特許拒絶査定不服審判
2017-014157
カラーフィルタ用有機顔料組成物、その製造方法及びカラーフィルタ
- 審判番号
- 2017-014157
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2013-064134外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年09月25日
- 審決日
- 2018年11月12日
- 公報発行日
- 2019年02月22日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .121-WZ (G02B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2013- 64134「カラーフィルタ用有機顔料組成物、その製造方法及びカラーフィルタ」拒絶査定不服審判事件〔平成25年11月 7日出願公開、特開2013-228714〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
1 手続の経緯
本願は、平成25年3月26日(優先権主張 平成24年3月28日)の出願であって、平成28年11月21日付けで拒絶理由が通知され、平成29年1月10日に意見書の提出とともに手続補正がなされ、同年6月23日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対し、同年9月25日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。
その後、平成30年7月13日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)を通知し、同年9月13日に意見書の提出とともに手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされた。
2 本件発明
本願の請求項1~4に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定されるとおりのものであって、その請求項1に係る発明は以下のとおりのものである。
「質量換算で有機顔料(A)100部当たり、エポキシ基およびα-クロロヒドリン基を含有し、かつ側鎖の炭素原子数が異なる(メタ)アクリル酸エステル2種以上の単量体を含む単量体混合物を重合して得られた重合体(B)0.1~15部を含有することを特徴とするカラーフィルタ用有機顔料組成物。」(以下、「本件発明」という。)
3 引用文献の記載及び引用発明
(1)引用文献1
ア 引用文献の記載事項
当審拒絶理由において引用され、本願優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開平9-217019号公報(以下、「引用文献1」という。)には、以下の記載事項がある。(なお、合議体が発明の認定等に用いた箇所に下線を付した。以下同様。)
(ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 (1)(○1)(合議体注:丸囲みの「1」をこのように表記した。以下同様。)粗顔料又は粗顔料を乾式粉砕して得た粉砕粗顔料、(○2)カルボキシル基含有アクリル樹脂のアルカリ塩及び(○3)水及び/又は水性溶媒を混合する第1工程、
(2)第1工程で得た混合物を機械的に分散させる第2工程、
(3)第2工程で得た分散物に酸を加えて、顔料に樹脂を析出させる第3工程、及び
(4)第3工程で得た析出物にアルカリを加えて再中和する第4工程から成る顔料組成物の製造方法。
(中略)
【請求項6】 得られた顔料組成物が顔料の周囲をカルボキシル基含有アクリル樹脂で被覆された状態にある請求項1、2、3、4又は5記載の顔料組成物の製造方法。
【請求項7】 請求項1、2、3、4、5又は6記載の製造方法で得られる顔料組成物を含有する水性着色液。」
(イ)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車、塗装鋼板、建材、缶等の水性塗料、繊維を染色する捺染剤、グラビアインキ、フレキソインキ等の水性インキ、水性ボールペン、万年筆、水性サインペン、水性マーカー等の筆記具、バブルジェット方式、サーマルジェット方式、ピエゾ方式等のオンデマンドタイプのインクジェットプリンター用の水性記録液、液晶テレビやラップトップ型のパソコン等に使用されるカラーフィルタ等に使用する材料として有用なマイクロカプセル化された顔料組成物の製造方法に関する。
