少なくとも一部分上に付着させることと、 前記ガラス織布及びガラス粒子を加熱して、前記合金加工物上に、前記合金加工物からの熱損失を低減させる表面コーティングを形成させることと、を含み、 前記ガラス織布及びガラス粒子を加熱して前記合金加工物上に表面コーティングを形成させた後に、ダイ及びロールの少なくとも1つで前記合金加工物に力を加え、前記合金加工物を変形させることを更に含む、方法。」に訂正する。 (5) 訂正事項5 請求項19に「前記合金加工物上に表面コーティングを形成させた後に、鍛造によって前記合金加工物を熱間加工することを更に含む、請求項1に記載の方法。」とあるのを、「熱クラッキングを低減させるよう合金加工物を処理加工する方法であって、 ガラス織布を前記合金加工物の処理加工される表面の少なくとも一部分上に直接配置することと、 ガラス粒子を前記ガラス織布の少なくとも一部分上に付着させることと、 前記ガラス織布及びガラス粒子を加熱して、前記合金加工物上に、前記合金加工物からの熱損失を低減させる表面コーティングを形成させることと、を含み、 前記合金加工物上に表面コーティングを形成させた後に、鍛造によって前記合金加工物を熱間加工することを更に含む、方法。」に訂正する(請求項19を引用する請求項20、21も同様に訂正する。)。 (6) 訂正事項6 請求項24に「前記熱間加工が鍛造操作及び/または押出操作を含む」とあるのを、「前記熱間加工が鍛造操作を含む」に訂正する(請求項24を引用する請求項25、26、28、29も同様に訂正する。)。 (7) 訂正事項7 請求項27を削除する。 (8) 訂正事項8 請求項39に「ガラス織布を前記合金加工物の円周囲面の少なくとも一部分上に直接配置すること」とあるのを、「ガラス織布を前記合金加工物の円周囲面の周りに横方向に直接巻き付けること」に訂正する。 2 訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1) 訂正事項1について 訂正事項1による訂正は、請求項1の「ガラス粒子を・・・付着させること」について、訂正前の請求項6に特定されている「噴霧、刷毛塗、フローコーティング、散布、ローリング、及び浸漬の少なくとも1つを含む」との事項に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、かつ、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2) 訂正事項2について 訂正事項2による訂正は、請求項6を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、かつ、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3) 訂正事項3について 訂正事項3の請求項8に係る訂正は、引用関係の解消を目的とするものであり、かつ、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (4) 訂正事項4について 訂正事項4の請求項16に係る訂正は、引用関係の解消を目的とするものであり、かつ、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (5) 訂正事項5について 訂正事項5の請求項19に係る訂正は、引用関係の解消を目的とするものであり、かつ、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (6) 訂正事項6について 訂正事項6による訂正は、請求項24の「熱間加工」について、「鍛造操作及び/又は押出操作」であったものを、「押出操作」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、かつ、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (7) 訂正事項7について 訂正事項7による訂正は、請求項27を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、かつ、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (8) 訂正事項8について 訂正事項8による訂正は、請求項39の「ガラス織布を前記合金加工物の円周囲面の少なくとも一部分上に直接配置すること」について、「ガラス織布を前記合金加工物の円周囲面の周りに横方向に直接巻き付けること」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 そして、訂正後の請求項39に関連する記載として、願書に添付した明細書の【0034】には、「ある非限定的実施形態では、2枚、3枚、又はそれ以上など1枚以上のガラス織布が、それぞれ円筒状加工物の円周囲面の少なくとも一部分及び/又は円筒状加工物の少なくとも1つの外側面に配置され得る。例えば、織布は、加工物の円周囲面の周りに織布を横方向に巻き付けることによって配置され得る。」と記載されているから、訂正事項8による訂正は、新規事項の追加に該当しない。 (9) 一群の請求項について ア 訂正事項1に係る訂正前の請求項1~23について、請求項2~23は、それぞれ請求項1を引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項1~23に対応する訂正後の請求項1~23は、一群の請求項である。 イ 訂正事項6に係る訂正前の請求項24~29について、請求項25~29は、それぞれ請求項24を引用するものであって、訂正事項6によって記載が訂正される請求項24に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項24~29に対応する訂正後の請求項24~29は、一群の請求項である。 ウ 前記(2)~(5)で検討したように、請求項6に係る訂正、請求項8に係る訂正、請求項16に係る訂正、及び、請求項19~21に係る訂正は、いずれも認められるものであるところ、特許権者から、訂正後の請求項6、8、16、19~21について訂正が認められるときは請求項1とは別の訂正単位として扱われることの求めがあったことから、訂正後の請求項6、8、16、19~21について請求項ごとに訂正することを認める。 エ 前記(7)で検討したように、請求項27に係る訂正は認められるものであるところ、特許権者から、訂正後の請求項27について訂正が認められるときは請求項24とは別の訂正単位として扱われることの求めがあったことから、訂正後の請求項27について請求項ごとに訂正することを認める。 (10) なお、訂正事項1、2、6~8による訂正は、いずれも特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるが、本件においては、訂正前の全ての請求項について特許異議申立てがされているので、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならないとの、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の規定は適用されない。 (11) まとめ 本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第4号に規定する事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~5、7、9~15、17、18、22、23〕、6、8、16、〔19~21〕、〔24~26、28、29〕、27、39について訂正を認める。 第3 特許異議の申立について 1 本件発明 本件訂正請求により訂正された請求項1~39に係る発明(以下、「本件発明1~39」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~39に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 熱クラッキングを低減させるよう合金加工物を処理加工する方法であって、 ガラス織布を前記合金加工物の処理加工される表面の少なくとも一部分上に直接配置することと、 ガラス粒子を前記ガラス織布の少なくとも一部分上に付着させることと、 前記ガラス織布及びガラス粒子を加熱して、前記合金加工物上に、前記合金加工物からの熱損失を低減させる表面コーティングを形成させることと、を含み、 前記ガラス粒子を付着させることが、噴霧、刷毛塗、フローコーティング、散布、ローリング、及び浸漬の少なくとも1つを含む、方法。 