特許拒絶査定不服審判
2024-002580
設備の自動化システムを分析するための方法、設備の自動化システムを少なくとも部分的にバーチャル運転するためのエミュレータおよび設備の自動化システムを分析するためのシステム
- 審判番号
- 2024-002580
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-534219
- 請求日
- 2024年02月14日
- 審決日
- 2025年09月12日
- 公報発行日
- 2026年02月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】アーファオエル・リスト・ゲーエムベーハー
- 【請求人代理人】村山 靖彦
- 【請求人代理人】実広 信哉
- 審判長/審判官
- 審判長 南 宏輔
- 審判官 ▲高▼見 重雄
- 審判官 萩田 裕介
- 分類
- P18 .537-WZ (G01M) / P18 .121-WZ (G01M)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項特許法36条6項2号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-534219「設備の自動化システムを分析するための方法、設備の自動化システムを少なくとも部分的にバーチャル運転するためのエミュレータおよび設備の自動化システムを分析するためのシステム」拒絶査定不服審判事件〔令和元年6月27日国際公開、WO2019/119012、令和3年2月22日国内公表、特表2021-507247〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2018年(平成30年)12月20日(パリ条約による優先権主張 2017年12月21日(AT)オーストリア)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯の概要は以下のとおりである。
令和 4年10月14日付け 拒絶理由通知書
令和 5年 1月23日 意見書・手続補正書
同年 4月 3日付け 拒絶理由通知書
同年 8月30日 意見書・手続補正書
同年 9月29日付け 拒絶査定
令和 6年 2月14日 審判請求書・手続補正書
同年 4月18日 上申書
同年 7月 9日 上申書
令和 7年 1月16日付け 拒絶理由通知書
同年 6月19日 意見書・手続補正書
以下では、令和7年1月16日付けの拒絶理由通知書を「当審拒絶理由通知」という。
第2 本願発明
本願の請求項1~5に係る発明は、令和7年6月19日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、そのうち本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次に特定されるとおりである。ここで、各構成単位冒頭の「A」などは便宜のため当審にて付した分説番号であり、以下、各構成単位について該分説番号を用いて「構成A」などということがある。
「 【請求項1】
A 環境センサ(4)を備える設備の自動化システムを分析するための方法(100)であって、以下の作業ステップ、すなわち、
B 前記設備のための環境シナリオをシミュレートするステップ(S1)と、
C センサモデルを用いて、シミュレートされた前記環境シナリオにおいて、少なくとも1つの環境センサをシミュレートするステップ(S2)であって、シミュレートされた前記環境シナリオにおけるシミュレートされた前記環境センサによって送信された信号がシミュレートされ、シミュレートされた前記環境シナリオは、シミュレートされた前記信号の、シミュレートされた前記環境シナリオにおける対象物との相互作用をシミュレートすることによってバーチャルに検出される、ステップと、
D 前記センサモデルを用いて、シミュレートされた前記環境シナリオにおけるシミュレートされた前記環境センサ、およびシミュレートされた前記環境シナリオを検出するためのシミュレートされた前記環境センサによって送信された、シミュレートされた前記信号の、シミュレートされた前記相互作用に基づいて、少なくとも1つの前記環境センサ(4)の観点から応答信号を導き出すステップ(S3)と、
E エミュレータ(1)を用いて前記応答信号を少なくとも1つの前記環境センサ(4)に出力するステップ(S4)であって、少なくとも1つの前記環境センサ(4)は、出力された前記応答信号に基づいてセンサデータを生成する、ステップと、
F 生成された前記センサデータを用いて、前記自動化システムおよび/あるいは前記設備を運転するステップ(S5)と、
G を備える、方法(100)。」
第3 当審における拒絶の理由
当審拒絶理由通知により通知した拒絶の理由のうち、請求項1に係る発明に関連する拒絶の理由の概要は、次のとおりである。
理由1:(明確性)この出願は、特許請求の範囲の請求項1の記載が明確でないので、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
理由2:(新規性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
理由3:(進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
1.独国特許出願公開第102007031040号明細書
第4 明確性について
1 請求項1には、「センサモデルを用いて、シミュレートされた前記環境シナリオにおいて、少なくとも1つの環境センサをシミュレートするステップ(S2)であって、シミュレートされた前記環境シナリオにおけるシミュレートされた前記環境センサによって送信された信号がシミュレートされ、シミュレートされた前記環境シナリオは、シミュレートされた前記信号の、シミュレートされた前記環境シナリオにおける対象物との相互作用をシミュレートすることによってバーチャルに検出される、ステップ」(構成C)との記載がある。
2 環境センサによる対象物の検出においては、一般的に、環境センサ(例えば超音波センサ)が信号(例えば超音波)を送信する工程(以下、「工程A」という。)、信号が対象物と相互作用する工程(例えば、超音波が対象物により反射する工程)(以下、「工程B」という。)、相互作用により発生した応答信号(例えば反射した超音波)が環境センサに到達する工程(以下、「工程C」という。)、環境センサが応答信号を受信する工程(以下「工程Dという。」)、及び、受信した応答信号から対象物の情報を含むデータを得る工程(以下、「工程E」という。)が行われることが技術常識であり、工程Eにより、環境センサが、対象物の位置等の情報を検出できるといえる。
3(1)構成Cには「シミュレートされた前記環境シナリオは」、「バーチャルに検出される」との記載がある。
そして、構成Cにおいては、「シミュレートされた前記環境シナリオは」、「バーチャルに検出される」ことは、「シミュレートされた前記環境シナリオにおける対象物との相互作用をシミュレートすることによって」なされるものと特定されており、「シミュレートされた前記環境シナリオにおける対象物との相互作用をシミュレートすること」は、工程Bをシミュレートすることであるといえる。よって、「シミュレートされた前記環境シナリオは」、「バーチャルに検出される」ことは、工程Bをシミュレートすることによってなされるものとなっている。
また、上記記載における「環境シナリオ」の「検出」とは、工程Eまで行った結果として、環境センサが行えるものであるといえる。しかしながら、構成Cにおいては、工程C~Eに関する事項は記載されておらず、上記の通り、工程Bをシミュレートすることによってなされるものとなっている。そして、工程Bをシミュレートすることで、「環境シナリオ」の「検出」が行えるとはいえない。
