特許拒絶査定不服審判
2017-006167
端末装置、制御方法及び制御プログラム
- 審判番号
- 2017-006167
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2013-017914外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年04月27日
- 審決日
- 2018年08月07日
- 公報発行日
- 2018年11月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】富士通株式会社
- 【請求人代理人】特許業務法人酒井国際特許事務所
- 分類
- P18 .121-WZ (G06Q)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2013- 17914「端末装置、制御方法及び制御プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 8月21日出願公開、特開2014-149670〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本件特許出願は、平成25年1月31日の出願であって、その手続の経緯は、以下のとおりである。
平成28年 6月27日付け:拒絶理由の通知
平成28年 9月 5日 :意見書及び手続補正書の提出
平成29年 2月 8日付け:拒絶査定
平成29年 4月27日 :審判請求書の提出
平成30年 3月 7日付け:当審にて拒絶理由の通知
平成30年 5月 8日 :意見書及び手続補正書の提出
第2 本件発明
本件特許出願の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、平成30年5月8日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものと認める。
「 【請求項1】
カメラのフォーカスを制御してバーコード情報を自動的に検出して読み取るサーチモードを実行する読取部と、
患者を識別する患者識別情報に対応した第一のバーコードに基づく該患者の認証が成功した場合に、前記読取部を、第二のバーコードを検出して読み取るサーチモードに自動的に遷移させ、前記第二のバーコードを読み取った場合に、読み取った該第二のバーコードに対応したオーダ内容の識別情報が前記患者識別情報に対応するか否かについての判定結果を、表示部に表示させる制御部と
を有することを特徴とする端末装置。」
第3 当審にて通知した拒絶理由の概要
当審にて平成30年3月7日付けで通知した拒絶理由の概要は、以下のとおりである。
(ア)請求項1~5については、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
(イ)請求項1~7については、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
(ウ)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
請求項1、3~5について
引用文献1、2
備考
請求項1について、「判定装置」が「医療端末」と「端末サーバ」とを合わせたシステムのことを示すものとして進歩性を判断する。
本発明と、引用文献1に記載された発明を比較すると以下の点で相違する。
相違点1
本発明では、「カメラのフォーカスを制御してバーコード情報を自動的に検出して読み取るサーチモードを実行」しているのに対し、引用文献1には、カメラによるバーコード読み取り処理について明記されていない点。
相違点2
本発明では、「患者を識別する患者識別情報に対応した第一のバーコードを読み取った場合に、第二のバーコードを検出して読み取るサーチモードに自動的に遷移する」のに対し、引用文献1では、患者IDのバーコードを読みとった後に、オーダIDのバーコードを読み取る画面に遷移しているが、患者情報を表示しているため、自動的に遷移しているのか特定できない点。
以下、上記相違点について検討する。
相違点1について
引用文献1に記載された発明は、PDAにおいて、バーコードを読み取るものであるから、カメラのフォーカスを制御してバーコード情報と自動的に検出して読み取ることに格別な困難性は認められない。
相違点2について
