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特許拒絶査定不服審判

2024-020115

故障診断システム、故障診断方法及びプログラム

審判番号
2024-020115
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2022-577904
請求日
2024年12月16日
審決日
2025年10月15日
公報発行日
2026年01月30日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】日本電気株式会社
  • 【請求人代理人】速水 進治
審判長/審判官
  • 審判長 加々美 一恵
  • 審判官 伊藤 幸仙
  • 審判官 藏田 敦之
分類
P18 .121-Z (G01M) / P18 .572-Z (G01M) / P18 .575-Z (G01M)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条1項3号特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項、特許法第29条第1項第3号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2022-577904「故障診断システム、故障診断方法及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 8月 4日国際公開、WO2022/162817〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本件出願(以下「本願」という。)は、2021年(令和3年) 1月 28日を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯の概要は以下のとおりである。 令和6年 5月10日付け:拒絶理由通知書 令和6年 7月 3日提出:意見書、手続補正書 令和6年10月 1日付け:拒絶査定 令和6年12月16日提出:審判請求書・手続補正書 第2 令和6年12月16日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [結論] 令和6年12月16日にされた手続補正を却下する。 [理由] 1 本件補正について 令和6年12月16日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1を以下のように補正するものである(下線部は補正箇所を示す。)。 (1)本件補正前 「対象車両に搭載されたセンサで収集された車両関連データを取得する車両関連データ取得手段と、 前記車両関連データに基づき、前記対象車両に発生している可能性がある不具合を特定する不具合特定手段と、 特定された前記不具合に基づき、故障診断のための撮影箇所を決定する撮影箇所決定手段と、 決定された前記撮影箇所をユーザに通知する通知手段と、 を有する故障診断システム。」 (2)本件補正後 「対象車両に搭載されたセンサで収集された車両関連データを取得する車両関連データ取得手段と、 前記車両関連データに基づき、前記対象車両に発生している可能性がある不具合を特定する不具合特定手段と、 複数の不具合各々が発生している場合に故障診断のために撮影する撮影箇所を示す情報を参照して、特定された前記不具合が発生している時に撮影する前記撮影箇所を決定する撮影箇所決定手段と、 決定された前記撮影箇所をユーザに通知する通知手段と、 を有する故障診断システム。」 2 補正の適否 本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「撮影箇所決定手段」における「撮影箇所」の決定について、「複数の不具合各々が発生している場合に故障診断のために撮影する撮影箇所を示す情報を参照して」行うことを限定し、前記撮影箇所が「特定された前記不具合が発生している時に撮影する」箇所であることを限定するものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正である。 そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。 (1)本件補正発明は、上記1(2)に記載したとおりのものである。 (2)引用文献 ア 引用文献1 (ア)原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された引用文献である特開2004-58777号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに以下の記載がある(下線は当審において付加した。)