審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許拒絶査定不服審判

2017-011695

誘導電力伝達システムのための磁気構造の相互運用性

審判番号
2017-011695
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2014-518475外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2017年08月04日
審決日
2019年05月20日
公報発行日
2019年11月29日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (H01F) / P18 .537-WZ (H01F)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項特許法36条6項2号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2014-518475「誘導電力伝達システムのための磁気構造の相互運用性」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 2月 7日国際公開、WO2013/019122、平成26年 9月25日国内公表、特表2014-525142〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

【理 由】 1.手続の経緯 本願は、2012年7月9日(パリ条約に基づく優先権主張外国庁受理 2011年7月8日 ニュージーランド(NZ) 2011年9月16日 ニュージーランド(NZ) 2011年12月23日 ニュージーランド(NZ))を国際出願日とする出願であって、平成27年6月29日付けで手続補正がなされ、平成28年3月7日付け拒絶理由通知に対する応答時、同年9月15日付けで手続補正がなされたが、平成29年3月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年8月4日付けで拒絶査定不服審判の請求及び手続補正がなされた。 その後、当審の平成30年8月14日付け拒絶理由通知に対する応答時、平成31年2月20日付けで手続補正がなされたものである。 2.本願特許請求の範囲について 本願の特許請求の範囲は、平成31年2月20日付け手続補正により補正された特許請求の範囲に記載された、次のとおりのものである。 「【請求項1】 平面に配置されたフェライト構造と、前記フェライト構造と実質的に平行な平面に配置され、磁束を生成するように構成された、少なくとも1回巻きの調整されたコイルと、を有する第1の磁気結合構造、 前記第1の磁気結合構造からの前記磁束の垂直成分に対応するように配置された第1の調整されたコイルと、前記第1の磁気結合構造からの前記磁束の水平成分に対応するように配置された第2の調整されたコイルと、前記第1の調整されたコイル及び前記第2の調整されたコイルと空間的に直角に配置された第3の調整されたコイルと、を有する第2の磁気結合構造、及び、 前記第1及び第2のコイルからの出力を加算して規制し、前記第1及び第2の磁気結合構造間の相対的位置の範囲に亘って所望の電力プロファイルを提供する手段を含む、疎結合型の誘導電力伝達装置。 【請求項2】 前記第2の磁気構造の前記コイルは、前記第1の構造と前記第2の構造との間の比較的横断方向の動きに対して結合公差を提供するように配置構成される、請求項1に記載の装置。 【請求項3】 前記構造の前記相対的位置は異なるため、前記第2の構造の前記コイルは、 前記第1の構造によって生成される磁界からの電気エネルギーを異なる量で抽出する、請求項1または請求項2に記載の装置。 【請求項4】 磁束の前記成分は直角位相にある、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の装置。 【請求項5】 前記第2の構造の前記コイルは平坦なコイルである、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の装置。 【請求項6】 前記第1の構造の前記コイルは平坦なコイルである、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の装置。 【請求項7】 前記第2の構造の前記第1の調整されたコイル及び前記第2の調整されたコイルは隣接関係にある、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の装置。 【請求項8】 前記第2の構造は、相互に重複する2つのコイルを含む、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の装置。 【請求項9】 前記第2の構造の前記コアは、透磁性コアと関連付けられている、請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の装置。 【請求項10】 前記第2の構造の前記コアは、磁気抵抗がより高いかまたはより低い領域を有する、請求項9に記載の装置。 