特許拒絶査定不服審判
2017-003283
新規なグルコース脱水素酵素
- 審判番号
- 2017-003283
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2011-222278外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年03月06日
- 審決日
- 2017年04月24日
- 公報発行日
- 2017年07月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】東洋紡株式会社
- 【請求人代理人】特許業務法人三枝国際特許事務所
- 分類
- P18 .536-Z (C12N) / P18 .537-Z (C12N)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条4項1号特許法36条6項1号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2011-222278「新規なグルコース脱水素酵素」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 5月 9日出願公開、特開2013- 81399〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
1 手続の経緯
本願は、平成23年10月6日の出願であって、平成28年5月30日付け拒絶理由通知に応答して平成28年8月4日に意見書が提出されたが、平成28年11月29日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成29年3月6日に拒絶査定不服審判請求がなされたものである。
2 本願発明
本願の請求項1~10に係る発明は、出願当初の特許請求の範囲の請求項1~10に記載された事項により特定されるものであり、そのうち請求項1に係る発明は、次のとおりのものである。
「【請求項1】 以下の特性(1)及び(2)を備えるフラビン結合型グルコース脱水素酵素。
(1)分子量: SDS-ポリアクリルアミド電気泳動で測定した該酵素のポリペプチド部分の分子量が約88kDaである。
(2)基質特異性: D-グルコースに対する反応性を100%としたときのD-キシロースに対する反応性が1.3%以下である。」(以下、「本願発明」という。)
3 拒絶査定の理由
拒絶査定の理由である、平成28年5月30日付け拒絶理由通知の理由1及び2は、概略、次のとおりのものである。
(1)理由1
本願発明に係るフラビン結合型グルコース脱水素酵素は、任意の生物に由来するものを包含するところ、発明の詳細な説明に具体的に記載されているのは、Mucor guilliermondii由来のもののみである。
同じ反応を触媒するポリペプチドであっても由来の違いによりその他の特性は異なるという本願出願時の技術常識に照らせば、発明の詳細な説明に記載された内容を本願発明全体にまで拡張ないし一般化することはできないから、本願発明は発明の詳細な説明に記載したものとはいえず、本願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
(2)理由2
発明の詳細な説明の記載及び本願出願時の技術常識を参酌しても、本願発明のうちMucor guilliermondii由来以外のものを取得することは、当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤や複雑高度な実験等を必要とするものであるから、本願は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
4 当審の判断
(1)発明の詳細な説明の記載内容
発明の詳細な説明には、次の内容が記載されている。
ア 発明が解決しようとする課題
「本発明は、さらに優れた特性(例えば、D-キシロースに対する反応性が低い)を備えた新たなグルコース脱水素酵素及びそれを利用したセンサ等を提供することを課題とする。また、本発明者等は、より実用的なSMBG用グルコースセンサの提供について日夜検討を重ねた結果、よりグルコースに対する親和性の高い酵素(即ち、Km値の小さい酵素)を利用することにより、測定時間を短縮し、且つ、少量の酵素の使用で正確な血糖値測定が可能になるという課題を見出した。」(段落【0008】)
イ 課題を解決するための手段
