特許拒絶査定不服審判
2017-010583
被検体の配向を決定する方法及び装置
- 審判番号
- 2017-010583
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2012-187108外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年07月14日
- 審決日
- 2018年05月21日
- 公報発行日
- 2018年11月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ
- 【請求人代理人】荒川 聡志
- 分類
- P18 .121-Z (A61B) / P18 .575-Z (A61B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2012-187108「被検体の配向を決定する方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 3月21日出願公開、特開2013- 52233〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成24年8月28日(パリ条約による優先権主張 2011年9月1日 米国)の出願であって、平成28年7月20日付けで拒絶理由が通知され、同年10月24日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成29年3月10日付けで拒絶査定されたところ、同年7月14日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。
第2 平成29年7月14日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成29年7月14日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「少なくとも一つの特徴認識装置(60)と、
・被検体が仰臥位であるか伏臥位であるかを表す配向を指示する利用者入力を受け取り、
・前記特徴認識装置から前記被検体の前記配向を指示する入力を受け取り、
・前記利用者入力を前記特徴認識装置から受け取った前記入力と比較して、
・該比較に基づく配向指標(270)を含む画像(254)を形成する
ように構成されている対象配向認識モジュール(OORM)(100)と
を備え、
前記対象配向認識モジュール(OORM)(100)は、
前記利用者入力と前記特徴認識装置から受け取った前記入力とが異なる場合、前記被検体の前記配向を入力するように前記操作者に促し、前記被検体の前記配向を指示する利用者入力と前記特徴認識装置から受け取った前記入力とが同じになるまで、前記被検体の前記配向を指示する利用者入力を受け取るステップと、前記特徴認識装置から前記被検体の前記配向を指示する入力を受け取るステップと、前記利用者入力を前記特徴認識装置から受け取った前記入力と比較するステップとを繰り返し実行する、対象配向認識システム(OORS)(50)。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、平成28年10月24日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「少なくとも一つの特徴認識装置(60)と、
・被検体の配向を指示する利用者入力を受け取り、
・前記特徴認識装置から前記被検体の前記配向を指示する入力を受け取り、
・前記利用者入力を前記特徴認識装置から受け取った前記入力と比較して、
・該比較に基づく配向指標(270)を含む画像(254)を形成する
ように構成されている対象配向認識モジュール(OORM)(100)と
を備え、
前記対象配向認識モジュール(OORM)(100)は、
前記利用者入力と前記特徴認識装置から受け取った前記入力とが異なる場合、前記被検体の配向を入力するように前記操作者に促し、前記被検体の配向を指示する利用者入力と前記特徴認識装置から受け取った前記入力とが同じになるまで、前記被検体の配向を指示する利用者入力を受け取るステップと、前記特徴認識装置から前記被検体の前記配向を指示する入力を受け取るステップと、前記利用者入力を前記特徴認識装置から受け取った前記入力と比較するステップとを繰り返し実行する、対象配向認識システム(OORS)(50)。」
