特許拒絶査定不服審判
2024-006279
空気入りタイヤ及びその製造方法
- 審判番号
- 2024-006279
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-519341
- 請求日
- 2024年04月12日
- 審決日
- 2026年04月28日
- 公報発行日
- 2026年07月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】住友ゴム工業株式会社
- 【請求人代理人】上代 哲司
- 審判長/審判官
- 審判長 八木 誠
- 審判官 河端 賢
- 審判官 浅野 麻木
- 分類
- P18 .57 -Z (B60C) / P18 .113-Z (B60C)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第5項、特許法第29条第1項第3号、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-519341「空気入りタイヤ及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔令和2年11月19日国際公開、WO2020/230576〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特願2021-519341号(以下、「本願」という。)は、2020年(令和2年)4月23日(優先権主張 令和元年5月13日)を国際出願日とする出願であり、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
令和5年 9月 1日付け:拒絶理由通知(発送日:同年9月11日)
令和5年11月 6日 :意見書及び手続補正書の提出
令和6年 1月29日付け:拒絶査定(発送日:同年2月5日)
令和6年 4月12日 :審判請求書及び手続補正書の提出
第2 令和6年4月12日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和6年4月12日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。
「 ショルダー部及びセンター部から成るトレッド部を有する空気入りタイヤであって、
前記センター部は、ゴム成分A、補強充填剤A及び平均粒子径が1μm以上の固体微粒子Aを配合するゴム組成物Aにより形成され、
前記ショルダー部は、ゴム成分B及び補強充填剤Bを配合し、平均粒子径が1μm以上の固体微粒子Bを配合してもよいゴム組成物Bにより形成され、
前記固体微粒子Aの平均粒子径をPA(μm)、固体微粒子Aの配合量の前記ゴム成分Aの配合量に対する体積分率をRA(%)、前記固体微粒子Bの平均粒子径をPB(μm)、固体微粒子Bの配合量の前記ゴム成分Bの配合量に対する体積分率をRB(%)としたとき、下記式を満たしており、
PB×RB<PA×RA
前記固体微粒子Aが、氷雪路面を引っ掻く効果、脱落することによりできた細孔が氷雪路面の水を吸水し除去する効果、および、前記細孔の淵部分がエッジとして氷雪路面を引っ掻く効果を発揮する固体微粒子であることを特徴とする空気入りタイヤ。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載
本件補正前の、令和5年11月6日に手続補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「 ショルダー部及びセンター部から成るトレッド部を有する空気入りタイヤであって、
前記センター部は、ゴム成分A、補強充填剤A及び平均粒子径が1μm以上の固体微粒子Aを配合するゴム組成物Aにより形成され、
前記ショルダー部は、ゴム成分B及び補強充填剤Bを配合し、平均粒子径が1μm以上の固体微粒子Bを配合してもよいゴム組成物Bにより形成され、
前記固体微粒子Aの平均粒子径をPA(μm)、固体微粒子Aの配合量の前記ゴム成分Aの配合量に対する体積分率をRA(%)、前記固体微粒子Bの平均粒子径をPB(μm)、固体微粒子Bの配合量の前記ゴム成分Bの配合量に対する体積分率をRB(%)としたとき、下記式を満たしており、
PB×RB<PA×RA
さらに、PA×RAが、66~517であることを特徴とする空気入りタイヤ。」
2 補正の適否(本件補正の目的)
本件補正における請求項1に関する補正の内容について検討する。
本件補正は、本件補正前の請求項1における「さらに、PA×RAが、66~517である」という数値範囲に係る事項を削除し、本件補正後の請求項1において「前記固体微粒子Aが、氷雪路面を引っ掻く効果、脱落することによりできた細孔が氷雪路面の水を吸水し除去する効果、および、前記細孔の淵部分がエッジとして氷雪路面を引っ掻く効果を発揮する固体微粒子である」なる事項を追加するものであるところ、本件補正前の請求項1に係る発明の「PA×RA」なる事項については数値範囲に係る限定を付さずに拡張するものであることから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の限縮を目的とするものではなく、また、特許法第17条の2第5項各号のその他の請求項の削除、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするものでもない。
3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし14に係る発明は、令和5年11月6日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし14に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2の[理由]1(2)の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
本願発明に対する新規性に係る原査定の拒絶理由の概要は、次のとおりのものである。
1(新規性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
引用文献1:特開2006-298215号公報