(中略)
【0004】これらに使用する顔料は、鮮明な色相を得ること、分散をしやすくすること、あるいは耐候性を良くすること等のために、粗顔料を合成した後、結晶型を整えたり、一次粒子径の形や大きさを揃えたりして製造した、いわゆる顔料化されたものである。このため、従来の顔料組成物や加工顔料は、顔料合成後の粗顔料を使用することができないため、労力やエネルギー等がかかりコストが高かった。
【0005】また、これらの顔料は、再度分散を必要としたり、塗料やインキに使用した場合、必ずしも要求性能を満たすとは限らなかった。
【0006】特に、高鮮明、高透明、高精細度等が要求される自動車塗料、カラーフィルターやジェットインク等は、塗料やインキ等の一般的に使用される有機顔料に比べて、一次粒子径が細かい。そのため、それら自動車塗料、カラーフィルターやジェットインク等を製造するには多大なエネルギーや労力を要する結果、生産コストが高くなる、という問題点があった。また、これらに使用される顔料は、二次凝集が強いため、一次粒子にまで分散させるには多大なエネルギーを必要とする、という問題点があった。さらにまた、顔料を一次粒子まで分散できたとしても、分散液中の顔料を安定に保つには種々の工夫が必要であるという問題点があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明が解決しようとする課題は、微粒子で分散安定性に優れた水性顔料分散液を安価に製造方法する手法を開発し、水系の顔料分散液を用いる水性塗料、水性インキや捺染、あるいは自動車塗料、カラーフィルタやジェットインキ等の微細な粒子が要求される用途に、安価に提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意、検討を重ねた結果、
(1)(○1)粗顔料又は粗顔料を乾式粉砕して得た粉砕粗顔料、(○2)カルボキシル基含有アクリル樹脂のアルカリ塩及び(○3)水及び/又は水性溶媒を混合する第1工程、
(2)第1工程で得た混合物を機械的に分散させる第2工程、
(3)第2工程で得た分散物に酸を加えて、顔料に樹脂を析出させる第3工程、及び
(4)第3工程で得た析出物にアルカリを加えて再中和する第4工程から成る顔料組成物の製造方法が、従来の顔料水性分散液の製造コスト低減し、また、再分散を必要としないことから、塗料やインキの製造コストまでも低減でき、さらに、第1工程で得られた混合物を加熱処理することで機械的分散時のエネルギーを節約できることにより微細な分散体が得られることを見い出し、本発明を完成するに至った。また、この顔料組成物を用いた水性着色液が、微粒子で、分散安定性に優れ、鮮明性、透明性、精細性等に優れた塗膜を提供できることを見い出し、本発明を完成するに至った。」
(ウ)「【0022】本発明の製造方法で使用するカルボキシル基含有アクリル樹脂は、カプセル壁材として充分なる分子量を有し、特に壁形成化という操作を必要としないが、カプセル壁の耐溶剤性や耐久性などの特性を一層向上させるために、あるいは、着色液の膜形成後の膜強度を高めるために、予め、使用するカルボキシル基含有アクリル樹脂それ自体に、グリシジル基、イソシアネート基、水酸基又はα,β-エチレン性不飽和二重結合(ビニル基)の如き反応性活性基をペンダントさせておくことによって、あるいは、反応性活性基を有する架橋剤、例えば、メラミン樹脂、ウレタン樹脂エポキシ樹脂、エチレン性不飽和モノマーやオリゴマー等の光硬化剤などを混入させておくことによって、カプセルの形成時又は形成後、あるいは、着色液の塗膜形成後に、これらの反応性活性基や官能基などを利用して、カプセル壁材用としてのカルボキシル基含有アクリル樹脂それ自体の分子量を増大させたり、架橋しゲル化する性能を付与させておくことがより好ましい。」
(エ)「【0030】本発明の第1工程におけるカルボキシル基含有アクリル樹脂の使用量は、粗顔料又は乾式粉砕粗顔料100重量部に対して、10~200重量部の範囲が好ましく、20~150重量部の範囲が特に好ましい。」
(オ)「【0072】
