特許拒絶査定不服審判
2017-014695
摩耗試験機の試験条件決定方法及びタイヤの摩耗性能評価方法。
- 審判番号
- 2017-014695
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2013-177091外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年10月03日
- 審決日
- 2018年08月09日
- 公報発行日
- 2018年11月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】住友ゴム工業株式会社
- 【請求人代理人】住友 慎太郎
- 分類
- P18 .121-Z (G01M)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2013-177091「摩耗試験機の試験条件決定方法及びタイヤの摩耗性能評価方法。」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 3月12日出願公開、特開2015- 45578〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成25年8月28日の出願であって、平成29年1月26日付けの拒絶理由の通知に対し、同年3月24日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、同年6月29日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月3日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。
第2 本願発明
本願の請求項1~8に係る発明は、平成29年3月24日になされた手続補正により補正された請求項1及び請求項3ならびにそれらを直接又は間接的に引用する出願当初の特許請求の範囲の請求項2及び4~8に記載された事項により特定されるものと認められるところ、そのうち請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである
「【請求項1】
回転する砥石盤上に、ゴム材料からなる試験片を押し付け、前記試験片の摩耗状況から前記ゴム材料の耐摩耗性を評価する摩耗試験機について、タイヤの摩耗性能を評価するために最適な試験条件を、コンピュータを用いて、決定するための方法であって、
前記コンピュータに、前記タイヤを、有限個の要素でモデル化したタイヤモデルを設定する工程、
前記コンピュータに、路面を、有限個の要素でモデル化した路面モデルを設定する工程、
前記コンピュータが、前記路面モデルの上で前記タイヤモデルを転動させ、前記タイヤモデルのトレッド部の少なくとも一部において摩耗エネルギーを計算する第1シミュレーション工程、
前記コンピュータに、前記試験片を、有限個の要素でモデル化した試験片モデルを設定する工程、
前記コンピュータに、前記砥石盤を、有限個の要素でモデル化した砥石盤モデルを設定する工程、
前記コンピュータが、前記砥石盤モデルの上に前記試験片モデルを接触させ、前記試験片モデルの摩耗エネルギーを計算する第2シミュレーション工程、及び
前記コンピュータが、前記試験片モデルの摩耗エネルギーが前記タイヤモデルの摩耗エネルギーと近似する前記第2シミュレーション工程の試験条件を決定する特定工程を含み、
前記試験条件は、前記試験片モデルの前記砥石盤モデルに対するスリップ角を含むことを特徴とする摩耗試験機の試験条件決定方法。」
第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1~8は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献1:特開2011-174821号公報
引用文献2:特開2011-148465号公報
引用文献3:特開2010-237023号公報
(ここで、引用文献3は、原査定時に周知技術を示す文献として提示されたものある。)
第4 引用文献の記載事項
1 引用文献1について
(1)上記引用文献1には、以下の事項が記載されている。なお、下線は、当審において下記(2)の引用発明の認定に関係する部分に付与したものである。
(1ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム摩耗試験方法、それを用いたタイヤのゴムインデックス算出方法、装置及びプログラムに関し、詳しくは、タイヤで起きている摩耗現象を精度良くサンプルで再現することが可能なゴム摩耗試験方法、それを用いたタイヤのゴムインデックス算出方法、装置及びプログラムに関する。」
(1イ)「【発明の効果】
【0020】
本発明により、タイヤで起きている摩耗現象を精度良くサンプルで再現することが可能なゴム摩耗試験方法、それを用いたタイヤのゴムインデックス算出方法、装置及びプログラムを提供することが可能となった。」