【請求項11】 前記第2の構造の前記コアは格子を含む、請求項9または請求項10に記載の装置。 【請求項12】 前記第1の磁気結合構造の前記コイルは、実質的に円形である、請求項1乃至請求項11のいずれか一項に記載の装置。 【請求項13】 疎結合型の誘導電力伝送装置の第1の磁気結合構造からの誘導電力受信方法であって、 前記第1の磁気結合構造は、平面に配置されたフェライト構造と、前記フェライト構造と実質的に平行な平面に配置された少なくとも1回巻きの調整されたコイルと、を有し、前記コイルは、磁束を生成するように構成され、 前記方法は、 前記疎結合型の誘導電力伝送装置の第2の磁気結合構造の第1の調整されたコイルであって、前記第1の磁気結合構造からの、前記第1の構造の前記コイルの前記平面に垂直な前記磁束の成分に対応するように配置された第1の調整されたコイルを用いて磁束を受容するステップと、 前記第2の磁気結合構造の第2のコイルであって、前記第1の磁気結合構造からの、前記第1の構造の前記コイルの前記平面と平行な前記磁束の成分に対応するように配置された第2のコイルを用いて磁束を受容するステップと、 前記第1及び第2のコイルからの出力を加算して規制し、前記第1及び第2の磁気結合構造間の相対的位置の範囲に亘って所望の電力プロファイルを提供するステップと、を含む、誘導電力受容方法。 【請求項14】 前記第2の磁気結合構造の第3のコイルであって、前記第1の構造の前記コイルの前記平面に垂直な前記磁束の成分に対応するように配置された第3のコイルを用いて磁束を受容するステップをさらに含む、請求項13に記載の方法。 【請求項15】 前記第2の磁気結合構造の第3のコイルであって、前記第1の構造の前記コイルの前記平面と平行な前記磁束の成分に対応するように配置された第3のコイルを用いて磁束を受容するステップをさらに含む、請求項13に記載の方法。」 3.当審の拒絶の理由 当審において平成30年8月14日付けで通知した拒絶理由の概要は、次のとおりである。 3-1.理由1(明確性) 本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 記 (1)本願請求項1には「・・・少なくとも1回巻きの調整されたコイルと、・・・配置された第1の調整されたコイルと、・・・配置された第2の調整されたコイルと、・・・」と記載されているが、ここでいう「調整されたコイル」の技術的意味が不明である。 より具体的には、「調整されたコイル」としては、例えば、物理的に厚さや幅を調整されたコイルや、インダクタンスが調整されたコイルなど様々なものが考えられ、請求項1において、コイルの何がどのように調整されてなるものであるのが不明である。 したがって、請求項1及びこれに従属する請求項2~13に係る発明は明確なものでない。 (2)本願請求項1には「・・・前記第1及び第2のコイルからの出力を加算して規制し・・・」と記載されているが、ここでいう「規制」の技術的意味が不明である。 より具体的には、「規制」としては、例えばコイルからの出力を停止したり、間欠供給としたり、出力を低減したりなど様々なことが考えられ、請求項1において、加算したコイルの出力をどのように規制しているかが不明である。 したがって、請求項1及びこれに従属する請求項2~13に係る発明は明確なものでない。 (3)請求項2には「・・・比較的横断方向の動きに対して結合公差を提供するように配置構成される・・・」と記載され、また、請求項3には「・・・前記比較的横断方向の位置は異なる・・・」と記載されているが、これらの記載中の「比較的」との表現は、比較基準若しくは程度が不明確な表現である。 したがって、請求項2、請求項3及びこれらに従属する請求項4~13に係る発明は明確なものでない。 (上記「比較的」は、「相対的」の誤りではないか?) (4)請求項2において、「前記第2の磁気構造の前記コイルは、前記第1の構造と前記第2の構造との間・・」とあるが、 (a)引用する請求項1には「第2の磁気構造」、「第1の構造」、「第2の構造」の記載はなされていない。この点については、請求項3~12、15、16の各請求項についても同様である。 (b)「前記コイル」とは、引用する請求項1におけるどのコイルを意味しているのかが不明確である。 よって、請求項2及びこれに従属する請求項3~13、15、16に係る発明は明確なものでない。 〔(a)について、「第1の構造」が請求項1の「第1の磁気結合構造」を意味し、「第2の構造」及び「第2の磁気構造」が請求項1の「第2の磁気結合構造」を意味するのならば、用語を統一して正確に記載するようにされたい。〕 (5)請求項3には「・・前記構造の前記比較的横断方向の位置は異なるため、前記第2の構造の前記コイルは、前記第1の構造によって生成される磁界からの電気エネルギーを異なる量で抽出する・・・」と記載されているが、 (a)ここでいう「前記構造」とは、第1の磁気結合構造と第2の磁気結合構造のいずれを意味するのか、あるいは双方を意味するのかが不明確であるとともに、そもそも「前記構造の前記比較的横断方向の位置は異なるため」なる記載は、たとえ「比較的」が「相対的」の誤記であると解したとしても、その技術的に意味するところが不明であり、 (b)また、「前記コイル」とは、第1の調整されたコイルと第2の調整されたコイルのいずれを意味するのか、あるいは双方を意味するのかが不明確である。 