引用文献2の【0033】には、「患者入力画面が表示され、携帯端末5に接続したバーコードリーダ21で、患者に装着したリストバンド又はベッドサイドに取り付けたラベルのバーコード7を読み込むことにより、選択された患者情報が表示される。そして、所定時間経過すると、図26に示すように、薬品入力画面に切り替わり、前記処方札のバーコード14を読み込むことにより薬品情報が表示される」という技術事項が開示されており、当該技術事項を参照すれば、引用文献1において、患者情報を画面に所定時間表示した後に、画面を自動的に遷移させることは当業者が容易に想到し得ることである。
請求項2について
引用文献1、2
備考
バーコードの種類を判定することは周知技術に過ぎず、所望の種類以外のバーコードを読み取った際に、中断等の処理を行うことは当業者が必要に応じて適宜選択し得たことである。
<引用文献等一覧>
1.特開2012-178052号公報
2.特開2004-103001号公報
第4 引用発明
1 引用文献1の記載
これに対して、当審において平成30年3月7日付けで通知した拒絶理由にて引用した、特開2012-178052号公報(以下、「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。(なお、下線部は当審にて付与した。)
(1)「【0001】
本発明は、注射や点滴の投与ミスを未然に防ぐための看護支援方法およびシステム、看護支援サーバ装置およびプログラムに関する。」
(2)「【0021】
図3において、PDA101は個人情報端末装置、PDAサーバ102は第1のサーバ装置、電子カルテサーバ103は第2のサーバ装置として機能し、それぞれ図1に示されるものと同じものである。図1に示されるように、PDA101とPDAサーバ102は例えば無線LAN104によって接続され、PDAサーバ102と電子カルテサーバ103は例えば有線のLAN105によって接続される。
【図3】
」
(3)「【0022】
図3において、PDA101は、患者ID受付け部301を有する。この患者ID受付け部301は、患者を識別する患者IDを受け付ける。この患者ID受付け部301は例えば、患者が装着しているリストバンドに印刷されたバーコードを読み取り、バーコードに含まれる患者IDを受け付けるバーコード読取り装置である。
【0023】
また、PDA101は、オーダID受付け部302を有する。このオーダID受付け部302は、投薬オーダを識別するオーダIDを受け付ける。このオーダID受付け部302は例えば、点滴の輸液ラベルや注射器のラベルに印刷されたバーコードを読み取り、バーコードに含まれるオーダIDを受け付けるバーコード読取り装置である。」
(4)「【0059】
次に、PDA101において、看護師の操作により、患者のリストバンドから患者IDのバーコードが読み取られる(図9のステップS814)。この処理は、図3の患者ID受付け部301の機能に対応する。
【0060】
次に、PDAサーバ102において、上記患者IDに基づいて、電子カルテサーバ103内の患者情報テーブル記憶部309にアクセスする。この結果、上記患者IDに対応する患者情報が、図6のデータ構成例を有する患者情報テーブルから検索される(図9のステップS815)。この処理は、図3の患者情報取得部310の機能に対応する。
【0061】
次に、PDA101のディスプレイに、上記検索された患者情報である患者氏名が表示される(図9のステップS816)。この処理は、図3の患者情報表示部311の機能に対応する。
【0062】
次に、PDA101において、看護師の操作により、薬剤に添付している輸液ラベルまたは臨時注射指示書(図2参照)から、オーダ番号(オーダID)のバーコードが読み取られる(図10のステップS817)。この処理は、図3のオーダID受付け部302の機能に対応する。
【0063】
次に、PDAサーバ102において、ステップS817にて読み取られたオーダ番号(オーダID)に基づいて、図3の電子カルテサーバ103内のオーダ情報テーブル記憶部308にアクセスされる。この結果、図4のデータ構成例を有するオーダ情報テーブルから、上記オーダ番号(オーダID)を有するオーダ情報のレコードが検索される(図10のステップS818)。
【0064】
