特許拒絶査定不服審判
2017-014988
生理活性アルファベータペプチドを作製する方法
- 審判番号
- 2017-014988
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-143213外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年10月06日
- 審決日
- 2018年08月09日
- 公報発行日
- 2019年02月22日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ウィスコンシン アルムニ リサーチ ファンデイション
- 【請求人代理人】伊東 忠重
- 【請求人代理人】伊東 忠彦
- 【請求人代理人】大貫 進介
- 分類
- P18 .121-Z (C07K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第44条第1項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2015-143213「生理活性アルファベータペプチドを作製する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年11月 5日出願公開、特開2015-193648〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯、本願発明
本願は、平成27年7月17日の出願であって、平成21年10月14日を国際出願日とする特願2011-532211号(優先権主張 平成20年10月17日 米国,平成21年7月29日 米国,平成21年10月14日 米国)の一部を特許法第44条第1項の規定に基づいて分割出願したものであり、 平成29年5月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月6日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに同日付けで手続補正がなされたものである。
そして、本願の請求項1~15に係る発明は、平成29年10月6日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~15に記載の事項により特定される発明であり、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下とおりのものと認める。
「【請求項1】
SEQ ID番号:4~11及び25~30に示された少なくとも1つの一次アミノ酸配列を含む単離された非天然型ポリペプチド。」
第2 原査定の理由
平成29年5月30日付け拒絶査定(原査定)は、本願の請求項1~15に係る発明は、引用文献2、3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。
第3 当審の判断
1.引用文献、引用発明
(1)引用文献2
原査定で引用文献2として引用された、本願優先日前に頒布された刊行物である PNAS,2008年 7月 8日,Vol. 105, No. 27,pp.9151-9156 には、以下の事項が記載されている。なお、英文であるから当審による訳文を記載する。また、下線は強調のために当審で付したものである。
(1-1)「ポリペプチド立体配座が側鎖の組成および配列に依存する程度は広く研究されているが、α-アミノ酸骨格を維持することの重要性についてはあまり知られていない。 ここでは、α-およびβ-アミノ酸残基の異なる反復パターンを特徴とするが、不変の側鎖配列を特徴とする主鎖を有する一連のペプチドを調べる。純粋なα-バックボーンにおいて、この配列は、非常に安定4ヘリックスバンドル四次構造を形成する、以前に研究されたペプチドGCN4-pLIに対応する。溶液中の物理的特徴および結晶学的構造決定は、種々のα/β-ペプチド主鎖がαプロトタイプと同様の配列エンコードされた四次構造を採用できることを示している。β-残基取り込み時のらせん束安定性の損失がある。しかしながら、四次構造の安定性は、β-残基含有量の単純な関数ではない。循環的に拘束されたβ-アミノ酸残基は、α/β-ペプチドGCN4-pLI類似体の折りたたみを安定化させ、環式残基の非存在下で優勢に折り畳まれた主鎖への四次構造形成を回復させることができる。 我々の結果は、一連のアミノ酸側鎖にコードされた構造情報を明らかにすることができる骨格組成に関して、驚くべき程度の可塑性を示している。これらの知見は、タンパク質の構造的および機能的特性を模倣する非天然オリゴマーの設計の枠組みを提供する。」(9151頁左欄1行~23行)
