特許拒絶査定不服審判
2017-010485
遊技機
- 審判番号
- 2017-010485
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-091737外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年07月13日
- 審決日
- 2018年03月26日
- 公報発行日
- 2018年06月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社サンセイアールアンドディ
- 【請求人代理人】特許業務法人上野特許事務所
- 分類
- P18 .121-Z (A63F) / P18 .575-Z (A63F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第6項、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第3項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2015- 91737号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成28年12月 8日出願公開、特開2016-202826号〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成27年4月28日の出願であって、平成28年4月21日付けで拒絶理由が通知され、これに対して同年6月7日に意見書及び手続補正書が提出され、同年9月30日付けで最後の拒絶理由が通知され、これに対して同年11月24日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成29年4月6日付けで平成28年11月24日付け手続補正が却下されるとともに拒絶査定がされ、これに対して平成29年7月13日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。
第2 平成29年7月13日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成29年7月13日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正の概要
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1の記載の補正を含む補正であり、本件補正前の平成28年6月7日付けの手続補正書における請求項1の記載と、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、それぞれ次のとおりである。
(補正前:平成28年6月7日付け手続補正)
「【請求項1】
音声信号を出力する音声信号出力手段と、
前記音声信号出力手段から出力された音声信号を増幅する音声信号増幅手段と、
前記音声信号増幅手段によって増幅された音声信号に基づいて音声を出力する音声出力装置と、
を備え、
前記音声信号出力手段が第一基板に設けられ、前記音声信号増幅手段が前記第一基板とは異なる第二基板に設けられており、
前記第一基板に設けられた前記音声信号出力手段の出力側の配線である第一配線、および前記第二基板に設けられた前記音声信号増幅手段の入力側の配線である第二配線の少なくともいずれか一方には、外部機器が接続可能な接続部が設けられていることを特徴とする遊技機。」
(補正後:平成29年7月13日付け手続補正)
「【請求項1】
A 音声信号を出力する音声信号出力手段と、
B 前記音声信号出力手段から出力された音声信号を増幅する音声信号増幅手段と、
C 前記音声信号増幅手段によって増幅された音声信号に基づいて音声を出力する音声出力装置と、
を備え、
D 前記音声信号出力手段が第一基板に設けられ、前記音声信号増幅手段が前記第一基板とは異なる第二基板に設けられており、
E 前記第一基板に設けられた前記音声信号出力手段の出力側の配線である第一配線、および前記第二基板に設けられた前記音声信号増幅手段の入力側の配線である第二配線の少なくともいずれか一方には、当該第一配線の出力側端部および当該第二配線の入力側端部に設けられた第一基板と第二基板を接続するための基板コネクタに対する接続構造とは異なる接続構造で外部機器が接続可能な接続部が設けられており、
F 前記第一基板に設けられた前記第一配線には、前記音声信号出力手段から出力された音声信号を増幅する手段が設けられていないことを特徴とする遊技機。」
(下線部は補正箇所を示す。A~Fは本件補正発明を分説するために当審で付した。)
2 補正の適否
(1)補正事項
本件補正は、補正前の請求項1について、以下のア及びイの補正事項を含むものである。
ア 補正前の請求項1に記載された発明特定事項である「外部機器が接続可能な接続部」に関して、「当該第一配線の出力側端部および当該第二配線の入力側端部に設けられた第一基板と第二基板を接続するための基板コネクタに対する接続構造とは異なる接続構造で」という記載を追加する補正。(構成E)
イ 「前記第一基板に設けられた前記第一配線には、前記音声信号出力手段から出力された音声信号を増幅する手段が設けられていない」という記載を追加する補正。(構成F)
(2)補正の目的等についての検討
上記補正事項アは、補正前の「外部機器が接続可能な接続部」について、「当該第一配線の出力側端部および当該第二配線の入力側端部に設けられた第一基板と第二基板を接続するための基板コネクタに対する接続構造とは異なる接続構造で」あることを限定する補正である。
また、上記補正事項イは、補正前の「前記第一基板に設けられた」「第一配線」について、そこには「前記音声信号出力手段から出力された音声信号を増幅する手段が設けられていない」ことを限定する補正である。
さらに、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、補正事項ア及びイは、願書に最初に添付した明細書の段落【0028】、【0029】及び図面の図5等との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないから、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法第17条の2第3項の規定に適合し、新規事項を追加するものではない。
3 独立特許要件について
本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。
(1)本件補正発明について
本件補正発明は、「1 本件補正の概要」に記載したとおりのものである。
(2)刊行物
(2-1)刊行物1