(1ウ)「【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明のゴム摩耗試験方法について、詳細に説明する。
図1は、本発明のゴム摩耗試験方法の好適実施形態の一例を示す概略図である。図示例では、円盤状の研磨ホイール1と、研磨ホイール1を回転させる研磨ホイール回転手段2と、研磨ホイール1の回転軸L1と平行な軸L2を中心として円盤状のサンプル3を回転させるサンプル回転手段4と、サンプル3を研磨ホイール1に押圧するサンプル押付手段5とを具え、研磨ホイール1の周面にサンプル3の周面を押圧しながら研磨ホイール1とサンプル3とを回転させてサンプル3を摩耗させることができるよう構成されている。」
(1エ)「【0028】
次に、本発明のゴムインデックスの算出方法について説明する。本発明のゴムインデックスの算出方法は、本発明のゴム摩耗試験方法を用いてサンプルの摩耗量を測定し、これに基づいてゴムインデックスを算出するものである。以下、第1~4実施形態を例に挙げ、詳細に説明する。
【0029】
(第1実施形態)
図2は、本実施形態に係るタイヤのゴムインデックス算出システム10の概略構成図である。同図に示すように、タイヤのゴムインデックス算出システム10は、タイヤのゴムインデックス算出装置12、摩擦エネルギー測定装置14、接地部測定装置15及び摩耗量測定装置16を含んで構成されている。
・・・
【0036】
次に、タイヤのゴムインデックス算出装置12のCPU18で実行される処理について、図4に示すフローチャートを参照して説明する。なお、図4に示す処理ルーチンのプログラムは、例えばハードディスク36に予め格納されており、CPU18がハードディスク36からプログラムを読み出すことにより実行される。
【0037】
まず、図4に示すステップ100では、ゴムインデックス算出対象のタイヤの摩擦エネルギーを、複数のタイヤ入力条件で測定するように、ゴムインデックス算出対象のタイヤがセットされた摩擦エネルギー測定装置14に指示する。タイヤ入力の種類には、例えばタイヤに作用する駆動力(前後力)や横力(左右力)、制動力等があるので、例えばこれらのタイヤ入力の種類の各々について複数のタイヤ入力条件を設定する。以下では、説明を簡単にするために、タイヤ入力条件として駆動力及び横力が設定された場合について説明する。
【0038】
摩擦エネルギー測定装置14は、ゴムインデックス算出装置12から測定を指示されると、指示された複数のタイヤ入力条件の各々について、タイヤの摩擦エネルギーを測定する。これにより、例えば複数の異なる駆動力をタイヤに付与したときの各摩擦エネルギー、複数の異なる横力をタイヤに付与したときの各摩擦エネルギーがそれぞれ摩擦エネルギー測定装置14によって測定される。測定された各摩擦エネルギーは、ゴムインデックス算出装置12に出力される。
【0039】
ステップ102では、タイヤ入力と摩擦エネルギーとの対応関係を示す摩擦エネルギー関数をタイヤ入力条件の種類毎に算出する。すなわち、異なる複数の駆動力をタイヤに付与して測定した摩擦エネルギーに基づいて、駆動力と摩擦エネルギーとの対応関係を示す摩擦エネルギー関数f1を算出する。この摩擦エネルギー関数の算出は、例えば最小自乗法等を用いて求めることができる。同様にして、横力と摩擦エネルギーとの対応関係を示す摩擦エネルギー関数f2を算出する。
【0040】
ステップ104では、ゴムインデックス算出対象のタイヤを装着した車両で実際に所定の走行コースを走行したときに測定したタイヤ入力とその頻度との関係を示す頻度データと、ステップ102で求めた摩擦エネルギー関数と、に基づいて、タイヤ入力の種類毎の摩擦エネルギーの期待値を算出する。
【0041】
頻度データは、例えば、以下のようにして得られる。まず、タイヤに入力される駆動力及び横力を測定するセンサを車両に取り付けて上記走行コースを走行し、走行中の駆動力及び横力を測定する。そして、測定された駆動力及び横力のデータに基づいて、各入力の頻度を求める。これにより、実車において測定した駆動力及び横力と、これらの頻度(%)と、の関係を示す頻度データが得られる。得られた頻度データは、例えば予めハードディスク36に格納しておく。
【0042】
そして、頻度データのうちタイヤの摩擦エネルギーを測定したときの各駆動力のデータに対応する摩擦エネルギーを摩擦エネルギー関数f1により各々算出し、算出した各摩擦エネルギーに、対応する頻度を各々乗算して、これらを全て加算する。これにより、駆動力の摩擦エネルギーの期待値Ewdが算出される。例えば、測定された駆動力の摩擦エネルギーの種類をEwd1、Ewd2、・・・Ewdn(nは駆動力の摩擦エネルギーの種類の数)とし、その頻度をh1、h2・・hn(nは駆動力の摩擦エネルギーの種類の数)とした場合、駆動力の摩擦エネルギー関数の期待値Ewdは、次式により算出される。
Ewd=Ewd1×h1+Ewd2×h2+、・・・Ewdn×hn ・・・(1)
