審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許拒絶査定不服審判

2022-020318

異常又は劣化診断方法及び装置

審判番号
2022-020318
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2018-131123
請求日
2022年12月15日
審決日
2024年01月23日
公報発行日
2024年04月26日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】日本ギア工業株式会社
  • 【請求人代理人】高橋 剛
  • 【請求人代理人】高橋 雅和
  • 【請求人代理人】高橋 友和
審判長/審判官
  • 審判長 樋口 宗彦
  • 審判官 櫃本 研太郎
  • 審判官 渡戸 正義
分類
P18 .121-Z (G01M) / P18 .575-Z (G01M)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2018-131123「異常又は劣化診断方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 3月28日出願公開、特開2019- 49532〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、平成30年7月10日(優先権主張 平成29年9月8日)に出願された特願2018-131123であり、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。 令和4年 4月13日付け:拒絶理由通知 令和4年 6月 7日:意見書 令和4年 6月 7日:手続補正書 令和4年 9月 7日付け:拒絶査定 令和4年 12月15日:審判請求・手続補正書 第2 令和4年12月15日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和4年12月15日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について(補正の内容) (1) 令和4年6月7日提出の手続補正書により補正された(以下「本件補正前」という。)特許請求の範囲の請求項7及び10は、以下のとおりである。 「 【請求項7】 異常又は劣化の診断装置であって、 所定の誘導モータの所定の電圧における電流値と、当該電流値に対応するトルク値の対応関係を記録した記録手段と、 当該誘導モータにおける電源の電流値を検出する検知手段と、 検知された電流値を、前記電流値とトルク値の対応関係に参照する参照手段と、 トルク値を指標とした異常又は劣化の判断手段を備え、 3相電源に接続された誘導モータにおいて、1相のみに電流の検知手段が備えられ、 電圧検出手段を備えていないことを特徴とする誘導モータ及び当該誘導モータに接続された機械要素の診断装置。」 「 【請求項10】 前記機械要素が電動バルブ、バルブアクチエータ、電動ジャッキ、電動ミキサーまたはこれらに接続された関連要素であることを特徴とする請求項7から9のいずれか1項に記載の診断装置。」 (2) 本件補正後の特許請求の範囲の請求項5(以下「本件補正発明」という。)は、以下のとおりである。なお、当審において本件補正発明の各構成単位冒頭に「A」などの分説番号を付した。(下線は、当審で付した。以下同様。) 「 【請求項5】 A 異常又は劣化の診断装置であって、 B 所定の誘導モータの所定の電圧における電流値と、当該電流値に対応するトルク値の対応関係を記録した記録手段と、 C 当該誘導モータにおける電源の電流値を検出する検知手段と、 D 検知された電流値を、前記電流値とトルク値の対応関係に参照する参照手段と、 E トルク値を指標とした異常又は劣化の判断手段を備え、 F 3相電源に接続された誘導モータにおいて、1相のみに電流の非接触検知手段が備えられ、 G 電圧検出手段を備えていないことを特徴とする誘導モータ及び当該誘導モータに接続された電動バルブ、バルブアクチエータ、電動ジャッキ、電動ミキサーまたはこれらに接続された関連要素の診断装置。」 2 補正の適否について 本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲について補正しようとするものであるところ、本件補正後の請求項5に係る発明は、本件補正前の請求項7を引用する請求項10に係る発明における「電流の検知手段」を、「電流の非接触検知手段」に限定するものであり、本件補正前の請求項7を引用する請求項10に係る発明と本件補正後の請求項5に係る発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正における請求項5に係る補正は、特許法第17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項5に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は、上記1(2)に記載したとおりのものである。 (2)引用文献の記載事項 ア 引用文献1 (ア)原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開平10-220372号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある。 「【0003】真空ポンプは、建設するのに費用が掛かり、稼働するにも費用が掛かるようなプラントの一部として、または、そのプラントに関連して使用されることが多い。したがって、内部表面に望ましくない物質の層が堆積してしまうことによるポンプ性能の低下を、プラントの現場において予測できて、サービス中においてポンプの重大な劣化または故障が生ずる前に、そのポンプを保守または交換のためにプラントにおけるサービスから外すことができると、都合がよい。 