【実施例】以下、実施例及び比較例を用いて、本発明を更に詳細に説明する。以下において、「部」及び「%」は、特に断りがない限り、『重量部』及び『重量%』を夫々表わす。
【0073】《カルボキシル基含有アクリル樹脂の合成》
<合成例1>n-ブチルメタクリレート175部、n-ブチルアクリレート10.7部、β-ヒドロキシエチルメタクリレート37.5部、メタクリル酸26.8部及び「パーブチル O」(日本油脂(株)製のtert-ブチルパーオキシオクトエート)20.0部から成る混合液を調製した。
(中略)
【0079】<合成例4>n-ブチルメタクリレート83.8部、n-ブチルアクリレート89.4部、β-ヒドロキシエチルメタクリレート37.5部、メタクリル酸26.7部、グリシジルメタクリレート12.5部及び「パーブチル O」20.0部から成る混合液を調製した。
【0080】次に、メチルエチルケトン250部をフラスコに仕込んで、窒素シール下に、攪拌しながら、75℃まで昇温させた後、上記の混合液を2時間に亘って滴下し、更に同温度で15時間反応させて、固形分の酸価が68.9、数平均分子量10420のビニル系樹脂の溶液を得た。この樹脂溶液の不揮発分は51%であった。以下、これを樹脂溶液(A-4)と略記する。
【0081】《粗顔料の製造》
(中略)
【0083】<製造例3>(ペリレン粗顔料の製造)
ペリレンテトラカルボン酸無水物(アルドリッチ社製)100部、40%メチルアミン水溶液(国産化学社製:試薬特級)79.1部及び水1000部を反応容器に仕込み、5℃で溶解させた。全てが溶解した後、90℃に昇温し、同温度で8時間メチル化反応を行なった。反応終了後、室温に冷却した後、濾過し、残渣を水洗して反応物を得た。
【0084】さらに、この反応物を1%水酸化カリウム水溶液2000部中に2時間分散させ、分散液を濾過し、残渣を水で洗浄し、未反応物を除去し、ペリレン粗顔料のウエットケーキ(不揮発分20.7%)490部を得た。この粗顔料を電子顕微鏡で撮影して得た粒子は、凝集が強く、とても顔料として使用できる状態ではなかった。
(中略)
【0114】<実施例5>(粗顔料を用いたゲル化処理ペリレン顔料組成物の製造)
(○1)第1工程(混合)
製造例3で得たペリレン粗顔料のウエットケーキ3865部、合成例4で得たカルボキシル基含有アクリル樹脂(A-4)800部及びジメチルエタノールアミン44.4部を容器に入れ、攪拌混合し、混合物を得た。
【0115】(○2)第2工程(分散)
第1工程で得た混合物を、攪拌式ビーズミル装置(ドライスヴェルケ社製の「ドライスミル」)を用いて、攪拌機外周速度10.3m/秒、直径0.25mmのジルコニアビーズ(昭和シェル石油社製の「ミクロハイカZ250」)充填量3.5kg、懸濁物分散温度32℃の条件で、2時間分散させて、ペリレン顔料分散物を得た。
【0116】(○3)第3工程(酸析)
第2工程で得た顔料分散物にイオン交換水2300部を加え、攪拌しながら、内容物のpHが4.9となるまで1N塩酸を加えて、顔料表面に樹脂を沈着させて懸濁液を得た。この懸濁液を濾過してウエットケーキ状の懸濁物を濾別した後、洗浄液のpHが中性付近になるまでウエットケーキ状の懸濁物をイオン交換水で洗浄して、不揮発分23.3%のウエットケーキ状の懸濁物を得た。
【0117】(○4)第4工程(再中和)
第3工程で得た析出物300部を容器に取り、ジメチルエタノールアミン2.6部を加え、ディスパーを用いて5000rpmで30分間分散させて、さらに、90℃で3時間加熱処理を行ない、吸着した樹脂のゲル化処理を行なって、水性の顔料組成物を得た。得られた顔料組成物の不揮発分は22.7%で、pH9.2、体積平均径134nmであった。
【0118】この顔料組成物は、粗顔料から直接微細な水性分散体を製造することができ、粗顔料から顔料にするための製造工程を短縮し、エネルギーや労力、コストを下げることができた。」
(カ)「【0217】
【発明の効果】本発明の顔料組成物は、粗顔料から直接微細な水性分散体を製造することができ、粗顔料から顔料にするための製造工程を短縮し、エネルギーや労力、コストを下げることができる。
【0218】また、本発明の顔料組成物を用いた水性着色液を調製するに当たっては、特にビーズミルやロール等の分散機を必要とせず、単に混合するのみで調製できたので、分散設備が不要で、分散工程や労力を短縮でき、製造時間の短縮あるいは分散エネルギーの省力化ができる。
