特許拒絶査定不服審判
2017-003102
キメラスパイダーシルクおよびその使用
- 審判番号
- 2017-003102
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2013-530432外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年03月01日
- 審決日
- 2018年10月29日
- 公報発行日
- 2019年05月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ザ ユニバーシティー オブ ノートルダム
- 【請求人代理人】特許業務法人北青山インターナショナル
- 分類
- P18 .537-WZ (C12N) / P18 .121-WZ (C12N)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項特許法36条6項2号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2013-530432「キメラスパイダーシルクおよびその使用」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 4月19日国際公開、WO2012/050919、平成26年 1月30日国内公表、特表2014-502140〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯、本願発明
本願は、平成23年9月28日(パリ条約による優先権主張 平成22年9月28日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成29年3月1日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、平成29年12月18日付けで当審より拒絶理由が通知され、これに対して平成30年6月19日に意見書および同日付の手続補正書が提出されたものである。
この出願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成30年6月19日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載される以下のとおりのものと認める。
「【請求項1】
キメラスパイダーシルクポリペプチドをコードする核酸であって、
前記キメラスパイダーシルクポリペプチドがN末端からC末端方向に
(a)カイコガ(Bombyx mori)のフィブロイン重鎖(fhc)シルクポリペプチドのN末端ドメイン(NTD)、
(b)1つ又は複数のスパイダーシルクモチーフを含む1つ又は複数の反復セグメントであって、各反復セグメントが、N末端からC末端方向に1つ又は複数のコピーの弾性モチーフ(E)、任意的なリンカー(L)および1つ又は複数のコピーの強度モチーフ(S)を含む反復セグメント、
(c)カイコガ(Bombyx mori)のfhcシルクポリペプチドのC末端ドメイン(CTD)
を含み、
前記弾性モチーフが1つ又は複数の鞭毛状様(Flag様)モチーフ、大スピドロイン様(MaSp様)モチーフ、又は小スピドロイン様(MiSp様)モチーフを含み、
前記1つ又は複数のMaSp様モチーフが1つ又は複数のMaSp1モチーフ又はMaSp2モチーフを含み、
前記鞭毛状様弾性モチーフが、配列番号27乃至29からなる群から選択されるコンセンサス配列中の反復アミノ酸モチーフであり、
前記MaSp様弾性モチーフが、配列番号18乃至23からなる群から選択されるコンセンサス配列中の反復アミノ酸モチーフであり、
前記MiSp様弾性モチーフが、配列番号24乃至26からなる群から選択されるコンセンサス配列中の反復アミノ酸モチーフである
ことを特徴とする核酸。」
第2 平成29年12月18日付けの当審拒絶理由
当審拒絶理由は、この出願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないという理由(B)、および、この出願の請求項1に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された引用例2、5に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないという理由(L)を含むものである。
第3 特許法第36条第6項第2号に規定する要件(明確性要件)について
1.本願明細書等の記載
本願の図面には、以下の図1~図3が記載されている。
「
」
また、本願明細書には、図1~図3に関して以下の事項が記載されている。
「【0025】