「このような課題を解決すべく本発明者等は鋭意研究を重ね、Mucor guilliermondiiに属する菌株から基質特異性及び基質との親和性に優れたGDHを精製することに成功した。係る知見に基づき、本発明者等は更なる検討と改良を積み重ね、本発明を完成するに至った。」(段落【0009】)
ウ 発明の効果
「本発明のフラビン結合型グルコース脱水素酵素(以下、「FGDH」とも称する。)は基質特異性に優れる。即ち、本発明のFGDHは、D-キシロース、D-ガラクトース及びマルトースに対する反応性が有意に低いため、試料中にD-グルコースと前記糖類の1種又は2種以上が共存する場合であってもグルコース量又は濃度を正確に測定することを可能にする。また、本発明のFGDHは、D-グルコースとの親和性が高い(即ち、D-グルコースに対するKm値が有意に低い)ため、より少ない酵素量で試料中のD-グルコース濃度をより短時間で測定することを可能にする。」(段落【0011】)
エ 発明を実施するための形態
「1-1.グルコースデヒドロゲナーゼ活性
フラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼとは、電子受容体存在下でグルコースの水酸基を酸化してグルコノ-δ-ラクトンを生成する反応を触媒する理化学的性質を有する酵素である。本書においては、この酵素活性をグルコースデヒドロゲナーゼ活性といい、特に断りが無い限り、「酵素活性」又は「活性」とは、当該酵素活性を意味する。・・・より具体的には、下記の試薬及び測定条件を用いて活性を測定することができる。・・・」(段落【0014】~【0015】)
「1-2.分子量
本発明のFGDHを構成するポリペプチド部分の分子量は、SDS-PAGEで測定した場合に約88kDaである。「約88kDa」とは、SDS-PAGEで分子量を測定した際に、当業者が、通常88kDaの位置にバンドがあると判断する範囲を含むことを意味する。「ポリペプチド部分」とは、実質的に糖鎖が結合していない状態のFGDHを意味する。・・・
SDS-PAGEでの分子量の測定は、一般的な手法及び装置を用い、市販される分子量マーカーを用いて行うことができる。」(段落【0021】~【0023】)
「1-3.基質特異性
本発明のFGDHは、基質特異性に優れている。特に、本発明のFGDHは、D-グルコースに対する反応性を基準とした場合に、少なくともD-キシロース、D-ガラクトース及びマルトースに対する反応性が有意に低い。・・・
FGDHの各糖類に対する反応性は、上記1-1.に示すグルコースデヒドロゲナーゼ活性の測定方法において、D-グルコースを他の糖(例えば、D-キシロース、D-ガラクトース、又はマルトース)に置き換えて、D-グルコースの場合の活性を比較することにより求めることができる。但し、比較する場合の各糖類の濃度は50mMである。」(段落【0024】~【0027】)
「1-9.由来
本発明のFGDHは、上述する特性を備える限り、その由来は特に制限されないが、例えば、ケカビ科に分類される微生物、より具体的にはムコール(Mucor)属、Absidia属、及びActinomucor属に分類される微生物に由来するものを例示することができる。更に具体的には、Mucor guilliermondii、Mucor prainii、Mucor javanicus、及びMucor circinelloidesに帰属する微生物に由来するものを例示することができる。より更に具体的には、Mucor guilliermondii NBRC9403に由来するものを例示することができる。Mucor guilliermondii NBRC9403を含む多くのMucor属に属する微生物は、NBRC(NITE Biological Resource Center)(独立行政法人製品評価技術基盤機構 バイオテクノロジー本部 生物遺伝資源部門)に保管された菌株であり、所定の手続を経ることによってその分譲を受けることができる。また、土壌や河川・湖沼などの水系又は海洋に存在する微生物や各種動植物の表面または内部に常在する微生物などを単離源することができる。低温環境、火山などの高温環境、深海などの無酸素・高圧・無光環境、油田など特殊な環境に生育する微生物を単離源としてもよい。」(段落【0035】)
「2.FGDHの製造方法