【0004】ステータの内部表面に望ましくない物質の層が存在することによって生ずる真空ポンプのロータに余計に掛かる摩擦およびその他の負荷は、ポンプのロータを駆動するのに使用されるモータに供給される電流を測定することによって、ある程度まで監視することができることが、知られている。このような余計な負荷は、ある場合には、ポンプの“タイトネス”と称される。 【0005】しかしながら、電流を測定するのでは、ポンプのタイトネスを、信頼性をもって指示することはできないことが分かった。何故ならば、測定電流は、時系列的に与えられず、または、その他のファクタでもって、瞬時的に測定される電流信号は時間的に変化するノイズで常に汚染され、各時点でその真の大きさを識別し得ないからである。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】したがって、ポンプのタイトネスを監視し、それにより、使用中にポンプの重大な劣化および/または故障が生ずるのを避けることのできるような、より信頼性のある方法が必要とされている。 【0007】 【課題を解決するための手段】本発明によれば、真空ポンプと、該真空ポンプのロータを駆動するための関連モータと、該モータの回転トルクおよび/または電流を測定し、ポンプ監視が行えるようにする手段とを備えた真空ポンプシステムが提供される。」 「【0020】図1を参照する。真空ポンピングシステムは3相誘導モータ2が駆動する機械的な真空ポンプ1を備えている。このモータへの電力を供給しているインバータ3は交流モータの供給電力の周波数の制御により一定の回転速度を与えるベクトルコントロールを有する。電力は電力線4を介してインバータへ供給される。」 「【0040】本発明の他の実施例は実際の測定にモータ電流を利用している。商用電力を直接受けているモータを使用するとき、もしくはベクトルコントロール スキムを有していない簡単なインバータを使用するとき、モータ電流は図8と図9に示す実施例において示されたスキムにおいてモータ電流が測定され、そして利用される。 【0041】モータ電流の測定結果を直接利用することによってトルクを評価し、予測するのに使用するプログラムの階層を図8に示す。この実施例ではモータ電流はアナログモードで測定され、そして電流信号は、図2に示すインターフェイスの通信ポート11の前部へ取り付けたアナログ-デジタル変換器によりデジタルモードに変換される。真空システムに使用するモータの電流対トルク特性に基づいてコンピュータがトルク計算を行う。この計算で利用するテーブルルックアップ法においては、測定されたトルクは予め求められている電流対トルクデータテーブルから求められる。このためスプライン関数を使用するアルゴリズムが用いられる。この層によりモータトルクが求められてから、トルクの評価・予測の計算と、ディスプレイのためのデータ提示のプロセスとは図4と図5で示した前の実施例と同じ仕方で行われる。 【0042】図9は、電流測定の結果を直接的に使用することにより摩擦マッパに対して使用されるプログラムのヒエラルキーを示している。これらの実施例においては、モータ電流は、アナログモードにて測定され、電流信号は、図2に示したインターフェイスの通信ポート11の前に取り付けされたアナログ-デジタル変換器によってデジタルモードへ変換される。摩擦マッピングのためには、短い時間期間の間で得られた電流データを使用することが重要である。電流対トルクデータの関係はモータの回転速度の関数であるので、ポンプが摩擦負荷を有するときには、モータは、その摩擦負荷にしたがって回転速度を変化しがちである。したがって、回転の変化が無視しうる程度に小さい短い時間の間の電流データを使用し、その電流から計算されたトルクを、モータ負荷に相当するものとみなす。このような短い期間でのトルク計算をするために、後段のプロセスにて計算されるべき1組の順次電流データは、時系列的に取得され、このレーヤによって記録される。 【0043】次のレーヤによって、トルク計算がモータの電流対トルク特性に基づいて行われる。この計算において、テーブルルックアップ方法が使用され、これにおいては、測定電流に対する特定のトルクは、前もって得られた電流対トルクデータテーブルから決定される。このために、スプライン関数を使用するアルゴリズムが使用される。モータがこのレーヤによって得られた後、ポンプロータの回転位置または角度とトルクデータとのペアリングおよびノイズ低減してトルクの良好な推定値を得るためのトルクデータスムージングが行われる。このプロセスの結果は、図7に示したのと同じ表現にて与えられる。 【0044】この実施例においては、マッピングは、新たに組み立てられるポンプの検査試験に適用されうる。ポンプのタイトネスは、角度位置の特定の範囲において局部化されるので、絶対タイトネスは必要でなく、相対的にタイトな摩擦の角度位置が必要である。短い時間に対して得られるトルクデータの評価は、この目的のために使用されうる。 【0045】長期間運転においてポンプを評価するためには、このような評価方法を時間を置いて間欠的に使用し、タイトな摩擦の角度的範囲の発生を評価する。その角度的範囲が時間の経過につれて広がっていき、データ記録の期間に亘って平均された電流がだんだん大きくなっていくときには、これは、ポンプが停止に近づいていることを示している。」 (イ)上記(ア)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、各構成単位冒頭に、本願発明の分説記号「A~G」に概ね対応させて、「a~g」を用いた分説記号を付し、各構成単位の末尾の括弧内に認定の根拠となる記載箇所を示した。 