特許異議申立
2017-700028
ポリテトラフルオロエチレン水性乳化液及びその製造方法、該水性乳化液を用いて得られるポリテトラフルオロエチレン水性分散液、ポリテトラフルオロエチレンファインパウダー並びに延伸多孔体
- 審判番号
- 2017-700028
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2014-249831
- 登録番号
- 特許第5949883号(P5949883)
- 請求日
- 2017年01月13日
- 審決日
- 2018年03月22日
- 公報発行日
- 2018年08月31日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】旭硝子株式会社
- 【権利者代理人】小椋 正幸
- 【権利者代理人】柳井 則子
- 【権利者代理人】大槻 真紀子
- 【異議申立人】ダイキン工業 株式会社
- 【異議申立人代理人】特許業務法人 安富国際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 岡崎 美穂
- 審判官 渕野 留香
- 審判官 大島 祥吾
- 分類
- P1651.121-ZDA(C08F) / P1651.536-ZDA(C08F) / P1651.537-ZDA(C08F) / P1651.851-ZDA(C08F) / P1651.857-ZDA(C08F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第9項、特許法第36条第6項第2号、特許法第41条、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5949883号発明「ポリテトラフルオロエチレン水性乳化液及びその製造方法、該水性乳化液を用いて得られるポリテトラフルオロエチレン水性分散液、ポリテトラフルオロエチレンファインパウダー並びに延伸多孔体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第5949883号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔1、4~7〕〔2、8~11〕〔3、12~15〕について訂正することを認める。
特許第5949883号の請求項1、4ないし7に係る特許を取り消す。
同請求項2、3、8ないし15に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第5949883号の請求項1~7に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、特許法第41条に基づく優先権主張を伴って平成22年11月8日(優先日:平成21年11月9日)に出願した特願2011-539417号の一部を平成26年12月10日に新たな特許出願として、特許権者旭硝子株式会社により出願された特許出願であり、平成28年6月17日付けでその特許権の設定登録がされ、同年7月13日に特許公報が発行され、その後、平成29年1月13日(受理日は同年1月16日)に特許許異議申立人 ダイキン工業株式会社(以下、単に「申立人」という。)により、請求項1~7に対して、甲第1~15号証を証拠方法として、甲第1号証、甲第2号証又は甲第3号証を主たる引用文献とする特許法第29条第2項に基づく取消理由(取消理由1~3)、同法第36条第4項第1号に基づく取消理由(取消理由4)、及び、同法第36条第6項第2号に基づく取消理由(取消理由5)を主張する特許異議の申立てがされ、当審において、同年4月10日付けで、上記取消理由1、2、4及び5に基づく取消理由が通知され、同年6月9日(受理日は同年6月12日)に特許権者より、意見書の提出及び訂正請求がされ、同年7月21日(受理日は同年7月24日)に、申立人から意見書が提出された。
その後、同年9月8日付けで再度の取消理由(決定の予告)が通知され、同年11月10日(受理日は同年11月13日)に意見書の提出及び訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)がされ、同年12月22日(受理日は同年12月25日)に申立人から意見書が提出され、平成30年2月27日(受理日は同年2月28日)及び同年3月8日(受理日は同年3月9日)に、特許権者より上申書が提出された。
なお、平成29年6月9日に提出された訂正請求書による訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定より、取り下げられたものとみなす。
<申立人が提出した証拠方法>
甲第1号証:国際公開第2007/046345号
甲第2号証:国際公開第2005/061567号
甲第3号証:特開平11-240917号公報
甲第4号証:里川孝臣編、「ふっ素樹脂ハンドブック」、初版、日刊工業新聞社、1990年、第22~33頁、写し
甲第5号証:国際公開第2007/046482号
甲第6号証:国際公開第2007/049517号
甲第7号証:特表2009-501808号公報
甲第8号証:米国特許出願公開第2008/0269408号明細書及び抄訳文
甲第9号証:特開2010-229164号公報
甲第10号証:L.G.Kochkina, 外2名,“KINETICS OF COPOLYMERIZATION OF TETRAFLUOROETHYLENE WITH PERFLUORO(ALKYL VINYL)ETHERS OF DIFFERENT STRUCTURES”,Journal of Applied Chemistry of the USSR,1984,Vol.57,No.5,Part 2,p.1042~1044, 写し及び抄訳文
甲第11号証:Morton Fineman, 外1名,“Linear Method for Determining Monomer Reactivity Ratios in Copolymerization”,Journal of Polymer Science,1950,Vol.V,No.2,p.259~262, 写し及び抄訳文
甲第12号証:Daniel W.Brown, 外1名,“THE RADIATION-INDUCED COPOLYMERIZATION OF TETRAFLUOROETHYLENE AND 3,3,3-TRIFLUOROPROPENE AT HIGH PRESSURE”,Polymer Preprints, American Chemical Society, Division of Polymer Chemistry,1966,Vol.7,No.2, p.1116~1127, 写し及び抄訳文
甲第13号証:Daniel W.Brown, 外2名,“Radiation-Induced Copolymerization of Tetrafluoroethylene and 3,3,4,4,5,5,5-Heptafluoropentene-1 Under Pressure”,Journal of Polymer Science,1970,PartA-1,Vol.8,p.2441~2452, 写し及び抄訳文
甲第14号証:特開2000-34309号公報
甲第15号証:特公昭56-48528号公報
第2 訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
本件訂正請求の内容は以下のとおりである。なお、訂正箇所をわかりやすく表示するために、当審において、訂正する部分と訂正された部分に下線を付与した。
(1)訂正事項1
訂正前の特許請求の範囲の請求項1に
「炭素数4~8で主鎖に1~4個のエーテル性酸素原子を有する含フッ素カルボン酸及びその塩からなる群から選ばれる1種以上の含フッ素乳化剤を用いてテトラフルオロエチレンを乳化重合し、平均一次粒子径が0.1~0.3μmであるポリテトラフルオロエチレン微粒子を含有する水性乳化液を得るポリテトラフルオロエチレン水性乳化液の製造方法であって、
テトラフルオロエチレンの乳化重合の開始時に、下記一般式(1)で表わされる(ポリフルオロアルキル)エチレン(a)、及び/又は、テトラフルオロエチレンとの共重合におけるモノマー反応性比rTFEが0.1~8であって、下記一般式(2)、(3)、(4)のいずれかで表わされる化合物、及び、パーフルオロ(2-メチレン-4-メチル-1,3-ジオキソラン)からなる群から選ばれる少なくとも1種からなるコモノマー(b)を、
最終的なポリテトラフルオロエチレンの生成量に対して0.001~0.01質量%の範囲にあって、かつ、得られるポリテトラフルオロエチレン水性乳化液の下記測定方法記載の方法により測定した安定性時間が、前記一般式(1)で表わされる(ポリフルオロアルキル)エチレン(a)、及び/又は、前記コモノマー(b)を入れないこと以外は全く同じ条件で乳化重合して得られるポリテトラフルオロエチレン水性乳化液の値に比して20%以上向上し、かつ600秒以内となるように定めた量で、乳化重合系に含有させることを特徴とするポリテトラフルオロエチレン水性乳化液の製造方法。
CH2=CH-Rf1 ・・・(1)
(式(1)中のRf1は、炭素数が1~10のポリフルオロアルキル基である。)
CF2=CF-O-(CF2)nCF =CF2 ・・・(2)
(式(2)中のnは1~2の整数である。)
CF2=CF-O-Rf2 ・・・(3)
(式(3)中のRf2は炭素数が1~2のパーフルオロアルキル基である。)
【化1】
(式(4)中のX及びX’は、F、C1、又はメトキシ基であり、Yは、下記(Y1)又は(Y2)である。)
【化2】
(式(Y2)中のZ及びZ’は、F、又は炭素数1~3のフッ素化アルキル基である。)
測定方法・・・SUS304の材質で、内径12cmの円筒状容器に、厚み2.9mm、幅2.5cm、長さ15cmのバッフルを2枚、底部から2.5cm上げて対称的に熔接して用いる。PTFE水性乳化液の固形分濃度を20%に調合して総量800gを仕込み、温度を23±1℃に調整する。そして、内径8.0mmのシャフトに取り付けた厚み1.2mm、幅1.3cm、長さ9.7cm、回転方向へ30°傾けた水平パドルを、底部から5mm上げて設置し、500rpmの条件で、ポリテトラフルオロエチレン水性乳化液が破壊されて、疎水化されたポリテトラフルオロエチレンが生じるまでの時間を安定性時間とする。」
とあるのを、
「CF3OCF(CF3)CF2OCF(CF3)COOH、CF3O(CF2)3OCHFCF2COOH、C2F5OCF2CF2OCF2COOH及びこれらのLi、Na、K、NH4の塩からなる群から選ばれる1種以上の含フッ素乳化剤を用い、重合温度10~95℃、重合圧力0.5~4.0MPaでテトラフルオロエチレンを乳化重合し、平均一次粒子径が0.1~0.3μmであるポリテトラフルオロエチレン微粒子を含有する水性乳化液を得るポリテトラフルオロエチレン水性乳化液の製造方法であって、
テトラフルオロエチレンの乳化重合の開始時に、CH2=CH-(CF2)4F及びCH2=CH-(CF2)6Fからなる群より選ばれる一種以上からなる(ポリフルオロアルキル)エチレン(a)、及び/又は、CF2=CF-O-(CF2)2CF=CF2、CF2=CF-O-CF3、パーフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)、及び、パーフルオロ(2-メチレン-4-メチル-1,3-ジオキソラン)からなる群から選ばれる少なくとも1種からなるコモノマー(b)を、
最終的なポリテトラフルオロエチレンの生成量に対して0.001~0.01質量%の範囲にあって、かつ、得られるポリテトラフルオロエチレン水性乳化液の下記測定方法記載の方法により測定した安定性時間が、前記(ポリフルオロアルキル)エチレン(a)、及び/又は、前記コモノマ-(b)を入れないこと以外は全く同じ条件で乳化重合して得られるポリテトラフルオロエチレン水性乳化液の値に比して20%以上向上し、かつ600秒以内となるように定めた量で、乳化重合系に含有させることを特徴とするポリテトラフルオロエチレン水性乳化液の製造方法。
測定方法・・・SUS304の材質で、内径12cmの円筒状容器に、厚み2.9mm、幅2.5cm、長さ15cmのバッフルを2枚、底部から2.5cm上げて対称的に熔接して用いる。PTFE水性乳化液の固形分濃度を20%に調合して総量800gを仕込み、温度を23±1℃に調整する。そして、内径8.0mmのシャフトに取り付けた厚み1.2mm、幅1.3cm、長さ9.7cm、回転方向へ30°傾けた水平パドルを、底部から5mm上げて設置し、500rpmの条件で、ポリテトラフルオロエチレン水性乳化液が破壊されて、疎水化されたポリテトラフルオロエチレンが生じるまでの時間を安定性時間とする。」
に、訂正する。(請求項1の記載を直接或いは間接的に引用する請求項4~7も同様に訂正されることとなる。)
(2)訂正事項2
訂正前の特許請求の範囲の請求項2に
「前記ポリテトラフルオロエチレン微粒子の平均一次粒子径が0.2~0.3μmである、請求項1に記載のポリテトラフルオロエチレン水性乳化液の製造方法。」
とあるのを、
「CF3OCF(CF3)CF2OCF(CF3)COOH、CF3O(CF2)3OCHFCF2COOH、C2F5OCF2CF2OCF2COOH及びこれらのLi、Na、K、NH4の塩からなる群から選ばれる1種以上の含フッ素乳化剤を用い、重合温度10~95℃、重合圧力0.5~4.0MPaでテトラフルオロエチレンを乳化重合し、平均一次粒子径が0.2~0.3μmであるポリテトラフルオロエチレン微粒子を含有する水性乳化液を得るポリテトラフルオロエチレン水性乳化液の製造方法であって、
テトラフルオロエチレンの乳化重合の開始時に、CH2=CH-(CF2)4F及びCH2=CH-(CF2)6Fからなる群より選ばれる一種以上からなる(ポリフルオロアルキル)エチレン(a)、及び/又は、CF2=CF-O-(CF2)2CF=CF2、及び、パーフルオロ(2-メチレン-4-メチル-1,3-ジオキソラン)からなる群から選ばれる少なくとも1種からなるコモノマー(b)を、
最終的なポリテトラフルオロエチレンの生成量に対して0.001~0.01質量%の範囲にあって、かつ、得られるポリテトラフルオロエチレン水性乳化液の下記測定方法記載の方法により測定した安定性時間が、前記(ポリフルオロアルキル)エチレン(a)、及び/又は、前記コモノマー(b)を入れないこと以外は全く同じ条件で乳化重合して得られるポリテトラフルオロエチレン水性乳化液の値に比して20%以上向上し、かつ600秒以内となるように定めた量で、乳化重合系に含有させることを特徴とするポリテトラフルオロエチレン水性乳化液の製造方法。
測定方法・・・SUS304の材質で、内径12cmの円筒状容器に、厚み2.9mm、幅2.5cm、長さ15cmのバッフルを2枚、底部から2.5cm上げて対称的に熔接して用いる。PTFE水性乳化液の固形分濃度を20%に調合して総量800gを仕込み、温度を23±1℃に調整する。そして、内径8.0mmのシャフトに取り付けた厚み1.2mm、幅1.3cm、長さ9.7cm、回転方向へ30°傾けた水平パドルを、底部から5mm上げて設置し、500rpmの条件で、ポリテトラフルオロエチレン水性乳化液が破壊されて、疎水化されたポリテトラフルオロエチレンが生じるまでの時間を安定性時間とする。」
に、訂正する。
(3)訂正事項3
訂正前の特許請求の範囲の請求項3に
「前記(ポリフルオロアルキル)エチレン(a)が、CH2―CH-(CF2)2F、CH2=CH-(CF2)4F及びCH2=CH-(CF2)6Fからなる群より選ばれる一種以上である、請求項1又は2に記載のポリテトラフルオロエチレン水性乳化液の製造方法。」
とあるのを、
「CF3OCF(CF3)CF2OCF(CF3)COOH、CF3O(CF2)3OCHFCF2COOH、C2F5OCF2CF2OCF2COOH及びこれらのLi、Na、K、NH4の塩からなる群から選ばれる1種以上の含フッ素乳化剤を用い、重合温度10~95℃、重合圧力0.5~4.0MPaでテトラフルオロエチレンを乳化重合し、平均一次粒子径が0.l~0.3μmであるポリテトラフルオロエチレン微粒子を含有する水性乳化液を得るポリテトラフルオロエチレン水性乳化液の製造方法であって、
テトラフルオロエチレンの乳化重合の開始時に、CH2=CH-(CF2)4F及びCH2=CH-(CF2)6Fからなる群より選ばれる一種以上からなるコモノマーを、
最終的がポリテトラフルオロエチレンの生成量に対して0.001~0.01質量%の範囲にあって、かつ、得られるポリテトラフルオロエチレン水性乳化液の下記測定方法記載の方法により測定した安定性時間が、前記コモノマーを入れないこと以外は全く同じ条件で乳化重合して得られるポリテトラフルオロエチレン水性乳化液の値に比して20%以上向上し、かつ600秒以内となるように定めた量で、乳化重合系に含有させることを特徴とするポリテトラフルオロエチレン水性乳化液の製造方法。
測定方法・・・SUS304の材質で、内径12cmの円筒状容器に、厚み2.9mm、幅2.5cm、長さ15cmのバッフルを2枚、底部から2.5cm上げて対称的に熔接して用いる。PTFE水性乳化液の固形分濃度を20%に調合して総量800gを仕込み、温度を23±1℃に調整する。そして、内径8.0mmのシャフトに取り付けた厚み1.2mm、幅1.3cm、長さ9.7cm、回転方向へ30°傾けた水平パドルを、底部から5mm上げて設置し、500rpmの条件で、ポリテトラフルオロエチレン水性乳化液が破壊されて、疎水化されたポリテトラフルオロエチレンが生じるまでの時間を安定性時間とする。」
に訂正する。
(4)訂正事項4
訂正前の特許請求の範囲の請求項4に
「請求項1~3のいずれかに記載の方法で得られるポリテトラフルオロエチレン水性乳化液に、ノニオン性界面活性剤を添加して安定化した後、ポリテトラフルオロエチレン微粒子の含有量が50~70質量%となるように濃縮することを特徴とするポリテトラフルオロエチレン水性分散液の製造方法。」
とあるのを、
「請求項1に記載の方法で得られるポリテトラフルオロエチレン水性乳化液に、ノニオン性界面活性剤を添加して安定化した後、ポリテトラフルオロエチレン微粒子の含有量が50~70質量%となるように濃縮することを特徴とするポリテトラフルオロエチレン水性分散液の製造方法。」に訂正する。
(5)訂正事項5
訂正前の特許請求の範囲の請求項5に
「請求項1~3のいずれかに記載の方法で得られるポリテトラフルオロエチレン水性乳化液を凝集することにより、500秒以上の応力緩和時間を保持する押出し成形品が得られる、ポリテトラフルオロエチレンファインパウダーを得ることを特徴とするポリテトラフルオロエチレンファインパウダーの製造方法。」 とあるのを、
「請求項1に記載の方法で得られるポリテトラフルオロエチレン水性乳化液を凝集することにより、500秒以上の応力緩和時間を保持する押出し成形品が得られる、ポリテトラフルオロエチレンファインパウダーを得ることを特徴とするポリテトラフルオロエチレンファインパウダーの製造方法。」 に訂正する。 (請求項5の記載を引用する請求項6、7も同様に訂正されることとなる。)
(6)訂正事項6
訂正前の特許請求の範囲の請求項4に
「請求項1~3のいずれかに記載の方法で得られるポリテトラフルオロエチレン水性乳化液に、ノニオン性界面活性剤を添加して安定化した後、ポリテトラフルオロエチレン微粒子の含有量が50~70質量%となるように濃縮することを特徴とするポリテトラフルオロエチレン水性分散液の製造方法。」
とあるうち、請求項2を引用するものについて、
「請求項2に記載の方法で得られるポリテトラフルオロエチレン水性乳化液に、ノニオン性界面活性剤を添加して安定化した後、ポリテトラフルオロエチレン微粒子の含有量が50~70質量%となるように濃縮することを特徴とするポリテトラフルオロエチレン水性分散液の製造方法。」
に訂正し、新たに請求項8とする。
(7)訂正事項7
訂正前の特許請求の範囲の請求項5に
「請求項1~3のいずれかに記載の方法で得られるポリテトラフルオロエチレン水性乳化液を凝集することにより、500秒以上の応力緩和時間を保持する押出し成形品が得られる、ポリテトラフルオロエチレンファインパウダーを得ることを特徴とするポリテトラフルオロエチレンファインパウダーの製造方法。」 とあるうち、請求項2を引用するものについて、
「請求項2に記載の方法で得られるポリテトラフルオロエチレン水性乳化液を凝集することにより、500秒以上の応力緩和時間を保持する押出し成形品が得られる、ポリテトラフルオロエチレンファインパウダーを得ることを特徴とするポリテトラフルオロエチレンファインパウダーの製造方法。」
に訂正し、新たに請求項9とする。
(8)訂正事項8
訂正前の特許請求の範囲の請求項6に
「得られるポリテトラフルオロエチレンファインパウダーの標準比重が2.135~2.155である、請求項5に記載のポリテトラフルオロエチレンファインパウダーの製造方法。」
とあるうち、請求項2を引用する請求項5を引用するものについて、
「得られるポリテトラフルオロエチレンファインパウダーの標準比重が2.135~2.155である、請求項9に記載のポリテトラフルオロエチレンファインパウダーの製造方法。」
に訂正し、新たに請求項10とする。
(9)訂正事項9
訂正前の特許請求の範囲の請求項7に
「請求項5又は6に記載の方法で得られるポリテトラフルオロエチレンファインパウダーをペースト押し出し後延伸することを特徴とする延伸多孔体の製造方法。」
とあるうち、請求項2を引用する請求項5又は6を引用するものについて、
「請求項9又は10に記載の方法で得られるポリテトラフルオロエチレンファインパウダーをペースト押し出し後延伸することを特徴とする延伸多孔体の製造方法。」
に訂正し、新たに請求項11とする。
(10)訂正事項10
訂正前の特許請求の範囲の請求項4に
「請求項1~3のいずれかに記載の方法で得られるポリテトラフルオロエチレン水性乳化液に、ノニオン性界面活性剤を添加して安定化した後、ポリテトラフルオロエチレン微粒子の含有量が50~70質量%となるように濃縮することを特徴とするポリテトラフルオロエチレン水性分散液の製造方法。」
とあるうち、請求項3を引用するものについて、
「請求項3に記載の方法で得られるポリテトラフルオロエチレン水性乳化液に、ノニオン性界面活性剤を添加して安定化した後、ポリテトラフルオロエチレン微粒子の含有量が50~70質量%となるように濃縮することを特徴とするポリテトラフルオロエチレン水性分散液の製造方法。」
に訂正し、新たに請求項12とする。
(11)訂正事項11
訂正前の特許請求の範囲の請求項5に
「請求項1~3のいずれかに記載の方法で得られるポリテトラフルオロエチレン水性乳化液を凝集することにより、500秒以上の応力緩和時間を保持する押出し成形品が得られる、ポリテトラフルオロエチレンファインパウダーを得ることを特徴とするポリテトラフルオロエチレンファインパウダーの製造方法。」
とあるうち、請求項3を引用するものについて、
「請求項3に記載の方法で得られるポリテトラフルオロエチレン水性乳化液を凝集することにより、500秒以上の応力緩和時間を保持する押出し成形品が得られる、ポリテトラフルオロエチレンファインパウダーを得ることを特徴とするポリテトラフルオロエチレンファインパウダーの製造方法。」
に訂正し、新たに請求項13とする。
(12)訂正事項12
訂正前の特許請求の範囲の請求項6に
「得られるポリテトラフルオロエチレンファインパウダーの標準比重が2.135~2.155である、請求項5に記載のポリテトラフルオロエチレンファインパウダーの製造方法。」
とあるうち、請求項3を引用する請求項5を引用するものについて、
「得られるポリテトラフルオロエチレンファインパウダーの標準比重が2.135~2.155である、請求項13に記載のポリテトラフルオロエチレンファインパウダーの製造方法。」
に訂正し、新たに請求項14とする。
(13)訂正事項13
訂正前の特許請求の範囲の請求項7に
「請求項5又は6に記載の方法で得られるポリテトラフルオロエチレンファインパウダーをペースト押し出し後延伸することを特徴とする延伸多孔体の製造方法。」
とあるうち、請求項3を引用する請求項5又は6を引用するものについて、
「請求項13又は14に記載の方法で得られるポリテトラフルオロエチレンファインパウダーをペースト押し出し後延伸することを特徴とする延伸多孔体の製造方法。」
に訂正し、新たに請求項15とする。
2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、一群の請求項及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、
(i)「炭素数4~8で主鎖に1~4個のエーテル性酸素原子を有する含フッ素カルボン酸及びその塩からなる群から選ばれる1種以上の含フッ素乳化剤」を、本件特許明細書の【0045】に列記されていた「CF3OCF(CF3)CF2OCF(CF3)COOH、CF3O(CF2)3OCHFCF2COOH、C2F5OCF2CF2OCF2COOH及びこれらのLi、Na、K、NH4の塩からなる群から選ばれる1種以上の含フッ素乳化剤」に限定し、