本願の出願日前に頒布され、原査定の拒絶の理由において提示された刊行物である特開2004-215940号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審にて付した。以下、同じ。)。
(ア)「【0007】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
本発明をパチンコ機として構成した一実施の形態の正面図を図1に、側面図を図2に示し、概略ブロック構成図を図4に示す。
本実施の形態のパチンコ機は、主制御装置10、制御装置、被制御機器等が設けられている。
制御装置としては、副制御装置12、表示制御装置15等が設けられている。被制御機器としては、スピーカ13、ランプ14、液晶表示装置等の表示装置16等が設けられている。
主制御装置10や各制御装置等によって、パチンコ機の動作が制御される。」
(イ)「【0017】
次に、スピーカ50に音声信号を出力する音制御装置について説明する。音制御装置は、例えば、図5に示すように、CPU(処理装置)31、音声データROM32、音源IC33、プリAMP34、フィルタ35、バッファ36、出力AMP41等の回路や素子により構成されている。通常、出力AMP41には、出力AMPを構成する素子等の熱を放熱させるための放熱部材(例えば、放熱板や放熱フィン等)42が設けられている。
CPU31は、例えば、主制御装置11から出力されコマンド信号に対応する音あるいは音パターン等を発生させるための信号を音源IC33に出力する。音源IC33は、入力された信号に対応する音声信号を音声データROM32から読み出し、プリAMP34、フィルタ35、バッファ36、出力AMP41を介してスピーカ50に出力する。
ここで、CPU31、音声データROM32、音源IC33、プリAMP34、フィルタ35、バッファ36によって音声信号を作成する音声信号作成回路が構成され、出力AMP41(放熱部材42を含めて)によって音声信号作成回路で作成された音声信号を増幅する音声信号増幅回路が構成される。
【0018】
従来のパチンコ機では、音制御装置を構成する回路や素子等を1つの基板に設けているため、図6に示すように、音制御装置を構成する全ての回路や素子が設けられた音制御基板110を遊技盤2側に配置している。
一方、本実施の形態では、図5に示すように、音制御装置を構成する回路や素子を、機種毎に使用される可能性が高い音声信号作成回路を構成する回路や素子と、機種に関係なく共通に使用可能な音声信号増幅回路を構成する回路や素子に分け、音声信号作成回路を構成する回路や素子を副制御基板30に設け、音声信号増幅回路を構成する回路や素子をAMP基板40に設けている。そして、副制御基板30を本体枠1に着脱自在な遊技盤2側に配置し、AMP基板40を本体枠1側に配置している。
なお、図5では、副制御基板30に音声信号作成回路を構成する回路しか記載していないが、ランプ14を制御する制御信号を出力するランプ制御装置を構成する回路や素子も設けられている。また、CPU31は、ランプ制御装置のCPUとして用いることもできる。
【0019】
本実施の形態では、音制御装置が本発明の制御手段あるいは音制御手段に対応し、音声信号作成回路が本発明の第1の制御部あるいは音声信号作成手段に対応し、音声信号増幅回路が本発明の第2の制御部あるいは音声信号増幅手段に対応し、スピーカが本発明の音声出力手段に対応し、空気排出部54が本発明の第1の空気排出部に対応し、空気排出部56が本発明の第2の空気排出部に対応する。」
(ウ)図5には、「AMP基板40」が「副制御基板30」とは異なる基板であることが示されている。
(エ)図5から、「バッファ36」を表すブロックから「出力AMP41」を表すブロックに向かう矢印の途中には、「バッファ36」から出力された音声信号を増幅する手段を表すブロックが存在しないことが看て取れる。
上記(ア)~(イ)の記載事項、及び上記(ウ)の図示内容から、以下の事項が導かれる。
(あ)上記段落【0017】には「音源IC33は、入力された信号に対応する音声信号を音声データROM32から読み出し、プリAMP34、フィルタ35、バッファ36、出力AMP41を介してスピーカ50に出力する。」と記載されているから、刊行物1においては、音声データROM32から読み出された音声信号は、音源IC33から、プリAMP34、フィルタ35、バッファ36を介して出力AMP41に出力されるといえる(以下、「認定事項(あ-1)」という。)。
また、上記段落【0017】の「CPU31、音声データROM32、音源IC33、プリAMP34、フィルタ35、バッファ36によって音声信号を作成する音声信号作成回路が構成され」との記載より、CPU31、音声データROM32、音源IC33、プリAMP34、フィルタ35、バッファ36は、音声信号作成回路を構成するといえる。
したがって、上記認定事項(あ-1)において、「音源IC33から、プリAMP34、フィルタ35、バッファ36を介して出力AMP41に出力される」「音声信号」は、CPU31、音声データROM32、音源IC33、プリAMP34、フィルタ35、バッファ36によって構成される音声信号作成回路から、出力AMP41に出力されるといえるから、言い換えると、刊行物1には、CPU31、音声データROM32、音源IC33、プリAMP34、フィルタ35、バッファ36によって構成され、音声信号を出力AMP41に出力する音声信号作成回路が記載されていると認められる。
(い)上記段落【0017】の「出力AMP41(放熱部材42を含めて)によって音声信号作成回路で作成された音声信号を増幅する音声信号増幅回路が構成される。」との記載より、刊行物1には、音声信号作成回路で作成された音声信号を増幅し、音声信号増幅回路を構成する出力AMP41が記載されていると認められる。
また、上記(あ)での検討より、音声信号作成回路で作成された音声信号が、音声信号作成回路から出力されることは明らかである。
したがって、刊行物1には、音声信号作成回路から出力された音声信号を増幅し、音声信号増幅回路を構成する出力AMP41が記載されていると認められる。
(う)上記段落【0017】の「音源IC33は、入力された信号に対応する音声信号を音声データROM32から読み出し、・・・、出力AMP41を介してスピーカ50に出力する。」との記載より、刊行物1には、音声信号を出力AMP41を介してスピーカ50に出力することが記載されているといえ、言い換えると、音声信号が出力AMP41を介してスピーカ50に入力されることが記載されているといえる(以下、「認定事項(う-1)」という。)。
また、上記段落【0017】の「出力AMP41(放熱部材42を含めて)によって音声信号作成回路で作成された音声信号を増幅する音声信号増幅回路が構成される。」との記載より、出力AMP41によって音声信号が増幅されるといえるから、上記認定事項(う-1)において、出力AMP41を介してスピーカ50に入力される音声信号は、出力AMP41によって増幅されてスピーカ50に入力される音声信号であるといえる。