「ag ステータの内部表面に堆積してしまうことによりポンプ性能が低下する望ましくない物質の層がステータの内部表面に存在することによって生ずる真空ポンプのロータに余計に掛かる摩擦およびその他の負荷である真空ポンプシステムのポンプのタイトネスを監視する手段であって、(【0003】~【0004】、【0006】~【0007】) fg 真空ポンプシステムは3相誘導モータ2が駆動する機械的な真空ポンプ1を備え、(【0020】) bcd 商用電力を直接受けている前記モータを使用するとき、モータ電流が測定され、当該モータ電流の測定結果を直接利用することによってトルクを評価し、ここで、トルク計算が前記モータの電流対トルク特性に基づいて行われ、この計算において、テーブルルックアップ方法が使用され、これにおいては、測定電流に対する特定のトルクは、予め求められている電流対トルクデータテーブルから求められ、(【0040】~【0041】、【0043】) cde 電流対トルクデータの関係はモータの回転速度の関数であるので、ポンプが摩擦負荷を有するときには、モータは、その摩擦負荷にしたがって回転速度を変化しがちであるから、摩擦マッピングのためには、短い時間期間の間で得られた電流データを使用することが重要であり、回転の変化が無視しうる程度に小さい短い時間の間の電流データを使用し、その電流から計算されたトルクを、モータ負荷に相当するものとみなし、ポンプのタイトネスは、角度位置の特定の範囲において局部化されるので、絶対タイトネスは必要でなく、相対的にタイトな摩擦の角度位置が必要であり、短い時間に対して得られるトルクデータの評価は、この目的のために使用され、長期間運転においてポンプを評価するためには、このような評価方法を時間を置いて間欠的に使用し、タイトな摩擦の角度的範囲の発生を評価し、その角度的範囲が時間の経過につれて広がっていき、データ記録の期間に亘って平均された電流がだんだん大きくなっていくときには、これは、ポンプが停止に近づいていることを示す、(【0042】、【0044】~【0045】) ポンプのタイトネスを監視する手段。」 イ 引用文献5 (ア)同じく原査定に引用され、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開平09-103051号公報(以下「引用文献5」という。)には、図面とともに次の記載がある。 「【0013】 【実施例】図1は本発明を圧延ラインに適用して、各ロールのトルクを推定し設備故障の診断に用いた例を示すものである。多数のロール1にはそれぞれかご型三相誘導電動機2がとりつけられ、これらを1台の可変速駆動装置3が速度制御している。各電動機2に電流センサ4が取付けられ、その測定値はトルク推定装置5に入力される。 【0014】トルク推定装置5は1次電流Ip を入力して演算できる電流に変換する。変換器51とトルク演算装置53から構成されている。電流センサ4で測定された各電動機の1次電流Ip は、変換器51に入力され、トルク演算装置53に送られる。トルク演算装置53は演算式(1)を用いてトルク電流It に変換される。トルク推定装置5で演算推定されたトルク電流It は診断装置6に入力される。診断装置6はトルクの大小を比較器61で規定値と比較し、設備の異常の有無を診断する。規定値より大きい場合警報機62がアラーム警報を発生し、規定値より小さい場合は表示器63は異常なしと判定し、なんらのアクションを行わない。この実施例のラインにおいては、励磁電流If一定制御であり上記(1)式の励磁電流は励磁電指令(定数)を用いている。尚、界磁弱め制御(出力一定制御)を行う場合においては、励磁電流を可変速駆動装置より出力しトルク推定装置6に入力すればよい。」 「図1 [図:0001408601000001.jpg] 」 (イ)上記図1からは、各「かご型三相誘導電動機2」の1相のみについて「電流センサ4が取付けられ」ていることが見て取れる。 ウ 引用文献6 同じく原査定に引用され、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2015-154532号公報(以下「引用文献6」という。)には、図面とともに次の記載がある。 「【課題を解決するための手段】 【0014】 本発明は、3相の交流電動機を駆動するインバータと、交流電動機の3相うち1相以上の相電流を検出する電流センサと、インバータを構成する複数のスイッチング素子のオン/オフを切り替えて交流電動機の通電を制御する制御手段とを備える交流電動機の制御装置に係る発明である。 【0015】 制御手段は、電流センサの相電流検出値に基づいてdq軸の電流ベクトルを算出し、当該電流ベクトルを電流指令値に対してフィードバックし、又は、当該電流ベクトルに基づいて推定したトルク推定値をトルク指令値に対してフィードバックする。また、制御手段は、電流センサが検出した相電流検出値、又は、当該相電流検出値に基づいて推定した相電流推定値を電気角の関数としてフーリエ級数展開した一次成分を抽出し、当該一次成分のフーリエ係数を演算する「フーリエ係数演算部」、及び、フーリエ係数演算部が算出したフーリエ係数に「時間的に不変な定数」を乗じた値同士を加算することにより電流ベクトルを算出する「電流ベクトル算出部」を有することを特徴とする。」 「【0027】 電流センサ17、(18)は、制御に用いる電流を検出する制御用電流センサであり、異常監視専用の監視用電流センサ等を含まない。本発明の実施形態による電動機制御装置10の構成は、大きく、2相以上(2相又は3相)に電流センサを設けるパターンと、1相のみに電流センサを設けるパターンとに分かれる。そのような意味で、図2中、電流センサ18の符号を括弧書きするとともに、電流センサ18、及び、電流センサ18から制御部20に向かう矢印を破線で表示している。」 「【0029】 電流センサを1相のみに設けるパターンの構成例では、電流センサ17は、インバータ12から交流電動機2へ接続されるV相の電力線に設けられ、V相電流Ivを検出する。なお、他の実施形態では、U相又はW相に電流センサを設けてもよい。 