そのため、請求項3の上記記載全体の技術的意味を理解することができない。 したがって、請求項3及びこれに従属する請求項4~13に係る発明は明確なものでない。 (6)請求項4には「磁束の前記成分は直角位相にある・・・」と記載されているが、ここでいう「前記成分」とは、垂直成分と水平成分のいずれの成分を意味するのか、あるいは双方の成分を意味するのか明らかでないとともに、当該成分が「直角位相にある」ことの技術的意味も不明である。 したがって、請求項4及びこれに従属する請求項5~13に係る発明は明確なものできない。 (7)請求項7には「・・・第2の構造の2つのコイルは隣接関係にある・・・」と記載されているが、ここでいう「2つのコイル」と引用する請求項1の「第1の調整されたコイル及び第2の調整されたコイル」との対応関係が不明確である。 さらに、請求項8には「前記第2の構造は、前記2つのコイルに対して空間的直角位相を以て配置構成された第3のコイル・・・」とも記載されているが、「第3のコイル」と「第1の調整されたコイル及び第2の調整されたコイル」との対応関係も不明確である。 したがって、請求項7、8、10~13に係る発明は明確なものでない。 (8)請求項9には「前記第2の構造は、相互に重複する2つのコイルを含む・・」と記載されているが、ここでいう「2つのコイル」と引用する請求項1の「第1の調整されたコイル及び第2の調整されたコイル」との対応関係が不明確である。 よって、請求項9及びこれに従属する請求項10~13に係る発明は明確なものでない。 (9)請求項10には「前記第2の構造の前記コアは、透磁性コアと関連付けられている・・」と記載されているが、 (a)引用する請求項1や請求項2~9にも、「コア」の記載はなされていない。この点については、請求項11、12の各請求項についても同様である。 (b)さらに、「コア」が、透磁性コアと「関連付けられている」とは如何なる技術的意味であるのかが不明確である。 よって、請求項10及びこれに従属する請求項11~13に係る発明は明確なものでない。 (10)請求項14についても、上記(1)と同様のことがいえる。 よって、請求項14及びこれに従属する請求項15、16に係る発明は明確なものでない。 (11)請求項14についても、上記(2)と同様のことがいえる。 よって、請求項14及びこれに従属する請求項15、16に係る発明は明確なものでない。 3-2.理由2(新規性) 本件出願の請求項1~11、14、16に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 3-3.理由3(進歩性) (A)引用文献1が主引例の場合 本件出願の請求項1~12、14~16に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の引用文献1に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、 本件出願の請求項13に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 (B)引用文献3が主引例の場合 本件出願の請求項1、14~16に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の引用文献3に記載された発明及び周知の技術事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、 本件出願の請求項2~13に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の引用文献3に記載された発明及び周知の技術事項に基づいて、あるいは引用文献3に記載された発明、引用文献1,2に記載の技術事項及び周知の技術事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引 用 文 献 等 一 覧 1.国際公開第2011/016736号 2.特表2010-530613号公報 3.国際公開第2007/126321号 4.当審の判断 4-1.理由1(明確性)について 上記「3-1.」の(3)の請求項2に対する記載不備に関する指摘、(8)の請求項9(現請求項8)に対する記載不備に関する指摘、及び(9)(a)(b)の請求項10(現請求項9)に対する記載不備に関する指摘に対しては、請求人は特許請求の範囲について何ら補正することなく、また、平成31年2月20日付け意見書において何ら具体的に反論してもいない。 よって依然として、上記(3)、(8)、(9)(a)(b)の指摘事項に関する記載不備は解消しておらず、これら記載不備に関する指摘は妥当なものと認めらるから、請求項2,8,9に係る発明及びこれら請求項に従属する請求項3~7、10~12に係る発明は明確なものでない。 したがって、本件出願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 4-2.理由3(進歩性)の「(B)引用文献3が主引例の場合」について 以下、本願明細書全体の記載及び技術常識、さらに平成30年8月1日付け上申書や平成31年2月20日付け意見書での請求人の主張を踏まえ、本願請求項13(上記「2.