。 a 「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、車両の遠隔故障診断システムに係り、特に車載端末により車両情報を収集し情報センタへ送信し、情報センタで故障診断し、あるいは故障診断対象データを作成して自動車修理業者に送信し、自動車修理業者が故障診断を行いその診断結果を車載端末へ返信する遠隔故障診断システムに関する。」 b 「【0005】 【発明が解決しようとする課題】 そのような車両の遠隔故障診断システムは、自動車内の電子制御装置が提供する診断機能の範囲のみ遠隔診断が可能であり、その範囲以外にも診断項目は存在する。自動車のギアの位置によって変化する異音など特定の状況でしか故障の診断が出来ないものもあれば、スタータ・スイッチの異常など自動車を走行できない状況にしてからでしか故障の診断ができないものもある。そのような特定の状況においては、誤って運転手が自動車を操作して二次的な故障が起こる可能性がある。また、タイヤの磨耗状態、エンジンの異音など、電子制御装置では物理的に診断不可能なものもある。 ・・・略・・・ 【0007】 【課題を解決するための手段】 本発明の遠隔故障診断システムは、特定の状況でしか診断できない項目があるという問題に対して、情報センタから車載端末を介して電子制御装置を診断可能な診断モード状態にした上で診断することを解決の手段としている。また、診断可能な特定の状況下で二次的な故障が起こるという問題に対しては、車載端末上にテストモード切り替え承認機能(診断モードへの切替確認)を設けることを解決の手段としている。さらに、電子制御装置では物理的に診断不可能な診断項目があるという問題に対しては、カメラ付き携帯電話を用いることを解決の手段としている。具体的には、以下の手段により解決することができる。 ・・・略・・・ 【0009】 また、前記情報センタは、前記車載端末から送信された診断データをさらに他の診断機関に送信あるいは前記他の診断機関からの診断結果データを受信する送受信手段と、前記他の診断機関による診断結果を受信し前記車載端末に送信する手段を有すること、また、前記車載端末は、診断モードにおいて運転手からの特定の運転操作を禁止(限定)すること。また、前記車載端末の前記車両を診断可能な状態にする診断のための診断モード切り替え手段は、前記車載端末から受信した故障内容によっては前記情報センタからの指示による診断モード切り替え信号により診断モードに切り替えること。また、前記車載端末は、変速ギア位置またはブレーキ油圧またはブレーキ信号に基づいて診断モードへの切り替え指示を行うこと。また、前記情報センタは、カメラ付き携帯電話のカメラまたはマイクによる診断対象画像信号または診断対象音を受信し、車両の故障診断を行うこと。前記情報センタは、前記携帯電話のカメラ位置あるいは診断音を採取する位置の指示あるいは変更指示を携帯電話がもつディスプレイにより表示指示を行うことにある。」 c 「【0010】 【発明の実施の形態】 本発明の実施例を、図面を参照して説明する。図1は本発明の実施例における、システムのブロック図である。遠隔故障診断の対象となる車両1000は、車両が内蔵しているセンサ1300と、アクチュエータ1400と、外付センサ1500と、ECU1200と車載端末1100とから構成されている。ECU1200にはテストモード切り替え機能を有し,車載端末1100にはテストモード切り替え承認機能(確認機能)が、それぞれ設けられている。また運転手2000は携帯電話2100を所持している構成である。 【0011】 運転手2000は、携帯電話2100を用いて通信事業者3000を介して、情報センタ4000へ、車両1000の異常内容6200を伝達することもできる。情報センタ4000は異常内容6200に応じて、通信事業者3000を介してテストモード切り替え信号6300を車載端末1100へ送信し、テストモード切り替え承認機能によりECU1200内のテストモード切り替え機能を起動させる。テストモード切り替え機能によって、アクチュエータ1400は車両1000を診断可能な状態にする。内蔵センサ1300は車両1000に関する車両情報6100を出力するので、車載端末1100でデータを収集し通信事業者3000を介して情報センタ4000へ車両情報6100を送信する。」 d 「【0017】 図5において、情報センタ4000のセンタ内情報システム4100は、1つないしは複数の情報端末から構成されており、オペレータ4300によって情報端末が操作される。情報システム4100は、情報端末のCPU4110、前記情報端末のI/O4120、前記情報端末の印刷装置4130、前記情報端末の送受信装置4140、前記情報端末の情報記録装置4150、前記情報端末のマンマシンインターフェース4160から構成されている。