(ii)「含フッ素乳化剤を用いてテトラフルオロエチレンを乳化重合し」の乳化重合条件について、本件特許明細書の【0050】の「TFEの乳化重合条件は、重合温度は10~95℃が好ましく・・・。重合圧力は0.5~4.0MPaが好ましく・・・。」との記載に基づいて、「含フッ素乳化剤を用い、重合温度10~95℃、重合圧力0.5~4.0MPaでテトラフルオロエチレンを乳化重合し」へと訂正し、乳化重合の際の温度と圧力の条件を特定し、
(iii)「下記一般式(1)で表わされる(ポリフルオロアルキル)エチレン(a)、及び/又は、テトラフルオロエチレンとの共重合におけるモノマー反応性比rTFEが0.1~8であって、下記一般式(2)、(3)、(4)のいずれかで表わされる化合物、及び、パーフルオロ(2-メチレン-4-メチル-1,3-ジオキソラン)からなる群から選ばれる少なくとも1種からなるコモノマー(b)」について、
一般式(1)の化合物を請求項3の記載に基づいて「CH2=CH-(CF2)4F及びCH2=CH-(CF2)6Fからなる群より選ばれる一種以上」に限定し、
モノマー反応性比rTFEが0.1~8を満足する一般式(2)~(4)の化合物に関し、
一般式(2)の化合物を、本件特許明細書の【0027】に、モノマー反応性比rTFEが「5.7」であることが記載される、式(2)中のnが2である「CF2=CF-O-(CF2)2CF=CF2、」に限定し、
一般式(3)の化合物を、本件特許明細書の【0026】に、「モノマー反応性比rTFEが1.73」であることが記載される、式(3)中のRf2が炭素数が1のパーフルオロアルキル基である「CF2=CF-O-CF3」に限定し、
一般式(4)の化合物を、本件特許明細書の【0028】に、モノマー反応性比rTFEが「1.8」である式(4)の化合物として記載される、「パーフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)」に限定して、
コモノマーを限定するものである。
したがって、訂正事項1による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内でなされた訂正であるから、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定にも適合する。
また、訂正後の請求項1を引用する訂正後請求項4~7についての訂正についても同様である。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、
(i)訂正前の請求項2が訂正前の請求項1を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消して独立形式の請求項に改めるとともに、
(ii)訂正前の請求項2が引用していた請求項1に記載されていた「含フッ素乳化剤」、「乳化重合」の条件について、訂正事項1についてしたのと同様の限定を付す訂正をし、
(iii)訂正前の請求項2が引用していた請求項1に記載されていた「コモノマー」を限定するものであり、より具体的には、訂正事項1で限定したコモノマー化合物から、「CF2=CF-O-CF3」と、「パーフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)」を除外してさらに限定する訂正である。
(i)は、請求項間の引用関係の解消を目的とするものであり、(ii)及び(iii)は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。そして、(ii)及び(iii)についての訂正の適否についての判断は、(1)で訂正事項1に関して、「含フッ素乳化剤」、「乳化重合」及び「コモノマー」の限定について説示したと同様である。
したがって、訂正事項2による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮、及び、同項ただし書き第4号に規定する請求項間の引用関係の解消を目的とするものであり、また、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内でなされた訂正であるから、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定にも適合する。
また、訂正後の請求項2を引用する訂正後の請求項8~11についての訂正についても同様である。
(3)訂正事項3について
訂正事項3は、
(i)訂正前の請求項3の記載が訂正前の請求項1又は2の記載を引用する記載であったものを、請求項1のみを引用するものとし、
(ii)請求項1を引用するものについて、請求項間の引用関係を解消して独立形式の請求項に改めるとともに、
(iii)訂正前の請求項3が引用していた請求項1に記載されていた「含フッ素乳化剤」、「乳化重合」の条件について、訂正事項1についてしたのと同様の限定を付す訂正をし、
(iv)訂正前の請求項3に記載されていたコモノマーを、「CH2=CH-(CF2)4F及びCH2=CH-(CF2)6Fからなる群より選ばれる一種以上からなる」ものに限定するものであるが、これは、訂正事項1で限定したコモノマー化合物をさらに限定したものに相当する。
(ii)は、請求項間の引用関係の解消を目的とするものであり、(i)、(iii)及び(iv)は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。そして、(iii)及び(iv)についての訂正の適否についての判断は、(1)で訂正事項1に関して、「含フッ素乳化剤」、「乳化重合」及び「コモノマー」の限定について説示したものと同様である。
したがって、訂正事項3による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮、及び、同項ただし書き第4号に規定する請求項間の引用関係の解消を目的とするものであり、また、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内でなされた訂正であるから、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定にも適合する。
また、訂正後の請求項3を引用する訂正後の請求項12~15についての訂正についても同様である。
(4)訂正事項4、6及び10について
訂正事項4、6及び10は、訂正事項2及び3により、請求項2及び3を独立形式の請求項に訂正したことに伴い、「請求項1~3のいずれか」を引用していた請求項4の記載を、「請求項1」を引用するもの(訂正事項4)、「請求項2」を引用するものとした新たな請求項8とするもの(訂正事項6)、「請求項3」を引用するものとした新たな請求項12とするもの(訂正事項10)に書き分ける訂正であって、これらの訂正事項による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
また、これらの訂正事項による訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内でなされた訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定にも適合する。
(5)訂正事項5、7及び11について
訂正事項5、7及び11は、訂正事項2及び3により、請求項2及び3を独立形式の請求項に訂正したことに伴い、「請求項1~3のいずれか」を引用していた請求項5の記載を、「請求項1」を引用するもの(訂正事項5)、「請求項2」を引用するものとした新たな請求項9とするもの(訂正事項7)、「請求項3」を引用するものとした新たな請求項13とするもの(訂正事項11)に書き分ける訂正であって、これらの訂正事項による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
また、これらの訂正事項による訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内でなされた訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定にも適合する。
(6)訂正事項8、9、12及び13について
訂正事項8及び12は、訂正前の請求項5を引用する訂正前の請求項6についての訂正であり、請求項2及び3を独立形式の請求項に訂正したことに伴い訂正前の請求項5を訂正後の請求項5、9及び13に書き分けた(上記(5)参照。)のに併せて、訂正前の請求項6を、訂正後の請求項6(形式的には訂正されていないが、訂正事項5により実質的に訂正されている。)、新たな請求項10及び14に書き分けたものである。
また、訂正事項9及び13は、訂正前の請求項5又は6を引用する訂正前の請求項7についての訂正であり、同様に、訂正前の請求項7を、訂正後の請求項7(形式的には訂正されていないが、訂正事項5により実質的に訂正されている。)、新たな請求項11及び15に書き分けたものである。
そして、これらの訂正事項による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
また、これらの訂正事項による訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内でなされた訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定にも適合する。
(7)一群の請求項について
訂正前の請求項1~7は、請求項2~7が、訂正の請求の対象である請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する関係にあるから、訂正前において一群の請求項に該当するものである。
したがって、訂正の請求は、特許法第120条の5第4項に規定する「一群の請求項」ごとにされたものである。
(8)小括
以上のとおり、本件訂正請求による訂正事項1~13は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項1~15について訂正を認める。
訂正後の請求項2~15に係る訂正事項2~13は、引用関係の解消を目的とする訂正を含むところ、その訂正は認められるものである。そして、特許権者から、訂正後の請求項2、3、8~15についての訂正が認められるときには、請求項1、4~7とは別の訂正単位として扱われることの求め(つまり、訂正後の請求項1、4~7、訂正後の請求項2、8~11、及び、訂正後の請求項3、12~15は、各々別の一群からなる訂正単位として扱われることの求め)があったことから、訂正後の〔1、4~7〕、〔2、8~11〕、〔3、12~15〕について請求項ごとに訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり、本件訂正請求は適法であるので、本件特許の請求項1~15に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明15」という。)は、平成29年11月10日付け訂正請求書に添付された特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
CF3OCF(CF3)CF2OCF(CF3)COOH、CF3O(CF2)3OCHFCF2COOH、C2F5OCF2CF2OCF2COOH及びこれらのLi、Na、K、NH4の塩からなる群から選ばれる1種以上の含フッ素乳化剤を用い、重合温度10~95℃、重合圧力0.5~4.0MPaでテトラフルオロエチレンを乳化重合し、平均一次粒子径が0.1~0.3μmであるポリテトラフルオロエチレン微粒子を含有する水性乳化液を得るポリテトラフルオロエチレン水性乳化液の製造方法であって、
テトラフルオロエチレンの乳化重合の開始時に、CH2=CH-(CF2)4F及びCH2=CH-(CF2)6Fからなる群より選ばれる一種以上からなる(ポリフルオロアルキル)エチレン(a)、及び/又は、CF2=CF-O-(CF2)2CF=CF2、CF2=CF-O-CF3、パーフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)、及び、パーフルオロ(2-メチレン-4-メチル-1,3-ジオキソラン)からなる群から選ばれる少なくとも1種からなるコモノマー(b)を、
最終的なポリテトラフルオロエチレンの生成量に対して0.001~0.01質量%の範囲にあって、かつ、得られるポリテトラフルオロエチレン水性乳化液の下記測定方法記載の方法により測定した安定性時間が、前記(ポリフルオロアルキル)エチレン(a)、及び/又は、前記コモノマ-(b)を入れないこと以外は全く同じ条件で乳化重合して得られるポリテトラフルオロエチレン水性乳化液の値に比して20%以上向上し、かつ600秒以内となるように定めた量で、乳化重合系に含有させることを特徴とするポリテトラフルオロエチレン水性乳化液の製造方法。
測定方法・・・SUS304の材質で、内径12cmの円筒状容器に、厚み2.9mm、幅2.5cm、長さ15cmのバッフルを2枚、底部から2.5cm上げて対称的に熔接して用いる。PTFE水性乳化液の固形分濃度を20%に調合して総量800gを仕込み、温度を23±1℃に調整する。そして、内径8.0mmのシャフトに取り付けた厚み1.2mm、幅1.3cm、長さ9.7cm、回転方向へ30°傾けた水平パドルを、底部から5mm上げて設置し、500rpmの条件で、ポリテトラフルオロエチレン水性乳化液が破壊されて、疎水化されたポリテトラフルオロエチレンが生じるまでの時間を安定性時間とする。
【請求項2】
CF3OCF(CF3)CF2OCF(CF3)COOH、CF3O(CF2)3OCHFCF2COOH、C2F5OCF2CF2OCF2COOH及びこれらのLi、Na、K、NH4の塩からなる群から選ばれる1種以上の含フッ素乳化剤を用い、重合温度10~95℃、重合圧力0.5~4.0MPaでテトラフルオロエチレンを乳化重合し、平均一次粒子径が0.2~0.3μmであるポリテトラフルオロエチレン微粒子を含有する水性乳化液を得るポリテトラフルオロエチレン水性乳化液の製造方法であって、
テトラフルオロエチレンの乳化重合の開始時に、CH2=CH-(CF2)4F及びCH2=CH-(CF2)6Fからなる群より選ばれる一種以上からなる(ポリフルオロアルキル)エチレン(a)、及び/又は、CF2=CF-O-(CF2)2CF=CF2、及び、パーフルオロ(2-メチレン-4-メチル-1,3-ジオキソラン)からなる群から選ばれる少なくとも1種からなるコモノマー(b)を、
最終的なポリテトラフルオロエチレンの生成量に対して0.001~0.01質量%の範囲にあって、かつ、得られるポリテトラフルオロエチレン水性乳化液の下記測定方法記載の方法により測定した安定性時間が、前記(ポリフルオロアルキル)エチレン(a)、及び/又は、前記コモノマー(b)を入れないこと以外は全く同じ条件で乳化重合して得られるポリテトラフルオロエチレン水性乳化液の値に比して20%以上向上し、かつ600秒以内となるように定めた量で、乳化重合系に含有させることを特徴とするポリテトラフルオロエチレン水性乳化液の製造方法。
測定方法・・・SUS304の材質で、内径12cmの円筒状容器に、厚み2.9mm、幅2.5cm、長さ15cmのバッフルを2枚、底部から2.5cm上げて対称的に熔接して用いる。PTFE水性乳化液の固形分濃度を20%に調合して総量800gを仕込み、温度を23±1℃に調整する。そして、内径8.0mmのシャフトに取り付けた厚み1.2mm、幅1.3cm、長さ9.7cm、回転方向へ30°傾けた水平パドルを、底部から5mm上げて設置し、500rpmの条件で、ポリテトラフルオロエチレン水性乳化液が破壊されて、疎水化されたポリテトラフルオロエチレンが生じるまでの時間を安定性時間とする。
【請求項3】
CF3OCF(CF3)CF2OCF(CF3)COOH、CF3O(CF2)3OCHFCF2COOH、C2F5OCF2CF2OCF2COOH及びこれらのLi、Na、K、NH4の塩からなる群から選ばれる1種以上の含フッ素乳化剤を用い、重合温度10~95℃、重合圧力0.5~4.0MPaでテトラフルオロエチレンを乳化重合し、平均一次粒子径が0.l~0.3μmであるポリテトラフルオロエチレン微粒子を含有する水性乳化液を得るポリテトラフルオロエチレン水性乳化液の製造方法であって、
テトラフルオロエチレンの乳化重合の開始時に、CH2=CH-(CF2)4F及びCH2=CH-(CF2)6Fからなる群より選ばれる一種以上からなるコモノマーを、
最終的がポリテトラフルオロエチレンの生成量に対して0.001~0.01質量%の範囲にあって、かつ、得られるポリテトラフルオロエチレン水性乳化液の下記測定方法記載の方法により測定した安定性時間が、前記コモノマーを入れないこと以外は全く同じ条件で乳化重合して得られるポリテトラフルオロエチレン水性乳化液の値に比して20%以上向上し、かつ600秒以内となるように定めた量で、乳化重合系に含有させることを特徴とするポリテトラフルオロエチレン水性乳化液の製造方法。
測定方法・・・SUS304の材質で、内径12cmの円筒状容器に、厚み2.9mm、幅2.5cm、長さ15cmのバッフルを2枚、底部から2.5cm上げて対称的に熔接して用いる。PTFE水性乳化液の固形分濃度を20%に調合して総量800gを仕込み、温度を23±1℃に調整する。そして、内径8.0mmのシャフトに取り付けた厚み1.2mm、幅1.3cm、長さ9.7cm、回転方向へ30°傾けた水平パドルを、底部から5mm上げて設置し、500rpmの条件で、ポリテトラフルオロエチレン水性乳化液が破壊されて、疎水化されたポリテトラフルオロエチレンが生じるまでの時間を安定性時間とする。
【請求項4】
請求項1に記載の方法で得られるポリテトラフルオロエチレン水性乳化液に、ノニオン性界面活性剤を添加して安定化した後、ポリテトラフルオロエチレン微粒子の含有量が50~70質量%となるように濃縮することを特徴とするポリテトラフルオロエチレン水性分散液の製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法で得られるポリテトラフルオロエチレン水性乳化液を凝集することにより、500秒以上の応力緩和時間を保持する押出し成形品が得られる、ポリテトラフルオロエチレンファインパウダーを得ることを特徴とするポリテトラフルオロエチレンファインパウダーの製造方法。
【請求項6】
得られるポリテトラフルオロエチレンファインパウダーの標準比重が2.135~2.155である、請求項5に記載のポリテトラフルオロエチレンファインパウダーの製造方法。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の方法で得られるポリテトラフルオロエチレンファインパウダーをペースト押し出し後延伸することを特徴とする延伸多孔体の製造方法。
【請求項8】
請求項2に記載の方法で得られるポリテトラフルオロエチレン水性乳化液に、ノニオン性界面活性剤を添加して安定化した後、ポリテトラフルオロエチレン微粒子の含有量が50~70質量%となるように濃縮することを特徴とするポリテトラフルオロエチレン水性分散液の製造方法。
【請求項9】
請求項2に記載の方法で得られるポリテトラフルオロエチレン水性乳化液を凝集することにより、500秒以上の応力緩和時間を保持する押出し成形品が得られる、ポリテトラフルオロエチレンファインパウダーを得ることを特徴とするポリテトラフルオロエチレンファインパウダーの製造方法。
【請求項10】
得られるポリテトラフルオロエチレンファインパウダーの標準比重が2.135~2.155である、請求項9に記載のポリテトラフルオロエチレンファインパウダーの製造方法。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の方法で得られるポリテトラフルオロエチレンファインパウダーをペースト押し出し後延伸することを特徴とする延伸多孔体の製造方法。
【請求項12】
請求項3に記載の方法で得られるポリテトラフルオロエチレン水性乳化液に、ノニオン性界面活性剤を添加して安定化した後、ポリテトラフルオロエチレン微粒子の含有量が50~70質量%となるように濃縮することを特徴とするポリテトラフルオロエチレン水性分散液の製造方法。
【請求項13】
請求項3に記載の方法で得られるポリテトラフルオロエチレン水性乳化液を凝集することにより、500秒以上の応力緩和時間を保持する押出し成形品が得られる、ポリテトラフルオロエチレンファインパウダーを得ることを特徴とするポリテトラフルオロエチレンファインパウダーの製造方法。
【請求項14】
得られるポリテトラフルオロエチレンファインパウダーの標準比重が2.135~2.155である、請求項13に記載のポリテトラフルオロエチレンファインパウダーの製造方法。
【請求項15】
請求項13又は14に記載の方法で得られるポリテトラフルオロエチレンファインパウダーをペースト押し出し後延伸することを特徴とする延伸多孔体の製造方法。」
なお、以下、訂正後のものである、本件発明1及び4~7からなる一群の発明を「第1群の発明」、本件発明2及び8~11からなる一群の発明を「第2群の発明」、本件発明3及び12~15からなる一群の発明を「第3群の発明」という。
第4 合議体が通知した取消理由(平成29年4月10日付け取消理由通知書によるもの、及び、同年9月8日付け取消理由通知書(決定の予告)によるもの)について
1.平成29年9月8日付け取消理由通知書(決定の予告)で通知した取消理由
当審合議体が、申立人が主張した取消理由1、2、4及び5に基づいて、訂正前の請求項1~7に係る特許に対して特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の概要は次のとおりである
(1)取消理由A(甲第1号証を主たる引用文献とする進歩性)
訂正前の請求項1~3、5~7に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された刊行物である甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載の技術的事項、及び、甲第10号証に記載の技術的事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるし、訂正前の請求項4に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された刊行物である甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載の技術的事項、甲第10号証に記載の技術的事項、及び、周知技術(甲第4号証及び甲第5号証)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。(以下、「取消理由A」という。)
(2)取消理由B(甲第2号証を主たる引用文献とする進歩性)
訂正前の請求項1~3、5~7に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された刊行物である甲第2号証に記載された発明、甲第10号証に記載の技術的事項、及び、周知技術(甲第1号証、甲第5~9号証)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるし、訂正前の請求項4に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された刊行物である甲第2号証に記載された発明、甲第10号証に記載の技術的事項、周知技術(甲第1号証、甲第5~9号証に示される周知技術及び甲第4号証及び甲第5号証に示される周知技術)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。(以下、「取消理由B」という。)
(3)取消理由C1(明確性)
訂正前の請求項1~7に係る本件特許は、下記(ア)の点で特許請求の範囲の記載に不備があるために特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。(以下、「取消理由C1」という。)
(4)取消理由D1(実施可能要件)
訂正前の請求項1~7に係る本件特許は、発明の詳細な説明の記載が、下記(ア)の点で、本件特許の訂正前の請求項1~7に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえないために、特許法36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。(以下、「取消理由D1」という。)
(ア)本件特許明細書及び本件特許明細書で引用された各種文献の記載を参酌しても、本願請求項1~7に係る発明のコモノマーの「モノマー反応性比rTFE」を算出する方法や条件を理解できない。
2.平成29年4月10日付け取消理由通知書で通知した取消理由