電流センサを1相のみに設ける構成では、1相の相電流検出値、及び当該1相の相電流検出値から推定した他相の電流推定値に基づいてdq変換等の演算を行う。」 「図5 [図:0001408601000002.jpg] 」 エ 引用文献7 同じく原査定に引用され、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2017-158324号公報(平成29年9月7日出願公開。以下「引用文献7」という。)には、次の記載がある。 「【0017】 電流検出部14は、モータ12に供給される電流を検出する。電流検出部14は、例えば、モータ12に供給される三相交流電力の各相の電流を検出する。電流検出部14の検出する電流は、例えば、三相交流電力の1相の電流でもよい。」 「【0020】 電流検出部14には、例えば、電線に流れる電流を磁束の変化によって検出する非接触式の電流計が用いられる。電流検出部14は、これに限ることなく、例えば、電流検出抵抗などを用いてもよい。例えば、ドライバ13内に電流検出部14を設け、モータ12への出力電圧などから電流値を算出してもよい。すなわち、電流検出部14は、ドライバ13の論理ブロックでもよい。電流検出部14は、モータ12に供給される電流を検出可能な任意の構成でよい。」 「【0030】 制御部15uは、データ取得動作を実行する。制御部15uは、データ取得動作において、速度基準の設定値を変化させながら、電流検出部14で検出された電流を取得する。そして、制御部15uは、取得した電流から回転体11の回転にともなうロストルクを算出する。これにより、制御部15uは、複数の設定値毎の複数のロストルクを表すメカニカルロスデータを取得する。」 オ 引用文献8 同じく原査定に引用され、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった国際公開第2012/157510号(以下「引用文献8」という。)には、次の記載がある。 「[0068] 旋回電動モータ101の出力は電流値に比例する。そのため、旋回電動モータ101の出力の確認方法としては、旋回電動モータ101に接続された電力線を流れる電流値を測定し、当該測定値から旋回電動モータ101の出力トルクを算出するものがある。本実施の形態にように旋回電動モータ101が3相モータである場合には各相の電流値を測定すれば良い。各相の電流値を測定する測定装置としては、例えば、電気回路を開くことなく電流値を測定できるクランプメータ(架線電流計)が利用可能である。クランプメータによる電流測定作業を容易にする観点及び当該測定値の誤差を抑制する観点からは、クランプメータにおけるトランスコアの中心部で各電力線を挟み込めることが好ましい。この点を鑑み、本実施の形態では、電力線の被覆上からクランプメータを取り付けやすくするために、旋回電動モータ101における3本の電力線の間隔を所定の値に保持した測定部38(図2参照)を設けている。作業効率を向上する観点から測定部38は外部からアクセス容易な箇所に設置することが好ましい。また、クランプメータ等の電流測定装置を測定部38に予め取り付けた構成とし、当該電流測定装置の出力値を確認することで旋回電動モータ101の出力を確認しても良い。」 カ 引用文献9 (ア)同じく原査定に引用され、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2010-288352号公報(以下「引用文献9」という。)には、図面とともに次の記載がある。 「【0022】 図3(a)に示す様に、(式3)の負荷電流I1の波形31は、振幅が周波数fSで変動することになり、その周波数解析の結果(負荷電流I1の波形31をFFTした結果)は、図3(b)に示す様に、運転周波数fLを中心にして両脇にfL±fSの側波帯(サイドバンド周波数)32、33が現われる。また、サイドバンド周波数32、33のレベルの高さ(大きさ)は、トルク変動の大きさに相当することになる。一方、三相誘導電動機では、該三相誘導電動機の固定子コイルに流れる電流によって回転磁界が生じるが、該固定子コイルに生じる磁界の磁束分布は方形波を成しており、その逆起電力が負荷電流に重乗されるために、該三相電動機の各相の負荷電流及び零相電流は、通常、下記(式4)で表される。ここで、IumはU相電流Iuの波高値、IvmはV相電流Ivの波高値、IwmはW相電流Iwの波高値、nは3以上の奇数の整数値である。」 「【0034】 以上、述べた様に誘導電動機の各相電流は、該電動機の回転子(ローター)を含む回転系の異常に伴う微小なトルク変動を診断することとなり、該誘導電動機の零相電流は該誘導電動機の固定子コイルの異常を診断することとなる。従って、本実施形態では、誘導電動機の各相電流の少なくとも1相分の負荷電流及び零相電流の少なくとも何れか一方を計測し、その周波数解析の結果から、運転周波数の両脇に現われるサイドバンド周波数(側波帯)の位置及び大きさや、運転周波数を中心にして両脇に延びる山裾の様な減衰曲線の挙動(波形の乱れやうねり)を調べることで、該誘導電動機は勿論のこと、該誘導電動機によって駆動される機器や設備の異常を診断するようにしている。 【0035】 図10は、設備の異常診断装置の構成の一例を示す図である。 図10において、設備は、誘導電動機14の駆動軸15と、誘導電動機14によって駆動される機器類17とがカップリング16で相互に接続されて構成される。誘導電動機14を制御する制御盤18において、誘導電動機14の負荷電流を検出する電流検出器19と、その負荷電流の値を記憶するデータ収集装置20とを用いて、誘導電動機14の少なくとも1相分の電流及び零相電流の一方又は双方を計測し、そのデータを周波数解析装置21へ取り込み、周波数解析を行う。 尚、周波数解析装置21は、例えばパーソナルコンピュータを用いて実現することができる。また、機器類17は、減速器や機械装置等である。また、電流検出器19は、クランプメータ又は電流変成器等を用いることにより実現することができる。