【請求項2】 前記ガラス織布が、ガラス繊維織布を含む、請求項1に記載の方法。 【請求項3】 前記ガラス織布が、537.8~1148.9℃(1000°F~2100°F)の温度定格を有するE-ガラス織布である、請求項1に記載の方法。 【請求項4】 前記E-ガラス織布を前記合金加工物の表面の少なくとも一部分上に配置させることが、前記E-ガラス織布を前記合金加工物の円周囲面の少なくとも一部分上に配置させることを含む、請求項3に記載の方法。 【請求項5】 前記E-ガラス織布を前記合金加工物の表面の少なくとも一部分上に配置させることが、前記E-ガラス織布を前記合金加工物の円周囲面の少なくとも一部分上と、前記合金加工物の少なくとも1つの横側面上に配置させることを含む、請求項3に記載の方法。 【請求項6】(削除) 【請求項7】 前記ガラス織布及びガラス粒子を537.8~1204.4℃(1000°F~2200°F)の温度に加熱することを含む、請求項1に記載の方法。 【請求項8】 熱クラッキングを低減させるよう合金加工物を処理加工する方法であって、 ガラス織布を前記合金加工物の処理加工される表面の少なくとも一部分上に直接配置することと、 ガラス粒子を前記ガラス織布の少なくとも一部分上に付着させることと、 前記ガラス織布及びガラス粒子を加熱して、前記合金加工物上に、前記合金加工物からの熱損失を低減させる表面コーティングを形成させることと、を含み、 前記ガラス粒子を付着させることに先立って、前記合金加工物を鍛造温度に加熱することを更に含む、方法。 【請求項9】 前記ガラス粒子を付着させることに先立って、前記合金加工物の表面を、研削、剥離、砂での磨き、及び/又はバフ磨きによって調整することと、を更に含む、請求項1に記載の方法。 【請求項10】 前記合金加工物を冷却することを更に含む、請求項1に記載の方法。 【請求項11】 前記合金加工物をショットブラスティングする、研削する、剥離する、及び旋削するの少なくとも1つによって、前記合金加工物から前記表面コーティングの少なくとも一部分を除去することを更に含む、請求項1に記載の方法。 【請求項12】 前記合金加工物が、ニッケル基合金、ニッケル基超合金、鉄基合金、ニッケル-鉄基合金、チタン基合金、チタン-ニッケル基合金、及びコバルト基合金からなる群から選択される材料を含む、請求項1に記載の方法。 【請求項13】 前記合金加工物が、Alloy 718(UNS No.N07718)、Alloy 720(UNS No.N07720)、Rene 41(商標)合金(UNS No.N07041)、Rene 88(商標)合金、Waspaloy(登録商標)合金(UNS No.N07001)、及びInconel(登録商標)100合金からなる群から選択される材料を含む、請求項1に記載の方法。 【請求項14】 前記合金加工物が、インゴット、ビレット、バー、プレート、チューブ、及び焼成予備成形品の一つを含む、請求項1に記載の方法。 【請求項15】 前記合金加工物がニッケル基超合金を含み、前記ガラス織布がE-ガラス織布を含む、請求項1に記載の方法。 【請求項16】 熱クラッキングを低減させるよう合金加工物を処理加工する方法であって、 ガラス織布を前記合金加工物の処理加工される表面の少なくとも一部分上に直接配置することと、 ガラス粒子を前記ガラス織布の少なくとも一部分上に付着させることと、 前記ガラス織布及びガラス粒子を加熱して、前記合金加工物上に、前記合金加工物からの熱損失を低減させる表面コーティングを形成させることと、を含み、 前記ガラス織布及びガラス粒子を加熱して前記合金加工物上に表面コーティングを形成させた後に、ダイ及びロールの少なくとも1つで前記合金加工物に力を加え、前記合金加工物を変形させることを更に含む、方法。 【請求項17】 前記合金加工物上に表面コーティングを形成させた後に、前記合金加工物を熱間加工することを更に含む、請求項1に記載の方法。 【請求項18】 前記合金加工物が、815.6℃~1371.1℃(1500°F~2500°F)の温度で熱間加工される、請求項17に記載の方法。 【請求項19】 熱クラッキングを低減させるよう合金加工物を処理加工する方法であって、 ガラス織布を前記合金加工物の処理加工される表面の少なくとも一部分上に直接配置することと、 ガラス粒子を前記ガラス織布の少なくとも一部分上に付着させることと、 前記ガラス織布及びガラス粒子を加熱して、前記合金加工物上に、前記合金加工物からの熱損失を低減させる表面コーティングを形成させることと、を含み、 前記合金加工物上に表面コーティングを形成させた後に、鍛造によって前記合金加工物を熱間加工することを更に含む、方法。 【請求項20】 前記合金加工物が、815.6℃~1371.1℃(1500°F~2500°F)の温度で熱間加工される、請求項19に記載の方法。 【請求項21】 前記合金加工物が、インゴット、ビレット、バー、プレート、チューブ、及び焼成予備成形品の1つを含む、請求項19に記載の方法。 【請求項22】 前記合金加工物上に表面コーティングを形成させた後に、押出法によって前記合金加工物を熱間加工することを更に含む、請求項1に記載の方法。 【請求項23】 前記熱間加工された加工物から物品を組み立てることを更に含み、前記物品が、ジェットエンジン構成部品、地上接地タービン構成部品、バルブ、エンジン構成部品、シャフト、及び締結具からなる群から選択される、請求項18に記載の方法。 【請求項24】 合金加工物を処理加工する方法であって、 前記合金加工物がニッケル基合金、ニッケル基超合金、鉄基合金、ニッケル-鉄基合金、チタン基合金、チタン-ニッケル基合金、及びコバルト基合金からなる群から選択される材料を含み、前記方法が ガラス織布を前記合金加工物の表面の少なくとも一部分上に直接配置することと、 ガラス粒子を前記ガラス織布の少なくとも一部分上に付着させることと、 前記ガラス織布及びガラス粒子を加熱して、前記合金加工物上に前記合金加工物からの熱損失を低減させる表面コーティングを形成させることと、 前記合金加工物を熱間加工することと、を含み、 前記熱間加工が鍛造操作を含む、 方法。 【請求項25】 前記合金加工物が、Alloy 718(UNS No.N07718)、Alloy 720(UNS No.N07720)、Rene 41(商標)合金(UNS No.N07041)、Rene 88(商標)合金、Waspaloy(登録商標)合金(UNS No.N07001)、及びInconel(登録商標)100合金からなる群から選択される材料を含む、請求項24に記載の方法。 【請求項26】 前記合金加工物が、インゴット、ビレット、バー、プレート、チューブ、及び焼成予備成形品の1つを含む、請求項24に記載の方法。 【請求項27】(削除) 【請求項28】 前記合金加工物を熱間加工することが、前記合金加工物を押出すことを含む、請求項24に記載の方法。 【請求項29】 前記合金加工物から前記表面コーティングの少なくとも一部分を除去することを更に含む、請求項24に記載の方法。 【請求項30】 合金加工物を熱間加工する方法であって、 ガラス繊維ブランケットを合金加工物の表面の少なくとも一部分上に配置させることと、 ガラス粒子を前記ガラス繊維ブランケットの少なくとも一部分上に付着させることと、 前記ガラス繊維ブランケット及び前記ガラス粒子を加熱して、前記合金加工物上に表面コーティングを形成させることと、 前記合金加工物を鍛造するかまたは押出すことと、 を含む方法であり、 ダイ及びロールの少なくとも1つが、前記鍛造または押出の間に前記合金加工物の表面上の前記表面コーティングと接触する、方法。 【請求項31】 前記合金加工物が、ニッケル基合金、ニッケル基超合金、鉄基合金、ニッケル-鉄基合金、チタン基合金、チタン-ニッケル基合金、及びコバルト基合金からなる群から選択される材料を含む、請求項30に記載の方法。 【請求項32】 前記合金加工物が、Alloy 718(UNS No.N07718)、Alloy 720(UNS No.N07720)、Rene 41(商標)合金(UNS No.N07041)、Rene 88(商標)合金、Waspaloy(登録商標)合金(UNS No.N07001)、及びInconel(登録商標)100合金からなる群から選択される材料を含む、請求項30に記載の方法。 