横力についても同様にして、摩擦エネルギーEwcを求める。すなわち、測定された横力の摩擦エネルギーの種類をEwc1、Ewc2、・・・Ewcn(nは横力の摩擦エネルギーの種類の数)とし、その頻度をh1、h2・・hn(nは横力の摩擦エネルギーの種類の数)とした場合、横力の摩擦エネルギー関数の期待値Ewcは、次式により算出される。
Ewc=Ewc1×h1+Ewc2×h2+、・・・Ewcn×hn ・・・(2)
ステップ106では、ステップ104で求めた駆動力の摩擦エネルギーの期待値Ewdと横力の摩擦エネルギーの期待値Ewcとを加算することにより、トータルの摩擦エネルギーの期待値Ewを算出する。
【0043】
ステップ108では、ゴムインデックス算出対象のタイヤの接地面部のゴム摩耗の評価に係る部位の接地圧を測定するように、ゴムインデックス算出対象のタイヤがセットされた接地部測定装置15に指示する。測定された接地圧は、ゴムインデックス算出装置12に出力される。
【0044】
ステップ110では、ゴムインデックス算出対象のタイヤのトレッド部と同一材料の円盤状のサンプルの摩擦エネルギーを測定するため、サンプルの接地圧とステップ108で測定した接地圧とが、同一となるように押付荷重を設定する。
【0045】
ステップ112では、ステップ106で求めた摩擦エネルギーの期待値Ewに基づいて、ゴムインデックス算出対象のタイヤのトレッド部と同一材料の円盤状のサンプルの摩擦エネルギーを測定するための測定条件を定める。最初にこのステップを実行した場合には、ステップ106で求めた駆動力の摩擦エネルギーの期待値Ewdに対応する駆動力及び横力の摩擦エネルギーEwcの期待値Ewcに対応する横力を摩擦エネルギー関数f1、f2を用いて各々求め、求めた駆動力及び横力をサンプルの摩擦エネルギーを測定するための測定条件(サンプル入力条件)として設定する。
【0046】
ステップ114では、サンプルがセットされた摩擦エネルギー測定装置14に対して、ステップ112で設定した測定条件でサンプルの摩擦エネルギーを測定するように指示する。これにより、摩擦エネルギー測定装置14は、ゴムインデックス算出装置12から指示された測定条件でサンプルの摩擦エネルギーを測定する。このサンプルの摩擦エネルギーの測定は、サンプルの接地面に加わるせん断力及び滑り量を測定し、これらに基づいて摩擦エネルギーを求めることにより行われる。測定された摩擦エネルギーは、ゴムインデックス算出装置12に出力される。
【0047】
ステップ116では、ステップ106で求めたタイヤの摩擦エネルギーの期待値Ewとステップ114で摩擦エネルギー測定装置14により測定されたサンプルの摩擦エネルギーとが一致するか否かを判断し、一致しない場合には、ステップ112へ戻って測定条件を変更して上記と同様の処理を繰り返す。そして、タイヤの摩擦エネルギーの期待値Ewとサンプルの摩擦エネルギーとが一致した場合は、ステップ118へ移行する。このように、タイヤの摩擦エネルギーの期待値Ewとサンプルの摩擦エネルギーとが一致するまで測定条件を変更してサンプルの摩擦エネルギーを測定する処理を繰り返す。
【0048】
ステップ118では、タイヤの摩擦エネルギーの期待値Ewとサンプルの摩擦エネルギーとが一致する測定条件を、サンプルの摩耗量を測定するための測定条件として設定する。
【0049】
ステップ120では、ステップ118で設定された測定条件、すなわち、タイヤの摩擦エネルギーの期待値Ewとサンプルの摩擦エネルギーとが一致したときの測定条件(押付荷重、駆動力及び横力)で摩耗量を測定するように、摩耗量測定装置16に指示する。これにより、摩耗量測定装置16は、ゴムインデックス算出装置12により指示された測定条件でサンプルの摩耗量mを測定する。測定された摩耗量mはゴムインデックス算出装置12に出力される。」
(1オ)「【0069】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0070】
第1実施形態では、サンプルの摩擦エネルギーを摩擦エネルギー測定装置14により測定したが、本実施形態では、サンプルを複数の要素に分割したサンプルモデルを用いて、サンプルの接地面の摩擦エネルギーを、有限要素法(FEM)を用いたシミュレーションにより求める場合について説明する。
【0071】
なお、本実施形態に係るゴムインデックス算出装置は、第1実施形態と同一であるので、説明は省略する。
【0072】
次に、タイヤのゴムインデックス算出装置12のCPU18で実行される処理について、図6に示すフローチャートを参照して説明する。なお、図6に示す処理ルーチンのプロ
グラムは、例えばハードディスク36に予め格納されており、CPU18がハードディスク36からプログラムを読み出すことにより実行される。また、図4に示すフローチャートと異なる処理のステップの符号に‘A’を付し、同一の処理については同一符号を付し
て、その詳細な説明は省略する。
【0073】
ステップ100~110は、図4に示す処理と同一であるので説明は省略する。
【0074】