【0219】さらに、本発明の水性着色液を用いた場合、貯蔵安定性や耐水性に非常に優れ、精細度や色濃度が高く、演色性や透明性、鮮映性、光沢等に優れた塗膜を提供できる。」
イ 引用発明
上記記載事項(イ)及び(オ)に基づけば、引用文献1には、実施例5として、以下の発明が記載されていると認められる。
「 ペリレン粗顔料のウエットケーキ(不揮発分20.7%)3865部、カルボキシル基含有アクリル樹脂(A-4)800部及びジメチルエタノールアミン44.4部を容器に入れ、攪拌混合し、混合物を得る第1工程(混合)、
第1工程で得た混合物を、攪拌式ビーズミル装置を用いて分散させ、ペリレン顔料分散物を得る第2工程(分散)、
第2工程で得た顔料分散物にイオン交換水2300部を加え、攪拌しながら、内容物のpHが4.9となるまで1N塩酸を加えて、顔料表面に樹脂を沈着させて懸濁液を得て、この懸濁液を濾過してウエットケーキ状の懸濁物を濾別した後、洗浄液のpHが中性付近になるまでウエットケーキ状の懸濁物をイオン交換水で洗浄して、不揮発分23.3%のウエットケーキ状の懸濁物を得る第3工程(酸析)、
及び、第3工程で得た析出物300部を容器に取り、ジメチルエタノールアミン2.6部を加え、ディスパーを用いて5000rpmで30分間分散させて、さらに、90℃で3時間加熱処理を行ない、吸着した樹脂のゲル化処理を行なって、水性の顔料組成物を得る第4工程(再中和)で得られた、
カラーフィルタ等に使用する材料として有用なマイクロカプセル化されたペリレン顔料組成物。
ただし、上記カルボキシル基含有アクリル樹脂(A-4)は、n-ブチルメタクリレート83.8部、n-ブチルアクリレート89.4部、β-ヒドロキシエチルメタクリレート37.5部、メタクリル酸26.7部、グリシジルメタクリレート12.5部及びtert-ブチルパーオキシオクトエート20.0部から成る混合液を調製し、反応させて、固形分の酸価が68.9、数平均分子量10420のビニル系樹脂の不揮発分が51%の樹脂溶液として得られたものである。」(以下、「引用発明」という。)
(2)引用文献4
当審拒絶理由において周知技術を示す文献として引用され、本願優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開2003-206413号公報(以下、「引用文献4」という。)には、以下の記載事項がある。
ア 「【0028】本発明の表面処理微細有機顔料における微細有機顔料と皮膜形成性樹脂との割合は質量換算で、微細有機顔料100部当たり皮膜形成性樹脂3~25部である。皮膜形成性樹脂がこれより少なければ、微細有機顔料粒子表面に充分に付着させることが出来ず所望の表面処理効果が得られ難く、一方、これを越えても表面処理効果の程度に限れば、それはあまり変わらない。後述する本発明の表面処理微細有機顔料の好適な製造方法でも、上記範囲となる様に粗製有機顔料または有機顔料と前記皮膜形成性樹脂との割合を調節する。」
イ 「【0076】
【実施例】次に本発明を製造例と実施例と比較例により詳細に説明する。以下、部及び%は質量基準である。
(中略)
【0079】[実施例1]製造例1のハロゲン化クロロアルミニウムフタロシアニン粗製顔料(一次粒子の平均粒子径0.1~10μmの範囲内。)1部、粉砕した塩化ナトリウム10部、ジエチレングリコール1部、銅フタロシアニンフタルイミドメチル誘導体0.05部、2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-イル基を有する皮膜形成性樹脂溶液A(メタクリル樹脂(2,3-カーボネートプロピルメタクリレート/メタクリル酸/ベンジルメタクリレート=25/11.5/63.5、ポリスチレン換算の数平均分子量=5100、分散度Mw/Mn=2.49)のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液(樹脂固形分40%))0.25部を双腕型ニーダーに仕込み、80℃~90℃で10時間混練した。この時ソルベントソルトミリング時のゲル化は無かった。混練後80℃の1%塩酸水溶液100重量部に取り出し、1時間攪拌後、濾過、湯洗、乾燥、粉砕し、微細なハロゲン化クロロアルミニウムフタロシアニン表面処理顔料(a)を得た。また、平均粒子径については、透過型電子顕微鏡JEM-2010(日本電子株式会社製)で測定し、平均粒子径は0.03μmであった。縦横のアスペクト比は2であった。顔料(a)の赤外線吸収スペクトルを測定したところ、1810cm-1に2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-イル基の特異赤外線吸収ピークが判別できた。