3 引用文献1の記載事項及び引用発明
(1)引用文献1の記載事項
本願の出願前に日本国内又は外国において頒布され原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は当審で付与した。以下同様。)。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関し、さらに詳しくは、耐摩耗性を損なうことなく氷雪路面での防滑性能に優れ、特に氷上路面での摩擦力を高めて制動、駆動性能を向上することができるスタッドレスタイヤとして好適な空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
氷雪路面を走行する自動車には、トレッド部をブロックパターンにしたスタッドレスタイヤが一般に使用されるようになり、これに用いるゴム組成物としては氷上路面での駆動、制動性能を向上した上で、耐摩耗性や操縦安定性、低転がり抵抗性などの諸特性を低下させることのないゴム組成物の検討が多くなされている。
【0003】
例えば、氷上路面での接地性を高めるために、ガラス転移温度の低いブタジエンゴム等の使用や、軟化剤の配合により、低温でのゴム硬度を低く維持して接地性を向上する技術、充填剤のカーボンブラックの一部をシリカに置換し、低温での低モジュラスを維持して粘着摩擦を向上する技術がある。更に、氷上摩擦力を高めるために、トレッドに発泡ゴムを使用したり、中空粒状体を配合して、トレッド接地部に微小凹凸部を設けて除水効果及び引っ掻き効果を向上する技術、有機高分子物質や無機物質等の硬質粒状体、短繊維や胡桃の殻など植物性粒状体を配合して引っ掻き効果を得る技術などが提案されている。
【0004】
また、下記特許文献1及び2には、スタッドレスタイヤの氷雪路面上の摩擦力を高くする技術として、平均粒径30~500μmであるヤシガラ活性炭などの活性炭粒子を、ゴム100重量部に対して1~10重量部を配合する技術が開示されている。
【特許文献1】特開平10-231384号公報
【特許文献2】特開平11-269306号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記各従来技術によるゴム組成物では、いずれもトレッドゴムの強度やブロック剛性の低下を伴うことから、耐摩耗性や操縦安定性が低下傾向にあるという問題があり、またシリカを多量配合した場合は混合性の低下や導電性の問題、中空粒子を配合するものは混合中に粒子が破壊されてしまうという工程性での不具合を有するなど、いずれの手法においても十分に満足するには至っていないのが実状である。
【0006】
かかる問題を解決するため、本出願人は、本出願時に未公開である特願2003-403341において、ジエン系ゴム成分100重量部に対して、竹炭の粉砕物からなる平均粒径10~500μmの竹炭粉末を1~20重量部配合してなるゴム組成物を提案している。これによれば、竹炭粉末の優れた吸着性能により、トレッドゴムが吸水、除水作用を発揮して、氷上路面の水膜を効果的に除去することができ、氷上摩擦力を高めて氷上性能を大幅に向上することができ、また耐摩耗性などの諸特性の低下も抑えることができる。
【0007】
このように竹炭粉末は氷上性能に優れた改良効果を示すものの、氷上性能を更に向上させるために大量に配合すると、耐摩耗性、特に耐偏摩耗性が悪化してしまう。このように耐偏摩耗性が劣ると、タイヤの寿命が短くなることから改善が求められる。
【0008】
本発明は、以上の点に鑑みてなされたものであり、耐摩耗性や耐偏摩耗性を損なうことなく、効果的に氷上性能を向上することができる空気入りタイヤを提供することを目的とする。」
イ 「【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0016】
図1は、一実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド部の半断面図である。このタイヤは、不図示の左右一対のビード部及びサイドウォール部と、両サイドウォール部間にまたがるトレッド部10とを備えて構成されている。図示するように、トレッド部10において、ベルト層12のタイヤ半径方向外側にはトレッドゴム層14が設けられており、このトレッドゴム層14は、タイヤ半径方向内側のベース層16と、外側のキャップ層18とからなる。
【0017】
そして、キャップ層18は、タイヤ赤道線CLを含むトレッド中央領域20と、そのタイヤ幅方向外側に隣接して配置されたトレッドショルダー領域22とで構成されている。本実施形態では、かかるトレッド中央領域20と、その両側のトレッドショルダー領域22とが異なる配合のゴム組成物により形成されている。なお、本発明は、トレッドゴム層14が上記のベース層16を持つ2層構造のものには限定されず、一層構造であってもよい。
【0018】
ここで、トレッド中央領域20とトレッドショルダー領域22との比率は、上記本発明の効果を発揮させるために次のように設定されることが好ましい。すなわち、タイヤ赤道線CLからトレッド接地端E(タイヤに標準荷重(JATMA規定の最大荷重の75%の荷重)を負荷したときに路面と接するトレッド部10の外側端)との距離をxとしたとき、トレッド中央領域20とトレッドショルダー領域22の境界線Bがタイヤ赤道線CLから0.2x~0.8xの範囲内に設定されることが好ましく、より好ましくは0.4x~0.7xの範囲内に設定されることである。
【0019】
また、両領域20,22の境界線Bは、タイヤ周方向に延びる主溝24内に設定されることが好ましく、従って、例えば、3本以上の主溝を持つタイヤの場合、外側の2本の主溝24よりもタイヤ幅方向外側のショルダーリブが上記トレッドショルダー領域22とされ、これら2本の主溝24の内側のリブが上記トレッド中央領域20とされていることが好ましい。このように、両領域20,22の境界線Bを主溝24等の溝内に配置することにより、トレッドゴムが摩耗しても両領域20,22のゴムの界面が接地面に出現することを防止して、耐久性を向上することができる。
【0020】
トレッド中央領域20を形成するゴム組成物は、ジエン系ゴムからなるゴム成分100重量部に対して、平均粒径10~500μmの竹炭粉末を1~20重量部配合したものである。一方、トレッドショルダー領域22を形成するゴム組成物は、ジエン系ゴムからなるゴム成分100重量部に対して、平均粒径10~100μmの竹炭粉末を0~10重量部配合したものである。