ステップ112Aでは、ステップ106で求めた摩擦エネルギーの期待値Ewに基づいて、ゴムインデックス算出対象のタイヤのトレッド部と同一材料の円盤状のサンプルの摩擦エネルギーをシミュレーションするためのシミュレーション条件を定める。最初にこのステップを実行した場合には、ステップ106で求めた駆動力の摩擦エネルギーの期待値Ewdに対応する駆動力及び横力の摩擦エネルギーEwcの期待値Ewcに対応する横力を摩擦エネルギー関数f1、f2を用いて各々求め、求めた駆動力及び横力をサンプルの摩擦エネルギーをシミュレーションするためのシミュレーション条件(サンプル入力条件)として設定する。
【0075】
ステップ114Aでは、ステップ106で設定したシミュレーション条件でサンプルの摩擦エネルギーをシミュレーションする。例えばサンプルを複数の要素にメッシュ分割したサンプルモデルを作成し、有限要素法を用いた公知の手法により、ステップ106で設定したシミュレーション条件でサンプルモデルについて転動解析することにより、サンプルの接地面のせん断力及び滑り量を求める。そして、求めたせん断力及び滑り量に基づいてサンプルの摩擦エネルギーを算出する。」
(1カ)以下の図6には、算出装置12のCPU18で実行される第3実施形態のフローチャートが示されている。
【図6】
(2)引用発明について
ア 記載事項の整理
(ア)引用発明の認定は、上記第3実施形態の記載を中心に行うが、摘記(1エ)の【0028】に「本発明のゴムインデックスの算出方法は、本発明のゴム摩耗試験方法を用いてサンプルの摩耗量を測定し、これに基づいてゴムインデックスを算出するものである。以下、第1~4実施形態を例に挙げ、詳細に説明する。」と記載されているように、第3実施形態は本発明のゴム摩耗試験方法を用いてサンプルの摩耗量を測定する方法を含むものである。
(イ)摘記(1エ)の【0047】で「タイヤの摩擦エネルギーの期待値Ewとサンプルの摩擦エネルギーとが一致するまで測定条件を変更してサンプルの摩擦エネルギーを測定する処理を繰り返す」と記載されているが、これは第1実施形態におけるものであり、第3実施形態についての摘記(1オ)の【0070】に「第1実施形態では、サンプルの摩擦エネルギーを摩擦エネルギー測定装置14により測定したが、本実施形態では、サンプルを複数の要素に分割したサンプルモデルを用いて、サンプルの接地面の摩擦エネルギーを、有限要素法(FEM)を用いたシミュレーションにより求める」と記載されているとおり、第3実施形態においては「タイヤの摩擦エネルギーの期待値Ewとサンプルの摩擦エネルギーとが一致するまでシミュレーション条件を変更してサンプルの摩擦エネルギーを算出する処理を繰り返す」ことになる。
(ウ)同様に、第1実施形態について記載されている摘記(1エ)の【0049】の「タイヤの摩擦エネルギーの期待値Ewとサンプルの摩擦エネルギーとが一致したときの測定条件(押付荷重、駆動力及び横力)で摩耗量を測定するように、摩耗量測定装置16に指示する。これにより、摩耗量測定装置16は、ゴムインデックス算出装置12により指示された測定条件でサンプルの摩耗量mを測定する。」における「測定条件(押付荷重、駆動力及び横力)」は、第3実施形態においては「シミュレーション条件(押付荷重、駆動力及び横力)」となる。
(エ)「摩擦エネルギーの期待値Ew」は、「トータルの摩擦エネルギーの期待値Ew」との記載もあるが、まとめて「摩擦エネルギーの期待値Ew」と記載することとする。
(オ)図面番号等は省略する。
イ 引用発明
上記アを踏まえると、上記(1)の記載事項から、引用文献1には、以下の発明が記載されていると認められる。
「タイヤのトレッド部と同一材料の円盤状のサンプルを、回転する研磨ホイールに押圧させ、タイヤで起きている摩耗現象を精度良くサンプルで再現することが可能なゴム摩耗試験方法に使用する摩耗量測定装置におけるサンプルの摩耗量を測定する測定条件(押付荷重、駆動力及び横力)の設定方法であって、
上記設定方法は、インデックス算出装置のCPUで実行され、この処理が、
複数のタイヤ入力条件でタイヤの摩擦エネルギーを測定し、タイヤ入力と摩擦エネルギーとの関係を示す摩擦エネルギー関数をタイヤ入力条件の種類毎に算出し、タイヤを装着した車両で実際に所定の走行コースを走行したときに測定したタイヤ入力とその頻度との関係を示す頻度データと、上記摩擦エネルギー関数と、に基づいて、タイヤ入力の種類毎の摩擦エネルギーの期待値を算出し、駆動力の摩擦エネルギーの期待値Ewdと横力の摩擦エネルギーの期待値Ewcとを加算することにより、摩擦エネルギーの期待値Ewを算出し、
摩擦エネルギーの期待値Ewに基づいて、サンプルの摩擦エネルギーをシミュレーションするためのシミュレーション条件(押付荷重、駆動力及び横力)を定め、サンプルを複数の要素にメッシュ分割したサンプルモデルを作成し、有限要素法を用いた公知の手法により、シミュレーション条件でサンプルモデルについて転動解析することにより、サンプルの接地面のせん断力及び滑り量を求め、そして、求めたせん断力及び滑り量に基づいてサンプルの摩擦エネルギーを算出し、