【図1】図1は、多岐にわたるコガネグモ類または派生コガネグモ類に由来する2つの大瓶状シルクタンパク質のアミノ酸配列(出現順にそれぞれ配列番号18~23)を示す(Gatesy,et al.2001)。比較すると、特に上記の配列モチーフ内に、高レベルの配列保存が示され、この配列保存は、これらの種が互いから分岐して以来、1億2500万年にわたって維持されてきた。種々のコガネグモ種における大瓶状シルクタンパク質のコンセンサス反復アミノ酸配列(-)は他の配列と比較されたときにアミノ酸が存在しないことを示す。クモは次のとおりである:Nep.cは、ジョロウグモ(Nephila clavipes);Lat.gは、ハイイロゴケグモ(Lactrodectus geometricus);Arg.tは、シマニワオニグモ(Argiope trifasciata)。
【図2】図2は、コガネグモに由来する小瓶状シルクタンパク質のコンセンサスアミノ酸配列(出現順にそれぞれ配列番号24~26)を示す。最初の大瓶状シルクタンパク質配列が公表された直後に、ジョロウグモ(N.clavipes)由来の小瓶状シルク(Mi)タンパク質転写物を表わすcDNAが単離されて、配列決定された(Colgin and Lewis,1998)。この図に示されるMiSp配列には、MaSpタンパク質に対して、類似の配列および著しく異なる配列がある。MiSpにはGGXおよび短いpolyAla配列が含まれるが、MaSp中のより長いpolyAlaモチーフは、(GA)n反復に置き換えられている。コンセンサス反復は類似の構成を有するが、GGXおよびGAの数はかなり異なる。
【図3】図3は、鞭毛状シルクタンパク質cDNAコンセンサス配列(出現順にそれぞれ配列番号27~29)を示す。これらのシルクタンパク質cDNAは、ジョロウグモ(N.clavipes)の鞭毛状腺由来の捕獲用らせん状シルクタンパク質をコードする(図3;Hayashi and Lewis,2000)。これらのcDNAは、5’非翻訳領域および分泌シグナルペプチド、5個アミノ酸モチーフの数多くの反復、ならびにC末端をコードする配列を含有していた。ノーザンブロッティング分析は、ほぼ500Kdのタンパク質をコードする、大きさが約15kbのmRNAを示した。遺伝子配列から予測されるアミノ酸配列は、スパイダーシルクの弾性の物理的基礎の説明に役立つ、タンパク質構造のモデルを示唆し、これは、MaSp2の性質とも一致する(本明細書でさらに説明される)。」
さらに、本願明細書の表5には、配列番号18~23はMaSp様タンパク質のアミノ酸配列であり、配列番号24~26はMiSp様タンパク質のアミノ酸配列であり、配列番号27~29はFlag様タンパク質のアミノ酸配列であることが示され、本願明細書の配列表には、これらの配列番号のアミノ酸配列が示されている。
2.当審の判断
(1)本願発明に特定される『弾性モチーフ(E)』
本願発明はキメラスパイダーシルクポリペプチドをコードする核酸に関し、本願発明には、該ポリペプチドが『弾性モチーフ(E)』を含むものであり、該『弾性モチーフ(E)』は「鞭毛状様(Flag様)モチーフ、大スピドロイン様(MaSp様)モチーフ、又は小スピドロイン様(MiSp様)モチーフ」を含み、さらに、
「前記鞭毛状様弾性モチーフが、配列番号27乃至29からなる群から選択されるコンセンサス配列中の反復アミノ酸モチーフであり、
前記MaSp様弾性モチーフが、配列番号18乃至23からなる群から選択されるコンセンサス配列中の反復アミノ酸モチーフであり、
前記MiSp様弾性モチーフが、配列番号24乃至26からなる群から選択されるコンセンサス配列中の反復アミノ酸モチーフである」ことが特定されている。
したがって、本願発明においては、
(A)配列番号27~29から選択されるアミノ酸配列中の反復アミノ酸モチーフであって、Flag様弾性モチーフである、『弾性モチーフ』、
(B)配列番号18~23から選択されるアミノ酸配列中の反復アミノ酸モチーフであって、MaSp様弾性モチーフである、『弾性モチーフ』、又は、
(C)配列番号24~26から選択されるアミノ酸配列中の反復アミノ酸モチーフであって、MiSp様弾性モチーフである、『弾性モチーフ』、
のいずれかである『弾性モチーフ(E)』が特定されていると認められる。
(2)本願発明に特定される“反復アミノ酸モチーフ”
上記(1)を踏まえると、本願発明には、
(a)配列番号27~29から選択されるアミノ酸配列中の“反復アミノ酸モチーフ”、
(b)配列番号18~23から選択されるアミノ酸配列中の“反復アミノ酸モチーフ”、又は、
(c)配列番号24~26から選択されるアミノ酸配列中の“反復アミノ酸モチーフ”、
のいずれかである“反復アミノ酸モチーフ”が特定されていると認められる。
(3)『弾性モチーフ(E)』と“反復アミノ酸モチーフ”の明確性
まず、『弾性モチーフ(E)』が上記(1)の(A)である場合の“反復アミノ酸モチーフ”(上記(2)の(a))について検討する。