【0080】[実施例2]製造例1のハロゲン化クロロアルミニウムフタロシアニン粗製顔料に代えて、製造例2の製造例1のハロゲン化亜鉛フタロシアニン粗製顔料(一次粒子の平均粒子径0.1~10μmの範囲内。)の同量を用いる以外は実施例1と同様の操作を行い、微細なハロゲン化亜鉛フタロシアニン表面処理顔料(b)を得た。平均粒子径および縦横のアスペクト比は、それぞれ順に0.06μmおよび2であった。顔料(b)の赤外線吸収スペクトルを測定したところ、1810cm-1に2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-イル基の特異赤外線吸収ピークが判別できた。」
ウ 「【0092】
【発明の効果】本発明の表面処理微細有機顔料は、カラーフィルターは、2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-イル基を有する皮膜形成性樹脂の硬化物と有機顔料を含むものであり、工程中での組成物の安定性が極めて良く、透明性、耐熱性が良好である。また、表面処理の際の熱履歴により、このエポキシ基が自己反応したり破壊されることがないという格別顕著な効果を奏する。また、この表面処理微細有機顔料は、フィルター製造工程の加熱時に反応を行わせることが出来、耐熱性や耐溶剤性に優れたカラーフィルターを得ることが出来る。」
(3)引用文献5
当審拒絶理由において周知技術を示す文献として引用され、本願優先権主張の日前に電気通信回路を通じて公衆に利用可能となった国際公開第2010/061830号(以下、「引用文献5」という。)には、以下の記載事項がある。
ア 「発明が解決しようとする課題
[0006] しかしながら、カラーフィルタの調製に用いるC.I.ピグメントグリーン36やC.I.ピグメントグリーン58の様なポリハロゲン化金属フタロシアニン顔料は、従来のインキや塗料で用いるそれに比べてより微細であるため、それを用いて得たカラーフィルタは、液晶表示装置が高温での熱履歴を受けた際に画像表示のコントラストが低下するという問題は、依然として解決されていなかった。
[0007] 本発明が解決しようとする課題は、高温での熱履歴を受けても色相が変化しない、耐熱性に優れたカラーフィルタの緑色画素部の形成に適した、ポリハロゲン化金属フタロシアニン顔料組成物を提供することにある。
また本発明が解決しようとする課題は、前記顔料組成物の好適な製造方法を提供すること、及び前記顔料組成物を緑色画素部に含有する、高温で長期間の画像表示を行なってもコントラスト低下が少ないカラーフィルタを提供することにある。
課題を解決するための手段
[0008] 本発明者等は、各種表面処理剤をポリハロゲン化金属フタロシアニン顔料に含ませた上で、熱履歴を与えたときの色相変化の評価を行なったところ、ポリウレタン樹脂を用いることで、カラーフィルタとしたときのコントラストの耐熱性に優れたポリハロゲン化金属フタロシアニン顔料組成物が得られること、この様なポリハロゲン化金属フタロシアニン顔料組成物を緑色画素部に含有してなるカラーフィルタは高温で長期間の画像表示を行なっても、従来に比べてコントラスト低下が少ないことを見い出し、本発明を完成するに至った。
(中略)
発明の効果
[0010] 本発明のポリハロゲン化金属フタロシアニン顔料組成物は、ポリウレタン樹脂を含有しているので高温での熱履歴を受けても色相が変化しない、耐熱性に優れるという格別顕著な効果を奏する。
本発明のポリハロゲン化金属フタロシアニン顔料組成物を含有するカラーフィルタは、従来のポリハロゲン化金属フタロシアニン顔料組成物を含有するカラーフィルタに比べて、高温で長期間の画像表示を行なっても、従来に比べてコントラスト低下が少ないという格別顕著な効果を奏する。」
