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特許拒絶査定不服審判

2022-006822

人間飛行のための風洞

審判番号
2022-006822
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2018-561177外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年05月06日
審決日
2023年01月12日
公報発行日
2023年06月30日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (G01M)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第17条の2第5項第3号、特許法第17条の2第5項第1号、特許法第29条、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2018-561177「人間飛行のための風洞」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 8月24日国際公開、WO2017/142461、平成31年 4月18日国内公表、特表2019-510984〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1.手続の経緯 本願は、2017年(平成29年)2月14日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2016年2月15日(以下「優先日」という。) スウェーデン)を国際出願日とする出願であって、令和2年12月21日付けで拒絶理由が通知され、令和3年7月5日に意見書及び手続補正書が提出され、同年12月22日付けで拒絶査定されたところ、令和4年5月6日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、それと同時に手続補正書(これによる補正を「本件補正」という。)が提出されたものである。 第2.本件補正について 1.本件補正の内容 (1)本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1~15の記載は、次のとおり補正された。ここで、各構成単位冒頭の「A」、「1A」などは分説のために当審で付した分説番号であり、以下該各構成単位を該分説番号をもとに「構成A」、「構成1A」などという。また、下線部は請求人が本件補正による補正箇所を示すために付したものに対応する。 本件補正後の請求項1~15には「風洞」についての発明(本件補正後の請求項1に係る発明を「本願発明」という。)が記載されている。 「【請求項1】 A1 研究またはレクリエーションのための安定した持続的な人間飛行を可能とするように構成された風洞であって、前記風洞は、 B1 第1の中心軸線(A)を有する第1の部分(6)と第2の中心軸線(B)を有する第2の部分(1)とを有するトンネルであって、前記第2の部分(1)は飛行チャンバであり、内部で人間の持続的な滑空飛行を可能とし、前記第1の部分(6)と前記第2の部分(1)は接続部によって接続される、トンネルと、 C1 互いに対して第1の角度で配置された前記第1の中心軸線(A)および前記第2の中心軸線(B)と、 D1 前記飛行チャンバ内に空気流を生成するための少なくとも1つのファン(120)と を備え、 E1 前記第2の中心軸線(B)は、水平面に対して第2の角度であり、前記第2の角度は5°~85°であり、 F1 前記第1の部分(6)、前記接続部および前記第2の部分(1)の下流に配置された導管の少なくとも1つが、前記空気流の角度または流れ場を調整する手段を備える、 G1 風洞。 【請求項2】 A2 前記接続部が前記空気流の角度または前記流れ場を調整する手段を備え、前記接続部における前記空気流の角度または前記流れ場を調整する前記手段は、天井(130)および床(140)の両方における流れ方向転換促進セグメントを備え、前記流れ方向転換促進セグメントは、前記天井および前記床から延びる突起を備える、 B2 請求項1に記載の風洞。 【請求項3】 A3 前記突起は、調整可能な形状からなる B3 請求項2に記載の風洞。 【請求項4】 A4 前記第2の角度が15°~60°である、 B4 請求項1に記載の風洞。 【請求項5】 A5 前記第2の角度が調整可能である、 B5 請求項1から4のいずれか一項に記載の風洞。 【請求項6】 A6 前記飛行チャンバ(1)を使用する人が前記飛行チャンバ(1)を離れることを防止するために、前記飛行チャンバ(1)に配置された区切り装置をさらに備える、 B6 請求項1から5のいずれか一項に記載の風洞。 【請求項7】 A7 前記区切り装置が、 B7 傾斜する前記飛行チャンバ(1)のトンネル壁の内周にある少なくとも1つのトンネル側取付点と、 C7 ハーネス上の少なくとも1つの人側取付点と、 D7 前記ハーネスを着用している人を前記トンネルに固定するために、前記少なくとも1つのトンネル側取付点および前記少なくとも1つの人側取付点に取り付けられるように構成された少なくとも1つのストラップとを備える、 E7 請求項6に記載の風洞。 【請求項8】 A8 前記トンネル壁の前記内周の上半分にある少なくとも2つのトンネル側取付点と、 B8 前記ハーネスの左側と右側に1つずつある、前記ハーネスの腰部に配置された少なくとも2つの人側取付点と、 C8 少なくとも2つのストラップであって、第1のストラップは、前記トンネル側取付点の1つと、前記ハーネスの左側の前記人側取付点に取り付けられるように構成され、第2のストラップは、前記トンネル側取付点と、前記ハーネスの右側の前記人側取付点に取り付けられるように構成されている、少なくとも2つのストラップとをさらに備える、 D8 請求項7に記載の風洞。 【請求項9】 A9 前記少なくとも1つのストラップが、スライド可能な接続部がスライドトラックデバイスに沿ってスライドすることができるように少なくとも2つの前記トンネル側取付点に接続された少なくとも1つのロープ、ワイヤ、またはレールを含む少なくとも1つの前記スライドトラックデバイスへの前記スライド可能な接続部を介して前記トンネル側取付点に取り付けられるように構成されている、 B9 請求項7又は8に記載の風洞。 【請求項10】 A10 前記区切り装置が、 B10 前記飛行チャンバの断面積の90%未満の断面積を有する縮小トンネル部分であって、前記縮小トンネル部分は前記飛行チャンバの上流に配置されている、縮小トンネル部分、および C10 前記飛行チャンバの断面積よりも少なくとも20%大きい断面積を有する拡大トンネル部分であって、前記拡大トンネル部分は前記飛行チャンバの上流に配置されている、拡大トンネル部分、 のうちの少なくとも1つをさらに備える、 D10 請求項6から9のいずれか一項に記載の風洞。 【請求項11】 A11 前記区切り装置が、縮小トンネル部分と拡大トンネル部分の両方を含み、前記拡大トンネル部分は、前記縮小トンネル部分の上流に配置されている、 B11 請求項10に記載の風洞。 【請求項12】 A12 風洞ストップゾーンと、前記飛行チャンバ内の前記空気流と比較して水平面に向かって少なくとも3°、好ましくは少なくとも5°ずれるように前記ストップゾーン内の前記空気流をリダイレクトさせる空気流リダイレクト手段とをさらに備え、前記ストップゾーンは、前記飛行チャンバの上流または下流に配置されている、 B12 請求項6から11のいずれか一項に記載の風洞。 