上記図3に示されているのは鞭毛(Flag)状シルクタンパク質のアミノ酸配列(配列番号27~29)であり、図3の記載から、Nep.c.に由来するFlag様タンパク質(配列番号27)の“反復アミノ酸モチーフ”は[GPGGX]、[GPGGXn]または[GGX]のモチーフの反復であり、Nep.m.に由来するFlag様タンパク質(配列番号28)の“反復アミノ酸モチーフ”は[GPGGX]、[GPGGXn]または[GGX]のモチーフの反復であり、Arg.t.に由来するFlag様タンパク質(配列番号29)の“反復アミノ酸モチーフ”は[GPGGXn]または[GGX]のモチーフの反復であると認められる。
そうすると、図3の記載を参酌すれば、(a)配列番号27~29から選択されるアミノ酸配列中の“反復アミノ酸モチーフ”である、(A)Flag様弾性モチーフである『弾性モチーフ』は、[GPGGX]、[GPGGXn]または[GGX]の反復であると理解することができる。
しかし、『弾性モチーフ(E)』が上記(1)の(B)である場合の“反復アミノ酸モチーフ”(上記(2)の(b))については、上記図1に示された配列番号18~23のアミノ酸配列中には、上記図3のような反復するアミノ酸配列の単位がなく、図1の記載をみても、配列番号18~23のアミノ酸配列中のいずれのアミノ酸配列がMaSp様弾性モチーフの“反復アミノ酸モチーフ”であるか明らかでない。
本願明細書には、「反復アミノ酸」という用語が出てくるMaSp様タンパク質に関する記載として、「種々のコガネグモ種における大瓶状シルクタンパク質のコンセンサス反復アミノ酸配列(-)は他の配列と比較されたときにアミノ酸が存在しないことを示す。」との記載はあるが、この記載や本願明細書の他の記載を参酌しても、MaSp様弾性モチーフである『弾性モチーフ』の“反復アミノ酸モチーフ”が何であるのかは不明である。
そうすると、『弾性モチーフ(E)』が(B)である場合、(b)の“反復アミノ酸モチーフ”がいかなるものであるか理解することはできない。
したがって、本願発明の核酸がコードするポリペプチドは、『弾性モチーフ(E)』がMaSp様弾性モチーフである場合には、“反復アミノ酸モチーフ”がいかなるものであるか不明であるから『弾性モチーフ(E)』も不明であり、キメラスパイダーシルクポリペプチドがそのような不明なモチーフを含むことを特定する本願発明が明確であるとはいえない。
3.審判請求人の主張について
当審の平成29年12月18日付け拒絶理由通知における「図1~3に示された「配列番号27乃至29」、「配列番号18乃至23」、「配列番号24乃至26」をみても、「選択されるコンセンサス配列」や、その中にあるという「反復アミノ酸モチーフ」がいかなるものか、理解することができない」との指摘に対して、審判請求人は平成30年6月19日の意見書において、「MaSp1モチーフおよびMaSp2モチーフは、図1で示されており、段落[0025]の[図3]に関する記載で説明されています。図1のMaSpは大瓶状スパイダーモチーフを指し示し、図2のMiSpは小瓶状スパイダーモチーフを指し示します。MaSp1およびMaSp2は、大瓶状スパイダーモチーフの2つの主要な型を指し、図1の上部および下部のコンセンサス配列において示されています。
よって、請求項1に係る発明は明確なものと思料致します。」と主張している。
審判請求人の図1に大瓶状スパイダーモチーフが示されているとの上記主張の意味するところは必ずしも明らかとはいえないが、この主張は、図1に示された配列番号18~23のポリペプチド全体が“反復アミノ酸モチーフ”である、あるいは、該ポリペプチド全体が『弾性モチーフ』(すなわち“反復アミノ酸モチーフ”)と「強度モチーフ」を含む「反復セグメント」である、と主張していると一応理解して、以下検討する。
本願の請求項1には、
「前記弾性モチーフが1つ又は複数の鞭毛状様(Flag様)モチーフ、大スピドロイン様(MaSp様)モチーフ、又は小スピドロイン様(MiSp様)モチーフを含み、
前記1つ又は複数のMaSp様モチーフが1つ又は複数のMaSp1モチーフ又はMaSp2モチーフを含み、
前記鞭毛状様弾性モチーフが、配列番号27乃至29からなる群から選択されるコンセンサス配列中の反復アミノ酸モチーフであり、
前記MaSp様弾性モチーフが、配列番号18乃至23からなる群から選択されるコンセンサス配列中の反復アミノ酸モチーフであり、
前記MiSp様弾性モチーフが、配列番号24乃至26からなる群から選択されるコンセンサス配列中の反復アミノ酸モチーフである」と特定されている。
すなわち、本願発明に特定されているのは、配列番号18~23のアミノ酸配列中にある“反復アミノ酸モチーフ”の部分がMaSp様弾性モチーフであることであり、配列番号18~23という特定のアミノ酸配列を有するMaSp様タンパク質の全体が“反復アミノ酸モチーフ”あるいは「反復セグメント」であることが本願発明に特定されているわけではない。
そして、審判請求人は上記意見書において、新規事項違反の拒絶理由に対して「請求項に記載の「反復アミノ酸モチーフ」とは、図1、2、3に開示のコンセンサス配列において反復されている短い配列を指し示すものです。」と述べており、この“反復アミノ酸モチーフ”は短い配列の反復である旨の主張は、上記2(3)における図3の記載に基づく当審の理解に沿うものであるといえるが、上記審判請求人の主張とは矛盾するものである。