そして、タイヤの摩擦エネルギーの期待値Ewとサンプルの摩擦エネルギーとが一致するまで、シミュレーション条件を変更して上記サンプルの摩擦エネルギーを算出する処理を繰り返し、タイヤの摩擦エネルギーの期待値Ewとサンプルの摩擦エネルギーとが一致するシミュレーション条件を、サンプルの摩耗量を測定するための測定条件として設定する、設定方法。」(以下「引用発明」という。)
2 引用文献2について
(1)上記引用文献2には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審において付与したものである。
(2ア)「【背景技術】
【0002】
タイヤの摩耗特性は、タイヤの使用寿命に大きな影響を与える重要な要素である。従来より、タイヤの摩耗特性の改善のために、室内実験によりタイヤのトレッド表面で路面から受ける摩擦エネルギを計測して摩耗を定性的に予測するアプローチが行われてきた。あるいは、コンピュータを用いてタイヤモデルを路面モデル上で転動させてトレッド表面が受ける摩擦エネルギを計算することによりトレッドの摩耗を定量的に予測するアプローチが行われてきた。」
(2イ)「【0016】
(第1の実施形態の装置)
図1は、第1の実施形態であるタイヤ摩耗の予測装置10の構成を示す構成図である。
・・・
【0017】
予測装置10は、CPU12、バス14、メモリ16、および、入出力インターフェース部18を有するコンピュータを含む。予測装置10は、入出力インターフェース部18を通して、マウスやキーボード等の入力操作系20と、ディスプレイやプリンタ等の出力装置22と接続されている。予測装置10は、メモリ16に記憶されたプログラムを呼び出して、プログラムを実行することにより、モデル作成部24、摩擦エネルギ取得部26、摩擦エネルギ予測部28、摩耗予測部30、モデル変更部32、設定部34が形成されて、処理モジュール群36が形成される。
【0018】
モデル作成部24は、複数の要素によりタイヤを再現したタイヤモデルと、タイヤが接地する路面を再現した路面モデルを、設定された条件に基づいて作成する。作成されるタイヤモデルは、例えば、図2(a),図3に示すような、3次元形状をなした有限要素法に基づくタイヤモデルTMである。作成される路面モデルは、図2(b)に示すような剛体平面モデルRMあるいは、複数の要素で構成された有限要素モデルである。路面モデルの路面表面は、例えば凹凸形状を成してもよく、路面上に水や雪の層を再現してもよい。
【0019】
摩擦エネルギ取得部26は、作成されたタイヤモデルTMに対して路面モデルRMを走行する転動シミュレーションを行う。具体的には、摩擦エネルギ取得部26は、作成されたタイヤモデルTMに空気圧充填処理を施し、この処理後のタイヤモデルTMを路面モデルRMに接地させる接地処理を行い、この処理後、タイヤモデルTMに転動処理を施す。空気圧充填処理、接地処理および転動処理は、予め設定されたシミュレーション条件に基づいて行われる。転動処理では、走行条件に応じて、一定の走行速度の転動状態、制動状態、あるいは駆動状態が再現される。
【0020】
摩擦エネルギ取得部26は、転動状態のタイヤモデルTMの節点が路面モデルRMと接触するとき、この節点に作用するせん断力と、タイヤモデルTMの節点が路面モデルRMに対して相対的に滑るすべり量(相対変位)と、を算出し、算出したせん断力とすべり量を乗算し、この乗算結果を節点毎に算出する。さらに、摩擦エネルギ取得部26は、節点毎の乗算結果を後述する節点面積(図10参照)で除算することにより、各節点の単位摩擦エネルギを算出する。このように、摩擦エネルギ取得部26は、タイヤモデルTMの転動シミュレーションを行うことにより、単位摩擦エネルギを取得する。」
(2)技術事項
上記摘記(2イ)には、「コンピュータに、タイヤを、有限個の要素でモデル化したタイヤモデルを設定する工程、前記コンピュータに、路面を、有限個の要素でモデル化した路面モデルを設定する工程、前記コンピュータが、前記路面モデルの上で前記タイヤモデルを転動させ、前記タイヤモデルの摩耗エネルギーを計算するシミュレーション工程」により、タイヤモデルの摩擦エネルギーを取得する技術事項が記載されているといえる。
3 引用文献3について
(1)上記引用文献3には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審において付与したものである。
(3ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ摩耗のシミュレーション方法、装置、及びプログラムに係り、特に、自動車等に使用される空気入りタイヤなどのタイヤにおける摩耗進展をシミュレートするタイヤ摩耗のシミュレーション方法、装置、及びプログラムに関する。」
(3イ)「【0030】
さらに、その他のシミュレーション条件として、タイヤに発生するトルクやスリップ角がある。トルクの設定は、タイヤに発生する前後力を設定することに相当し、スリップ角の設定は、タイヤに発生する横力を設定することに相当する。」