当審合議体は、平成29年4月10日付け取消理由において、上記1.で指摘した取消理由に加えて、以下の取消理由も通知した。
(5)取消理由C2(明確性)
特許時の請求項1~7に係る本件特許は、下記(イ)の点で特許請求の範囲の記載に不備があるために特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。(以下、「取消理由C2」という。また、「取消理由C1」と併せて、「取消理由C」ともいう。)
(6)取消理由D2(実施可能要件)
特許時の請求項1~7に係る本件特許は、発明の詳細な説明の記載が、下記(イ)の点で、本件特許の訂正前の請求項1~7に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえないために、特許法36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。(以下、「取消理由D2」という。また、「取消理由D1」と併せて、「取消理由D」ともいう。)
(イ)本件特許明細書の記載からは、本願請求項1~7に係る発明の「安定性時間」の測定方法が理解できない。
第5 取消理由A~Dについての当審合議体の判断の概要
当審合議体は、第1群の発明(本件発明1及び4~7)に対する取消理由A及びBには理由があり、第1群の本件発明に係る本件特許は、当審合議体が通知した取消理由A及びBによって取り消されるべきものであると判断する。
また、第2群の発明(本件発明2及び8~11)並びに第3群の発明(本件発明3及び12~15)に対する取消理由A及びBには理由がなく、第2群の発明及び第3群の発明に係る本件特許は、当審合議体が通知した取消理由A及びBによっては取り消すことはできないと判断する。
さらに、当審合議体は、第1~3群の発明(本件発明1~15)に対する取消理由C及びDには理由がなく、第1~3群の発明に係る本件特許は、当審合議体が通知した取消理由C及びDによっては取り消すことはできないと判断する。
以下、第6で各甲号証等の記載、並びに、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明を記載した後に、第7で、当審合議体が通知した取消理由のうち、理由があると判断されるものについて、また、第8で、理由がないと判断されるものについての判断を詳述する。
第6 甲各号証等の記載、並びに、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明
甲各号証等が英語文献の場合の訳文は、申立人により提出された訳文を採用し、訳文がないものについては、合議体が訳出した。また、下線は当審において付与した。
1.甲1の記載事項
「[1] テトラフルオロエチレンを単独で、または共重合可能な他のモノマーと共に、水性媒体中で乳化重合を行なう際に、
一般式(1): XCF2CF2(O)mCF2CF2OCF2COOA
(式中、Xは水素原子またはフッ素原子、Aは水素原子、アルカリ金属またはNH4であり、mは0~1の整数である。)で表される含フッ素乳化剤を最終ポリテトラフルオロエチレン収量に対して1500~20000ppm使用して得られることを特徴とするポリテトラフルオロエチレン水性乳化液。
[2] ポリテトラフルオロエチレン水性乳化液中のポリテトラフルオロエチレンの平均一次粒子径が0.18~0.50μmである請求項1に記載のポリテトラフルオロエチレン水性乳化液。
[3] 一般式(1)の含フッ素乳化剤の量が、最終ポリテトラフルオロエチレン収量に対して2000~20000ppmである請求項1または2に記載のポリテトラフルオロエチレン水性乳化液。
[4] 前記一般式(1)で表される含フッ素乳化剤が、CF3CF2OCF2CF2OCF2COONH4である請求項1~3のいずれかに記載のポリテトラフルオロエチレン水性乳化液。
[5] 請求項1~4のいずれかに記載のポリテトラフルオロエチレン水性乳化液を凝集させて得られるポリテトラフルオロエチレンファインパウダー。
[6] 標準比重が2.14~2.20である請求項5に記載のポリテトラフルオロエチレンファインパウダー。
[7] 請求項5又は6に記載のポリテトラフルオロエチレンファインパウダーをペースト押出し成形した後に延伸して得られるポリテトラフルオロエチレン多孔体。」(特許請求の範囲)
「[0003] 含フッ素モノマーの乳化重合には、含フッ素乳化剤として、パーフルオロオクタン酸アンモニウム(構造式CF3(CF2)6COONH4、以下、APFOという。)が一般的に用いられている。近年、APFOは自然界には存在せず分解され難い物質であることから、環境面からその排出を抑えることが提案されている。また、APFOは、生物蓄積性が高いことが指摘されている。」
「[0012] 本発明のPTFE水性乳化液は、パーフルオロオクタン酸或いはその塩に伴う環境問題を生じない。また、本発明の水性乳化液は、高分子量のPTFEを含有することができ、その平均一次粒子径を0.18~0.50μmと比較的大きくすることができる。さらに、本発明のPTFEファインパウダーは、ペースト押出し成形性などの種々の特性に優れる。本発明のPTFE多孔体は、種々の特性に優れる。
・・・
[0013] 本発明において、乳化重合は、TFE単独で、またはTFEと共重合可能な他のモノマー(以下、コモノマーという。)と共に行なう。
コモノマーとしては、HFP、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PFAVE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、(パーフルオロアルキル)エチレン、フッ化ビニリデン(VdF)、パーフルオロ(アルケニルビニルエーテル)、VDF、パーフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)、パーフルオロ(4-アルキル-1,3-ジオキソール)等が挙げられる。コモノマーは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
本発明において、乳化重合により得られるPTFEとは、TFE単独重合体と変性PTFEの両者を含む。TFE単独重合体及び変性PTFEは、ともに非溶融成形性の重合体である。
変性PTFEとは、溶融成形性を与えない程度に、TFEにコモノマーを共重合した重合体である。変性PTFEにおけるコモノマーに基づく構成単位の含有量は、全構成単位に対して、好ましくは0.5質量%以下であり、より好ましくは0.4質量%以下である。
[0014] 変性PTFEを製造する際に重合初期に投入する、コモノマーの量は、その種類により影響の程度は異なるが、コモノマーの投入量を増す程、水性乳化液の安定性は増し、その平均一次粒子径は小粒化する。本発明では、平均一次粒子径が0.18μm~0.50μmとなるように初期に投入するコモノマーの量を決める。
初期に投入するコモノマーの量は、最終PTFE収量に対し、好ましくは0~0.5質量%、より好ましくは0~0.4質量%である。
[0015] 一般式(1)の含フッ素乳化剤は、PTFEの重合安定化作用が良好であり、好適に使用できる。一般式(1)において、Xはフッ素原子であることが重合の安定性の点で好ましい。また、mの値は1であることが重合の安定性およびPTFE水性乳化液の機械的安定性の点で好ましい。
Aの具体例として、H、Li、Na、K、NH4等が挙げられるが、特に、NH4の場合には水中への溶解性が良く、金属イオン成分がPTFEファインパウダー中に不純物として残留することがなく、好ましい。
[0016] 一般式(1)の含フッ素乳化剤のうち特に好ましい例は、・・・CF3CF2OCF2CF2OCF2COONH4(以下、 EEAという。)等であり、EEAがより好ましい。」
「[0018] 本発明における乳化重合では、TFEまたはTFEとコモノマーとの重合反応時に、水性媒体、一般式(1)の含フッ素乳化剤、安定化助剤及び重合開始剤等を用いる。また、その重合条件としては、重合温度は10~95℃が好ましく、重合圧力は0.5~4.0MPaが好ましく、重合時間は90~520分が好ましい。」
「[0020] ・・・本発明によれば、乳化重合により得られるPTFE水性乳化液中のPTFEの一次粒子の平均一次粒子径を、0.18~0.50μmの範囲にでき、特に0.19~0.40μmの範囲にできる。本発明で、平均一次粒子径とは、レーザー散乱法粒子径分布分析計により得られたメジアン径である。・・・
[0021] PTFE水性乳化液からのPTFEファインパウダーを得る方法としては、公知の方法が採用できる。例えば、PTFE水性乳化液の濃度を8~20質量%になるように水で希釈した後、激しく撹拌してPTFEの一次粒子を凝集させる方法が挙げられる。」
「[0023] ・・・本発明のPTFEは、その応力緩和時間が少なくとも500秒であるものが好ましく、少なくとも530秒であるものがより好ましく、少なくとも550秒であるものが特に好ましい。」
「[0034] ・・・EEAは、LogPOWの値がパーフルオロオクタン酸アンモニウム(APFO)に比較して小さいことから、生物蓄積性が低いことがわかる。一方、参考例1で合成したCF3CF2OCF(CF3)CF2CF(CF3)COONH4は、EEAと構造が類似するが、そのLogPOWの値が、生物蓄積性が懸念されているAPFOよりも大きく、生物への蓄積性が高いことがわかった。」
「[0042] (実施例3)
邪魔板、撹拌機を備えた、100Lのステンレス鋼製オートクレーブに、EEAの70g、パラフィンワックスの872g、脱イオン水の59リットルを仕込んだ。オートクレーブを窒素置換した後減圧にして、TFEで加圧し、撹拌しながら70℃に昇温した。次いでTFEで1.765MPaまで昇圧し、ジコハク酸パーオキシド(濃度80質量%、残りは水分)の5.0gを約70℃の温水1リットルに溶解して注入した。3分ほどで内圧が1.746MPaまで降下した。
[0043] オートクレーブ内圧を1.765MPaに保つようにTFEを添加しながら重合を進行させた。EEAを温水に溶解して重合途中でEEAとして合計125g添加した。また亜硫酸アンモニウムを水に溶解して重合途中で亜硫酸アンモニウムとして合計4g添加した。温度は途中64℃まで下げ、重合後半は80℃まで昇温した。TFEの添加量が23kgになったところで反応を終了させ、オートクレーブ中のTFEを大気放出した。重合時間は155分であった。得られたPTFEの水性乳化液を冷却し、上澄みのパラフィンワックスを除去した。水性乳化液の固形分濃度は約26質量%であった。使用したEEAは、最終PTFE収量に対して8555ppmであった。また平均一次粒子径は0.275μmであった。反応器中の凝固物は痕跡程度であった。
[0044] この水性乳化液を純水で濃度10質量%に希釈し20℃に調整して撹拌し凝集させて、PTFEファインパウダーを取得した。次いでこのPTFEファインパウダーを220℃で乾燥した。平均粒子径は580μm、見掛け密度は0.49g/ml、標準比重は2.151であった。また、測定方法(E)に従い、ペースト押出しビードを得た。押出し圧力は21.3MPaであった。この延伸ビードは断裂やボイドの発生が無い均一な多孔体であり、破断強度は29.4Nであった。応力緩和時間は、564秒であった。」
なお、ここで、[0013]に記載の「HFP」は、甲1には明示されていないが、「へキサフルオロプロピレン」を意味すると認める。
2.甲1に記載された発明
上記1.の記載、特に、特許請求の範囲の請求項1,4、[0013]、[0014]、[0018]、[0020]、[0042]及び[0043]等の記載によれば、甲1には、以下の発明が記載されていると認められる。
「重合初期に投入される共重合可能な他のモノマーであって、へキサフルオロプロピレン(HFP)、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PFAVE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、(パーフルオロアルキル)エチレン、フッ化ビニリデン(VdF)、パーフルオロ(アルケニルビニルエーテル)、VDF、パーフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)、パーフルオロ(4-アルキル-1,3-ジオキソール)の1種単独か2種以上からなるコモノマーを、最終ポリテトラフルオロエチレン収量に対し、得られるポリテトラフルオロエチレン微粒子の平均一次粒子径が0.18~0.50μmとなるように、0~0.4質量%で投入して、
水性媒体中で重合温度10~95℃、重合圧力0.5~4.0MPaでテトラフルオロエチレンの乳化重合を行なう際に、
CF3CF2OCF2CF2OCF2COONH4で表される含フッ素乳化剤を最終ポリテトラフルオロエチレン収量に対して1500~20000ppm使用する、
ポリテトラフルオロエチレン水性乳化液中のポリテトラフルオロエチレンの平均一次粒子径が0.18~0.50μmであるポリテトラフルオロエチレン水性乳化液の製造方法。」(以下「甲1-1発明」という。)
また、甲1の特許請求の範囲の請求項5~6、[0021]、[0023]及び[0044]等の記載も合わせ見れば、甲1には、以下の発明も記載されていると認められる。
「甲1-1発明により得られるポリテトラフルオロエチレン水性乳化液を凝集させて、ペースト押出し成形品の応力緩和時間が少なくとも500秒であり、標準比重が2.14~2.20であるポリテトラフルオロエチレンファインパウダーを得るポリテトラフルオロエチレンファインパウダーの製造方法。」
すなわち、
「重合初期に投入される共重合可能な他のモノマーであって、へキサフルオロプロピレン(HFP)、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PFAVE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、(パーフルオロアルキル)エチレン、フッ化ビニリデン(VdF)、パーフルオロ(アルケニルビニルエーテル)、VDF、パーフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)、パーフルオロ(4-アルキル-1,3-ジオキソール)の1種単独か2種以上からなるコモノマーを、最終ポリテトラフルオロエチレン収量に対し、得られるポリテトラフルオロエチレン微粒子の平均一次粒子径が0.18~0.50μmとなるように、0~0.4質量%で投入して、
水性媒体中で重合温度10~95℃、重合圧力0.5~4.0MPaでテトラフルオロエチレンの乳化重合を行なう際に、
CF3CF2OCF2CF2OCF2COONH4で表される含フッ素乳化剤を最終ポリテトラフルオロエチレン収量に対して1500~20000ppm使用する、
ポリテトラフルオロエチレン水性乳化液中のポリテトラフルオロエチレンの平均一次粒子径が0.18~0.50μmであるポリテトラフルオロエチレン水性乳化液の製造方法により得られるポリテトラフルオロエチレン水性乳化液を、
凝集させて、ペースト押出し成形品の応力緩和時間が少なくとも500秒であり、標準比重が2.14~2.20であるポリテトラフルオロエチレンファインパウダーを得る、
ポリテトラフルオロエチレンファインパウダーの製造方法。」(以下「甲1-2発明」という。)
さらに、甲1の特許請求の範囲の請求項7及び[0044]の記載も合わせ見れば、甲1には、以下の発明も記載されていると認められる。
「甲1-2発明により得られるポリテトラフルオロエチレンファインパウダーをペースト押出し成形した後に延伸するポリテトラフルオロエチレン多孔体の製造方法。」、すなわち、
「重合初期に投入される共重合可能な他のモノマーであって、へキサフルオロプロピレン(HFP)、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PFAVE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、(パーフルオロアルキル)エチレン、フッ化ビニリデン(VdF)、パーフルオロ(アルケニルビニルエーテル)、VDF、パーフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)、パーフルオロ(4-アルキル-1,3-ジオキソール)の1種単独か2種以上からなるコモノマーを、最終ポリテトラフルオロエチレン収量に対し、得られるポリテトラフルオロエチレン微粒子の平均一次粒子径が0.18~0.50μmとなるように、0~0.4質量%で投入して、
水性媒体中で重合温度10~95℃、重合圧力0.5~4.0MPaでテトラフルオロエチレンの乳化重合を行なう際に、
CF3CF2OCF2CF2OCF2COONH4で表される含フッ素乳化剤を最終ポリテトラフルオロエチレン収量に対して1500~20000ppm使用する、
ポリテトラフルオロエチレン水性乳化液中のポリテトラフルオロエチレンの平均一次粒子径が0.18~0.50μmであるポリテトラフルオロエチレン水性乳化液の製造方法により得られるポリテトラフルオロエチレン水性乳化液を、
凝集させて、
ペースト押出し成形品の応力緩和時間が少なくとも500秒であり、標準比重が2.14~2.20であるポリテトラフルオロエチレンファインパウダーを得るポリテトラフルオロエチレンファインパウダーを製造し、
得られるポリテトラフルオロエチレンファインパウダーをペースト押出し成形した後に延伸する、
ポリテトラフルオロエチレン多孔体の製造方法。」(以下「甲1-3発明」という。)
3.甲2の記載事項
「[0013] 本発明の目的は、・・・引張り破断強度に優れた延伸体を与える非溶融加工性ポリテトラフルオロエチレンファインパウダー及び非溶融加工性ポリテトラフルオロエチレンを提供することにある。」
「[0018] 本発明の非溶融加工性ポリテトラフルオロエチレンファインパウダーは、非溶融加工性PTFE〔非溶融加工性PTFE〕からなるファインパウダーである。本明細書において、上記「非溶融加工性PTFE」とは、テトラフルオロエチレン〔TFE〕とともにごく微量の共単量体(以下、「微量共単量体」ということがある。)を重合することにより得られた微量変性PTFEであって、溶融加工性でないものを意味する。上記「微量変性PTFE」における「微量変性」とは、TFEの単独重合体の性質を大きく損なわない程度にTFEとともにごく微量の共単量体を重合させることを意味する。本明細書において、上記「微量共単量体」とは、TFE以外のTFEと共重合可能な単量体であって、TFEに対して後述のごく微量を共重合させるものを意味する。
[0019] 上記非溶融加工性PTFEは、一般に、TFEを主な単量体とする重合体であることが共通する点で、「ポリテトラフルオロエチレン」と称されるものに含まれる概念である。本明細書において、単に「ポリテトラフルオロエチレン〔PTFE〕」というときは、TFEの単独重合体、及び/又は、TFEの単独重合体の性質を大きく損なわない程度にTFEとともにTFE以外の単量体を重合して得られた変性PTFEを意味するものである。上記「変性PTFE」における「変性」とは、TFEの単独重合体の性質を大きく損なわない程度にTFEとともにTFE以外の単量体を重合させることを意味する。上記「変性PTFE」における「変性」は、TFE以外の単量体の量が上記「微量変性」のようにTFEに対してごく微量であるものに限るものではない点で、上記「微量変性PTFE」における「微量変性」と概念上異なるものであり、同様に、上記「変性PTFE」は上記「微量変性PTFE」と概念上異なるものである。」
「[0043] 従来のPTFEの延伸体は、PTFEの融点以上の温度で焼成すると破断が起こるおそれがあったが、本発明の非溶融加工性PTFEファインパウダーは、測定用300℃延伸体Bについての応力緩和時間が400秒以上であることにより、非溶融加工性PTFEの融点以上の温度で焼成しても、延伸体を破断させることを抑制することができるものである。従って、本発明の非溶融加工性PTFEファインパウダーを用いると、得られる製品の歩留りを向上させることができる。上記測定用300℃延伸体Bについての応力緩和時間についてのより好ましい下限は、410秒である。測定用300℃延伸体Bについての応力緩和時間は、上記範囲内であれば650秒以下、更に550秒以下であっても、焼成時における延伸体の破断を抑制することができる。」
「[0055] 本発明の非溶融加工性PTFEファインパウダーは、標準比重が2.165以下であるので、延伸加工に有利である。
上記標準比重の好ましい上限は、2.164である。
・・・
[0057] 本発明の非溶融加工性PTFEファインパウダーを製造する方法は、水性媒体中において、テトラフルオロエチレン〔TFE〕と、上記TFEと共重合可能な微量共単量体との重合反応を通常55~120℃で一定の重合時間行うことにより非溶融加工性PTFEを得る重合工程を有することからなるものである。上記重合工程により得られる非溶融加工性PTFEは、通常、後述の水性媒体中においてコロイド状粒子である。
[0058] 上記微量共単量体は、ごく微量、即ち、上記TFEの全重合量の0.0001~0.04モル%添加するものである。上記微量共単量体は、上記範囲内であると、後述の凝集及び乾燥を行って得られる非溶融加工性PTFEファインパウダーのペースト押出時の押出加工性を下げることなく、延伸体としたときの引張り破断強度を優れたものにすることができるものである。好ましい下限は、0.001モル%であり、好ましい上限は、0.03モル%である。
本明細書において、上記「全重合量」とは、上記重合工程において重合すべきTFEの全量を意味する。上記全重合量は、上記重合工程により非溶融加工性PTFEのポリマー鎖に取り込まれた量の全てであり、必ずしも添加量と同じであるとは限らない。
[0059] 上記重合工程から得られる非溶融加工性PTFEは、微量共単量体単位が0.0001~0.022モル%であるものである。好ましい下限は、0.001モル%であり、好ましい上限は0.020モル%である。上記微量共単量体を用いない場合、得られるTFE単独重合体から作製した測定用300℃延伸体Aは、引張り破断強度が32.0N未満となる。一方、上記微量共単量体単位が、上記範囲より大き過ぎると、却って上述の引張り破断強度が低下するので、本発明の非溶融加工性PTFEファインパウダーを製造するにあたっては、非溶融加工性PTFEの重合時における微量共単量体の添加量が重要である。」
「[0061] 上記微量共単量体は、上記重合反応の開始前に添加するものである。」
「[0066] 上記重合反応は、通常、55~120℃で行うものである。上記重合反応は、ラジカル捕捉剤を添加する前だけではなく、ラジカル捕捉剤を添加した後も上記温度範囲で行うものである。上記温度範囲の好ましい下限は、60℃であり、好ましい上限は、90℃である。」
「[0071] 本発明の非溶融加工性PTFEファインパウダーを製造する方法に用いる上記微量共単量体は、CF2=CFC1、下記一般式(I)
CF2=CFX1 (I)
(式中、X1は、-Rf1又は-ORf1を表す。Rf1は、炭素数1~10の直鎖状又は分岐状のパーフルオロアルキル基を表し、末端に水素原子又は塩素原子を有していてもよい。)で表されるパーフルオロビニル基含有化合物、下記一般式(II)
CH2=CX2X3 (II)
(式中、X2は、水素原子又はフッ素原子を表す。X3は、フッ素原子、-Rf2又は-ORf2を表す。Rf2は、炭素数1~10の直鎖状又は分岐状のパーフルオロアルキル基を表し、末端にフッ素原子又は塩素原子を有していてもよい。)で表される水素含有ビニル化合物、及び/又は、下記一般式(III)
[0072]
[化1]
[0073] (式中、X4及びX5は、同一又は異なって、フッ素原子若しくは塩素原子を表す。Yは、-CF=CF-、又は、-CZ1Z2-を表す。Z1及びZ2は、同一又は異なって、フッ素原子により置換されていてもよい炭素数1~6のアルキル基を表す。)で表される環状エーテル化合物である。上記微量共単量体は、上述の4種からなる群の少なくとも1種であればよく、これらのなかから1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
[0074] 上記パーフルオロビニル基含有化合物は、上記一般式(I)から明らかであるように、パーフルオロビニル基〔CF2=CF-〕を有するものである。上記パーフルオロビニル基含有化合物としては特に限定されず、例えば、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ1-ヘキセン、パーフルオロ1-ノネン、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)等が挙げられる。上記パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)としては特に限定されず、例えば、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(n-プロピルビニルエーテル)等が挙げられる。上記パーフルオロビニル基含有化合物は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。 ・・・