【0021】
上記ゴム成分を構成するジエン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)の他、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、スチレン-イソプレン共重合体ゴム、ブタジエン-イソプレン共重合体ゴム、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合体ゴム、ニトリルゴムなどのジエン系合成ゴムが挙げられ、これらはそれぞれ単独で用いても2種以上併用してもよい。
【0022】
スタッドレスタイヤの場合、上記ゴム成分としては、NRとBRとのブレンドゴムを用いることが好ましく、その場合、BRの比率が少なすぎるとゴム組成物の低温特性が得難くなり、逆に多くなりすぎると加工性の悪化や耐引き裂き抵抗性が低下する傾向になるので、NR/BRの比率は30/70~80/20、更には40/60~70/30程度であることが好ましい。
【0023】
上記ゴム組成物に配合される竹炭粉末は、竹を材料として炭化して得られる炭素を主成分とする多孔質性炭化物(即ち、竹炭)の粉末である。ここでいう竹は、孟宗竹、苦竹、淡竹、紋竹などの各種の竹のほか、千鳥笹、仙台笹などの笹も含む概念であり、すなわち、本発明の竹炭粉末は笹の炭からなる粉末も含まれる概念である。
【0024】
かかる竹炭粉末は、路面を損傷したりアスファルトの粉塵を発生させることがなく、さらに天然素材であるため飛散しても健康問題や環境汚染を引き起こすといった問題がない優れた配合材である。また、竹炭は、木材などを原料とする活性炭に比べ、その特有の多孔質性により優れた吸着性を発揮することから、氷上路面に発生する水膜を効果的に吸水、除去し路面との摩擦力を高め、タイヤの氷上性能を著しく向上させることができる。
【0025】
竹炭の製法は、備長炭と同様に竹材を炭化するもので、例えば、特開平9-324180号公報に記載の竹炭の製造法のように、竹材を窯を用いて蒸し焼きにして炭化することにより、容易、安価に得られる。
【0026】
竹炭粉末は、このようにして得られた竹炭を粉砕することにより得ることができる。例えば、孟宗竹を材料とした市販品の竹炭を、公知の粉砕機(例えば、ボールミル)を用いて粉末状に粉砕し、所定の粒径範囲に選別し分級したもの、例えばJIS Z8801に記載の標準ふるいによって所定の粒径にふるい分けした粒状体を用いることができる。竹炭粉末の形状は、特に限定されるものではなく、例えば略球状、略立方体状、略柱状や略繊維状などの各種形状のもの、またそれらの混合物を用いることができる。但し、竹炭は粉砕した場合、通常は主として繊維状の細長い粒子で構成されるため、このような繊維状粒子から主として構成される竹炭粉末を用いることが好ましい。
【0027】
竹炭粉末は、上記のように通常は繊維状に近い形態をとるため比表面積が大きいという特徴がある。ここで、竹炭粉末のヨウ素吸着法(JIS K6217)による比表面積は、150m2/g以上であることが好ましく、より好ましくは200m2/g以上であり、さらには250m2/g以上である。この比表面積が大きいほど多孔質であって吸水速度が速くので、竹炭粉末の形態を損なわない範囲においてその上限は特に限定されることはない。なお、市販の備長炭の比表面積は100~130m2/g程度である。
【0028】
竹炭粉末の平均粒径は、トレッド中央領域20に配合するものについては、上記のように10~500μmである。10μm未満であると、比表面積が大きくても、粉末の絶対吸水量が少なくなり、吸水、除水効果が不十分となり、逆に500μmを越えると、ゴム中への分散性や加工性の低下、ゴムの破壊特性の低下により耐摩耗性の悪化を来し、また路面との摩擦により竹炭粉末が早期に脱落しやすくなる。
【0029】
一方、トレッドショルダー領域22に配合する竹炭粉末の平均粒径は10~100μmであり、トレッド中央領域20に配合する竹炭粉末よりも平均粒径が小さいものを用いることが好ましい。このように竹炭粉末は、トレッド中央領域20では大粒径のものを使用し、トレッドショルダー領域22では小粒径のものを使用することが好ましい。これは、トレッド中央領域20は、ショルダー領域22よりも氷上性能に対する寄与度が高いため、この領域20に大粒径の竹炭粉末を配合することにより、氷上性能を効果的に向上することができるからである。一方、ショルダー領域22は、局所的に圧力がかかる影響で耐偏摩耗性が損なわれやすいので、この領域22には小粒径の竹炭粉末を配合することにより、耐摩耗性/耐偏摩耗性の悪化を極力抑えながら、氷上性能を向上することができる。かかる観点より、竹炭粉末の平均粒径は、トレッド中央領域20に配合するものが30~500μmであり、トレッドショルダー領域22に配合するものが10~30μmであることがより好ましい。
【0030】
竹炭粉末の配合量は、上記のように、ゴム成分100重量部に対し、トレッド中央領域20では1~20重量部であり、トレッドショルダー領域22では0~10重量部である。トレッド中央領域20において、1重量部未満では吸水、除水効果が不十分で氷上性能が十分に得られず、20重量部を越えるとゴムの加工性が悪化すると共に、ゴムの硬度上昇、弾性率の低下により破壊特性が低下して耐摩耗性が悪化し、また増量による吸水、除水効果の向上も限界となる。一方、トレッドショルダー領域22では、竹炭粉末は配合しなくてもよく、即ち竹炭粉末はトレッド中央領域20のみに配合してもよい。ショルダー領域22に配合する場合、その配合量は1~10重量部であり、かつトレッド中央領域20での配合量よりも少ないことが好ましい。
【0031】
このように竹炭粉末の配合量をトレッド中央領域20で多量に、ショルダー領域22で少量にすることにより、氷上性能に対する寄与度の高いトレッド中央領域20で該性能を効果的に向上することができるとともに、耐偏摩耗性が損なわれやすいショルダー領域22において耐摩耗性/耐偏摩耗性の悪化を極力抑えながら、氷上性能を向上することができる。かかる観点より、竹炭粉末の配合量は、ゴム成分100重量部に対し、トレッド中央領域20では10~20重量部であり、トレッドショルダー領域22では5重量部以下であることがより好ましい。」