【請求項13】 A13 前記空気流リダイレクト手段が、傾斜する前記飛行チャンバに対して角度をなして配置されたトンネル部分、または前記風洞ストップゾーンに取り付けられた流れガイドデバイスを含む、 B13 請求項12に記載の風洞。 【請求項14】 A14 傾斜する前記飛行チャンバの下流で前記風洞の断面にわたって配置された少なくとも1つのネットをさらに備える、 B14 請求項6から13のいずれか一項に記載の風洞。 【請求項15】 A15 弾性を有する第1のネットと、本質的に非弾性の第2のネットとを備え、前記第1のネットは傾斜する前記飛行チャンバの下流であるが前記第2のネットの上流に配置されている、 B15 請求項14に記載の風洞。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲の記載 本件補正前の、令和3年7月5日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~32(以下、それぞれ「本件補正前請求項1」などという。)の記載は次のとおりである。 本件補正前請求項1~32には「風洞」についての発明が記載され、うち、本件補正前請求項1は独立形式で記載されている。 「【請求項1】 1A 研究またはレクリエーションのための安定した持続的な人間飛行を可能とするように構成された風洞であって、前記風洞は、 1B 第1の中心軸線(A)を有する第1の部分(6)と第2の中心軸線(B)を有する第2の部分(1)とを有するトンネルであって、前記第2の部分(1)は飛行チャンバであり、内部で人間の持続的な滑空飛行を可能とし、前記第1の部分(6)と前記第2の部分(1)は接続部によって接続される、トンネルと、 1C 互いに対して第1の角度で配置された前記第1の中心軸線(A)および前記第2の中心軸線(B)と、 1D 前記飛行チャンバ内に空気流を生成するための少なくとも1つのファン(120)と を備え、 1E 前記第2の中心軸線(B)は、水平面に対して第2の角度であり、前記第2の角度は5°~85°であり、 1F 前記第1の部分(6)、前記接続部および前記第2の部分(1)の下流に配置された導管の少なくとも1つが、前記空気流の角度または流れ場を調整する手段を備える、 1G 風洞。 【請求項2】 2A 前記空気流の角度または前記流れ場を調整する前記手段が、前記第1の部分(6)または前記接続部の内壁から延びる少なくとも1つの突起を含む、 2B 請求項1に記載の風洞。 【請求項3】 3A 前記空気流の角度または前記流れ場を調整する前記手段が、前記第1の部分(6)または前記接続部の前記内壁の少なくとも1つの壁部分を含み、前記壁部分は調整可能な形状を有する、 3B 請求項1または2に記載の風洞。 【請求項4】 4A 前記接続部が前記空気流の角度または前記流れ場を調整する手段を備え、前記接続部における記空気流の角度または前記流れ場を調整する前記手段は、天井(130)および床(140)の両方における流れ方向転換促進セグメントを備え、前記流れ方向転換促進セグメントは、前記天井および前記床から延びる突起を備える、 4B 請求項1に記載の風洞。 【請求項5】 5A 前記突起は、調整可能な形状からなる 5B 請求項4に記載の風洞。 【請求項6】 6A 前記接続部は、滑らかな内面および流れをシールする外面を有し、前記接続部は、前記第1および第2の角度の調整を可能にするように、可撓性かつ拡張可能に構成されている、 6B 請求項1から4のいずれか一項に記載の風洞。 【請求項7】 7A 前記空気流の角度または前記流れ場を調整する前記手段が、前記接続部の天井に配置された少なくとも1つの回転ベーン(210)を備える、 7B 請求項1から5のいずれか一項に記載の風洞。 【請求項8】 8A 前記第2の角度が15°~60°である、 8B 請求項1に記載の風洞。 【請求項9】 9A 前記第2の角度が調整可能である、 9B 請求項1から8のいずれか一項に記載の風洞。 【請求項10】 10A 前記風洞が、運転中に人が前記トンネルに出入りすることを可能にするためのエアロックを有する少なくとも1つのアクセスドアをさらに備える、10B 請求項1から9のいずれか一項に記載の風洞。 【請求項11】 11A 前記風洞が、少なくとも2つのアクセスドアを備え、前記ドアは、前記飛行チャンバのいずれかの側に配置されている、 11B 請求項10に記載の風洞。 【請求項12】 12A 人を吊るすためのサスペンションシステムをさらに備え、前記サスペンションシステムは、前記飛行チャンバの内壁に取り付けられる、 12B 請求項1から11のいずれか一項に記載の風洞。 【請求項13】 13A 前記トンネル内の空気を再循環させるための再循環手段をさらに備え、前記再循環手段は、前記第2の部分(1)の下流端を前記第1の部分(6)の上流端に接続するように構成された導管を備えることが好ましい、 13B 請求項1から12のいずれか一項に記載の風洞。 【請求項14】 14A 前記再循環手段が、風速の変化を可能にするように調整可能である、 14B 請求項13に記載の風洞。 【請求項15】 15A 前記第2の部分(1)が、その長さの少なくとも一部に沿って増加する断面を有する、 15B 請求項1から14のいずれか一項に記載の風洞。 【請求項16】 16A 前記飛行チャンバ(1)を使用する人が前記飛行チャンバ(1)を離れることを防止するために、前記飛行チャンバ(1)に配置された区切り装置をさらに備える、 16B 請求項1から15のいずれか一項に記載の風洞。 【請求項17】 17A 前記区切り装置が、 17B 傾斜する前記飛行チャンバ(1)のトンネル壁の内周にある少なくとも1つのトンネル側取付点と、 17C ハーネス上の少なくとも1つの人側取付点と、 17D 前記ハーネスを着用している人を前記トンネルに固定するために、前記少なくとも1つのトンネル側取付点および前記少なくとも1つの人側取付点に取り付けられるように構成された少なくとも1つのストラップと を備える、 17E 請求項16に記載の風洞。 【請求項18】 18A 前記トンネル壁の前記内周の上半分にある少なくとも2つのトンネル側取付点と、 18B 前記ハーネスの左側と右側に1つずつある、前記ハーネスの腰部に配置された少なくとも2つの人側取付点と、 18C 少なくとも2つのストラップであって、第1のストラップは、前記トンネル側取付点の1つと、前記ハーネスの左側の前記人側取付点に取り付けられるように構成され、第2のストラップは、前記トンネル側取付点と、前記ハーネスの右側の前記人側取付点に取り付けられるように構成されている、少なくとも2つのストラップと をさらに備える、 18D 請求項17に記載の風洞。 【請求項19】 19A 前記少なくとも1つのストラップを、延伸力の適用時に延ばすことができ、前記ストラップは、前記ストラップを延ばすように構成された降伏デバイスを備え、および/または前記ストラップは、前記ストラップを制限された長さに延ばすことができるような弾性を有する、 19B 請求項17または18に記載の風洞。 【請求項20】 20A 前記制限された長さが、前記ストラップの長さの10%~500%の範囲にあり、および/または前記延伸力が20~1000Nの範囲内にある、 20B 請求項19に記載の風洞。 【請求項21】 21A 前記少なくとも1つのストラップが、スライド可能な接続部がスライドトラックデバイスに沿ってスライドすることができるように少なくとも2つの前記トンネル側取付点に接続された少なくとも1つのロープ、ワイヤ、またはレールを含む少なくとも1つの前記スライドトラックデバイスへの前記スライド可能な接続部を介して前記トンネル側取付点に取り付けられるように構成されている、 21B 請求項16から20のいずれか一項に記載の風洞。 