[0075] 上記水素含有ビニル化合物は、上記一般式(II)から明らかであるように、水素含有ビニル基〔CH2=CX2-〕を有するものである。上記水素含有ビニル化合物としては特に限定されず、例えば、上記一般式(II)における上記X3としての-Rf2がパーフルオロメチル基である(パーフルオロメチル)エチレン、-Rf2がパーフルオロブチル基である(パーフルオロブチル)エチレン等が挙げられる。上記水素含有ビニル化合物は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
[0076] 上記環状エーテル化合物は、上記一般式(III)の-CZ1Z2-におけるZ1及びZ2が、それぞれ独立して、上記-CZ1Z2-における炭素原子に結合しているものである。上記環状エーテル化合物は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
[0077] 上記微量共単量体としては、パーフルオロビニル基含有化合物、なかでも、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)が好ましく、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(n-プロピルビニルエーテル)がより好ましく、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)が更に好ましい。」
「[0082] 本発明の非溶融加工性PTFEファインパウダーを製造する方法において、上記重合工程は、水性媒体中において重合反応を行うものである。上記水性媒体は、その中で上記重合反応を行わせることができる媒体であって、主として水からなるものである。上記水性媒体は、主として水からなるものであれば、低分子量のアルコール等の水溶性有機液体を含むものであってもよいが、上記水溶性有機液体を含まないものであることが好ましい。上記重合反応は、水溶性重合開始剤と非テロゲン性界面活性剤とを添加して行うものである。上記重合反応は、上記水性媒体と重合安定剤としてパラフィンを含む反応媒体中で行うこともできる。
・・・
[0084] 上記非テロゲン性界面活性剤は、非溶融加工性PTFEのコロイド状粒子を水性媒体中に安定に存在させるために加えられるものである。上記非テロゲン性界面活性剤としては特に限定されず、例えば、炭素原子に結合しているフッ素原子を有する酸又はその塩である含フッ素非テロゲン性界面活性剤等が挙げられ、上記酸である含フッ素非テロゲン性界面活性剤としては、例えば、X6(CF2)nCOOH(式中、X6は水素原子、塩素原子又はフッ素原子を表し、nは6~12の整数を表す。)、C1(CF2CFC1)mCF2COOH(式中、mは2~6の整数を表す。)、CpF2p+1SO3H(式中、pは5~9の整数を表す。)で表されるもの等が挙げられる。上記非テロゲン性界面活性剤の添加量は、上記水性媒体の0.01~0.5質量%であることが好ましい。
[0085] 本発明の非溶融加工性PTFEファインパウダーを製造する方法において、上記重合工程により得られる非溶融加工性PTFEのコロイド状粒子は、後述の凝集を行う前において、平均一次粒子径が0.1~0.5μmであるものである。好ましい下限は、0.2μmであり、好ましい上限は、0.3μmである。
[0086] 本発明の非溶融加工性PTFEファインパウダーを製造する方法は、上記重合工程を有し、通常、更に、上記重合工程で得られた非溶融加工性PTFEのコロイド状粒子を凝集し、乾燥する工程を有するものである。」
「[0088] 本発明の非溶融加工性ポリテトラフルオロエチレンファインパウダーからペースト押出により得られる押出成形体を延伸することにより得られることを特徴とする延伸体もまた、本発明の一つである。
[0089] 上述の本発明の非溶融加工性PTFEは、テトラフルオロエチレン〔TFE〕とパーフルオロメチルビニルエーテル〔PMVE〕とを共重合して得られるものであることが好ましい。
上記TFEとPMVEとを共重合して得られる非溶融加工性PTFEもまた、本発明の一つである。本明細書において、上記「TFEとPMVEとを共重合して得られる非溶融加工性PTFE」を以下、「非溶融加工性PTFE(A)」ということがある。本明細書において、上記「(A)」を付すことなく単に「非溶融加工性PTFE」というときは、上記非溶融加工性PTFE(A)をも含むが上記非溶融加工性PTFE(A)に限定されない上述の本発明の非溶融加工性PTFEを意味する。
・・・
[0091] 本発明の非溶融加工性PTFE(A)としては特に限定されず、例えば、上述の非溶融加工性PTFEファインパウダーを構成するものであるほか、水性分散体、溶液、ペレット、各種成形体、水性分散体若しくは溶液を塗装して得られる被膜等を構成するものであってよい。」
「[0098] ・・・
(ペースト押出方法)
・・・微粉樹脂(非溶融加工性PTFEファインパウダー)のサンプル(100g)を樹脂及び潤滑剤を合わせた質量に基づき、18.0質量%の潤滑剤(商品名:IP1620(登録商標)、出光石油化学社製)と室温にてガラスビン中で3分間混合する。次いで、サンプルビンを、押出前少なくとも1時間、室温(25℃)に放置する。潤滑化樹脂は、オリフィス(・・・)を通して、100:1の減速比、室温で均一なビード(beading;押出成形体)にペースト押出される。・・・潤滑剤は、230℃で30分加熱することにより、ビードから除かれる。」
「[0113] 実施例1
・・・ステンレススチール製オートクレーブに、脱イオン水2960ml、パラフィンワックス120g及び非テロゲン性界面活性剤としてパーフルオロオクタン酸アンモニウム4.5gを仕込み、・・・酸素を除いた。その後、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)〔PMVE〕2ml(TFEの全重合量1000gに対して0.0015質量%)を仕込み、TFEを圧入して系内圧力を0.74MPaとし、250rpmの速度で攪拌しながら系内温度を70℃に保った。
[0114] 次いで、水20mlに過硫酸アンモニウム15.0mgを溶解した水溶液をTFEで圧入後、TFEを追加して系内圧力を0.78MPaにし、重合反応を開始した。重合反応の進行に伴い系内圧力が低下するが、250rpmの速度で攪拌しながらTFEを追加して系内温度を70℃、系内圧力を0.78±0.05MPaに維持した。
[0115] 重合開始からTFEが350g(TFEの全重合量1000gに対して35.0質量%)消費された時点で、ラジカル捕捉剤としてヒドロキノン12.0mgを水20mlに溶解した水溶液をTFEで圧入した(水性媒体に対して濃度4.0ppm)。重合はその後も継続し、TFEの重合量が重合開始から1000gになった時点でTFEの供給を止め、直ちに系内のガスを放出して常圧とし、重合反応を終了してPTFEのコロイド状粒子からなるラテックスを得た。・・・
[0116] 得られたPTFEのコロイド状粒子からなるラテックスについて、PTFEのコロイド状粒子の数平均粒子径を測定すると、0.242μmであり、また、PTFEのコロイド状粒子からなるラテックス中におけるPTFEのコロイド状粒子の濃度は25.0質量%であった。
[0117] このPTFEのコロイド状粒子からなるラテックスを凝析して洗浄した後、210℃で18時間乾燥して、PTFEファインパウダーを得た。得られたPTFEファインパウダーの物性と、PTFEファインパウダーから得られる各種測定用延伸体の物性とを測定した。結果を表1に示す。
[0118] 実施例2
PMVEの仕込み量を5ml(TFEの全重合量1053gに対して0.0035質量%)とし、ヒドロキノンの添加時期を、TFEの重合量が379g(TFEの全重合量1000gに対して36.8質量%)となった時点とした以外は実施例1と同様にしてPTFEのコロイド状粒子からなるラテックス及びPTFEファインパウダーを得、PTFEのコロイド状粒子の数平均粒子径、PTFEファインパウダーの物性及びPTFEファインパウダーから得られる延伸体の物性とを測定した。結果を表1に示す。なお、この反応時間は、ヒドロキノンを添加せずに重合を続けた場合、TFEの重合量が1053gになるまでの反応時間(6時間)の175%に相当した。」
「[0128][表1]
」
「[0130] 表1に示す結果から明らかなように、微量共単量体をごく微量の量で用いた実施例1~5では、測定用300℃延伸体Aについての引張り破断強度が32.0N以上であったのに対し、微量共単量体の量を多くした比較例1~2では、延伸温度300℃では延伸体を得ることができず、延伸温度320℃では延伸体を得ることができたが、その引張り破断強度は低くかった。また、微量共単量体を用いなかった比較例3では、測定用300℃延伸体Aの引張り破断強度が32.0N未満であった。なかでも、実施例4、実施例5では、測定用300℃延伸体Aについての引張り破断強度が比較例3に比べて著しく大きくなっていた。」
4.甲2に記載された発明
上記3.の記載、特に、甲2の[0055]、[0057]-[0059]、[0061]、[0066][0071]-[0073]、[0075]、[0077]、[0082]、[0084]-[0085]、[0113]-[0118]、[0128]の表1及び[0130]の記載によれば、甲2には、次の発明が記載されていると認められる。
「非テロゲン性界面活性剤であるパーフルオロオクタン酸アンモニウムを用いて、水性媒体中において、テトラフルオロエチレン〔TFE〕と、微量共単量体であるパーフルオロ(メチルビニルエーテル)との重合反応を60℃~90℃の温度範囲で行うことにより得られる、水性媒体中において平均一次粒子径が0.2~0.3μmのコロイド状粒子である、非溶融加工性PTFEの製造方法であって、
上記重合反応の開始前に、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)を、上記TFEの全重合量の0.001~0.03モル%を添加する、
水性媒体中におけるコロイド状粒子である非溶融加工性PTFEの製造方法。」 (以下、「甲2-1発明」という。)
また、上記記載の他、甲2の特に[0043]、[0086]、[0088]等の記載もあわせれば、以下の2つの発明も記載されていると認められる。
「甲2-1発明の水性媒体中のPTFEコロイド状粒子である非溶融加工性PTFEを、凝集し、400秒以上の応力緩和時間を保持する押出し成形品が得られる、標準比重が2.145~2.164である非溶融加工性PTFEファインパウダーの製造方法。」、すなわち、
「非テロゲン性界面活性剤であるパーフルオロオクタン酸アンモニウムを用いて、水性媒体中において、テトラフルオロエチレン〔TFE〕と、微量共単量体であるパーフルオロ(メチルビニルエーテル)との重合反応を60℃~90℃の温度範囲で行うことにより得られる、水性媒体中において平均一次粒子径が0.2~0.3μmのコロイド状粒子である、非溶融加工性PTFEの製造方法であって、
上記重合反応の開始前に、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)を、上記TFEの全重合量の0.001~0.03モル%を添加する製造方法
により得られた水性媒体中のPTFEコロイド状粒子である非溶融加工性PTFEを、
凝集し、
400秒以上の応力緩和時間を保持する押出し成形品が得られる、標準比重が2.145~2.164である非溶融加工性PTFEファインパウダーの製造方法。」
(以下、「甲2-2発明」という。)
「甲2-2発明により得られるポリテトラフルオロエチレンファインパウダーをペースト押出し成形した後に延伸するポリテトラフルオロエチレン延伸体の製造方法。」、すなわち、
「非テロゲン性界面活性剤であるパーフルオロオクタン酸アンモニウムを用いて、水性媒体中において、テトラフルオロエチレン〔TFE〕と、微量共単量体であるパーフルオロ(メチルビニルエーテル)との重合反応を60℃~90℃の温度範囲で行うことにより得られる、水性媒体中において平均一次粒子径が0.2~0.3μmのコロイド状粒子である、非溶融加工性PTFEの製造方法であって、
上記重合反応の開始前に、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)を、上記TFEの全重合量の0.001~0.03モル%を添加する製造方法
により得られた水性媒体中のPTFEコロイド状粒子である非溶融加工性PTFEを、
凝集し、
400秒以上の応力緩和時間を保持する押出し成形品が得られる、標準比重が2.145~2.164である非溶融加工性PTFEファインパウダーを製造し、
ついで、得られるポリテトラフルオロエチレンファインパウダーをペースト押出し成形した後に延伸するポリテトラフルオロエチレン延伸多孔体の製造方法。」(以下「甲2-3発明」という。)
(なお、甲2-3発明に関し、甲2に記載の「延伸体」は、[0098]によれば、ペースト押出による成形体を、非溶融加工性PTFEファインパウダーを樹脂及び潤滑剤と混合してペースト押出された後に、潤滑剤を加熱により除いて製造した後に延伸されるものであるから、潤滑剤が除かれたことにより生じる孔が存在して、「多孔」となっているものと認められる。)
5.甲第4~13号証の記載事項
(1)甲第4号証
甲第4号証は、ふっ素樹脂についての本件特許の原出願の優先日当時の技術常識を示すハンドブックであり、以下の記載がある。
「乳化重合では、固形分で約20~50%のポリマーラテックスが得られるが、ラテックス粒子は通常0.02~1.0μmの広い分布を有し、平均粒径は反応条件によって異なるが0.1~0.4μm程度である。」(29頁1~3行)
「乳化重合で得られたラテックスを濃縮・安定化したものはディスパージョンの名で含浸・塗装などの用途に市販される(・・・)。
通常,固形分約60%の濃度に調整され,安定剤として非イオン系界面活性剤をポリマー重量に対して約1~15%含む。」(32頁15~18行)
「濃縮には、減圧下で水分を蒸発させる方法・・・や、遠心沈降、電気泳動・・・および相分離を利用する方法・・・などがある。・・・相分離法は、非イオン性界面活性剤を添加した後、曇点近傍に昇温して,吸着した界面活性剤がポリマー粒子とともに相分離する現象を利用するものである。」(32頁25行~33頁2行)
(2)甲第5号証
甲第5号証は、「ポリテトラフルオロエチレン水性分散液およびその製品」と題する特許文献であり、以下の記載がある。
「[0002] 従来、乳化重合法によるPTFEは、水性媒体、重合開始剤、乳化剤であるパーフルオロオクタン酸アンモニウム(以下、APFOという。)、パラフィンワックス等の安定化助剤、等の存在下で、テトラフルオロエチレン(以下、TFEという。)モノマーを重合させることにより、PTFE微粒子を含有するPTFE水性乳化液として得られている(・・・)。
しかし、APFOは、小動物に対する体内蓄積性を有すると指摘されており、APFOを用いた乳化重合法によるPTFE水性乳化液は、生態系への影響について懸念を有する。また、得られたPTFE水性乳化液を利用して得られるPTFE製品も同様な懸念を有する。」
「[0011] ・・・一般式(1)の含フッ素乳化剤のうち特に好ましい例は、CF3CF2CF2CF2OCF2COONH4、C2F5OCF2CF2OCF2COONH4(以下、EEAという。)であり、EEAがより好ましい。」
「[0029] PTFE低濃度水性分散液は、公知の濃縮方法を用いて濃縮することにより、PTFE濃度が50~70質量%のPTFE高濃度水性分散液を得ることができる。濃縮方法としては、たとえば、ふっ素樹脂ハンドブックの32頁(里川孝臣編、日刊工業新聞社発行)に記載されるように、遠心沈降法、電気泳動法、相分離法などの公知の方法が利用できる。」
「[0052] ・・・EEAは、LogPOWの値がパーフルオロオクタン酸アンモニウム(APFO)に比較して小さいことから、生物蓄積性が低いことがわかる。」
(3)甲第6号証
甲第6号証は、「含フッ素乳化剤の残留量が少ないフッ素樹脂およびその製造方法」と題する特許文献であり、以下の記載があり、以下の記載がある。
「[0003] ・・・含フッ素モノマーの水性乳化重合に一般的に用いられるAPFOは、環境および衛生面で蓄積性等の影響を及ぼすことが懸念されており、この点からも成形品中の残留量を低減させることが望ましい。」
「[0009] ・・・特に、特定の含フッ素乳化剤としてCF3CF2OCF2CF2OCF2COONH4を用いた場合には、フッ素樹脂中の残留量が少ないことに加えて、含フッ素乳化剤自身の生物蓄積性が低く、環境および衛生面に著しく優れる。」
「[0037] ・・・EEAは、LogPowの値がパーフルオロオクタン酸アンモニウム(APFO)に比較して小さいことから、生物蓄積性が低いことがわかる。」
(4)甲第7号証
甲第7号証は、「ペルフルオロポリエーテル界面活性剤を用いるフッ素化モノマー類の水性乳化重合」と題する特許文献であり、以下の記載がある。
「【0017】
現在、フッ素化界面活性剤としてのペルフルオロアルカン酸類及びそれらの塩類の使用を回避できる代替乳化重合プロセスを見出すことが望まれている。特に、代替界面活性剤又は分散液、特により環境に優しく、例えば毒性が低く及び/又は生物蓄積が全くない若しくはほんのわずかであるものを見出すことが所望される。
・・・
【0018】
次式(I)又は(II)のペルフルオロポリエーテル類は、ペルフルオロアルカン酸類及びそれらの塩類のようなその他の界面活性剤を添加することなく使用される場合であっても、水性乳化重合に有効であることを見出した。特に、ペルフルオロポリエーテル界面活性剤は式(I)又は(II)に対応する
CF3-(OCF2)m-O-CF2-X (I)
(式中、mは1~6の値であり、Xはカルボン酸基又はそれらの塩を示す);
CF3-O-(CF2)3-(OCF(CF3)-CF2)z-O-L-Y (II)
(式中、zは0、1、2又は3の値であり、Lは
-CF(CF3)-、-CF2-及び-CF2CF2-から選択される二価の連結基を示し、及びYはカルボン酸基又はそれらの塩を示す)。
カルボン酸塩類の例としては、ナトリウム、カリウム及びアンモニウム(NH4)塩類が挙げられる。」
「【0039】
・・・また水性乳化重合は、溶融加工可能なフルオロポリマー類、並びに溶融加工できないもの、例えばポリテトラフルオロエチレン及びいわゆる変性ポリテトラフルオロエチレンを生じる場合がある。」
(5)甲第8号証
甲第8号証は、「AQUEOUS POLYMERIZATION OF FLUORINATED MONOMER USING POLYMERIZATION AGENT COMPRISING FLUOROPOLYETHER ACID OR SALT AND SHORT CHAIN FLUOROSURFACTANT(フルオロポリエ-テル酸又は塩及び短鎖フツ素界面活性剤を含む重合剤を用いるフツ素化モノマ-の水性重合)」と題する米国特許文献であり、以下の記載がある。
(訳文)
「[0005] ・・・パーフルオロオクタン酸および塩に関する最近の環境問題により、フルオロポリマー重合法におけるパーフルオロオクタン酸およびその塩の低減または排除に関心がもたれている。」
「[0020] 本発明は特に、変性PTFEを含むポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の分散体を製造する場合に有用である。」
「[0027] 本発明により利用されるフッ素系界面活性剤は、式:
[R1-On-L-A-]Y+ (I)
で表されるフッ素系界面活性剤であり、
[0028] ここで、式中:
[0029] R1は、エーテル結合を含有していてもよい直鎖または分枝鎖、部分または完全フッ素化脂肪族基であり;
[0030] nは0または1であり;
[0031] Lは、非フッ素化、部分フッ素化または完全フッ素化されていてもよく、およびエーテル結合を含有していてもよい直鎖または分枝鎖アルキレン基であり;
[0032] A-は、カルボキシレート、スルホネート、スルホンアミドアニオンおよびホスホネートからなる群から選択されるアニオン基であり;および
[0033] Y+は、水素、アンモニウムまたはアルカリ金具カチオンであり;
[0034] ただし、R1-On-L-の鎖長は6個以下の原子である。」
(6)甲第9号証
甲第9号証は、「フルオロポリマーの製造方法」と題する特許文献であり、以下の記載がある。
「【0002】
パーフルオロオクタンアンモニウム塩等のフルオロアルキル基を有するカルボン酸は、熱的、化学的に非常に安定で、重合の際には、連鎖移動等の副反応を抑制できる点で有用であり、従来より乳化剤として使用されているが、重合により得られた樹脂から除去するためには、洗浄、加熱等の条件が狭く限定される問題があった。」
「【0007】
本発明は、下記一般式(1)
Rf1O-(Rf2O)n-Rf3-COOM (1)
(式中、Rf1は、炭素数1~3のフルオロアルキル基を表す。Rf2及びRf3は、同一又は異なって、それぞれ炭素数1~3のフルオロアルキレン基を表す。Mは、H、K、Na又はNH4の何れかを表す。)で表される化合物(a)のうち互いにnの値が異なるものを2種以上存在させた水性媒体中でフルオロモノマーを重合するものであり、上記水性媒体中の化合物(a)はnの平均が2~4であることを特徴とするフルオロポリマーの製造方法である。」
「【0057】
上記PTFE重合体の製造において、知られている各種変性モノマーを併用することもできる。本明細書において、ポリテトラフルオロエチレン重合体[PTFE重合体]は、TFE単独重合体のみならず、TFEと変性モノマーとの共重合体であって、非溶融加工性であるもの(以下、「変性PTFE」という。)をも含む概念である。」
「【0103】
本発明のフルオロポリマーの製造方法は、分散性に優れて、フルオロポリマー濃度が高い水性分散液を容易に得ることができる。更に、得られるフルオロポリマーから化合物(a)を容易に除去することができるので、純度が高いフルオロポリマーのファインパウダーを得ることもできる。」
(7)甲第10号証
甲第10号証は、本件特許明細書の【0026】で引用された文献に対応する英訳文献であり、「KINETICS OF COPOLYMERIZATION OF TETRAFLUOROETHYLENE WITH PERFLUORO(ALKYL VINYL)ETHERS OF DIFFERENT STRUCTURES(テトラフルオロエチレン(TFE)と異なった構造のパーフルオロ(アルキルビニル)エーテル(PEAVE))との共重合体のキネティックについて)」と題する論文であるが、1042頁17~21行及び1043頁の表1によれば、アルフレイ-プライスの式による、モノマーM1(TFE)と、モノマーM2(PFMVE;パーフルオロ(メチルビニル)エーテル)との相対反応性r1は、1.73であったことが記載されている。
(8)甲第11号証
甲第11号証は、「Linear Method for Determining Monomer Reactivity Ratios in Copolymerization(共重合におけるモノマー反応性比の決定のための1次線形法)」と題する論文であり、259頁10行~260頁7行には、モノマーの反応性比の決定をメイヨールイス式により行う方法、及び、1次線形法(いわゆる、ファインマン-ロス式)により行う方法について説明されている。
(9)甲第12号証
甲第12号証は、本件特許明細書の【0021】で引用された文献であり、「THE RADIATION‐INDUCED COPOLYMERIZATION OF TETRAFLUOROETHYLENE AND 3,3,3‐TRIFLUOROPROPENE AT HIGH PRESSURE(高圧下でのテトラフルオロエチレンと3,3,3-トリフルオロプロペンの放射線照射誘発共重合)」と題する論文であるが、1117頁の表1には、3,3,3-トリフルオロプロペン及びテトラフルオロエチレンを、自発生圧から8000気圧までの種々の圧力で共重合させた場合の生成ポリマーの組成が記載されている。また、1122頁1~6行には、ポリマー組成とモノマー組成との関係式の1つが式(1)として、記載されており、同頁の図3には、C2F4とCH2CHCF3との共重合について、「r1=0.15」及び「r1=0.12」との記載がある。
「
」(1117頁表1)
「
式中、FA:ポリマーにおけるテトラフルオロエチレンのモル比率、fA:モノマーにおけるテトラフルオロエチレンのモル比率、r1=kAA/kAB、およびr2=kBB/kBA。
図3に、ポリマーにおけるテトラフルオロエチレンの比率を、モノマーにおける比率に対してプロットした。」(1122頁1~6行)
「
」(1122頁図3)
(10)甲第13号証