本願特許請求の範囲について」を参照)でいう「調整されたコイル」とは、同調コンデンサとともに共振するように調整されたコイルであることを意味し、第1及び第2のコイルからの出力を加算して「規制し」とは、加算した出力の値を一定電圧に制御することを意味するものと解釈して、当該請求項13に係る発明(以下、「本願発明」という。)について、理由3(進歩性)を検討する。 (1)引用例 当審の拒絶の理由に引用された国際公開第2007/126321号(以下、「引用例」という。)には、「PICK-UP APPARATUS FOR INDUCTIVE POWER TRANSFER SYSTEMS」について、図面とともに以下の各記載がある(なお、当審による翻訳文を付記する。また、下線は当審で付与した)。 ア.「1. An Inductive Power Transfer (IPT) pick-up apparatus including: a magnetically permeable core; a first coil, being disposed about the core such that it is most sensitive to a first directional component of magnetic flux; and a second coil, being disposed about the core such that it is most sensitive to a second directional component of magnetic flux; wherein the first directional component is substantially orthogonal to the second directional component. 2. An IPT pick-up apparatus as claimed in claim 1 , wherein the first directional component is a vertical component of magnetic flux and the second directional component is a horizontal component of magnetic flux.」(8頁3~14行) (1.磁気透過性のコア; 磁束の第1の方向成分に最も敏感であるように前記コアの周りに配置され第1のコイル;及び、 磁束の第2の方向成分に最も敏感であるように前記コアの周りに配置され第2のコイル;を備え、 前記第1の方向成分は、前記第2の方向成分に実質的に直交することを特徴とする誘導電力伝達(IPT)ピックアップ装置。 2.前記第1の方向成分は、磁束の垂直成分であり、前記第2の方向成分は、磁束の水平成分であることを特徴とする、請求項1に記載のIPTピックアップ装置。) イ.「7. An IPT pick-up apparatus as claimed in any one of the preceding claims, wherein each coil is independently tuned with one or more capacitors.」(8頁31~32行) (各コイルは、1つまたはそれ以上のキャパシタとともに独立して同調されることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載のIPTピックアップ装置。) ウ.「9. An IPT pick-up apparatus as claimed in any one of the preceding claims, wherein the apparatus includes an electrical circuit to sum and regulate the rectified output from the coils such that the total output power is essentially constant over a wide range of lateral movement of the apparatus relative to the source of magnetic flux.」(9頁2~5行) (当該装置は、全出力電力が磁束源に対する装置の相対的な横方向の広い移動範囲にわたって本質的に一定であるように、前記コイルからの整流された出力を加算し、調整するための電気回路を含むことを特徴とする請求項1ないし8のいずれか一項に記載のIPTピックアップ装置。) エ.