【請求項22】 22A 前記ロープまたはワイヤが、前記ロープまたはワイヤを前記トンネル側取付点に向けて付勢する弾性接続部を介して前記トンネル側取付点に接続されている、 22B 請求項21に記載の風洞。 【請求項23】 23A 前記ストラップを介して前記ハーネスを前記トンネル側取付点に取り付けることを可能にする少なくとも2つのハーネスおよび複数のトンネル側取付点およびストラップを備え、前記トンネル側取付点は、前記トンネル壁の周囲に沿って、および前記飛行チャンバの長さに沿って分布し、各ストラップの長さに合わせて、ハーネスを着用している各人が前記飛行チャンバ内で一定量の移動をすることができ、前記移動量が重複しないようにする、 23B 請求項17から22のいずれか一項に記載の風洞。 【請求項24】 24A 前記少なくとも1つのトンネル側取付点が、前記ストラップを固定するためのホルダを備え、前記ホルダは、前記トンネル壁の凹みにまたは前記内周に面一に配置されている、 24B 請求項17から23のいずれか一項に記載の風洞。 【請求項25】 25A 前記ハーネスが前記トンネルの傾斜する前記飛行チャンバの外側にあるときに、前記少なくとも1つのストラップを、前記少なくとも1つの人側取付点に取り付けることができる、 25B 請求項17から23のいずれか一項に記載の風洞。 【請求項26】 26A 前記区切り装置が、 26B 前記飛行チャンバの断面積の90%未満の断面積を有する縮小トンネル部分であって、前記縮小トンネル部分は前記飛行チャンバの上流に配置されている、縮小トンネル部分、および 26C 前記飛行チャンバの断面積よりも少なくとも20%大きい断面積を有する拡大トンネル部分であって、前記拡大トンネル部分は前記飛行チャンバの上流に配置されている、拡大トンネル部分、 のうちの少なくとも1つをさらに備える、 26D 請求項16から25のいずれか一項に記載の風洞。 【請求項27】 27A 前記区切り装置が、縮小トンネル部分と拡大トンネル部分の両方を含み、前記拡大トンネル部分は、前記縮小トンネル部分の上流に配置されている、 27B 請求項26に記載の風洞。 【請求項28】 28A 風洞ストップゾーンと、前記飛行チャンバ内の前記空気流と比較して水平面に向かって少なくとも3°、好ましくは少なくとも5°ずれるように前記ストップゾーン内の前記空気流をリダイレクトさせる空気流リダイレクト手段とをさらに備え、前記ストップゾーンは、前記飛行チャンバの上流または下流に配置されている、 28B 請求項16から27のいずれか一項に記載の風洞。 【請求項29】 29A 前記空気流リダイレクト手段が、前記傾斜飛行チャンバに対して角度をなして配置されたトンネル部分、または前記風洞ストップゾーンに取り付けられた流れガイドデバイスを含む、 29B 請求項28に記載の風洞。 【請求項30】 30A 前記傾斜飛行チャンバの下流で前記風洞の断面にわたって配置された少なくとも1つのネットをさらに備える、 30B 請求項16から29のいずれか一項に記載の風洞。 【請求項31】 31A 弾性を有する第1のネットと、本質的に非弾性の第2のネットとを備え、前記第1のネットは前記傾斜飛行チャンバの下流であるが前記第2のネットの上流に配置されている、 31B 請求項30に記載の風洞。 【請求項32】 32A 前記区切り装置(900)が、前記飛行チャンバの断面積よりも少なくとも20%大きい断面積を有する拡大トンネル部分(902)を含み、前記拡大トンネル部分(902)は、前記飛行チャンバの下流に配置されている、 32B 請求項26から31のいずれか一項に記載の風洞。」 2.補正の適否 (1)本件補正に含まれる補正事項 本件補正は、特許請求の範囲について、以下に挙げる補正事項を含むものである。 ア 補正事項1 本件補正前請求項2~3、6~7、10~15、19~20、22~25、32を削除する補正。 イ 補正事項2 本件補正前請求項4の構成4Aの「・・・前記接続部における記空気流の角度・・・」を「・・・前記接続部における前記空気流の角度・・・」とする補正。 ウ 補正事項3 本件補正前請求項29の構成29A、請求項30の構成30A及び請求項31の構成31Aに記載の「前記傾斜飛行チャンバ」を、「傾斜する前記飛行チャンバ」とする補正。 (2)新規事項の有無についての検討 ア 補正事項1について 補正事項1が本件出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面(以下「当初明細書等」という。)の記載に対しいわゆる新規事項を追加するものでないことは明らかである。 イ 補正事項2について 補正事項2が当初明細書等の記載に対しいわゆる新規事項を追加するものでないことは明らかである。 ウ 補正事項3について 当初明細書等の【0010】には「本発明の一態様は、重力加速度の方向に対して傾斜した試験セクション(飛行チャンバとも呼ばれる)を有する風洞装置を提供し、」なる記載がある。 よって、補正事項1は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。 (3)本件補正の目的についての検討 ア 補正事項1 補正事項1は特許法第17条の2第5項第1号に掲げる請求項の削除を目的とするものに該当する。 イ 補正事項2 補正事項2は「記空気流」を「前記空気流」に訂正するものであるから、特許法第17条の2第5項第3号に掲げる誤記の訂正を目的とするものに該当する。 ウ 補正事項3 補正事項3は、「前記傾斜飛行チャンバ」を「傾斜する前記飛行チャンバ」と補正するものであるが、「前記傾斜飛行チャンバ」の記載より前に「飛行チャンバ」という記載はあるものの「傾斜飛行チャンバ」という記載はない。 すると、「前記傾斜飛行チャンバ」の記載が誤記であって、当該誤記を「傾斜する前記飛行チャンバ」と訂正するものと解されるから、上記補正事項3は特許法第17条の2第5項第3号に掲げる誤記の訂正を目的とするものに該当する。 (4)小括 以上(2)、(3)のとおりであるから、本件補正は適法になされたものである。 第3.原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、本願の請求項1に係る発明は、優先日前に公知となった下記の引用文献1に記載された発明、並びに下記引用文献2に記載された技術事項に基づいて、優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 引用文献1.特開昭55-35662号公報 引用文献2.実公昭51-33248号公報 第4.引用文献に記載された事項 1.引用文献1に記載された事項 (1)引用文献1の記載事項 原査定の拒絶の理由において提示された引用文献1には次の事項が記載されている(下線は当審にて付した。以下同様。)。 ア 1頁左欄第11~14行 「発明の詳細な説明 本発明は、人がある空間内において空中遊泳することができる空中遊泳施設を提供せんとするものである。」 イ 1頁右欄第15行~2頁左上欄第3行 「第1図は、本発明の空中遊泳施設の第1の実施例を示した概略図である。 この実施例における本発明の空中遊泳施設は、途中の部分が開口したC形の風路1を配設し、その風路1の開口部の上部2および開口部の下部3にそれぞれネット4および5を張設し、前記風路1中に送風機6を設置して空気が矢印方向、すなわち下部ネット5の下から上方向に流れるように構成する。」 ウ 2頁左上欄第11~13行 「この実施例は、以上の構成であるから、送風機6を作動させると、空気が風路1内を矢印方向に循環し、特に上部ネット4、下部ネット5間においては下から上(重力の働く方向と略逆方向)に流れるため、下部ネット5の反発力により跳躍すれば・・・」 エ 2頁右上欄第2~10行 「第2図は、本発明の空中遊泳施設の第2の実施例を示した概略図である。 