したがって、審判請求人の上記主張は本願発明の特定に基づくものではなく、失当である。
4.小括
この出願の特許請求の範囲に本願発明が明確に特定されているとはいえない。
第4 特許法第29条第2項(進歩性)について
1.引用例に記載された事項
(1)引用例2
この出願の優先日前に頒布された刊行物である国際公開第2005/068495号(以下「引用例2」という。)には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審が付したものである。
(1-ア) 「特許請求の範囲
1.一対のフィブロインH鎖遺伝子を持つ遺伝子組換えカイコにより作られることを特徴とするクモ糸タンパク質を含む絹糸。
・・・・
4.クモ糸タンパク質がフィブロインH鎖タンパク質に含まれるポリペプチドと融合していることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の絹糸。
5.クモ糸タンパク質が、フィブロインH鎖タンパク質のN端部分とC末端部分の間に挿入されており、C末端部分に含まれるシステインを介してフィブロインL鎖タンパク質とジスルフィド結合していることを特徴とする請求項4に記載の絹糸。」(第31頁)
(1-イ) 「背景技術
強度および耐久性を損なうことなく、軽量かつしなやかさの両方を兼ね備える材料および布についての需要は常に増加しており、クモ糸が数々の所望される特性を有することが示されている。円網を作る種類のクモは、6本の異なる種類の腺組織からシルクを産生することができ、6本の繊維の各々は異なる機械的特性を有することが知られている。Major amullate gland (大嚢状腺)とMinor amullate gland(小嚢状腺)から作り出されるクモ糸(スパイダーシルク)は、牽引糸、ドラグラインと呼ばれている。牽引糸は高い引っ張り強度と高い伸度を示す(非特許文献1 )ことから、幅広い産業用途への展開が期待されている(非特許文献2 )。また、Flagelliform gland (鞭毛状腺)、Aggregate gland (聚状腺)から作られるクモ糸は、一般に横糸となり、粘着性と高い伸度を示す(非特許文献3)。」(第1頁10~21行)
(1-ウ) 「発明の効果
本発明により、強度、伸度及びまたはタフネスが向上するといった、優れた特性を有するクモ糸タンパク質を含む絹糸が得られた。また、該絹糸を用いた織物は、その優れた特性から、産業用途例えば、航空、宇宙用途、被服製造、ロープ、外科手術用縫合糸のような所定の種類の高強度使用のため、ならびに移植術 (例えば、人工靭体もしくは大動脈用包帯)用の生物材料としてさえ適用可能である可能性がある。」(第9頁18~24行)
(1-エ) 「本発明におけるクモ糸タンパク質とは、クモ糸を構成するタンパク質もしくはクモ糸を構成するタンパク質の特徴を持つタンパク質のことである。天然のクモ糸タンパク質と全く同じ配列である必要はなく、人工的にデザイン、合成された タンパク質であっても良い。天然のクモ糸タンパク質は分子量が巨大であることから、天然のクモ糸タンパク質を作る遺伝子も同様に巨大である。効率的に取り扱うためには、遺伝子の短縮、欠失、置換を行うことが望ましい。また、天然のクモ糸タンパク質の持つ特徴的な配列を持つ人工的な類似タンパク質を作るように設計、デザインされた人工的な遺伝子であっても良い。
好ましくは、DP-1B、DP-2A に含まれる少なくともアミノ酸5残基以上の配列を持つタンパク質をクモ糸タンパク質として用いることができる。さらに好ましくは、クモ糸索引糸のもつ強度、伸度といった所望の性質を絹糸に付与するには、主要構成タンパク質である spidroinl のアミノ酸配列を模倣することが望ましい。つまり本発明におけるクモ糸タンパク質は、グリシン、セリン、グルタミン、アラニン、チロシン、ロイシン、アルギニン、イソロイシン、バリンを構成成分とすることが望ましく、さらに好ましくは DP-1B によりコードされる配列番号 1に記載の配列、または「クモ糸タンパク質に特有の反復配列」・「DP- 2A のコンセンサス配列」・「絹糸に特有の反復配列」の順で構成された配列番号2に記載の配列を含むクモ糸タンパク質が用いられる。」(第9頁19行~第10頁9行)
(1-オ) 「本発明における「遺伝子を組換えていない同種カイコにより作られる絹糸と比較して、強度が向上している」とは、クモ糸の持つ所望の性質である高強度性が反映されたことを示す。具体的には絹糸に加重を加え、 破断するまでの破断強度 が向上したことを示す。
・・・・
本発明における「遺伝子を組換えていない同種カイコにより作られる絹糸と比較して、伸度が向上している」とはクモ糸の持つ所望の性質である高伸度性が反映されたことを示す。具体的には絹糸に加重を加え、破断するまでの破断伸度が向上したことを示す。」(第19頁17~第20頁4行)