2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「被検体の配向」及び「前記被検体の配向」について、それぞれ、「被検体が仰臥位であるか伏臥位であるかを表す配向」及び「前記被検体の前記配向」へと限定を加えたものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
(ア)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2010-51726号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。(下線は当審において付した。以下、同様である。)
(引1-ア)
「【背景技術】
【0002】
X線CT装置、磁気共鳴イメージング装置、PET装置などの医用画像診断装置にあっては、被検者の体軸方向に沿って多数枚の断層画像を得て診断に供している。その際、医用画像診断装置の撮影部へ、寝台の天板に寝載した被検者を頭頂方向からでも脚方向からでも、任意方向から送り込んで断層画像を得ることができる。従って、ある診断部位について、所定間隔おきに複数スライスの断層画像を得て、これらの画像を読影医が読影する場合、もしも頭頂方向から順次撮影した画像を脚方向から順次撮影したものと誤解すると、実際の画像の方向を左右逆に判断してしまうおそれがあり、誤診を招くことになりかねない。
【0003】
このような問題を排除するために従来から、撮影部へ挿入した被検者の方向が頭頂方向か脚方向かが分かるように、撮影した断層画像に被検者情報の一部として、挿入方向を示す文字やマークを加えていた(例えば、特許文献1参照。)。これによって、得られた断層画像が、被検者を頭頂方向から撮影部へ挿入して順次撮影したものなのか、或いは脚方向から撮影部へ挿入して順次撮影したものなのかを明らかにして、読影時に誤解を生じないように配慮されていた。なお、入力方法としては、撮影時にオペレータが医用画像診断装置に対して、操作部の対話画面から図案や矢印を選択したり、或いはHead First、Foot Firstなどの文字を選択したりして入力し、その内容を制御部が判断して被検者情報の一部として利用するものであった。
【特許文献1】特開2007-167634号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、取得した断層画像に表示される被検者を挿入した方向を示す文字やマークは、医用画像診断装置に対してオペレータの手入力によってなされた結果であり、オペレータのうっかりミスを完全に排除することはできなかった。例えば、Head FirstをFoot Firstとしてしまったり、その逆にFoot First をHead Firstとしてしまったりすることが予想され、このような場合には、得られた断層画像に表示される付帯情報は実際の方向と逆になるために、付帯情報を信じて読影すると誤診を招くことに繋がるおそれがあった。
【0005】
本発明は、このような問題を解決することを目的として、オペレータの手入力によることなく、画像処理手段を利用して撮影部への被検者の挿入方向を自動的に判断し、その結果を付帯情報として記録し、または、オペレータに対して間違いがないかどうかを確認させるようにした医用画像診断装置を提供しようとするものである。」
(引1-イ)
「【0019】
図1は、このような医用画像診断装置の一例の概略的な系統図である。医用画像診断装置本体10は、架台を共通にしてX線CT装置20とPET装置30とを備えている。また医用画像診断装置本体10は、X線CT装置20とPET装置30とを共通にする撮影部13を備えており、この撮影部13には表示部40と照明部50が設けられている。そして、医用画像診断装置は、その撮影部13へ被検者を送り込むための寝台装置60を備えている。さらに、X線CT装置20、PET装置30および寝台装置60を制御するとともに、取得した画像データを処理するためのスキャン制御部70と、このスキャン制御部70の制御のもとで表示部40と照明部50を制御するナビゲーション制御部80を備えている。加えて、スキャン制御部70に対して操作者が適宜指示や設定値などを入力する操作部90や、寝台装置60に寝載されて医用画像診断装置本体10の撮影部13へ送り込まれる被検者の様子を撮影し、撮影したデータをスキャン制御部70へ送出するカメラ100なども備えている。」
(引1-ウ)
「【実施例1】
【0027】
医用画像診断装置本体10の撮影部13へ挿入される被検者Pは、寝台装置60の天板61に載置されて前面カバー11側から送り込まれるものである。そして、前面カバー11には、撮影部13の上方位置にカメラ100が設置されていて、被検者Pのほぼ全身像がこのカメラ100によって撮影される。撮影された画像はスキャン制御部70へ送られ、ここで画像処理が施されて体輪郭など身体の特徴点を抽出する。