(1-2)「ペプチドとタンパク質に関する過去の研究から、α-残基からβ-残基への置換を含む元の配列の骨格の限定的な修飾は、天然の構造と機能を損なうことなく可能であることが示されている(11-13)。さらに最近、我々は、α-及びβ-アミノ酸残基がααβαααβというパターンで混在する配列からなる特定の非天然型の骨格は、α-ペプチドの側鎖配列の親ペプチドの折り畳みと自己会合の挙動を部分的に模倣することを示した(14,15)。」(9151頁左欄最終段落4行~最終行)
(1-3)「ここでは、異なるα/β-アミノ酸の組み合わせのコンテクストにおいて、骨格の組成と配列で規定される折り畳みとの関係を調べることを目的とし、α-残基からなる骨格では4ヘリックスバンドルを形成する側鎖の配列を有することが知られている33残基からなるペプチドについて、溶液中及び結晶状態における折りたたみと自己会合を比較した。これらの“α/β-ペプチド”は、様々なα-及びβ-アミノ酸残基を含む。我々の結果は、ヘテロなα/β骨格がヘリックスバンドル四次構造をとる能力は、特定の側鎖の配列により記述されるように、様々なα/β骨格のパターンの一般的な特徴であり、会合のモードや傾向に関し、個々の骨格の間で興味深い多様性を示す。加えて、我々は、β-残基のコンフォメーションの傾向についての基本的な理解に基づき、これらの非天然型のサブユニットで利用可能なコンフォメーションを予め固定する有用な手法の利点を活かして、四次構造の安定性を高められることを見出した。」 (9151頁右欄2段落)
(1-4)「結論 本発明者らは、αペプチドプロトタイプの一次側鎖配列を示す多様なα/β-ペプチド骨格においてフォールディングおよび自己集合を実証した。オリゴマー骨格3つ、ααβαααβ、αααβおよびααβにおいて、系統的なα→β置換は、プロトタイプ配列によってコードされる四次構造の忠実な模倣につながる可能性がある。・・・・BH3ドメインに基づくα/β-ペプチドを用いた最近の機能指向研究は、ここに例示されたタイプの単純な配列ベースの設計によって調製されたα/β-ペプチドの性質が与えられたシーケンス内で主鎖反復のフレームシフトに依存することを示している(15)。配列ベースの骨格修飾の継続的な探索は、骨格組成、側鎖配列および折りたたみの間の関係のより良好な理解につながり、タンパク質の構造的および機能的複雑性を模倣する非天然オリゴマーの設計を最終的に可能にするであろう。重要な非天然アミノ酸含量を有するペプチドのリボソーム合成の最近の進歩は、この点で興味深い(35)。」(9155頁左欄最終段落1行~右欄10行)
(2)引用文献3
原査定で引用文献3として引用された、本願優先日前に頒布された刊行物である PNAS,2007年,Vol. 104, No. 31,pp.12772-12777 には、以下の事項が記載されている。なお、英文であるから当審による訳文を記載する。また、下線は強調のために当審で付したものである。
(2-1)「HIVに対する最初に認可された融合阻害剤(FI)であるエンフビルチド(ENF)は、gp41のヘプタリピート1(HR1)領域に結合し、ウイルス-細胞融合に必要であるHR1およびHR2ドメインの相互作用を妨げることにより作用する、36アミノ酸ペプチドである。ENFに対する治療的に獲得された耐性は、ENF耐性ウイルスに対する活性および改善された耐久性を有するFI治療を創出する必要性を強調する。合理的な設計を用いて、我々は、らせん構造が増加し、非常に高いHR1/HR2バンドル安定性を有する一連のオリゴマーHR2ペプチドを作製した。」(12772頁左欄1~9行)