(1-カ) 「[実施例1]カイコガ(Bombyx mori) のゲノム DNAの調製」(第21頁23行)
(1-キ) 「[実施例2] 遺伝子の調製
用いた遺伝子は既知の配列を利用して、その両端配列のプライマーを作製し、適当な DNA ソースを鋳型として PCRを行うことにより取得した。プライマーの端には後の遺伝子操作のために制限酵素切断部位を付加した。
フィブロインH鎖プロモーター・フィブロインH鎖遺伝子第一エキソン・第一イントロン・第二エキソン領域(GeneBank登録番号 AF226688の塩基番号62118~63513番目:以下 HP領域)は、カイコガのゲノム DNA を鋳型に、プライマー5((配列番号5)とプライマー6 (配列番号6 )の2種類のプライマーを用いた PCRにより取得した。
フィブロインH鎖上流プロモーター・フィブロインH鎖遺伝子第一エキソン・第一イントロン領域(GeneBank 登録番号 AF226688 の塩基番号57444~62927 番目:以下 HUP領域)は、カイコガのゲノム DNAを鋳型に、プライマー7 (配列番号7)とプライマー8 (配列番号8)の2種類のプライマーを用いたPCRにより取得した。
フィブロインH鎖C末端領域遺伝子・フィブロインH鎖ポリAシグナル領域(GeneBank登録番号 AF226688の塩基番号79099~79995番目:以下 HC領域)は、カイコガのゲノム DNA を鋳型に、プライマー9 (配列番号9)とプライマー1 0(配列番号10 )の2種類のプライマーを用いたPCRにより取得した。」(第22頁4~21行)
(1-ク) 「クモ糸遺伝子の取得は、ATCC から以下の株として入手可能である。大腸菌(E. coli) FP3227 6 9 3 2 6 1993年6月15 日、E. coli FP 2193 6 9 3 2 7 1993 年6月15日、E. coli FP 3350 6 9 3 2 8 1993年6月15日。
または、Reviews in Molecular Biology 74 (2000) 105-109やAppl. Microbiol.Biotechnol. 47 (1997) 23-39 に開示されている手法により、人工合成したオリゴヌクレオチドを元に作成することが可能である。すなわち人工合成したオリゴヌクレオチドの両端に、Bglll と BamHI の制限酵素認識部位を、同じフレームになるようデザインし、両者を順次連結することで種々のサイズのクモ糸遺伝子を作製することが可能である。本実施例では配列番号1記載のDP-1B. 33ポリペプチドを4回繰り返したDP4、DP- IB. 33を8回繰り返した DP8、DP-IB. 33を12回繰り返したDP12、DP- IB. 33を16回繰り返したDP16遺伝子断片を作製した。
同様の手法により、配列番号2に記載のポリペプチドをコードするオリゴヌクレオチドを作製し、これを連結することで配列番号2記載のポリべプチドが8回繰り返したタンパク質をコードするプラスミドを構築し、これを Bglll と BamHI で切断し、AEX遺伝子断片を作製した。」(第23頁12~26行)
(1-ケ) 「[実施例3] 遺伝子導入用プラスミドの作製
遺伝子導入用プラスミドには pigA3GFP (Nature Biotechnology 18, 81-84, 200 0) を利用した。すなわち、米国特許第 6218185号に開示されるプラスミド p3E1.2 より transposase をコードする領域を取り除き、その部分に A 3プロモーター(GenBank登録番号 U49854の塩基番号 1764~2595番目) および pEGFP-N1ベクター(Clontech社製)由来のGFPおよび SV40由来ポA付加配列(GenBank登録番号 U55762の塩基番号 659~2578番目)を挿入したベクターが pigA3GFPであり、このベクターは独立行政法人農業生物資源研究所から分与可能である。そのA 3プロモーターの上流側にある XhoI 部位を平滑化しクモ糸タンパク質を含む絹糸を産生するようにデザインされた遺伝子を挿入した。
本実施例における、クモ糸タンパク質を含む絹糸を産生するようにデザインされた遺伝子の構成は、HP・DP16, 12, 8, 4・HCおよび HP・AEX・HC、さらには HUP ・DP8, 4・HCである。」(第23頁27行~第24頁11行)
(2)引用例5
この出願の優先日前に頒布された刊行物であるTeule, F. et al.,J Mater Sci.,2007年,Vol.42,p.8974-8985(以下「引用例5」という。)には、以下の事項が記載されている。なお、英文であるから当審による訳文を記載する。