また、運転手に関する情報を蓄積する運転手情報データベース4210、診断ロジックを蓄積する診断ロジックデータベース4220、診断手法の詳細な情報を蓄積する診断手法データベース4230、あらゆるパターンの診断結果を蓄積する診断結果データベース4240、診断する車両情報6100の種類を記述する車両情報種類データベース4250から構成されるデータベースを有している。 【0018】 情報記録装置4150には、車両の診断を自動的に行う診断プログラム4151、テストモード切り替え信号発生プログラム4152、診断結果の印刷を行う印刷プログラム4153、などが含まれている。情報システム4100において、送受信装置4140が車両の異常に関する内容6200を受信すると、CPU4110はI/O4120を介して異常内容6200を受け取り、情報記録装置4150から診断プログラム4151を読み出す。そして、車両情報6100および各種データベース4210~4250からの内容にしたがって、車両の診断を行う。診断プログラム4151の中で車両1000をテストモードにする必要がある場合、CPU4110はテストモード切り替え信号発生プログラム4152を読み出し、I/O4120を介して送受信装置4140へテストモード切り替え信号6300を送信するよう命令する。」 e 「【0026】 情報センタ4000は通信事業者3000を介して車載端末1100へ診断項目を送信する。車載端末1100は診断項目に基づいて診断プログラムを起動し、車両1000に対して各項目の診断を要求する。車両1000は車載端末1100ないし通信事業者3000を介して、診断データとしての車両情報6100を情報センタ4000へ送信する。情報センタ4000は情報センタによる診断の範囲を越えているときは診断データ6500として診断データ6500を作成(例えば印刷のこともある)し、診断データ6500印刷した者を自動車整備業者5000へ渡す(あるいは送信する)。」 f 「【0029】 図10は診断ロジックデータベースの構成を示している。診断ロジックデータベース4220(図5)に格納されている診断ロジックには、ロジックの番号であるID(4220a)と、複数の診断シーケンス情報(4220b)から成り立っている。診断シーケンス情報(4220c)は、診断の1シーケンスを表すものであり、シーケンスID、実行順番、診断手法ID4131、診断結果ID(OK時)および診断結果ID(NG時)である4241から成り立っている。診断手法ID4231は後述の診断手法データベース4230(図5)内にある診断手法のIDを示すものであり、診断結果ID4241は、診断結果データベース4220に格納されている診断結果ID4241、または次の診断シーケンスIDを示すものである。 【0030】 これらは、診断手法にてOKおよびNGと判定したとき2種類が記述される。診断シーケンス情報における実行順番の順に、診断手法ID4231に記述されてある診断手法を実行し、OKであれば診断結果ID4241(OK時)の示す診断結果を出力するかまたは次の診断シーケンスを実行し、NGであれば診断結果ID4241(NG時)の示す診断結果を出力する。そして次の診断シーケンスを実行する。 【0031】 図11は前記図5に示した診断手法データベース4230の構成である。診断手法データベース4230に格納されている診断手法は、手法の番号であるID4231と、遠隔診断可能/不可能フラグ、テストモード必要/不要フラグ、カメラ必要/不要フラグ、整備業者介入必要/不要フラグ、車両情報数、車両情報数分の車両情報仕様、アクチュエータ作動情報、診断OK条件、診断NG条件などの情報がある。 【0032】 遠隔診断可能/不可能フラグは遠隔診断が現状で可能かどうかを示すフラグであり、このフラグが遠隔診断不可能を示していれば、遠隔診断を中断して自動車整備業者5000へ車両1000を持ってくるよう要請する。テストモード必要/不要フラグは、診断の際にテストモード切り替えが必要かどうかを示すものであり、もし必要であればテストモード信号送信処理を行い、運転手2000の車両1000への操作を禁止する。カメラ必要/不要フラグは、診断に画像情報が必要かどうかを示すものであり、画像情報が必要であれば運転手2000に対してカメラ付き携帯電話2100を用いて画像を撮影するよう要請する。整備業者介入必要/不要フラグは、自動車整備業者5000の介入が必要かどうかを示すフラグであり、このフラグが必要を指し示した場合、情報センタ4000は診断データ6500を印刷し自動車整備業者5000へ渡し、診断結果データ6600を自動車整備業者5000からもらう。 