この実施例における本発明の空中遊泳施設は、略々45°乃至80°程度に傾斜した風路1Aを配設し、その風路1Aの途中に上部ネット4Aおよび下部ネット5Aを適宜間隔をおいて張設し、前記風路1Aの下部に送風機6Aを設置して空気が矢印方向、すなわち下部ネット5Aの斜め下から斜め上に流れるように構成する。」 オ 2頁右上欄第11~12行 「なお、図示は省略したが、この実施例の場合も、第1図と同様に循環風路にすることもできる。」 カ 2頁右上欄第13行~同頁右下欄第1行 「この実施例は以上の構成であるから、送風機6Aを作動させると、空気が矢印方向に流れ、特に上部ネット4A、下部ネット5A間においては斜め下から斜め上に流れるため、下部ネット5Aの反発力により跳躍すれば前述の空気流の風圧を受けて斜め方向に上昇下降する。この実施例の空中遊泳施設は、風路1Aを斜め方向に設置したので、第1の実施例に示すように垂直方向に空気が流れるようにしたものと比較すると、風路1Aの断面積が第1図のものと同一直径の場合、その空中遊泳空間の面積が斜めになっている分だけ広くすることができる。またこのことは、逆に云うと、同一面積の空中遊泳空間をもち乍ら第1の実施例の場合より小さい直径の風路ですむことを意味し、それだけ容量の小さい送風機で同等の空中遊泳を可能ならしめることができる。 さらに、この実施例のように空中遊泳空間を斜めにすると、頭部を風の吹上げてくる方向に向けることにより、姿勢並びに方向の制御などがしやすくなり、それだけ長時間に亘る空中遊泳を可能ならしめることができる。 なお、第2図の実施例は、風路1Aが約45°の角度をなすものを示したが、この45°は殆んど最大限のものであり、実際上から云うと、60°~80°程度の傾き角をもつことが望ましい。 また、この実施例、および第1図に示す実施例において空中遊泳空間に囲いを設ける場合には、その周囲内壁に適宜の緩衝材を貼り付けることが望ましい。」 キ 2頁右下欄第2~7行 「また、第1図および第2図には図示を省略したが、送風機の速度は任意に可変することができるようにする。このようにすると、最初は単なるトランポリンとして使用し、次第に風力をあげて空中遊泳になれさせ、最終的には長時間に亘る空中遊泳を行なうようにすることもできる。」 ク 3頁右上欄第18行~同頁左下欄第7行 「この風圧受翼8は可撓性のある布またはプラスチックシートなどで五角形に成形したもので、各頂点および中央を人の頭,両手首,両足首,および背中の6点にホック,ボタン,バンドやテープなどの緊締具9にそれぞれ止めて遊泳者の背中に装着し、手足の伸縮による受圧面の変化と身体の回転運動とにより方向転換、上下動や姿勢制御を行うことができると共に、受圧面を大きくして空中における滞空時間を延長させることができるようにしたものである。」 ケ 3頁左下欄第14~19行 「空中において遊泳することが可能となり、しかも適度の運動とバランス保持のための運動神経の訓練となると共に、水泳の飛込み,スキーのジャンプ,スカイダイビングやハンググライダーなどの他のスポーツの訓練にもなる。」 (2)図面の記載 ・第1図 [図:0001397877000001.jpg] ・第2図 [図:0001397877000002.jpg] (3)看取事項 空中遊泳施設の実施例に関する第1図及び第2図から、下記ア、イの技術事項を看取できる。 ア 看取事項1: 「第2図に示す空中遊泳施設では、傾斜する風路1Aの上端及び下端が折れ曲がるように屈曲していること。」 イ 看取事項2: 「第1図に示す空中遊泳施設では、風路1がC形状であり、上下方向に延びる風路部分と左右方向に延びる風路部分の間が、なめらかに湾曲するよう連接していること。」 (4)認定事項 ア 認定事項1 上記(1)エの「この実施例における本発明の空中遊泳施設は、略々45°乃至80°程度に傾斜した風路1Aを配設し、」なる記載、上記(1)カの「・・・送風機6Aを作動させると、空気が矢印方向に流れ、特に上部ネット4A、下部ネット5A間においては斜め下から斜め上に流れるため、・・・この実施例の空中遊泳施設は、風路1Aを斜め方向に設置したので、第1の実施例に示すように垂直方向に空気が流れるようにしたものと比較すると、・・・なお、第2図の実施例は、風路1Aが約45°の角度をなすものを示したが、この45°は殆んど最大限のものであり、実際上から云うと、60°~80°程度の傾き角をもつことが望ましい。」なる記載から、垂直(上下)方向を90°として風路の傾き方向が定義され、傾斜して配設された風路1Aの傾斜角度は略々45°乃至80°程度であるものと解される。 そして、上記(1)カの「第2図の実施例は、風路1Aが約45°の角度をなすものを示した」なる記載及び上記(2)の第2図を参酌すると、風路1Aの上端にて屈曲した部分(以下「上端部」)は上下方向に延びており、風路1Aの下端にて屈曲した部分(以下「下端部」)は左右方向に延びているものと解される。 また、上記(2)の第2図を参酌すれば、風路1Aの中心軸線及び下端部の中心軸線は、互いに角度をなすよう配置されているといえる。 以上より、下記の事項が認定できる。 「空中遊泳施設が、略々45°乃至80°程度に設置した風路1Aと、角度90度で上下方向に延びる上端部と、角度0度で左右方向に延びる下端部とを備え、前記風路1Aの中心軸線が略々45°乃至80°程度であると共に、前記風路1Aの中心軸線及び前記下端部の中心軸線が、互いに対して角度をなすよう配置されること。」 イ 認定事項2 第2図を参酌すると、風路1Aと上端部、及び、風路1Aと下端部はそれぞれ屈曲した部分を介して連接されているものと解される。 そして、看取事項1を踏まえ、下記の事項が認定できる。 「風路1Aと上端部、及び、風路1Aと下端部は、それぞれ折れ曲がるように屈曲した連接部を介して連接していること。」 ウ 認定事項3 上記(1)エに「空気が矢印方向、すなわち下部ネット5の下から上方向に流れる」なる記載があることから、図2における矢印は空気の流れを示すものと解される。 そして、上記(2)の第2図を参酌すると、下記の事項が認定できる。 「下端部、風路1A、上端部の順に空気が流れ、その流れ方向は、下端部では左から右への左右方向、風路1Aでは斜め下から斜め上の斜め方向、上端部では下から上への上下方向であること。」 エ 認定事項4 上記(1)カの「風路1Aの断面積が第1図のものと同一直径の場合、その空中遊泳空間の面積が斜めになっている分だけ広くすることができる。」なる記載から、風路1Aが空中遊泳空間を構成するものと解される。 また、上記(1)カの「また、この実施例、および第1図に示す実施例において空中遊泳空間に囲いを設ける場合には、その周囲内壁に適宜の緩衝材を貼り付けることが望ましい。」なる記載から、空中遊泳空間の周囲が囲まれているものと解される。そして、上記(2)の第2図には風路1Aの上下方向に上部ネット4A及び下部ネット5Aが設けられている点が図示されており、上記(1)カの「特に上部ネット4A、下部ネット5A間においては斜め下から斜め上に流れるため、下部ネット5Aの反発力により跳躍すれば前述の空気流の風圧を受けて斜め方向に上昇下降する。」なる記載を参酌すれば、風路1Aにおける空中遊泳空間の上下は上部ネット4A及び下部ネット5Aで囲まれているものと解される。 さらに、上記(1)ウ及び(1)オから、第2図に示す空中遊泳施設における風路は、送風機6Aから風路1Aを通過した空気が送風機6A側に戻って循環する循環風路であると解される。 以上より、下記の事項が認定できる。 