(2-ア) 「要約 細菌は、鞭毛状弾性モチーフ([GPGGX]4)と主要アンプル絹糸強度モチーフ([リンカー/ポリアラニン])とを組み合わせた基本反復単位からなる2つのスパイダーシルクタンパク質変異体を産生するように遺伝子操作された。提示されたデータは、[GPGGX] 2弾性モチーフおよび温度における5番目および10番目のアミノ酸(X)の性質が、β-シート構造の量に影響を与えることを示唆しているより具体的には、温度上昇は両方のタンパク質のβ-シート形成と正の相関があり、弾性モチーフのX(5番目と10番目)がそれぞれ親水性または疎水性である場合、この状態は不可逆的または可逆的であり、このようなプレアセンブリフィルムから繊維を引っ張ることによって2種類の合成繊維を作ったHFIP中に再溶解された各タンパク質からの紡糸繊維として使用される。機械的データは、引き出された繊維がより良好な繊維構成を示唆する紡糸された繊維よりもはるかに丈夫であることを示している。」(第8974頁 要約)
(2-イ) 「3セットの相補的な合成オリゴヌクレオチド(いずれもおおよそ60bp、電子補足データまたはESM、図1)が設計された(Dr M.B.Hinman):(1)鞭毛状推定弾性エンコードモチーフA1およびY1(それぞれ(GPGGA)4および(GPGGSGPGGY)2をコードする)、(2)ドラグラインシルク推定強度エンコードモチーフS8(リンカー-ポリアラニン:(GGPSGPGS(A)8)をコードする)。」(第8975頁左欄最終段落1~7行)
(2-ウ) 「我々は、鞭毛状シルク様推定弾性モチーフ(A1又はY1)とドラクラインシルク様推定強度モチーフ(S8)をコードする配列を、2つのスパイダーシルク様遺伝子を構築するために用いた。3つの合成スパイダーシルク様配列は、(A1S8)と(Y1S8)の2つ基本的な繰り返しユニットのタイプの構築に使用された。」(第8978頁右欄3~8行)
(2-エ) 「(A1S8)20と(A1S8)20の最終的な合成シルク反復のサイズはいずれも2,300bpであった。」(第8978頁右欄27~29行)
2.引用発明
上記1.(1-ア)、(1-カ)の記載から、引用例2には、クモ糸タンパク質がカイコガ(Bombyx mori)のフィブロインH鎖タンパク質のN端部分とC末端部分の間に挿入されており、クモ糸タンパク質がカイコガ(Bombyx mori)のフィブロインH鎖タンパク質に含まれるポリペプチドと融合している、クモ糸タンパク質とカイコガフィブロインH鎖タンパク質との融合タンパク質が記載されていると認められ、また、この融合タンパク質をコードする遺伝子も記載されていると認められる。
そして、上記1.(1)(1-エ)の「本発明におけるクモ糸タンパク質とは、クモ糸を構成するタンパク質もしくはクモ糸を構成するタンパク質の特徴を持つタンパク質のことである。天然のクモ糸タンパク質と全く同じ配列である必要はなく、人工的にデザイン、合成されたタンパク質であっても良い。」の記載から、引用例2には、「クモ糸タンパク質」として、「天然のクモ糸タンパク質」や「天然のクモ糸タンパク質が持つ特徴的な配列を持つ人工的な類似タンパク質」が記載されていると認められる。
したがって、引用例2には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「クモ糸タンパク質がカイコガ(Bombyx mori)のフィブロインH鎖タンパク質のN端部分とC末端部分の間に挿入されており、クモ糸タンパク質が天然のクモ糸タンパク質が持つ特徴的な配列を持つ人工的な類似タンパク質であり、クモ糸タンパク質がカイコガ(Bombyx mori)のフィブロインH鎖タンパク質に含まれるポリペプチドと融合している、クモ糸タンパク質とカイコガフィブロインH鎖タンパク質との融合タンパク質をコードする遺伝子。」
3.対比
上記第3の2.のとおり、本願発明は「弾性モチーフ(E)」が「鞭毛状様(Flag様)モチーフ」である場合については明確であるといえるから、「弾性モチーフ(E)」が「鞭毛状様(Flag様)モチーフ」である場合(鞭毛状様弾性モチーフが、配列番号27乃至29からなる群から選択されるコンセンサス配列中の反復アミノ酸モチーフである場合)の本願発明と引用発明を対比する。
引用発明の「クモ糸タンパク質とカイコガフィブロインH鎖タンパク質との融合タンパク質」は、本願発明の「キメラスパイダーシルクポリペプチド」に相当し、引用発明の「カイコガ(Bombyx mori)のフィブロインH鎖タンパク質のN端部分」、「C末端部分」は、本願発明の「(a)カイコガ(Bombyx mori)のフィブロイン重鎖(fhc)シルクポリペプチドのN末端ドメイン(NTD)」、「(c)カイコガ(Bombyx mori)のfhcシルクポリペプチドのC末端ドメイン(CTD)」にそれぞれ相当すると認められる。そして、引用発明のクモ糸タンパク質がカイコガ(Bombyx mori)のフィブロインH鎖タンパク質のN端部分とC末端部分の間に挿入されている構造は、本願発明のキメラスパイダーシルクポリペプチドがN末端からC末端方向に(a)、(b)、(c)を含むことに相当すると認められる。