さらに、ステップS818で検索されたレコードから、図9のステップS814にて読み取られた患者IDと同じ患者IDを有するレコードがさらに検索される。ここで、レコードが検索できた場合には、上記オーダ番号(オーダID)と患者IDの組に対応するオーダ内容情報が、電子カルテサーバ103内のオーダ内容テーブル(図5参照)から取得される(以上、図10のステップS819)。
【0065】
次に、ステップS819によって、図9のステップS814にて読み取られた患者IDと同じ患者IDを有するレコードが検索されたか否かが判定される(図10のステップS820)。この判定がNOならば、図10のステップS823のエラーまたは警告表示処理に移る。
【0066】
ステップS820の判定がYESならば、ステップS819にて検索されたレコードの実施フラグ(実施有無情報)(図4参照)が未実施を示す値“0”であるか否かが判定される(図10のステップS821)。既に実施済みでこの判定がNOならば、図10のステップS823のエラーまたは警告表示処理に移る。
【0067】
ステップS821の判定がYESならば、ステップS819にて検索されたレコードの投薬日時情報(図4参照)が、現在時刻と比較して、一定の範囲であるか否かが判定される(図10のステップS822)。現在時刻から一定の範囲以上離れておりステップS822の判定がNOならば、図10のステップS823のエラーまたは警告表示処理に移る。
【0068】
ステップS822の判定がYESならば、図11のステップS824の処理に移る。
ステップS820、S821、S822のいずれかの判定がNOとなって実行されるステップS823では、実施すべきオーダが誤っていることを示すエラーまたは警告表示が、PDA101のディスプレイに表示される。その後、ステップS817の処理に戻って、他のオーダ番号のバーコードの読み取りが実行される。」
2 引用発明
上記1で摘記した事項によると、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「個人情報端末装置(PDA101)とPDAサーバ102とが無線LAN104によって接続され、前記PDAサーバ102と電子カルテサーバ103とが有線のLANによって接続されてなる“注射や点滴の投与ミスを未然に防ぐためのシステム”に係る個人情報端末装置(PDA101)であって、
個人情報端末装置(PDA101)は、患者ID受付け部301を有し、この患者受付け部301は、患者が装着しているリストバンドに印刷されたバーコードを読み取り、バーコードに含まれる患者IDを受け付けるバーコード読取り装置であり、
個人情報端末装置(PDA101)は、オーダID受付け部302を有し、このオーダID受付け部302は、点滴の輸液ラベルや注射器のラベルに印刷されたバーコードを読み取り、バーコードに含まれるオーダIDを受け付けるバーコード読取り装置であり、
個人情報端末装置(PDA101)において、看護師の操作により、患者のリストバンドから患者IDのバーコードが読み取られると、PDAサーバ102において、上記患者IDに基づいて、電子カルテサーバ103内の患者情報テーブル記憶部309にアクセスし、この結果、上記患者IDに対応する患者情報が、患者情報テーブルから検索され、個人情報端末装置(PDA101)のディスプレイに、上記検索された患者情報である患者氏名が表示され、
次に、個人情報端末装置(PDA101)において、看護師の操作により、薬剤に添付している輸液ラベルまたは臨時注射指示書から、オーダ番号(オーダID)のバーコードが読み取られると、PDAサーバ102において、読み取られたオーダ番号(オーダID)に基づいて、電子カルテサーバ103内のオーダ情報テーブル記憶部308にアクセスし、この結果、オーダ情報テーブルから、上記オーダ番号(オーダID)を有するオーダ情報のレコードが検索されると、次に、読み取られた患者IDと同じ患者IDを有するレコードが検索されたか否かが判定され、この判定がNOならば、エラーまたは警告表示処理に移り、実施すべきオーダが誤っていることを示すエラーまたは警告表示が、個人情報端末装置(PDA101)のディスプレイに表示される、
個人情報端末装置(PDA101)。」
3 引用文献2の記載
当審において平成30年3月7日付けで通知した拒絶理由にて引用した、特開2004-103001号公報(以下、「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。
(1)「【0031】