ウ 「【0032】
上記したゴム組成物には、種子の殻又は果実の核を粉砕してなる植物性粒状体が更に配合されてもよく、これらの配合により、路面の水膜除去効果に加えて、植物粒状体による引っ掻き効果による相乗効果により、氷上性能を一層向上させることができる。
【0033】
かかる植物性粒状体としては、氷の硬さより硬い、すなわちモース硬度が2以上である胡桃、椿等の種子の殻、または桃、梅等の果実の核を公知の方法で粉砕してなる破砕粒状体が挙げられる。これらの粒状体は、ゴム表面から突出し、路面に対する引っ掛き効果により氷上路面での滑り防止作用を発揮するもので、ゴムとの接着性を確保するためにゴム接着性改良の表面処理が施された粒状体であることが好ましい。
【0034】
上記植物性粒状体の粒径は、ゴム接着性改良剤で表面処理した後の径が100~600μmのものが好ましく、100μm未満であるとゴム表面からの突出量が少なく引っ掛き効果が不十分であり、600μmを越えると氷に含まれる気泡の径より大きいために気泡を破壊する作用が小さくなり、また粒状体周囲のマトリックスゴムの歪みが過大になってクラックが発生しトレッドから脱落しやすくなる。
【0035】
植物性粒状体のゴム接着性改良の表面処理剤として、例えば、レゾルシン・ホルマリン樹脂初期縮合物と天然ゴムラテックスまたはジエン系合成ゴムラテックスとの混合物(RFL処理液)が使用できる。上記のRFLは、植物性粒状体への付着率が1~5重量%になるように固形分濃度を5~25重量%に調整され、その中に植物性粒状体を浸漬するか、または植物性粒状体に上記の混合物を吹き付けて乾燥し、ゴム接着性改良表面処理が施された植物性粒状体が得られ、公知の方法で再粉砕し、所望する粒径分布に篩い分けし所定の粒径範囲を持つ植物性粒状体が得られる。
【0036】
このゴム接着性改良表面処理が施された植物性粒状体の配合量は、ジエン系ゴム100重量部に対し、1~30重量部が好適である。配合量が1重量部より少ない場合は、凍結路面おける耐滑り性が劣り、30重量部より多くなると耐摩耗性が低下する。なお、ゴム接着性改良表面処理が施されていない粒径が30~250μm程度の植物性粒状体が、1.5~10重量部を配合してもよく、この場合、タイヤの走行中に表面処理が施されていない植物性粒状体がトレッド表面から脱落し形成された穴が、竹炭粉末と共に吸水、除水効果を奏し、前記ゴム接着性改良処理済み植物性粒状体が奏する引っ掛き効果との相乗効果を発揮するようになる。」
エ 「【0041】
上記ゴム組成物は、通常のバンバリーミキサーやニーダーなどのゴム用混合機を用いて常法に従い混練され作製することができる。その際、トレッドキャップ層18について、上記した中央領域20用のゴム組成物と、ショルダー領域22用のゴム組成物との2種類を作製しておく。そして、この2種のゴム組成物を用いて、ゴム用押し出し機などによりタイヤのトレッドキャップ層18を作製して未加硫タイヤを成型した後、常法に従い加硫工程を経て、上記した空気入りタイヤが製造される。
【0042】
以上よりなる空気入りタイヤであると、トレッドキャップ層18、特にその中央領域20に多量に配合した竹炭粉末が、トレッド表面に露出して無数の穴部を表面に形成し、優れた吸水、除水効果を発揮して氷上路面の水膜を素速く除去し、トレッドゴムと路面との摩擦係数を高めて氷上性能を向上すると共に、操縦安定性や転がり抵抗を維持し、氷上路面と乾燥路面におけるタイヤ性能を両立することができる。また、トレッドショルダー領域22については竹炭粉末を未配合とするか、又は中央領域20に比べて小粒径、少量での配合としたことにより、耐摩耗性、特に耐偏摩耗性の悪化を抑えつつ、中央領域20での優れた氷上性能を発揮することができる。」
オ 「【実施例】
【0043】
以下、実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0044】
(ゴム組成物の調製)
下記表1に示す配合に従い、バンバリーミキサーを用いて混練し、ゴム組成物(A)~(F)を調製した。表1の各成分の詳細は以下の通りである。
【0045】
・天然ゴム:RSS#3
・ブタジエンゴム:JSR社製ハイシスBR「BR01」
・カーボンブラック:東海カーボン製N339「シーストKH」 ・シリカ:日本シリカ社製「Nipsil AQ」
・シランカップリング剤:デグサ製「Si-69」
・パラフィンオイル:JOMO製「プロセスP200」。
【0046】
・竹炭粉末1:孟宗竹の竹炭(宮崎土晃(株)製「1号炭」)をハンマーミルで粉砕し、得られた粉砕物をJIS Z8801記載の標準ふるいにより分級した平均粒径50μmの竹炭粉末(ヨウ素吸着比表面積(JIS K6217)=315m2/g)。平均粒径の測定は島津製作所製の粒度分布測定装置「SALV-2000A」による。
【0047】
・竹炭粉末2:孟宗竹の竹炭(宮崎土晃(株)製「1号炭」)をハンマーミルで粉砕し、得られた粉砕物をJIS Z8801記載の標準ふるいにより分級した平均粒径15μmの竹炭粉末(ヨウ素吸着比表面積=315m2/g)。
【0048】
・備長炭粉末:平均粒径300μmの備長炭(ウバメ樫)の粒状体(ヨウ素吸着比表面積=125m2/g)。
【0049】
・植物性粒状体:胡桃殻粉砕物(日本ウォルナット製「ソフトグリップ#46」(平均粒径300μm))にRFL処理液で表面処理を施したもの。
【0050】
また、各ゴム組成物(A)~(F)には、共通配合として、ステアリン酸(花王社製「ルナックS-20」)2重量部、亜鉛華(三井金属社製「亜鉛華1種」)3重量部、老化防止剤(住友化学社製「アンチゲン6C」)2重量部、ワックス(日本精蝋社製「OZOACE0355」)2重量部、加硫促進剤(住友化学社製「ソクシノールCZ」)1.5重量部、硫黄(鶴見化学社製「粉末硫黄」)2.1重量部を配合した。
【表1】
[図:0001436560000001.jpg]
【0051】