「Referring first to figure 1 , a pick-up geometry according to a first embodiment of the invention is shown by way of example, arranged to capture flux having a first directional component, being substantially vertical, and a second directional component, being substantially horizontal. ・・・・・(中 略)・・・・・ The core 1 is provided with a first coil 2 wound around a vertical axis and a second coil 3 wound around a horizontal axis of the core. The pick-up is shown positioned so that the coil is situated between the two track conductors 4 and 5 with current flowing in opposing directions, producing anticlockwise and clockwise magnetic fields, respectively. In this configuration, the current induced in the coil 2 is maximum when the coil is positioned between the two track conductors 4 and 5 (as illustrated), and drops to zero as the coil is moved directly above either of the two conductors. Conversely, the current induced in the coil 3 is maximum when the coil is positioned directly above either of the track conductors 4 or 5, and drops to zero as the coil approaches the midpoint between the two conductors. Therefore, coil 2 is most sensitive to magnetic flux in one direction (a vertical direction as shown in figure 1), and coil 3 is most sensitive to magnetic flux in another direction (a horizontal direction as shown in figure 1). Accordingly this arrangement, in which the coils are substantially orthogonal to each other, allows a pick-up to extract power over a wider range of movement relative to the track conductors, meaning it has greater tolerance to misalignment. In particular, the pick-up can extract power from the track conductors over a wider horizontal distance.」(3頁35行~4頁32行) (まず図1を参照すると、本発明の第1の実施形態に係るピックアップの例として示され、実質的に垂直である第1の方向成分と、実質的に水平である第2の方向成分を有する磁束を捕捉するために配置される。 ・・・・・(中 略)・・・・・ コア1には、当該コアの垂直軸の周りに巻かれた第1のコイル2と当該コアの水平軸の周りに巻かれた第2のコイル3とが設けられている。前記ピックアップは、前記コイルがそれぞれ反時計周りおよび時計回りの磁界を生成するように反対方向の電流が流れる2つの導体路4および5の間に位置するように配置されている。この構成では、コイル2に誘導される電流は、そのコイルが(図示のように)2つの導体路4および5の間に位置しているときに最大となり、そのコイルが2つの導体路のいずれかの真上に移動したときにはゼロに降下する。逆に、コイル3に誘導される電流は、導体路4または5のいずれかの真上に位置するときに最大となり、そのコイルが2つの導体路間の中間点に近接するときにはゼロに降下する。したがって、コイル2は1つの方向(図1に示すような垂直方向)の磁束に対して最も敏感であり、コイル3は別の方向(図1に示すような水平方向)の磁束に対して最も敏感である。コイルが互いにほぼ直交する場合のこの構成によれば、ピックアップが導体路に対してより広い移動範囲にわたって電力を抽出することを可能にするが、それは位置ずれに対してより大きな許容度を有することを意味する。具体的には、ピックアップはより幅の広い水平距離にわたって電力を抽出することができる。) オ.