【請求項33】 前記合金加工物が、インゴット、ビレット、バー、プレート、チューブ、及び焼成予備成形品の1つを含む、請求項30に記載の方法。 【請求項34】 ダイ及びロールの少なくとも1つで力を前記合金加工物に加え、前記合金加工物を変形させることとが、前記合金加工物を鍛造することを含む、請求項30に記載の方法。 【請求項35】 ダイ及びロールの少なくとも1つで力を前記合金加工物に加え、前記合金加工物を変形させることとが、前記合金加工物を押し出すことを含む、請求項30に記載の方法。 【請求項36】 前記合金加工物から前記表面コーティングの少なくとも一部分を除去することを更に含む、請求項30に記載の方法。 【請求項37】 合金加工物を処理加工する方法であって、 ガラステープを合金加工物の表面の少なくとも一部分上に配置させることと、 前記ガラステープを加熱して、前記合金加工物上に表面コーティングを形成させることと、を含む方法。 【請求項38】 合金加工物を処理加工する方法であって、 ガラス繊維のブランケットを合金加工物の表面の少なくとも一部分上に直接配置させることと、 セラミックブランケットを前記ガラス繊維のブランケット上に配置させることと、 前記複数のブランケットを加熱して、前記合金加工物上に表面コーティングを形成させることと、を含む方法。 【請求項39】 熱クラッキングを低減させるよう合金加工物を処理加工する方法であって、 ガラス織布を前記合金加工物の円周囲面の周りに横方向に直接巻き付けることと、 ガラス粒子を前記ガラス織布の少なくとも一部分上に付着させることと、 前記ガラス織布及びガラス粒子を加熱して、前記合金加工物上に、前記合金加工物からの熱損失を低減させる表面コーティングを形成させることと、を含み、 前記合金加工物が、インゴット、ビレット、バー及びチューブから選択される、 方法。」 2 特許異議申立理由の概要 特許異議申立人は、証拠として甲第1号証~甲第22号証を提出し、以下の理由により、請求項1~39に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。 (1) 申立理由1 本件発明1、2、6、7、10、14、17、37は、甲第1号証に記載された発明であるから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項第3号に該当するにもかかわらずなされたものである。 (2) 申立理由2-1 本件発明1、2、6、7、10、13、14、17、26、37~39は、甲第1号証に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、2、6、7、10、13、14、17、26、37~39に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。 (3) 申立理由2-2 本件発明1~39は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~39に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。 (4) 申立理由2-3 本件発明1は、甲第2号証に記載された発明又は甲第2号証に記載された発明及び周知技術に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。 [証拠方法] 甲第1号証:特公昭59-6724号公報 甲第2号証:特開平6-154842号公報 甲第3号証:社団法人日本鉄鋼協会編、「鉄鋼便覧」、第3版、第III巻(2)、丸善株式会社、昭和55年11月20日、p.942-949、1012-1015、1020-1021 甲第4号証:特開平6-328125号公報 甲第5号証:特開平6-63638号公報 甲第6号証:特開平3-90212号公報 甲第7号証:実願昭60-31359号(実開昭61-148407号)のマイクロフィルム 甲第8号証:特開平7-223018号公報 甲第9号証:特開昭57-112923号公報 甲第10号証:特開平5-147975号公報 甲第11号証:特開2001-206733号公報 甲第12号証:特開2004-67426号公報 甲第13号証:特開2010-125519号公報 甲第14号証:特開昭59-227992号公報 甲第15号証:特開平3-297533号公報 甲第16号証:特開昭59-232278号公報 甲第17号証:特開平4-36445号公報 甲第18号証:特開平4-66607号公報 甲第19号証:特開平7-11403号公報 甲第20号証:特開昭60-215557号公報 甲第21号証:特開平1-48832号公報 甲第22号証:特開平5-4994号公報 3 取消理由の概要 請求項1~5、7、9~15、17、18、22~26、28、29、39に係る特許に対して平成29年5月2日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、以下のとおりである。 (1) 取消理由1 請求項1、2、7、10、14、17、22に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、請求項1、2、7、10、14、17、22に係る特許は、特許法第29条第1項第3号に該当するにもかかわらずなされたものであり、取り消されるべきものである。 (2)取消理由2 請求項1~5、7、9~15、17、18、22~26、28、29、39に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基づき、又は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~5、7、9~15、17、18、22~26、28、29、39に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、取り消されるべきものである。 4 甲号証の記載事項 (1) 本件特許に係る国際出願の優先日前に頒布された甲第1号証には、「ホロビレツトのエキスパンシヨン工具」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている(なお、下線は当合議体が付加したものであり、「・・・」は記載の省略を表す。以下、同様である。)。 (1a) 「一般にマンドレルを有する金属押出プレスを用いて金属管を押出加工する場合、ホロビレツトが使用されることは既知である。 この際、ガイドホールを有しその一端面に予め凹所が形成された金属ビレツトの、前記凹所に嵌入され、次いで前記ガイドホールに沿って圧入されて該ガイドホールを拡孔するためにエキスパンシヨン工具が用いられるのが普通である。」(1頁2欄15~22行) (1b) 「第1図1,2を参照して通常のエキスパンシヨン法とこれに用いる工具に関して説明すると、1はコンテナ、3は金属ビレツトで、機械加工等の手段でガイドホール3aを有し、このガイドホール3aの一端面に機械切削加工等にて円錐台形状の凹所2が予じめ形成してあり、斯る構成のビレツト3がコンテナ1に収納されている。」(1頁23~29行) (1c) 「金属ビレツト20はその軸心に機械加工等によつてガイドホール21が形成され、その一端面に予め凹所24が機械切削加工等で形成されている。 斯る金属ビレツト20は加熱されてコンテナ22に収納され、凹所24を閉塞すべくガラスクロス25が載置され、しかも、該クロス25上にガラス粉末等の潤滑剤26が供給されて、ここに第3図1に図解するように孔拡準備体勢がとられる。 而して、前記凹所24に嵌入され次いでガイドホール21に沿つて本発明の工具10が圧入されることにより、ガイドホール21が拡孔されるが、その圧入貫孔工程は第3図2乃至第3図4に順次図解されている。」(2頁4欄18~31行) (1d) 「第1図1,2は従前工具の外形とその挙動を示す図面・・・第3図1,2,3,4は本発明工具を用いる穿孔作業一例の工程断面図」(3頁6欄23~26行) (1e) 「 」(第1図) (1f) 「 」(第3図) (2) 本件特許に係る国際出願の優先日前に頒布された甲第2号証には、「熱間押出方法」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。 (2a) 「【0006】 【課題を解決するための手段および作用】本発明は押出加工において、あらかじめガラスシェルをコンテナ内に挿入し、引続いて前記ガラスシェルの内側に加熱したビレットを挿入し、ビレットの持つ熱によりガラスを溶融することによりビレットとコンテナの間にガラスの厚い膜を得ることにより押出力を低減しようとするものである。」 (2b) 「【0007】 【実施例】以下、実施例について説明する。本発明法(以下ガラスシェル押出法と称す)の概略を図1に示す。ガラスシェル1はバインダーとして有機系フェノールレジンを使用して低粘度ガラス粉末を円筒に成形したもの、または厚さ0.9mm,外径74.5mm(コンテナ内径:75.0mm)の軟鋼板製の円筒の内面上に、水ガラスをバインダーとしてガラスクロス(SiO2 -Al2 O3 -B2 O3 系ガラスを織ったもの)を貼り付けて、その内側に低粘度コンテナ潤滑用のガラス粉末をまぶしたものである。このガラスシェル1を前もって150~450℃に加熱してあるコンテナ2内にセットする。・・・ 【0010】次に、軟鋼板製の円筒の内面上に、水ガラスをバインダーとしてガラスクロスを貼り付けて、その内側に低粘度ガラス(ガラス1)粉末をまぶしたガラスシェル押出の実施例を示す。1200℃に加熱された66mmφ×150mmLのS350ビレットをガラスシェル内に挿入して押出した。・・・」 (2c) 「【0013】次に、両法の押出力曲線の比較を図6に示す。通常押出では、コンテナによるビレットボトム側の抜熱が大きいために押出後半で押出力の増加傾向が見られるが、ガラスシェル法では厚膜ガラスの断熱効果によりビレットボトム側の温度降下が生じにくいために押出後半における押出力の増加傾向は大きく緩和される。押出の際にはコンテナをあらかじめ加熱しておき、ガラスシェルも予熱しておく方が迅速溶融に対して望ましい。」 (2d) 「【図1】 」 (3) 本件特許に係る国際出願の優先日前に頒布された甲第3号証には、「雄目無鋼管」(標題)に関して、以下の事項が記載されている。 (3a) 「11・4・4 熱間押出用プレス穿孔法70~72) a.穿孔理論 (i)穿孔プレス概要  ガラスを潤滑剤とするユジーンセジュルネ式押出法では,押出プレスに供給される中空ビレットは,冷間での機械加工によって得られるものと,熱間でのプレス穿孔によって得られるものがある。後者には,直接穿孔法(ピアシング法)と押広げ穿孔法(エキスパンション法)があるが,その比較を図11・78に示す.」(942頁右欄8~16行) (3b) 「エキスパンション法は,あらかじめ機械加工された20~30mmのガイドホールをもった中空ビレットを,1100℃前後に加熱後,所定径のエキスパンションノーズで内径を押し広げる方法である.」(942頁右欄最下行~943頁左欄3行) (3c) 「(ii)潤滑  穿孔に先立って,ビレットの内外面および端面にはガラス潤滑剤が供給され,穿孔工具との摩擦係数の減少ならびに断熱がはかられる(11・10・4項参照).」(945頁右欄最下行~946頁左欄3行) (3d) 「(vi)品質  穿孔で発生するきずは,(1)素材品質に起因して発生する内外面の横割れおよび縦割れ,(2)潤滑不良に起因して発生する内外面の引っかききず,が主なものである。表11・4474)に主な表面欠陥の特徴と原因を示す.」(946頁右欄6~10行) (3e) 「 」(948頁) (3f) 「11・ 10 熱間押出し110,111) 11・10・1 熱間押出方式の設備と特徴 a.工程の概要  熱間押出しの工程は,製造される鋼管の寸法や鋼種によって異なるが,一般的には“加熱-穿孔-再加熱-押出し-切断-脱ガラス”をとる.」(1013頁左欄1~5行) (3g) 「加熱されたビレット表面に多量のスケールが付着していると押出し時の表面きずの発生原因となるので,加熱のときの炉内の雰囲気調整をしたり,また各ガラス潤滑剤塗布の前で高圧水によるデスケーリングを実施している例が多い.」(1013頁右欄12~16行) (3h) 「ガラス潤滑により押し出された管は内外面に薄いガラスの被膜が付いているためこれを取り除く必要がある。一般にはフッ酸または硫フッ酸の溶液中に浸漬して脱ガラスを行っている。特別な場合はソルトバスまたはショットブラストにより脱ガラスを行なうこともある.」(1014頁左欄8~13行) (3i) 「11・10・4 潤  滑116) a.ガラス潤滑の特徴  鋼の熱間加工用潤滑剤としては,従来より黒鉛,窒化ホウ素,二硫化モリブデンや他の塩類および,油,グリースなどが使用されていたが,近年ガラスを潤滑剤として使用する方法が開発され,ユジーンセルジュネ式熱間押出法として,炭素鋼,合金鋼はもとよりステンレス鋼などの加工性の悪い鋼種や加工の厳しい長尺鋼管でも容易に製造できるようになった. ガラスは常温では固形であるが,高温では適度の粘稠性をもつ物質であり,さらに断熱性にも優れているため,極めて過酷な加工条件下でも工具の損耗もほとんどなく,最も優れた熱間加工用潤滑剤である.」(1020頁右欄2~13行) (4) 本件特許に係る国際出願の優先日前に頒布された甲第4号証には、「2相ステンレス鋼継目無鋼管の製造方法」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。 (4a) 「【0002】 【従来の技術】熱間押出し加工法は、熱間加工性の低い材料の加工に適しており、ステンレス鋼、高Ni合金等の継目無管の製造に用いられている。本加工法の長所は、例えば傾斜圧延法等の他の鋼管の熱間加工法に比較して、材料に過大な引張り力が働かないこと、ガラス潤滑剤による良好な潤滑作用により、疵が発生しにくいことにある。又、ガラス潤滑剤を使用するため、これによる断熱効果も疵の少ない製品を得る上で有効である。」 (5) 本件特許に係る国際出願の優先日前に頒布された甲第5号証には、「金属管の製造法並びにその製造に用いる潤滑材」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。 (5a) 「【0002】 【従来の技術】・・・ユージン・セジュルネ法としてよく知られているように、ガラス粉末を水ガラス等のバインダーで固めたガラスパッドをダイとビレットとの間の潤滑材として用い、押出時のビレットとダイとの摩擦をガラス潤滑により減少させ、更に、断熱効果をも奏するようにしている。」 (6) 本件特許に係る国際出願の優先日前に頒布された甲第6号証には、「稠密六方晶金属の熱間押出方法」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。 (6a) 「SKD-61等の汎用の熱間工具鋼よりなるダイス、マンドレルを用いて純Ti,Ti合金に熱間押出加工を行った場合に生じる筋疵の原因がガラス潤滑膜の膜切れによる焼付である・・・」(1頁右下欄6~9行) (7) 本件特許に係る国際出願の優先日前に頒布された甲第7号証には、「形材押出用ガラスデイスク」(考案の名称)に関して、以下の事項が記載されている。 (7a) 「第5図に示すようにダイス穴型8の端部11がダイス1の周縁部12に近くなると、押出加工の進行に伴って、ダイス穴型端部11に流入するガラス潤滑剤が不足し、さらには潤滑切れを呈して焼付が生じ、押出された形材に表面疵が生じる。」(2頁9~14行) (8) 本件特許に係る国際出願の優先日前に頒布された甲第8号証には、「熱間押出加工用ガラス潤滑剤」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。 (8a) 「【0006】ガラス潤滑押出においては、ダイスとビレットの間にはミリメートル単位の厚さのガラス粉末層が介在する。ガラス粉末層がビレットと接触する部分にはガラスの溶融層が存在しており、この層が潤滑効果を発揮する。つまり、潤滑性はガラス溶融層の粘度に依存し、たとえば、ビレット表面温度では粘性を持たない程粘度が高過ぎる成分系では、押出開始時にビレットがコンテナ内に充満するアップセットを受けたときガラス粒子の一つ一つがビレットに埋まり込んで押出される材料の表面に疵を付けるばかりでなく、潤滑効果もないため押出材表面全体に焼き付きが生じ、押出力が過度に大きくなるため力量の小さい押出装置では押出不可能となる。逆に粘度が低い成分系の場合には、ビレットに力がかかった時ガラス層を突き破ってビレットが工具と接触し易くなるため、やはり焼き付きが発生する。従って、これらの中間に位置する粘度を持つ成分系が必要となる。