得られた各ゴム組成物(A)~(F)を150℃で30分間加硫し、加硫ゴムの硬度をJIS K7215(23℃)に準拠し測定した。また、各ゴム組成物を、図1に示すトレッドキャップ層18の中央領域20とショルダー領域22のゴム組成物として、下記表2に示す組み合わせで用いて、定法に従い加硫成形することにより、タイヤサイズ:185/65R15のスタッドレスタイヤを作製した。その際、タイヤ赤道線CLから両領域20,22の境界線Bまでの距離は、タイヤ赤道線CLからトレッド接地端Eまでの距離をxとして、0.6xとした。
【0052】
作製した各スタッドレスタイヤについて、氷上性能と耐摩耗性と耐偏摩耗性を下記方法に従い評価した。
【0053】
[氷上性能]
各タイヤ4本を排気量2000ccの前輪駆動式乗用車に装着し、乾燥アスファルト路面にて100kmの予備走行の後、気温-5±3℃、路面温度-5±3℃の氷上路面にて、速度40km/hでABSを作動させ制動距離を測定した。10回の測定の平均値を氷上性能の評価とし、比較例1を100とする指数表示で示した。数値の大きいものほど制動距離が短く良好である。
【0054】
[耐摩耗性]
各タイヤ4本を排気量2000ccの前輪駆動式乗用車に装着し、一般乾燥路面において2,500km毎に前後輪のローテイションを行い、1万km走行後の4本のトレッド残溝深さの平均値から摩耗量を求め耐摩耗性の評価とした。結果を比較例1を100とする指数表示で示した。数値の大きいものほど耐摩耗性が良好である。
【0055】
[耐偏摩耗性]
耐摩耗性試験における1万km走行後に、ブロックの前後高さによる偏摩耗比を求め、比較例1を100とする指数表示で示した。数値の大きいものほど耐偏摩耗性が良好である。
【表2】
[図:0001436560000002.jpg]
【0056】
表2に示すように、トレッド中央領域20のみに竹炭粉末を配合した実施例1では、同量かつ同粒径の竹炭を中央領域20とショルダー領域22の双方に配合した比較例1に比べて、耐偏摩耗性が大幅に改善されており、氷上性能についても比較例1と同等であって竹炭を配合しなかった比較例3に対しては大幅に改善されていた。また、備長炭粉末を配合した比較例4,5に対しても、実施例1は氷上性能が大幅に改善されており、かつ耐偏摩耗性にも優れていた。
【0057】
また、トレッド中央領域20とショルダー領域22ともに竹炭粉末を多量配合した比較例2では、比較例1に対して、氷上性能の大幅な改善は認められたものの、耐摩耗性と耐偏摩耗性が悪化していた。これに対し、中央領域20のみに多量配合した実施例2では、比較例1に対し、耐摩耗性を損なうことなく、氷上性能の大幅な改善が認められ、また、耐偏摩耗性についても大幅に改善されていた。また、中央領域20には竹炭粉末を多量に配合するとともに、ショルダー領域22には小粒径かつ少量配合した実施例3では、比較例2と同等の優れた氷上性能を得ながら、耐偏摩耗性は改善されていた。また、中央領域20において竹炭粉末と植物性粒状体を併用した実施例4では、竹炭粉末の配合量は実施例1よりも少ないものの、実施例3と同程度の優れた氷上性能が得られた。」
カ 「【産業上の利用可能性】
【0058】
以上の通り、本発明によれば、耐摩耗性及び耐偏摩耗性を損なうことなく、氷上性能を効果的に改良することができるので、スタッドレスタイヤを始めとして各種の空気入りタイヤに利用することができる。」
キ 「
[図:0001436560000003.jpg]
」(【図1】)
(2)引用発明
上記(1)を総合すると、引用文献1には、実施例1として、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「 トレッドショルダー領域22とトレッド中央領域20とで構成されているタイヤ半径方向外側のキャップ層18とタイヤ半径方向内側のベース層16とからなるトレッドゴム層14が設けられているトレッド部10を備えて構成されている空気入りタイヤであって、
トレッド中央領域20は、天然ゴム60重量部及びブタジエンゴム40重量部、カーボンブラック及びシリカ及び平均粒径50μmの竹炭粉末1を配合したゴム組成物Aを用い、
トレッドショルダー領域22は、天然ゴム60重量部及びブタジエンゴム40重量部及びカーボンブラック及びシリカを配合したゴム組成物Cを用い竹炭粉末はトレッド中央領域20に用いるゴム組成物Aにのみに配合し、
竹炭粉末1の平均粒径は50μmであり、竹炭粉末1を5重量部配合し天然ゴムを60重量部及びブタジエンゴムを40重量部配合した空気入りタイヤ。」
4 引用文献2の記載事項及び引用文献2に記載された技術的事項
(1)引用文献2の記載事項
本願の出願前に日本国内又は外国において頒布され拒絶査定において引用文献14として引用された特開2004-231545号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「【0019】
更に竹炭は、木炭及び活性炭よりも高比重であり(竹炭の比重は約0.7~0.9、木炭は約0.2、活性炭は0.5)、また竹特有の筒状の多孔性構造のために濡れ易く、吸着水を脱着し易い。このため飛散性、分級によるトラブルが大いに改良される。また竹の組成からも考察されるように比較的単純な成分からなり、炭化後の燃焼成分には複雑な重合物質が存在しないと言われる。更に比表面積は300m2/gであり、木炭の十数倍の吸着力を有する。
【0020】
上記構成における竹炭は、具体的にはイネ科(Gramineae)に属するマダケ属の孟宗竹(Phyllostachys pubescens)、布袋竹(別名:ゴザンチク、クレタケ)(Phyllostachys aurea)、真竹(別名:ニガタケ)(Phyllostachys bambusoides)、ハチク( 別名: クレタケ、カラダケ)(Phyllostachys nigra var.henonis)、黒竹(別名:シチク)(Phyllostachys nigra var.nigra )、メダケ属の女竹(Pleioblastus simonii)、ホウライチク属の蓬莱竹(別名:ドヨウチク、チンチク)等の他、同じイネ科のナリヒラダケ属の業平竹(Semiarundinaria fastuosa var.fastuosa )、トウチク属の唐竹(別名:ダイミョウチク)(Sinobambusa tootsik )、シホウチク属の四方竹(別名:シカクダケ、イボダケ)(Tetragonocalamus angulatus)、オカメザサ属の阿亀笹、ササ属の隈笹、千島笹、棕笹、都笹等を原材料とするものである。またその他、姫篠、スズタケ、矢竹、ラッキョウダケ、カムロザサ、寒山竹、大明竹、アズマネザサ、ハコネダケ、オロシマチク、チゴザサ、寒竹、鳳凰竹、スホウチク等を用いてもよく、種類は特に限定されない。そしてまた、竹材の形態としては、竹加工過程で生ずる引き粉、チップ、竹片等も利用できる。」