以上より、構成Cにおける「シミュレートされた前記環境シナリオは」、「バーチャルに検出される」との記載が、少なくとも工程Cのみをシミュレートすることを意味するのか、あるいは、工程C~Eをシミュレートすることを意味するのかわからず、不明確である。
(2)ア 構成Cにおける「シミュレートされた前記環境シナリオは」、「バーチャルに検出される」との記載が、少なくとも工程Cのみをシミュレートすることを意味すると解釈した場合、上記のとおり、工程Cのみでは「環境シナリオ」を「検出」できるとはいえないから、「検出される」との記載と矛盾が生じ、意味が不明確となる。
イ 構成Cにおける「シミュレートされた前記環境シナリオは」、「バーチャルに検出される」との記載が、工程C~Eをシミュレートすることを意味すると解釈した場合について検討する。
請求項1には、「前記センサモデルを用いて、シミュレートされた前記環境シナリオにおけるシミュレートされた前記環境センサ、およびシミュレートされた前記環境シナリオを検出するためのシミュレートされた前記環境センサによって送信された、シミュレートされた前記信号の、シミュレートされた前記相互作用に基づいて、少なくとも1つの前記環境センサ(4)の観点から応答信号を導き出すステップ(S3)」(構成D)、「エミュレータ(1)を用いて前記応答信号を少なくとも1つの前記環境センサ(4)に出力するステップ(S4)であって、少なくとも1つの前記環境センサ(4)は、出力された前記応答信号に基づいてセンサデータを生成する、ステップ」(構成E)との記載があり、構成Dは、工程Cをシミュレートすることに関するステップであり、構成Eは、工程D、Eを行うことに関するステップであるといえる。
そうすると、請求項1においては、工程C~Eが重複して実施されることとなり、工程C~Eに関して、構成Cにおける「シミュレートされた前記環境シナリオは」、「バーチャルに検出される」との記載と、構成D及びEとの関係がわからず、意味が不明確となる。
ウ 以上の通り、構成Cにおける「シミュレートされた前記環境シナリオは」、「バーチャルに検出される」との記載が、少なくとも工程Cのみをシミュレートすることを意味すると解釈した場合、及び、工程C~Eをシミュレートすることを意味すると解釈した場合のいずれについても、意味が不明確である。
4 上記3で示したとおり、構成Cにおける「シミュレートされた前記環境シナリオは」、「バーチャルに検出される」との記載が、どの工程をシミュレートすることに対応するのかわからず不明確であることに対応して、当該事項を含むものである「センサモデルを用いて、シミュレートされた前記環境シナリオにおいて、少なくとも1つの環境センサをシミュレートするステップ(S2)」についても、工程A~Eのうち、どの工程をシミュレートするステップであるのかわからず不明確である。また、構成Cの「センサモデル」についても、どの工程をシミュレートするためのどのようなモデルであるのかわからず、不明確である。
5 以上より、請求項1における、「センサモデルを用いて、シミュレートされた前記環境シナリオにおいて、少なくとも1つの環境センサをシミュレートするステップ(S2)であって、シミュレートされた前記環境シナリオにおけるシミュレートされた前記環境センサによって送信された信号がシミュレートされ、シミュレートされた前記環境シナリオは、シミュレートされた前記信号の、シミュレートされた前記環境シナリオにおける対象物との相互作用をシミュレートすることによってバーチャルに検出される、ステップ」(構成C)との記載は、不明確である。
よって、本願発明は、明確でない。
6 審判請求人の主張について
審判請求人は、令和7年6月19日提出の意見書において、「以下に示す表において、審判官殿によって示された工程AからDが、補正後の請求項の方法のステップS1からS5と比較されています。」と主張しており、また、【表1】において、構成Cにおける「シミュレートされた前記環境センサによって送信された信号がシミュレートされ、シミュレートされた前記環境シナリオは、シミュレートされた前記信号の、シミュレートされた前記環境シナリオにおける対象物との相互作用をシミュレートすることによってバーチャルに検出される」との事項は、「環境シナリオを検出するための信号が環境シナリオと作用」することに対応する旨の主張をしている。
しかしながら、構成Cにおける「シミュレートされた前記環境シナリオは」、「バーチャルに検出される」との記載において、「検出」は、工程Eまで行った結果として環境センサが行えるものであって、環境シナリオを検出するための信号が環境シナリオと作用することが「検出」であるとはいえないから、構成Cの記載から上記の対応関係が明らかであるとはいえず、したがって、審判請求人の上記主張は請求項1の記載に基づくものではなく、採用できない。
第5 新規性、進歩性について
1 引用文献の記載等
(1) 当審拒絶理由通知において引用文献1として引用された独国特許出願公開第102007031040号明細書(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに次の記載がある。なお、aウムラウトはa、oウムラウトはo、uウムラウトはu、エスツエットはsと表記した。また、原文の摘記の後に当審訳を示す(下線は当審において付与した。以下同様。)。
ア 「[0002] Fahrerassistenzsysteme unterstutzen den Fahrer eines Fahrzeugs,um beispielsweise die Fahrsicherheit oder auch nur den Fahrkomfort zu erhohen. Bekannt sind adaptive Geschwindigkeits- und Abstandsregelungen (Adaptive Cruise Control ACC), die fur die Einhaltung einer bestimmten Geschwindigkeit und eines Sicherheitsabstands zu vorausfahrenden Fahrzeugen mittels Motor- und Bremseingriff sorgen, wobei fortschrittliche Systeme auch uber eine Stop-and-Go-Funktion verfugen.」
(運転者支援システムは、例えば走行安全性又は走行快適性を高めるために、車両の運転者を支援する。適応速度および距離制御(アダプティブ・クルーズ・コントロールACC)が知られており、これは、先行車両に対する特定の速度および安全距離を維持するために、モータおよびブレーキ介入を介して提供される。この場合、進歩したシステムは、停止および停止機能を有する。)
イ 「[0005] Die Erfindung hat eine Prufvorrichtung und ein Prufverfahren fur ein in einem Fahrzeug integriertes Fahrerassistenzsystem zum Gegenstand. Zum Fahrerassistenzsystem, das im folgenden abkurzend als Assistenzsystem bezeichnet wird, gehoren eine Fahrzeugsensorik fur die Aufnahme eines Signals aus dem Umfeld des Fahrzeugs.