この粘度はガラス成分に左右されることから、従来は鉄鋼の熱間押出には一般的に加工温度における粘度が1000~10000poise(西郷,田村:機械の研究,32,(1980),No.1,p.39)であるEガラス系(SiO2 -Al2 O3 -CaO-B2 O3 -MgO-K2 O系)または窓ガラス系(Na2O-CaO-MgO-Al2 O3 系)が採用されていた。」 (8b) 「【0016】・・・熱押ビレットとしてはSUS304ステンレス鋼を用い・・・」 (9) 本件特許に係る国際出願の優先日前に頒布された甲第9号証には、「熱間押出加工用ガラス潤滑剤」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。 (9a) 「このように熱間押出法におけるガラス潤滑剤の役割は大きく、その良否によつて押出製品の品質(表面性状、寸法精度等)は大きく左右される。」(1頁右下欄1~4行) (9b) 「このガラス潤滑剤は、従来主として主成分がSiO2-Na2O-CaO系の窓ガラス(以下窓ガラスと称する)や、SiO2-Al2O3-CaO-B2O3系の無アルカリガラス(以下Eガラス類似組成と称す)が使用されている。」(1頁右下欄10~14行) (10) 本件特許に係る国際出願の優先日前に頒布された甲第10号証には、「耐熱性ガラス繊維」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。 (10a) 「【0002】 【従来の技術】・・・Eガラス繊維の軟化点は約845℃である・・・」 (11) 本件特許に係る国際出願の優先日前に頒布された甲第11号証には、「耐熱性ガラス繊維及びその製造方法」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。 (11a) 「【0014】・・・Eガラスの軟化点は、一般に840℃程度である。・・・」 (12) 本件特許に係る国際出願の優先日前に頒布された甲第12号証には、「ガラスフィラー」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。 (12a) 「【0005】 【課題を解決するための手段】 樹脂組成物の補強材として一般に使用されるEガラス繊維は軟化点が約850℃のガラスであり・・・」 (13) 本件特許に係る国際出願の優先日前に頒布された甲第13号証には、「熱間穿孔用上面ガラス成形材および熱間押出製管用ビレットの製造方法」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。 (13a) 「【0007】 図1(a)に示すように、ガイドホール1aが形成された中空ビレット1は、コンテナ2内に、ビレット底部がコンテナ2の内面に接する状態で装入される。この中空ビレット1は、前記装入の前に、1100~1200℃程度に加熱される。」 (14) 本件特許に係る国際出願の優先日前に頒布された甲第14号証には、「塑性加工用潤滑剤」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。 (14a) 「・・・熱間鍛造用潤滑剤としては,黒鉛系の潤滑剤やガラス潤滑剤がよく知られている・・・」(2頁右上欄2~3行) (15) 本件特許に係る国際出願の優先日前に頒布された甲第15号証には、「鍛造用金型」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。 (15a) 「このような構成の鍛造用金型で、金型と材料とを950℃一定とする恒温鍛造法により、ホウ酸-ケイ酸系ガラス潤滑剤を用いて潤滑を行いながら、前記の被鍛造材を2000tの鍛造力で鍛造した・・・」(3頁右下欄最下行~4頁左上欄4行) (16) 本件特許に係る国際出願の優先日前に頒布された甲第16号証には、「押出し物からのガラス潤滑剤除去法」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。 (16a) 「熱間または冷間加工の次の工程に先だつて、生成ガラスフイルムは押出し製品から除去しなければならない。押出し用に利用されるほとんどのガラスは比較的不活性であるので、除去には、機械的手段(例えば、サンドまたはシヨツトブラスト)または化学的手段(約540℃〔1007°F〕の侵食熱溶融塩浴に浸漬)を必要とする。」(3頁右上欄13~19行) (17) 本件特許に係る国際出願の優先日前に頒布された甲第17号証には、「耐食性チタン合金継目無管の製造方法」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。 (17a) 「押出の後は、管表面のガラス(潤滑剤)をシヨツトブラスト、研磨、酸洗等によって機械的あるいは化学的に除去し、・・・」(4頁右下欄16~19行) (18) 本件特許に係る国際出願の優先日前に頒布された甲第18号証には、「高耐食性Ni基合金管の製造方法」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。 (18a) 「(2)重量%で、 C:0.05%以下、   Si:0.20%以下、 Mn:1.0%以下、  Ni:50~60%、 Cr:10~20%、   Mo:12~30%、 Al:0.3%以下を含有し、 さらに、Cu:3.0%以下、Nb:2.0%以下、W:4.0%以下、Co:2.0%以下、Ti:1.0%以下およびZr:0.5%以下の中の1種以上を含み、残部はFeおよび不可避的不純物からなるNi基合金粉末を、加工性の良好な金属製の中空円筒状容器に充填し、密閉して中空ビレットとなし、この中空ビレットを1000~1300℃の温度に加熱して熱間押出しすることを特徴とする高耐食性Ni基合金管の製造方法。」(1頁左下欄15行~右下欄7行) (19) 本件特許に係る国際出願の優先日前に頒布された甲第19号証には、「耐粒界破壊性を有するNi基合金の製造方法」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。 (19a) 「【0016】本発明にかかる方法によってNi基合金厚肉管を製造する具体的態様にあっては、先ず、前述と同一の組成の合金に均質化処理を行ってから、同様にして900 ~1300℃の温度範囲で熱間塑性加工によって中実ビレットを作製し、中心部に孔開け後、1000~1200℃の範囲で断面減少率20%以上の塑性変形を加え、さらに900~1050℃の温度範囲で1分~100 時間保持後、空冷よりも速い速度で室温まで冷却し、次いで再加熱して時効温度600 ~800 ℃で1~200 時間保持することによって時効処理を行い、粒界部にM6(B, C)型の炭硼化物を析出させることを特徴とするサワーガス環境下で優れた耐粒界破壊性を有する耐応力腐食割れ性並びに耐水素割れ性に優れたNi基合金厚肉管を製造するのである。」 (19b) 「【0053】製造法4 (塑性加工として、孔開け後に、孔広げ、押出し加工を行う例) VIM(3ton)→ ESR(360φ) →均質化処理(1200 ℃×24h)→(AC)→熱間鍛造(1120 ℃×4h加熱、1120~900 ℃で300 φまで) →孔開け機械加工 (外形300 φ、内径60φ) →熱間孔広げ加工 (1120℃加熱、外径300 φ、内径154 φまで) →熱間押出 (1120℃加熱、外形200 φ、内径150 φまで) →溶体化熱処理 (1040℃×2h,WQ)→時効(700℃×8h→FC→620 ℃×8h,AC)。」 (20) 本件特許に係る国際出願の優先日前に頒布された甲第20号証には、「ガラス繊維集束剤」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。 (20a) 「ガラス繊維の中でも長繊維は溶融状態のガラスを白金等の耐熱性金属多孔板より引き出し、単繊維となし、延伸しながら冷却した後、数百本束ねたストランドとする。その後、ロービング、チョップドストランド、チョップドストランドマットあるいは製織されロービングクロス、ガラステープ、およびガラスクロス等に加工されて不飽和ポリエステル樹脂等の強化に用いられる。」(1頁右下欄9~16行) (21) 本件特許に係る国際出願の優先日前に頒布された甲第21号証には、「複合材料用改質剤」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。 (21a) 「従来、補強材としてのガラスクロス、ガラステープ、ガラスマット、ガラスペーパーなどのガラス繊維製品・・・はすでによく知られている・・・」(1頁右下欄8~13行) (22) 本件特許に係る国際出願の優先日前に頒布された甲第22号証には、「シランカツプリング剤および積層板用ガラス繊維製品」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。 (22a) 「【0028】・・・ガラス繊維製品としては、例えば従来公知のガラス繊維例えば・・・ヤーンを織ったガラスクロス、ガラステープを挙げることができる。・・・」 5 判断 (1) 取消理由通知に記載した取消理由1及び2(特許法第29条第1項第3号及び同法同条第2項)について ア 甲第1号証に記載された発明 (ア) 甲第1号証の上記(1a)の記載によれば、金属ビレットは、その軸心にガイドホールが形成され、その一端面に凹所が形成されており、この金属ビレットを加熱してコンテナに収納し、凹所を閉塞すべくガラスクロスを載置し、ガラスクロス上にガラス粉末等の潤滑剤を供給し、工具を前記凹所に嵌入し、次いで前記ガイドホールに沿って圧入することにより、前記ガイドホールを拡孔することが記載されている。 (イ) 甲第1号証の上記(1c)には、工具10が、潤滑剤26及びガラスクロス25上から凹所24に前記凹所に入れられ、ガイドホール21を押し広げていることが看取できる。 (ウ) 前記(ア)及び(イ)から、甲第1号証には、以下の発明が記載されていると認められる。 「軸心にガイドホールが形成され、一端面に凹所が形成されている金属ビレットを加熱してコンテナに収納し、 前記凹所を閉塞すべくガラスクロスを載置し、 前記ガラスクロス上にガラス粉末等の潤滑剤を供給し、 工具を、前記潤滑剤及びガラスクロス上から前記凹所に嵌入し、次いで前記ガイドホールに沿って圧入することにより、前記ガイドホールを拡孔する方法。」(以下、「甲1発明」という。) イ 本件発明1について (ア) 本件発明1と甲1発明との対比 本件発明1と甲1発明とを対比する。 a 甲1発明の「ガラスクロス」、「ガラス粒子等の潤滑剤」は、本件発明1の「ガラス織布」、「ガラス粒子」にそれぞれ相当する。 b 甲第1号証の前記(1a)の記載によれば、甲1発明において、「金属ビレット」の「ガイドホールを拡孔」することは、金属管を押出加工することであるといえ、このことは、「金属ビレット」を加工処理することに他ならない。また、金属管は、通常、合金からなるものであるから、甲1発明の「金属ビレット」は、本件発明1の「合金加工物」に相当する。 ここで、甲1発明において、処理加工される表面は、「凹所」及び「ガイドホール」であるといえる。 そして、甲1発明において、「ガラスクロス」は、まず、「凹所を閉塞すべく」、金属ビレットの「一端面上に載置」されるものの、「工具を、前記潤滑剤及びガラスクロス上から前記凹所に嵌入」することによって、ガラスクロスは、凹所、すなわち、処理加工される表面の少なくとも一部に直接配置され、また、潤滑剤は、ガラスクロスの少なくとも一部上に付着されるといえる。 c 甲1発明において、「金属ビレット」は、「加熱してコンテナに収納」されるものであるから、「工具を、前記潤滑剤及び前記ガラスクロス上から前記凹所に嵌入」すると、加熱した金属ビレットによって、ガラス粒子等の潤滑剤及びガラスクロスは加熱されて、金属ビレット上に表面コーティングが形成されるものと認められる。 また、熱間加工において、潤滑剤として用いられるガラスが断熱性に優れており、加工物の熱クラッキングを低減させるものであることは技術常識であるから(必要であれば、甲第3号証の前記(3c)~(3d)、(3i)、甲第4号証の前記(4a)、甲第5号証の前記(5a)、甲第6号証の前記(6a)、甲第7号証の前記(7a)を参照。)、甲1発明において、ガラス粒子等の潤滑剤及びガラスクロスが加熱されて形成された表面コーティングも、断熱性に優れているもの、すなわち、金属ビレットからの熱損失を低減させるものであり、それによって、熱クラッキングを低減させるよう金属ビレットが処理加工されているものと認められる。 d 以上から、本件発明1と甲1発明とは、「熱クラッキングを低減させるよう合金加工物を処理加工する方法であって、 ガラス織布を前記合金加工物の処理加工される表面の少なくとも一部分上に直接配置することと、 ガラス粒子を前記ガラス織布の少なくとも一部分上に付着させることと、 前記ガラス織布及びガラス粒子を加熱して、前記合金加工物上に、前記合金加工物からの熱損失を低減させる表面コーティングを形成させることと、を含む、方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。 相違点1:「ガラス粒子を前記ガラス織布の少なくとも一部分上に付着させること」について、本件発明1は、「噴霧、刷毛塗、フローコーティング、散布、ローリング、及び浸漬の少なくとも1つを含む」のに対し、甲1発明は、そのような特定がなされていない点。 (イ) 相違点1についての判断 前記(ア)bで検討したように、甲1発明において、「工具を、前記潤滑剤及びガラスクロス上から前記凹所に嵌入」することによって、潤滑剤は、ガラスクロスの少なくとも一部上に付着されるといえることからすると、甲1発明における、潤滑剤をガラスクロスの少なくとも一部上に付着するための手段、すなわち、「工具を、前記潤滑剤及びガラスクロス上から前記凹所に嵌入」するとの手段は、本件発明1の「噴霧、刷毛塗、フローコーティング、散布、ローリング、及び浸漬の少なくとも1つ」の手段であるとはいえない。また、甲1発明における、「前記潤滑剤及びガラスクロス上から、工具を前記凹所に嵌入」するとの手段を、本件発明1の「噴霧、刷毛塗、フローコーティング、散布、ローリング、及び浸漬の少なくとも1つ」の手段に置き換えると、工具によってガイドホールを拡孔することはできなくなるから、そのような置き換えには阻害要因がある。 そうすると、特許異議申立人が特許異議申立書の24頁6~8行で主張するように、ガラス粒子を散布する(まぶす)ことが技術常識であったとしても、本件発明1は、甲1発明であるとはいえないし、また、甲1発明に基づいて、又は、甲1発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得るものであるとはいえない。 (ウ) 特許異議申立人は、意見書の4頁16行~下から2行において、訂正により請求項1に追加された「前記ガラス粒子を付着させることが、噴霧、刷毛塗、フローコーティング、散布、ローリング、及び浸漬の少なくとも1つを含む」のうちの「散布」とは、「ふりまくこと」や「ふりかける」ことを意味するものであるところ、甲第1号証には、「クロス25上にガラス粉末等の潤滑剤26が供給されて、ここに第3図1に図解するように孔拡準備体勢がとられる。」と記載され(2頁4欄23~26行)、ガラスクロス25上に山状に盛られたガラス粉末26が示されており(第3図1)、上記記載に接した当業者であれば、ガラス粉末26の供給方法として、「ガラス粉末26を上から落下させる」という方法を観念するだろうと考えるのが最も自然であり、これは、ガラス粉末26を「ふりかけること」にほかならないから、甲第1号証には、ガラス粉末26の供給方法として「散布」は記載されているに等しい事項であるし、本技術分野における当業者にしてみれば、「散布」はガラス粉末26の供給方法として常套手段にすぎないから、本件発明1は甲第1号証に記載された発明されたものであり、新規性を有しない旨主張している。 そこで検討するに、確かに、甲第1号証の2頁4欄23~26行及び第3図1の記載から、ガラス粉末26の供給方法が、「ガラス粉末26を上から落下させる(ふりかける)」という方法であるとするのは自然であるといえる。 しかし、本件発明1の「散布」は、「ガラス粒子を前記ガラス織布の少なくとも一部分上に付着させる」ための手段であるところ、上記「付着」とは、「他の物について離れないこと」(広辞苑、第五版、1998年11月11日発行、株式会社岩波書店、p.2341)を意味するものであるから、本件発明1は、ガラス粒子を単に散布するだけではなく、散布することによって、ガラス織布の少なくとも一部分上に、ついて離れないようにするものであるといえる。 一方、甲第1号証において、「ガラス粉末26を上から落下させる(ふりかける)」だけでは、ガラス粉末は、ガラスクロスに、ついて離れないようになっているとはいえない。 そうすると、甲第1号証には、本件発明1の「ガラス粒子」を「散布」することについては記載されているといえるものの、「ガラス粒子」を「散布」することによって、「ガラス粒子を前記ガラス織布の少なくとも一部分上に付着させる」ことは記載されているとはいえない。 