(2)引用文献2に記載された技術的事項
上記(1)を総合すると、引用文献2には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
「孟宗竹等を原材料とする竹炭の比重が約0.7~0.9であること。」
5 引用文献3の記載事項及び引用文献3に記載された技術的事項
(1)引用文献3の記載事項
本願の出願前に日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった“工業情報とメーカー実務の百科事典”,[online],2013年3月2日更新,[令和7年12月15日検索],インターネット <URL:https://www.toishi.info/sozai/rubbers/sg.html>(以下、「引用文献3」という。)には、次の事項が記載されている。
「
[図:0001436560000004.jpg]
」
(2)引用文献3に記載された技術的事項
上記(1)を総合すると、引用文献3は、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
「天然ゴムの比重が0.91から0.93であり、ブタジエンゴムの比重が0.91から0.94であること。」
6 本願発明と引用発明との対比
(1)本願発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明における「トレッドショルダー領域22」は本願発明における「ショルダー部」に相当し、以下同様に、「トレッド中央領域20」は「センター部」に、「トレッド部10」は「トレッド部」に、「空気入りタイヤ」は「空気入りタイヤ」に、それぞれ相当する。
そして、これを踏まえると、引用発明における「トレッドショルダー領域22とトレッド中央領域20とで構成されているタイヤ半径方向外側のキャップ層18とタイヤ半径方向内側のベース層16とからなるトレッドゴム層14が設けられているトレッド部10を備えて構成されている空気入りタイヤ」は本願発明における「ショルダー部及びセンター部から成るトレッド部を有する空気入りタイヤ」に相当する。
イ 引用発明における「天然ゴム60重量部及びブタジエンゴム40重量部」は本願発明における「ゴム成分A」に相当し、同様に、「カーボンブラック及びシリカ」は「補強充填剤A」に相当する。
また、引用発明における「平均粒径」は本願発明における「平均粒子径」に相当することから、引用発明における「平均粒径50μm」であることは本願発明における「平均粒子径が1μm以上」であることに相当する。そして、引用発明における「平均粒径50μmの竹炭粉末1」について、竹炭は固体の物質であり、50μmの粉末は微粒子といえることから、また一方で、本願発明における「固体微粒子A」は、その平均粒子径及び配合量のゴム成分Aの配合量に対する体積分率に関する特定のみなされているものであることから、引用発明における「竹炭粉末1」は、本願発明における「固体微粒子A」に相当するものであると認められる。
さらに、引用発明における「配合した」ことは本願発明における「配合する」ことに相当し、同様に、「を用い」ることは「により形成され」ることに相当する
そして、これを踏まえると、引用発明における「トレッド中央領域20は、天然ゴム60重量部及びブタジエンゴム40重量部、カーボンブラック及びシリカ及び平均粒径50μmの竹炭粉末1を配合したゴム組成物Aを用い」ることは本願発明における「センター部は、ゴム成分A、補強充填剤A及び平均粒子径が1μm以上の固体微粒子Aを配合するゴム組成物Aにより形成され」ることに相当する。
ウ 引用発明における「天然ゴム60重量部及びブタジエンゴム40重量部」は本願発明における「ゴム成分B」に相当し、以下同様に、「カーボンブラック及びシリカ」は「補強充填剤B」に、「配合した」ことは「配合する」こと、それぞれ相当する。
また、引用発明における「竹炭粉末はトレッド中央領域20に用いるゴム組成物Aにのみに配合」することは、ゴム組成物A以外のゴム組成物には竹炭粉末が配合されないことを意味し、一方、本願発明における「平均粒子径が1μm以上の固体微粒子Bを配合してもよい」ことは、「平均粒子径が1μm以上の固体微粒子Bを配合」しないことも包含すると認められることから、引用発明における「竹炭粉末はトレッド中央領域20に用いるゴム組成物AまたはBにのみに配合」することは本願発明における「平均粒子径が1μm以上の固体微粒子Bを配合してもよい」ことに包含される。
さらに、引用発明における「を用い」ることは本願発明における「により形成され」ることに相当する
そして、これを踏まえると、引用発明における「トレッドショルダー領域22は、天然ゴム60重量部及びブタジエンゴム40重量部及びカーボンブラック及びシリカを配合したゴム組成物Cを用い竹炭粉末はトレッド中央領域20に用いるゴム組成物Aにのみに配合」することは本願発明における「ショルダー部は、ゴム成分B及び補強充填剤Bを配合し、平均粒子径が1μm以上の固体微粒子Bを配合してもよいゴム組成物Bにより形成され」ることに相当する。
エ 引用発明における「竹炭粉末1の平均粒径50μmであ」ることは本願発明における「固体微粒子Aの平均粒子径PA(μm)」に相当し、同様に、「竹炭粉末1を5重量部配合」することは「固体微粒子Aの配合量」に、「天然ゴムを60重量部及びブタジエンゴムを40重量部配合した」ことは「ゴム成分Aの配合量」に、それぞれ相当する。
また、引用発明における「竹炭粉末はトレッド中央領域20に用いるゴム組成物Aにのみに配合」することは、ゴム組成物A以外のゴム組成物には竹炭粉末が配合されないことを意味することから、本願発明における「固体微粒子Bの平均粒子径」の「PB(μm)」が0であること、「固体微粒子Bの配合量」が0であること及び「固体微粒子Bの配合量のゴム成分Bの配合量に対する体積分率」である「RB(%)」が0であること並びに「PB(μm)」と「RB(%)」の積が0であることに相当する。