【0028】
その結果、被検者Pが頭頂側から撮影部13へ挿入されている場合は、カメラ100で撮影された画像の先端側に頭部が位置するので、この画像を画像処理すると、例えば図3(a)に示すような輪郭画像となる。よって、この抽出された体輪郭の先端Rが、太い黒線で示すように円弧状であると認識することによって、スキャン制御部70は被検者Pが頭方向から撮影部13へ挿入されたものと判断する。一方、被検者Pが脚側から撮影部13へ挿入されている場合は、画像の先端側に脚部が位置するので、この画像を画像処理すると、図3(b)に示すような細い2つの輪郭画像F1、F2となる。従って、このような画像を認識することによって、スキャン制御部70は撮影部13へ被検者Pが脚方向から挿入されたものと判断する。この判断結果は、その後撮影される断層画像の付帯情報として記録される。」
(引1-エ)
「【0038】
図7は、撮影部13への被検者Pの挿入方向を、断層撮影の前に判断する場合の動作の流れを示したものである。
【0039】
ステップ1として、寝台60の天板61に載置された被検者Pの外観像すなわち全身像または上半身像を、医用画像診断装置本体10の撮影部13へ挿入される直前に、前面カバー11に取り付けたカメラ100によって撮影する。次に、ステップ2として、被検者Pの外観写真が取得できたか否かを判断し、取得できていればステップ3へ進み、取得した外観写真を画像処理して体輪郭を抽出し、これをパターン認識することによって被検者Pが頭の方向から撮影部13へ挿入されたか、脚の方向から挿入されたかを識別する。ここで被検者Pの撮影部13への挿入方向が識別されればステップ6へ進み、その識別結果としての挿入方向を付帯情報としてスキャン制御部70に記録する。
【0040】
なお、この記録結果に基づき、各断層画像には例えばHead First、Foot Firstなどとして表示され、断層画像ごとに被検者Pの挿入方向すなわち撮影方向が明らかにされる。また、従来どおりオペレータが挿入方向を手入力するような装置にあっては、ステップ5での識別結果に基づき、ステップ6においてオペレータの入力に間違いがあればそのことを知らせ、挿入方向を正しい方向に訂正させるように注意を喚起することも可能である。」
(引1-オ)図1には、以下の図面が示されている。
(引1-カ)図7には、以下の図面が示されている。
(イ)引用文献1に記載の発明
a (引1-エ)から、ステップ6は、「その識別結果としての挿入方向を付帯情報としてスキャン制御部70に記録する」こと(【0039】)であり、その「識別結果に基づき、ステップ6においてオペレータの入力に間違いがあればそのことを知らせ、挿入方向を正しい方向に訂正させるように注意を喚起する」ことを含めること(【0040】)ができるので、ステップ6では、その「識別結果に基づき、」「オペレータ」による挿入方向「の入力に間違いがあればそのことを知らせ、挿入方向を正しい方向に訂正させるように注意を喚起」し、挿入方向が正しい方向に訂正されたら、「その識別結果としての挿入方向を」「記録する」ことが読み取れる。
b 上記aを含め上記(ア)の記載事項及び図面を総合すると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「撮影部13を備える医用画像診断装置本体10と、その撮影部13へ被検者を送り込むための寝台装置60を備え、さらに、取得した画像データを処理するためのスキャン制御部70を備え、加えて、スキャン制御部70に対して操作者が適宜指示や設定値などを入力する操作部90や、寝台装置60に寝載されて医用画像診断装置本体10の撮影部13へ送り込まれる被検者の様子を撮影し、撮影したデータをスキャン制御部70へ送出するカメラ100なども備えている、医用画像診断装置であって、
寝台60の天板61に載置された被検者Pの外観像を、医用画像診断装置本体10の撮影部13へ挿入される直前に、カメラ100によって撮影し、撮影された画像はスキャン制御部70へ送られ、
スキャン制御部70は、取得した外観写真を画像処理して体輪郭を抽出し、これをパターン認識することによって被検者Pが頭の方向から撮影部13へ挿入されたか、脚の方向から挿入されたかを識別し、その識別結果に基づき、オペレータによる挿入方向の入力に間違いがあればそのことを知らせ、挿入方向を正しい方向に訂正させるように注意を喚起し、挿入方向が正しい方向に訂正されたら、その識別結果としての挿入方向を記録し、この記録結果に基づき、各断層画像に例えばHead First、Foot Firstなどとして表示させる、