(2-2)「生物物理学および構造解析は、HR2ペプチドが典型的には溶液中で構造化されていないが、結合時にα-ヘリックス構造をとることを示している(5,12,13)。さらに、いくつかのグループは、らせん構造を安定化するモチーフを含むペプチドの抗ウイルス活性の増加を実証している(9,10,14,15)。gp41由来のペプチドにおけるらせん構造を安定化させるために種々の共有結合ストラテジーが用いられている(10,16)。しかしながら、これらの合成アプローチは、ペプチド治療薬の大規模製造に適していない可能性がある。 タンパク質工学によってらせん構造を増加させるためのいくつかの戦略が存在する。 αヘリックスの安定性を支配する規則が広く研究されており、アミノ酸のヘリカル傾向を推定するために様々な方法が用いられている(17?20)。イオン対相互作用、すなわち「塩橋」の導入は、ペプチド中のらせん構造を増加させ、コイル状コイルを安定化させることも示唆されている(21-24)。 これらの非共有結合法のいくつかは、単量体HR2ペプチドの抗ウイルス活性を増強することに成功している(15,25)。
合理的な設計を用いて、我々は、安定したオリゴマー構造に自己会合する非常に増強されたらせん構造を有する一連のHR2ペプチドを設計した。このペプチドは、HR1標的に対する高い親和性、HR2耐性ウイルスに対する強力な抗ウイルス活性、およびカニクイザルにおける改善された薬物動態を有することが示されている。 興味深いことに、ウイルスは、操作されたペプチドに対する感受性を低下させるためにより多くの突然変異を必要とするようであり、これらの突然変異の活性への影響はENFで観察されるものよりも顕著に低い。まとめると、これらのペプチドは、さらなる臨床開発にとって魅力的である。」(12772頁左欄下から2行~右欄2段落)
(2-3)「結果
HR2ペプチドのヘリックス安定化。ペプチド設計はT-651およびT-2410で開始し、ペプチドはENF由来のものよりもN末端側のgp41HR2領域由来である(図1)。」
(2-4)「
図1. ヘリックス安定化オリゴマーHR2ペプチドの設計。T-651アナログ、T-2410から出発して、荷電残基、アラニンおよび疎水性残基を加えて、自己会合型ヘリックスHR2ペプチドを生成した。下線を引いた残基は、以前のペプチドからの変化を示す。 円二色性によって決定されるヘリシティの百分率は、各設計について示される。」(12773頁左欄、図1)
(2-5)「いくつかのアミノ酸置換を用いてT-2410のらせん構造を増加させた( 図1 )。」(12773頁左欄6~7行)
(2-6)「表1 設計されたペプチドの配列、生物物理学的特性、薬物動態、および抗ウイルス活性
(3)引用発明
上記(2)の(2-1)~(2-3)、(2-6)より、引用文献3の表1の上から8番目にpeptide2635として記載されるポリペプチド(T-2635)は、gp41HR2領域に由来するHR2ペプチド(T-651、T-2410)に基づいて、図1に示されるような合理的な設計により作製されたものであり、ENF耐性のHIV(ヒト免疫不全ウイルス)に対する活性および改善された耐久性を有し、増強されたらせん構造を有し、高いHR1/HR2バンドル安定性を有する改変HR2ペプチドであり、ENFと同様にgp41のHR1領域に結合してHR1/HR2バンドルを形成し、HIV-細胞融合を阻害するものと認められる。
したがって、引用文献3には、
「TTWEAWDRAIAEYAARIEALIRAAQEQQEKNEAALRELのアミノ酸配列を有する、ヒト免疫不全ウイルス-細胞融合を阻害するペプチド、T-2635。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
2.対比
本願発明のうち、一次アミノ酸配列がSEQ ID番号:4である場合の本願発明と、引用発明を対比する。
本願発明に特定されるSEQ ID番号:4のアミノ酸配列とは、TTWEAWDRAIAEYAARIEALIRAAQEQQEKNEAALRELのアミノ酸配列において、一番目のT、5番目のA、8番目のR、12番目のE、15番目のA、19番目のA、22番目のR、26番目のE、29番目のE、33番目のA、36番目のRが、それぞれβ-アミノ酸残基であり、それ以外のアミノ酸残基がα-アミノ酸残基であるアミノ酸配列であると認められる。
そして、SEQ ID番号:4のアミノ酸配列は、特定の位置のアミノ酸残基がβ-アミノ酸残基である点を除けば、引用発明のアミノ酸配列と同じ配列である。
また、引用発明のT-2635は、上記(2)の(2-4)、(2-5)のとおり、天然のHR2ペプチドのアミノ酸残基を通常のタンパク質を構成するアミノ酸に置換したものであるから、全てα-アミノ酸残基からなる、単離されたポリペプチドであると認められる。