そして、引用発明における「竹炭粉末1の平均粒径50μm」と、引用発明における「炭粉末1」を「配合し」た「5重量部」の「天然ゴムを60重量部及びブタジエンゴム」を「配合した」「40重量部」に対する体積分率との積が0を上回ることは明らかであることから、引用発明における「竹炭粉末1の平均粒径50μmであり、竹炭粉末1を5重量部配合し天然ゴムを60重量部及びブタジエンゴムを40重量部配合した」ことは本願発明における「固体微粒子Aの平均粒子径PA(μm)、固体微粒子Aの配合量のゴム成分Aの配合量に対する体積分率をRA(%)、固体微粒子Bの平均粒子径をPB(μm)、固体微粒子Bの配合量のゴム成分Bの配合量に対する体積分率をRB(%)としたとき、下記式を満たしており、 PB×RB<PA×RA」であることに相当する。
(2)以上のことから、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「 ショルダー部及びセンター部から成るトレッド部を有する空気入りタイヤであって、
センター部は、ゴム成分A、補強充填剤A及び平均粒子径が1μm以上の固体微粒子Aを配合するゴム組成物Aにより形成され、
ショルダー部は、ゴム成分B及び補強充填剤Bを配合し、平均粒子径が1μm以上の固体微粒子Bを配合してもよいゴム組成物Bにより形成され、
固体微粒子Aの平均粒子径PA(μm)、固体微粒子Aの配合量のゴム成分Aの配合量に対する体積分率をRA(%)、固体微粒子Bの平均粒子径をPB(μm)、固体微粒子Bの配合量の前記ゴム成分Bの配合量に対する体積分率をRB(%)としたとき、下記式を満たしている、
PB×RB<PA×RA
空気入りタイヤ。」
<相違点>
「PA×RA」について、本願発明では、「66~517である」のに対し、引用発明では、「PA×RA」に相当する値として直接特定されていない点。
7 判断
(1)相違点の検討
ア 引用発明における「竹炭粉末1の平均粒径」が「50μm」であることから、本願発明における「固体微粒子Aの平均粒子径PA(μm)」に相当する値は「50μm」であると認められる。
イ 引用発明は、上記3(2)のとおり、「竹炭粉末1を5重量部配合し天然ゴムを60重量部及びブタジエンゴムを40重量部配合した」ものである。
また、上記4(2)の「孟宗竹等を原材料とする竹炭の比重が約0.7~0.9であること。」から、引用発明における竹炭粉末1の比重についても約0.7~0.9であると認められる。
さらに、上記5(2)のとおり、「天然ゴムの比重が0.91から0.93であり、ブタジエンゴムの比重が0.91から0.94であること。」から、引用発明における「竹炭粉末1を5重量部配合し天然ゴムを60重量部及びブタジエンゴムを40重量部配合した」ゴムの比重は、「天然ゴムを60重量部及びブタジエンゴムを40重量部」の合計100重量部を「天然ゴムを60重量部及びブタジエンゴムを40重量部」の全体の体積で除算した値であり、ここで、該全体の体積は「天然ゴムを60重量部」の体積(60/(0.91~0.93)と「ブタジエンゴムを40重量部」の体積40/(0.91~0.94)の和となることから、該ゴムの比重は、100/(60/(0.91~0.93)+40/(0.91~0.94))=約0.91~0.93であると認められる。
そして、本願明細書の段落【0050】には「体積分率とは、ゴム成分の合計の配合量に対する固体微粒子の配合量の質量比をR、ゴム成分の密度をGD、固体微粒子の密度をPDとしたときの、式:R×(GD/PD)の値である。」と記載されている。
そうすると、引用発明における「体積分率」の「RA(%)」に相当する値は、「竹炭粉末1」の「5重量部配合」を「天然ゴムを60重量部及びブタジエンゴムを40重量部」の合計100重量部で除算した百分率に、ゴムの比重約0.91~0.93を竹炭粉末の比重約0.7~0.9で除算した値を乗算した値、すなわち、5/100×100×(約0.91~0.93)/(約0.7~0.9)=約5.1~6.6となる。
ウ これらを踏まえると、上記アの「固体微粒子Aの平均粒子径PA(μm)」に相当する値「50μm」と上記イの「体積分率」の「RA(%)」に相当する値「約5.1~6.6」を乗算した値、すなわち、「PA×RA」に相当する値は、約255~330となる。
そして、引用発明における「PA×RA」に相当する値約255~330は、本願発明において特定された数値範囲の下限値「66」より大きく同上限値「517」より小さいことから、引用発明は、本願発明における「PA×RAが、66~517である」ことに相当する事項を備えているものと認められる。
エ そうすると、上記相違点は実質的なものとは認められない。
(2)小括
したがって、本願発明は引用発明である。
8 審判請求人の主張の検討
(1)審判請求人の審判請求書における主張の検討
ア 審判請求書における主張の内容
審判請求人は、審判請求書において、拒絶査定の「●理由2(特許法第29条第1項第3号)」に対して、審判請求書と同時に令和6年4月12日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)に基づいて、次のように主張する(下線は当審において付した。)。
(ア)まず、本件補正発明については、令和5年11月6日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1から「「さらに、PA×RAが、66~517である」の記載を削除する一方、出願当初の明細書の段落[0048]における「固体微粒子Aをゴム組成物Aに配合することで、固体微粒子A自体が氷雪路面を引っ掻く効果、固体微粒子Aが脱落することによりできた細孔が氷雪路面の水を吸水し除去する効果、及び固体微粒子Aが脱落することによりできた細孔の淵部分がエッジとしてはたらき氷雪路面を引っ掻く効果が得られ、これらの効果により氷上性能が向上すると考えられる。」の記載に基づいて「前記固体微粒子Aが、氷雪路面を引っ掻く効果、脱落することによりできた細孔が氷雪路面の水を吸水し除去する効果、および、前記細孔の淵部分がエッジとして氷雪路面を引っ掻く効果を発揮する固体微粒子である」を追記」(審判請求書の「[3]本願発明が特許されるべき理由」の「1.補正およびその適法性」の「(2)補正の根拠」の「(a)特許請求の範囲」欄)したものとしている。