医用画像診断装置。」
イ 引用文献2
(ア)本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2007-167634号公報(以下「引用文献2」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
(引2-ア)
「【0060】
(共有オブジェクト生成機能)
次に、X線CT装置1、PACSサーバ9、画像参照装置7が有する、共有オブジェクト生成機能について説明する。
【0061】
ここで、共有オブジェクト生成機能とは、過去の医療行為実施時において使用された情報(例えば、位置決め画像、撮影位置、撮影範囲、撮影条件、画像生成条件等)を有効に利用するために、画像情報と付帯(文字または数値)情報とから構成される共有オブジェクトを生成するものである。この共有オブジェクトは、通常の画像データとは分離した情報の実体(例えばファイル)として生成され、保存・管理される。
【0062】
図5は、共有オブジェクトの構成の一例を示した図である。同図に示すように、共有オブジェクトは、医用画像生成のための、スキャン位置、画像生成位置等を再現するために必要な情報を1つのデータの纏りとして関連付けたものであり、画像情報と付帯情報とを具備している。以下、共有オブジェクトを構成する画像情報及び付帯情報のそれぞれについて説明する。
【0063】
[画像情報]
共有オブジェクトが具備する画像情報とは、位置又は範囲を参照するための一つまたは複数の位置決め画像(例えば、X線CT装置で用いられるスキャノグラム、MRI装置で用いられるパイロットスキャンによるコロナル像等)である。ここで、範囲とは、実際に医用画像診断装置がX線や高周波等によりエネルギーを供給し、検出器が供給されたエネルギーに基づく信号検出或いは画像生成の対象とする物理範囲である。例えば、X線CT装置1の場合、検出器で検出された投影データに基づいて再構成される体軸方向の範囲(再構成範囲)であり、MRI装置の場合はスキャン範囲である。範囲は、一般的にスキャン前に取得される位置決め画像上に点線等で明示され、体軸方向の画像生成ピッチを示す線と共に示されることもある。
【0064】
[付帯情報]
共有オブジェクトが具備する付帯情報は、大きくオブジェクト固有情報、人体座標情報、撮影条件、画像生成条件、キー画像情報の5種類に分類することができる。以下、各情報について説明する。
・・・
【0073】
[付帯情報3:撮影条件]
撮影条件とは、撮影動作によって患者から画像生成の元となる物理的なデータを収集するために必要な物理的条件である。この条件の内容は、モダリティの種類に依存する。例えば、X線CT装置の撮影条件は、スキャンの開始位置と範囲(寝台移動量)、X線管球のKV/mA、得られる画像スライスの総幅に対する1回転での寝台移動量(ビームピッチ)といった物理量である。しかしながら、撮影条件の内容は、この例に拘泥されない。例えば、検査時の被検体挿入方向(装置に足から入るか頭から入るかの情報)、造影剤投与の有無、投与量、薬剤の種類、患者の体位(診断上(当審注:「診断上」は「寝台上」の誤記と認める。)で寝る方向、姿勢)等を含める構成としてもよい。さらに、最近は被曝低減のために一定の画質になるようにKV/mAを自動制御する機能があるが、そのような場合は、制御量である画像ノイズ(SD値)を撮影条件に含める構成としてもよい。
」
(イ)引用文献2に記載の技術的事項
上記(ア)の記載事項から、引用文献2には次の技術的事項が記載されていると認められる。
「X線CT装置の撮影条件は、検査時の被検体挿入方向(装置に足から入るか頭から入るかの情報)、患者の体位(寝台上で寝る方向、姿勢)等を含めること。」
ウ 引用文献3
(ア)本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2010-35814号公報(以下「引用文献3」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
(引3-ア)
「【背景技術】
【0002】
従来の医用画像診断装置、例えばX線CT装置では、隔壁で仕切られた撮影室内に、対向配置したX線管装置とX線検出装置を取り付けたスキャナ、および患者テーブルなどから構成した部分を配置し、一方、操作室内に画像処理装置や、表示装置および入力装置などを有する操作卓を配置している。通常、患者テーブル上に載せた被検者の医用画像を撮影する前に、操作卓から撮影条件の設定を行う。この撮影条件としては様々なものがあるが、その中には撮影する被検者の体位、つまり仰臥、伏臥、左横臥、右横臥状態のいずれかを設定すると共に、最初にスキャンする部位が被検者の頭部(HeadFirst)か足部(FeetFirst)かを指定する体位方向設定がある。従来における医用画像診断装置では、この体位方向設定の指定を患者テーブルに載せたときの被検者を見た操作者の記憶に基づいたり、操作者が操作室内から目視しながら行っていた(例えば、特許文献1を参照)。」