イ 「[0027] 本発明では、顔料(A)と、樹脂(B)水性分散体とを不揮発分の質量基準で前者顔料(A)100部当たり、後者樹脂(B)0.1~10部となる様に、中でも、0.5~5部、特に1~3部となる様に混合した後、液媒体を除去して、顔料組成物の製造することが好ましい。この様にして仕込んだ後者樹脂(B)は、後記する処理を行なっても、流出することなく、質量基準でその不揮発分の少なくとも70%が、顔料(A)にとどまる。」
ウ 「[0052] 次に本発明の実施例を示して具体的に説明する。以下、断りのない限り、%は質量%、部は質量部を意味する。
実施例1
[0053] FASTOGEN(登録商標)GREEN A-110(DIC株式会社製ポリ臭素化亜鉛フタロシアニン顔料)20gと、ハイドラン AP-30F(DIC株式会社製ポリウレタン樹脂水性分散体。不揮発分(質量換算)50%。主鎖にアルキレンオキシドの繰り返しからなるポリエーテル単位とカルボキシル基とを含む、脂肪族または脂環式ジイソシアネートを用いて得たポリエーテル系のポリウレタン樹脂を含有する。)0.4gと、イオン交換水600gとを、1リットル容量のオートクレーブに仕込み、攪拌しながら2時間で130℃まで昇温し、そのままの温度にて5時間で加熱攪拌を行なった。
その後室温となるまで放冷し、吸引濾過し固形分を得て、濾紙上の固形物をイオン交換水5lにて洗浄した。こうして得られた顔料組成物のウエットケーキを乾燥機中90℃で12時間乾燥させ、ラボミルにて粉砕を行なった。
こうして得られた乾燥した顔料組成物の溶媒抽出による樹脂抽出量から、仕込んだハイドラン AP-30Fの不揮発分の少なくとも80%(質量換算)が、FASTOGEN(登録商標)GREEN A-110に付着していることが確認できた。このカラーフィルタ用顔料組成物の一次粒子の平均粒子径は0.01~0.10μm、アスペクト比は1~3の範囲にあった。
(中略)
実施例2
[0058] ハイドラン AP-30Fに代えて、ハイドラン AP-40F(DIC株式会社製ポリウレタン樹脂水性分散体。不揮発分(質量換算)50%。主鎖に芳香環を含む直鎖芳香族単位とアニオン性基とを含む、脂肪族または脂環式ジイソシアネートを用いて得たポリエステル系のポリウレタン樹脂)の同量を用いる以外は、上記実施例1と同様の操作を行ない、乾燥してカラーフィルタ用顔料組成物を得た。
こうして得られた乾燥した顔料組成物の溶媒抽出による樹脂抽出量から、仕込んだハイドラン AP-40Fの不揮発分の少なくとも80%(質量換算)が、FASTOGEN(登録商標)GREEN A-110に付着していることが確認できた。このカラーフィルタ用顔料組成物の一次粒子の平均粒子径は0.01~0.10μm、アスペクト比は1~3の範囲にあった。」
4 対比
本件発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明における「ペリレン顔料」は、その名称から、ペリレン由来の骨格を有する顔料であるといえる。そして、ペリレンは化学式C20H12で表される有機化合物である。したがって、引用発明における「ペリレン顔料」は、有機化合物由来の骨格を有する顔料であるから、本件発明における「有機顔料(A)」に相当する。
(2)引用発明における「カルボキシル基含有アクリル樹脂(A-4)」は、反応に用いられる混合液として、n-ブチルメタクリレート、n-ブチルアクリレート、β-ヒドロキシエチルメタクリレート、メタクリル酸、グリシジルメタクリレート及びtert-ブチルパーオキシオクトエートを含むものである。ここで、n-ブチルメタクリレート、n-ブチルアクリレート、β-ヒドロキシエチルメタクリレートは、側鎖の炭素原子数が異なる(メタ)アクリル酸エステルからなる単量体に該当し、グリシジルメタクリレートは、側鎖にエポキシ基を含有する単量体に該当する。また、メタクリル酸も単量体であり、tert-ブチルパーオキシオクトエートは、技術的にみて、重合開始剤にあたる。したがって、引用発明における「カルボキシル基含有アクリル樹脂(A-4)」は、グリシジルメタクリレートに由来するエポキシ基を含有し、かつ側鎖の炭素原子数が異なる(メタ)アクリル酸エステル2種以上の単量体を含む単量体混合物を重合して得られた重合体であるといえる。
そうすると、引用発明における「カルボキシル基含有アクリル樹脂(A-4)」は、その材料からみて、エポキシ基を含有する単量体由来の構造及び側鎖の炭素原子数が異なる複数の(メタ)アクリル酸エステル単量体由来の構造を有するものといえる。