また、上記1.(1)(1-エ)の記載から、引用発明の「天然のクモ糸タンパク質が持つ特徴的な配列を持つ人工的な類似タンパク質」である「クモ糸タンパク質」は、本願発明の「(b)1つ又は複数のスパイダーシルクモチーフを含む1つ又は複数の反復セグメント」と、「スパイダーシルクに由来するポリペプチド」である点で共通すると認められる。
したがって、両者は、
「キメラスパイダーシルクポリペプチドをコードする核酸であって、
前記キメラスパイダーシルクポリペプチドがN末端からC末端方向に
(a)カイコガ(Bombyx mori)のフィブロイン重鎖(fhc)シルクポリペプチドのN末端ドメイン(NTD)、
(b)スパイダーシルクに由来するポリペプチド、
(c)カイコガ(Bombyx mori)のfhcシルクポリペプチドのC末端ドメイン(CTD)
を含むことを特徴とする核酸。」で一致し、以下の点で相違すると認められる。
(相違点)
(b)スパイダーシルクに由来するポリペプチドが、本願発明では「各反復セグメントが、N末端からC末端方向に1つ又は複数のコピーの弾性モチーフ(E)、任意的なリンカー(L)および1つ又は複数のコピーの強度モチーフ(S)を含む」ものであり、「前記弾性モチーフが1つ又は複数の鞭毛状様(Flag様)モチーフ・・・を含み、
・・・・
前記鞭毛状様弾性モチーフが、配列番号27乃至29からなる群から選択されるコンセンサス配列中の反復アミノ酸モチーフ・・・である」のに対して、引用発明では「天然のクモ糸タンパク質が持つ特徴的な配列を持つ人工的な類似タンパク質」である点。
4.当審の判断
(相違点について)
引用発明の「天然のクモ糸タンパク質が持つ特徴的な配列を持つ人工的な類似タンパク質」について、上記(1)(1-ク)のとおり、引用例2の実施例には、「DP16」、「DP12」、「AEX」等が具体的に記載されているが、引用発明の「天然のクモ糸タンパク質が持つ特徴的な配列を持つ人工的な類似タンパク質」は「DP16」、「DP12」、「AEX」等に限定されず、他の「天然のクモ糸タンパク質が持つ特徴的な配列を持つ人工的な類似タンパク質」に該当するものも同様に使用できると考えられる。
そして、上記1.(2)の記載から、引用例5には、鞭毛状シルク様推定弾性モチーフA1:(GPGGA)4と、ドラクラインシルク様推定強度モチーフS8(リンカー-ポリアラニン:(GGPSGPGS(A)8)からなる反復単位(A1S8)を20反復したアミノ酸配列を有する、スパイダーシルクタンパク質変異体(A1S8)20などが記載され、該(A1S8)20の繊維は丈夫であることが示されており、該(A1S8)20は「天然のクモ糸タンパク質が持つ特徴的な配列を持つ人工的な類似タンパク質」に該当するものと認められる。
そうすると、引用発明の「天然のクモ糸タンパク質が持つ特徴的な配列を持つ人工的な類似タンパク質」として引用例5に記載されたスパイダーシルクタンパク質変異体(A1S8)20を用いることは、当業者が容易になし得ることである。
そして、本願の請求項1を引用する請求項3、本願明細書の図3、および実施例3の段落【0069】の記載から、本願発明の「弾性モチーフ(E)」が「鞭毛状様弾性モチーフ」であり、「配列番号27乃至29からなる群から選択されるコンセンサス配列中の反復アミノ酸モチーフ」である場合には、本願発明の「弾性モチーフ(E)」は(GPGGA)である場合を含み、「任意的なリンカー(L)および1つ又は複数のコピーの強度モチーフ(S)」は(GGPSGPGSAAAAAAAA)である場合を含むと認められるところ、引用例5に記載されたスパイダーシルクタンパク質変異体(A1S8)20のA1は(GPGGA)4であり、S8は(GGPSGPGSAAAAAAAA)であるから、スパイダーシルクタンパク質変異体(A1S8)20のA1:(GPGGA)4は本願発明の「弾性モチーフ(E)」に該当し、S8(GGPSGPGSAAAAAAAA) は本願発明の「任意的なリンカー(L)および1つ又は複数のコピーの強度モチーフ(S)」に該当し、(A1S8)の20反復は、本願発明の反復セグメントの反復に該当すると認められる。
すなわち、引用発明の「天然のクモ糸タンパク質が持つ特徴的な配列を持つ人工的な類似タンパク質」として引用例5に記載されたスパイダーシルクタンパク質変異体(A1S8)20を用いたものは、「各反復セグメントが、N末端からC末端方向に1つ又は複数のコピーの弾性モチーフ(E)、任意的なリンカー(L)および1つ又は複数のコピーの強度モチーフ(S)を含む」ものであり、「前記弾性モチーフが1つ又は複数の鞭毛状様(Flag様)モチーフ・・・を含み、
・・・・
前記鞭毛状様弾性モチーフが、配列番号27乃至29からなる群から選択されるコンセンサス配列中の反復アミノ酸モチーフ・・・である」と認められる。