また、図11では、データ収集装置20と周波数解析装置21を別々の装置としているが、データ収集と周波数解析とを同一の機器で実施してもよい。この場合、誘導電動機14の負荷電流を高速でデータ収集ができるようにするのが好ましい。また、診断対象となる誘導電動機が多数存在する場合では、各誘導電動機に対して設けられている各制御盤に、各々電流検出器を用意し、各誘導電動機の負荷電流のデータを自動で一括して取り込み、それらを周波数解析するようにしてもよい。これらの構成は本発明の実施形態の自由な設計範囲に属する。」 「図10 [図:0001408601000003.jpg] 」 (イ)図10からは、「誘導電動機14」の「1相」のみが「電流検出器19」で測定されていることが見て取れる。 キ 周知技術1 上記イ~エ、カに示す引用文献5~7、9の記載及び図面から、「3相誘導モータの電流値を測定してトルクを評価する場合に、1相のみの電流を測定すること」は本願の優先日前における周知技術(以下「周知技術1」という。)であることが裏付けられる。 ク 周知技術2 上記エ~カに示す引用文献7~9の記載及び図面から、「3相誘導モータの電流値を測定してトルクを評価する場合に、クランプメータのような非接触検知手段で電流を測定すること」は本願の優先日前における周知技術(以下「周知技術2」という。)であることが裏付けられる。 (3)引用発明との対比 ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。(下線は、当審で付した。) (ア)構成A 引用発明の構成agの「ポンプのタイトネス」は、「ステータの内部表面に堆積してしまうことによりポンプ性能が低下する望ましくない物質の層がステータの内部表面に存在することによって生ずる真空ポンプのロータに余計に掛かる摩擦およびその他の負荷である」から、ポンプの異常や劣化に関するものといえる。すると、構成agの「ポンプのタイトネスを監視する手段」は、本件補正発明の構成Aの「異常又は劣化の診断装置」に相当する。 (イ)構成B 引用発明の構成fgの「機械的な真空ポンプ1」を「駆動する」「3相誘導モータ2」は、構成Bの「所定の誘導モータ」に相当し、構成bcdの「電流対トルクデータテーブル」は、「電流値に対応するトルク値の対応関係」に相当する。構成bcdにおいて、「測定電流に対する特定のトルクは、予め求められている電流対トルクデータテーブルから求められ」るのであるから、モータの電流値をトルク値に変換するには前記予め求められた「電流対トルクデータテーブル」に問い合わせることを要し、そのために「電流対トルクデータテーブル」が何らかの記録手段に記録されているべきことが自明である。すると、引用発明は、構成Bの「電流値に対応するトルク値の対応関係を記録した記録手段」に相当する構成を実質的に備えるといえる。 (ウ)構成C 引用発明の構成bcdの「商用電力を直接受けている前記モータを使用するとき、モータ電流が測定され」において、「モータ電流」とは、商用電源の「商用電力」を受ける「モータ」に流れる電流であるから、構成Cの「モータにおける電源の電流値」に相当する。 また、構成bcdにおける「前記モータ」は、構成fgの「3相誘導モータ2」である。 してみると、引用発明は、構成Cの「当該誘導モータにおける電源の電流値を検出する検知手段」に相当する構成を備える。 (エ)構成D 引用発明の構成bcdの「テーブルルックアップ方法」において、「測定電流に対する特定のトルク」を「予め求められている電流対トルクデータテーブルから求め」る際に、「電流対トルクデータテーブル」が「ルックアップ」されていること、すなわち参照されていることは明らかである。してみると、引用発明は、「検知された電流値を、前記電流値とトルク値の対応関係に参照する参照手段」に相当する構成を備える。 (オ)構成E 引用発明の構成cdeの「ポンプのタイトネス」、「相対的にタイトな摩擦の角度位置」及び「タイトな摩擦の角度的範囲の発生」を評価することは、構成Eの「異常又は劣化の判断」を行うことに相当し、「この目的のために」「トルクデータの評価」を「使用」することは、構成Eの「トルク値を指標と」すること、に相当する。してみると、引用発明は、構成Eの「トルク値を指標とした異常又は劣化の判断手段を備え」に相当する構成を備える。 (カ)構成F 引用発明の構成fgの「3相誘導モータ2」は、構成Fの「3相電源に接続された誘導モータ」に相当する。 (キ)構成G 引用発明の「ポンプのタイトネスを監視する手段」は、電圧を測定するものではないから、構成Gの「電圧検出手段を備えていないことを特徴とする」ことに相当する構成を備える。 引用発明の「3相誘導モータ2が駆動する機械的な真空ポンプ1」は、構成Gの「当該誘導モータに接続された電動バルブ、バルブアクチエータ、電動ジャッキ、電動ミキサーまたはこれらに接続された関連要素」と、「誘導モータに接続された機械要素」である点で共通する。 イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 【一致点】 「A 異常又は劣化の診断装置であって、 B’ 所定の誘導モータにおける電流値と、当該電流値に対応するトルク値の対応関係を記録した記録手段と、 C 当該誘導モータにおける電源の電流値を検出する検知手段と、 D 検知された電流値を、前記電流値とトルク値の対応関係に参照する参照手段と、 E トルク値を指標とした異常又は劣化の判断手段を備え、 F’ 3相電源に接続された誘導モータにおいて、電流の検知手段が備えられ、 G’ 電圧検出手段を備えていないことを特徴とする当該誘導モータに接続された機械要素の診断装置。」 【相違点1】 「電流値に対応するトルク値の対応関係」の「電流値」について、本件補正発明は、「所定の電圧における電流値」であるのに対し、引用発明の「電流対トルクデータテーブル」の「電流」が、「所定の電圧における電流値」であるか不明である点。 