したがって、引用発明における「カルボキシル基含有アクリル樹脂(A-4)」と、本件発明における「エポキシ基およびα-クロロヒドリン基を含有し、かつ側鎖の炭素原子数が異なる(メタ)アクリル酸エステル2種以上の単量体を含む単量体混合物を重合して得られた重合体(B)」とは、「エポキシ基」「を含有し、かつ側鎖の炭素原子数が異なる(メタ)アクリル酸エステル2種以上の単量体を含む単量体混合物を重合して得られた重合体(B)」である点で共通する。
(3)引用発明の「カラーフィルタ等に使用する材料として有用なマイクロカプセル化されたペリレン顔料組成物」は、本件発明の「カラーフィルタ用有機顔料組成物」に相当する。
(4)以上より、本件発明と引用発明とは、
「有機顔料(A)と、エポキシ基を含有し、かつ側鎖の炭素原子数が異なる(メタ)アクリル酸エステル2種以上の単量体を含む単量体混合物を重合して得られた重合体(B)を含有するカラーフィルタ用有機顔料組成物。」である点で一致し、以下の点で相違又は一応相違する。
[相違点1]本件発明は、有機顔料(A)100部当たり、重合体(B)0.1~15部を含有するのに対し、引用発明は、この範囲にあるか明らかではない点。(引用発明における顔料100部当たりの重合体の含有量は、ペリレン粗顔料の不揮発分20.7%のウェットケーキが3865部で、不揮発分が51%のカルボキシル基含有アクリル樹脂(A-4)が800部であることから単純計算すると、約51部となる。
(重合体800部×0.51)/(顔料3865部×0.207)×100=約51)
[相違点2]本件発明の重合体(B)は、エポキシ基およびα-クロロヒドリン基を含有するのに対し、引用発明の樹脂は、エポキシ基を含有するもののα-クロロヒドリン基を含有するかが明らかにされていない点。
5 判断
(1)[相違点1]について
引用文献1の記載事項(エ)には、「本発明の第1工程におけるカルボキシル基含有アクリル樹脂の使用量は、粗顔料又は乾式粉砕粗顔料100重量部に対して、10~200重量部の範囲が好ましく」と記載されており、顔料100部当たりのカルボキシル基含有アクリル樹脂の含有量を、10重量部(本願発明でいう10部)程度とすることが示唆されているといえる。
また、例えば、引用文献4には、カラーフィルターに用いられる表面処理微細有機顔料について、記載事項アに「本発明の表面処理微細有機顔料における微細有機顔料と皮膜形成性樹脂との割合は質量換算で、微細有機顔料100部当たり皮膜形成性樹脂3~25部である。皮膜形成性樹脂がこれより少なければ、微細有機顔料粒子表面に充分に付着させることが出来ず所望の表面処理効果が得られ難く、一方、これを越えても表面処理効果の程度に限れば、それはあまり変わらない。」と記載されており、記載事項イに、顔料100部に対し、皮膜形成性樹脂を10部用いて表面処理顔料とした実施例が記載されている。また、引用文献5にも、記載事項イに「本発明では、顔料(A)と、樹脂(B)水性分散体とを不揮発分の質量基準で前者顔料(A)100部当たり、後者樹脂(B)0.1~10部となる様に、中でも、0.5~5部、特に1~3部となる様に混合した後、液媒体を除去して、顔料組成物の製造することが好ましい。この様にして仕込んだ後者樹脂(B)は、後記する処理を行なっても、流出することなく、質量基準でその不揮発分の少なくとも70%が、顔料(A)にとどまる。」と記載されており、記載事項ウに、顔料100部に対し、樹脂を1部用いたカラーフィルタ用顔料組成物の実施例が記載されている。以上より、表面処理の効果及び経済性を考慮して顔料の表面処理に用いる樹脂の量を、顔料100部に対して1~10部程度とすることは周知技術であるといえる。そして、このように顔料の表面処理に用いる樹脂の量を、顔料100部に対して1~10部程度とした場合に、後処理によって顔料組成物から樹脂の一部が流出したとしても、上記のとおり少なくとも70%が顔料にとどまるのであるから、後処理後の組成物の、顔料100部当たりの樹脂の含有量は、0.1~15部の範囲に含まれることは明らかである。
そうすると、引用発明においても、表面処理の効果及び経済性を考慮して、カルボキシル基含有アクリル樹脂の含有量を、顔料100部に対して10部程度となるように、カラーフィルタ等に使用する顔料組成物における樹脂の量を調整することは当業者が適宜なし得ることである。