(イ)そして、本件補正発明に基づいて、以下のように主張している(以下、いずれも審判請求書の「[3]本願発明が特許されるべき理由」の「2.本願発明が特許されるべき理由」の「(1)理由2について」欄)。
a 「本願発明は、[0048]に記載のように、固体微粒子Aをゴム組成物Aに配合することで、固体微粒子A自体が氷雪路面を引っ掻く効果、固体微粒子Aが脱落することによりできた細孔が氷雪路面の水を吸水し除去する効果、及び固体微粒子Aが脱落することによりできた細孔の淵部分がエッジとしてはたらき氷雪路面を引っ掻く効果を得て、氷上性能の向上を図る発明です。」
b 「 このような本願発明に対し、審査官殿は、引用文献1には竹炭粉末が記載されており、この竹炭粉末が本願発明における「固体微粒子A」に相当するため、本願発明の新規性、進歩性が否定されるとのご見解を示しておられます。」
c 「 しかしながら、この審査官殿のご見解には大きな誤認があり、引用文献1に記載された竹炭粉末が本願発明における「固体微粒子A」に相当するとは、到底、言うことができず、引用文献1によって本願発明の新規性、進歩性は否定されないと、本出願人は思料致します。」
d 「 即ち、引用文献1に記載の「竹炭粉末」は、引用文献1の明細書の段落[0024]に「かかる竹炭粉末は、路面を損傷したりアスファルトの粉塵を発生させることがなく、さらに天然素材であるため飛散しても健康問題や環境汚染を引き起こすといった問題がない優れた配合材である。また、竹炭は、木材などを原料とする活性炭に比べ、その特有の多孔質性により優れた吸着性を発揮することから、氷上路面に発生する水膜を効果的に吸水、除去し路面との摩擦力を高め、タイヤの氷上性能を著しく向上させることができる。」と記載されているように、元々、多孔質性による優れた吸着性を利用するために使用されています。」
e 「 そして、「路面を損傷したりアスファルトの粉塵を発生させることがなく」の記載、また、段落[0032]における「上記したゴム組成物には、種子の殻又は果実の核を粉砕してなる植物性粒状体が更に配合されてもよく、これらの配合により、路面の水膜除去効果に加えて、植物粒状体による引っ掻き効果による相乗効果により、氷上性能を一層向上させることができる。」の記載から見て、「竹炭粉末」には、本願発明のように「氷雪路面を引っ掻く効果、脱落することによりできた細孔が氷雪路面の水を吸水し除去する効果、および、前記細孔の淵部分がエッジとして氷雪路面を引っ掻く効果」がないことは明白です。」
イ 上記アの主張に対する検討
以下、上記アの主張について検討する。
(ア)本件補正発明については、上記第2の2のとおり、本件補正前の請求項1に係る発明の「PA×RA」なる事項については数値範囲に係る限定を付さずに拡張するものであることから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の限縮を目的とするものではなく、また、特許法第17条の2第5項各号のその他の請求項の削除、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするものでもないものであり、特許法第17条の2第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものとして却下されたので、本件補正発明に基づく主張は失当であり採用することはできない。
(イ)また、本願発明の発明特定事項において、上記アの主張の根拠となる事項、すなわち、上記ア(ア)並びに(イ)a及びeの主張の拠り所としている「氷雪路面を引っ掻く効果、脱落することによりできた細孔が氷雪路面の水を吸水し除去する効果、および、前記細孔の淵部分がエッジとして氷雪路面を引っ掻く効果を発揮する」ことに対応する事項を見出すこともできない。
そして、上記6(1)イのとおり、引用発明における「平均粒径50μmの竹炭粉末1」について、竹炭は固体の物質であり、50μmの粉末は微粒子といえることから、また一方で、本願発明における「固体微粒子A」は、その平均粒子径及び配合量のゴム成分Aの配合量に対する体積分率に関する特定のみなされているものであることから、引用発明における「竹炭粉末1」は、本願発明における「固体微粒子A」に相当するものであると認められる。
したがって、本願発明の発明特定事項からみても、上記(ア)の主張は採用することができない。
(2)審判請求人の令和5年11月6日に提出された意見書における主張の検討
ア 上記意見書における主張の内容
審判請求人は、同意見書において、令和5年9月1日付けの拒絶理由通知書の「●理由2(新規性)、理由3(進歩性)について」に対して次のように主張している(「2.新規性および進歩性について」欄)。
「(1)新規性
補正後の請求項1に係る発明においては、センター部を形成するゴム成分Aの固体微粒子Aの平均粒子径PA(μm)と、固体微粒子Aの配合量のゴム成分Aの配合量に対する体積分率RA(%)との積(PA×RA)の値が、66~517に特定されています。
一方、引用文献1~4のいずれにも、PA×RAの値を特定する記載はなく、示唆もありません。
よって、補正後の請求項1に係る発明は、引用文献1~4のいずれかに記載された発明ではなく、十分な新規性を有しているものと思料致します。
そして、請求項2以降に係る発明の各々は、直接的、間接的に、補正後の請求項1を引用しておりますので、同様に、十分な新規性を有しているものと思料致します。
イ 上記アの主張に対する検討
以下、上記アの主張について検討する。
上記7(1)のとおり、引用発明における「PA×RA」に相当する値約255~330は、本願発明において特定された数値範囲の下限値「66」より大きく同上限値「517」より小さいことから、引用発明は、本願発明における「PA×RAが、66~517である」ことに相当する事項を備えているものと認められる。
したがって、上記アの主張は採用することができない。
(3)小括
したがって、上記7のとおり、本願発明は、引用発明である。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、本願の出願前日本国内または外国において頒布された引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-006279