また、与薬入力は、服用方法に関する各欄の「与薬入力」ボタンを操作することにより行う。与薬入力は、実際に与薬処理を行う際、患者と、投与する薬剤との照合等を行うために利用する。例えば、内服欄の「与薬」ボタンを操作し、携帯端末5に接続したバーコードリーダ21で、患者に装着したリストバンド又はベッドサイドに取り付けたラベルのバーコード7を読み込むことにより、図22に示すバーコード入力画面が表示される。続けて、バーコードリーダ21で処方札のバーコード14を読み込むと、バーコード14の照合が行われ、正しければ、図23に示すバーコード照合画面が表示され、正しくなければ、図24に示すエラー画面が表示される。」
(2)「【0033】
定数配置欄の「入力」ボタンを操作すると、図25に示すように、患者入力画面が表示され、携帯端末5に接続したバーコードリーダ21で、患者に装着したリストバンド又はベッドサイドに取り付けたラベルのバーコード7を読み込むことにより、選択された患者情報が表示される。そして、所定時間経過すると、図26に示すように、薬品入力画面に切り替わり、前記処方札のバーコード14を読み込むことにより薬品情報が表示される。さらに、所定時間経過すると、図27に示す薬品数量入力画面に切り替わり、表示されたテンキーを使用して数量を入力することができる。「剤終了」ボタンを操作することにより、図28に示す定数薬確認メッセージ画面に切り替わり、入力した内容を確認することが可能である。また、他の入力が必要であれば、「次薬品」ボタンを操作することにより、前記処理を行うことが可能である。なお、画面が切り替わるまでの時間は自由に設定可能である。また、患者情報及び薬品情報は、サーバ1側から送信されたリストから選択することもできる。」
よって、上記(1)及び(2)で摘記した事項によると、引用文献2には、以下の技術事項が記載されている。
「携帯端末に患者入力画面が表示された後、携帯端末に接続したバーコードリーダで、患者に装着したリストバンド又はベッドサイドに取り付けたラベルのバーコードを読み込むことにより、選択された患者情報が表示され、所定時間経過すると、薬品入力画面に切り替わり、処方札のバーコードを読み込むことにより薬品情報が表示される。」
4 引用文献3の記載
本件特許出願の出願前に公開された、特開2008-193640号公報(以下、「引用文献3」という。)には、以下の事項が記載されている。
(1)「【0023】
また、図1によれば、人物画の右上にQRコード21が表示されている。勿論、QRコードに限られず、バーコード又はカラーコードであってもよいし、読み取り可能なデジタルコードであればよい。これらデジタルコードは、対象物の一部に付与されたものであってもよいし、例えば人物画の中に埋め込まれたものであってもよい。」
(2)「【0034】
図2は、携帯電話機によって付加情報を読み取る使用態様図である。
【0035】
図2によれば、携帯電話機1のカメラ部101が、自動的にQRコード21へ焦点を合わせて、そのデジタルコードを読み取る。近年のカメラ付き携帯電話機には、QRコードリーダを搭載しているものが多い。通常、携帯電話機1のディスプレイ部102に、QRコードの位置合わせのための調整画像が表示される。尚、この調整画像は、本発明における撮影のための枠画像とは異なる。
【0036】
図2によれば、携帯電話機1は、対象物に付与されているQRコード21を読み取り、その中から付加情報を検出する。また、携帯電話機1は、対象物に付与されている非接触ICチップ22から付加情報を受信するものであってもよい。ここで、付加情報とは、例えば、対象物を撮影するための枠画像、及び/又は、対象物に関する説明文字画像である。」
よって、上記(1)及び(2)で摘記した事項によると、引用文献3には、以下の周知の技術が記載されている。
「携帯電話機のカメラ部が、自動的に、対象物に付与されているバーコードへ焦点を合わせて、そのデジタルコードを読み取り、その中から付加情報を検出する。」
第5 対比
本件発明と引用発明を対比する。
(ア)引用発明の「個人情報端末装置(PDA101)」は、本件発明の『端末装置』に相当する。