甲第13号証は、本件特許明細書の【0021】で引用された文献であり、「Radiation‐Induced Copolymerization of Tetrafluoroethylene and 3,3,4,4,5,5,5‐Heptafluoropentene‐1 Under Pressure(高圧下でのテトラフルオロエチレンと3,3,4,4,5,5,5-ヘプタフルオロペンテン-1の放射線照射誘発共重合)」と題する論文であるが、2444頁の表1には、テトラフルオロエチレン及び3,3,4,4,5,5,5-ヘプタフルオロペンテン-1を、5000気圧から14200気圧までの種々の圧力で共重合させた場合の生成ポリマーの組成が記載されている。また、2447頁の図2には、ヘプタフルオロペンテンとの共重合におけるテトラフルオロエチレンの反応性比に関し、「r1=0.21」との記載がある。
「
」(2444頁表1)
「
」(2447頁図2)
6.乙第5号証の記載事項
「KIRK-OTHMER ENCYCLOPEDIA OF CHEMICAL TECHNOLOGY FOURTH EDITION」,1994,Vol.11,p621,624~625
乙第5号証は特許権者が提出した、化学技術に関する包括的な百科事典であり、本件特許の原出願の優先日当時の技術常識を示す文献である。
(訳文)
「ポリテトラフルオロエチレン
ポリテトラフルオロエチレン[9002-84-0](PTFE)・・・」(621頁18~19行)
「PTFEの製造
・・・
ポリテトラフルオロエチレンは、製造され、3つの形態;粒子,ファインパウダー,水性分散液;で販売される・・・
・・・
重合化
・・・
粒子状樹脂
粒子状PTFEは、TFE単独あるいは少量のコモノマ-の存在下での重合で製造される(・・・)。
・・・
ファインパウダー樹脂
ファインパウダー樹脂は、TFEを開始剤と乳化剤を用いて水性媒体中で重合して製造される(45)。重合機構は、典型的な乳化系ではないが、乳化重合の原理の一部に支配される。工程や原料が生成物に大きく影響する。分散液が、重合中早期の凝集を防ぐように十分に安定であるが、次にファインパウダーへと凝集できるくらい不安定であることを保持することが特に重要である(46)。ゆるやかな撹拌が、分散液の安定性を確実にする。重合工程における乳化剤の量は、通常、臨界ミセル濃度よりも少ない。重合速度と粒子形状は、乳化剤の量によって影響される(47-50)。粒子構造は、重合工程によって影響されうる。粒子の大部分は重合工程の初期に形成され、粒子は、バッチが進むに従い大きくなる;それゆえ、分散粒子中の分子量や重合体組成の半径方向の変化が、原料や操作条件を含む、重合変数を制御することによって、達成されうる(51-57)。
機械的撹拌を継続することよって、薄い分散液は急速に粘度が高くなりゲル状基質となり、そして、凝集して、水性媒体に浮遊する撥水性の凝集物となる。凝集物は、温和な条件で乾燥され;剪断は避けなければならない。
水性分散液
分散液は重合化プロセスで製造され、異なった平均粒子径のファインパウダーの製造に使用される(・・・)。最も一般的な平均粒子径は0.2μmであり、このサイズは、おそらく、ほとんどの応用において最も好適な粒子サイズであると思われる。素の分散液はノニオン性あるいはアニオン性界面活性剤で安定化され、エレクトロデカンテーション、エバポレーション、あるいは熱濃縮によって、60-65wt%まで濃縮される。」(624頁11行~626頁10行)
7.乙第9号証の記載事項
乙第9号証は、樋口信弥が作成した実験報告書である。
「
」
8.乙第11号証の記載事項
乙第11号証は、乙第9号証の実験報告書を作成した樋口信弥が2018年3月5日に作成した実験報告書であるが、乙第11号証には、本件特許明細書の実施例4において、コモノマーをPFBEに替えて、rTFEが1.8のパーフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)(PDD)0.5gを使用して同様の反応を行ったところ、PDDの添加量は、最終PTFE収量に対して0.0023質量%であり、得られたPTFE水性乳化液中のPTFE微粒子の平均一次粒子径は0.26μmであり、PTFE水性乳化液の安定性時間は226秒であったとの実験結果が記載されている。
以下、甲第1号証~甲第15号証をそれぞれ、「甲1」から「甲15」ともいい、乙第5号証、乙第9号証、乙第11号証をそれぞれ、「乙5」、「乙9」、「乙11」ともいう。
第7 当審合議体が通知した取消理由のうち、理由があると判断されるものについて
1.取消理由A(甲1を主たる引用文献とする進歩性;第1群の発明(本件発明1及び4~7))について
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1は、上記第3に記載したとおりのものであり、甲1-1発明は、上記第6の2.に記載したとおりのものである。
そして、本件発明1と甲1-1発明とを対比すると、
甲1-1発明における「CF3CF2OCF2CF2OCF2COONH4で表される含フッ素乳化剤」は、本件発明1における「CF3OCF(CF3)CF2OCF(CF3)COOH、CF3O(CF2)3OCHFCF2COOH、C2F5OCF2CF2OCF2COOH及びこれらのLi、Na、K、NH4の塩からなる群から選ばれる1種以上の含フッ素乳化剤」に相当する。
また、甲1-1発明におけるポリテトラフルオロエチレン水性乳化液中のポリテトラフルオロエチレンの平均一次粒子径「0.18~0.50μm」は、本件発明1におけるポリテトラフルオロエチレン微粒子の平均一次粒子径と、平均一次粒子径が0.18~0.3μmの範囲で、重複一致しているから、この限りにおいて、甲1-1発明における「平均一次粒子径が0.18~0.50μmであるポリテトラフルオロエチレン」は、本件発明1における「平均一次粒子径が0.1~0.3μmであるポリテトラフルオロエチレン微粒子」に担当する。
さらに、甲1-1発明における「共重合可能な他のモノマー」と本件発明1における「コモノマー」は同義であるし、甲1-1発明と本件発明1の重合温度及び重合圧力は一致しているし、本件発明1では、含フッ素乳化剤の含有量の特定はなく、甲1-1発明で特定される含有量であってもよいと認められる。
そうすると、本件発明1と甲1-1発明とは、以下の点で一致する。
<一致点>
CF3OCF(CF3)CF2OCF(CF3)COOH、CF3O(CF2)3OCHFCF2COOH、C2F5OCF2CF2OCF2COOH及びこれらのLi、Na、K、NH4の塩からなる群から選ばれる1種以上の含フッ素乳化剤を用いて重合温度10~95℃、重合圧力0.5~4.0MPaでテトラフルオロエチレンを乳化重合し、平均一次粒子径が0.1~0.3μmであるポリテトラフルオロエチレン微粒子を含有する水性乳化液を得るポリテトラフルオロエチレン水性乳化液の製造方法であって、
テトラフルオロエチレンの乳化重合時に、コモノマーを乳化重合系に含有させるポリテトラフルオロエチレン水性乳化液の製造方法。
また、両者は、以下の点で相違する。
<相違点1>
テトラフルオロエチレンの乳化重合時に乳化重合系に含有させるコモノマーについて、本件発明1ではコモノマーが、「CH2=CH-(CF2)4F及びCH2=CH-(CF2)6Fからなる群より選ばれる一種以上からなる(ポリフルオロアルキル)エチレン(a)、及び/又は、CF2=CF-O-(CF2)2CF=CF2、CF2=CF-O-CF3、パーフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)、及び、パーフルオロ(2-メチレン-4-メチル-1,3-ジオキソラン)からなる群から選ばれる少なくとも1種からなるコモノマー(b)」と特定されているのに対して、甲1-1発明では、コモノマーが、「へキサフルオロプロピレン(HFP)、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PFAVE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、(パーフルオロアルキル)エチレン、フッ化ビニリデン(VdF)、パーフルオロ(アルケニルビニルエーテル)、VDF、パーフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)、パーフルオロ(4-アルキル-1,3-ジオキソール)の1種単独か2種以上からなる」と特定されている点。
<相違点2>
テトラフルオロエチレンの乳化重合に際し投与されるコモノマーの投与時期について、本件発明1ではテトラフルオロエチレンの乳化重合の「開始時に・・・乳化重合系に含有させる」と特定されているのに対し、甲1-1発明ではテトラフルオロエチレンの乳化重合の「重合初期に投入される」と特定されている点。
<相違点3>
乳化重合系に含有させるコモノマーの量について、本件発明1では、(「平均一次粒子径が0.1~0.3μmであるポリテトラフルオロエチレン微粒子を含有する水性乳化液」を得るために、)「最終的なポリテトラフルオロエチレンの生成量に対して0.001~0.01質量%の範囲にあって、かつ、得られるポリテトラフルオロエチレン水性乳化液の下記測定方法記載の方法により測定した安定性時間が、前記一般式(1)で表わされる(ポリフルオロアルキル)エチレン(a)、及び/又は、前記コモノマー(b)を入れないこと以外は全く同じ条件で乳化重合して得られるポリテトラフルオロエチレン水性乳化液の値に比して20%以上向上し、かつ600秒以内となるように定めた量」と特定されているのに対して、甲1-1発明では、(「得られるポリテトラフルオロエチレン微粒子の平均一次粒子径が0.18~0.50μmとなるように」、)「最終ポリテトラフルオロエチレン収量に対し、0~0.4質量%」と特定されている点。
なお、相違点3について、本件発明1の発明特定事項には安定性時間の測定方法の記載があるが、ここでは記載を省略した。以下、決定中において、これらについて、同様に記載を省略する。
イ 判断
以下、本件発明1の発明特定事項である「前記(ポリフルオロアルキル)エチレン(a)、及び/又は、前記コモノマー(b)を入れないこと以外は全く同じ条件で乳化重合して得られるポリテトラフルオロエチレン水性乳化液の値に比して20%以上向上」なる発明特定事項を、「安定性時間の20%以上向上」と、「CF3OCF(CF3)CF2OCF(CF3)COOH、CF3O(CF2)3OCHFCF2COOH、C2F5OCF2CF2OCF2COOH及びこれらのLi、Na、K、NH4の塩からなる群から選ばれる1種以上の含フッ素乳化剤」を、「本件の含フッ素乳化剤」と、「テトラフルオロエチレンを乳化重合し、平均一次粒子径が0.1~0.3μmであるポリテトラフルオロエチレン微粒子を含有する水性乳化液」を、「本件の水性乳化液」ともいう。)
さらに、本件発明1の発明特定事項として記載される「CH2=CH-(CF2)4F及びCH2=CH-(CF2)6Fからなる群より選ばれる一種以上からなる(ポリフルオロアルキル)エチレン(a)」を「式(a)のコモノマー」と、「CF2=CF-O-(CF2)2CF=CF2」を「式(b2)のコモノマー」と、「CF2=CF-O-CF3」を「式(b3)のコモノマー」と、「パーフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)」を、「式(b4)のコモノマー」と、「パーフルオロ(2-メチレン-4-メチル-1,3-ジオキソラン)」を「式(b1)のコモノマー」ともいう。
(ア)相違点1について
甲1には、テトラフルオロエチレンと重合させるコモノマーとして、本件発明1で特定されるコモノマーについての具体的な記載はない。
しかしながら、甲1-1発明の「パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PFAVE)」は、本件発明1のコモノマーである「式(b3)のコモノマー」を概念上包含するものであるところ、甲1-1発明と同様、ポリテトラフルオロエチレン水性乳化液であって、押出し成形品の製造に用いられるポリテトラフルオロエチレンファインパウダーの製造に使用されるポリテトラフルオロエチレン水性乳化液に関するものである甲2には、テトラフルオロエチレンと重合させるコモノマーとして、本件発明1の「式(b3)のコモノマー」に相当する「パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)」([0077]及び実施例1,2)が記載されている。
そうすると、甲1-1発明において、テトラフルオロエチレンと重合させるコモノマーとして、甲1-1発明の「パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PFAVE)」に相当する「パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)を選択することは、当業者が容易に想到し得ることといえる。
(イ)相違点2について
コモノマーについて、甲1-1発明では、テトラフルオロエチレンの乳化重合の「重合初期に投入される」と特定されており、本件発明1のようにテトラフルオロエチレンの乳化重合の「開始時に・・・乳化重合系に含有させる」ことは特定されていない。
しかしながら、甲1-1発明の「重合初期」には、乳化重合の「開始時」に投入する場合が概念上含まれ、この場合には、コモノマーは、本件発明1のように、テトラフルオロエチレンの乳化重合の「開始時に・・・乳化重合系に含有」された状態になると解されるから、この点は実質的な相違点ではない。
仮に相違するとしても、甲2に、本件発明1のコモノマーに相当するコモノマー成分を包含する「微量共単量体」について、「重合反応の開始前に添加する」ことが記載されているから、甲1-1発明において、コモノマーをテトラフルオロエチレンの乳化重合の「開始時に・・・乳化重合系に含有させる」方法とすることは、当業者が容易になし得ることである。
(ウ)相違点3について
甲1には、「変性PTFEを製造する際に」重合初期に乳化重合系に含有させるコモノマーの量について、「コモノマーの量は、その種類により影響の程度は異なるが、コモノマーの投入量を増す程、水性乳化液の安定性は増し、その平均一次粒子径は小粒化する」([0014])と記載されている。
そして、アで記載したとおり、甲1-1発明は、乳化液に含まれる「変性」されたポリテトラフルオロエチレン微粒子の平均一次粒子径を0.18~0.3μmの範囲内のものとする限りでは、「平均一次粒子径が0.1~0.3μmであるポリテトラフルオロエチレン微粒子を含有する水性乳化液を得る」本件発明1と一致しているといえる。そして、乳化重合系に含有されるコモノマーの量を、「最終的なポリテトラフルオロエチレンの生成量に対して0.001~0.01質量%の範囲」とする点は、甲1-1発明において、平均一次粒子径を0.18~0.3μmの範囲内のものとする際に、水性乳化液の安定性を0~0.4質量%の範囲内で適宜調製することで当業者が容易になし得ることと認められる。
次に、甲1-1発明において、乳化重合系に含有させるコモノマーの量を、本件発明1の「一般式(1)で表わされる(ポリフルオロアルキル)エチレン(a)、及び/又は、前記コモノマー(b)を入れないこと以外は全く同じ条件で乳化重合して得られるポリテトラフルオロエチレン水性乳化液の値に比して20%以上向上し、かつ600秒以内」(つまり、「安定性時間の20%以上向上」と「600秒以内」の条件を満たす水性乳化液の安定性時間となる量を満足するもの)に特定する点について検討する。
本件特許明細書の【0056】には、「安定性時間の向上が20%未満では、PTFE水性乳化液の安定化の効果が不充分である。また、安定性時間が600秒を超えると、安定過ぎるので、PTFE水性乳化液に各種水性乳化液安定化剤を添加して濃縮する際の時間や、PTFEファインパウダーを得るまでの凝集疎水化時間が、長くなるので生産性上不利である。」と記載されており、本件発明1において、コモノマーの量を安定性時間で特定する技術的意義は、PTFE水性乳化液を、安定化効果が充分で、かつ、後工程でのPTFEファインパウダーの製造効率を阻害しない程度の安定性とすることといえる。つまり、本件発明1の、「安定性時間の20%以上向上」と「600秒以内」との安定性時間による特定は、コモノマーの含有量を、具体的な所望の安定性の程度により表現したものに過ぎない。そうすると、本件発明1の安定性時間による特定は、甲1-1発明の、「(得られるポリテトラフルオロエチレン微粒子の平均一次粒子径が0.18~0.50μmとなるように、)最終ポリテトラフルオロエチレン収量に対し、0~0.4質量%」とのコモノマーの配合量のうち、水性乳化液が所望の安定性を示す量を意味するものに過ぎない。
一方、甲1-1発明におけるコモノマーの含有量(投入量)は、上述のとおり、水性乳化液の安定性を調整するためのものであるし、甲1-1発明の水性乳化液もPTFEファインパウダーの製造に使用されるものである(甲1の特許請求の範囲の記載参照)ところ、その製造効率は、水性乳化液の安定性を調節する際に、当業者が当然考慮することである(なお、この点は、本件特許の原出願の優先日当時の技術常識を示す乙5の625頁の「ファインパウダー樹脂」の項目に、「分散液が、重合中早期の凝集を防ぐように十分に安定であるが、次にファインパウダーへと凝集できるくらい不安定であることを保持することが特に重要である・・」と記載されていることからも理解できる。)。
そして、上述のとおり、甲1-1発明において、水性乳化液の安定性の改善を目的としてコモノマーの量を調整することは、当業者が適宜なし得ることであるところ、その際に、製造効率も考慮して、甲1-1発明のコモノマーの量を、「一般式(1)で表わされる(ポリフルオロアルキル)エチレン(a)、及び/又は、前記コモノマー(b)を入れないこと以外は全く同じ条件で乳化重合して得られるポリテトラフルオロエチレン水性乳化液の値に比して20%以上向上し、かつ600秒以内」となるような水性乳化液の安定性時間となる量を満足するものとすることは、当業者が容易になし得たことである。
(エ)本件発明1の効果について
本件発明1の効果について検討する。
本件特許明細書には、本件発明1の効果に関し、【0015】に、「本発明によれば、炭素数4~8で主鎖に1~4個のエーテル性酸素原子を有する含フッ素カルボン酸及びその塩からなる群から選ばれる1種以上の含フッ素乳化剤を用いてTFEを乳化重合するに際し、TFEの乳化重合の開始時に、(ポリフルオロアルキル)エチレン(a)、及び/又は、TFEとの共重合におけるモノマー反応性比rTFEが0.1~8であるコモノマー(b)を、最終的なPTFEの生成量に対して0.001~0.01質量%となるように乳化重合系に含有させることで、PTFE水性乳化液の安定性が、その後の加工性、成形性などを損なわない程度に高く、耐熱性の高い成形品を得ることが可能なPTFE水性乳化液を製造できる。」と記載されており、所定のコモノマーを、最終的なPTFEの生成量に対して0.001~0.01質量%となるように乳化重合系に含有させることで、「PTFE水性乳化液の安定性が、その後の加工性、成形性などを損なわない程度に高く」(効果1)、かつ、「耐熱性の高い成形品を得ることが可能」(効果2)なPTFE水性乳化液を製造できることが記載されている。
そして、本件特許明細書には、効果1及び2に関する具体的な記載として、【表1】及び【表2】に、式(a)のコモノマーである「CH2=CH-(CF2)4F」(PFBE)を採用することで「安定性時間」、すなわち、水性乳化液の安定性(【0054】)を改善できること(表1の実施例1と比較例1の対比、表2の実施例4と比較例4との対比)が示され、また、効果2に関し、PFBEの仕込み量を低く抑えることで、応力緩和時間(つまり、耐熱性)を改善できること(表1の実施例1と比較例2の対比、表2の実施例4と比較例5の対比等)は示されているものの、本件特許明細書には、コモノマーが式(b3)のコモノマーである場合の具体的な結果は示されていない。
一方、効果1に関し、甲1の[0014]に、「変性PTFEを製造する際に重合初期に投入する、コモノマーの量は、その種類により影響の程度は異なるが、コモノマーの投入量を増す程、水性乳化液の安定性は増し」と記載されているし、前述のとおり、PTFEファインパウダーの製造に使用される水性乳化液の安定性を、後工程のPTFEファインパウダーの製造効率を考慮して行うことは当業者が当然考慮することであるから、本件発明1の効果1は、当業者が甲1の[0014]の記載及び本件特許の原出願の優先日当時の技術常識から、当業者が予期し得るものであって、本件発明1の効果1が格別顕著なものとは認められない。
また、効果2に関し、甲1の[0023]には、「本発明のPTFEは、その応力緩和時間が少なくとも500秒であるものが好ましく」と記載され、甲2の[0043]には、「本発明の非溶融加工性PTFEファインパウダーは、測定用300℃延伸体Bについての応力緩和時間が400秒以上であることにより、非溶融加工性PTFEの融点以上の温度で焼成しても、延伸体を破断させることを抑制することができるものである」と記載されるから、効果2は、甲1に接した当業者が期待する効果であるといえるし、甲2の表1の実施例2では、含フッ素乳化剤の種類は違うとはいえ、式(b3)のコモノマーをTFEの全重合量に対して本件発明1で特定される含有量に相当する0.0035質量%で使用した例が記載され、実施例2の延伸体は応力緩和時間540秒であり、耐熱性が優れることも示されている。
そうすると、コモノマーが、「式(b3)のコモノマー」である場合の本件発明1の効果1及び2については、当業者が甲1及び甲2の記載から予期し得るものであって、格別顕著なものとは認められない。
(オ)特許権者の意見書における主張について
特許権者は、平成29年11月10日付け意見書(18頁)において、「甲1においてコモノマーを使用することは、甲1の目的である比較的大きいPTFE微粒子を得る上で不利であるため、コモノマーの使用は必須でないばかりでなく、使用しないことがベストなのである。すなわち、コモノマーの使用量はゼロがベストなのであり、少なければ少ないほど良いのであるから、あえて、コモノマーの量についてゼロ以外の下限値を設ける動機付けもない。」と主張する。
しかしながら、甲1の[0013]には、「本発明において、乳化重合により得られるPTFEとは、TFE単独重合体と変性PTFEの両者を含む。」と、甲1のPTFEに単独重合体とTFEにコモノマーを共重合した変性PTFEが含まれることが明確に記載され、当該コモノマーが具体的に記載されているのであるし、[0014]では、変性PTFEの製造条件を具体的に記載しているのであるから、コモノマーの量についてゼロ以外の下限値を設ける動機付けは存在する。
よって、この点の特許権者の主張は採用できない。
また、特許権者は、平成29年11月10日付け意見書(20~21頁)において、「直接的な裏付けのないPMVE等の反応性比rTFEはBVEとMMDの反応性比rTFEの間の値であるから、本件特許明細書に記載されたrTFEの技術的意義に鑑みて、PMVE等もBVEやMMDと同等に効果を奏することを、当業者であれば充分に理解できる。」と主張し、後で第8でも言及する乙9の実験報告書を示し、「乙9の図1~3に示すとおり、反応性比rTFEが8.72であるPPVEを用いた比較例3と比較例10では、PPVEの量が、本件特許発明1で規定する範囲であったとしても低い応力緩和時間しか得られなかった。しかし、反応性比rTFEが8以下のコモノマーを本件特許発明1で規定する量だけ用いた実施例では、応力緩和時間、安定性時間、平均一次粒子径のデータは、コモノマーの種類にかかわらず、一定のばらつきの範囲内に入っている。これらのデータからも、本件特許発明の効果を奏するか否かは、具体的なコモノマーの構造の違いではなく、反応性比rTFEであることが明らかである。
したがって、当業者は本件特許の効果が、本件特許発明1のコモノマー全体について奏される効果であることを充分に理解できる。」と主張する。さらに、特許権者は、平成30年3月8日付け上申書においても、反応性rTFEが1.8のパーフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)(PDD)についての追加実験例(乙11の実施例13)を示して、同様の主張をしている。
しかしながら、乙9及び乙11の記載を参酌しても、反応性比rTFEの値と応力緩和時間の値との間に何らかの相関関係を読み取ることはできないから、特許権者の主張は採用できないし、前述のとおり、甲2の表1の実施例2では、含フッ素乳化剤の種類は違うものの、式(b3)のコモノマーをTFEの全重合量に対して本件発明1で特定される範囲内の含有量に相当する0.0035質量%で使用した例で、応力緩和時間が540秒と優れることが示されている。
よって、特許権者のこの点の主張も採用できない。
(なお、乙11で追加された実験例のパーフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)(PDD)については、甲1の[0013]に示唆されており、また、本件特許明細書には、コモノマーがPDDである場合の具体的な結果は示されていない。)