さらに、上記段落【0019】には「スピーカが本発明の音声出力手段に対応し」と記載されていることより、上記認定事項(う-1)の「スピーカ50」は、音声を出力する音声出力手段であるといえる。
これらを総合すると、刊行物1には、出力AMP41によって増幅された音声信号が入力され、音声を出力する音声出力手段であるスピーカ50が記載されているといえる。
また、スピーカにおいて、入力された音声信号に基づいて音声の出力がなされることは自明である。
したがって、刊行物1には、出力AMP41によって増幅された音声信号に基づいて音声を出力する音声出力手段であるスピーカ50が記載されていると認められる。
(え)上記(あ)での検討より、音声信号作成回路は、CPU31、音声データROM32、音源IC33、プリAMP34、フィルタ35、バッファ36によって構成され、上記(い)での検討より、音声信号増幅回路は出力AMP41によって構成される。
このことと、上記段落【0018】の「音声信号作成回路を構成する回路や素子を副制御基板30に設け、音声信号増幅回路を構成する回路や素子をAMP基板40に設けている。」との記載、及び上記図示内容(ウ)よりAMP基板40が副制御基板30とは異なる基板であることより、刊行物1には、音声信号作成回路を構成するCPU31、音声データROM32、音源IC33、プリAMP34、フィルタ35、バッファ36が副制御基板30に設けられ、出力AMP41が副制御基板30とは異なるAMP基板40に設けられていることが記載されていると認められる。
(お)上記(あ)、(い)での検討より、CPU31、音声データROM32、音源IC33、プリAMP34、フィルタ35、バッファ36によって構成される音声信号作成回路から、音声信号が、音声信号増幅回路を構成する出力AMP41に出力されるといえる。
また、回路から回路に信号を出力するために、回路間を接続する配線が必要なことは自明である。
そうすると、刊行物1には、音声信号作成回路と出力AMP41を接続する配線が設けられることが記載されていると認められる。
刊行物1全体の記載、及び上記の(エ)の図示内容から、以下の事項が導かれる。
(か)刊行物1のいずれの段落にも、「音声信号作成回路」と「出力AMP41」の間に、音声信号作成回路から出力された音声信号を増幅する手段を設けることは記載されていない。また、上記図示内容(エ)より、図5には、「バッファ36」と「出力AMP41」の間、即ち「音声信号作成回路」と「出力AMP41」の間に、「バッファ36」から出力された音声信号、即ち音声信号作成回路から出力された音声信号を増幅する手段を表すブロックが存在することは示されていないといえる。
したがって、刊行物1においては、「音声信号作成回路」と「出力AMP41」の間には、音声信号作成回路から出力された音声信号を増幅する手段は設けられていないといえる。
このことと、上記(お)での検討より「音声信号作成回路」と「出力AMP41」の間には両者を接続する配線が設けられることから、刊行物1には、音声信号作成回路と出力AMP41を接続する配線には、音声信号作成回路から出力された音声信号を増幅する手段が設けられていないことが記載されていると認められる。
上記(ア)~(イ)の記載事項、上記(ウ)~(エ)の図示内容、及び上記(あ)~(か)の認定事項より、刊行物1には、次の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されていると認められる(記号a~fは、本件補正発明の記号A~Fに対応させて付した。)。
「a CPU31、音声データROM32、音源IC33、プリAMP34、フィルタ35、バッファ36によって構成され、音声信号を出力AMP41に出力する音声信号作成回路と、(認定事項(あ))
b 音声信号作成回路から出力された音声信号を増幅し、音声信号増幅回路を構成する出力AMP41と、(認定事項(い))
c 出力AMP41によって増幅された音声信号に基づいて音声を出力する音声出力手段であるスピーカ50と、
を備え、(認定事項(う))
d 音声信号作成回路を構成するCPU31、音声データROM32、音源IC33、プリAMP34、フィルタ35、バッファ36が副制御基板30に設けられ、出力AMP41が副制御基板30とは異なるAMP基板40に設けられ、(認定事項(え))
e 音声信号作成回路と出力AMP41を接続する配線が設けられており、(認定事項(お))
f 音声信号作成回路と出力AMP41を接続する配線には、音声信号作成回路から出力された音声信号を増幅する手段が設けられていないパチンコ機。(認定事項(か)、段落【0007】)」
(2-2)刊行物2
本願の出願日前に頒布され、原査定の拒絶の理由において提示された特開2014-212881号公報(以下、「刊行物2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(ア)「【請求項1】
音声信号を出力する音声信号出力手段、および当該音声信号出力手段から出力された音声信号を増幅する音声信号増幅手段が設けられた基板と、
前記音声信号増幅手段によって増幅された音声信号に基づいて音声を出力する音声出力装置と、
を備え、
前記基板上の前記音声信号出力手段と前記音声信号増幅手段とを繋ぐ信号線には、外部機器が接続可能な接続部が設けられていることを特徴とする遊技機。
【請求項2】
前記接続部は、前記基板に形成されたスルーホールまたはビアで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の遊技機。」
(イ)「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の遊技機において、設計・開発段階において音声を確認する場合、図4に示すように、音声信号増幅手段103と音声出力装置104との間で、ヘッドホンやイヤホンといった、上記音声出力装置104とは別の確認用音声出力装置106を接続して音声を確認したりする。
【0005】
しかし、ヘッドホンやイヤホンで音声を確認する場合、音声信号増幅手段103によって増幅された音声信号は出力レベルが高すぎるため、一旦変換装置105によってレベルを落とした上でその信号をヘッドホンやイヤホンに送る必要がある。このような音声確認手法は、変換装置105によって低下させなければならないレベルが大きいため、レベルの調整が煩わしいし、変換装置の発熱や音質の低下を招くこともある。
【0006】
本発明の目的は、設計・開発段階における音声確認を容易にする遊技機を提供することである。」
(ウ)「【0009】
請求項1に記載の発明にかかる遊技機では、音声信号出力手段と音声信号増幅手段との間に設けられた接続部を利用すれば、増幅される前の音声信号を取り出すことが可能となる。つまり、音声確認用の音声信号として、増幅される前の低レベルの信号を用いることができるため、従来よりも音声確認時のレベルの調整を容易にすることが可能である。また、変換装置の発熱や音質の低下を抑制することも可能である。」