「Figure 2 shows a possible tuning and power control circuit for the pick-up configuration of figure 1 , including independent tuning capacitors (6 and 7) and rectifiers (8 and 9) for the coils 2 and 3, respectively, and a regulating circuit generally referenced 10 which operates in the known way, decoupling the pick-up from the primary conductors to supply a constant voltage to the load 11. ・・」(4頁34行~5頁2行) (図2は、図1のピックアップ構成に対して可能な同調及び電力制御回路を示し、コイル2及び3に対して独立した同調キャパシタ(6及び7)と整流器(8及び9)、そして負荷11に一定電圧を供給するために一次導体路からピックアップをデカップリングする、既知の手段で動作する参照符号10の調整回路を含む。・・) ・上記引用例に記載の「PICK-UP APPARATUS FOR INDUCTIVE POWER TRANSFER SYSTEMS」は、誘導電力伝達(IPT)システム用のピックアップ装置に関するものである。 ・上記「ア.」、「エ.」の記載事項、及び図1によれば、ピックアップ装置は、磁気透過性のコア1と、コア1の周りに巻かれ、提供される磁束の垂直成分に最も敏感であるように配置された第1のコイル2と、コア1の周りに巻かれ、提供される磁束の水平成分に最も敏感であるように配置された第2のコイル3とを備え、第1のコイル2及び第2のコイル3によって磁束を捕捉するようにしてなるものである。 ・上記「イ.」、「オ.」の記載事項、及び図2によれば、第1のコイル2及び第2のコイル3の各コイルは、同調コンデンサ6,7と同調されてなるものである。 ・上記「ウ.」~「オ.」の記載事項、及び図2、図3によれば、ピックアップ装置は、第1のコイル2及び第2のコイル3の出力を加算し、負荷11に対して一定電圧が供給されるように調整回路10によって調整することにより、磁束源に対する相対的な横方向の広い移動範囲にわたって本質的に一定な電力を抽出するようにしてなるものである。 したがって、上記「誘導電力伝達(IPT)システム用のピックアップ装置」による、磁束源からの誘導電力を抽出する方法の発明として捉え、上記記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「誘導電力伝達(IPT)システムの磁束源からの誘導電力を抽出する方法であって、 前記誘導電力伝達(IPT)システムのピックアップ装置における、磁気透過性のコアの周りに巻かれ、磁束源から提供される磁束の垂直成分に最も敏感であるように配置され、同調コンデンサと同調されてなる第1のコイルを用いて磁束を捕捉するとともに、 前記誘導電力伝達(IPT)システムのピックアップ装置における、前記コアの周りに巻かれ、前記磁束源から提供される磁束の水平成分に最も敏感であるように配置され、同調コンデンサと同調されてなる第2のコイルを用いて磁束を捕捉し、 さらに、前記第1及び第2のコイルからの出力を加算し、負荷に対して一定電圧が供給されるように調整回路によって調整することにより、前記磁束源に対する相対的な横方向の広い移動範囲にわたって本質的に一定な電力を抽出するようにした、誘導電力の抽出方法。」 (2)対比 そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、 ア.引用発明における「誘導電力伝達(IPT)システムの磁束源からの誘導電力を抽出する方法であって」によれば、 (a)引用発明における「誘導電力伝達(IPT)システム」は、本願発明でいう「誘導電力伝送装置」に相当し、また、引用発明における「誘導電力を抽出する方法」は、本願発明でいう「誘導電力受信方法」に相当する。 (b)本願発明における「磁束源」にあっても、磁束を生成するように構成されていることは自明なことである。 また、本願発明でいう「第1の磁気結合構造」は、磁束源の一態様である。 以上のことを踏まえると、本願発明と引用発明とは、「誘導電力伝送装置の磁束源からの誘導電力受信方法であって、前記磁束源は、磁束を生成するように構成」されている点で共通する。 ただし、誘導電力伝達装置について、本願発明では「疎結合型」である旨特定するのに対し、引用発明ではそのような明確な特定がない点で一応相違している。 また、磁束源について、本願発明では「第1の磁気結合構造」であり、当該第1の磁気結合構造が「平面に配置されたフェライト構造と、前記フェライト構造と実質的に平行な平面に配置され、磁束を生成するように構成された、少なくとも1回巻きの調整されたコイルと、を有する」旨特定するのに対し、引用発明ではそのような特定を有していない点で相違している。 イ.引用発明における「前記誘導電力伝達(IPT)システムのピックアップ装置における、磁気透過性のコアの周りに巻かれ、磁束源から提供される磁束の垂直成分に最も敏感であるように配置され、同調コンデンサと同調されてなる第1のコイルを用いて磁束を捕捉するとともに、前記誘導電力伝達(IPT)システムのピックアップ装置における、前記コアの周りに巻かれ、前記磁束源から提供される磁束の水平成分に最も敏感であるように配置され、同調コンデンサと同調されてなる第2のコイルを用いて磁束を捕捉し」によれば、 引用発明における「第1のコイル」にあっても、磁束源から提供される磁束の垂直成分に対応するように配置されて磁束を捕捉(受容)し、同調コンデンサと同調されてなるものであることから、本願発明でいう「第1の調整されたコイル」に相当し、同様に、引用発明における「第2のコイル」は、磁束源から提供される磁束の水平成分に対応するように配置されて磁束を捕捉(受容)し、同調コンデンサと同調されてなるものであることから、本願発明でいう「第2の調整されたコイル」に相当する。 