(イ)引用発明の「個人情報端末装置(PDA101)は、患者ID受付け部301を有し、この患者受付け部301は、患者が装着しているリストバンドに印刷されたバーコードを読み取り、バーコードに含まれる患者IDを受け付けるバーコード読取り装置であり、」なる記載を参酌するに、「患者が装着しているリストバンドに印刷されたバーコード」には「患者IDが含まれる」ことが示されており、前記「患者ID」が「患者を識別する情報」であることは明らかであるから、前記「患者が装着しているリストバンドに印刷されたバーコード」は、本件発明でいうところの『患者を識別する患者識別情報に対応した第一のバーコード』に相当する。
(ウ)引用発明の「個人情報端末装置(PDA101)は、オーダID受付け部302を有し、このオーダID受付け部302は、点滴の輸液ラベルや注射器のラベルに印刷されたバーコードを読み取り、バーコードに含まれるオーダIDを受け付けるバーコード読取り装置であり、」なる記載を参酌するに、「点滴の輸液ラベルや注射器のラベルに印刷されたバーコード」には「オーダIDが含まれる」ことが示されており、前記「オーダID」が「オーダ内容を識別する情報」であることは明らかであるから、前記「点滴の輸液ラベルや注射器のラベルに印刷されたバーコード」は、本件発明でいうところの『オーダ内容の識別情報』に対応した『第二のバーコード』といえる。
(エ)引用発明の「個人情報端末装置(PDA101)は、患者ID受付け部301を有し、この患者受付け部301は、患者が装着しているリストバンドに印刷されたバーコードを読み取り、バーコードに含まれる患者IDを受け付けるバーコード読取り装置であり、
個人情報端末装置(PDA101)は、オーダID受付け部302を有し、このオーダID受付け部302は、点滴の輸液ラベルや注射器のラベルに印刷されたバーコードを読み取り、バーコードに含まれるオーダIDを受け付けるバーコード読取り装置であり、」なる記載から明らかなように、前記「患者ID受付け部301」及び「オーダID受付け部302」は、『患者を識別する患者識別情報に対応した第一のバーコード』及び『オーダ内容の識別情報』に対応した『第二のバーコード』を読み取るという点において、本件発明でいうところの『バーコード情報』を『読み取る』『読取部』といえる。
(オ)引用発明の「PDAサーバ102において、上記患者IDに基づいて、電子カルテサーバ103内の患者情報テーブル記憶部309にアクセスし、この結果、上記患者IDに対応する患者情報が、患者情報テーブルから検索され、端末装置のディスプレイに、上記検索された患者情報である患者氏名が表示され」ることは、注射や点滴を施行する医療従事者による患者本人の認証のために、患者IDを含む第一のバーコードが読み取られたリストバンドを付けた患者に対応する患者情報がPDAサーバから検索されたことといえるから、本件発明でいうところの『患者を識別する患者情報に対応した第一のバーコードに基づく該患者の認証が成功』することに相当する。
そして、引用発明では、個人情報端末装置(PDA101)に患者情報である患者氏名が表示された後に看護師の操作により薬剤に添付している輸液ラベルまたは臨時注射指示書から、第二のバーコードを読み取るのであり、また、本件発明でいうところの『サーチモード』とは、本件特許出願に係る明細書の段落【0042】、【0049】及び【0050】の記載を参酌するに、バーコードが読取可能な待ち受け状態を意味すると解されるから、引用発明においても本件発明と同様に、『患者を識別する患者情報に対応した第一のバーコードに基づく該患者の認証が成功した場合』にオーダID受付け部302を『第二のバーコードを検出して読み取るサーチモード』に『遷移』させているといえる。
してみると、引用発明は、本件発明でいうところの『患者を識別する患者識別情報に対応した第一のバーコードに基づく該患者の認証が成功した場合に、前記読取部を、第二のバーコードを検出して読み取るサーチモードに遷移させ』に相当する機能を備えているといえる。
(カ)引用発明において、「PDAサーバ102において、読み取られたオーダ番号(オーダID)に基づいて、電子カルテサーバ103内のオーダ情報テーブル記憶部308にアクセスし、この結果、オーダ情報テーブルから、上記オーダ番号(オーダID)を有するオーダ情報のレコードが検索されると、次に、読み取られた患者IDと同じ患者IDを有するレコードが検索されたか否かが判定され」ることは、読み取られたオーダ番号(オーダID)と読み取られた患者IDとが対応付けられたレコードの有無についての判定であるといえるから、本件発明でいうところの『読み取った該第二のバーコードに対応したオーダ内容の識別情報が前記患者識別情報に対応するか否かについて判定』されることに相当する。