したがって、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえないから、特許異議申立人の上記主張は採用できない。 (エ) 特許異議申立人は、意見書の4頁最下行~5頁15行において、甲1発明の認定に対する補足意見として、甲1発明において、金属ビレットの一端のうち、「凹所の周辺部分」も処理加工される表面である旨主張している。 しかし、特許異議申立人の上記主張のとおり甲1発明を認定したとしても、そのことは、上記(イ)及び(ウ)の判断を左右するものではない。 ウ 本件発明2~5、7、9~15、17、18、22、23について 本件発明2~5、7、9~15、17、18、22、23は、いずれも、請求項1に特定された全ての事項を有しているから、前記イで検討したのと同様の理由により、本件発明2、7、10、14、17、22は、いずれも、甲1発明であるとはいえないし、また、本件発明2~5、7、9~15、17、18、22、23は、いずれも、甲1発明に基づいて、又は、甲1発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得るものであるとはいえない。 エ 本件発明24について 前記イ(ア)bで検討したように、甲1発明において、「金属ビレット」の「ガイドホールを拡孔」することは、金属管を押出加工することであるといえることからすると、甲1発明の方法は、押出操作であって鍛造操作ではないから、甲1発明において、ガラス粉末等の潤滑剤を付着させることに先立って、金属ビレットを鍛造温度にすることはあり得ないし、また、押出操作である甲1発明の方法を鍛造操作に転用することの動機付けも存在しない。 そうすると、特許異議申立人が特許異議申立書の25頁3~5行で主張するように、熱間鍛造にガラスを潤滑剤として使用することが周知技術であったとしても、本件発明24は、甲1発明に基づいて、又は、甲1発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得るものであるとはいえない。 オ 本件発明25、26、28、29について 本件発明25、26、28、29は、いずれも、請求項24に特定された全ての事項を有しているから、前記エで検討したのと同様の理由により、本件発明25、26、28、29は、甲1発明に基づいて、又は、甲1発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得るものであるとはいえない。 カ 本件発明39について 本件発明39の「ガラス織布を前記合金加工物の円周囲面の周りに横方向に直接巻き付けること」との事項について、甲1発明では、ガラスクロスが直接配置される「凹所」の内側面は、甲第1号証の前記(1b)の記載によれば、円錐状であるから、円周囲面であるといえる。 しかし、甲1発明においては、「ガラスクロス」を、「凹所」の内側面である円周囲面の「周りに横方向に直接巻き付ける」ことは技術的に不可能である。 したがって、本件発明39は、甲1発明であるとはいえないし、また、甲1発明に基づいて、又は、甲1発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得るものであるとはいえない。 キ まとめ よって、本件発明1、2、7、10、14、17、22は、甲1発明とはいえず、請求項1、2、7、10、14、17、22に係る特許は、特許法第29条第1項第3号に該当するにもかかわらずなされたものではないし、また、本件発明1~5、7、9~15、17、18、22~26、28、29、39は、甲1発明に基づいて、又は、甲1発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得るものであるとはいえず、請求項1~5、7、9~15、17、18、22~26、28、29、39に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではないから、取消理由1及び2には理由がない。 (2) 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について ア 申立理由2-1及び2-2(特許法第29条第2項)について (ア) 本件発明8について 前記(1)エで検討したように、甲1発明の方法は、押出操作であって鍛造操作ではないし、また、押出操作である甲1発明の方法を鍛造操作に転用することの動機付けは存在しない。 そうすると、特許異議申立人が特許異議申立書の25頁3~5行で主張するように、熱間鍛造にガラスを潤滑剤として使用することが周知技術であったとしても、本件発明8は、甲1発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得るものであるとはいえない。 (イ) 本件発明16について a 甲1発明の「工具」は、「金属ビレット」に形成されている「ガイドホールを拡孔する」ものであるところ、本件発明16の「ダイ及びロールの少なくとも1つ」は、いずれも、「金属ビレット」に形成されている「ガイドホールを拡孔する」ものではないから、甲1発明の「工具」に代えて、「ダイ及びロールの少なくとも1つ」を用いることの動機付けは存在しない。 したがって、特許異議申立人が特許異議申立書の27頁下から12行~9行で主張するように、ガラス織布及びガラス粒子を加熱して合金加工物上に表面コーティングを形成させた後に、ダイ(ダイス)で合金加工物に力を加え、合金加工物を変形させることが周知技術であったとしても、本件発明16は、甲1発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得るものであるとはいえない。 b 特許異議申立人は、意見書の5頁21行~下から5行において、甲第1号証では、コンテナ22に収納された金属ビレット20の下端面は、ダイス23の上面に接触しており(2頁4欄15~17行、第3図)、当該ダイス23は、拡孔中の金属ビレット20を保持固定するものであり、拡孔中の金属ビレット20は下方に移動しようとしてダイス23に力を加えるから、この反作用として、ダイス23は金属ビレット20に力を加えているので、甲1発明は、ガラスクロス25及びガラス粉末26を加熱して金属ビレット20に力を加え、金属ビレット20を変形させているため、本件発明16は、甲第1号証に記載されたものであり、新規性を有しないか、仮に両者の間に相違点があったとしても、その相違点は微差であって、甲1発明に基づいて、又は、甲1発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得るものであり、進歩性を有しない旨主張している。 しかし、特許異議申立人は、特許異議申立書(特に27頁21~31行参照。)において、本件発明16が新規性を有さない点については、何ら主張していないから、特許異議の申立ての理由に対して、実質的に新たな内容を含むものであり採用しない。 なお、本件発明16の「前記ガラス織布及びガラス粒子を加熱して前記合金加工物上に表面コーティングを形成させた後に、ダイ及びロールの少なくとも1つで前記合金加工物に力を加え、前記合金加工物を変形させる」の「力」とは、反作用としての力を含み得るものではないことは、本件特許明細書の記載から明らかである。 (ウ) 本件発明19について 前記(1)エで検討したように、甲1発明の方法は、押出であって鍛造ではないし、また、押出である甲1発明の方法を鍛造に転用することの動機付けは存在しない。 そうすると、特許異議申立人が特許異議申立書の28頁19~21行で主張するように、合金加工物上に表面コーティングを形成させた後に、鍛造によって合金加工物を熱間加工することが周知技術であったとしても、本件発明19は、甲1発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得るものであるとはいえない。 (エ) 本件発明20、21について 本件発明20、21は、いずれも、請求項19に特定された全ての事項を有しているから、前記(ウ)で検討したのと同様の理由により、本件発明20、21は、甲1発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得るものであるとはいえない。 (オ) 本件発明27について 前記(1)エで検討したように、甲1発明の方法は、押出であって鍛造ではないし、また、押出である甲1発明の方法を鍛造に転用することの動機付けは存在しない。 そうすると、特許異議申立人が特許異議申立書の30頁18~20行で主張するように、鍛造によって合金加工物を熱間加工することが周知技術であったとしても、本件発明27は、甲1発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得るものであるとはいえない。 (カ) 本件発明30について 前記(イ)で検討したように、甲1発明の「工具」に代えて、「ダイ及びロールの少なくとも1つ」を用いることの動機付けは存在しないから、特許異議申立人が特許異議申立書の31頁下から11行~9行で主張するように、ダイが鍛造または押出の間に合金加工物の表面上の前記表面コーティングと接触することが周知技術であったとしても、本件発明30は、甲1発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得るものであるとはいえない。 (キ) 本件発明31~36について 本件発明31~36は、いずれも、請求項30に特定された全ての事項を有しているから、前記(カ)で検討したのと同様の理由により、本件発明31~36は、甲1発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得るものであるとはいえない。 (ク) 本件発明37について a 甲1発明の「凹所」は、甲第1号証の前記(1b)の記載によれば、円錐状であるから、「凹所」の開口は円形であるといえる。 そうすると、甲1発明の「ガラスクロス」は、「凹所を閉塞」するためのもの、すなわち、円形の開口を閉塞するためのものであるから、テープ状のもの、すなわち、「ガラステープ」であるとはいえない。 また、甲第20号証の前記(20a)、甲第21号証の前記(21a)、甲第22号証の前記(22a)に記載されているように、「ガラスクロス」と「ガラステープ」とは、通常は別物として扱われており、「ガラステープ」の幅は、「ガラスクロス」の幅よりも狭いことは技術常識である。 そうすると、甲1発明において、「ガラスクロス」を、当該「ガラスクロス」の幅よりも狭い幅のガラステープに置き換えると、凹所は閉塞されなくなることからして、甲1発明において、「ガラスクロス」を「ガラステープ」に置き換えることには阻害要因が存在する。 したがって、特許異議申立人が特許異議申立書の33頁9~11行で主張するように、「ガラステープ」及び「ガラスクロス」は共に代表的なガラス繊維製品として周知なものであったとしても、本件発明37は、甲1発明に基づいて、又は、甲1発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得るものであるとはいえない。 b 特許異議申立人は、意見書の6頁1~20行において、「テープ」は「幅がせまく長い、帯状の紙片・布片など」を意味するから、「ガラステープ」は「ガラス製の細長い帯状の布」を含む概念と解されるため、本件発明37における「ガラステープ」は、甲1発明における「ガラスクロス25」に相当する旨主張している。 しかし、前記aでの検討によれば、甲1発明の「ガラスクロス」は、本件発明37の「ガラステープ」に相当するとはいえないから、特許異議申立人の上記主張は採用できない。 (ケ) 本件発明38について 甲1発明は、本件発明38の「セラミックブランケットを前記ガラス繊維のブランケット上に配置させる」との事項を備えていないし、当該事項は、特許異議申立人が提出したいずれの証拠にも、記載も示唆もされていないから、本件発明38は、甲1発明に基づいて、又は、甲1発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得るものであるとはいえない。 (コ) まとめ よって、本件発明8、16、19~21、27、30~38は、甲1発明に基づいて、又は、甲1発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得るものであるとはいえず、請求項8、16、19~21、27、30~38に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものでもないから、申立理由2-1及び2-2には理由がない。 イ 申立理由2-3(特許法第29条第2項)について (ア) 甲第2号証に記載された発明 a 甲第2号証の前記(2a)には、あらかじめガラスシェルをコンテナ内に挿入し、引続いて前記ガラスシェルの内側に加熱したビレットを挿入し、ビレットの持つ熱によりガラスを溶融することによりビレットとコンテナの間にガラスの厚い膜を得ることが記載されている。 また、甲第2号証の前記(2b)には、ガラスシェルは、軟鋼板製の円筒の内面上に、水ガラスをバインダーとしてガラスクロスを貼り付けて、その内側に低粘度ガラス粉末をまぶしたものであり、1200℃に加熱されたビレットをガラスシェル内に挿入して押出すことが記載されている。 b 前記aから、甲第2号証には、以下の発明が記載されていると認められる。 「軟鋼板製の円筒のコンテナの内面上に、水ガラスをバインダーとしてガラスクロスを貼り付け、その内側に低粘度コンテナ潤滑用のガラス粉末をまぶすことによりガラスシェルを形成し、 1200℃に加熱されたビレットを前記ガラスシェル内に挿入し、前記ビレットの持つ熱により前記ガラスシェルを溶融することにより、前記ビレットと前記コンテナの間にガラスの厚い膜を介在させて、前記ビレットを押出す方法。」(以下、「甲2発明」という。) (イ) 本件発明1と甲2発明との対比・判断 甲2発明は、少なくとも、本件発明1の「ガラス織布を前記合金加工物の処理加工される表面の少なくとも一部分上に直接配置すること」との事項を有していない。 この点について特許異議申立人は特許異議申立書35頁1~7行において、ガラス織布は、ビレット3の持つ熱により溶融され、ビレット3とコンテナ2の間にガラスの膜を形成し、これにより押出力(摩擦)を低減しようとするものであるから、ビレット3の表面上に配置されても、コンテナ2の内面に配置されても、同一の作用・効果を奏するものであり、したがって、コンテナ2の内面の代わりに、ビレットの表面上にガラス織布を直接配置することは、甲2発明からの単なる置換又は設計事項にすぎない旨主張している。 しかし、甲第2号証には、ビレットの表面上にガラスクロスを直接配置するとの事項は記載も示唆されてないし、当該事項は、特許異議申立人が提出したいずれの証拠にも、記載も示唆もされていないから、甲2発明において、軟鋼板製の円筒のコンテナの内面上に、水ガラスをバインダーとしてガラスクロスを貼り付けることに代えて、ビレットの表面にガラスクロスを直接配置することの動機付けは存在しない。 したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。 よって、本件発明1は、甲2発明に基づいて、又は、甲2発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得るものであるとはいえない。 (ウ) まとめ よって、本件発明1は、甲2発明に基づいて、又は、甲2発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得るものであるとはいえず、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではないから、申立理由2-3には理由がない。 第4 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立ての理由によっては、請求項1~5、7~26、28~39に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1~5、7~26、28~39に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 そして、請求項6、27に係る特許は、訂正により削除されたため、本件特許の請求項6、27に対して、特許異議申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2017-700173

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