したがって、上記相違点は、引用発明の「天然のクモ糸タンパク質が持つ特徴的な配列を持つ人工的な類似タンパク質」として引用例5に記載されたスパイダーシルクタンパク質変異体(A1S8)20を採用することによりもたらされる事項であるから、当業者が容易になし得ることである。
(本願発明の効果について)
本願明細書の実施例及び図面には、キメラスパイダーシルクポリペプチドをコードする核酸を含むベクターである、図8及び図13に示される「pSL-スパイダー#4」、図9及び図14に示される「pSL-スパイダー#4+GFP」、図10及び図15に示される「pSL-スパイダー#6」、図11及び図16に示される「pSL-スパイダー#6+GFP」というpiggyBacベクターを構築し、これらのベクターを用いてカイコを形質転換したこと、トランスジェニックカイコにキメラスパイダーシルクポリペプチドを産生させたこと、トランスジェニックカイコが産生したキメラスパイダーシルクポリペプチド(スパイダー4、スパイダー6など)の繊維は天然カイコシルク繊維よりも靱性や張力強度に優れていたこと(表2、表3)が示されていると認められる。
そして、段落【0069】の記載から、スパイダー#4、#4+GFPは、A2(推定上の鞭毛状シルク弾性モチーフ(GPGGA)の8コピー)とS8(推定上の牽引糸シルク強度モチーフ[GGPSGPGS(A)8])からなる、(A2S8)単位(反復セグメント)を42個有するキメラスパイダーシルクポリペプチドをコードする核酸を含有するものと認められ、スパイダー#6、#6+GFPは、(A2S8)単位(反復セグメント)を14個有するキメラスパイダーシルクポリペプチドをコードする核酸を含有するものと認められ、実施例で作成された上記キメラスパイダーシルクポリペプチドはいずれも鞭毛状弾性モチーフを含むものと認められる。
そうすると、本願明細書の表2、表3の記載より、(GPGGA)を8コピー有する反復アミノ酸モチーフを鞭毛状シルクに由来する「弾性モチーフ」として含み、[GGPSGPGS(A)8]を「強度モチーフ」として含む、反復セグメントを14~42個程度有するキメラスパイダーシルクポリペプチド(スパイダー4、スパイダー6など)の繊維は、改善された強度や靱性を有していると認められる。
しかし、上記1.の(1)(1-ウ)、(1-オ)のとおり、引用例2には、カイコガのフィブロインH鎖のN末端部分とC末端部分の間にクモ糸タンパク質を挿入して融合タンパク質とすることによって、クモ糸の持つ性質が反映され、カイコガが産生する繊維よりも強度や伸度が向上した繊維を得ることができることが記載されており、引用例5には、スパイダーシルクタンパク質変異体(A1S8)20が丈夫な繊維を与えることが記載されているから、本願明細書及び図面に示された強度や靱性の改善は、引用例2、5の記載から予測し得るものである。
また、本願明細書及び図面に示された上記の強度や靱性の改善は、特定のアミノ酸配列の「弾性モチーフ」を含み、特定の繰り返し数の反復セグメントを有するスパイダー4、スパイダー6などの効果であって、本願発明には「弾性モチーフ」の具体的なアミノ酸配列や反復セグメントの繰り返し数などは特定されていない。そして、タンパク質からなる繊維の強度や靱性などの物性は、該タンパク質を構成するアミノ酸配列に大きく影響を受けると考えられるから、スパイダー4、スパイダー6などが有する「弾性モチーフ」の[GPGGA]単位の反復を8コピーとは異なるコピー数としたり、[GPGGA]単位の反復を[GPGGXn]単位や[GGX]単位の反復とした場合や、反復セグメントの繰り返し数を14~42個と大きく異なる個数とした場合などに、キメラスパイダーシルクポリペプチド繊維の物性がスパイダー4、スパイダー6などの場合と同様になるとはいえない。
さらに、上記1.の(1)(1-イ)に記載されるように、鞭毛状様シルクと、大スピドロイン様シルクや小スピドロイン様シルクとは、機械的性質が異なると認められるから、大スピドロイン様シルクや小スピドロイン様シルクに由来する「弾性モチーフ」を用いたキメラスパイダーシルクが、鞭毛状様シルクに由来する「弾性モチーフ」を用いたキメラスパイダーシルクと同じ機械的性質を示すとはいえない。
そうすると、本願明細書の表2、表3に示された効果を本願発明全体の効果とすることはできない。
したがって、本願発明において格別の効果が奏されたとは認められない。
5.小括
本願発明は、引用例2、5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第5 むすび
以上のとおり、この出願の請求項1に係る発明は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから特許を受けることができず、また、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について言及するまでもなく、この出願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2017-003102