(エ)「【0020】
音声制御回路40の詳細は図3に示す通りである。主制御基板20から送られる各種信号を受けたサブ制御基板30(CPU)は、その信号に基づき、実行する演出を決定(抽選)する。その演出が音声出力を伴う場合には、サブ制御基板30は音声信号出力手段41(音声用回路;DSP(デジタルシグナルプロセッサ))から実行することが決定された演出で使用する音声信号を出力させる。出力された音声信号は、音声信号増幅手段42(アンプ回路)によって増幅される。この増幅された信号が基板外に設けられた上記スピーカ33に電線を通じて送られ、当該スピーカ33から演出の音声として出力される。
【0021】
本実施形態におけるサブ制御基板30には、音声制御回路40における、音声信号出力手段41と音声信号増幅手段42とを繋ぐ信号線43に接続部44が設けられている。接続部44は、音声信号出力手段41から出力される音声信号を、音声信号増幅手段42によって増幅される前に取り出すための基板に形成されたポートである。」
(オ)図2には、ROM及びCPUがサブ制御基板30に設けられることが示されている。
刊行物2全体の記載、特に上記の(イ)~(ウ)の記載事項から、以下の事項が導かれる。
(あ)
(あ-1)刊行物2全体を見ても、音声信号出力手段41と音声信号増幅手段42とを繋ぐ信号線に、音声信号出力手段41から出力された音声信号を増幅する手段を設けることは明示的に示されていない。
(あ-2)上記段落【0004】には「この種の遊技機において、設計・開発段階において音声を確認する場合、図4に示すように、音声信号増幅手段103と音声出力装置104との間で、ヘッドホンやイヤホンといった、上記音声出力装置104とは別の確認用音声出力装置106を接続して音声を確認したりする。」と、上記段落【0005】には「しかし、ヘッドホンやイヤホンで音声を確認する場合、音声信号増幅手段103によって増幅された音声信号は出力レベルが高すぎるため、一旦変換装置105によってレベルを落とした上でその信号をヘッドホンやイヤホンに送る必要がある。このような音声確認手法は、変換装置105によって低下させなければならないレベルが大きいため、レベルの調整が煩わしいし、変換装置の発熱や音質の低下を招くこともある。」と記載されていることより、刊行物2には、遊技機の設計・開発段階において音声を確認する場合において、音声信号増幅手段によって増幅された音声信号は出力レベルが高すぎるため、レベルの調整が煩わしい、或いは変換装置の発熱や音質の低下を招くといった不都合があることが記載されているといえる。
また、上記段落【0009】には「請求項1に記載の発明にかかる遊技機では、音声信号出力手段と音声信号増幅手段との間に設けられた接続部を利用すれば、増幅される前の音声信号を取り出すことが可能となる。つまり、音声確認用の音声信号として、増幅される前の低レベルの信号を用いることができるため、・・・」と記載されていることより、刊行物2には、接続部を利用して増幅される前の音声信号を取り出すことや、増幅される前の低レベルの信号を用いることが記載されているといえる。
(あ-3)上記(あ-1)での検討に加え、上記(あ-2)で検討した事情をふまえれば、刊行物2には、音声信号出力手段41と音声信号増幅手段42とを繋ぐ信号線には、音声信号出力手段41から出力された音声信号を増幅する手段が設けられていないことが記載されていると認められる。
なお、審判請求書の「(3)補正の概要」には、「(F)前記第一基板に設けられた前記第一配線には、前記音声信号出力手段から出力された音声信号を増幅する手段が設けられていないことを特徴とする」、及び「・(F)の発明特定事項にかかる補正は、本願明細書段落0028、0029、図5等の記載に基づくものである。つまり、これらの段落には、接続部70やコネクタ311を利用して増幅される前の音声信号を取り出すことが開示されていると認められるから、第一配線(第一基板)に音声信号を増幅する手段が設けられていないことは自明である。」と記載され、増幅される前の音声信号を取り出すことが開示されていることを以て、第一配線に音声信号を増幅する手段が設けられていないことは自明である旨主張されているが、先の認定は当該主張とも符合するものである。
上記(ア)~(エ)の記載事項、(オ)の図示内容、及び上記(あ)の認定事項を総合すると、刊行物2には、次の事項が記載されていると認められる(以下、「刊行物2記載の事項」という。)。
「ROM、CPU、DSP(デジタルシグナルプロセッサ)によって構成され音声信号を出力する音声信号出力手段41、および当該音声信号出力手段41から出力された音声信号を増幅する音声信号増幅手段42が設けられたサブ制御基板30と、
前記音声信号増幅手段42によって増幅された音声信号に基づいて音声を出力する音声出力装置と、
を備え、
前記サブ制御基板30上の前記音声信号出力手段41と前記音声信号増幅手段42とを繋ぐ信号線には、外部機器が接続可能な接続部が設けられ、(請求項1、段落【0020】、【0021】、図示内容(オ))
前記信号線には、前記音声信号出力手段41から出力された音声信号を増幅する手段が設けられておらず、(認定事項(あ))
前記接続部は、前記基板に形成されたスルーホールまたはビアで構成されている遊技機。(請求項2)」
(3)対比
本件補正発明と刊行物1発明とを対比する(下記の(a)~(f)は、刊行物1発明の構成a~fに対応している。)。
(a)刊行物1発明の「CPU31、音声データROM32、音源IC33、プリAMP34、フィルタ35、バッファ36によって構成され、音声信号を出力AMP41に出力する音声信号作成回路」は、音声信号を出力するから、本件補正発明の「音声信号を出力する音声信号出力手段」に相当する。
(b)上記(a)での検討より、刊行物1発明の「音声信号作成回路」は本件補正発明の「音声信号出力手段」に相当するから、刊行物1発明の「音声信号作成回路から出力された音声信号」は、本件補正発明の「前記音声信号出力手段から出力された音声信号」に相当する。
また、刊行物1発明の「音声信号を増幅」する「出力AMP41」は、本件補正発明の「音声信号を増幅する音声信号増幅手段」に相当する。
したがって、刊行物1発明の「音声信号作成回路から出力された音声信号を増幅し、音声信号増幅回路を構成する出力AMP41」は、本件補正発明の「前記音声信号出力手段から出力された音声信号を増幅する音声信号増幅手段」に相当する。
(c)上記(b)での検討より、刊行物1発明の「出力AMP41」は本件補正発明の「音声信号増幅手段」に相当するから、刊行物1発明の「出力AMP41によって増幅された音声信号に基づいて音声を出力する音声出力手段であるスピーカ50」は、本件補正発明の「前記音声信号増幅手段によって増幅された音声信号に基づいて音声を出力する音声出力装置」に相当する。