本発明のFGDHの製造方法は、本発明のFGDHの取得が可能である限り特に制限されず、本発明のFGDHを産生する微生物を培養して、その培養上清又は菌体内から各種の精製を実施することにより製造することができる。本発明のFGDHの代表例は、後述する実施例に示す通り、ムコール(Mucor)属に分類される微生物から単離された。よって、本発明のFGDHは、例えば、ケカビ科に分類される微生物、より具体的には、Mucor属、Absidia属、Actinomucor属等)に属する微生物、更に具体的にはMucor guilliermondii、Mucor prainii、Mucor javanicus、Mucor circinelloides等に属する微生物、より更に具体的には、Mucor guilliermondii NBRC9403から単離することにより製造することができる。・・・
本発明のFGDHの微生物からの単離は、後述する実施例を参考に、常法に従って実施することができる。培養物中のFGDHを生産する菌体を含む培養液をそのまま採取し、それをFGDHとして利用することもできるが、一般には、常法に従って、FGDHが培養液中に存在する場合はろ過、遠心分離などにより、FGDH含有溶液と微生物菌体とを分離した後に利用される。FGDHが菌体内に存在する場合には、得られた培養物からろ過または遠心分離などの手段により菌体を採取し、次いで、この菌体を機械的方法またはリゾチームなどの酵素的方法で破壊し、また、必要に応じて、EDTA等のキレート剤及び界面活性剤を添加してFGDHを可溶化し、水溶液として分離採取することができる。
上記のようにして得られたFGDH含有溶液を、例えば減圧濃縮、膜濃縮、さらに硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウムなどの塩析処理、あるいは親水性有機溶媒、例えばメタノール、エタノール、アセトンなどによる分別沈殿法により沈殿せしめればよい。また、加熱処理や等電点処理も有効な精製手段である。その後、吸着剤あるいはゲルろ過剤などによるゲルろ過、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィーを行うことにより、精製されたFGDHを得ることができる。
例えば、セファデックス(Sephadex)ゲル(GEヘルスケア バイオサイエンス社製)などによるゲルろ過、DEAEセファロースCL-6B (GEヘルスケア バイオサイエンス社製)、オクチルセファロースCL-6B (GEヘルスケア バイオサイエンス社製)等のカラムクロマトグラフィーにより分離、精製し、精製酵素標品を得ることができる。該精製酵素標品は、電気泳動(SDS-PAGE)的に単一のバンドを示す程度に純化されていることが好ましい。
なお、培養液からのFGDH酵素活性を有するタンパク質の採取(抽出、精製など)にあたっては、FGDH酵素活性、マルトース反応性、熱安定性等上記1.に示した特性を指標に実施することができる。」(段落【0036】~【0043】)
オ 実施例
「[実施例4] Mucor guilliermondii NBRC9403由来FGDHの精製
50mLのDP液体培地を500mL容量の坂口フラスコに入れ、オートクレーブで滅菌し、前培養用の培地とした。そこに実施例1で復元したMucor guilliermondii NBRC9403を一白金耳植菌し、25℃、180rpmで3日間振とう培養し、種培養液を得た。次に、6.0Lの生産培地(イーストイクストラクト 2.0%、グルコース 1%、pH6.0)を10L容量のジャーファーメンターに入れ、オートクレーブで滅菌し、本培養培地を調整した。そこに50mLの種培養液を植菌し、培養温度25℃、攪拌速度600rpm、通気量2.0L/分、管内圧0.2MPaの条件で3日間培養した。その後、培養液をろ布でろ過し、菌体を回収した。得られた菌体を50mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)に懸濁した。
懸濁液をフレンチプレス(Niro Soavi製)に流速160mL/分で送液し、1000~1300barで破砕した。続いて、破砕液に硫酸アンモニウム(住友化学(株)製)を0.4飽和になるように徐々に添加して、室温で30分間攪拌した後、ろ過助剤(昭和化学工業(株))を用いて懸濁物質を除去し、清澄な濾液を得た。次に分画分子量10,000のUF膜(ミリポア(株)製)を用いて濃縮し、濃縮液をSephadex G-25 のゲルを用いて脱塩した。その後、脱塩液に0.5飽和になるように硫酸アンモニウムを徐々に添加し、予め0.5飽和の硫酸アンモニウムを含む50mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)で平衡化した400mLのSPセファロースFastFlow(GEヘルスケア製)カラムにかけ、50mMリン酸緩衝液(pH6.0)のリニアグラジエントで溶出させた。そして、溶出されたGDH画分を分画分子量10,000の中空糸膜(スペクトラムラボラトリーズ製)で濃縮後、濃縮液をSephadex G-25 のゲルを用いて脱塩した。その後、DEAEセファロースFast Flow(GEヘルスケア製)カラムにかけ、精製酵素を得た。」(段落【0056】~【0057】)