(3ウ)「【0049】
ステップ102のシミュレーション条件の再設定では、例えばタイヤに発生する前後力に相当するトルクや、タイヤに発生する横力に相当するスリップ角を変更することが考えられる。」
第5 対比・判断
1 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「タイヤのトレッド部と同一材料の円盤状のサンプル」は、本願発明の「ゴム材料からなる試験片」に相当し、「タイヤのトレッド部と同一材料の円盤状のサンプルを、回転する研磨ホイール1に押圧させ」る「摩耗量測定装置」は、本願発明の「回転する砥石盤上に、ゴム材料からなる試験片を押し付け、前記試験片の摩耗状況から前記ゴム材料の耐摩耗性を評価する摩耗試験機」に相当する。
そして、引用発明の「タイヤで起きている摩耗現象を精度良くサンプルで再現することが可能なゴム摩耗試験」とするための「インデックス算出装置のCPUで実行され」る「処理」による「摩耗量測定装置におけるサンプルの摩耗量を測定する測定条件(押付荷重、駆動力及び横力)の設定方法」は、本願発明の「タイヤの摩耗性能を評価するために最適な試験条件を、コンピュータを用いて、決定するための方法であって、」「摩耗試験機の試験条件決定方法」に相当する。
(2)「インデックス算出装置のCPUで実行され」る「処理」である「複数のタイヤ入力条件でタイヤの摩擦エネルギーを測定し、タイヤ入力と摩擦エネルギーとの関係を示す摩擦エネルギー関数をタイヤ入力条件の種類毎に算出し、タイヤを装着した車両で実際に所定の走行コースを走行したときに測定したタイヤ入力とその頻度との関係を示す頻度データと、上記摩擦エネルギー関数と、に基づいて、タイヤ入力の種類毎の摩擦エネルギーの期待値を算出し、駆動力の摩擦エネルギーの期待値Ewdと横力の摩擦エネルギーの期待値Ewcとを加算することにより、摩擦エネルギーの期待値Ewを算出」する工程と、本願発明の「前記コンピュータに、前記タイヤを、有限個の要素でモデル化したタイヤモデルを設定する工程、前記コンピュータに、路面を、有限個の要素でモデル化した路面モデルを設定する工程、前記コンピュータが、前記路面モデルの上で前記タイヤモデルを転動させ、前記タイヤモデルのトレッド部の少なくとも一部において摩耗エネルギーを計算する第1シミュレーション工程」とは、「コンピュータが」「タイヤ」の「トレッド部の少なくとも一部において摩耗エネルギーを計算する」「第1工程」という限りにおいて共通する。
(3)引用発明で「サンプルモデルについて転動解析することにより、サンプルの接地面のせん断力及び滑り量を求め」る際に、サンプルモデルが転動する接地面すなわち接触する面は「研磨ホイール」モデル上の面であるから、「インデックス算出装置のCPUで実行され」る「処理」である「摩擦エネルギーの期待値Ewに基づいて、サンプルの摩擦エネルギーをシミュレーションするためのシミュレーション条件を定め、サンプルを複数の要素にメッシュ分割したサンプルモデルを作成し、有限要素法を用いた公知の手法により、シミュレーション条件でサンプルモデルについて転動解析することにより、サンプルの接地面のせん断力及び滑り量を求め、そして、求めたせん断力及び滑り量に基づいてサンプルの摩擦エネルギーを算出」する工程と、本願発明の「前記コンピュータに、前記試験片を、有限個の要素でモデル化した試験片モデルを設定する工程、前記コンピュータに、前記砥石盤を、有限個の要素でモデル化した砥石盤モデルを設定する工程、前記コンピュータが、前記砥石盤モデルの上に前記試験片モデルを接触させ、前記試験片モデルの摩耗エネルギーを計算する第2シミュレーション工程」とは、「前記コンピュータに、前記試験片を、有限個の要素でモデル化した試験片モデルを設定する工程、前記コンピュータが、前記砥石盤モデルの上に前記試験片モデルを接触させ、前記試験片モデルの摩耗エネルギーを計算する第2シミュレーション工程」の点で共通する。
(4)引用発明「インデックス算出装置のCPUで実行され」る「処理」である「タイヤの摩擦エネルギーの期待値Ewとサンプルの摩擦エネルギーとが一致するまで、シミュレーション条件を変更して上記サンプルの摩擦エネルギーを算出する処理を繰り返し、タイヤの摩擦エネルギーの期待値Ewとサンプルの摩擦エネルギーとが一致するシミュレーション条件を、サンプルの摩耗量を測定するための測定条件として設定する」工程と、本願発明の「前記コンピュータが、前記試験片モデルの摩耗エネルギーが前記タイヤモデルの摩耗エネルギーと近似する前記第2シミュレーション工程の試験条件を決定する特定工程」とは、「前記コンピュータが、」「前記試験片モデルの摩耗エネルギー」と「前記タイヤモデルの摩耗エネルギー」とにより「第2シミュレーション工程の試験条件を決定する特定工程」という限りにおいて共通する。
してみれば、本願発明と引用発明とは、
(一致点)