・・・
[0006] Nach der Erfindung umfasst die Prufvorrichtung einen Simulator zur Simulation des Umfelds und eine mit dem Simulator signaltechnisch verbundene Simulator-Sendeeinrichtung fur die Ausstrahlung eines das simulierte Umfeld reprasentierenden, von der Fahrzeugsensorik aufnehmbaren Umfeldsimulationssignals zur Auslosung einer Reaktion des Assistenzsystems, Der Simulator simuliert das Umfeld mittels maschineller Datenverarbeitung und steuert die Simulator-Sendeeinrichtung, so dass diese das Umfeldsimulationssignal ausstrahlt. Die Datenverarbeitung kann insbesondere eine elektronische sein. Das Umfeldsimulationssignal kann insbesondere ein elektromagnetisches Signal sein, beispielsweise aus dem optischen Frequenzbereich, dem Radarbereich oder dem Radiowellenbereich. Es kann beispielsweise aber auch ein Schallsignal sein. Die Simulator-Sendeeinrichtung umfasst einen oder mehrere Strahler, der oder die im Folgenden auch als Sender bezeichnet wird oder werden. Die Simulator-Sendeeinrichtung ist an die Fahrzeugsensorik, die dem Assistenzsystem die erforderlichen Informationen aus dem Umfeld liefert, angepasst. Ist die Fahrzeugsensorik beispielsweise eine Radarsensorik, so ist oder umfasst die Simulator-Sendeeinrichtung einen oder mehrere Radarsender fur die Ausstrahlung eines angepassten Radarsignals. Sinngemas das gleiche gilt fur andere Arten der Fahrzeugsensorik, beispielsweise eine Lasersensorik, Infrarotsensorik oder andere optische Sensorik oder eine Ultraschallsensorik. Die fur die Funktionstuchtigkeit des zu uberprufenden Assistenzsystems erforderliche Fahrzeugsensorik wird jedenfalls in die Uberprufung bzw. den Prufkreis eingeschlossen, erfindungsgemas jedoch nicht durch gegenstandliche Nachbildung eines Umfelds, sondern durch Erzeugung eines virtuellen Umfelds, das mittels der ausgestrahlten Informationen, dem Umfeldsimulationssignal, gebildet wird. Das Umfeldsimulationssignal wird von dem Assistenzsystem uber die Fahrzeugsensorik wie ein gegenstandliches Umfeld wahrgenommen.」
([0005] 本発明は、車両に統合された運転者支援システムのための検査装置および検査方法に関する。以下で簡単にアシスタントシステムと称する運転者支援システムには、車両の周囲からの信号を受け取るための車両センサが含まれる。
・・・
[0006] 本発明によれば、検査装置は、環境をシミュレートするシミュレータと、シミュレータに信号技術的に接続され、車両センサによって記録可能な、支援システムの応答をトリガするためのシミュレーション信号を送信する送信装置とを備えている。データ処理は、特に電子的であってよい。環境シミュレーション信号は、特に、例えば、光周波数領域、レーダ領域又は電波領域からの電磁信号であってよい。しかし、例えば、音響信号であってもよい。シミュレータ送信装置は、一つまたは複数の放射器を含み、これらの放射器は、以下では送信器とも呼ばれるか、または送信器とも呼ばれる。シミュレータ送信装置は、車両センサに適合されており、この車両センサは、支援システムに周辺から必要な情報を供給する。車両センサが例えばレーダセンサ装置である場合、シミュレータは、送信装置を、適合されたレーダ信号を放射するための一つまたは複数のレーダ送信機を含む。同様に、他の種類の車 両センサ装置、例えばレーザセンサ装置、赤外線センサ装置又は他の光学センサ装置又は超音波センサ装置にも当てはまる。検査される支援システムの機能のために必要な車両センサは、いずれにせよ検査ないし検査回路に含まれている。しかし、本発明によれば、環境の客観的なシミュレーションによっては、むしろ、放射された情報、環境シミュレーション信号を用いて形成される仮想的な環境を生成することによって形成される。環境シミュレーション信号は、支援システムから車両センサ装置を介して、例えば、対象環境のように認識される。)
ウ 「[0011] Fur die Uberprufung eines Assistenzsystems, das mit einer aktiven Fahrzeugsensorik arbeitet, beispielsweise einer Radar-, Lidar-, Schall- oder IR-Sensorik, weist die Prufvorrichtung in bevorzugten Ausfuhrungen eine Simulator-Empfangseinrichtung fur den Empfang eines von solch einer Fahrzeugsensorik ausgestrahlten Abtastsignals auf. Der Simulator verfugt uber eine Verarbeitungseinrichtung fur die Verarbeitung der empfangenen Abtastsignale und Erzeugung von Steuersignalen fur die Simulator-Sendeeinrichtung, damit diese in Abhangigkeit von dem empfangenen Abtastsignal in Richtung auf die Fahrzeugsensorik ein Umfeldsimulationssignal ausstrahlt, das ein ortsfestes, ein gemeinsam mit dem Fahrzeug bewegtes oder ein relativ zu dem Fahrzeug sich bewegendes Objekt simuliert. Das Umfeldsimulationssignal kann mit einer Frequenz ausgestrahlt werden, die von der des Abtastsignals entsprechend einer Geschwindigkeitsdifferenz des Fahrzeugs zum simulierten Objekt abweicht. Der Simulator kann fur eine simulierte Geschwindigkeitsdifferenz eine Frequenzverschiebung ausfuhren und uber die Sendeeinrichtung ein in der Frequenz zum Abtastsignal verschobenes Umfeldsimulationssignal aussenden.」