(キ)上記(カ)で検討したとおり、引用発明において、「オーダ情報テーブルから、上記オーダ番号(オーダID)を有するオーダ情報のレコードが検索され」、「読み取られた患者IDと同じ患者IDを有するレコードが検索されたか否かが判定され、この判定がNO」であることは、本件発明でいうところの『読み取った該第二のバーコードに対応したオーダ内容の識別情報が前記患者識別情報に対応するか否かについての判定結果』であるといえる。
してみると、引用発明において「この判定がNO」である場合、「実施すべきオーダが誤っていることを示すエラーまたは警告表示が、端末装置のディスプレイに表示される」ことは、本件発明でいうところの『読み取った該第二のバーコードに対応したオーダ内容の識別情報が前記患者識別情報に対応するか否かについての判定結果を、表示部に表示させる』ことに相当する。
(ク)引用発明の個人情報端末装置(PDA101)は、上記(オ)から(キ)のとおり、本件発明でいうところの“バーコード情報を読み取る読取部”といえる「患者ID受付け部301」及び「オーダID受付け部302」を遷移させ、判定結果を表示部に表示させるものである。
してみると、引用発明の個人情報端末装置(PDA101)は、本件発明でいうところの『患者を識別する患者識別情報に対応した第一のバーコードに基づく該患者の認証が成功した場合に、読取部を、第二のバーコードを検出して読み取るサーチモードに遷移させ、前記第二のバーコードを読み取った場合に、読み取った該第二のバーコードに対応したオーダ内容の識別情報が前記患者識別情報に対応するか否かについての判定結果を、表示部に表示させる』ような制御を行うための『制御部』に対応する構成を有することは明らかである。
(ケ)したがって、本件発明と引用発明とは、
「バーコード情報を読み取る読取部と、
患者を識別する患者識別情報に対応した第一のバーコードに基づく該患者の認証が成功した場合に、前記読取部を、第二のバーコードを検出して読み取るサーチモードに遷移させ、前記第二のバーコードを読み取った場合に、読み取った該第二のバーコードに対応したオーダ内容の識別情報が前記患者識別情報に対応するか否かについての判定結果を、表示部に表示させる制御部と
を有することを特徴とする端末装置。」
で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1]
本件発明は、読取部について『カメラのフォーカスを制御してバーコード情報を自動的に検出して読み取るサーチモードを実行する』なる限定が付されているのに対し、引用発明は、バーコード情報の読み取りを行うものの、その際、カメラのフォーカスを制御してバーコード情報を自動的に検出して読み取るサーチモードを実行するか否か不明である点。
[相違点2]
本件発明は、『患者を識別する患者識別情報に対応した第一のバーコードに基づく該患者の認証が成功した場合に、前記読取部を、第二のバーコードを検出して読み取るサーチモードに自動的に遷移させ』るのに対し、引用発明は、患者IDのバーコードを読み取り、患者情報を検索した後、オーダ番号(オーダID)のバーコードを読み取る状態に遷移するが、自動的に遷移するか否か不明である点。
第6 判断
1 相違点1について
「第4 引用発明 4 引用文献3の記載」で言及したように、「携帯電話機のカメラ部が、自動的に、対象物に付与されているバーコードへ焦点を合わせて、そのデジタルコードを読み取り、その中から付加情報を検出する」ことは、本件特許出願の出願前に周知の技術であり、前記「携帯端末のカメラ部が自動的にバーコードへ焦点を合わせて、その情報を読み取ること」は本件発明の「カメラのフォーカスを制御してバーコード情報を自動的に検出して読み取る」ことにほかならない。
そして、本件発明でいうところの「サーチモード」とは、本件特許出願に係る明細書の段落【0042】、【0049】及び【0050】の記載を参酌するに、バーコードが読取可能な待ち受け状態を意味すると解されるが、上記周知の技術においても、引用発明においても、「携帯端末のカメラ部が自動的にバーコードへ焦点を合わせて、その情報を読み取る」ために、バーコードが読取可能な待ち受け状態になることは自明である。
してみると、バーコードの読み取りを行う個人情報端末装置(PDA101)の発明である引用発明に、当該周知の技術を適用し、カメラのフォーカスを制御してバーコード情報を自動的に検出して読み取るサーチモードを実行するようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