(イ)引用文献3に記載の技術的事項
上記(ア)の記載事項から、引用文献3には次の技術的事項が記載されていると認められる。
「医用画像診断装置では、通常、患者テーブル上に載せた被検者の医用画像を撮影する前に、操作卓から撮影条件の設定を行い、この撮影条件として、撮影する被検者の体位、つまり仰臥、伏臥、左横臥、右横臥状態のいずれかを設定すると共に、最初にスキャンする部位が被検者の頭部(HeadFirst)か足部(FeetFirst)かを指定する体位方向設定がある。」
(3)対比・判断
ア 対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)本件補正発明の特徴認識装置について
本件補正発明の「少なくとも一つの特徴認識装置(60)」は、「前記特徴認識装置から前記被検体の前記配向を指示する」ことから、本願明細書の【0024】及び【0025】の記載を踏まえると、「被検体16の少なくとも一つの画像102を取得する」「カメラ60」(【0024】)と、「OORM100」(対象配向認識モジュール)のうち「カメラ60から受け取った画像102を用いて被検体16の配向を自動的に決定する」ための「特徴認識アルゴリズム」を実行する部分(【0025】)であることが理解できる。
してみると、引用発明の「寝台60の天板61に載置された被検者Pの外観像を」、「撮影」する「カメラ100」と、「スキャン制御部70」における「取得した外観写真を画像処理して体輪郭を抽出し、これをパターン認識することによって被検者Pが頭の方向から撮影部13へ挿入されたか、脚の方向から挿入されたかを識別」する手段(以下、「パターン認識手段」とよぶ。)とが、本件補正発明の「少なくとも一つの特徴認識装置(60)」に相当する。
(イ)本件補正発明の対象配向認識モジュールについて
a 引用発明の「挿入方向」は、「寝台60の天板61に載置された被検者P」が「頭の方向から撮影部13へ挿入されたか、脚の方向から挿入されたか」の、被検者P(対象)の載置(配置)方向であるから、本件補正発明の「被検体」の「配向」、及び「対象配向」に相当するところ、引用発明の「スキャン制御部70」における「識別結果に基づき、オペレータによる挿入方向の入力に間違いがあればそのことを知らせ、挿入方向を正しい方向に訂正させるように注意を喚起し、挿入方向が正しい方向に訂正されたら、その識別結果としての挿入方向を記録し、この記録結果に基づき、各断層画像に例えばHead First、Foot Firstなどとして表示させる」手段(以下、「挿入方向認識手段」とよぶ。)は、オペレータが挿入方向を認識する機能(モジュール)であるから、本件補正発明の「対象配向認識モジュール(OORM)(100)」に相当する。
b 引用発明では、「スキャン制御部70は」、「識別結果に基づき、オペレータによる挿入方向の入力に間違いがあればそのことを知らせ」ることから、「挿入方向認識手段」が、「オペレータによる挿入方向の入力」を受け取ることが、オペレータに対しこの「入力に間違いがあればそのことを知らせ」るための前提であることは明らかである。
したがって、引用発明は、本件補正発明の「・被検体が仰臥位であるか伏臥位であるかを表す配向を指示する利用者入力を受け取」る構成のうちの「・被検体の配向を指示する利用者入力を受け取」る構成を備えていると認められる。
c 引用発明において、「スキャン制御部70は」、「識別結果に基づき、オペレータによる挿入方向の入力に間違いがあれば」とは、「挿入方向認識手段」が、「パターン認識手段」から受け取った「識別結果」と、「オペレータによる挿入方向の入力」とを比較して、その「入力に間違いがあ」るかを認識することであるから、「挿入方向認識手段」が、「パターン認識手段」から被検者Pの「挿入方向」の入力を受け取ることを含むものである。
したがって、引用発明は、本件補正発明の「・前記特徴認識装置から前記被検体の前記配向を指示する入力を受け取」る構成を備えていると認められる。
d 上記cのとおり、引用発明において、「スキャン制御部70は」、「識別結果に基づき、オペレータによる挿入方向の入力に間違いがあれば」とは、「挿入方向認識手段」が、「パターン認識手段」から受け取った「識別結果」と、「オペレータによる挿入方向の入力」とを比較して、その「入力に間違いがあ」るかを認識することであるから、引用発明は、本件補正発明の「・前記利用者入力を前記特徴認識装置から受け取った前記入力と比較」する構成を備えていると認められる。