【0033】 車両情報仕様とは車両1000から収集する車両の情報を示すものである。車両情報仕様には車両情報種類ID4251、収集間隔、収集時間などがある。車両情報種類ID4251は、後述の車両情報種類データベース4250(図5)に格納されてある車両情報種類のID4251に対応する。収集時間とは診断に必要な車両情報6100(図1)の収集時間、収集間隔とは車両情報6100の収集間隔のことである。アクチュエータ作動情報とは診断に必要なアクチュエータ1400(図1)の作動に関する情報のことであり、作動アクチュエータ数と、作動アクチュエータ数分の各アクチュエータ情報から成り立っている。各アクチュエータ情報は、ID、パラメータ数、パラメータ種類とその値から成り立っている。パラメータ種類とその値に関しては、車両情報種類ID4251と値から成り立っており、車両情報種類ID4251は車両情報種類データベース4250に格納されてある車両情報種類のID4251に対応する。アクチュエータ作動情報に従って、アクチュエータ1400は車両1000をテストモードにすることが可能である。診断OK条件とは、その診断において正常であると判断する際の条件であり、診断NG条件とはその逆を指す。」 g 「【0040】 図19は、運転手2000の所有する携帯電話2100の構成を示したものである。携帯電話2100は、マイク2160、アンテナ2110、カメラ2120、ディスプレイ2130、スピーカー2140、入力キー2150から成り立っている。基本的に情報センタ4000との通信に使用するが、目視判断にカメラ2120とディスプレイ2130を、異音判定にマイク2160を使用し、画像および音声を情報センタ4000へ送信し、診断データだけでは診断が困難な状態の補助的な診断データとして活用することができる。 ・・・略・・・ 【0042】 図21は、携帯電話上における、診断対象として撮影する箇所の指定を示したものである。たとえば情報センタ4000がトランクルーム内のある箇所を診断用に撮影を必要とする場合、運転手2000にカメラ付携帯電話2100でトランクルームを撮影させることになる。その場合、ディスプレイ2130上にカメラ2120の撮影画像を表示させ、撮影したい箇所の部分を矢印2131で表示することにより、撮影者である運転手2000に撮影箇所を知らせている。こうすることによってより適切な画像情報を採取することができる。」 h 図1「 [図:0001430882000001.jpg] 」 i 図5「 [図:0001430882000002.jpg] 」 j 図10「 [図:0001430882000003.jpg] 」 k 図11「 [図:0001430882000004.jpg] 」 l 図21「 [図:0001430882000005.jpg] 」 (イ)上記(ア)の記載事項から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。 【0017】、【0018】を参酌すると、図5より、情報センタ内情報システム4100の送受信装置4140に向かう矢印により車両情報6100及び車両の異常に関する内容6200が図示されていることが見て取れる。また、【0018】には、「情報システム4100において、送受信装置4140が車両の異常に関する内容6200を受信する」の記載がある。これらのことから、送受信装置4140が、車両情報6100及び車両の異常に関する内容6200を受信する手段であることが明らかである。 (ウ)引用発明 上記(ア)及び(イ)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。括弧内に主な根拠箇所を示す。 「自動車内の電子制御装置では物理的に診断不可能な診断項目について、カメラ付き携帯電話のカメラまたはマイクによる診断対象画像信号または診断対象音を受信して、車両の故障診断を行う車両の遠隔故障診断システムであって(【0005】、【0007】、【0009】)、 情報センタ4000は、車載端末1100へ診断項目を送信し、前記車載端末1100は、車両1000に対して各項目の診断を要求して、内蔵センサ1300が出力する車両1000に関する車両情報6100を収集して、前記情報センタ4000へ送信し(【0011】、【0026】)、 送受信装置4140を介して前記車両情報6100及び車両の異常に関する内容6200を受信する前記情報センタ4000にある情報センタ内情報システム4100は、前記車両の異常に関する内容6200を受信すると、情報記録装置4150から診断プログラム4151を読み出し、前記車両情報6100および各種データベース4210~4250からの内容にしたがって、車両の故障診断を行うものであり(【0010】、【0011】、【0018】、図5及び(イ))、 