【相違点2】 3相電源に接続された誘導モータにおける電流の検知手段の配置について、本件補正発明においては、1相のみに備えられるのに対し、引用発明においては、検知手段がどこに備えられるのか不明な点。 【相違点3】 電流の検知手段の電流検知方式について、本件補正発明においては、非接触であることが特定されているのに対し、引用発明においては、どのような検知方式であるのか不明な点。 【相違点4】 診断装置の診断対象について、本件補正発明においては、誘導モータを含むとともに、誘導モータに接続された機械要素である「電動バルブ、バルブアクチエータ、電動ジャッキ、電動ミキサーまたはこれらに接続された関連要素」を含むのに対し、引用発明においては、誘導モータに接続された「真空ポンプ」である点。 (4)判断 以下、相違点について検討する。 ア 相違点1について (ア)引用発明は、構成bcdによれば、「商用電力を直接受けている前記モータを使用するとき、モータ電流が測定され、当該モータ電流の測定結果を直接利用することによってトルクを評価」するものであるが、「商用電力」は、200Vなど、ある定まった電圧で供給されることが技術常識であるから、引用発明では、「所定の電圧における」「モータ電流」が測定されているといえる。よって、相違点1のうち、構成Bの「電流値」が「所定の電圧における」ものである点は、実質的な相違点とは認められない。 (イ)構成bcdにおいて、「当該モータ電流の測定結果を直接利用することによってトルクを評価」するために用いる「前記モータの電流対トルク特性」は、当該「前記モータ」が、上記(ア)で説示したとおり≪ある定まった電圧≫で供給される「商用電力を直接受けている」のであるから、当該≪ある定まった電圧≫における「モータの電流対トルク特性」であるべきことは自明である。 (ウ)上記(ア)・(イ)から、引用発明において、「予め求められている電流対トルクデータテーブル」は、当該「商用電力」の供給する「所定の電圧」における「前記モータの電流対トルク特性」を表すものであることは自明であるから、相違点1は実質的な相違点ではない。仮に実質的な相違点であったとしても、当業者が容易に想到し得たことである。 イ 相違点2について 引用発明の属する技術分野、または測定分野全般において、測定の簡便性・低コスト性は、精確性とともに周知の課題であるところ、そのうち簡便性や低コスト性に着目して周知技術1を採用し、引用発明におけるモータ電流の測定を、「1相のみに」「備えられ」た「検知手段」で行うものとすることは、当業者にとって容易に選択し得たことである。 ウ 相違点3について 引用発明にの属する技術分野、または測定分野全般において、測定の簡便性・低コスト性は、精確性とともに周知の課題であるところ、そのうち簡便性や低コスト性に着目して周知技術2を採用し、引用発明におけるモータ電流の測定を「非接触検知手段」で行うものとすることは、当業者にとって容易に選択し得たことである。 エ 仮に相違点2、3に係る構成が不可分であるとしても、引用文献7、9には、モータの駆動電流を非接触検知手段で1相のみ測定する技術が開示されているから(上記(2)エに示す引用文献7の段落【0017】、【0020】、上記(2)カに示す引用文献9の段落【0035】、図10、(イ)を参照)、上記イ、ウに説示するように簡便性や低コスト性に着目して係る引用文献7、9に開示された技術を引用発明に適用し、相違点2、3に係る構成を備えるようにすることは、当業者が容易になし得たことである。 オ 相違点4について (ア)引用発明は、「モータ電流の測定結果を直接利用することによって評価されたトルク」に基づき、当該モータが駆動する真空ポンプを、その「ステータの内部表面に堆積してしまうことによりポンプ性能が低下する望ましくない物質の層がステータの内部表面に存在することに」起因する「タイトネス」について監視するものであるが、モータ自体にもステータまたはそれに類する軸受構造が存在し、該構造もまた摩耗等のトルク変化の原因となる劣化を生じることは技術常識である。そうすると、≪モータにその駆動対象である機械要素が取り付けられた状態でモータのトルクを評価した場合には、測定されたトルク変化には、該機械要素とモータ自体との双方に起因するものが合算されていることになる≫(以下「自明事項1」という。)から、引用発明において、≪モータ自体の異常に起因して生じた異常なトルクが、不可分に「評価されたトルク」に含まれること≫は自明(以下「自明事項2」という。)であるといえる。また、該自明事項2は、例えば上記摘記した引用文献9の【0034】の記載(「誘導電動機の各相電流は、該電動機の回転子(ローター)を含む回転系の異常に伴う微小なトルク変動を診断することとな」ること、)によっても裏付けられるものである。 一方、本件補正発明の「診断装置」が対象とする「誘導モータ及び当該誘導モータに接続された電動バルブ、バルブアクチエータ、電動ジャッキ、電動ミキサーまたはこれらに接続された関連要素」について、本願明細書において、「誘導モータ」と、「当該誘導モータに接続された電動バルブ、バルブアクチエータ、電動ジャッキ、電動ミキサーまたはこれらに接続された関連要素」とについて個別に分離して診断するという課題や目的の記載も、そのための手段・方法についての具体的な開示もない。よって、上記自明事項1に照らせば、本件補正発明は、「誘導モータ及び当該誘導モータに接続された電動バルブ、バルブアクチエータ、電動ジャッキ、電動ミキサーまたはこれらに接続された関連要素」について、(誘導モータのトルク値を指標として)不可分に診断するものであるか、少なくとも該不可分に診断する態様を含むものといえる。 以上のとおりであるから、相違点4に係る構成のうち、「誘導モータ及び当該誘導モータに接続された」機械要素「の診断装置」である点について、本件補正発明と引用発明とは実質的に相違しない。 