([0011] レーダ、ライダー、音、赤外線センサなどの能動型車両センサを用いて動作する支援システムを試験するために、有利な実施形態では、検査装置は、このような車両センサによって発せられた走査信号を受信するためのシミュレータ受信装置を有している。シミュレータは、受信したサンプル信号を処理する処理手段と、受信したサンプル信号に応答して、車両と共に移動するか、車両に対して相対的に移動する相対的に移動する物体をシミュレートし、環境シミュレーション信号を、受信したサンプル信号に応答して、車両センサに向けて送信する送信手段のための制御信号を生成する。環境シミュレーション信号は、車両の速度差に対応したサンプリング信号の周波数からシミュレートされた物体までの周波数で放射することができる。シミュレータは、シミュレートされた速度差に対して周波数シフトを実行し、送信装置を介して、サンプリング信号に対して周波数でシフトされた環境シミュレーション信号を送信することができる。)
エ [0013] In vereinfachten Ausfuhrungsformen kann auch zur Uberprufung von Fahrerassistenzsystemen, die mit einer aktiven Fahrzeugsensorik arbeiten, auf den Empfang des ausgestrahlten Abtastsignals verzichtet werden, wenn die Fahrzeugsensorik dem Simulator bekannt ist und er dementsprechend die Simulator-Sendeeinrichtung abgestimmt auf die Fahrzeugsensorik steuern kann, so dass die Simulator-Sendeeinrichtung ein von der Fahrzeugsensorik aufnehmbares und vom Fahrerassistenzsystem verarbeitbares Umfeldsimulationssignal ausstrahlt.」
([0013]簡略化された実施形態では、車両センサがシミュレータに認識されており、シミュレータが車両センサと連携してシミュレータ送信装置を制御できる場合、アクティブな車両センサで動作する運転者支援システムをテストするために、発信されたスキャン信号の受信を省略することもできる。これにより、シミュレータ送信装置は、車両センサによって受信され、運転者支援システムによって処理される環境シミュレーション信号を発信する。)
オ 「[0017] Der Simulator hat in bevorzugten Ausfuhrungen auf einen Speicher der Prufvorrichtung Zugriff, in dem fur jedes mittels der Prufvorrichtung uberprufbare Fahrzeugmodell die fur eine Identifikation erforderlichen Vergleichsdaten abgelegt sind. Sind das zu uberprufende Fahrzeug und somit dessen Fahrerassistenzsystem(e) identifiziert, werden die fur die Umfeldsimulation erforderlichen Daten aus einem anderen Speicher oder Speicherbereich der Prufvorrichtung geladen. Der Simulator hat Zugriff auf eine Datenbank, in der die fur die Identifikation erforderlichen Vergleichsdaten der unterschiedlichen Fahrzeugmodelle und zu jedem uberprufbaren Modell die fur die Simulation erforderlichen Fahrzeugdaten abgelegt sind. Die Fahrzeugdaten konnen die Sensorik des jeweiligen Fahrzeugs beschreiben, beispielsweise die Art des Sensors oder der mehreren Sensoren und optional auch detaillierte Informationen zu dem oder den Sensor(en), beispielsweise die Frequenz des Abtastsignals. In der Datenbank konnen ferner die Umfeldszenarien oder nur ein Umfeldszenario gespeichert sein. Nach der Identifikation des zu uberprufenden Fahrzeugs, letztlich des zu uberprufenden Fahrerassistenzsystems oder der mehreren Fahrerassistenzsysteme des jeweiligen Fahrzeugs, wird das dem identifizierten Fahrzeug entsprechende Umfeldszenario oder eines oder mehrere der Umfeldszenarien ausgewahlt, beispielsweise aus der Datenbank geladen, und simuliert. Sind unterschiedliche Umfeldszenarien gespeichert und unterschiedliche Fahrzeugmodelle uberprufbar, wahlt der Simulator anhand der Fahrzeugdaten das zu simulierende Umfeldszenario oder die mehreren Umfeldszenarien fur das betreffende Fahrzeugmodell aus und steuert den oder die Sender oder Empfanger der Simulator-Sendeeinrichtung abgestimmt auf das jeweilige Assistenzsystem und dessen Sensorik.」
([0017] 好ましい実施形態では、シミュレータは、検査装置のメモリにアクセスし、このメモリには、検査装置によって検査可能な各車両モデルに対して、識別に必要な比較データが格納されている。検査すべき車両、したがってその運転者援助システム(e)が識別されると、環境シミュレーションに必要なデータが検査装置の別のメモリまたはメモリ領域からロードされる。シミュレータはデータバンクへのアクセスを有しており、このデータバンクには、識別に必要な種々異なる車両モデルの比較データと、各検査可能なモデルに対して、シミュレーションに必要な車両データが格納されている。車両データは、それぞれの車両のセンサ、例えばセンサの種類又は複数のセンサのセンサ、及び場合によってはセンサに関する詳細な情報、例えば走査信号の周波数を示すことができる。データベース内には、環境シナリオまたは環境シナリオが記憶されていてもよい。検査すべき車両を識別し、最終的には検査すべき運転者支援システム又は各車両の複数の運転者支援システムを識別した後、識別された車両に相応する環境シナリオ又は一つ又は複数の環境シナリオが、例えばデータバンクからロードされ、シミュレーションされる。異なる環境がシナリオを格納し、異なる車両モデルが検証可能である場合、シミュレータは、車両データに基づいて、シミュレーションすべき環境を選択するか、または複数の環境シナリオを選択し、シミュレータの送信器または受信器を、それぞれの支援システムおよびそのセンサ装置に同調して制御する。)