(d)刊行物1発明においては、「音声信号作成回路を構成するCPU31、音声データROM32、音源IC33、プリAMP34、フィルタ35、バッファ36が副制御基板30に設けられ、出力AMP41が」「AMP基板40に設けられ」ており、かつ上記(a)、(b)での検討より、刊行物1発明の「音声信号作成回路」、及び「出力AMP41」はそれぞれ、本件補正発明の「音声信号出力手段」、及び「音声信号増幅手段」に相当するから、刊行物1発明の「副制御基板30」、及び「AMP基板40」はそれぞれ、本件補正発明の「前記音声信号出力手段が」「設けられ」た「第一基板」、及び「前記音声信号増幅手段が」「設けられ」た「第二基板」に相当する。
したがって、刊行物1発明において「音声信号作成回路を構成するCPU31、音声データROM32、音源IC33、プリAMP34、フィルタ35、バッファ36が副制御基板30に設けられ、出力AMP41が副制御基板30とは異なるAMP基板40に設けられ」ていることは、本件補正発明において「前記音声信号出力手段が第一基板に設けられ、前記音声信号増幅手段が前記第一基板とは異なる第二基板に設けられ」ていることに相当する。
(e)まず、本件補正発明の「基板コネクタ」とは、明細書段落【0023】に「サブ制御基板30や増幅用基板40には、当該接続のためのコネクタ(基板実装型のコネクタ)が設けられている。」と記載されていることより、基板に実装される態様のコネクタであると認められる。
刊行物1発明においては、「音声信号作成回路」が「音声信号を出力AMP41に出力する」(構成a)から、「音声信号作成回路と出力AMP41を接続する配線」が、「音声信号作成回路」から見て出力側の配線であり、「出力AMP41」から見て入力側の配線であることは明らかである。
また、刊行物1発明においては、「音声信号作成回路」が「副制御基板30に設けられ」、「出力AMP41が」「AMP基板40に設けられ」(構成d)ることより、「音声信号作成回路と出力AMP41を接続する配線」のうち、一部は「副制御基板30」に設けられ、一部は「AMP基板40」に設けられていることも明らかである。
そうすると、刊行物1発明の、「音声信号作成回路と出力AMP41を接続する配線」のうち「副制御基板30」に設けられた一部の配線は、「副制御基板30」に設けられ、かつ「音声信号作成回路」から見て出力側の配線であるから、本件補正発明の「前記第一基板に設けられた前記音声信号出力手段の出力側の配線である第一配線」に相当する。また、「音声信号作成回路と出力AMP41を接続する配線」のうち「AMP基板40」に設けられた一部の配線は、「AMP基板40」に設けられ、かつ「出力AMP41」から見て入力側の配線であるから、本件補正発明の「前記第二基板に設けられた前記音声信号増幅手段の入力側の配線である第二配線」に相当する。
よって、刊行物1発明において「音声信号作成回路と出力AMP41を接続する配線が設けられて」いることは、本件補正発明の「前記第一基板に設けられた前記音声信号出力手段の出力側の配線である第一配線、および前記第二基板に設けられた前記音声信号増幅手段の入力側の配線である第二配線の少なくともいずれか一方には、当該第一配線の出力側端部および当該第二配線の入力側端部に設けられた第一基板と第二基板を接続するための基板コネクタに対する接続構造とは異なる接続構造で外部機器が接続可能な接続部が設けられて」いることと、「前記第一基板に設けられた前記音声信号出力手段の出力側の配線である第一配線、および前記第二基板に設けられた前記音声信号増幅手段の入力側の配線である第二配線」が設けられている点で共通する。
(f)刊行物1発明においては、「音声信号作成回路と出力AMP41を接続する配線には、音声信号作成回路から出力された音声信号を増幅する手段が設けられていない」から、「音声信号作成回路と出力AMP41を接続する配線」のうち「副制御基板30」に設けられた一部の配線に、音声信号作成回路から出力された音声信号を増幅する手段が設けられていないことは自明である。
また、上記(e)での検討より、刊行物1発明の「音声信号作成回路と出力AMP41を接続する配線」のうち「副制御基板30」に設けられた一部の配線は、本件補正発明の「前記第一基板に設けられた前記第一配線」に相当する。
さらに、刊行物1発明の「パチンコ機」は、本件補正発明の「遊技機」に相当する。
これらを総合すると、刊行物1発明の「音声信号作成回路と出力AMP41を接続する配線には、音声信号作成回路から出力された音声信号を増幅する手段が設けられていないパチンコ機。」は、本件補正発明の「前記第一基板に設けられた前記第一配線には、前記音声信号出力手段から出力された音声信号を増幅する手段が設けられていない」「遊技機。」に相当する。
上記(a)~(f)の対比より、本件補正発明と刊行物1発明とは、次の点で一致している。
「A 音声信号を出力する音声信号出力手段と、
B 前記音声信号出力手段から出力された音声信号を増幅する音声信号増幅手段と、
C 前記音声信号増幅手段によって増幅された音声信号に基づいて音声を出力する音声出力装置と、
を備え、
D 前記音声信号出力手段が第一基板に設けられ、前記音声信号増幅手段が前記第一基板とは異なる第二基板に設けられており、
E’ 前記第一基板に設けられた前記音声信号出力手段の出力側の配線である第一配線、および前記第二基板に設けられた前記音声信号増幅手段の入力側の配線である第二配線が設けられており、
F 前記第一基板に設けられた前記第一配線には、前記音声信号出力手段から出力された音声信号を増幅する手段が設けられていない遊技機。」
そして、本件補正発明と刊行物1発明とは、次の点で相違している。
(相違点1)
「第一配線」及び「第二配線」に関して、本件補正発明においては、「第一配線、および」「第二配線の少なくともいずれか一方には、当該第一配線の出力側端部および当該第二配線の入力側端部に設けられた第一基板と第二基板を接続するための基板コネクタに対する接続構造とは異なる接続構造で外部機器が接続可能な接続部が設けられて」いるのに対して、刊行物1発明においては、そのような構成が特定されていない点。(構成E)
(4)判断
ア 上記相違点1について検討する。
上記(2-2)で認定したとおり、刊行物2には「ROM、CPU、DSP(デジタルシグナルプロセッサ)によって構成され音声信号を出力する音声信号出力手段41、および当該音声信号出力手段41から出力された音声信号を増幅する音声信号増幅手段42が設けられたサブ制御基板30と、前記音声信号増幅手段42によって増幅された音声信号に基づいて音声を出力する音声出力装置と、を備え、前記サブ制御基板30上の前記音声信号出力手段41と前記音声信号増幅手段42とを繋ぐ信号線には、外部機器が接続可能な接続部が設けられ、前記信号線には、前記音声信号出力手段41から出力された音声信号を増幅する手段が設けられておらず、前記接続部は、前記基板に形成されたスルーホールまたはビアで構成されている遊技機。」(刊行物2記載の事項)が記載されていると認められる。