また、仮に、引用発明が、誘導モータに接続された機械要素のみならず誘導モータ自体の劣化等についても診断し得る点について認識していない点を相違点であると認めるとしても、前記自明事項1・2、及び前記引用文献9の【0034】の記載のとおりであるから、引用発明において当業者が前記認識に到ることは容易になし得たことである。 (イ)本件補正発明は、対象とする機械要素を「電動バルブ、バルブアクチエータ、電動ジャッキ、電動ミキサーまたはこれらに接続された関連要素」に限定するものであるが、これらを対象とする場合に特有の構成を備えるものともいえないし、さらに、対象とする機械要素には、可動角度範囲が小さく連続回転しない電動バルブ関連装置のみならず、引用発明のポンプと同様に連続回転する「電動ミキサー」も含まれており、診断対象の限定自体、一定の技術的特徴を持つものでもなく、単に適用可能な対象を列挙したにとどまるといえる。 (ウ)また、誘導モータによって回転駆動される機械要素であれば、引用発明のポンプと同様に、当該機械要素への異物侵入、経年劣化による摩擦増大、可動部のゆがみ等に起因して誘導モータのトルクの増大を引き起こすことは明らかであり、引用発明が想定する望ましくない物質の堆積による摩擦その他の負荷増大は、バルブやミキサーでも生じ得る現象といえる。してみると、引用発明が誘導モータによって回転駆動されるバルブやミキサーを含む機械要素一般に適用可能であることは当業者にとって自明である。そして、「電動バルブ、バルブアクチエータ、電動ジャッキ、電動ミキサー」は、誘導モータによって回転駆動される機械要素としては例示するまでもなく周知なものである(以下「周知技術3」という。必要であれば、本願明細書に開示される先行技術文献である特許第4073902号公報の段落【0008】等や、油圧ジャッキの油圧ポンプを駆動する3相誘導電動機を開示する特開平5-338930号公報の段落【0018】、図1等を参照されたい。)。 (エ)上記(ア)~(ウ)のとおりであるから、引用発明のモータによる駆動対象となる機械要素を、真空ポンプに代えて電動バルブ、バルブアクチエータ、電動ジャッキ、電動ミキサーまたはこれらに接続された関連要素の診断装置として構成することは、当業者にとって容易である。 カ 請求人の主張について 請求人は、審判請求書の「3.(2)本願発明の特徴と引例との相違」において、 「・・・これに対し、引例1は、ポンプの状態監視に関する発明であって、閾値がアラートや停止のための自動判断に使用されるものです。プラント等で稼働している電動バルブ、バルブアクチエータ、電動ジャッキ、電動ミキサーは、一日の「動作時間」はわずか(あっても15分程度)にすぎないのであって、本発明は状態監視に関するものではありません。さらに、閾値はアラートや停止のために使用されるものでもありません。 すなわち、引例1では、ポンプの状態監視に関するものであって、常時診断に利用するものであるため、3相で取得した方が確実性が高く望ましいものであって、敢えて「1相の電流値のみを非接触で検知し」なければならない理由がありません。したがって、他の引例(周知技術)の存在にかかわらず、ポンプの状態監視に係る引例1から、「電動バルブ、バルブアクチエータ、電動ジャッキ、電動ミキサー」を「1相の電流値のみを非接触で検知」し、「非接触で電流値の検出器の設置から診断までを行う」ことに至る必然性も理由もありません。」と主張する。 しかしながら、引用文献1には、電流を3相で検出することや、3相での電流検出が必須であることを伺わせる記載はなく、上記イで検討したように、周知の課題である測定の簡便性・低コスト性や精確性のうち簡便性や低コスト性に着目して周知技術1を適用し、「1相のみの電流を測定する」ように構成する動機付けがあるといえる。 また、引用発明は、「回転の変化が無視しうる程度に小さい短い時間の間の電流データを使用し」、「長期間運転においてポンプを評価するためには、このような評価方法を時間を置いて間欠的に使用」するものであるから、ひとつひとつの測定や評価は、「短い時間の間」に行われるものであって、それを「間欠的」に行うのであるから(構成cde)、請求人の主張するように「常時診断」するものでもない。すると、「電動バルブ、バルブアクチエータ、電動ジャッキ、電動ミキサー」が請求人の主張するように「一日の「動作時間」はわずか(あっても15分程度)にすぎない」ものであったとしても、引用発明はこれらに適用可能であることは明らかである。 さらに、上記ウで検討したように、周知技術2を適用して、非接触で電流値の検出器の設置から診断までを行うようにすることの動機付けがあるといえる。 よって、請求人の上記主張には、根拠がなく、採用できないものである。 請求人は、上記主張に続けて、 「さらに、引例1には「トルク又は電流」を検知するとあることからも、本願のように「最も少ない検知手段」を模索したものでもありませんし、安全性の確保の観点から「非接触で電流値の検出器の設置から診断までを行う」ことを模索したものでもありません。 通常、プラント等で使用される「電動バルブ、バルブアクチエータ、電動ジャッキ、電動ミキサー」の診断においても、より正確性の要求に対応する動機付けが強く、当業界におけるこれらの診断において1相のみで検知することはなかったものです。そして、電流値からの実際のトルク指標と1相検知と非接触検知とを組み合わせることの相乗効果についてもいずれの引例にも記載がありませんし、引例1との関係において適用する理由が存在しません。したがって、引例のいずれにも本願の当該特徴に係る開示はなく、引例から本願発明に至ることはできません。」と主張する。 しかしながら、上記イ、ウで検討したように、周知の課題である測定の簡便性・低コスト性や精確性のうち簡便性や低コスト性に着目して引用発明に周知技術1、2を適用して、「1相のみに」「備えられ」た「非接触検知手段」で測定されるものとすることの動機付けがあるといえる。