ウ 小括
よって、本件発明1は、甲1に記載された発明(甲1-1発明)及び甲2に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2)本件発明4について
本件発明4と甲1-1発明とを対比すると、本件発明1を引用する本件発明4については上記相違点1~3及び以下の相違点4で相違する。
<相違点4>
本件発明4では、ポリテトラフルオロエチレン水性乳化液に、「ノニオン性界面活性剤を添加して安定化した後、ポリテトラフルオロエチレン微粒子の含有量が50~70質量%となるように濃縮」して「ポリテトラフルオロエチレン水性分散液の製造方法」とする更なる工程が特定されているのに対し、甲1-1発明にはそのような更なる工程は特定されていない点。
まず、相違点1~3についての判断は、(1)のイで記載したとおりである。
次に、相違点4については、甲4(32頁15~18行)及び甲5の([0028]~[0029])に記載のとおり、非イオン系界面活性剤を使用して、乳化重合して得られたPTFEのラテックス(すなわち、水性乳化液)を、本件発明4と同程度の濃度に濃縮・安定化して、含浸・塗装等の用途に使用されるディズパージョン(すなわち、水性分散液)とすることは、本件特許の原出願の優先日当時周知の技術であるから、甲1-1発明に従来周知の技術を適用して、ポリテトラフルオロエチレン水性乳化液を所望の濃度に濃縮して水性分散液とすることは、当業者が適宜なし得ることである。
よって、本件発明4は、甲1記載された発明(甲1-1発明)、甲2に記載の技術的事項及び周知技術(甲第4号証及び甲第5号証)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(なお、PTFEの水性乳化液を水性分散体として塗装等に使用することは、甲1の[0006]や甲2の[0091]にも記載されている。)
(3)本件発明5について
(1)アでの対比を踏まえて本件発明5と甲1-2発明とを対比すると、両者は、
「CF3OCF(CF3)CF2OCF(CF3)COOH、CF3O(CF2)3OCHFCF2COOH、C2F5OCF2CF2OCF2COOH及びこれらのLi、Na、K、NH4の塩からなる群から選ばれる1種以上の含フッ素乳化剤を用いて重合温度10~95℃、重合圧力0.5~4.0MPaでテトラフルオロエチレンを乳化重合し、平均一次粒子径が0.1~0.3μmであるポリテトラフルオロエチレン微粒子を含有する水性乳化液を得るポリテトラフルオロエチレン水性乳化液の製造方法であって、
テトラフルオロエチレンの乳化重合時に、コモノマーを乳化重合系に含有させるポリテトラフルオロエチレン水性乳化液の製造方法で得られるポリテトラフルオロエチレン水性乳化液を、
凝集することにより、
500秒以上の応力緩和時間を保持する押出し成形品が得られる、ポリテトラフルオロエチレンファインパウダーを製造する方法。」
で一致し、
上記相違点1~3で相違している。
そして、これらの相違点についての判断は、既に(1)のイで記載したとおりである。
よって、本件発明5は、甲1に記載された発明(甲1-2発明)及び甲2に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4)本件発明6について
本件発明6は、本件発明5において、「ポリテトラフルオロエチレンファインパウダーの標準比重が2.135~2.155である」ことを特定するものであるが、甲1-2発明のポリテトラフルオロエチレンファインパウダーの標準比重「2.14~2.20」は、本件発明6における標準比重と、「2.14~2.155」の範囲で、重複一致しているから、この限りにおいて、甲1-2発明における「標準比重が2.14~2.20であるポリテトラフルオロエチレンファインパウダー」は、本件発明6における「標準比重が2.135~2.155である・・・ポリテトラフルオロエチレンファインパウダー」に相当する。
そうすると、追加の相違点はないから、(3)で記載したと同様の理由によって、本件発明6は、甲1に記載された発明(甲1-2発明)及び甲2に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(5)本件発明7について
(1)アでの対比を踏まえて本件発明7と甲1-3発明とを対比すると、両者は、
「CF3OCF(CF3)CF2OCF(CF3)COOH、CF3O(CF2)3OCHFCF2COOH、C2F5OCF2CF2OCF2COOH及びこれらのLi、Na、K、NH4の塩からなる群から選ばれる1種以上の含フッ素乳化剤を用いて重合温度10~95℃、重合圧力0.5~4.0MPaでテトラフルオロエチレンを乳化重合し、平均一次粒子径が0.1~0.3μmであるポリテトラフルオロエチレン微粒子を含有する水性乳化液を得るポリテトラフルオロエチレン水性乳化液の製造方法であって、
テトラフルオロエチレンの乳化重合時に、コモノマーを乳化重合系に含有させるポリテトラフルオロエチレン水性乳化液の製造方法で得られるポリテトラフルオロエチレン水性乳化液を、
凝集することにより、
500秒以上の応力緩和時間を保持する押出し成形品が得られる、ポリテトラフルオロエチレンファインパウダーを製造し、
得られるポリテトラフルオロエチレンファインパウダーをペースト押し出し後延伸することを特徴とする延伸多孔体の製造方法。」
で一致し、
上記相違点1~3で相違している。
そして、これらの相違点についての判断は、既に(1)のイで記載したとおりである。
よって、本件発明7は、甲1に記載された発明(甲1-3発明)及び甲2に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(6)第1群の本件発明に対する取消理由Aの判断のまとめ
以上のとおり、本件発明1、5~7は、甲1に記載された発明及び甲2に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるし、本件発明4は、甲1に記載された発明、甲2に記載された発明、及び、周知技術(甲4及び甲5)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
2.取消理由B(甲第2号証を主たる引用文献とする進歩性;第1群の発明(本件発明1及び4~7))について
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1は、上記第3に記載したとおりのものであり、甲2-1発明は、上記第6の4.に記載したとおりのものである。
そして、本件発明1と甲2-1発明とを対比すると、
甲2-1発明における「非テロゲン性界面活性剤であるパーフルオロオクタン酸アンモニウム」は、本件発明1における「含フッ素乳化剤」に相当する。
また、甲2-1発明における「重合反応」の「温度範囲」である「60℃~90℃」は、本件発明1における「重合温度10~95℃」に相当するし、甲2-1発明における「水性媒体中において平均一次粒子径が0.2~0.3μmのコロイド状粒子である、非溶融加工性PTFE」は、本件発明1における「平均一次粒子径が0.1~0.3μmであるポリテトラフルオロエチレン微粒子を含有する水性乳化液」に相当する。
甲2-1発明における「パーフルオロ(メチルビニルエーテル)」は、本件発明1における「CH2=CH-(CF2)4F及びCH2=CH-(CF2)6Fからなる群より選ばれる一種以上からなる(ポリフルオロアルキル)エチレン(a)、及び/又は、CF2=CF-O-(CF2)2CF=CF2、CF2=CF-O-CF3、パーフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)、及び、パーフルオロ(2-メチレン-4-メチル-1,3-ジオキソラン)からなる群から選ばれる少なくとも1種からなるコモノマー(b)」が、「CF2=CF-O-CF3」である場合に相当する。
さらに、甲2-1発明では、重合反応の開始前に、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)が添加されるから、「テトラフルオロエチレンの乳化重合の開始時に」、該コモノマーは、「乳化重合系に含有させる」ことになる。
そうすると、本件発明1と甲2-1発明とは、本件発明1の発明特定事項で記載すると、以下の点で一致する。
<一致点>
「含フッ素乳化剤を用い、重合温度10~95℃でテトラフルオロエチレンを乳化重合し、平均一次粒子径が0.1~0.3μmであるポリテトラフルオロエチレン微粒子を含有する水性乳化液を得るポリテトラフルオロエチレン水性乳化液の製造方法であって、
テトラフルオロエチレンの乳化重合の開始時に、CH2=CH-(CF2)4F及びCH2=CH-(CF2)6Fからなる群より選ばれる一種以上からなる(ポリフルオロアルキル)エチレン(a)、及び/又は、CF2=CF-O-(CF2)2CF=CF2、CF2=CF-O-CF3、パーフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)、及び、パーフルオロ(2-メチレン-4-メチル-1,3-ジオキソラン)からなる群から選ばれる少なくとも1種からなるコモノマー(b)を、
乳化重合系に含有させるポリテトラフルオロエチレン水性乳化液の製造方法。」
また、両者は、以下の点で相違する。
<相違点5>
含フッ素乳化剤が、本件発明1では「CF3OCF(CF3)CF2OCF(CF3)COOH、CF3O(CF2)3OCHFCF2COOH、C2F5OCF2CF2OCF2COOH及びこれらのLi、Na、K、NH4の塩からなる群から選ばれる1種以上」であるのに対し、甲2-1発明では「非テロゲン性界面活性剤であるパーフルオロオクタン酸アンモニウム」である点。
<相違点6>
テトラフルオロエチレンの乳化重合に関し、本件発明1では「重合圧力0.5~4.0MPa」で行うことが特定されているのに対し、甲2-1発明では重合圧力の特定がない点。
<相違点7>
乳化重合系に含有させるコモノマーの量について、本件発明1では、「最終的なポリテトラフルオロエチレンの生成量に対して0.001~0.01質量%の範囲にあって、かつ、得られるポリテトラフルオロエチレン水性乳化液の安定性時間が、前記一般式(1)で表わされる(ポリフルオロアルキル)エチレン(a)、及び/又は、前記コモノマー(b)を入れないこと以外は全く同じ条件で乳化重合して得られるポリテトラフルオロエチレン水性乳化液の値に比して20%以上向上し、かつ600秒以内となるように定めた量」と特定されているのに対して、甲2-1発明では、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)が、「微量」である「TFEの全重合量の0.001~0.03モル%」添加される点。
イ 判断
(ア)相違点5について
甲2-1発明で用いられている含フッ素乳化剤であるパーフルオロオクタン酸アンモニウムが生体蓄積性や環境面で問題があること、本件発明1の「CF3OCF(CF3)CF2OCF(CF3)COOH、CF3O(CF2)3OCHFCF2COOH、C2F5OCF2CF2OCF2COOH及びこれらのLi、Na、K、NH4の塩からなる群から選ばれる1種以上の含フッ素乳化剤」に相当する含フッ素乳化剤である「CF3CF2OCF2CF2OCF2COONH4」(EEA)の場合には、かかる問題が改善できることは本件特許の原出願の優先日当時周知の事項である(甲1の[0003]及び[0034]、甲5の[0002]及び[0052]、甲6の[0003]及び[0009]、甲7の[0017]、甲8の[0005])し、ポリテトラフルオロエチレン水性乳化液を製造する際の含フッ素乳化剤として、本件発明1の含フッ素乳化剤に相当するものを使用することも、本件特許の優先日当時周知の事項である(甲1、5及び6)。
そして、甲2の[0084]には、含フッ素乳化剤である非テロゲン性界面活性剤が「非溶融加工性PTFEのコロイド状粒子を水性媒体中に安定に存在させるために加えられるもの」であって、「上記非テロゲン性界面活性剤としては特に限定され」ないことが記載されているから、甲2-1発明において、含フッ素乳化剤である「非テロゲン性界面活性剤であるパーフルオロオクタン酸アンモニウム」に替えて、生体蓄積性や環境面の問題がない「CF3CF2OCF2CF2OCF2COONH4」(EEA)を採用することは、当業者が容易になし得ることである。
(イ)相違点6について
甲2の実施例([0114])では、テトラフルオロエチレンの乳化重合を「系内圧力を0.78MPa」にして行ったことが記載されており、当該圧力は、本件発明1の、重合圧力0.5~4.0MPaを満足する。
そうすると、相違点6は実質的には相違点ではないし、仮に相違点である場合であっても、当業者が適宜なし得ることである。
(ウ)相違点7について
まず、乳化重合系に含有させるコモノマーの量を「最終的なポリテトラフルオロエチレンの生成量に対して0.001~0.01質量%の範囲」とする点の容易性について検討すると、甲2-1発明のパーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)の添加量である「TFEの全重合量の0.001~0.03モル%」は、「微量」といえるし、換算すると概略、0.001659~0.06225質量%(=(0.001モル×PMVEの分子量166.02)÷(0.001モル×PMVEの分子量166.02+1モル×TFEの分子量100.02)~(0.003モル×PMVEの分子量166.02)÷(0.03モル×PMVEの分子量166.02+1モル×TFEの分子量100.02))であり、本件発明1と「0.001659~0.01質量%」の範囲で重複一致しているし、甲2の実施例2には、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)を「TFEの全重合量1053gに対して0.0035質量%」([0118])としたことが記載されているから、本件発明1において、コモノマーの量が「0.001~0.01質量%の範囲」に限定されている点は実質的な相違点ではない。
次に、コモノマーの量を、安定性時間の20%以上向上し、かつ600秒以内となる量とする点について検討する。
本件発明1において、乳化重合系に含有させるコモノマーの量を、安定性時間の20%以上向上し、かつ600秒以内となるように定めた量を満足するものとする点の技術的意義は、本件特許明細書の【0056】によれば、PTFE水性乳化液の安定化効果が奏され、後工程でのPTFEファインパウダーの製造効率が低下しないことであるところ、甲2と同様、ポリテトラフルオロエチレンの水性乳化液であって、押出し成形品の製造に用いられるポリテトラフルオロエチレンファインパウダーの製造に使用されるものを開示する文献であって、テトラフルオロエチレンと共重合させるコモノマーとして、甲2-1発明のパーフルオロ(メチルビニルエーテル)を包含するパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PFAVE)がその選択肢として開示されている甲1には、コモノマーの量が、一次粒子の粒子径及び水性乳化液の安定性に影響を与えることが記載されている([0014])。
そうすると、甲2-1発明のコモノマーの量を、安定性時間の20%以上向上なる条件を満足する程度の量とすることは、当業者が容易になし得ることであると認められるし、甲2-1発明の水性媒体中におけるコロイド状粒子である非溶融加工性PTFEにおいても、後工程のPTFEファインパウダーの製造効率への影響を考慮することは当業者が当然行うことであると解される(なお、この点は、本件特許の原出願の優先日当時の技術常識を示す乙5の625頁の「ファインパウダー樹脂」の項目に、「分散液が、重合中早期の凝集を防ぐように十分に安定であるが、次にファインパウダーへと凝集できるくらい不安定であることを保持することが特に重要である・・」と記載されていることからも理解できる。)から、甲2-1発明のコモノマーの量を、安定性時間の20%以上向上し、かつ600秒以内となる条件を満足する程度の量とすることも、当業者が容易になし得ることである。
(エ)本件発明1の効果について
本件発明1の効果は、1.(1)イ(エ)に記載したとおりであり、コモノマーが「式(b3)のコモノマー」である場合の本件発明1の効果が甲1及び甲2の記載から、当業者が予期し得るものであって、本件発明1の効果が格別顕著なものとは認められないことも、既に、1.(1)イ(エ)に記載したとおりである。
ウ 小括
よって、本件発明1は、甲2に記載された発明(甲2-1発明)、甲1に記載の技術的事項、及び、周知技術(甲1、甲5~8)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2)本件発明4について
本件発明4と甲2-1発明とを対比すると、本件発明1を引用する本件発明4については上記相違点5~7及び以下の相違点8で相違する。
<相違点8>
本件発明4は、ポリテトラフルオロエチレン水性分散液の製造方法について、更に、「請求項1に記載の方法で得られるポリテトラフルオロエチレン水性乳化液に、ノニオン性界面活性剤を添加して安定化した後、ポリテトラフルオロエチレン微粒子の含有量が50~70質量%となるように濃縮する」工程が追加されているのに対し、甲2-1発明にはそのような工程を追加する点の特定はない点。
まず、相違点5~7についての判断は、(1)のイで記載したとおりである。
次に、相違点8については、1.(2)において、相違点4の判断で説示したとおり、非イオン系界面活性剤を使用して、乳化重合で得られたPTFEのラテックスを本件発明4と同程度の濃度に濃縮・安定化することは本件特許の優先日当時周知の技術であるから、甲2-1発明に従来周知の技術を適用して、ポリテトラフルオロエチレン水性乳化液を所望の濃度に濃縮することは、当業者が適宜なし得ることである。
よって、本件発明4は、甲2に記載された発明(甲2-1発明)、甲1に記載の技術的事項、甲1、5~8に示される周知技術及び甲4、5に示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)本件発明5について
本件発明5と甲2-2発明とを対比すると、両者は、
「含フッ素乳化剤を用い、重合温度10~95℃でテトラフルオロエチレンを乳化重合し、平均一次粒子径が0.1~0.3μmであるポリテトラフルオロエチレン微粒子を含有する水性乳化液を得るポリテトラフルオロエチレン水性乳化液の製造方法であって、
テトラフルオロエチレンの乳化重合の開始時に、CH2=CH-(CF2)4F及びCH2=CH-(CF2)6Fからなる群より選ばれる一種以上からなる(ポリフルオロアルキル)エチレン(a)、及び/又は、CF2=CF-O-(CF2)2CF=CF2、CF2=CF-O-CF3、パーフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)、及び、パーフルオロ(2-メチレン-4-メチル-1,3-ジオキソラン)からなる群から選ばれる少なくとも1種からなるコモノマー(b)を、
乳化重合系に含有させるポリテトラフルオロエチレン水性乳化液の製造方法により得られるポリテトラフルオロエチレン水性乳化液を、
凝集することにより、
応力緩和時間を保持する押出し成形品が得られる、ポリテトラフルオロエチレンファインパウダーを製造する方法。」
で一致し、
上記相違点5~7及び以下の相違点9で相違している。
<相違点9>
ポリテトラフルオロエチレンファインパウダーについて、本件発明5では、「500秒以上の応力緩和時間を保持する押出し成形品が得られる」ものであると特定されているのに対し、甲2-2発明では、「400秒以上の応力緩和時間を保持する押出し成形品が得られる」ものであると特定されている点。
甲2には、押出し成形品の応力緩和時間について、[0043]に「応力緩和時間は、上記範囲内であれば650秒以下、更に550秒以下であっても、焼成時における延伸体の破断を抑制することができる」と記載されているし、甲2の実施例2には、応力緩和時間が540秒の非溶融加工性PTFEファインパウダーが得られたことが具体的に記載されている。そうすると、相違点9は、実質的には相違点でないか、仮に相違点であるとしても、甲2-2発明において、ポリテトラフルオロエチレンファインパウダーを相違点9の構成を満足するものとすることは、当業者が適宜なし得ることである。
そして、相違点5~7についての判断は、既に(1)のイで記載したとおりである。
よって、本件発明5は、甲2に記載された発明(甲2-2発明)、甲1に記載の技術的事項、及び、周知技術(甲1、甲5~8)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4)本件発明6について
本件発明6は、本件発明5において、「ポリテトラフルオロエチレンファインパウダーの標準比重が2.135~2.155である」ことを特定するものであるが、甲2-2発明のポリテトラフルオロエチレンファインパウダーの標準比重「2.145~2.164」は、本件発明6における標準比重と、「2.145~2.155」の範囲で、重複一致しているから、この限りにおいて、甲2-2発明における「標準比重が2.145~2.164であるポリテトラフルオロエチレンファインパウダー」は、本件発明6における「標準比重が2.135~2.155である・・・ポリテトラフルオロエチレンファインパウダー」に相当する。
そうすると、追加の相違点はないから、(3)で本件発明5について記載したと同様の理由によって、本件発明6は、甲2に記載された発明(甲2-2発明)、甲1に記載の技術的事項、及び、周知技術(甲1、甲5~8)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(5)本件発明7について
本件発明7と甲2-3発明とを対比すると、両者は、
「含フッ素乳化剤を用い、重合温度10~95℃でテトラフルオロエチレンを乳化重合し、平均一次粒子径が0.1~0.3μmであるポリテトラフルオロエチレン微粒子を含有する水性乳化液を得るポリテトラフルオロエチレン水性乳化液の製造方法であって、
テトラフルオロエチレンの乳化重合の開始時に、CH2=CH-(CF2)4F及びCH2=CH-(CF2)6Fからなる群より選ばれる一種以上からなる(ポリフルオロアルキル)エチレン(a)、及び/又は、CF2=CF-O-(CF2)2CF=CF2、CF2=CF-O-CF3、パーフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)、及び、パーフルオロ(2-メチレン-4-メチル-1,3-ジオキソラン)からなる群から選ばれる少なくとも1種からなるコモノマー(b)を、
乳化重合系に含有させるポリテトラフルオロエチレン水性乳化液の製造方法により得られるポリテトラフルオロエチレン水性乳化液を、
凝集することにより、
応力緩和時間を保持する押出し成形品が得られる、ポリテトラフルオロエチレンファインパウダーを製造し、
得られるポリテトラフルオロエチレンファインパウダーをペースト押し出し後延伸する延伸多孔体の製造方法。」
で一致し、
上記相違点5~7及び9で相違している。
そして、相違点5~7及び9についての判断は、既に(1)のイ及び(3)で記載したとおりであるから、既に述べたと同様の理由により、本件発明7は、甲2に記載された発明(甲2-3発明)、甲1に記載の技術的事項、及び、甲1、5~8に示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(6)第1群の本件発明に対する取消理由Bの判断のまとめ
以上のとおり、本件発明1、4~7は、甲2に記載された発明、甲1に記載の技術的事項、及び、甲1、4~8に示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
第8 当審合議体が通知した取消理由のうち、理由がないと判断されるものについて
1.取消理由A(甲1を主たる引用文献とする進歩性;第2群の発明(本件発明2及び8~11)及び第3群の発明(本件発明3及び12~15))について
1)第2群の発明(本件発明2及び8~11)について
(1)本件発明2について
ア 対比
本件発明2は、上記第3に記載したとおりであり、甲1-1発明は、第6の2.に記載したとおりである。
また、本件発明2で特定された平均一次粒子径の特定については、甲1-1発明と0.2~0.3μmの範囲で重複一致している。
そして、本件発明1と甲1-1発明とを第7の1.(1)アでの対比を踏まえて対比すると、両者は、以下の点で一致し、以下の相違点1’並びに第7の1.(1)アで記載した相違点2及び3で相違する。
<一致点>
CF3OCF(CF3)CF2OCF(CF3)COOH、CF3O(CF2)3OCHFCF2COOH、C2F5OCF2CF2OCF2COOH及びこれらのLi、Na、K、NH4の塩からなる群から選ばれる1種以上の含フッ素乳化剤を用いて重合温度10~95℃、重合圧力0.5~4.0MPaでテトラフルオロエチレンを乳化重合し、平均一次粒子径が0.2~0.3μmであるポリテトラフルオロエチレン微粒子を含有する水性乳化液を得るポリテトラフルオロエチレン水性乳化液の製造方法であって、