「[実施例6]酵素のペプチド部分の分子量
実施例4で精製したFGDH酵素を100℃、10分間、加熱処理して変性させた後、5UのN-グリコシダーゼF(ロシュ・ダイアグノスティクス製)で37℃、6時間処理し、タンパク質に付加している糖鎖を分解した。その後、実施例5と同様にSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動法で測定を行った。タンパク質分子量マーカーの移動度より分子量は約88,000ダルトンであった。」(段落【0061】)
「[実施例7]基質特異性
実施例4で精製したFGDH酵素について、上記1-1.に示すGDHの活性測定法に従い、基質としてD-グルコースを用いたときの活性と、比較対象の糖を用いたときの見かけの活性とを比較することにより、基質特異性を調査した。比較対象の糖としてはマルトース、D-ガラクトース、D-キシロースをそれぞれ使用した。基質濃度50mM、pH6.5、37℃の条件で測定した。結果を表2に示す。
【表2】
その結果、本発明のFGDHの基質特異性は、D-グルコースに対する活性値を100%とした場合、マルトース、D-ガラクトース、D-キシロースに対する見かけの活性は、いずれも3%以下であることが示された。」(段落【0062】~【0064】)
「[実施例13]フラビン結合型酵素であることの確認
実施例4で精製した酵素を10mM 酢酸緩衝液(pH5.0)で透析し、250-800nmにおける吸収スペクトルを分光光度計U-3210(日立ハイテクノロジーズ社製)により測定した。その結果、波長340~350nm付近および波長420~430nm付近に極大を示す2つのピークが確認された。このような吸収スペクトルの形状から、本発明のGDHがフラビン結合型タンパク質であることが強く示唆された。」(段落【0074】)
(2)理由1(特許法第36条第6項第1号違反)について
本願発明は、上記2のとおりのものであって、特定された分子量及び基質特異性を満たす限り、あらゆる生物に由来する野生型酵素、それらに基づく改変酵素や人工的に設計された酵素など多種多様な構造のフラビン結合型グルコース脱水素酵素を包含するものである。
それに対して、発明の詳細な説明には、唯一の具体物として実施例のMucor guilliermondii NBRC9403由来グルコース脱水素酵素が記載されているものの(上記(1)オ)、それ以外については、例えばケカビ科(Mucor属、Absidia属、Actinomucor属等)に属する微生物から、実施例を参考に常法に従って単離できる旨が一般的に記載されるにとどまっている(上記(1)エ)。
本願出願日当時、Aspergillus属、Penicillium属、Mucor属といった分類学的に多岐にわたる微生物がフラビン結合型グルコース脱水素酵素を有することが広く知られていたこと(例えば、国際公開第2010/140431号、国際公開第2011/068050号)に照らせば、由来が特定されていない本願発明には、少なくとも、多様な属の微生物に由来するフラビン結合型グルコース脱水素酵素やその変異体が包含されると考えられる。一方、同じ反応を触媒する酵素であっても、由来生物が異なれば化学構造が異なり、その結果、分子量や基質特異性、その他の特性が異なることが通常であって、近縁な微生物の間でさえ基質特異性まで類似しているとは限らないというのが本願出願日当時の技術常識であった。例えば、国際公開第2010/140431号(特に、表3)には、Mucor属の3つの種、M.prainii、M.javanicus、及びM.circinelloidesに由来するフラビン結合型グルコース脱水素酵素が基質特異性(キシロースに対する反応性等)の点で異なることが記載されているとおりである。また、アミノ酸残基の置換等の変異により特性が変化することも技術常識であり、例えば、国際公開第2011/034108号(特に、表5~8、10~17)に、アスペルギルス・オリゼ由来フラビン結合型グルコース脱水素酵素の1アミノ酸置換体が基の酵素とは異なる基質特異性(キシロースに対する反応性)を有することが記載されているとおりである。