e 本件補正発明の「該比較に基づく配向指標(270)」は、本願明細書の【0028】~【0032】及び図2の記載を踏まえると、手入力の配向を自動的に決定された配向と比較し(ステップ210)、自動的に決定された配向に手入力の配向が同じになったら(【0028】、【0031】)、自動的に決定された配向から生成される配向指標である(ステップ212)ことが理解できる。
一方、引用発明では、「スキャン制御部70は」、「識別結果に基づき、オペレータによる挿入方向の入力に間違いがあればそのことを知らせ、挿入方向を正しい方向に訂正させるように注意を喚起し、挿入方向が正しい方向に訂正されたら、その識別結果としての挿入方向」「に基づき、各断層画像に例えばHead First、Foot Firstなどとして表示させる」ものであるから、ここでの「Head First、Foot First」は、本件補正発明の「該比較に基づく配向指標(270)」に相当するものである。
したがって、引用発明の「識別結果に基づき、オペレータによる挿入方向の入力に間違いがあればそのことを知らせ、挿入方向を正しい方向に訂正させるように注意を喚起し、挿入方向が正しい方向に訂正されたら、その識別結果としての挿入方向」「に基づき、各断層画像に例えばHead First、Foot Firstなどとして表示させる」ことは、本件補正発明の「・該比較に基づく配向指標(270)を含む画像(254)を形成する」ことに相当する。
f 引用発明の「スキャン制御部70は」、「識別結果に基づき、オペレータによる挿入方向の入力に間違いがあればそのことを知らせ、挿入方向を正しい方向に訂正させるように注意を喚起し、挿入方向が正しい方向に訂正され」ることと、本件補正発明の「前記利用者入力と前記特徴認識装置から受け取った前記入力とが異なる場合、前記被検体の前記配向を入力するように前記操作者に促し、前記被検体の前記配向を指示する利用者入力と前記特徴認識装置から受け取った前記入力とが同じになるまで、前記被検体の前記配向を指示する利用者入力を受け取るステップと、前記特徴認識装置から前記被検体の前記配向を指示する入力を受け取るステップと、前記利用者入力を前記特徴認識装置から受け取った前記入力と比較するステップとを繰り返し実行する」こととは、「前記利用者入力と前記特徴認識装置から受け取った前記入力とが異なる場合、前記被検体の前記配向を入力するように前記操作者に促し、前記被検体の前記配向を指示する利用者入力と前記特徴認識装置から受け取った前記入力とが同じになるようにする」点で共通する。
(ウ)本件補正発明の対象配向認識システムについて
引用発明の「医用画像診断装置」は、「カメラ100」と「スキャン制御部70」(パターン認識手段と挿入方向認識手段)を備えるシステムであるから、本件補正発明の「対象配向認識システム(OORS)(50)。」に相当する。
イ 一致点・相違点
以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は次のとおりである。
(一致点)
「少なくとも一つの特徴認識装置(60)と、
・被検体の配向を指示する利用者入力を受け取り、
・前記特徴認識装置から前記被検体の前記配向を指示する入力を受け取り、
・前記利用者入力を前記特徴認識装置から受け取った前記入力と比較して、
・該比較に基づく配向指標(270)を含む画像(254)を形成する
ように構成されている対象配向認識モジュール(OORM)(100)と
を備え、
前記対象配向認識モジュール(OORM)(100)は、
前記利用者入力と前記特徴認識装置から受け取った前記入力とが異なる場合、前記被検体の前記配向を入力するように前記操作者に促し、前記被検体の前記配向を指示する利用者入力と前記特徴認識装置から受け取った前記入力とが同じになるようにする、対象配向認識システム(OORS)(50)。」
(相違点1)
対象配向認識モジュールが、本件補正発明では、「被検体が仰臥位であるか伏臥位であるかを表す配向」を認識するものであるのに対し、引用発明では、「被検者Pが頭の方向から撮影部13へ挿入されたか、脚の方向から挿入されたか」の「挿入方向」を認識するものである点。
(相違点2)