カ 「[0020] In bevorzugten Ausfuhrungen umfasst die Prufvorrichtung eine Erfassungseinrichtung fur eine automatische, sensorische Erfassung der Reaktion des Fahrerassistenzsystems. Die Erfassungseinrichtung kann insbesondere eine Kamera, beispielsweise Video-Kamera, und eine Bildverarbeitungseinrichtung fur eine automatische Verarbeitung und Auswertung der mittels der Kamera in Form von Bildinformation aufgenommenen Reaktion aufweisen. Mittels Kamerauberwachung konnen beispielsweise Reaktionen eines Beleuchtungs-Assistenzsystems oder vom Assistenzsystem fur den Fahrer abgegebene optische Warnsignale aufgenommen und ausgewertet werden. Anstelle oder zusatzlich zu einer Kamera oder mehrerer Kameras kann die Erfassungseinrichtung auch uber einen oder mehrere akustische Sensoren, vorzugsweise ein oder mehrere Mikrofon(e) verfugen. Ein akustischer Sensor kann beispielsweise im Fahrzeuginneren angeordnet werden, um vom Assistenzsystem abgegebene akustische Warnsignale aufzunehmen. Mittels einer Gerauschmessung kann beispielsweise auch ein Brems-Assistenzsystem uberwacht werden oder ein haptischer Warngeber, beispielsweise ein Vibrationswarngeber.」
(好ましい実施形態では、検査装置は、運転者支援システムの応答を自動的に検出するための検出手段を含む。検出手段は、カメラ、例えばビデオカメラ、及び画像情報の形でカメラによって記録された反応を自動的に処理し評価するための画像処理手段を有することができる。カメラ監視によって、例えば照明支援システムの応答、または運転者に対して支援システムから発せられた光学警告信号を記録し、評価することができる。カメラ又は複数のカメラの代わりに又はそれに加えて、検出手段は、一つ又は複数の音響センサ、好ましくは一つ又 は複数のマイクロフォンを有することもでき、例えば、音響センサを、車両内部に配置して、アシスタントシステムからの音響警告信号を受信することができる。騒音測定によって、例えばブレーキアシストシステムを監視することもできるし、又は触覚警告発生器、例えば振動警告発生器を監視することもできる。)
キ 「[0038] Fuhrt das Assistenzsystem die Abstandsmessung mittels frequenzmoduliertem Radar aus, kann der Simulator 2 - 6 so eingerichtet sein, dass er den Abstand zum simulierten Objekt durch gezielte Einstellung und vorzugsweise auch Variation der Zeitdauer simuliert, die vom Empfang des Abtastsignals SV bis zur Ausstrahlung des Umfeldsimulationssignals SIM verstreicht. Anstelle solch einer auf den zu simulierenden Abstand angepassten Zeitverzogerung kann der Simulator 2 - 6 auch so eingerichtet sein, dass er fur die Simulation des Abstands nur die Frequenz gezielt verschiebt. In noch einer Alternative kann der Simulator 2 - 6 auch so ein gerichtet sein, dass er das Umfeldsimulationssignal SIM mit einer gezielten Zeitverzogerung und einer darauf abgestimmten Frequenzverschiebung ausstrahlt.」
([0038] 支援システムが、周波数変調レーダによる距離測定を実行する場合、シミュレータ2-6は、シミュレートされた物体までの距離をシミュレートし、好ましくは、サンプル信号SVの送信までの時間の変化をシミュレートするように構成することができる。シミュレーションされるべき距離に適合されたこのような時間遅延の代わりに、シミュレータ2-6は、距離のシミュレーションのために周波数だけを選択的にシフトするように構成することもできる。さらに別の実施形態では、シミュレータ2-6は、また、意図された時間遅延と調整された周波数シフトとを有する、環境シミュレーション信号SIMを放射するように向けられていてもよい。)
(2) 引用文献1に記載された発明
上記(1)ア~キの記載事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「車両の周囲からの信号を受け取るための車両センサ装置を含む、車両に統合された運転者支援システムのための検査方法であって、(段落 [0005])
運転者支援システムは、例えば、先行車両に対する特定の速度および安全距離を維持するために、モータおよびブレーキ介入を介して提供されるアダプティブ・クルーズ・コントロールACCであり、(段落[0002])
検査装置は、環境をシミュレートするシミュレータと、シミュレータに信号技術的に接続され、車両センサ装置によって記録可能な、支援システムの応答をトリガするためのシミュレーション信号を送信する送信装置と、車両センサ装置によって発せられた走査信号を受信するためのシミュレータ受信装置とを備え、(段落[0006]、[0011])
シミュレータ受信装置は、車両センサ装置によって発せられた走査信号を受信し、(段落[0011])
シミュレータは、受信したサンプル信号を処理し、受信したサンプル信号に応答して、車両と共に移動するか、車両に対して相対的に移動する物体をシミュレートし、支援システムが周波数変調レーダによる距離測定を実行する場合、意図された時間遅延および調整された周波数シフトを有する環境シミュレーション信号を車両センサに向けて送信する送信手段のための制御信号を生成し、(段落[0011]、[0038])
送信装置は、車両センサに向けて環境シミュレーション信号を送信し、(段落[0006]、[0011])