したがって、両者は、TTWEAWDRAIAEYAARIEALIRAAQEQQEKNEAALRELのアミノ酸配列を有する、単離されたポリペプチドである点で一致し、以下の点で相違していると認められる。
(相違点)
本願発明は、アミノ酸配列の一番目のT、5番目のA、8番目のR、12番目のE、15番目のA、19番目のA、22番目のR、26番目のE、29番目のE、33番目のA、36番目のRが、それぞれβ-アミノ酸残基であり、その他がα-アミノ酸残基であって、非天然型であるのに対して、引用発明は、アミノ酸配列のアミノ酸残基が全てα-アミノ酸残基である点。
3.当審の判断
引用発明のT-2635は、引用文献3の図1に示されるような合理的な設計を用いて、天然のHR2に由来するポリペプチドをヘリックス構造を増強するように改変し、その結果、高いHR1/HR2バンドル安定性を有するようにしたHR2ポリペプチド改変体であると認められる。
これに対して、引用文献2は、4ヘリックスバンドル四次構造を形成するポリペプチド(GCN4-pLI)のα-アミノ酸残基をβ-アミノ酸残基に置換することによって、該ポリペプチド折りたたみを安定化させることに関する文献であり、引用文献2の「循環的に拘束されたβ-アミノ酸残基は、α/β-ペプチドGCN4-pLI類似体の折りたたみを安定化させ、環式残基の非存在下で優勢に折り畳まれた主鎖への四次構造形成を回復させることができる」(上記(1)の(1-1))、「我々は、β-残基のコンフォメーションの傾向についての基本的な理解に基づき、これらの非天然型のサブユニットで利用可能なコンフォメーションを予め固定する有用な手法の利点を活かして、四次構造の安定性を高められる」(上記(1)の(1-3))、及び「ααβαααβ、αααβおよびααβにおいて、系統的なα→β置換は、プロトタイプ配列によってコードされる四次構造の忠実な模倣につながる可能性がある」(上記(1)の(1-4))の記載から、引用文献2には、らせん構造のポリペプチドのα-アミノ酸残基を(ααβαααβ)のパターンでβ-アミノ酸残基に置換することによって、置換前のポリペプチドの四次構造を忠実に模倣できる可能性があること、置換前のポリペプチドの安定性を高めること、および、安定性を高めたポリペプチドはヘリックスバンドル会合性を保持していることが示されていると認められる。
そして、引用文献2に示される上記の事項は、らせん構造ポリペプチドにおけるβ-酸残基のコンフォメーションについての基本的な理解に基づく研究から導き出されたものであって、引用文献2の「さらに最近、我々は、α-及びβ-アミノ酸残基がααβαααβというパターンで混在する配列からなる特定の非天然型の骨格は、α-ペプチドの側鎖配列の親ペプチドの折り畳みと自己会合の挙動を部分的に模倣することを示した(14,15)。」(上記(1)の(1-2))、「BH3ドメインに基づくα/β-ペプチドを用いた最近の機能指向研究は、ここに例示されたタイプの単純な配列ベースの設計によって調製されたα/β-ペプチドの性質が与えられたシーケンス内で主鎖反復のフレームシフトに依存することを示している(15)。」(上記(1)の(1-4))の記載に照らしても、上記の事項は、GCN4-pLIポリペプチド以外の他のらせん構造のポリペプチドに(ααβαααβ)のパターンでα-アミノ酸残基をβ-アミノ酸残基に置換した場合でも同様であることが期待されるといえる。
そして、引用発明のT-2635もらせん構造のポリペプチドであり、細胞とHIVとの融合を阻害するものであって、医薬に用いられるものであるから、より安定性を高める必要があることは当業者であれば容易に想到する。
そうすると、引用発明のT-2635について、T-2635の機能を保持したままで、T-2635のらせん構造の安定性を高め、HR1/HR2バンドルの安定性を高め、T-2635の安定性を高める目的で、T-2635のα-アミノ酸残基を(ααβαααβ)のパターンでβ-アミノ酸残基に置換すること、その際に、置換したT-2635のポリペプチドを非天然型ポリペプチドと称することは、当業者が容易になし得ることである。
そして、T-2635を(ααβαααβ)のパターンで置換する場合、7通りの置換体(引用文献1の図1 a)の(2)~(8)のような7通りの置換体)が考えられるが、T-2635の7通りの置換体の一つは、本願発明のSEQ ID番号:4に示された一次アミノ酸配列におけるβ-アミノ酸残基の位置、すなわち、一番目のT、5番目のA、8番目のR、12番目のE、15番目のA、19番目のA、22番目のR、26番目のE、29番目のE、33番目のA、36番目のRに置換を有するものである。