テトラフルオロエチレンの乳化重合時に、コモノマーを乳化重合系に含有させるポリテトラフルオロエチレン水性乳化液の製造方法。
<相違点1’>
テトラフルオロエチレンの乳化重合時に乳化重合系に含有させるコモノマーについて、本件発明2ではコモノマーが、「CH2=CH-(CF2)4F及びCH2=CH-(CF2)6Fからなる群より選ばれる一種以上からなる(ポリフルオロアルキル)エチレン(a)、及び/又は、CF2=CF-O-(CF2)2CF=CF2、及び、パーフルオロ(2-メチレン-4-メチル-1,3-ジオキソラン)からなる群から選ばれる少なくとも1種からなるコモノマー(b)」と特定されているのに対して、甲1-1発明では、コモノマーが、「へキサフルオロプロピレン(HFP)、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PFAVE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、(パーフルオロアルキル)エチレン、フッ化ビニリデン(VdF)、パーフルオロ(アルケニルビニルエーテル)、VDF、パーフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)、パーフルオロ(4-アルキル-1,3-ジオキソール)の1種単独か2種以上からなる」と特定されている点。
イ 判断
(ア)コモノマーが、式(a)のコモノマーである場合の本件発明2について
事案に鑑み、相違点3から検討する。
相違点3は、第7の1.(1)アで記載した相違点3と同様であり、次のとおりである。
<相違点3>
乳化重合系に含有させるコモノマーの量について、本件発明2では、(「平均一次粒子径が0.2~0.3μmであるポリテトラフルオロエチレン微粒子を含有する水性乳化液」を得るために、)「最終的なポリテトラフルオロエチレンの生成量に対して0.001~0.01質量%の範囲にあって、かつ、得られるポリテトラフルオロエチレン水性乳化液の下記測定方法記載の方法により測定した安定性時間が、前記一般式(1)で表わされる(ポリフルオロアルキル)エチレン(a)、及び/又は、前記コモノマー(b)を入れないこと以外は全く同じ条件で乳化重合して得られるポリテトラフルオロエチレン水性乳化液の値に比して20%以上向上し、かつ600秒以内となるように定めた量」と特定されているのに対して、甲1-1発明では、(「得られるポリテトラフルオロエチレン微粒子の平均一次粒子径が0.18~0.50μmとなるように」、)「最終ポリテトラフルオロエチレン収量に対し、0~0.4質量%」と特定されている点。
相違点3が、コモノマーが式(a)のコモノマーである「CH2=CH-(CF2)4F」(PFBE)及び「CH2=CH-(CF2)6F」(PFHE)の含有量についてのものである場合に関し、甲1には、これら式(a)のコモノマーを概念上包含する「(パーフルオロアルキル)エチレン」の含有量について、[0014]に「最終PTFE収量に対し、好ましくは0~0.5質量%、より好ましくは0~0.4質量%」との記載があるのみで、相違点3に係る本件発明2の構成である「最終的なポリテトラフルオロエチレンの生成量に対して0.001~0.01質量%の範囲」であり、かつ、「安定性時間が、・・・(ポリフルオロアルキル)エチレン(a)・・・を入れないこと以外は全く同じ条件で乳化重合して得られるポリテトラフルオロエチレン水性乳化液の値に比して20%以上向上し、かつ600秒以内となるように定めた量」とする点についての記載はない。
また、耐熱性に関し、甲1の[0023]には、「本発明のPTFEは、その応力緩和時間が少なくとも500秒であるものが好ましく」との記載はあるものの、甲1には、コモノマーを共重合したポリテトラフルオロエチレンにおいて、当該応力緩和時間を具体的にどのようにして達成するのかについての具体的な記載はなく、本件発明2のように、「PTFE水性乳化液の安定性が加工性等に悪影響を及ぼさない程度に適度に高く、耐熱性の高い成形品を得ることが可能」という効果を奏するものとする目的で、式(a)のコモノマーを、本件発明2で特定される極微量(0.001~0.01質量%)含有させるものとすることの記載もない。
一方、本件特許明細書には、テトラフルオロエチレンと重合させるコモノマーの含有量に関連して、【0029】に、「・・・本発明者は、モノマー反応性比rTFEが上記範囲にある高反応性のコモノマーをTFEの乳化重合開始時に極微量添加することにより、界面活性能の低い含フッ素乳化剤を使用しても、PTFE水性乳化液の安定性が加工性等に悪影響を及ぼさない程度に適度に高く、耐熱性の高い成形品を得ることが可能な、高分子量のPTFE微粒子が分散したPTFE水性乳化液を製造することができることを見出した。」と記載されており、式(a)のコモノマーをTFEの乳化重合開始時に「極微量」(0.001~0.01質量%)添加して、上記相違点1’、2及び3に係る本件発明2の構成を備えたものとすることで、「PTFE水性乳化液の安定性が加工性等に悪影響を及ぼさない程度に適度に高く、耐熱性の高い成形品を得ることが可能」であるという効果が奏される旨記載されている。
そして、当該【0029】の明細書の記載を裏付けるものとして、本件特許明細書の表1及び2には、具体的実験例の記載(本件特許明細書の実施例表1及び2における、PFBEについての実施例1と比較例2の記載及び実施例4と比較例5の記載、PFHEについての実施例5、6)があり、また、本件特許明細書の【0029】の記載を裏付ける更なる実験例として、特許権者が提出した乙9には、PFHEについての比較例9等が記載されており、これらの記載からは、式(a)のコモノマーを本件発明2で特定される極微量(0.001~0.01質量%)含有させた場合には、PTFE水性乳化液の安定性が加工性等に悪影響を及ぼさない程度に適度に高く、かつ、応力緩和時間が500秒以上である優れた耐熱性を有する成形品が得られるという優れた効果が奏されるが、含有量が本件発明2に特定されるコモノマー含有量の上限を超えた場合には、このような優れた効果は奏されないことが理解でき、本件発明2における式(a)のコモノマーの含有量についての、「最終的なポリテトラフルオロエチレンの生成量に対して0.001~0.01質量%の範囲」との数値限定には、臨界的意義があることが理解できる。
そして、甲1の記載からは、当業者は、式(a)のコモノマーの含有量の特定に臨界的意義があり、本件発明2で特定される含有量範囲とすることで、上述のような優れた効果が奏されることを予測できないし、甲2をはじめとする各甲号証を参酌しても同様である。
そうすると、甲2をはじめとする各甲号証を参酌しても、甲1に記載された発明に基いて、コモノマーが式(a)のコモノマーである場合の本件発明2について、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(イ)コモノマーが、式(b1)及び(b2)のコモノマーである場合の本件発明2について
コモノマーが、式(b1)及び(b2)のコモノマーである場合の本件発明2については、甲1には、相違点1’に関し、テトラフルオロエチレンと重合させるコモノマーとして、本件発明2で特定される式(b1)及び(b2)のコモノマーについての記載はないし、甲2にも記載されていないから、当業者は、甲1-1発明を、上記相違点に係る本件発明1の構成を備えたものとすることを動機付けられない。また、申立人が提出した他の各甲号証を参酌しても、同様である。
その上、本件特許明細書の【0029】には、(ア)で記載したとおりの記載があり当該段落の記載を裏付ける具体的実験例(MMDについての実施例3、7、8の記載、BVEについての実施例2の記載)があり、これらの記載からは、式(b1)及び(b2)のコモノマーを本件発明2で特定される極微量(0.001~0.01質量%)含有させて、上記相違点1’、2及び3に係る本件発明2の構成を備えたものとすることで、PTFE水性乳化液の安定性が加工性等に悪影響を及ぼさない程度に適度に高く、かつ、応力緩和時間を500秒以上である耐熱性を有する成形品が得られるという優れた効果が奏されることが理解でき、この点の効果は、甲1の記載からは予測できないし、甲2をはじめとする各甲号証を参酌しても同様である。
そうすると、甲2をはじめとする各甲号証を参酌しても、甲1に記載された発明に基いて、コモノマーが式(b1)及び(b2)のコモノマーである場合の本件発明2について、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
ウ 小結
以上のとおりであるから、甲2をはじめとする各甲号証を参酌しても、甲1に記載された発明に基いて、本件発明2について、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(2)本件発明8~11について
本件発明8と甲1-1発明、本件発明9~10と甲1-2発明、本件発明11と甲1-3発明とをそれぞれ対比すると、本件発明8~11と甲1に記載された発明は、少なくとも(1)で記載した相違点1’並びに第7の1.(1)アで記載した相違点2及び3で相違する。
そして、これらの相違点の判断については、(1)で記載したとおりであるから、(1)で記載したと同様の理由によって、甲2をはじめとする各甲号証を参酌しても、甲1に記載された発明に基いて、本件発明2について、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(3)第2群の本件発明に対する取消理由Aの判断のまとめ
以上のとおり、本件発明2、9~11は、甲1に記載された発明及び甲2に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないし、本件発明8は、甲1に記載された発明、甲2に記載の技術的事項、及び、周知技術(甲4及び甲5)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、請求項2、8~11に係る本件特許について、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものであるということはできない。
2)第3群の発明(本件発明3及び12~15)について
(1)本件発明3について
ア 対比
第7の1.(1)アでの対比を踏まえて本件発明3と甲1-1発明とを対比すると、両者は、第7の1.(1)アで記載した一致点で一致し、以下の相違点1’’並びに第7の1.(1)アで記載した相違点2及び3で相違する。
<相違点1’’>
テトラフルオロエチレンの乳化重合時に乳化重合系に含有させるコモノマーについて、本件発明3ではコモノマーが、「CH2=CH-(CF2)4F及びCH2=CH-(CF2)6Fからなる群より選ばれる一種以上からなる(ポリフルオロアルキル)エチレン(a)」と特定されているのに対して、甲1-1発明では、コモノマーが、「へキサフルオロプロピレン(HFP)、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PFAVE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、(パーフルオロアルキル)エチレン、フッ化ビニリデン(VdF)、パーフルオロ(アルケニルビニルエーテル)、VDF、パーフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)、パーフルオロ(4-アルキル-1,3-ジオキソール)の1種単独か2種以上からなる」と特定されている点。
イ 判断
本件発明3で特定されるコモノマーは、式(a)のコモノマーであり、上記相違点についての判断は、1)(1)イ(ア)で説示したとおりである。
よって、甲2をはじめとする各甲号証を参酌しても、甲1に記載された発明に基いて、本件発明3について、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(2)本件発明12~15について
本件発明12と甲1-1発明、本件発明13~14と甲1-2発明、本件発明15と甲1-3発明とをそれぞれ対比すると、本件発明12~15と甲1に記載された発明は、少なくとも(1)で記載した相違点1’’並びに第7の1.(1)アで記載した相違点2及び3で相違する。
そして、これらの相違点の判断については、(1)で記載したとおりであるから、(1)で記載したと同様の理由によって、甲2をはじめとする各甲号証を参酌しても、甲1に記載された発明に基いて、本件発明12~15について、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(3)第3群の発明に対する取消理由Aの判断のまとめ
以上のとおり、本件発明3、12~15は、甲1に記載された発明及び甲2に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないし、本件発明12は、甲1に記載された発明、甲2に記載の技術的事項、及び、周知技術(甲4及び甲5)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、請求項3、12~15に係る本件特許について、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものであるということはできない。
2.取消理由B(甲2を主たる引用文献とする進歩性;第2群の発明(本件発明2及び8~11)及び第3群の発明(本件発明3及び12~15))について
1)第2群の発明(本件発明2及び8~11)について
(1)本件発明2について
ア 対比
本件発明1は、上記第3に記載したとおりのものであり、甲2-1発明は、上記第6の4.に記載したとおりのものである。
そして、本件発明1と甲2-1発明とを、第7の2.(1)アでの対比を踏まえて対比すると、両者は、
<一致点>
「含フッ素乳化剤を用い、重合温度10~95℃でテトラフルオロエチレンを乳化重合し、平均一次粒子径が0.2~0.3μmであるポリテトラフルオロエチレン微粒子を含有する水性乳化液を得るポリテトラフルオロエチレン水性乳化液の製造方法であって、
テトラフルオロエチレンの乳化重合の開始時に、コモノマーを、
乳化重合系に含有させるポリテトラフルオロエチレン水性乳化液の製造方法。」
で、一致し、
第7の2.(1)アで記載した相違点5~7及び、以下の相違点10で相違する。
<相違点10>
テトラフルオロエチレンの乳化重合時に乳化重合系に含有させるコモノマーについて、本件発明2ではコモノマーが、「CH2=CH-(CF2)4F及びCH2=CH-(CF2)6Fからなる群より選ばれる一種以上からなる(ポリフルオロアルキル)エチレン(a)、及び/又は、CF2=CF-O-(CF2)2CF=CF2、及び、パーフルオロ(2-メチレン-4-メチル-1,3-ジオキソラン)からなる群から選ばれる少なくとも1種からなるコモノマー(b)」と特定されているのに対して、甲2-1発明では、コモノマーが、「パーフルオロ(メチルビニルエーテル)」(以下、「PMVE」ともいう。)である点。
イ 判断
(ア)コモノマーが、式(a)のコモノマーである場合の本件発明2について
事案に鑑み、相違点7から検討する。
相違点7は、第7の2.(1)アで記載した相違点7と同様であり、次のとおりである。
<相違点7>
乳化重合系に含有させるコモノマーの量について、本件発明2では、「最終的なポリテトラフルオロエチレンの生成量に対して0.001~0.01質量%の範囲にあって、かつ、得られるポリテトラフルオロエチレン水性乳化液の安定性時間が、前記一般式(1)で表わされる(ポリフルオロアルキル)エチレン(a)、及び/又は、前記コモノマー(b)を入れないこと以外は全く同じ条件で乳化重合して得られるポリテトラフルオロエチレン水性乳化液の値に比して20%以上向上し、かつ600秒以内となるように定めた量」と特定されているのに対して、甲2-1発明では、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)が、「微量」である「TFEの全重合量の0.001~0.03モル%」添加される点。
甲2には、本件発明2の「式(a)のコモノマー」を概念上含み得る微量共単量体である「一般式(II)の化合物(CH2=CX2X3)(式中、X2は、水素原子又はフッ素原子を表す。X3は、フッ素原子、-Rf2又は-ORf2を表す。Rf2は、炭素数1~10の直鎖状又は分岐状のパーフルオロアルキル基を表し、末端にフッ素原子又は塩素原子を有していてもよい。)で表される水素含有ビニル化合物」([0071])を包含する微量共単量体の含有量に関し、[0058]に、「微量共単量体は、ごく微量、即ち、上記TFEの全重合量の0.0001~0.04モル%添加するものである。上記微量共単量体は、上記範囲内であると、後述の凝集及び乾燥を行って得られる非溶融加工性PTFEファインパウダーのペースト押出時の押出加工性を下げることなく、延伸体としたときの引張り破断強度を優れたものにすることができるものである。好ましい下限は、0.001モル%であり、好ましい上限は、0.03モル%である。」と記載されているのみで、相違点7に係る本件発明2の構成である「最終的なポリテトラフルオロエチレンの生成量に対して0.001~0.01質量%の範囲」であり、かつ、「安定性時間が、・・・(ポリフルオロアルキル)エチレン(a)・・・を入れないこと以外は全く同じ条件で乳化重合して得られるポリテトラフルオロエチレン水性乳化液の値に比して20%以上向上し、かつ600秒以内となるように定めた量」とする点についての記載はない。
また、甲2には、PTFE水性乳化液の安定性についての記載はないし、耐熱性に関しても、[0043]には、「応力緩和時間についてのより好ましい下限は、410秒である。・・・650秒以下、更に550秒以下であっても、焼成時における延伸体の破断を抑制することができる」と記載され、実施例において、コモノマーがPMVEである場合についての結果が記載されるのみで、甲2の記載からは、コモノマー(微量単量体)を共重合したポリテトラフルオロエチレンにおいて、当該応力緩和時間を具体的にどのようにして達成するのかについての記載はないし、甲2には、式(a)に相当するコモノマーの量を、本件発明2のように、「PTFE水性乳化液の安定性が加工性等に悪影響を及ぼさない程度に適度に高く、耐熱性の高い成形品を得ることが可能」であるという効果を奏するものとする目的で、式(a)に相当するコモノマー本件発明2で特定される量(0.001~0.01質量%)含有させるものとすることの記載もない。
一方、本件特許明細書には、テトラフルオロエチレンと重合させるコモノマーの含有量に関連して、【0029】に、「・・・本発明者は、モノマー反応性比rTFEが上記範囲にある高反応性のコモノマーをTFEの乳化重合開始時に極微量添加することにより、界面活性能の低い含フッ素乳化剤を使用しても、PTFE水性乳化液の安定性が加工性等に悪影響を及ぼさない程度に適度に高く、耐熱性の高い成形品を得ることが可能な、高分子量のPTFE微粒子が分散したPTFE水性乳化液を製造することができることを見出した。」と記載されており、式(a)のコモノマーをTFEの乳化重合開始時に「極微量」添加して、上記相違点5~7及び10に係る本件発明2の構成を備えたものとすることで、「PTFE水性乳化液の安定性が加工性等に悪影響を及ぼさない程度に適度に高く、耐熱性の高い成形品を得ることが可能」であるという効果が奏される旨記載されている。
そして、1.1)(1)イ(ア)で説示したとおり、本件特許明細書には、当該【0029】の明細書の記載を裏付けるものとして、表1及び2に具体的実験例の記載があり、また、本件特許明細書の【0029】の記載を裏付ける更なる実験例が乙9に記載されており、これらの記載からは、式(a)のコモノマーを本件発明2で特定される極微量(0.001~0.01質量%)含有させた場合には、PTFE水性乳化液の安定性が加工性等に悪影響を及ぼさない程度に適度に高く、かつ、応力緩和時間を500秒以上である優れた耐熱性を有する成形品が得られるという優れた効果が奏されるが、含有量が本件発明2に特定されるコモノマー含有量の上限を超えた場合には、このような効果は発揮されないことが理解でき、本件発明2における式(a)のコモノマーの含有量についての、「最終的なポリテトラフルオロエチレンの生成量に対して0.001~0.01質量%の範囲」との数値限定には、臨界的意義があることが理解できる。
そして、甲2の記載からは、当業者は、式(a)のコモノマーの含有量の特定に臨界的意義があり、本件発明2で特定される含有量範囲とすることで、上述のような優れた効果が奏されることを予測できないし、甲1をはじめとする各甲号証を参酌しても同様である。
そうすると、甲1をはじめとする各甲号証を参酌しても、甲2に記載された発明に基いて、コモノマーが式(a)のコモノマーである場合の本件発明2について、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(イ)コモノマーが、式(b1)及び(b2)のコモノマーである場合の本件発明2について
相違点10に関し、甲2には、コモノマーが、式(b1)及び(b2)のコモノマーである場合については、記載されておらず、申立人が提出した甲1をはじめとする各甲号証の記載を検討しても、当業者は、甲2-1発明のパーフルオロ(メチルビニルエーテル)を式(b1)及び(b2)のコモノマーとして、相違点10に係る本件発明1の構成を備えたものとすることを動機付けられない。また、申立人が提出した他の各甲号証を参酌しても、同様である。
そうすると、他の相違点を検討するまでもなく、甲1をはじめとする各甲号証を参酌しても、甲2に記載された発明に基いて、コモノマーが式(b1)及び(b2)のコモノマーである場合の本件発明2について、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
その上、1.1)(1)イ(イ)で説示したとおり、本件特許明細書の記載によれば、本件発明2により、甲1の記載や甲2をはじめとする各甲号証からは予測できない優れた効果が奏されるものである。
そうすると、甲1をはじめとする各甲号証を参酌しても、甲2に記載された発明に基いて、コモノマーが式(b1)及び(b2)のコモノマーである場合の本件発明2について、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
ウ 小結
以上のとおりであるから、甲1をはじめとする各甲号証を参酌しても、甲2に記載された発明に基いて、本件発明2について、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(2)本件発明8~11について
本件発明8と甲2-1発明、本件発明9~10と甲2-2発明、本件発明11と甲2-3発明とをそれぞれ対比すると、本件発明8~11と甲2に記載された発明は、少なくとも(1)で記載した相違点5~7及び10で相違する。
そして、これらの相違点の判断については、(1)で記載したとおりであるから、(1)で記載したと同様の理由によって、本件発明8~11は、甲2に記載された発明及び甲1、4~9に示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)第2群の発明に対する取消理由Bの判断のまとめ
以上のとおり、本件発明2、8~11は、甲2に記載された発明及び甲1、4~9に示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、請求項2、8~11に係る本件特許について、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものであるということはできない。
2)第3群の発明(本件発明3及び12~15)について
(1)本件発明3について
ア 対比
第7の2.(1)ア及び1)(1)アでの対比を踏まえて本件発明3と甲2-1発明とを対比すると、両者は第7の2.(1)アで記載した一致点で一致し、以下の相違点7’及び相違点10’並びに第7の2.(1)アで記載した相違点5及び6で相違する。
<相違点7’>
乳化重合系に含有させるコモノマーの量について、本件発明3では、「最終的なポリテトラフルオロエチレンの生成量に対して0.001~0.01質量%の範囲にあって、かつ、得られるポリテトラフルオロエチレン水性乳化液の安定性時間が、前記コモノマーを入れないこと以外は全く同じ条件で乳化重合して得られるポリテトラフルオロエチレン水性乳化液の値に比して20%以上向上し、かつ600秒以内となるように定めた量」と特定されているのに対して、甲2-1発明では、PMVE(パーフルオロ(メチルビニルエーテル))が、「微量」である「TFEの全重合量の0.001~0.03モル%」添加される点。
<相違点10’>