そして、引用発明の「磁気透過性のコア」、「第1のコイル」及び「第2のコイル」からなるものが、本願発明でいう「第2の磁気結合構造」に相当するということができる。 したがって、本願発明と引用発明とは、「前記誘導電力伝送装置の第2の磁気結合構造の第1の調整されたコイルであって、前記磁束源からの、前記磁束源の平面に垂直な前記磁束の成分に対応するように配置された第1の調整されたコイルを用いて磁束を受容するステップと、前記第2の磁気結合構造の第2のコイルであって、前記磁束源からの、前記磁束源の前記平面と平行な前記磁束の成分に対応するように配置された第2のコイルを用いて磁束を受容するステップ」とを含むものである点で共通する。 ただし、磁束源について、上記「ア.」で指摘した点に関連して、本願発明では「第1の磁気結合構造」である旨特定するのに対し、引用発明ではそのような特定を有していない点で相違している。 ウ.引用発明における「さらに、前記第1及び第2のコイルからの出力を加算し、負荷に対して一定電圧が供給されるように調整回路によって調整することにより、前記磁束源に対する相対的な横方向の広い移動範囲にわたって本質的に一定な電力を抽出するようにした・・」によれば、 引用発明における「調整回路」は、加算された出力を、負荷に対して一定電圧が供給するように「調整」するものであることから、当該「調整」は、本願発明でいう「規制」に相当するといえる。 そして、引用発明にあっても、磁束源に対する相対的な横方向の広い移動範囲の位置にわたって本質的に一定な電力を抽出、すなわち本願発明でいう「所望の電力プロファイル」を提供するものである。 したがって、本願発明と引用発明とは、「前記第1及び第2のコイルからの出力を加算して規制し、前記磁束源及び第2の磁気結合構造間の相対的位置の範囲に亘って所望の電力プロファイルを提供するステップ」を含むものである点で共通する。 ただし、磁束源について、上記「ア.」で指摘した点に関連して、本願発明では「第1の磁気結合構造」である旨特定するのに対し、引用発明ではそのような特定を有していない点で相違している。 エ.そして、引用発明における「誘導電力の抽出方法」は、本願発明でいう「誘導電力受容方法」に相当するものである。 よって、本願発明と引用発明とは、 「誘導電力伝送装置の磁束源からの誘導電力受信方法であって、 前記磁束源は、磁束を生成するように構成され、 前記方法は、 前記誘導電力伝送装置の第2の磁気結合構造の第1の調整されたコイルであって、前記磁束源からの、前記磁束源の平面に垂直な前記磁束の成分に対応するように配置された第1の調整されたコイルを用いて磁束を受容するステップと、 前記第2の磁気結合構造の第2のコイルであって、前記磁束源からの、前記磁束源の前記平面と平行な前記磁束の成分に対応するように配置された第2のコイルを用いて磁束を受容するステップと、 前記第1及び第2のコイルからの出力を加算して規制し、前記磁束源及び第2の磁気結合構造間の相対的位置の範囲に亘って所望の電力プロファイルを提供するステップと、を含む、誘導電力受容方法。」 である点で一致し、次の点で相違する。 [相違点1] 誘導電力伝達装置について、本願発明では「疎結合型」である旨特定するのに対し、引用発明ではそのような明確な特定がない点。 [相違点2] 磁束を生成する磁束源について、本願発明では「第1の磁気結合構造」であり、当該第1の磁気結合構造が「平面に配置されたフェライト構造と、前記フェライト構造と実質的に平行な平面に配置され、磁束を生成するように構成された、少なくとも1回巻きの調整されたコイルと、を有する」旨特定するのに対し、引用発明ではそのような特定を有していない点 (3)判断 上記[相違点1]及び[相違点2]について検討する。 磁束の提供(生成)側、すなわち電力の供給側についても、例えば当審のの拒絶の理由に引用された国際公開第2011/016736号(特に17頁28~31行、31頁24行~32頁12行の記載、及びFigure 1A, 29A, 29Bを参照)や特表2010-530613号公報(特に【請求項1】、段落【0085】~【0086】の記載、及び図4を参照)に記載のように、磁束の捕捉(受容)側、すなわち電力の受給側であるピックアップ装置と同様に、磁気透過性のコアと、同調コンデンサで同調されてなるコイルとを備えた、本願発明でいう「第1の磁気結合構造」に対応するものを用いるとともに、いわゆる共振磁気結合によって電力を供給する「疎結合型」のものとすることは周知の技術事項である。なお、磁気透過性のコアとして、フェライト構造はごく一般的なものであり(例えば引用例の4頁11~14行、上記国際公開第2011/016736号の31頁24行~32頁12行、上記特表2010-530613号公報の【請求項5】、【0086】を参照)、また、コイルとして、フェライト構造と実質的に平行な平面に配置された少なくとも1回巻きのものとすることも周知の技術事項である(例えば上記国際公開第2011/016736号の31頁24行~32頁12行、Figure 29A, 29Bや上記特表2010-530613号公報の【請求項1】、【請求項10】、段落【0086】、図4を参照)。