そして、わずか7通りのT-2635置換体の中の一つを単に特定することは、当業者が適宜なし得ることに過ぎないから、上記相違点は、当業者が容易になし得ることである。
次に、本願明細書の表4には、SEQ ID番号:4のポリペプチド(オリゴマー4)の機能について、[FPによるgp41-5に対する結合親和性 Ki(nM)]が3,800nMであったこと、[細胞間融合阻害のIC50(nM)]が390nMであったこと、[HIV-1の感染性の阻害(IC50(nM))]の値が示されており、また、表4の[プロテイナーゼKに対する安定性]の項目、および図9A,Bからみて、SEQ ID番号:4のポリペプチドはαペプチド3よりも蛋白質分解感受性が低かったことが認められるから、これらの機能(効果)について検討する。
引用発明のT-2635はgp41-5のHR1領域に結合し、ウイルス-細胞融合を阻害するという機能を有するペプチドであり、引用文献2には、ポリペプチドのα-アミノ酸残基をααβαααβのパターンでβ-アミノ酸残基に置換することによって、置換前のポリペプチドの四次構造を忠実に模倣できる可能性があることが記載されているから、T-2635のα-アミノ酸残基をααβαααβのパターンでβ-アミノ酸残基に置換した場合に、T-2635の四次構造に基づく機能がある程度保持されることが期待される。
しかしながら、本願明細書の表4に示された、SEQ ID番号:4のポリペプチド(オリゴマー4)についての[FPによるgp41-5に対する結合親和性 Ki(nM)]、[細胞間融合阻害のIC50(nM)]、および[HIV-1の感染性の阻害(IC50(nM))]の項目のデータを、アミノ酸配列が同じでβ-アミノ酸残基への置換を含まないポリペプチドであるαペプチド3(オリゴマー3、これは本願明細書の段落【0068】に記載されるとおり、引用発明のT-2635に相当する。)についてのデータと比較すると、いずれの項目でもオリゴマー4はオリゴマー3より劣っている。
また、蛋白質分解感受性については、引用文献2に、ポリペプチドのα-アミノ酸残基をααβαααβのパターンでβ-アミノ酸残基に置換することによって、置換前のポリペプチドの安定性を高めることも記載されているから、SEQ ID番号:4のポリペプチドの蛋白質分解感受性に関する効果も格別のものとはいえない。
そうすると、本願明細書に示されたSEQ ID番号:4のポリペプチドの効果は、引用文献2、3の記載から予測し得るものであると認められる。
したがって、本願発明は、引用文献2、3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
4.審判請求人の主張
審判請求書において、審判請求人は、
「引用文献1乃至3はいずれも、補正後の請求項11に係る発明の一特徴である「前記β-アミノ酸残基及び前記α-アミノ酸残基は、(αααβ)の繰り返しパターンで分配され」(下線は強調付加)という構成、及び、請求項14に係る発明の一特徴である「(ααααααβ)、(αααααβ)、(ααααβ)及び(ααβαβαβ)から選ばれるα-及びβ-アミノ酸残基のパターンを含み」(下線は強調付加)という構成を開示も示唆もしておりません。」と主張している。
しかし、請求項1に特定されるSEQ ID番号:4に示された一次アミノ酸配列は、本願明細書の段落【0018】に例示されるパターンの一つである(ααβαααβ)のパターンを有するものであって、「(αααβ)の繰り返しパターン」や、「(ααααααβ)、(αααααβ)、(ααααβ)及び(ααβαβαβ)から選ばれるα-及びβ-アミノ酸残基のパターン」を含むものではない。
したがって、審判請求人の主張は採用することができない。
5.小括
本願発明は、引用文献2、3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
第4 むすび
以上のとおり、この出願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について言及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2017-014988