対象配向認識モジュールが、利用者入力と特徴認識装置から受け取った入力とが異なる場合、本件補正発明では、「前記被検体の前記配向を指示する利用者入力と前記特徴認識装置から受け取った前記入力とが同じになるまで、前記被検体の前記配向を指示する利用者入力を受け取るステップと、前記特徴認識装置から前記被検体の前記配向を指示する入力を受け取るステップと、前記利用者入力を前記特徴認識装置から受け取った前記入力と比較するステップとを繰り返し実行する」のに対し、引用発明では、被検体の配向を指示する利用者入力と特徴認識装置から受け取った入力とが同じになるまで、繰り返し実行することの特定はない点。
ウ 判断
上記相違点について検討する。
(ア)相違点1について
引用文献1には、上記(引1-ア)の【背景技術】の欄に「ある診断部位について、所定間隔おきに複数スライスの断層画像を得て、これらの画像を読影医が読影する場合、もしも頭頂方向から順次撮影した画像を脚方向から順次撮影したものと誤解すると、実際の画像の方向を左右逆に判断してしまうおそれがあり、誤診を招くことになりかねない。」(【0002】)とあるように、実際の画像の方向を左右逆に判断してしまう原因に、被検体の配向の設定ミスがあることが読み取れる。
そして、医用画像診断装置において、被検体の配向には、被検体が仰臥位であるか伏臥位であるかを表す配向、及び、被検者が頭の方向から挿入されたか、脚の方向から挿入されたかを表す配向があることは、例えば、引用文献2に記載の技術的事項(上記(2)イ(イ))及び引用文献3に記載の技術的事項(上記(2)ウ(イ))から、本願の優先日前において周知技術であるといえる。
してみると、引用発明において、実際の画像の方向を左右逆に判断してしまうことを防止するために、上記周知技術に鑑みて、引用発明を、被検体の配向として、被検者が頭の方向から挿入されたか、脚の方向から挿入されたかを表す配向のみならず、被検体が仰臥位であるか伏臥位であるかを表す配向をも含めて認識する対象配向認識モジュールとして構築すること、すなわち上記相違点1に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
(イ)相違点2について
引用発明では、対象配向認識モジュールが、「識別結果に基づき、オペレータによる挿入方向の入力に間違いがあればそのことを知らせ、挿入方向を正しい方向に訂正させるように注意を喚起し、」その結果、オペレータにより、「挿入方向が正しい方向に訂正され」ることから、引用発明において、「挿入方向を正しい方向に訂正させる」ための注意喚起を、オペレータが正しい挿入方向(配向)を入力するまで行うこと、すなわち、入力を促し、識別結果と照らし合わせ、なおも否定される場合に再入力を促すステップを繰り返すように構成することは、ごく自然の設計にすぎない。
よって、引用発明において、上記相違点2に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
(ウ)そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用文献1及び周知技術から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
(エ)したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
平成29年7月14日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成28年10月24日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、上記第2の[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の要旨は次のとおりである。
本願の請求項1~9に係る発明は、引用文献1(特開2010-51726号公報)に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1、その記載事項及び引用発明は、上記第2の[理由]2(2)アに記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、本件補正発明から「配向」が「仰臥位であるか伏臥位であるかを表す」との限定を削除したものであるから、本願発明と引用発明とは、上記相違点2のみで相違する。
そして、上記相違点2に係る本願発明の構成を得ることは、上記第2の[理由]2(3)ウ(イ)における記載と同じ理由により、当業者が容易になし得たことである。
また、本願発明の奏する作用効果は、引用文献1から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
よって、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2017-010583