したがって、引用発明においても、これら周知の技術事項を採用し、相違点1及び2に係る構成とすることは当業者であれば容易になし得ることである(なお、そもそも引用発明にあっても、ピックアップ装置が、磁束源に対する相対的な横方向の広い移動範囲にわたって本質的に一定な電力を抽出することができるものであることからすると、「疎結合型」であると解することもでき、相違点1については実質的な相違点ではないともいえる。)。 そして、本願発明が奏する効果についてみても、引用発明及び周知の技術事項から当業者が十分に予測できたものであって、格別顕著なものがあるとはいえない。 よって、本願発明は、引用発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 5.むすび 以上のとおり、本願の請求項13に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 また、本件出願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2017-011695

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決12件(オークランド ユニサービシズ リミテッド)
  • 2021-001134拒絶査定不服審判 / 2022-12-26 / 請求不成立眼科用組成物およびその使用方法
    同じ当事者: オークランド ユニサービシズ リミテッド
  • 2021-008928拒絶査定不服審判 / 2022-10-27 / 原査定取消(特許/登録すべき)誘導電力伝達装置
    同じ当事者: オークランド ユニサービシズ リミテッド
  • 2020-012811拒絶査定不服審判 / 2021-11-04 / 原査定取消(特許/登録すべき)双方向誘導電力伝送システムのための負荷制御
    同じ当事者: オークランド ユニサービシズ リミテッド
  • 2019-000568拒絶査定不服審判 / 2020-09-24 / 原査定取消(特許/登録すべき)誘導電力伝達パッド及び誘導電力伝達システム
    同じ当事者: オークランド ユニサービシズ リミテッド
  • 2018-009646拒絶査定不服審判 / 2020-08-04 / 原査定取消(特許/登録すべき)個々の位相の制御が行われる多相誘導電力伝達システム
    同じ当事者: オークランド ユニサービシズ リミテッド
検索でもっと見る →
同じ根拠条文の審決8,104件(特許法29条2項、特許法36条6項2号)
  • 2024-012873拒絶査定不服審判 / 2026-03-24 / 請求不成立歯間清掃具
    共通の条文: 特許法29条2項、特許法36条6項2号
  • 2024-015046拒絶査定不服審判 / 2026-03-23 / 請求不成立低ノイズコンデンサ
    共通の条文: 特許法29条2項、特許法36条6項2号
  • 2024-010853拒絶査定不服審判 / 2026-02-18 / 請求不成立歯ブラシ
    共通の条文: 特許法29条2項、特許法36条6項2号
  • 2024-007189拒絶査定不服審判 / 2026-02-17 / 請求不成立がん治療のための電気刺激用電極
    共通の条文: 特許法29条2項、特許法36条6項2号
  • 2024-017922拒絶査定不服審判 / 2026-02-17 / 請求不成立神経活動を検出するための方法及びシステム
    共通の条文: 特許法29条2項、特許法36条6項2号
同じ論点・分野の審決(審決分類)487件(121・H01F、537・H01F)
  • 2025-015147拒絶査定不服審判 / 2026-08-19 / 原査定取消(特許/登録すべき)成形体の製造方法及び半導体装置の製造方法
    共通の審決分類: 121・H01F、537・H01F
  • 2025-007002拒絶査定不服審判 / 2026-07-28 / 原査定取消(特許/登録すべき)FE-NIナノコンポジット合金
    共通の審決分類: 121・H01F、537・H01F
  • 2025-008850拒絶査定不服審判 / 2026-07-09 / 原査定取消(特許/登録すべき)テーパ付きフェライトコアの製造方法
    共通の審決分類: 121・H01F、537・H01F
  • 2025-014090拒絶査定不服審判 / 2026-06-29 / 原査定取消(特許/登録すべき)離間した突起を備えるポールシューを有する磁気持ち上げデバイス
    共通の審決分類: 121・H01F、537・H01F
  • 2025-015504拒絶査定不服審判 / 2026-06-19 / 原査定取消(特許/登録すべき)コンパウンド、成形体、及びコンパウンドの硬化物
    共通の審決分類: 121・H01F、537・H01F

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存