環境シミュレーション信号は、支援システムから車両センサ装置を介して、対象環境のように認識され、検査装置は、運転者支援システムの応答を自動的に検出し、(段落[0006]、[0020])
シミュレータは、データバンクにアクセスし、データバンクには、各検査可能なモデルに対して、シミュレーションに必要な車両データが格納されており、車両データは、それぞれの車両のセンサ装置の種類、及びセンサに関する詳細な情報、例えば走査信号の周波数を含み、データベース内には、環境シナリオが記憶されており、検査すべき車両を識別し、識別された車両に相応する環境シナリオが、データバンクからロードされ、シミュレーションされ、(段落[0017])
車両センサがシミュレータに認識されており、シミュレータが車両センサと連携してシミュレータ送信装置を制御できる場合、アクティブ車両センサで動作する運転者支援システムをテストするために、発信された走査信号の受信を省略することもできる、(段落[0013])
検査方法。(段落 [0005])」
2 対比、判断
(1)対比
本願発明と引用発明とを対比する。
ア 構成A、Gについて
引用発明の「車両センサ」、「車両」及び「検査方法」は、それぞれ、本願発明の「環境センサ(4)」、「設備」及び「分析するための方法(100)」に相当する。
引用発明において、「先行車両に対する特定の速度および安全距離を維持するために、モータおよびブレーキ介入を介して提供されるアダプティブ・クルーズ・コントロールACCであ」る「運転者支援システム」は、「先行車両に対する特定の速度および安全距離を維持するため」の「モータおよびブレーキ介入」を自動化するシステムであることは明らかであるから、本願発明の「自動化システム」に相当する。
よって、引用発明において、「車両の周囲からの信号を受け取るための車両センサを含む、車両に統合された運転者支援システムのための検査方法」は、本願発明の「環境センサ(4)を備える設備の自動化システムを分析するための方法(100)」に相当する。
イ 構成Bについて
引用発明において、「環境をシミュレートするシミュレータ」が「シミュレート」する「環境」は、本願発明の「環境シナリオ」に相当する。
また、引用発明の「シミュレータ」が「シミュレート」する「車両と共に移動するか、車両に対して相対的に移動する物体」は、「環境」の一部であることは明らかであるから、引用発明において「車両と共に移動するか、車両に対して相対的に移動する物体をシミュレート」することは、本願発明において、「前記設備のための環境シナリオをシミュレートする」ことに相当する。
よって、引用発明において、「環境をシミュレートするシミュレータ」が「車両と共に移動するか、車両に対して相対的に移動する物体をシミュレート」するステップは、本願発明の「前記設備のための環境シナリオをシミュレートするステップ(S1)」に相当する。
ウ 構成Cについて
(ア)上記第4で説示したとおり構成Cの記載は不明確であるが、発明の詳細な説明の記載を参酌し、構成Cにより特定される事項の意味について、以下検討する。
a 構成Cに関して、本願の発明の詳細な説明には、以下の記載がある。
「【0014】
好ましい一実施形態において、少なくとも1つの環境センサは、センサモデルを用いてシミュレートされる。その際、シミュレートされた環境シナリオは、シミュレートされた少なくとも1つの環境センサによってバーチャルに検出され、好適にはバーチャルに検出されたシミュレートされた環境シナリオに基づいて、応答信号が生成される。その際、特に、少なくとも1つの環境センサは、設備の周辺の物理的な大きさたとえば車両を取り巻く対象物までの距離を、シミュレートされた環境シナリオにおいて検出特に測定できるように、センサモデルによってシミュレートされる。それによって、シミュレートされた環境シナリオは、応答信号によって、特に確実かつ詳細に特徴付けられる。その上それによって、応答信号を導き出す際に、シミュレートされた環境シナリオに関して少なくとも1つの環境センサの観点を考慮に入れることが容易になる。
【0015】
好ましいさらなる一実施形態において、シミュレートされた環境シナリオをバーチャルに検出するための信号、特にその拡散と強度、および応答信号が、センサモデルによって物理的なモデルに基づいてシミュレートされる。好適には、少なくとも1つの環境センサを、シミュレートされた環境シナリオ内部に複写するのに、すなわち、少なくとも1つの環境センサあるいは少なくともその機能、特に信号の送信を、シミュレートされた環境シナリオ内部にシミュレートするのに、センサモデルが適している。物理的なモデルに基づいて、特にシミュレートされた少なくとも1つの環境センサから送信される信号たとえば超音波信号の反射、散乱、吸収をシミュレートでき、それによって、シミュレートされた環境シナリオを特に正確かつ現実に忠実に検出することが可能になる。」
b 本願発明において、「シミュレートされた前記環境シナリオは」「バーチャルに検出される」ことは、「シミュレートされた前記環境シナリオにおける対象物との相互作用をシミュレートすることによって」なされるものと特定されている。
さらに、上記(ア)における、「シミュレートされた環境シナリオは、シミュレートされた少なくとも1つの環境センサによってバーチャルに検出され、好適にはバーチャルに検出されたシミュレートされた環境シナリオに基づいて、応答信号が生成される。」(段落【0014】)との記載を参酌すると、本願発明において、「前記環境シナリオは」「検出される」ことは、環境センサによって送信された信号が対象物に到達し、相互作用が発生することを意味し、本願発明において、「シミュレートされた前記環境シナリオは、」「バーチャルに検出される」ことは、環境センサによって送信された信号が環境シナリオにおける対象物に到達し、相互作用が発生することをシミュレートすることを意味すると解される。
そして、本願発明において、「シミュレートされた前記環境シナリオは、」「バーチャルに検出される」ことは、相互作用が発生した後、応答信号が環境センサに入力され、環境センサが応答信号から対象物の位置等を検出することをシミュレートすることまでは含まないと解される。
これは、本願発明において、構成Dの「応答信号を導き出すステップ(S3)」、構成Eの「少なくとも1つの前記環境センサ(4)は、出力された前記応答信号に基づいてセンサデータを生成する、ステップ」として、相互作用が発生した後のステップが、構成Cにおける「ステップ」とは別のステップとして特定されていることとも、整合するものである。
c 本願発明の「センサモデル」は、「シミュレートされた前記環境シナリオにおいて、少なくとも1つの環境センサをシミュレートするステップ(S2)であって、シミュレートされた前記環境シナリオにおけるシミュレートされた前記環境センサによって送信された信号がシミュレートされ、シミュレートされた前記環境シナリオは、シミュレートされた前記信号の、シミュレートされた前記環境シナリオにおける対象物との相互作用をシミュレートすることによってバーチャルに検出される」のに「用い」られるものと特定されているから、本願発明の「センサモデル」は、「前記環境シナリオにおける対象物との相互作用」を含む、「シミュレートされた前記環境シナリオにおけるシミュレートされた前記環境センサによって送信された信号」の挙動をシミュレートするために用いられるものとなっている。
さらに、上記(ア)における、「シミュレートされた環境シナリオをバーチャルに検出するための信号、特にその拡散と強度、および応答信号が、センサモデルによって物理的なモデルに基づいてシミュレートされる。・・・特に信号の送信を、シミュレートされた環境シナリオ内部にシミュレートするのに、センサモデルが適している。物理的なモデルに基づいて、特にシミュレートされた少なくとも1つの環境センサから送信される信号たとえば超音波信号の反射、散乱、吸収をシミュレートでき、それによって、シミュレートされた環境シナリオを特に正確かつ現実に忠実に検出することが可能になる。」との記載を参酌すると、本願発明の「センサモデル」は、「環境センサ」そのもの自体の何らかのモデルではなく、環境センサから送信された信号の環境シナリオ内の挙動について表すモデルを意味するものと解される。
(イ) 上記(ア)で示した事項を踏まえて、引用発明と本願発明の構成Cとの対比を行う。
a 引用発明において、「シミュレート」された「車両と共に移動するか、車両に対して相対的に移動する物体」は、本願発明の「シミュレートされた前記環境シナリオにおける対象物」に相当する。