「風路1Aを備える空中遊泳施設の風路全体は、送風機6Aからの空気が循環する循環風路であり、上記循環風路の風路1Aは空中遊泳空間を構成すると共に、当該空中遊泳空間は上下がネットで、周囲が内壁で囲まれたものであること。」 (5)引用文献1に記載された発明 上記(1)~(4)によれば、引用文献1には次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているといえる。分説番号は本件補正発明の分説番号に概ね対応させて当審で付与した。また各構成単位末尾の括弧内には、引用元となった引用文献1の記載箇所を示した。 「a 適度の運動やスカイダイビングの訓練のために、送風機の風力をあげて人が長時間に亘る空中遊泳を行うことを可能とするように構成された空中遊泳施設であって、前記空中遊泳施設は((1)ア、(1)キ、(1)ケ)、 b 略々45°乃至80°程度に設置した風路1Aと、上下方向に延びる上端部と、左右方向に延びる下端部とを有し、送風機6Aからの空気が循環する循環風路であって、前記風路1A及び前記下端部は中心軸線を有すると共に、前記風路1Aは上下がネットで、周囲が内壁で囲まれたものである空中遊泳空間を構成し、該空中遊泳空間にて風圧受翼8を装着した人が手足の伸縮による受圧面の変化と身体の回転運動とにより方向転換、上下動や姿勢制御を行うことができると共に、受圧面を大きくして空中における滞空時間を延長させることを可能とし、前記風路1Aと前記上端部、及び、前記風路1Aと前記下端部は、それぞれ折れ曲がるように屈曲した連接部によって連接されると共に、前記風路1Aは周囲が囲まれた構造である循環風路と((1)ク、認定事項1、認定事項2、認定事項4)、 c 前記風路1Aの中心軸線及び前記下端部の中心軸線が、互いに対して角度をなす配置であり(認定事項1)、 d 上下がネットで、周囲が内壁で囲まれたものである空中遊泳空間内に空気流を生成するための送風機6Aとを備え((1)エ)、 e 前記風路1Aの中心軸線は、略々45°乃至80°程度の角度で傾斜し(認定事項1)、 f 前記下端部、前記風路1Aおよび前記風路1Aの下流に配置された上端部にて、前記空気流の流れ方向が変わると共に、送風機6Aから空気が循環する構成である(認定事項3、認定事項4)、 g 空中遊泳施設。」 2.引用文献2に記載された事項 (1)引用文献2の記載事項 原査定の拒絶の理由において提示された引用文献2には次の事項が記載されている(下線は当審にて付した。以下同様。)。 ア 第2頁左欄第41行~同頁右欄第7行 「以下本案を第7図に図示の実施例について説明すると、1は上下に傾動可能に設けられた吹出口で、その下流側に所要の模型を設置しうる測定部2を存して吸込口3が配置されている。 而して前記吸込口3は上下1対の可動板4,5よりなり、該可動板4,5の後端は回転支持部材6,7を介して風洞本体8に上下に傾動かつ風洞軸方向xに沿って移動自在に設けられている。 また前記吹出口1、測定部2および吸込口3に亘って密閉部材9が設けられている。」 イ 第2頁右欄第8~17行 「第7図に図示の実施例は前記したように構成されるので、前記吹出口1を上方へ傾動させて風洞軸に対して気流を大きな角度θ1に偏向させても該偏向角θ1に対応させて前記上方の可動板4を風洞軸方向に沿いx’に移動させかつ上方へθ2’傾動させるとともに前記上方の可動板5を風洞軸方向に沿いx”に移動させかつ上方へθ2”傾動させ固定すると、前記吹出口1より噴出した気流は剥離や渦を伴なわずに円滑な流れとなり、測定部2の流れは安定し、抵抗も少なくなる。」 ウ 第2頁右欄第22~23行 「また風洞全体としての流動抵抗を軽減できるため、送風機の出力を小さくできる。」 (2)図面の記載 ・第7図 [図:0001397877000003.jpg] (3)看取事項 上記(1)イによれば、第7図で「前記吹出口1を上方へ傾動させて風洞軸に対して気流を大きな角度θ1に偏向させ」ることから、下記アの事項が看取できる。 ア 看取事項1 「風洞本体8内部において、吹出口1から噴出した風洞軸に対して斜め上方に偏向した気流が、吹出口下流の可動板4,5を経た吸込口3では斜め下方に変わっていること」 (4)引用文献2の記載事項から認定できる事項 上記(1)~(3)から、引用文献2には次の技術事項(以下「技術事項2」という。)が記載されているといえる。 「吹出口1、その下流側に測定部2を介して吸込口3が配置され、これら吹出口1、測定部2および吸込口3に亘って密閉部材9が設けられている風洞において、吸込口3の上部及び下部にそれぞれ可動板4及び可動板5を設けることで、吹出口1から噴出した風洞軸に対して斜め上方に偏向した気流を斜め下方に変え、剥離や渦を伴わずに円滑な流れとして、測定部2の流れを安定させ、風洞全体としての流動抵抗を軽減すること。」 第5.対比 1.本願発明と引用発明1との対比 本願発明と引用発明1を対比する。 (1)ア 構成aにおける「適度の運動やスカイダイビングの訓練」はレクリエーションの1つであると解されるから、構成aの「適度の運動やスカイダイビングの訓練のため」は、構成A1の「研究またはレクリエーションのため」に相当する。 イ 構成aにおける「空中遊泳施設」は、送風機6A及び風路を備えて、長時間に亘る空中遊泳を可能にするような空気流を人工的に発生させるものである。 ウ 構成A1における「安定した持続的な人間飛行」に関し、本願の発明の詳細な説明の【0026】には「本明細書で使用される「安定した持続的な人間飛行」という用語は、無制限の時間にわたって実行され、所望の期間にわたって空気中で持続され得る人間のための飛行を指す。」なる記載がある。 また、【0039】には「スカイダイビングシミュレーション用に設計された垂直風洞における本装置の実装に関連する図2bに示す別の実施形態では、第1の部分6内の垂直流は、接続部3において、図2aに示すように水平面に対して5°~85°の角度β、好ましくは15°~60°の角度βを有する傾斜した流れ方向f2を有する滑空飛行セクション1にリダイレクトされる。」なる記載がある。 これに対し、構成aにおける空中遊泳施設は、送風機の風力をあげて人が長時間に亘る空中遊泳を行ってスカイダイビングの訓練を可能とするものであるので、スカイダイビングの遊泳状態を再現すべく人の空中遊泳状態は長時間に亘って持続され得るものと解される。 エ 上記ア~ウより、構成aの「適度の運動やスカイダイビングの訓練等のために、送風機の風力をあげて人が長時間に亘る空中遊泳を行うことを可能とするように構成され」ること、及び「空中遊泳施設」は、それぞれ構成A1の「研究またはレクリエーションのための安定した持続的な人間飛行を可能とするように構成され」ること、及び「風洞」に相当する。 (2)ア 構成bにおいて、下端部と風路1Aとは連接部を介して接続しているといえる。 すると、構成bの「中心軸線を有する下端部」、「中心軸線を有する風路1A」及び「下端部と風路IAの連接部」は、それぞれ構成B1の「第1の中心軸線を有する第1の部分」、「第2の中心軸線を有する第2の部分」及び「接続部」に相当する。 また、仮に構成B1の「接続」が、別の2部材を接続することを意味しているとしても、構成b1において、下線部と風路1Aとを角度を成すように接続することで、折れ曲がるように屈曲した連接部を有する形状とすることは技術常識であり、その場合の「折れ曲がるように屈曲した連接部」は、上記構成B1の「接続部」に相当する。 イ 構成Bの「内部で人間の持続的な滑空飛行を可能とし、」における「人間の持続的な飛行」に関しては上記(1)ウで述べたとおりである。また、「滑空飛行」に関し、本願の発明の詳細な説明の【0040】には「人間フライヤは、翼スーツのような滑空比(すなわち、水平面に対する滑空路角)を高める衣服を着用しても、しなくてもよい。