前記車両の故障診断は、診断ロジックデータベース4220に格納されている診断ロジックの診断シーケンス情報(4220b)に基づいて、診断手法データベース4230に格納されている、診断に画像情報が必要かどうかを示すカメラ必要/不要フラグ、診断OK条件、診断NG条件などの情報を有する診断手法を実行し、診断結果を出力するものであり(【0029】~【0032】、図10~11)、 前記情報センタ4000が、診断用にある箇所の撮影を必要とする場合には、カメラ付携帯電話2100のディスプレイ2130上にカメラ2120の撮影画像を表示させ、撮影したい箇所の部分を矢印2131で表示することにより、撮影者である運転手2000に撮影箇所を知らせ、カメラ付き携帯電話2100を用いて画像を撮影するよう要請する(【0032】、【0040】~【0042】、図21) 遠隔故障診断システム。」 イ 引用文献2 (ア)本願出願前における周知技術を示すために提示する、本願出願前に頒布された刊行物である「本田技研工業株式会社,“HONDA Accord オーナーズマニュアル”,2010年9月9日,247、259、264-265、269-271頁,<https://www.honda.co.jp/ownersmanual/pdf/auto/accord/30TL36011_web.pdf?genpo=HondaMotor&model=ACCORD>」には、次の記載がある。 表紙「 [図:0001430882000006.jpg] 」 『万一の場合には』より一部抜粋 「 [図:0001430882000007.jpg] [図:0001430882000008.jpg] [図:0001430882000009.jpg] [図:0001430882000010.jpg] [図:0001430882000011.jpg] [図:0001430882000012.jpg] [図:0001430882000013.jpg] 」 裏表紙「 [図:0001430882000014.jpg] 」 (イ)記載事項 上記(ア)より、万一の場合、すなわち、不具合が生じた場合の対処方法として、エンジンが始動しない場合には、室内灯の明るさを確認すること、イモビライザーシステムの表示灯を確認すること、燃料の量を確認すること、ヒューズを確認すること(259頁)、オーバーヒートした場合には、エンジンルームから蒸気が出ているか確認すること、水温計の針を確認すること、冷却水量を確認すること、ホースなどからの水漏れを確認すること(264~265頁)、各種の電気装置が作動しない場合には、3つのヒューズボックスに格納された、電気装置と対応するヒューズを確認すること(269~271頁)が開示されているものと認められる。 (ウ)技術常識 上記(ア)、(イ)に例示されるように、「車両には、種々の不具合が存在しており、その不具合に応じて、異なる箇所の目視確認が必要となること」は、本願出願前に周知の技術(以下「周知技術」という。)である。 (3)対比 本件補正発明と引用発明とを対比する。 ア 引用発明における「車両1000」、「内蔵センサ1300」及び「内蔵センサ1300が出力する車両1000に関する車両情報6100」は、それぞれ、本件補正発明における「対象車両」、「対象車両に搭載されたセンサ」及び「対象車両に搭載されたセンサで収集された車両関連データ」に相当する。 よって、引用発明における『「内蔵センサ1300が出力する車両1000に関する車両情報6100」を「受信」する「送受信装置4140」』は、本件補正発明における「対象車両に搭載されたセンサで収集された車両関連データを取得する車両関連データ取得手段」に相当する。 イ 引用発明において、「センタ内情報システム4100」により行われる「車両の故障診断」は、「車両の異常に関する内容6200を受信」し、「情報記録装置4150から診断プログラム4151を読み出し、前記車両情報6100および各種データベース4210~4250からの内容にしたがって」行う「車両の故障診断」であり、その診断結果が車両の故障であることは当業者に自明である。 ここで、「故障」と「不具合」は、同義である。また、診断結果である「車両の故障」は、必ずしも絶対的なものではないことからすると、診断結果として求められる車両の故障は、「対象車両に発生している可能性がある不具合」と言い得る。 よって、引用発明において、『「車両情報6100(車両関連データ)」にしたがい、「車両の故障診断」を行う「センタ内情報システム4100」』は、本件補正発明における「前記車両関連データに基づき、前記対象車両に発生している可能性がある不具合を特定する不具合特定手段」に相当する。 