ここで、刊行物1発明と刊行物2記載の事項とは、いずれも遊技機の技術分野に属しており、しかも音声信号出力手段、音声信号出力手段から出力された音声信号を増幅する音声信号増幅手段、及び音声信号増幅手段によって増幅された音声信号に基づいて音声を出力する音声出力装置を備え、音声信号出力手段及び音声信号増幅手段が基板に設けられ、音声信号出力手段と音声信号増幅手段とが配線によって接続される点において、音声出力に関連する構成が共通している。加えて、音声を出力可能な遊技機において、設計・開発段階で音声を確認することは通常行われているから、刊行物2における「設計・開発段階における音声確認を容易にする遊技機を提供する」(段落【0006】)という課題は、音声を出力可能な遊技機に関する刊行物1発明においても内在しているといえる。
また、刊行物1発明の「CPU31」、「音声データROM32」、「出力AMP41」はそれぞれ、刊行物2記載の事項の「CPU」、「ROM」、「音声信号増幅手段42」と構成上の対応関係にある。さらに、刊行物1発明の「音声信号作成回路」のうち、上記「CPU31」、「音声データROM32」を除いた「音源IC33、プリAMP34、フィルタ35、バッファ36」は、それら全体で音声信号を作成して出力する際の信号処理機能を担う構成であることより、刊行物2記載の事項の「DSP(デジタルシグナルプロセッサ)によって構成され」る「音声信号出力手段41」と構成上の対応関係にある。
したがって、刊行物1発明において上記課題を解決するために、刊行物2記載の事項を適用して、刊行物1発明の「音声信号作成回路と出力AMP41を接続する配線」のうちの基板上の部分である「副制御基板30」または「AMP基板40」の少なくともいずれか一方に、スルーホールまたはビアを形成することにより、外部機器が接続可能な接続部を設けることは、当業者が容易に想到し得たことである。
他方、遊技機の技術分野において、一方の基板に設けられた配線の出力側端部、及び他方の基板に設けられた配線の入力側端部に、当該基板どうしを接続するための基板に実装される態様の基板コネクタを設けることは、例えば特開2011-245106号公報(段落【0238】、図88には、払出制御基板120に基板コネクタ120aを設け、CRユニット基板130に基板コネクタ130aを設け、両端にハーネスコネクタ132aを有しているハーネス132の、一方のハーネスコネクタ132aが基板コネクタ120aに接続され、他方のハーネスコネクタ132aが基板コネクタ130aに接続されることが記載されている。基板コネクタ120a及び基板コネクタ130aが配線の端部に設けられることは自明である。)、及び特開2011-218074号公報(段落【0028】-【0030】、図1には、評価用制御基板2は、ケーブル3の一端が接続される制御基板側コネクタ23を有し、評価用メモリ基板1は、ケーブルの他端が接続されるメモリ基板側コネクタ15を有し、評価用メモリ基板1と評価用制御基板2とは、互いにケーブル3で接続されていることが記載されている。制御基板側コネクタ23及びメモリ基板側コネクタ15が配線の端部に設けられることは自明である。)に示されるように、本願出願前において従来周知の技術である。
よって、刊行物1発明に当該周知技術を適用し、「音声信号作成回路と出力AMP41を接続する配線」のうち、「副制御基板30」に設けられた一部の配線の出力側端部、及び「AMP基板40」に設けられた一部の配線の入力側端部にそれぞれ、「副制御基板30」及び「AMP基板40」を接続するための基板コネクタを基板に実装して設けることは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、刊行物1発明に、刊行物2記載の事項及び上記周知技術を適用した際に、スルーホールまたはビアで構成された接続部の接続構造と、基板コネクタに対する接続構造とが異なるものとなることは自明である。
以上より、刊行物1発明に、刊行物2記載の事項及び上記周知技術を適用して、上記相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
イ ところで、ここまでの説示は、刊行物1発明の「音声信号作成回路」が本件補正発明の「音声信号出力手段」に相当するものとして判断したものであるが、刊行物1発明の「音源IC33」が本件補正発明の「音声信号出力手段」に相当するとの見方ができないわけではない。
そこで、刊行物1発明の「音源IC33」が本件補正発明の「音声信号出力手段」に相当すると仮定した場合についても検討する。
その場合、刊行物1発明は次のように認定される。
「a 音声信号を出力する音源IC33と、
b 音源IC33から、プリAMP34、フィルタ35、バッファ36を介して出力された音声信号を増幅する出力AMP41と、
c 出力AMP41によって増幅された音声信号に基づいて音声を出力する音声出力手段であるスピーカ50と、
を備え、
d 音源IC33が副制御基板30に設けられ、出力AMP41が副制御基板30とは異なるAMP基板40に設けられ、
e 音源IC33と出力AMP41を接続する配線が設けられ、
f 音源IC33と出力AMP41を接続する配線のうち、副制御基板30に設けられた一部の配線には、音源IC33から出力された音声信号を増幅する手段が設けられていないパチンコ機。」
そして、本件補正発明と刊行物1発明は、次の点において相違する。
(相違点A)
「音声信号増幅手段」に関して、本件補正発明においては、「前記音声信号出力手段から出力された音声信号を増幅する」のに対して、刊行物1発明においては、「音源IC33から、プリAMP34、フィルタ35、バッファ36を介して出力された音声信号を増幅する」点。(構成B)
(相違点B)
「第一配線」及び「第二配線」に関して、本件補正発明においては、「第一配線、および」「第二配線の少なくともいずれか一方には、当該第一配線の出力側端部および当該第二配線の入力側端部に設けられた第一基板と第二基板を接続するための基板コネクタに対する接続構造とは異なる接続構造で外部機器が接続可能な接続部が設けられて」いるのに対して、刊行物1発明においては、そのような構成が特定されていない点。(構成E)
上記相違点Aについて検討する。
プリAMP、フィルタ、バッファ等の素子は、音量や音質を調整するために任意選択的に用いられるものであるところ、刊行物1発明において、音源IC33から出力された音声信号を出力AMP41にて増幅するように設計変更し、上記相違点Aに係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
上記相違点Bについて検討する。