それによる作用効果は、モータ電流の測定をより簡便・低コストに行うことができるという周知技術1、2の構成自体から自明な範囲にとどまり、当業者の予測の範囲を超える格別顕著な相乗効果が奏されるものともいえない。 よって、係る請求人の主張は、採用できない。 キ したがって、本件補正発明は、引用発明、技術常識、引用文献5~7、9の記載に裏付けられる周知技術1、引用文献7~9の記載に裏付けられる周知技術2及び周知技術3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3 本件補正についてのむすび よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 令和4年12月15日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし10に係る発明は、令和4年6月7日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項7に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項7に記載された事項により特定される、上記第2[理由]1(1)に記載のとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由の概要は、この出願の下記の請求項に係る発明は、本願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 ・請求項 1、7、9 ・引用文献等 1、5-7 ・請求項 2、8 ・引用文献等 1、5-9 ・請求項 3-5 ・引用文献等 1、3-9 ・請求項 6 ・引用文献等 1、3-9 ・請求項 10 ・引用文献等 1、5-9 引用文献1:特開平10-220372号公報 引用文献3:国際公開第95/14186号(周知技術を示す文献) 引用文献4:特開2012-26576号公報(周知技術を示す文献) 引用文献5:特開平9-103051号公報(周知技術を示す文献) 引用文献6:特開2015-154532号公報(周知技術を示す文献) 引用文献7:特開2017-158324号公報(周知技術を示す文献) 引用文献8:国際公開第2012/157510号(周知技術を示す文献) 引用文献9:特開2010-288352号公報(周知技術を示す文献) 3 引用文献 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1、5ないし9及びその記載事項は、上記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、上記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、相違点3に係る限定事項及び相違点4に係る限定事項の一部である、「当該誘導モータに接続された機械要素」について、「電動バルブ、バルブアクチエータ、電動ジャッキ、電動ミキサーまたはこれらに接続された関連要素」との限定事項を削除したものである。 そうすると、本願発明と引用発明とを対比すると、上記第2の[理由]2(3)イに示した「一致点」で一致し、「相違点1」、「相違点2」及び下記「相違点4’」で相違する。 【相違点4’】 本願発明の「診断装置」の対象には「誘導モータ」が含まれるのに対し、引用発明の「ポンプのタイトネスを監視する手段」の対象は「真空ポンプ」である点。 相違点1は、上記第2の[理由]2(4)アで検討したとおり、引用発明及び技術常識に基づき当業者が容易に想到し得たことであり、相違点2については、上記第2の[理由]2(4)イで検討したとおり、引用発明及び周知技術1に基づき、当業者が容易になし得たことである。 相違点4’について、上記第2の[理由]2(4)エで検討したとおり、引用発明において、誘導モータも診断の対象とすることは、当業者にとって容易である。 すると、本願発明は、引用発明、技術常識、引用文献5~7、9の記載に裏付けられる周知技術1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2022-020318

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決1件(日本ギア工業株式会社)
  • 2021-001891拒絶査定不服審判 / 2022-06-06 / 原査定取消(特許/登録すべき)電動弁駆動装置の開度表示器
    同じ当事者: 日本ギア工業株式会社
同じ論点・分野の審決(審決分類)74件(121・G01M、575・G01M)
  • 2024-020115拒絶査定不服審判 / 2025-10-15 / 請求不成立故障診断システム、故障診断方法及びプログラム
    共通の審決分類: 121・G01M、575・G01M
  • 2022-004071拒絶査定不服審判 / 2023-03-22 / 請求不成立少なくとも1つの車両タイヤの転がり抵抗を試験する試験システム及び車両タイヤの転が…
    共通の審決分類: 121・G01M、575・G01M
  • 2021-015805拒絶査定不服審判 / 2022-05-30 / 原査定取消(特許/登録すべき)クロージャ、ケーブル敷設構造及びクロージャ内部への浸水検出方法
    共通の審決分類: 121・G01M、575・G01M
  • 2021-009543拒絶査定不服審判 / 2022-04-11 / 請求不成立自動運転車両のテスト方法、装置及び記憶媒体
    共通の審決分類: 121・G01M、575・G01M
  • 2020-014797拒絶査定不服審判 / 2021-07-12 / 原査定取消(特許/登録すべき)光パルス試験器及び光パルス試験器の表示方法
    共通の審決分類: 121・G01M、575・G01M

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存