ウ 引用発明において、「診断用にある箇所の撮影を必要とする場合」とは、「車両の故障診断」において、「診断に画像情報が必要かどうかを示すカメラ必要フラグ」が立った場合であり、当該車両の故障診断において疑われている故障・不具合について診断するために画像情報が必要とされる箇所が撮影箇所として決定されることが当業者には自明である。 このとき、当該車両には、上記故障・不具合が発生している可能性がある。 してみれば、引用発明は、「センタ内情報システム4100」による診断結果として求められる車両の故障に応じた箇所を撮影箇所として決定する手段を備えていることが当業者に自明であり、引用発明における当該手段は、本件補正発明の「撮影箇所決定手段」と、「特定された前記不具合が発生している時に撮影する前記撮影箇所を決定する撮影箇所決定手段」である点で共通する。 エ 引用発明における「撮影したい箇所」、「撮影者である運転手2000」及び「カメラ付携帯電話2100のディスプレイ2130」は、それぞれ、本件補正発明における「撮影箇所」、「ユーザ」及び「通知手段」に相当する。 また、撮影箇所を通知するためには、これ(通知)に先立って撮影箇所が決定されていることは、当然である。 よって、引用発明において、『「前記情報センタ4000が、診断用にある箇所の撮影を必要とする場合には、カメラ付携帯電話2100のディスプレイ2130上にカメラ2120の撮影画像を表示させ、撮影したい箇所の部分を矢印2131で表示することにより、撮影者である運転手2000に撮影箇所を知らせ」る「ディスプレイ2130」』は、本件補正発明における「決定された前記撮影箇所をユーザに通知する通知手段」に相当する。 オ 以上のとおりであるから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 「対象車両に搭載されたセンサで収集された車両関連データを取得する車両関連データ取得手段と、 前記車両関連データに基づき、前記対象車両に発生している可能性がある不具合を特定する不具合特定手段と、 特定された前記不具合が発生している時に撮影する前記撮影箇所を決定する撮影箇所決定手段と、 決定された前記撮影箇所をユーザに通知する通知手段と、 を有する故障診断システム。」 <相違点> 「撮影箇所決定手段」が、本件補正発明においては、「複数の不具合各々が発生している場合に故障診断のために撮影する撮影箇所を示す情報を参照して、撮影箇所を決定する」のに対して、引用発明では、当該構成を備えていない点。 (4)判断 上記相違点について検討する。 ア(ア)「車両には、種々の不具合が存在しており、その不具合に応じて、異なる箇所の目視確認が必要となること」は、本願出願前に周知の技術である(上記(2)イ(ウ)参照)。 (イ)引用発明の「自動車内の電子制御装置では物理的に診断不可能な診断項目について、カメラ付き携帯電話のカメラまたはマイクによる診断対象画像信号または診断対象音を受信して、車両の故障診断を行う車両の遠隔故障診断システム」において、車両の故障診断の精度を高めること、また、より多くの種類の不具合に対処(故障診断)することは、自明の課題である。 (ウ)引用発明において、上記(イ)の自明の課題を解決するために、上記(ア)記載の周知の技術を採用して、異なる箇所の目視確認が必要となる種々の不具合が疑われる際に、本来は、目視確認が必要とされる、その不具合に応じた箇所を撮影箇所として設定し、当該箇所の画像を取得して、これを診断に用いるものとなすことは、当業者が容易になし得たことである。 (エ)ここで、異なる箇所の目視確認が必要となる種々の不具合が疑われる際に、本来は、目視確認が必要とされる、その不具合に応じた箇所を撮影箇所として設定するためには、種々の不具合と、その不具合に応じた撮影箇所とを対応付ける情報が必要となるところであって、当該情報の対応関係は、周知技術が備えるところである。そして、当該情報は上記相違点に係る「複数の不具合各々が発生している場合に故障診断のために撮影する撮影箇所を示す情報」に相当する。 (オ)よって、引用発明において、上記相違点に係る構成となすことは、当業者が周知技術に基づいて容易になし得たことである。 イ 効果について 本件補正発明が奏する効果は、当業者が引用発明及び周知技術から予測し得た範囲内のものであって、格別のものと認められるものではない。 