飛行中、人間のスポーツフライヤは、運動技術によってこれらの空力的変数のいくつかを意図的に変更し、傾斜トンネルセクション内で飛行中に動き回ることが予想される。」なる記載があることから、傾斜したセクション内で翼スーツを着用した人間が自由に動き回る態様が、「滑空飛行」に含まれるものと解される。 一方、構成bにおける「空中遊泳空間」は略々45°乃至80°程度に設置された風路1Aにて構成され、当該「空中遊泳空間」内で「風圧受翼8を装着した人が手足の伸縮による受圧面の変化と身体の回転運動とにより方向転換、上下動や姿勢制御を行」って空中における滞在時間を長くすることを可能としている。 また、構成bにおける「空中遊泳空間」は、上下がネットで、周囲が内壁で囲まれた空間であるから、当該空間はチャンバであるといえる。 すると、構成bの「上下がネットで、周囲が内壁で囲まれたものである空中遊泳空間」及び「風圧受翼8を装着した人が手足の伸縮による受圧面の変化と身体の回転運動とにより方向転換、上下動や姿勢制御を行うことができると共に、受圧面を大きくして空中における滞空時間を延長させることを可能とし、」は、構成B1の「飛行チャンバ」及び「内部で人間の持続的な滑空飛行を可能とし、」に相当する。 (3)構成cの「前記風路1Aの中心軸線」、「前記下端部の中心軸線」及び前記各中心軸線が「互いに対して角度をなす配置であ」ることは、構成C1の「前記第2の中心軸線」、「第1の中心軸線」及び前記第1及び第2の中心軸線が「互いに対して第1の角度で配置され」ることに相当する。 (4)上記(2)イで述べたように、構成dの「上下がネットで、周囲が内壁で囲まれたものである空中遊泳空間」は、構成D1の「飛行チャンバ」に相当する。また、構成dの「送風機6A」は、構成D1の「少なくとも1つのファン」に相当する。 (5)ア 上記第4.1.(1)ウの「特に上部ネット4、下部ネット5間においては下から上(重力の働く方向と略逆方向)に流れるため、下部ネット5の反発力により跳躍すれば」なる記載及び上記第4.1.(1)カの「下部ネット5Aの反発力により跳躍すれば」なる記載がある。また、上記第4.1.(2)の第2図には下部ネット5Aが左右方向に設けられていることが図示されている。 すると、下部ネット5Aの反発力により跳躍する方向である上下方向における上から下が重力の働く方向であるといえる。 ここで、上記第4.1.(3)アにて述べたように、構成eにおける「略々45°乃至80°程度」は垂直(上下)方向を90°として定義したものであるから、当該90°と直交する0°の平面が、重力に直交する水平面を示すものであり、構成eにおける「略々45°乃至80°程度」は、「水平面に対して略々45°乃至80°程度」であると解される。 イ 構成eにおける「略々45°乃至80°程度」は、構成E1における「5°~85°」の範囲内である。 ウ 上記ア、イより、構成eの「前記風路1Aの中心軸線は、略々45°乃至80°程度で傾斜」することは、構成E1の「前記第2の中心軸線は、水平面に対して第2の角度であり、前記第2の角度は5°~85°であ」ることに相当する。 (6)上記「(1)エ」で述べたように、構成gの「空中遊泳施設」は、構成G1の「風洞」に相当する。 2.一致点 上記1.によれば、本願発明と引用発明1とは、次の点で一致する。 「 研究またはレクリエーションのための安定した持続的な人間飛行を可能とするように構成された風洞であって、前記風洞は、 第1の中心軸線を有する第1の部分と第2の中心軸線を有する第2の部分とを有し、前記第2の部分は飛行チャンバであり、内部で人間の持続的な滑空飛行を可能とし、前記第1の部分と前記第2の部分は接続部によって接続され、 互いに対して第1の角度で配置された前記第1の中心軸線および前記第2の中心軸線と、 前記飛行チャンバ内に空気流を生成するための少なくとも1つのファンと を備え、 前記第2の中心軸線は、水平面に対して第2の角度であり、前記第2の角度は5°~85°である、 風洞。」 3.相違点 本願発明と引用発明1は以下の点で相違する。 (1)相違点1 本願発明は、第1の部分と第2の部分とを有するものが「トンネル」であるのに対し、引用発明1は、風路1Aは上下がネットで、周囲が内壁で囲まれた構造であるものの、下端部および上端部を有する循環風路の具体的な形状が不明である点。 (2)相違点2 本願発明は、「前記第1の部分(6)、前記接続部および前記第2の部分(1)の下流に配置された導管の少なくとも1つが、前記空気流の角度または流れ場を調整する手段を備える」構成であるのに対し、引用発明1は、下端部、風路1Aおよび上端部を有する循環風路が、空気流の角度または流れ場を調整する手段を備えていない点。 第6.判断 1.相違点の検討 (1)相違点1について ア 本願発明の「第2の部分」に対応する引用発明における「風路1A」は、周囲が内壁で囲まれた構造であるから、トンネル状であるといえる。 イ 上記第4.1.(1)イの「途中の部分が開口したC形の風路1を配設し、その風路1の開口部の上部2および開口部の下部3にそれぞれネット4および5を張設し、」なる記載、上記第4.1.(1)ウの「送風機6を作動させると、空気が風路1内を矢印方向に循環し、」なる記載、及び看取事項2における「風路1がC形状であり、上下方向に延びる風路部分と左右方向に延びる風路部分の間が、なめらかに湾曲するよう連接していること」を踏まえれば、第4.1.(2)の第1図におけるC形の風路1は、上下方向に延びる風路部分と左右方向に延びる風路部分の間がなめらかに湾曲するように連接する構造の循環風路である。また、当該循環風路は、上端の開口から下端の開口まで空気が循環するものであるから閉じた管状、すなわちトンネル状であるといえる。 ウ そして、引用発明1の循環風路に対し、上記第1図記載の循環風路を適用して、上端部から下端部へ回送する循環部分として、上端部、第1図で左方向へ流れる左右方向の風路、第1図で下方向へ流れる上下方向の風路、そして前記下端部に連なる第1図で右方向へ流れる風路から構成される風路とすることは、上記第4.1(1)オの記載事項からみて、当業者が容易に想到し得たことである。 エ 上記ア~ウによれば、引用発明1から容易に想到しうる循環風路がトンネル状であるといえるから、前記「循環風路」は相違点1における「トンネル」に相当する。 (2)相違点2について ア 相違点2における本願発明の「前記空気流の角度または流れ場を調整する手段」について、本願の発明の詳細な説明を参酌すると、【0041】には「図3に示す実施形態では、水平トンネル6と傾斜トンネルセクション1とを接続する接続部3は、空気流の角度または流れ場を調整する手段を含む。この実施形態では、前記手段は、天井130および床140の両方における流れ方向転換促進セグメントを備える。」なる記載がある。 また、【0044】には「別の実施形態では、空気流の角度または流れ場を調整するための手段は、固定式または可動式であり得て、互いに個別に動くことができる回転ベーンを含むこともできる。」なる記載がある。 さらに、【0045】には「さらに別の実施形態では、空気流れ場の角度を調整する前記手段は、試験セクション(1)または任意の先行セグメントのいずれかの天井に取り付けられた単一の固定ベーンまたは角度調整可能な回転ベーンの使用を含むことができ、」なる記載がある。 加えて、【0033】には「流れ促進セグメント9,10は、特に、壁に沿って剥離されていない流れで流れ方向転換が行われ、傾斜飛行セクションで適切な流れ分布を達成するように設計され、持続的な滑空飛行訓練のために傾斜セクションの流れを貧弱にする可能性のある、後流、乱流渦、壁の剥離、低速ゾーンまたは他の流れじょう乱を避けるようにする。