引用発明において、「意図された時間遅延および調整された周波数シフト」は、「シミュレート」された「環境」内における、「車両と共に移動するか、車両に対して相対的に移動する物体」と「サンプル信号」との相互作用、及び、「サンプル信号」の「車両センサ」と「物体」との間の伝播により生じるものであることは、明らかである。
また、引用発明は、「車両センサによって発せられた走査信号を受信し」、「シミュレータは、受信したサンプル信号を処理し」、「意図された時間遅延および調整された周波数シフトを有する環境シミュレーション信号を、車両センサに向けて送信する送信手段のための制御信号を生成」するものであるから、「走査信号を受信」後の「サンプル信号」は、実際の信号ではなく「シミュレータ」における計算上の仮想の信号であって、シミュレートされた信号であることは、明らかである。
そして、そのようなシミュレートされた信号である「サンプル信号」と「物体」との間の相互作用等に基づき生じる「意図された時間遅延および調整された周波数シフト」を有するものである「環境シミュレーション信号」を計算することは、本願発明において、「前記環境センサによって送信された信号がシミュレートされ、シミュレートされた前記環境シナリオは、シミュレートされた前記信号の、シミュレートされた前記環境シナリオにおける対象物との相互作用をシミュレートすることによってバーチャルに検出される」ことに相当する。
b 引用発明において、「意図された時間遅延および調整された周波数シフト」は、上記の通り、「シミュレート」される「環境」内における、「物体」と「サンプル信号」との相互作用、及び、「サンプル信号」の「車両センサ」と「物体」との間の伝播により生じるものであることは明らかであり、「意図された時間遅延および調整された周波数シフトを有する環境シミュレーション信号」を算出する際には、「シミュレート」される「環境」内の「サンプル信号」について、「物体」との相互作用における物理的な挙動、及び、「車両センサ」と「物体」との間の伝播における物理的な挙動についての情報(物体までの距離等によって、どのような時間遅延および周波数シフトが生じるか特定するための情報)が必要であることは、明らかである。そして、当該情報は、本願発明の「センサモデル」に相当する。よって、引用発明の「シミュレータ」が、「意図された時間遅延および調整された周波数シフトを有する環境シミュレーション信号」を計算するために用いられる、本願発明の「センサモデル」に相当する情報を有していることは、明らかである。
また、引用発明において、「環境をシミュレートするシミュレータ」を備え、「シミュレータは、受信したサンプル信号を処理し、受信したサンプル信号に応答して、車両と共に移動するか、車両に対して相対的に移動する物体をシミュレートし、支援システムが周波数変調レーダによる距離測定を実行する場合、意図された時間遅延および調整された周波数シフトを有する環境シミュレーション信号を車両センサに向けて送信する送信手段のための制御信号を生成」するステップは、「車両センサによって発せられた走査信号」の「シミュレート」された「環境」における挙動を「シミュレート」するステップであるといえるから、本願発明の「センサモデルを用いて、シミュレートされた前記環境シナリオにおいて、少なくとも1つの環境センサをシミュレートするステップ(S2)」に相当する。
c 以上より、引用発明において、「環境をシミュレートする」「シミュレータは、受信したサンプル信号を処理し、受信したサンプル信号に応答して、車両と共に移動するか、車両に対して相対的に移動する物体をシミュレートし、支援システムが周波数変調レーダによる距離測定を実行する場合、意図された時間遅延および調整された周波数シフトを有する環境シミュレーション信号を車両センサに向けて送信する送信手段のための制御信号を生成」するステップは、構成Cと、「センサモデルを用いて、シミュレートされた前記環境シナリオにおいて、少なくとも1つの環境センサをシミュレートするステップ(S2)であって、シミュレートされた前記環境シナリオにおける」「環境センサによって送信された信号がシミュレートされ、シミュレートされた前記環境シナリオは、シミュレートされた前記信号の、シミュレートされた前記環境シナリオにおける対象物との相互作用をシミュレートすることによってバーチャルに検出される、ステップ」である点で共通する。
エ 構成Dについて
引用発明の「環境シミュレーション信号」は、本願発明の「応答信号」に相当し、引用発明において、「環境シミュレーション信号を車両センサに向けて送信する送信手段のための制御信号を生成」する際に「環境シミュレーション信号」を算出することは、本願発明において、「少なくとも1つの前記環境センサ(4)の観点から応答信号を導き出す」ことに相当する。
そして、上記(2)の対比を踏まえると、引用発明において、「シミュレータは、受信したサンプル信号を処理し、受信したサンプル信号に応答して、車両と共に移動するか、車両に対して相対的に移動する物体をシミュレートし、支援システムが周波数変調レーダによる距離測定を実行する場合、意図された時間遅延および調整された周波数シフトを有する環境シミュレーション信号を車両センサに向けて送信する送信手段のための制御信号を生成」するステップは、本願発明において、「前記センサモデルを用いて、シミュレートされた前記環境シナリオにおけるシミュレートされた前記環境センサ、およびシミュレートされた前記環境シナリオを検出するためのシミュレートされた前記環境センサによって送信された、シミュレートされた前記信号の、シミュレートされた前記相互作用に基づいて、少なくとも1つの前記環境センサ(4)の観点から応答信号を導き出すステップ(S3)」に相当するステップを含むといえる。
オ 構成Eについて
引用発明の「送信装置」は本願発明の「エミュレータ(1)」に相当し、引用発明において、「送信装置は、車両センサに向けて環境シミュレーション信号を送信」するステップは、本願発明において、「エミュレータ(1)を用いて前記応答信号を少なくとも1つの前記環境センサ(4)に出力するステップ(S4)」に相当する。
引用発明において、「環境シミュレーション信号は、支援システムから車両センサ装置を介して、対象環境のように認識され」る際には、「車両センサ装置」が「環境シミュレーション信号」を受信してデータを生成し、当該
データを用いて「支援システム」が「対象環境」すなわち「車両と共に移動するか、車両に対して相対的に移動する物体」の情報を認識することは明らかである。そして、引用発明において、「車両センサ装置」が「環境シミュレーション信号」を受信して生成するデータは、本願発明の「センサデータ」に相当する。
よって、引用発明において、「環境シミュレーション信号は、支援システムから車両センサ装置を介して、対象環境のように認識され」るステップは、本願発明における、「少なくとも1つの前記環境センサ(4)は、出力された前記応答信号に基づいてセンサデータを生成する、ステップ」に相当する。
以上より、引用発明において、「送信装置は、車両センサに向けて環境シミュレーション信号を送信し」、「環境シミュレーション信号は、支援システムから車両センサ装置を介して、対象環境のように認識され」るステップは、本願発明の「エミュレータ(1)を用いて前記応答信号を少なくとも1つの前記環境センサ(4)に出力するステップ(S4)であって、少なくとも1つの前記環境センサ(4)は、出力された前記応答信号に基づいてセンサデータを生成する、ステップ」に相当する。
カ 構成Fについて
引用発明において、「運転者支援システムの応答」は、「認識され」た「対象環境」に対する「応答」であり、また、当該「応答」は、「運転者支援システム」の作動、すなわち、運転を意味することは、明らかである。
よって、引用発明において、「環境シミュレーション信号は、支援システムから車両センサを介して、対象環境のように認識され」、「運転者支援システム」が「応答」するステップは、本願発明において、「生成された前記センサデータを用いて、前記自動化システムおよび/あるいは前記設備を運転するステップ(S5)」に相当する。
(2) 一致点、相違点
上記(1)のとおりであるから、本願発明と引用発明とは、下記アの点で一致し、下記イの点で相違または一応相違する。
ア 一致点
「A 環境センサ(4)を備える設備の自動化システムを分析するための方法(100)であって、以下の作業ステップ、すなわち、