上記アで相違点1について検討したのと同様の理由により、刊行物1発明に刊行物2記載の事項及び周知技術を適用して上記相違点Bに係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
したがって、仮に刊行物1発明の「音源IC33」が本件補正発明の「音声信号出力手段」に相当するものとしてみても、刊行物1発明に刊行物2記載の事項及び上記周知技術を適用して本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことであり、結論に違いはない。
ウ 本件補正発明が奏する効果について
本件補正発明が奏する効果は、当業者が刊行物1発明、刊行物2記載の事項、及び上記周知技術から当業者が予測しうる程度のものであって、格別のものではない。
(5)請求人の主張について
ア 請求人は、審判請求書の「(4)本願発明が特許されるべき理由」の「1)本願発明について」において、「本願発明は、設計・開発段階における音声確認のため、音声信号出力手段から出力された「増幅される前の音声信号」を取り出すことを容易にできるようにすることを目的とするものである。音声確認のための外部機器は、接続部に対して接続することも可能であるし、基板コネクタを介して接続することも可能である。つまり、音声確認時の外部機器の接続手法について選択肢を広げたものであるといえる。」と主張している。
しかしながら、「設計・開発段階における音声確認のため、音声信号出力手段から出力された「増幅される前の音声信号」を取り出すことを容易にできるようにすることを目的」として、外部機器を接続部に対して接続することは、刊行物2に記載されている。また、コネクタに各種の機器を接続することは、何らの例示をするまでもなく広く行われている技術常識であるから、基板コネクタを介して音声確認のための外部機器を接続することも、刊行物1発明に上記周知技術を適用した際に適宜なし得たことというべきである。
そうすると、「音声確認のための外部機器は、接続部に対して接続することも可能であるし、基板コネクタを介して接続することも可能」として、「音声確認時の外部機器の接続手法について選択肢を広げ」ることは、刊行物1発明、刊行物2記載の事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。
イ 請求人は、審判請求書の「(4)本願発明が特許されるべき理由」の「2)本願発明が特許されるべき具体的根拠」において、「ここで、引用文献1に開示される副制御基板30の詳細について検討すると、副制御基板30に構成される回路は、音源IC33から出力された信号が、プリAMP34にて増幅されるようなものとなっていることが認められる。したがって、副制御基板30に構成される回路の末端に、AMP基板40と接続するための基板コネクタが実装されていると仮定しても、当該基板コネクタを介して取り出すことができる信号は、プリAMP34にて増幅されたものであるということができる。なお、AMP基板40と接続するための基板コネクタが、音源IC33とプリAMP34との間に設けられることは想定することができない。・・・一方、本願発明は、第一配線(第一基板)には、音声信号を増幅する手段が設けられていないことが特定されているのであるから、第一基板に設けられた基板コネクタまたは第二基板に設けられた基板コネクタを介して、増幅される前の音声信号を取り出すことができるものである。かかる点において、本願発明と引用文献1に記載される発明は明らかに相違する。」と主張している。
しかしながら、刊行物1発明において、「プリAMP34」は音声信号作成回路を構成する一部であるところ、音声信号作成回路と出力AMP41を接続する配線に設けられたものではないから、「プリAMP34」が本件補正発明の「音声信号を増幅する手段」に該当するか否かを検討するまでもなく、刊行物1発明が「プリAMP34」を備えることを以て、「音声信号作成回路と出力AMP41を接続する配線には、音声信号作成回路から出力された音声信号を増幅する手段が設けられていない」ことが本件補正発明と刊行物1発明の相違点であるということはできない。
仮に、上記「(4)イ」のように、刊行物1発明の「音源IC33」が本件補正発明の「音声信号出力手段」に相当すると仮定した場合においては、音源IC33と出力AMP41を接続する配線のうち、副制御基板30に設けられた一部の配線に、プリAMP34が設けられることとなる。ここで、本件明細書を見ると、段落【0005】には「しかし、ヘッドホンやイヤホンで音声を確認する場合、音声信号増幅手段103によって増幅された音声信号は出力レベルが高すぎるため、一旦変換装置105によってレベルを落とした上でその信号をヘッドホンやイヤホンに送る必要がある。」と、段落【0026】には「このように、本実施形態にかかる遊技機1では、音声信号出力手段31と音声信号増幅手段41とは別の基板に設けられているから、音声信号出力手段31から出力された音声信号を、音声信号増幅手段41によって増幅される前の段階で取り出すことが可能である。そのため、増幅された高レベルの信号を、ヘッドホンやイヤホンなどの音声出力装置51用に大きく低下させる必要がなくなるから、・・・」と記載されているから、本件補正発明でいう音声信号の「増幅」とは、変換装置によってレベルを落とさないとヘッドホンやイヤホンでの音声確認に支障を来す程度の高レベルまで、音声信号の出力レベルを高めることであるとみるのが相当である。一方、プリAMPは、信号の調整を目的とするものであって、スピーカーを駆動するといった高レベルにまで音声信号の出力レベルを高めるものでないことは自明である。したがって、上記のように仮定した場合においても、刊行物1発明が「プリAMP34」を備えることを以て、本件補正発明の第一配線に相当する配線に音声信号を増幅する手段が設けられているとはいえない。
さらに、刊行物1発明の「プリAMP34」が本件補正発明の「音声信号を増幅する手段」であるとしてみても、上記「(4)イ」で検討したようにプリAMPは音量や音質を調整するために任意選択的に用いられる素子であるし、かつ、設計・開発段階における音声確認を容易にする遊技機を提供するという課題を解決するために刊行物1発明に刊行物2記載の事項を適用した際に、接続部よりも前に音声信号を増幅する手段があると不都合であることは自明であるから、本件補正発明の第一配線に相当する配線にプリAMPを設けないようにして、本件補正発明の「前記第一基板に設けられた前記第一配線には、前記音声信号出力手段から出力された音声信号を増幅する手段が設けられていない」構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
したがって、請求人の主張は採用することができない。