テトラフルオロエチレンの乳化重合時に乳化重合系に含有させるコモノマーについて、本件発明3では「CH2=CH-(CF2)4F及びCH2=CH-(CF2)6Fからなる群より選ばれる一種以上」と特定されているのに対して、甲2-1発明では、コモノマーが、PMVEである点。
イ 判断
本件発明3の相違点10’に係るコモノマーは、式(a)のコモノマーであり、また、上記相違点7’についての判断は、1)(1)イ(ア)で相違点7について説示したと同様である。
よって、甲1をはじめとする各甲号証を参酌しても、甲2に記載された発明に基いて、コモノマーが式(a)のコモノマーである場合の本件発明3について、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(2)本件発明12~15について
本件発明12と甲2-1発明、本件発明13~14と甲2-2発明、本件発明15と甲2-3発明とをそれぞれ対比すると、本件発明12~15と甲2に記載された発明は、少なくとも(1)で記載した相違点5、6、7’及び10’で相違する。
そして、これらの相違点の判断については、(1)で記載したとおりであるから、(1)で記載したと同様の理由によって、本件発明12~15は、甲1をはじめとする各甲号証を参酌しても、甲2に記載された発明に基いて、本件発明3について、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(3)第3群の本件発明に対する取消理由Bの判断のまとめ
以上のとおり、本件発明3、12~15は、甲2に記載された発明及び甲1、4~9に示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、請求項3、12~15に係る本件特許について、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものであるということはできない。
3.取消理由C1,C2(明確性)及び取消理由D1,D2(実施可能要件)について
(1)取消理由C1(明確性)及びD1(実施可能要件)について
取消理由C1及びD1は、要するに、本件特許明細書の記載を参酌しても、訂正前の請求項1~7に係る発明の「モノマー反応性比rTFE」の測定方法が理解できないことから、「モノマー反応性比rTFEが0.1~8であって、下記一般式(2)、(3)、(4)のいずれかで表わされる化合物、及び、パーフルオロ(2-メチレン-4-メチル-1,3-ジオキソラン)からなる群から選ばれる少なくとも1種からなるコモノマー(b)」が、本件特許明細書にモノマー反応性比rTFEの値が記載されていない「一般式(2)、(3)、(4)のいずれかで表わされる化合物」である場合の任意の化合物を、当業者は理解できない点で、「モノマー反応性比rTFE」で特定される訂正前の請求項1~7に係る発明は明確ではないし、当業者が、本件特許明細書の記載に基づいて、「モノマー反応性比rTFE」で特定される訂正前の請求項1~7に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえないというものである。
そして、取消理由(決定の予告)で指摘していたとおり、本件特許明細書の【0020】~【0027】及びこれらの段落で引用されている各種文献(甲10、甲12及び甲13)によれば、本件特許明細書では、「モノマー反応性比rTFE」の値を算出する方法は特に限定されていないと認められるところ、本件特許の原出願の出願当時、反応性比rの値の求め方には、ファインマン-ロス式より算出する方法等複数の式による方法が知られており(特許権者が提出した乙第2号証;「新訂高分子合成反応」日刊工業新聞社、昭和54年11月20日発行の59~63頁)、また、各式から算出される結果は必ずしも一致しないことが技術常識であったし、同じ式により算出する場合であっても、温度条件で値が異なる場合があることも知られ(申立人が提出した参考資料1(木村正生ら、「スチレン系耐熱性樹脂(MSα)の開発」、新日鉄技報、第349号、1993年、73~77頁の表1)参照。)、テトラフルオロエチレン共重合体の場合も、甲12の図3の記載や甲13の2444頁に記載のデータからファインマン-ロスの式に従って算出されるrTFEの値から理解できるように、算出方法の違いや共重合する際の圧力・温度によりモノマー反応性比rTFEが変化することが知られていたから、当業者は、訂正前の「モノマー反応性比rTFE」で特定される「一般式(2)、(3)、(4)のいずれかで表わされる化合物」を、一義的に理解することはできない点で、訂正前の請求項1~7に係る発明は、不明確であり、また、実施可能要件を満足しないものとなっていた。
しかしながら、訂正により、「モノマー反応性比rTFE」は、訂正後の本件発明1~15の発明特定事項ではなくなった。
したがって、本件特許明細書の記載及び本件特許の原出願の出願時の技術常識を参酌して、特定の「モノマー反応性比rTFE」を有する化合物を当業者が理解できないとしても、訂正後の本件発明1~15は、明確であるし、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、当業者が訂正後の本件発明1~15を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものといえる。
よって、平成29年4月10日付け取消理由通知及び同年9月8日付けの取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由C1及びD1によっては、訂正後の請求項1~15に係る本件特許を取り消すことはできない。
(2)取消理由C2(明確性)及びD2(実施可能要件)について
取消理由C2及びD2は、要するに、本件特許明細書の記載を参酌しても、特許時の本願請求項1~7に係る発明の「安定性時間」の測定方法が理解できないことから、「安定性時間」で特定される特許時の本願請求項1~7に係る発明は明確ではないし、当業者が、本件特許明細書の記載に基づいて、「安定性時間」で特定される特許時の本願請求項1~7に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえないというものである。
そして、これらの取消理由は、より具体的には、「安定性時間の測定方法」として、特許時の請求項1及び 本件特許明細書の【0076】には、以下のように定義されているところ、この定義の中の「ポリテトラフルオロエチレン水性乳化液が破壊されて、疎水化されたポリテトラフルオロエチレンが生じるまでの時間を安定性時間とする」なる記載に関し、本件特許明細書には、「疎水化されたポリテトラフルオロエチレンが生じる」現象についての詳しい説明も、「疎水化されたポリテトラフルオロエチレンが生じるまでの時間」の測定についての具体的な説明も記載されておらず、また、本件特許の原出願の出願時の技術常識からも、こられは理解できないから、「安定性時間」で特定される特許時の請求項1~7に係る発明は明確ではないし、当業者が、本件特許明細書の記載に基づいて、「安定性時間」で特定される特許時の本願請求項1~7に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえないというものである。
「SUS304の材質で、内径12cmの円筒状容器に、厚み2.9mm、幅2.5cm、長さ15cmのバッフルを2枚、底部から2.5cm上げて対称的に熔接して用いる。PTFE水性乳化液の固形分濃度を20%に調合して総量800gを仕込み、温度を23±1℃に調整する。そして、内径8.0mmのシャフトに取り付けた厚み1.2mm、幅1.3cm、長さ9.7cm、回転方向へ30°傾けた水平パドルを、底部から5mm上げて設置し、500rpmの条件で、ポリテトラフルオロエチレン水性乳化液が破壊されて、疎水化されたポリテトラフルオロエチレンが生じるまでの時間を安定性時間とする。」(下線は、合議体が付した。以下、同様。)
そこで、検討すると、本件特許明細書の【0056】に、「安定性時間」を特定する技術的意義について、「安定化時間の向上が20%未満では、PTFE水性乳化液の安定化の効果が不充分である。また、安定性時間が600秒を超えると、安定過ぎるので、PTFE水性乳化液に各種水性乳化液安定化剤を添加して濃縮する際の時間や、PTFEファインパウダーを得るまでの凝集疎水化時間が、長くなるので生産性上不利である。」と記載されるように、本件発明1等で「安定性時間」として特定される「ポリテトラフルオロエチレン水性乳化液が破壊されて、疎水化されたポリテトラフルオロエチレンが生じるまでの時間」であるが、この「ポリテトラフルオロエチレン水性乳化液が破壊されて、疎水化されたポリテトラフルオロエチレンが生じる」現象は、PTFE水性乳化液から、PTFEファインパウダーを得る際に「凝集疎水化」されるのと同じ現象であるといえる。
ここで、PTFE水性乳化液から、PTFEファインパウダーを得る技術に関し、化学技術に関する包括的な百科事典であり、本件特許出願時の技術常識を示す「KIRK-OTHMER ENCYCLOPEDIA OF CHEMICAL TECHNOLOGY FOURTH EDITION,1994,Vol.11」(p621,624~625は、特許権者が提出した乙5である。)には、p624~625の「Fine Powder Resins(ファインパウダー樹脂)」の項目に、次のとおり記載されている。(乙5は英語で記載されているので、以下は、特許権者による訳文を記載する。なお、乙5全体の記載については、第6の6.の記載を参照。)
「ファインパウダー樹脂は、TFEを開始剤と乳化剤を用いて水性媒体中で重合して製造される(・・・)。重合機構は、典型的な乳化系ではないが、乳化重合の原理の一部に支配される。・・・分散液が、重合中早期の凝集を防ぐように十分に安定であるが、次にファインパウダーへと凝集できるくらい不安定であることを保持することが特に重要である(・・・)。
ゆるやかな撹拌が、分散液の安定性を確実にする。・・・粒子の大部分は重合工程の初期に形成され、粒子は、バッチが進むに従い大きくなる・・・。
機械的撹拌を継続することよって、薄い分散液は急速に粘度が高くなりゲル状基質となり、そして、凝集して、水性媒体に浮遊する撥水性の凝集物となる。凝集物は、温和な条件で乾燥され;剪断は避けなければならない。」(下線は、合議体が付した。また、訳文中TFEは、テトラフルオロエチレンを意味する。)
上記のとおり、乙5には、乳化重合で得られたポリテトラフルオロエチレン水性乳化分散液からファインパウダー樹脂を得る工程に関し、「機械的撹拌を継続することよって、薄い分散液は急速に粘度が高くなりゲル状基質となり、そして、凝集して、水性媒体に浮遊する撥水性の凝集物となる。」と記載されており、本件特許出願時の技術常識によれば、乳化重合により得られたPTFEの分散液を攪拌すると、ゲル状態を経て、PTFEが凝集し、撥水性の凝集物として水性媒体の上方に浮き上がることは良く知られた現象であり、当業者は、「撥水性の凝集物」がどのような状態のものであるかを理解することができると認められる。そして、乙5に記載される「(水性媒体の上方に浮き上がる)撥水性の凝集物」は、本件発明1~15の「疎水化されたポリテトラフルオロエチレン」に相当するものであるから、乙5に示される技術常識を認識している当業者であれは、本件発明1~15における「安定性時間」の測定方法に関し、「疎水化されたポリテトラフルオロエチレンが生じる」現象、及び、「疎水化されたポリテトラフルオロエチレンが生じるまでの時間」を理解することができる。
そうすると、本件特許出願時の技術常識を有する当業者であれば、本件発明1等に特定される「安定性時間」の測定方法を理解できるといえ、「安定性時間」で特定される訂正後の本件発明1~15は明確であるし、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、当業者が訂正後の本件発明1~15の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるといえる。
また、申立人は、甲15に、「攪拌だけによって凝析を行う場合、その時期が一定しないことが多い」(4欄37~39行)と記載されている点をあげて、「ポリテトラフルオロエチレン水性乳化液が破壊されて、疎水化されたポリテトラフルオロエチレンが生じる」時点がいずれの時点であったとしても、「ポリテトラフルオロエチレンが生じる」という時点を明確に把握することができない旨主張する(申立書の52頁)。しかしながら、上記引用箇所は、「本発明の方法では、通常のPTFEの水分散液の凝集の場合と同様、攪拌を続けるだけで凝析を起こすことができるけれども、凝析に長時間を要することがあり、また、」の後に続けて記載されており、「攪拌だけによって凝析を行う場合、その時期が一定しないことが多い」のは、甲15に記載されている、ポリイミド樹脂等の充填材とPTFEの共凝集の場合(請求項1)のことであり、通常のPTFEの水分散液の凝集の場合についての記載ではないから、申立人の主張は採用できない。
よって、平成29年4月10日付け取消理由通知に記載した取消理由C2及びD2によっても、訂正後の請求項1~15に係る本件特許を取り消すことはできない。
(3)取消理由C1,C2及びD1,D2についてのまとめ
以上のとおり、本件発明1~15は、明確であり、また、実施可能要件を満足するから、本件発明1~15に係る特許は、特許法第36条第4項第1号及び同法同条第6項第2号に規定する要件を満たしており、平成29年4月10日付け取消理由通知及び同年9月8日付けの取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由によっては、本件発明1~15に係る本件特許を取り消すことはできない。
第9 取消理由通知書(平成29年4月10日付け、及び、同年9月8日付け(決定の予告))において採用しなかった特許異議申立理由について
申立人が申立書において主張した取消理由は、第1で記載した取消理由1~5であるが、このうち、甲1又甲2を主たる引用文献とする特許法第29条第2項に基づく取消理由(取消理由1及び2)についての判断は、第7並びに第8の1.及び2.で、取消理由A及びBに対する判断で示したとおりである。
また、特許法第36条第4項第1号に基づく取消理由(取消理由4)、及び、同法第36条第6項第2号に基づく取消理由(取消理由5)についての判断は、第8の3.で、取消理由C1、C2,D1,D2に対する判断で示したとおりである。
そこで、以下に、申立人が申立書において主張した取消理由であって、取消理由通知で採用しなかった取消理由3について検討する。
取消理由3は甲3を主たる引用文献とし、甲1、2及び4~9を副引例とする特許法第29条第2項に基づく取消理由である。
1.甲3号証の記載及び甲3に記載された発明
(1)甲3の記載
「【特許請求の範囲】
【請求項1】テトラフルオロエチレンと一般式CH2=CH-Rf(ただし、Rfは炭素数が1~10のペルフルオロアルキル基)で表されるフッ素化コモノマとの重合体であって、フッ素化コモノマに基づく重合単位の含有量が0.005~0.05モル%であることを特徴とするテトラフルオロエチレン系共重合体。
【請求項2】フッ素化コモノマが(ペルフルオロブチル)エチレンである請求項1に記載のテトラフルオロエチレン系共重合体。
・・・
【請求項4】標準比重が2.155より小さい重合体である請求項1、2または3に記載のテトラフルオロエチレン系共重合体。
【請求項5】乳化重合により生成する重合体微粒子のコア部分のフッ素化コモノマに基づく重合単位の含有量が、シェル部分のフッ素化コモノマに基づく重合単位の含有量よりも大きい構造を有する重合体微粒子から得られる請求項1、2、3または4に記載のテトラフルオロエチレン系共重合体からなる粉体。
【請求項6】請求項5に記載のテトラフルオロエチレン系共重合体からなる粉体をペースト押し出し後、250℃以上の温度で延伸されたものであるごとを特徴とする重合体の多孔質体。」
「本発明のPTFEは、PTFEの製造に通常に使用される乳化重合により製造される。」(【0016】)
「オートクレーブに水、通常の遊離基重合開始剤、凝集物の生成を抑制するためのパラフィンワックスおよび乳化剤を仕込んだ後、撹拌しながらTFEを圧入する。この後、オートクレーブを穏やかに撹拌し、適当な温度および圧力で重合を行う。重合完了時に得られる乳化分散液はそのままでも使用できるが、一般に成形用途には、通常重合体微粒子を公知の方法によって凝集させて得られるファインパウダを使用する。」(【0017】)
「本発明のPTFEの製造においては、フッ素化コモノマを連続添加や途中添加を行わず、初期に一括して必要量だけ添加することが好ましい。初期一括添加することで、重合初期に生成する重合体微粒子のコア部のフッ素化コモノマに基づく重合単位の割合が高く、重合の進行とともに徐々にその割合が低下し、重合終期の重合体微粒子のシェル部では実質的にフッ素化コモノマを含まないホモポリマが生成する。このような構造は、延伸性、延伸加工品の物性の観点で好ましい。」(【0018】)
「乳化剤には、連鎖移動に関与しないペルフルオロアルカンカルボン酸の塩またはペルフルオロアルカンスルホン酸の塩を使用できる。」(【0023】)
(2)甲3に記載された発明
上記(1)の記載によれば、甲3には以下の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。
「ペルフルオロアルカンカルボン酸の塩を仕込んだ後、撹拌しながらTFEを圧入し、乳化重合を行い、重合体微粒子を含む乳化分散液を得る変性PTFEの乳化分散液の製造方法であって、
初期に一括して、CH2=CH-Rf(ただし、Rfは炭素数が1~10のペルフルオロアルキル基)で表されるフッ素化コモノマを、変性PTFE中0.005~0.05モル%の範囲の量で、添加する変性PTFEの乳化分散液の製造方法。」
2.対比判断
(1)本件発明1、4~7について
本件発明1と甲3発明を対比すると、両者は、
<一致点>
「含フッ素乳化剤を用い、テトラフルオロエチレンを乳化重合し、ポリテトラフルオロエチレン微粒子を含有する水性乳化液を得るポリテトラフルオロエチレン水性乳化液の製造方法であって、
テトラフルオロエチレンの乳化重合の開始時に、(ポリフルオロアルキル)エチレンコモノマーを、乳化重合系に含有させることを特徴とするポリテトラフルオロエチレン水性乳化液の製造方法。」
で、一致し、少なくとも、以下の相違点で相違する。
<相違点11>
テトラフルオロエチレンの乳化重合時に乳化重合系に含有させる(ポリフルオロアルキル)エチレンコモノマーについて、本件発明1では、「CH2=CH-(CF2)4F及びCH2=CH-(CF2)6Fからなる群より選ばれる一種以上からなる(ポリフルオロアルキル)エチレン(a)」と特定され、乳化重合系に含有させるコモノマーの量が、少なくとも、「最終的なポリテトラフルオロエチレンの生成量に対して0.001~0.01質量%の範囲」であると特定されているのに対して、甲3発明(1)では、コモノマーが、「CH2=CH-Rf(ただし、Rfは炭素数が1~10のペルフルオロアルキル基)」と特定され、乳化重合系に含有させるコモノマーの量は、「変性PTFE中0.005~0.05モル%の範囲の量」と特定されている点。
ここで、本件発明1のコモノマーである「CH2=CH-(CF2)4F」及び「CH2=CH-(CF2)6F」は、それぞれ、甲3発明の、「CH2=CH-Rf(ただし、Rfは炭素数が1~10のペルフルオロアルキル基)」において、Rfが炭素数が4及び6のペルフルオロアルキル基である場合に相当する。
そして、甲3の請求項2で特定されるコモノマ-「(ペルフルオロブチル)エチレン」(本件発明1の「CH2=CH-(CF2)4F」に相当する。以下、「PFBE」と記載する。)の場合、重合体中のPFBEに基づく重合単位の含量が「0.005~0.05モル%」である変性PTFEは、申立人が申立書の45頁でも記載するとおり、0.012~0.115質量%であり、本件発明1で特定される含有量「0.001~0.01質量%の範囲」を超えているし、また、甲3発明の(ポリフルオロアルキル)エチレンコモノマーとして本件発明1の「CH2=CH-(CF2)6F」を採用した場合には、この下限値はさらに大きくなり、本件発明1の範囲をより大きく超える。
また、(ポリフルオロアルキル)エチレンコモノマーの含有量に関し、甲3の【0012】には、「本発明におけるフッ素化コモノマに基づく重合単位の含有量は、延伸加工性の観点から厳密に制御される必要がある。含有量は変性PTFE中0.005~0.05モル%の範囲である。0.05モル%を超えるとポリマの結晶性が微妙に低下し、ペースト押し出し圧は低下するが延伸加工性が著しく低下する。」と記載され、また、【0054】の表1及び比較例に相当する[例8](【0053】)では、PFBEが重合体中のPFBEに基づく重合単位の含量が0.004モル%である変性PTFE(これは、換算すると、0.01重量%となる。)が記載されており、変性PTFE中の含有量が0.005~0.05モル%の範囲の実施例に相当する他の具体例に比べて、均一性及び強度が低下して延伸加工性が劣る結果となっている。
そうすると、甲3の記載からは、甲3発明を、上記相違点11に係る本件発明1の構成を備えたものとすることを当業者は動機付けられないし、申立人が提出した甲1、2及び4~9を参酌しても、同様である。
よって、少なくとも上記の相違点で甲3発明と異なる本件発明1が、甲3に記載された発明及び甲1、2及び4~9に記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(2)本件発明4~7について
本件発明4~7は、請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項に係る発明であるから、(1)で説示したと同様の理由により、本件発明4~7について、甲3に記載された発明及び甲1、2及び4~9に記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものとはいえない。
(3)本件発明2、8~11について
本件発明2と甲3発明とを対比すると、一致点は(1)で記載した一致点と同じである。
そして、本件発明2と甲3発明とは、少なくとも、(1)で指摘した相違点で相違しており、甲3発明を、当該相違点に係る本件発明2の構成を備えたものとすることを当業者は動機付けられないことも(1)で記載したとおりである。
よって、少なくとも上記の相違点で甲3発明と異なる本件発明2について、甲3に記載された発明及び甲1、2及び4~9に記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
請求項2の記載を直接又は間接的に引用する請求項に係る発明である本件発明8~11についても同様である。
(4)本件発明3、12~15について
本件発明3と甲3発明とを対比すると、一致点は(1)で記載した一致点と同じである。
そして、本件発明3と甲3発明とは、少なくとも、(1)で指摘した相違点で相違しており、甲3発明を、当該相違点に係る本件発明3の構成を備えたものとすることを当業者は動機付けられないことも(1)で記載したとおりである。
よって、少なくとも上記の相違点で甲3発明と異なる本件発明3について、甲3に記載された発明及び甲1、2及び4~9に記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
請求項3の記載を直接又は間接的に引用する請求項に係る発明である本件発明12~15についても同様である。
(5)むすび
以上のとおり、申立人が申立書において主張する取消理由3には理由がなく、申立人が主張する取消理由3によっては、訂正後の請求項1~15に係る本件特許を取り消すことはできない。
第10 むすび
以上のとおり、請求項1、5~7に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、請求項4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載の技術的事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、請求項1、4~7に係る発明は、甲第2号証に記載された発明、甲第2号証に記載の技術的事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、4~7に係る発明は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、請求項1、4~7に係る本件特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
また、本件請求項2、8~11及び3、12~15に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、取り消すことはできない。
さらに、他に本件請求項2、8~11及び3、12~15に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2017-700028