接続部全体にわたる幾何学的なトンネル壁の連続性は、壁の曲率が連続的な方向の微分で連続的になるように設計されているので、流れは接続部を通って壁に付着したままであり、流れじょう乱を回避する。」なる記載がある。 すると、上記「前記空気流の角度または流れ場を調整する手段を備える」ことには、少なくとも、流れ方向転換促進セグメントを備えること、固定ベーン又は回転ベーンを使用すること、及び、壁を接続部全体にわたって連続的にした形状にすること、が含まれる。 イ 引用発明1において、循環風路内で流れが変わる部分である「前記風路1Aと前記上端部の間」及び「前記風路1Aと前記下端部の間」は、折れ曲がるように屈曲した連接部で連接されているところ、流れ場を調整する必要があると解される。 ウ 上記第4.1.(1)のイ、ウ、上記看取事項2によれば、引用文献1には、第1図に係る実施形態として、空中遊泳施設において、送風機6の空気が風路1内を循環するよう、上下方向に延びる風路部分及び左右方向に延びる風路部分の間がなめらかに湾曲するよう連接した構造の循環風路とする技術事項が記載されているといえる。 そして、該技術事項は、上記アにおける「壁を接続部全体にわたって連続的にした形状にすること」に相当するといえるから、相違点2に係る構成F1の、「前記第1の部分、前記接続部および前記第2の部分の下流に配置された導管の少なくとも1つが、前記空気流の角度または流れ場を調整する手段を備える」ことに相当するといえる。 エ 上記(1)ウで説示したとおり、引用発明1の循環風路に対し、第1図に係る循環風路を適用することは当業者が容易に想到し得たことであり、該適用により容易に想到し得た循環風路は、上記ウの技術事項をも備えるものであるから、引用発明1において、相違点2の構成とすることは、引用発明1の循環風路に上記引用文献1の第1図に係る循環風路を適用することによって、当業者が容易になし得たことであるといえる。 オ 一方、一般に、管路において流れが変わる部分に整流装置を設けて流れ場を調整することは技術常識である。 また、引用文献2には、上記第2.2.(4)で認定した技術事項2が記載されている。 そして、引用発明1において、風路1Aからの右斜め上方への流れは、風路1Aの上端と前記上端部の間の連接部付近では、前記上端部の中心軸線に対し右方向へ偏向した流れとなる。この流れと風路1Aの中心軸線との関係は、上記技術事項2における、測定部2から吸込口3にかけての中心軸線に対し吹出口1から上方向へ偏向した流れが吹き出す状況での流れと中心軸線との関係と共通する。 よって、相違点2に係る「調整する手段」が、風洞内部に取り付ける何らかの付加部材のみを意味するとしても、引用発明1における風路1Aの上端と前記上端部の間の連接部に対し、上記技術事項2を適用して、可動板4及び可動板5に対応する可動板を上記上端部の左右壁に取り付け、風路1Aからの斜め上方への流れを、上端部との間の折れ曲がり部分において上方へ(ゆるやかに)変え、前記上端部に剥離や渦を伴わず導くようにし、その下流を含め流動抵抗を軽減するようにすることは、当業者が容易になし得たことである。 カ さらに、上記アで述べた固定ベーンに関し、原査定の拒絶の理由において周知文献として提示された特開昭61-268281号公報(以下「周知文献1」という。)及び米国特許出願公開第2015/0375125号明細書(以下「周知技術2」という。)には次の事項が記載されている(下線は当審にて付した。以下同様。)。 (ア)周知文献1の記載事項 (ア1)第1頁左欄第10~12行 「[発明の技術分野] 本発明はスカイダイビング体験装置に関するものである。」 (ア2)第2頁左上欄第6~18行 「前記風路2は、第2図に示すように、上方に向かって拡がっており、上方に行くにしたがって風速が漸減するようにしている。そのため風路下方より上方に行くにしたがって空気による浮揚力が漸減し、上下方向の浮遊位置が安定しやすい構造となっている。この風路2の入口部6にダクト7が連結し、このダクト7内に設置したファン3によって前記風路2内に送風するようになしている。また、このダクト7の湾曲部分7aにガイドベーン9を配設している。図ではダクト7の吸込口8が水平方向を向いているが、危険防止上、上方に向けてもよい。また、吸込口8に吸込防止柵8aを設置する。」 (イ)周知文献2の記載事項 (イ1)「[0047] ・・・ The present invention discloses a more efficient, compact, and economical wind tunnel. While the present invention is generally described as a vertical wind tunnel being intended for indoor skydiving applications, the teachings may be applied to wind tunnels employed for other purposes and therefore should not be limited to those intended for indoor skydiving applications.」 (当審訳:「[0047] 本発明・・・本発明は、より効率的で、小型で、経済的な風洞を開示している。本発明は、一般に、室内のスカイダイビングの適用のために意図された垂直風洞として説明されているが、本教示は、他の目的のために用いられた風洞に適用でき、したがって、室内のスカイダイビングの用途を意図するものに限定されるべきではない。」) (イ2)「[0079] As illustrated, the expanding corners of the vertical wind tunnel 100 (e.g., first expanding corner 106, second expanding corner 110, third expanding corner 116, and fourth expanding corner 118) may comprise a plurality of internal turning vanes 208. The plurality of internal turning vanes 208 are configured to assist in changing the airflow direction by 90 degrees.」 (当審訳:「[0079] 図示のように、縦型風洞100(例えば、第1の拡張角106、第2拡張角110、第3の拡張116と、第4の拡張角部118)の角部は、複数の内部転向ベーン208を含んでいてもよい。内部に複数の転向ベーン208は、空気流方向を90度変化させるのを助けるように構成される。」) (ウ)上記(ア)、(イ)に例示されるように、スカイダイビングの室内体験装置において風路内の空気流れの方向が変わる部分に固定ベーンを設けて流れ場を調整することは、周知技術である。 (エ)よって、上記オと同様に、相違点2に係る「調整する手段」が、風洞内部に取り付ける何らかの付加部材のみを意味するとしても、引用発明1に対し、上記(ウ)の周知技術を適用して、循環風路内で流れが変わる部分である連接部に固定ベーンを設けることにより、相違点2の構成とすることは、当業者が容易に成し得たことである。 キ まとめ 上記ア~カより、引用発明1の循環風路に対し上記イにおける引用文献1の技術事項を採用すること、または、引用発明1における連接部に対し、引用文献2に記載された技術事項2又は上記周知技術を適用することにより、相違点2の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。 (3)本願発明の効果について 上記(1)のとおり、相違点1については、引用発明1に対し、引用文献1の第1図記載の循環風路を適用したものに過ぎないから、引用発明1において上記相違点1の構成とすることによる作用効果は、当業者にとって引用文献1の記載から予測可能なものである。 また、上記(2)のとおり、相違点2については、引用文献1の技術事項を採用したもの、または、引用文献2に記載された技術事項2又は上記周知技術を適用したものに過ぎないから、引用発明1において上記相違点2の構成とすることによる作用効果は、引用文献1の技術事項、引用文献2に記載された技術事項2又は周知技術から当業者にとって予測可能なものであり、本願発明は引用発明1、前記技術事項、前記技術事項2及び周知技術と比較して格別な作用効果を奏するものとはいえない。 2.請求人の主張について 請求人は審判請求書において本願発明(下記請求人の主張においては「本件発明」)の進歩性に関し概略次の(1)、(2)に示すとおり主張している(下線は当審にて付した。以下同様。)。 (1)請求人の主張1について 「(4-2)本件発明と引用文献の発明との対比 ・・・ ここで、本件発明は、持続的な人間飛行を可能とすることを目的としたものであり、これに対して、引用文献1の発明は、空中滞空時間を延長させることを目的とするものです。空中滞空時間の延長という目的は、本件発明に想定する持続的な人間飛行の実現という目的とは大きく相違すると考えます。引用文献1には、「次第に風力をあげて空中遊泳になれさせ、最終的には、長時間に亘る空中遊泳を行なうようにすることもできる」と記載されていますが、これは、空中遊泳の時間を延ばすことが目的であり、本件発明に関する持続的な人間飛行を実現させるという目的とは相違すると考えます。 以上の目的の相違を踏まえつつ、本件発明と引用文献1の発明とを対比すると、まず、引用文献1は、本件発明でいう「内部で人間の持続的な滑空飛行を可能とする飛行チャンバ」を開示しないと思料します。 本件発明でいう飛行チャンバは、内部で人間の持続的な滑空飛行を可能とするものであるため、気密性が高く且つファンからの強い風を通す構成になるものです。これに対して、引用文献1におけるトランポリンから跳躍した際の滞空時間を延長させる程度の空間は、「内部で人間の持続的な滑空飛行を可能とする飛行チャンバ」と同一視されるものではないと考えます。引用文献1で想定しているような空間では、内部で人間の持続的な滑空飛行を実現することは困難であると思料されます。 ・・・ したがって、引用文献1における下部ネット5A上の空間は、本件発明の飛行チャンバのような持続的な飛行を実現できる構成にはなっていないと思料され、両者は同一視されるものではないと思料されます。 よって、引用文献1は、本件発明でいう「内部で人間の持続的な滑空飛行を可能とする飛行チャンバ」を開示しないと思料します。」 (2)請求人の主張2について 「 次に、引用文献1の発明は、本件発明は備える「前記第1の部分(6)、前記接続部および前記第2の部分(1)の下流に配置された導管の少なくとも1つが、前記空気流の角度または流れ場を調整する手段を備える」という構成も備えていません。本件発明が備える「空気流の角度または流れ場を調整する手段」は、本件発明が目的とする持続的な人間飛行の実現において非常に重要な構成になります。 ・・・ しかしながら、引用文献2に関する技術は、構造物に対する抵抗、揚力、振動特定等を求めるための流体試験装置に関するものです。したがって、まず、引用文献2の技術が属する分野は、トランポリンで跳躍した後の空中遊泳を実施させるための引用文献1の技術が属する分野と大きく相違するものであり、引用文献1の発明に属する技術の分野の当業者が、当然に又は容易に引用文献2の技術を考慮するとは必ずしも言えないと思料します。この点で、まず、引用文献2の技術を引用文献1に適用する動機付けは無いと思料されます。したがって、引用文献1と引用文献2とからは本件発明における空気流の角度または流れ場を調整する手段を容易には導けないと思料されます。 また、引用文献2に開示される空気流の角度を調整する手段は、傾動可能に構成された吹出口1で構成されます。そして、この傾動可能な吹出口1の機能乃至目的は、試験対象物に対する気流の向きを容易に調整することです。ここで、引用文献1の発明の開示内容を考えると、送風機6Aが、風路1A内から風路1Aの中心軸に沿って空気を送出するように構成されています。そして、空気の向きについて言及が一切無く、空気の向きの変更を許容する記載や、空気の向きを変更する必要性などについて一切開示されていません。そして、引用文献1においては、送風機6Aが風路1A内から風路1Aの中心軸に沿って空気を送出することで指向性のある気流が流れる構成になっているものと思料されます。してみると、引用文献1には空気の向きを変更する動機は一切無いように思料されます。 したがって、引用文献1の構成及び開示内容と、引用文献1における傾動可能な吹出口1の機能乃至目的とを考えると、引用文献2の技術を引用文献1に適用する動機付けは無いと思料されます。したがって、引用文献1と引用文献2とからは本件発明における空気流の角度または流れ場を調整する手段を容易には導けないと思料します。 また、その他の引用文献3~6においても、本件発明が備える、傾斜した、内部で人間の持続的な滑空飛行を可能とする飛行チャンバ及び「前記第1の部分(6)、前記接続部および前記第2の部分(1)の下流に配置された導管の少なくとも1つが、前記空気流の角度または流れ場を調整する手段」を導き得る開示事項は存在しないと思料されます。」 3.当審の見解 (1)請求人の主張1について 請求人の主張1について検討する。 上記「第5.1.(2)イ」で言及したとおり、本願の発明の詳細な説明を参酌すると、実施例の装置の滑空飛行セクション内において翼スーツを着用した人間が自由に動き回るという飛行動作が、本願発明の「滑空飛行」に含まれると解される。 一方、引用発明1は、本願発明と同様に、風路1Aの空中遊泳空間内において風圧受翼8を装着した人が、方向転換、上下動や姿勢制御を行うものであり、上記飛行動作と差異はないと解され、引用発明1において、上記飛行動作と同様の動作が可能な空間である「空中遊泳空間」は、本願発明の「飛行チャンバ」に対応することとなる。 したがって、「引用文献1は、本件発明でいう「内部で人間の持続的な滑空飛行を可能とする飛行チャンバ」を開示しないと思料します。」という旨の請求人の主張1を採用することはできない。 (2)請求人の主張2について 請求人の主張2について検討する。 引用発明1に対し引用文献2に記載された技術事項2を組み合わせる点については上記「1.(2)オ」にて述べたとおりである。 また、上記「1.(2)」で述べたように、本願発明の「前記空気流の角度または流れ場を調整する手段を備えること」は、引用文献1の技術事項、引用文献2に記載された技術事項2、上記周知技術に開示されている。 したがって、請求人の上記主張2を採用することはできない。 (3)以上のとおりであるから、上記請求人の主張は何れも採用できない。 第7 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明、引用文献1の技術事項、引用文献2に記載された技術事項2、及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。 したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2022-006822

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