そして、顔料を樹脂で覆うことにより耐熱性が良好となることは、引用文献4の記載事項ウや引用文献5の記載事項アに記載されているように周知の効果であり、顔料組成物における顔料以外の成分の含有量が少ないほど、彩度等への影響が少ないことも自明である。本件出願の明細書の記載を参酌しても、重合体(B)の含有量を、有機顔料100部に対して0.1~15部としたことにより、格別な効果の差異が生じるとはいえない。
(2)[相違点2]について
引用発明のペリレン顔料組成物は、内容物のpHが4.9となるまで1N塩酸を加えて、顔料表面に樹脂を沈着させて懸濁液を得る第3工程(酸析)を経て得られるものである。そして、引用発明の樹脂は、エポキシ基を含有するものであるから、引用発明の顔料表面に沈着される樹脂は、塩酸を加えられることによって、エポキシ基の一部が塩酸と反応し、α-クロロヒドリン基となったものを含んでいるといえる。
したがって、引用発明の樹脂は、エポキシ基およびα-クロロヒドリン基を含有するものであるから、上記[相違点2]は実質的な相違点とはいえない。
(3)効果について
本件発明の効果は、本願明細書の段落【0012】の記載に基づけば、「熱履歴を長時間に亘り受けても着色物の色相変化が小さい」というものである。
一方、引用発明は、引用文献1の記載事項(カ)に記載されるとおり、粗顔料から直接微細な水性分散体を製造することができ、貯蔵安定性や耐水性に非常に優れ、精細度や色濃度が高く、演色性や透明性、鮮映性、光沢等に優れた塗膜を提供できるという効果を奏するものである。そして、引用発明は、引用文献1の記載事項(イ)の段落【0001】に記載されるように、カラーフィルタ等に使用する材料として有用なマイクロカプセル化された顔料組成物に関するものであり、段落【0007】に記載されるように、カラーフィルタやジェットインキ等の微細な粒子が要求される用途に用いられるものであるから、通常のカラーフィルターの製造工程における熱履歴に耐えて演色性等を保つものであることは当然要求されることである。そして、引用文献1の記載事項(イ)の段落【0004】に記載されるように、微細な水性分散体とすることは、従来より、鮮明な色相を得ること、分散をしやすくすること、あるいは耐候性を良くすること等のために行われていることであるから、引用発明も、微細で安定な分散体を実現したことにより、鮮明な色相を得て、カラーフィルターの製造工程における熱履歴にも耐えうる耐候性を備えたものであるといえる。そうすると、引用発明も、カラーフィルターの製造工程における熱履歴を受けても着色物の色相変化が小さいという効果を奏するものといえる。また、本件発明は、顔料100部あたりの樹脂の分量の下限が0.1部とされており、顔料を覆う樹脂の割合が、実施例の開示よりも少ないものも包含する。そうすると、本件発明の効果が格別なものということもできない。
(4)請求人の主張について
請求人は、平成30年9月13日付けの意見書において、「「輝度の優れた耐熱性」とは、主にカラーフィルタを製造する際の熱処理工程において、顔料粒子の凝集および顔料粒子の結晶成長によるサイズアップを抑えることにより光散乱や吸収を抑制し、透過率の低下を極力抑えることを意味しています。そのための有効手段の一つとして単量体のTgアップが望ましく、本願では特にメチルメタクリレートを用いることで対応しています。本願発明で用いた単量体は、発明者らが鋭意検討した結果、最適な単量体組成を見出したものであり、例え当業者であっても容易に想到し得る単なる組み合わせではありません。つまり、単なる設計事項ではありません。」と主張している。しかし、引用発明も、顔料をカルボキシル基含有アクリル樹脂(A-4)でマイクロカプセル化することにより、顔料粒子の凝集及び顔料粒子の結晶成長によるサイズアップを抑えるものであり、同等の効果を奏するものといえる。また、「本願では特にメチルメタクリレートを用いることで対応しています」との主張は、特許請求の範囲の記載に基づいたものではないため、採用することができない。
6 むすび
以上のとおりであるから、本件発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本願は、その他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2017-014157