B 前記設備のための環境シナリオをシミュレートするステップ(S1)と、
C’センサモデルを用いて、シミュレートされた前記環境シナリオにおいて、少なくとも1つの環境センサをシミュレートするステップ(S2)であって、シミュレートされた前記環境シナリオにおける前記環境センサによって送信された信号がシミュレートされ、シミュレートされた前記環境シナリオは、シミュレートされた前記信号の、シミュレートされた前記環境シナリオにおける対象物との相互作用をシミュレートすることによってバーチャルに検出される、ステップと、
D 前記センサモデルを用いて、シミュレートされた前記環境シナリオにおけるシミュレートされた前記環境センサ、およびシミュレートされた前記環境シナリオを検出するためのシミュレートされた前記環境センサによって送信された、シミュレートされた前記信号の、シミュレートされた前記相互作用に基づいて、少なくとも1つの前記環境センサ(4)の観点から応答信号を導き出すステップ(S3)と、
E エミュレータ(1)を用いて前記応答信号を少なくとも1つの前記環境センサ(4)に出力するステップ(S4)であって、少なくとも1つの前記環境センサ(4)は、出力された前記応答信号に基づいてセンサデータを生成する、ステップと、
F 生成された前記センサデータを用いて、前記自動化システムおよび/あるいは前記設備を運転するステップ(S5)と、
G を備える、方法(100)。」
イ 相違点1(構成C)
本願発明は、「シミュレートされた前記環境センサによって送信された信号がシミュレートされ」ると特定されているのに対し、引用発明の「サンプル信号」は、「車両センサによって発せられた走査信号を受信し」たものであって、シミュレートされた環境センサによって送信されたものとは特定されていない点。
(3)相違点について
上記相違点1について検討する。
ア 引用発明は、「車両センサがシミュレータに認識されており、シミュレータが車両センサと連携してシミュレータ送信装置を制御できる場合、アクティブ車両センサで動作する運転者支援システムをテストするために、発信された走査信号の受信を省略することもできる」と特定されているから、引用発明は、「シミュレータは、受信したサンプル信号を処理し、受信したサンプル信号に応答して、車両と共に移動するか、車両に対して相対的に移動する物体をシミュレートし、支援システムが周波数変調レーダによる距離測定を実行する場合、意図された時間遅延および調整された周波数シフトを有する環境シミュレーション信号を車両センサに向けて送信する送信手段のための制御信号を生成」する際に、「受信したサンプル信号」を用いない態様を含んでいるといえる。
また、引用発明は、「シミュレータは、データバンクにアクセスし、データバンクには、各検査可能なモデルに対して、シミュレーションに必要な車両データが格納されており、車両データは、それぞれの車両のセンサ装置の種類、及びセンサに関する詳細な情報、例えば走査信号の周波数を含」むと特定されているから、「受信したサンプル信号」を用いない態様とした場合には、「車両データ」が含む「それぞれの車両のセンサ装置の種類、及びセンサに関する詳細な情報、例えば走査信号の周波数」の情報を用いた仮想の信号、すなわち、シミュレートされた車両センサによって送信された信号を用い、当該仮想の信号から「意図された時間遅延および調整された周波数シフトを有する環境シミュレーション信号」を算出することは、明らかである。
よって、上記相違点1は、実質的な相違点であるとはいえない。
イ 仮に「受信したサンプル信号」を用いない態様とした場合に、「車両データ」が含む「それぞれの車両のセンサ装置の種類、及びセンサに関する詳細な情報、例えば走査信号の周波数」の情報を用いた仮想の信号を用い、当該仮想の信号から「意図された時間遅延および調整された周波数シフトを有する環境シミュレーション信号」を算出することが明らかとまではいえず、上記相違点1が実質的な相違点であると解釈した場合について検討する。
引用発明において、「意図された時間遅延および調整された周波数シフトを有する環境シミュレーション信号」を算出するためには、「意図された時間遅延および調整された周波数シフト」をさせる前の、「車両センサ」により発せられた信号の情報が必要であることは、明らかであり、「受信したサンプル信号」を用いない態様とした際には、「車両センサ」により発せられた信号の仮想的な情報を、「車両データ」が含む「それぞれの車両のセンサ装置の種類、及びセンサに関する詳細な情報、例えば走査信号の周波数」の情報から取得して用いる、すなわち、シミュレートされた「車両センサ」によって送信された、シミュレートされた信号を用いる構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
(4) 小括
したがって、本願発明は、引用発明であるか、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(5) 審判請求人の主張について
審判請求人は、令和7年6月19日提出の意見書において、
「拒絶理由において、審査官殿は、引用文献1においても、サンプリング信号SVの送信は必須ではなく、引用文献1の段落[0013]を参照して省略することもできると指摘されました。
・・・
引用文献1の教示は、現実の物理的なサンプリング信号SVを実際に送信する概念に基づき、かつ現実の物理的なサンプリング信号SVの送信を省略する引用文献1の段落[0013]においてのみ言及された(純粋に仮説の)簡略化された実施形態についてのものであり、引用文献1は、本発明による少なくとも1つの環境センサをシミュレートするセンサモデルを開示も示唆もしていません。」
との主張をしているので、検討する。
引用発明の「シミュレータ」は、上記1(3)イで示したとおり、「意図された時間遅延および調整された周波数シフト」を計算するための、「シミュレート」された「環境」における「物体」と「サンプル信号」との相互作用、及び、「サンプル信号」の「車両センサ」と「物体」との間の伝播における「サンプル信号」の物理的な挙動についての情報、すなわち、「センサモデル」に相当する情報を有していることは、明らかである。
また、引用発明は、上記3で示したとおり、「受信したサンプル信号」を用いない態様を含んでいるといえ、「受信したサンプル信号」を用いない態様とする際に、「車両データ」が含む「それぞれの車両のセンサ装置の種類、及びセンサに関する詳細な情報、例えば走査信号の周波数」の情報を用いた仮想の信号、すなわち、シミュレートされた車両センサによって送信された信号を用い、当該仮想の信号から「意図された時間遅延および調整された周波数シフトを有する環境シミュレーション信号」を算出することは、明らかであるか、明らかであるとまではいえないとしても、当業者が容易に想到し得ることである。
そして、引用発明は、「意図された時間遅延および調整された周波数シフト」をさせて「環境シミュレーション信号」を算出するところ、当該算出のための「車両センサ」が発した信号について、それが現実の信号であっても、仮想の信号であっても、その発信時点、信号の周波数や強度等の情報がわかれば、「意図された時間遅延および調整された周波数シフトを有する環境シミュレーション信号」を算出できることは当業者にとって自明であるから、引用文献1には「車両センサがシミュレータに認識されており、シミュレータが車両センサと連携してシミュレータ送信装置を制御できる場合」に「発信された走査信号の受信を省略」した際の具体的な態様が記載されていないとしても、それをもって当該態様が純粋に仮説のものであって実施できないものであるとはいえない。
よって、審判請求人の上記主張は採用できない。
第6 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は明確でないから、この出願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
また、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明であるか、引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第1項第3号、あるいは、同法同条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2024-002580