「回転する砥石盤上に、ゴム材料からなる試験片を押し付け、前記試験片の摩耗状況から前記ゴム材料の耐摩耗性を評価する摩耗試験機について、タイヤの摩耗性能を評価するために最適な試験条件を、コンピュータを用いて、決定するための方法であって、
前記コンピュータが、前記タイヤのトレッド部の少なくとも一部において摩耗エネルギーを計算する第1工程、
前記コンピュータに、前記試験片を、有限個の要素でモデル化した試験片モデルを設定する工程、
前記コンピュータが、砥石盤モデルの上に前記試験片モデルを接触させ、前記試験片モデルの摩耗エネルギーを計算する第2シミュレーション工程、及び
前記コンピュータが、前記試験片モデルの摩耗エネルギーと前記タイヤモデルの摩耗エネルギーとにより第2シミュレーション工程の試験条件を決定する特定工程を含む、摩耗試験機の試験条件決定方法。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点1)
タイヤの摩耗エネルギーを計算する第1工程が、本願発明では、「前記コンピュータに、前記タイヤを、有限個の要素でモデル化したタイヤモデルを設定する工程、前記コンピュータに、路面を、有限個の要素でモデル化した路面モデルを設定する工程、前記コンピュータが、前記路面モデルの上で前記タイヤモデルを転動させ」、前記タイヤ「モデル」において摩耗エネルギーを計算する「シミュレーション」工程であるのに対し、引用発明では、「複数のタイヤ入力条件でタイヤの摩擦エネルギーを測定」及び「タイヤ入力とその頻度」を「タイヤを装着した車両で実際に所定の走行コースを走行したときに測定」する工程を有しており、本願発明のような有限個の要素でモデル化したシミュレーションにおいて計算したものではない点。
(相違点2)
試験片モデルの摩耗エネルギーを計算する第2シミュレーション工程において、砥石盤モデルが、本願発明では「前記コンピュータに、前記砥石盤を、有限個の要素でモデル化した」砥石盤モデルであるのに対し、引用発明では、そのようなものであるのか不明である点。
(相違点3)
試験条件が、本願発明では、「前記試験片モデルの前記砥石盤モデルに対するスリップ角を含む」のに対し、引用発明では、そのようなスリップ角を含むものかどうか不明である点。
(相違点4)
第2シミュレーション工程の試験条件を決定する特定工程が、本願発明では、「前記試験片モデルの摩耗エネルギーが前記タイヤモデルの摩耗エネルギーと近似する」ものを試験条件として決定しているのに対し、引用発明では、「タイヤの摩擦エネルギーの期待値Ewとサンプルの摩擦エネルギーとが一致するまで、シミュレーション条件を変更して上記サンプルの摩擦エネルギーを算出する処理を繰り返し、タイヤの摩擦エネルギーの期待値Ewとサンプルの摩擦エネルギーとが一致する」シミュレーション条件を測定条件としている点。
。
2 判断
(1)相違点1について
上記引用文献2には、上記第4の2(2)で述べたように、「コンピュータに、タイヤを、有限個の要素でモデル化したタイヤモデルを設定する工程、前記コンピュータに、路面を、有限個の要素でモデル化した路面モデルを設定する工程、前記コンピュータが、前記路面モデルの上で前記タイヤモデルを転動させ、前記タイヤモデルの摩耗エネルギーを計算するシミュレーション工程」により、タイヤモデルの摩擦エネルギーを取得する技術事項が記載されており、これは上記相違点1の技術事項に相当するものである。
そして、引用文献2の摘記(2ア)に記載されているとおり、本出願前より、タイヤの摩耗特性である摩擦エネルギーを求めるアプローチとして、摩擦エネルギーを計測して摩耗を定性的に予測するアプローチと、コンピュータを用いてタイヤモデルを路面モデル上で転動させてトレッド表面が受ける摩擦エネルギーを計算することによりトレッドの摩耗を定量的に予測するアプローチとがあり、それぞれ適宜行われてきたものである。
してみれば、引用発明の「摩擦エネルギーの期待値Ew」の「算出」は、「複数のタイヤ入力条件でタイヤの摩擦エネルギーを測定」及び「タイヤ入力とその頻度」を「タイヤを装着した車両で実際に所定の走行コースを走行したときに測定」することを経たうえで取得されるものであるから、上記前者のアプローチに対応するものであり、これをコンピュータを用いてタイヤモデルを路面モデル上で転動させてトレッド表面が受ける摩擦エネルギを計算することによりトレッドの摩耗を定量的に予測するアプローチに代える、すなわち、上記引用文献2に記載の技術事項を採用することは当業者が容易になし得たことである。
(2)相違点2について
引用発明では、「サンプルモデル」は「複数の要素にメッシュ分割し」ているが、その「サンプルモデルについて転動解析することにより、サンプルの接地面のせん断力及び滑り量を求め」る際の接地面となる「研磨ホイール」のモデルが、有限個の要素でモデル化したものかどうか不明であるものの、引用発明において「有限要素法を用いた公知の手法により」「せん断力及び滑り量を求め」るのであるから、「複数の要素にメッシュ分割し」た「サンプルモデル」に対応して、それが接する「研磨ホイール」のモデルについても「有限個の要素でモデル化」することは当業者が容易になし得たことである。