このような技術常識を参酌すると、たとえ実施例の単離源と近縁なMucor属微生物から実施例を参考に常法にしたがってフラビン結合型グルコース脱水素酵素を単離したり、実施例の酵素に変異を加えたとしても、必ずしも本願発明が特定する分子量及び基質特異性を兼ね備えた酵素を取得できるとはいえないと考えるべきである。実際、発明の詳細な説明には、本願発明に係るフラビン結合型グルコース脱水素酵素の単離源としてM.prainii、M.javanicus、及びM.circinelloidesが例示されているところ(上記(1)エの「1-9.由来」、「2.FGDHの製造方法」)、国際公開第2010/140431号には、それら3種由来のフラビン結合型グルコース脱水素酵素は、SDS-ポリアクリルアミド電気泳動で測定したポリペプチド部分の分子量がいずれも約80kDaであること、D-グルコースに対する反応性を100%としたときのD-キシロースに対する反応性が、それぞれ1.53%、1.43%及び2.00%であることが記載されており、いずれの酵素も分子量及び基質特異性が本願発明で特定する範囲外であることから、発明の詳細な説明の記載にしたがって、例示されたMucor属微生物からフラビン結合型グルコース脱水素酵素を単離しても本願発明に至らない場合があるといえる。まして、実施例のMucor guilliermondii NBRC9403と分類学的にさらに遠い微生物を単離源とした場合にはなおさらである。
以上によれば、本願出願日当時の技術常識に照らしても、発明の詳細な説明に開示されたMucor guilliermondii NBRC9403由来グルコース脱水素酵素に関する内容を、本願発明の範囲にまで拡張ないし一般化できるとは認めることができない。
(3)理由2(特許法第36条第4項第1号違反)について
上記(2)の判断をふまえれば、発明の詳細な説明は、本願発明のうちMucor guilliermondii NBRC9403に由来するもの以外について、当業者が作ることができる程度に記載したものとは認めることができない。
(4)請求人の主張について
請求人は、平成28年8月4日付け意見書及び平成29年3月6日付け審判請求書において、次の点を主張する。
ア 発明の詳細な説明には、Mucor guilliermondii NBRC9403から本願発明に係る酵素を取得したことが開示されており、この菌株は独立行政法人製品評価技術基盤機構 に寄託されているのだから、当業者であれば、当該菌株を入手し、本願発明の分子量及び基質特異性を満たすフラビン結合型グルコース脱水素酵素を容易に取得することができる。
イ 当業者であれば、上述のようにして取得したフラビン結合型グルコース脱水素酵素のアミノ酸配列を同定し、それと他の公知のフラビン結合型グルコース脱水素酵素のアミノ酸配列とを比較等することにより、当該理化学的特性の維持に必要と考えられるアミノ酸配列を推測することが可能であり、それ以外のアミノ酸残基に変異を加えることにより、本願発明のうちMucor guilliermondi NBRC9403由来以外のものを取得することが可能である。
まず、上記主張アは、実施例の再現性を説明するものにすぎないから、上記理由1及び2の判断を左右することはない。
また、上記主張イについては、発明の詳細な説明には、実施例のMucor guilliermondi NBRC9403由来フラビン結合型グルコース脱水素酵素のアミノ酸配列についても、それ以外の公知のフラビン結合型グルコース脱水素酵素のアミノ酸配列についても何ら記載されていないうえ、それらを比較して得た情報に基づいて前者のアミノ酸残基に変異を加えて本願発明に係る酵素を取得するという技術思想さえ記載がない。異なる生物種由来の酵素のアミノ酸配列を比較して得た情報に基づいて所望の特性を有する酵素変異体を作成することは、通常、相当程度の創作能力を必要とすることであるから、上記主張イは、技術常識を考慮しても、発明の詳細な説明の開示を大きく逸脱するものといえ、採用の限りではない。
5 むすび
以上のとおり、本願は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、特許請求の範囲の記載が同法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2017-003283