ウ 請求人の主張について 請求人は、令和6年12月16日提出の審判請求書の請求の理由において、補正後の請求項1に係る発明は、対象車両に搭載されたセンサで収集された車両関連データを取得し、取得した車両関連データに基づき対象車両に発生している可能性がある不具合を特定すると、複数の不具合各々が発生している場合に故障診断のために撮影する撮影箇所を示す情報を参照して、特定された不具合が発生している時に撮影する撮影箇所を決定し、決定した撮影箇所をユーザに通知するという特徴を有しており、特定された不具合に応じた適切な撮影箇所を決定することができ、決定された撮影箇所をユーザに通知することで、ユーザに適切な箇所を撮影させることができる旨主張し、さらに、引用文献1は、トランクルーム内のある箇所を診断用に撮影を必要とする場合 、運転手2000にカメラ付携帯電話2100でトランクルームを撮影させること(段落0042)、図21や図22のように画像に重畳表示した矢印で撮影箇 所をユーザに通知することを開示しているものの、引用文献1は、撮影箇所 (上記例の場合、トランクルーム内のある箇所)をどのような処理で決定するのか開示しておらず、引用文献1は、複数の不具合各々が発生している場合に故障診断のために撮影する撮影箇所を示す情報を参照して、特定された不具合が発生している時に撮影する撮影箇所を決定することを開示していない,旨主張する。 当該主張について検討する。 当該主張に係る特徴及び引用文献1に開示されていない事項は、いずれも、上記相違点に係る構成であり、上記アで説示したとおり、引用発明において、当該構成を備えるものとなすことは、当業者が周知技術に基づいて容易になし得たところである。したがって、上記請求人の主張は採用することができない。 エ 小括 以上のことから、本件補正発明は、当業者が引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 3 補正の却下の決定のむすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 令和6年12月16日にされた手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2[理由]1(1)に記載のとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、概略、本願の請求項1に係る発明は、本願出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。 3 引用文献及び引用発明 引用文献1の記載及び引用発明は、上記第2[理由]2(2)アに記載したとおりである。 4 対比及び判断 (1)本願発明は、上記第2[理由]2で検討した本件補正発明から、上記第2[理由]1の補正事項に係る限定(上記相違点1に係る構成を含む)を削除して拡張したものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに限定して減縮した本件補正発明が、上記第2[理由]2に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、上記第2[理由]1の補正事項に係る限定を削除して拡張した本願発明も、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (2)本願発明が奏する効果は、当業者が引用発明及び周知技術から予測し得た範囲内のものであって、格別のものと認められるものではない。 (3)請求人は、令和6年 7月 3日提出の意見書において、引用文献1は、撮影する箇所を決定する手法を明示的に開示していないと述べ、本願発明が、車両に搭載されたセンサで収集されたデータに基づき撮影箇所を決定しているのに対して、引用発明は、運転手から伝達された異常内容に基づき決定しているため、真に必要な撮影箇所を精度よく決定できない恐れがある旨主張する。 当該主張について検討する。 引用発明において、「カメラ必要/不要フラグ」を出力する「車両の故障診断」は、「内蔵センサ1300が出力する車両1000に関する車両情報6100」に「したがって」行われるものであるから、引用発明においても、撮影に係る決定は、「車両に搭載されたセンサで収集されたデータに基づき」なされていると認められる。 また、引用文献1には、カメラ必要フラグの出力から撮影箇所の決定に至る手段についての開示はないものの、周知技術をもとに、「車両の故障診断」により特定される故障(不具合)に応じた箇所を撮影箇所とすることは当業者であれば容易になし得たことである(前記「第2 理由 2 (4)ア参照」)。 以上のとおりであるから、請求人の上記主張は、採用することができない。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願発明が特許法第29条第1項第3号に該当するという拒絶理由及びその他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2024-020115

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