(3)相違点3について
引用発明の測定条件は「測定条件(押付荷重、駆動力及び横力)」と記載れており、ここで「測定条件」の中の「横力」とは、上記周知文献として提示した引用文献3の摘記(3イ)及び(3ウ)の記載に鑑みるに、「スリップ角」と解するのが相当であるから、引用発明の「測定条件」には、サンプルモデルの研磨ホイールのモデルに対するスリップ角を含むものといえ、相違点は3は実質的な相違点とはいえない。
また、実質的な相違点としても、引用発明は「タイヤで起きている摩耗現象を精度良くサンプルで再現する」ものであるから、タイヤで起きている横力を考慮して、引用発明の「測定条件」に、サンプルモデルの研磨ホイールのモデルに対するスリップ角を含ませることは当業者が容易になし得たことである。
(4)相違点4について
本願発明の「前記試験片モデルの摩耗エネルギーが前記タイヤモデルの摩耗エネルギーと近似する」ものを試験条件として決定するとは、本願明細書に「試験条件毎に計算された試験片モデル31の摩耗エネルギーのうち、評価対象の節点25の摩耗エネルギーと最も近い試験片モデル31の摩耗エネルギーが選択される。そして、選択された試験片モデル31の摩耗エネルギーが得られた試験条件が、摩耗試験機11(図3に示す)の試験条件として決定される。」(【0072】)と記載されているとおり、第2シミュレーション工程で多数の試験条件毎に計算された試験片モデルの摩耗エネルギーのうち、タイヤモデルの摩耗エネルギーと最も近い試験片モデルの摩耗エネルギーを選択し、それを計算するときの試験条件を摩耗試験機の試験条件とするということである。
一方、引用発明は、「タイヤの摩擦エネルギーの期待値Ewとサンプルの摩擦エネルギーとが一致するまで、シミュレーション条件を変更して上記サンプルの摩擦エネルギーを算出する処理を繰り返し、タイヤの摩擦エネルギーの期待値Ewとサンプルの摩擦エネルギーとが一致する」シミュレーション条件を測定条件とするものである。
ここで、一般に、シミュレーションにより最適な条件を決定する方法として、多数のシミュレーションを行い、その中から最適な条件を選択する方法は慣用手段であるから、引用発明において、多数のシミュレーション条件毎に予めサンプルの摩擦エネルギーを算出しておき、そのうちタイヤの摩擦エネルギーの期待値Ewと一致あるいは最も近いものを選択し、それを算出するときのシミュレーション条件を測定条件とすること、すなわち上記相違点4の構成とすることは当業者が容易になし得たことである。
3 効果について
本願発明の効果として、本願明細書には「このように、本発明の試験条件決定方法では、試験片及びタイヤの実際の摩耗現象に基づくシミュレーションによって、摩耗試験機の試験条件が決定される。このため、本発明では、例えば、オペレータの経験によって試験条件が決定されていた従来の方法に比べて、タイヤの摩耗性能を精度よく評価しうる最適な試験条件を決定する
ことができる。」【0015】と記載されているが、引用文献1の上記摘記(1イ)には、発明の効果として、「本発明により、タイヤで起きている摩耗現象を精度良くサンプルで再現することが可能なゴム摩耗試験方法、それを用いたタイヤのゴムインデックス算出方法、装置及びプログラムを提供することが可能となった。」と記載されており、本願発明の効果は格別顕著なものとはいえない。
4 請求人の主張について
請求人は、審判請求書で、上記相違点4は相違点とせず、上記相違点1については反論しておらず、上記相違点2について「引用発明において、有限個の要素でモデル化したサンプルモデルと有限個の要素でモデル化した研磨ホイールモデルとを用いて転動解析を行うことは、いかに当業者といえども容易ではありません。」と、上記相違点3について「引用文献3の技術情報が周知の事項であったとしても、引用文献3に記載されているスリップ角の設定は、コーナリング走行で発生するタイヤの横力を、シミュレーション上のタイヤモデルで再現するためのものです。一方、相違点3は、砥石盤モデルの上に、試験片モデルを接触させ、試験片モデルの摩耗エネルギーを計算する第2シミュレーション工程において、その試験条件として、試験片モデルの砥石盤モデルに対するスリップ角を含むものであり、上記周知の事項とは技術分野が異なることは明らかであります。」と主張しているものの、これらの主張によって、上記2で説示した相違点2及び3の判断を覆すほどの根拠が見いだせない。
5 小括
したがって、本願発明は、引用発明、並びに、引用文献2に記載された技術事項及び引用文献3に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その余の請求項に係る発明について言及するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり、審決する。
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2017-014695