2 相違点2について
引用文献2に記載されているように、「携帯端末に患者入力画面が表示された後、携帯端末に接続したバーコードリーダで、患者に装着したリストバンド又はベッドサイドに取り付けたラベルのバーコードを読み込むことにより、選択された患者情報が表示され、所定時間経過すると、薬品入力画面に切り替わり、処方札のバーコードを読み込むことにより薬品情報が表示される」ように制御すること、すなわち、患者の情報の入力完了後、所定時間の経過を条件として、自動的に、薬品の情報を入力できる状態に遷移するように制御することは、本件特許出願の出願前に公知の技術である。
ここで、引用発明と当該公知の技術は、いずれも患者と医薬品との対応付けを管理する技術分野に関するものであり、更に、バーコードの読み込みにより、当該患者の情報と当該医薬品の情報を連続して入力する点においても共通している。
そして、引用発明において、患者の情報の入力完了後、所定時間の経過を条件として、自動的に、薬品の情報を入力できる状態に遷移するような制御を適用するに当たって、それを阻害するような要因も見当たらない。
また、請求人は、審判請求書において「看護師が端末を操作しバーコードを読み取らせる場合に、端末がバーコードを読み取り可能な状態にするために、その都度端末への操作を必要とすると、看護師は、手を衛生的に保たなければならないにも関わらず、必要以上に端末の操作を強いられることに」なる旨主張しており、この主張についても検討すると、引用文献1には、患者IDの読取り(図9の814)の後のオーダIDの読取り(図10のS817)が「看護師の操作により」なされる旨が示されている(段落【0062】)ものの、この「看護師の操作」は、看護師の手を衛生的に保つことを難しくするような端末に対する操作を必ずしも意味するものではなく、仮に、引用文献1における上記の「看護師の操作」が患者本人であることの確認のためのものであると解しても、当該公知の技術における所定時間もこのような確認のために十分な時間が設定されることになるから、引用発明に当該公知の技術を適用する際の阻害要因にならない。
したがって、引用発明に当該公知の技術を適用して、患者を識別する患者識別情報に対応した第一のバーコードに基づく該患者の認証が成功した場合に、利用者の操作を介することなく、読取部を、第二のバーコードを検出して読み取るサーチモードに自動的に遷移させるように制御することは、当業者が容易に想到し得たことである。
第7 審判請求書及び平成30年5月8日提出の意見書の主張について
(ア)審判請求人は、審判請求書及び平成30年5月8日に提出した意見書において、概ね以下のような事項を主張している(以下、「主張」という。)。
「引用文献1及び2には、「患者を識別する患者識別情報に対応した第一のバーコードに基づく該患者の認証が成功した場合に、前記読取部を、第二のバーコードを検出して読み取るサーチモードに自動的に遷移させ」についての開示も示唆もありません。」
(イ)審判請求人による上記主張について検討する。
上記第5の(オ)で検討したとおり、引用発明は「患者を識別する患者識別情報に対応した第一のバーコードに基づく該患者の認証が成功した場合に、読取部を、第二のバーコードを検出して読み取るサーチモードに遷移」させる構成を有し、また、上記第6の2で検討したとおり、引用発明に公知の技術を適用して、第二のバーコードを検出して読み取るサーチモードに自動的に遷移させるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
また、審判請求人が主張する本件発明の構成は、引用発明及び引用文献2に記載された事項に比して、格別の効果を奏するものでもない。
したがって、審判請求人による上記主張は採用できない。
第8 むすび
以上のとおり、本件発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された事項及び引用文献3に記載された周知の技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
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2017-006167