ウ 請求人は、審判請求書の同「2)本願発明が特許されるべき具体的根拠」において、「なお、引用文献1では、副制御基板30に構築される回路を「音声信号作成回路」と名付けているが、当該「音声信号作成回路」は、音源IC33の下流側に、上述したプリAMP34、フィルタ35、バッファ36などを含むものである。つまり、当該回路から出力される音声信号は、音源IC33から出力された信号そのもの(いわゆる生データ)であるとはいえない。一方、本願発明は、設計・開発段階における音声確認に関してなされた発明であるから、音声信号出力手段から出力され、基板コネクタまたは接続部を介して取り出すことができる音声信号は、増幅等が全くなされていないいわゆる生データであることを要する。したがって、プリAMP34を含む音声信号作成回路全体が、本願発明でいう音声信号出力手段と認定されるべきではない。」と主張している。
しかしながら、「音声信号出力手段から出力され」る音声信号が「増幅等が全くなされていないいわゆる生データであること」は、本件補正後の請求項1の記載からは把握することができない。したがって、請求人の主張は、本件補正後の請求項1の記載に基づくものではないので、採用することができない。
また、請求人の主張を受け入れた場合についても、上記「(4)イ」において検討済みであり、刊行物1発明に刊行物2記載の事項及び上記周知技術を適用して本件補正発明を構成することは、当業者が容易に想到し得たことである。
エ 請求人は、審判請求書の同「2)本願発明が特許されるべき具体的根拠」において、「また、本願出願人は、平成28年11月24日付意見書において、引用文献1に記載される発明について、『引用文献1に記載される発明は、基本的な構造として、音声信号を作成する回路が設けられた基板と、音声信号を増幅するための基板が別々であるものである。』として、引用文献1に記載の音声信号作成回路(副制御基板30に構築された回路)が本願発明でいう音声信号出力手段に相当することを前提とした主張をしているとも捉えられるが、当該主張は、引用文献1における副制御基板30において、音源IC33の下流側にプリAMP34が実装されていることに気付かなかったがゆえのものである。したがって、本審判請求書における主張は、上記意見書で行った主張と趣旨が異なるものであるが、このような事情があったことを参酌していただきたい。」と主張している。
しかしながら、請求人のいう「このような事情」を参酌したとしても、上記(4)での判断は変わるところがない。
(6)まとめ
以上のように、本件補正発明は、当業者が刊行物1発明、刊行物2記載の事項、及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
4 補正却下の決定についてのむすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の各請求項に係る発明は、平成28年6月7日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲に記載されたとおりのものであり、特に、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりである。
「【請求項1】
音声信号を出力する音声信号出力手段と、
前記音声信号出力手段から出力された音声信号を増幅する音声信号増幅手段と、
前記音声信号増幅手段によって増幅された音声信号に基づいて音声を出力する音声出力装置と、
を備え、
前記音声信号出力手段が第一基板に設けられ、前記音声信号増幅手段が前記第一基板とは異なる第二基板に設けられており、
前記第一基板に設けられた前記音声信号出力手段の出力側の配線である第一配線、および前記第二基板に設けられた前記音声信号増幅手段の入力側の配線である第二配線の少なくともいずれか一方には、外部機器が接続可能な接続部が設けられていることを特徴とする遊技機。」
2 刊行物
刊行物1及びその記載事項並びに刊行物1発明は、上記「第2 3(2)(2-1)」に記載したとおりである。また、刊行物2及びその記載事項並びに刊行物2記載の事項は、上記「第2 3(2)(2-2)」に記載したとおりである。
3 対比・判断
本願発明は、上記「第2 3(1)」で検討した本件補正発明の「当該第一配線の出力側端部および当該第二配線の入力側端部に設けられた第一基板と第二基板を接続するための基板コネクタに対する接続構造とは異なる接続構造で外部機器が接続可能な接続部が設けられており」との事項から、「当該第一配線の出力側端部および当該第二配線の入力側端部に設けられた第一基板と第二基板を接続するための基板コネクタに対する接続構造とは異なる接続構造で」との限定を省き、また、本件補正発明から、「前記第一基板に設けられた前記第一配線には、前記音声信号出力手段から出力された音声信号を増幅する手段が設けられていない」という事項を省いたものである。
本願発明と刊行物1発明とを対比する。
上記「第2 3(3)」における検討をふまえると、本願発明と刊行物1発明とは、
「音声信号を出力する音声信号出力手段と、
前記音声信号出力手段から出力された音声信号を増幅する音声信号増幅手段と、
前記音声信号増幅手段によって増幅された音声信号に基づいて音声を出力する音声出力装置と、
を備え、
前記音声信号出力手段が第一基板に設けられ、前記音声信号増幅手段が前記第一基板とは異なる第二基板に設けられており、
前記第一基板に設けられた前記音声信号出力手段の出力側の配線である第一配線、および前記第二基板に設けられた前記音声信号増幅手段の入力側の配線である第二配線」が設けられた「遊技機。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点1’)
「第一配線」及び「第二配線」に関して、本願発明においては、「第一配線、および」「第二配線の少なくともいずれか一方には、外部機器が接続可能な接続部が設けられている」のに対して、刊行物1発明においては、そのような構成が特定されていない点。
上記相違点1’について検討する。
上記「第2 3(4)ア」で検討したとおり、刊行物1発明と刊行物2記載の事項とは、技術分野及び音声出力に関連する構成が共通し、加えて刊行物1発明には刊行物2の課題も内在しているといえるから、刊行物1発明において当該課題を解決するために、刊行物2記載の事項を適用し、上記相違点1’に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
また、刊行物1発明の「音源IC33」が本願発明の「音声信号を出力する音声信号出力手段」に相当すると仮定した場合についても、上記「第2 3(4)イ」で検討したのと同様であり、刊行物1発明に刊行物2記載の事項を適用して本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
よって、本願発明は、刊行物1発明及び刊行物2記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
4 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2017-010485