特許異議申立
2016-701069
醤油様調味料
- 審判番号
- 2016-701069
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2015-218516
- 登録番号
- 特許第5920959号(P5920959)
- 請求日
- 2016年11月21日
- 審決日
- 2017年07月11日
- 公報発行日
- 2017年10月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】キッコーマン株式会社
- 【権利者代理人】長谷川 芳樹
- 【権利者代理人】清水 義憲
- 【権利者代理人】坂西 俊明
- 【権利者代理人】吉住 和之
- 【権利者代理人】江守 英太
- 【異議申立人】ヤマサ醤油 株式会社
- 審判長/審判官
- 審判長 紀本 孝
- 審判官 千壽 哲郎
- 審判官 窪田 治彦
- 分類
- P1651.113-YAA(A23L) / P1651.121-YAA(A23L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第113条第2号、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第6項、特許法第126条第5項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5920959号発明「醤油様調味料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第5920959号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3〕について訂正することを認める。
特許第5920959号の請求項1~4に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本件特許第5920959号(以下「本件特許」という。)の請求項1~4に係る特許についての出願は、平成28年4月22日にその特許権の設定登録がされ、その後、特許異議申立人ヤマサ醤油株式会社より特許異議の申立てがされ、平成29年1月12日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成29年3月21日に意見書の提出及び訂正の請求がされ、平成29年4月19日に特許異議申立人より意見書の提出がされた。その後、平成29年5月19日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成29年6月21日に特許権者より意見書の提出がされたものである。
第2 訂正の請求
1 訂正の内容
平成29年3月21日付け訂正請求書による訂正の請求は、「特許第5920959号の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~3について訂正する」ことを求めるものであり、その訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、本件特許に係る願書に添付した特許請求の範囲を、次のように訂正するものである(下線は、訂正箇所を示す)。
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1において、「ただし、原料を塩酸分解したもの、及び鶏肉を原料としたものを除く」との記載を、「ただし、原料を塩酸分解したもの、鶏肉を原料としたもの、魚醤油、及び生揚醤油を除く」との記載に訂正する。
(請求項1を引用する請求項2及び3についても、同様に訂正する。)
2 訂正の適否
(1) 訂正事項1について
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、訂正前の請求項1において、除外される醤油様調味料として記載されている「原料を塩酸分解したもの、及び鶏肉を原料としたもの」に加えて、「魚醤油、及び生揚醤油」を訂正前の請求項1に係る醤油様調味料から除外するものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項1は、上述のとおり訂正前の請求項1において除外される醤油様調味料を追加するためのものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1は、下記の甲第1~4号証に記載された「魚醤油」又は「生揚醤油」との重なりのみを除外するものであり、訂正前の特許明細書等から導かれる技術的事項に何らかの変更を生じさせるものではない。
したがって、訂正事項1は、訂正前の特許明細書等との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないことから、特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。
エ 一群の請求項についてしたものであること
訂正事項1に係る訂正前の請求項1~3は、当該訂正事項1を含む訂正前の請求項1の記載を、請求項2及び3が引用しているものであるから、これらに対応する訂正後の請求項1~3は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項についてしたものである。
3 まとめ
したがって、本件訂正は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項についてしたものであって、同法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とし、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するので、訂正後の請求項〔1~3〕について訂正を認める。
第3 本件特許発明
上記のとおり本件訂正が認められるから、本件特許の請求項1~4に係る発明(以下「本件発明1~4」という。また、これらをまとめて「本件発明」ということもある。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
【請求項1】
α-ケトグルタル酸を0.3mM以上合有する、醤油様調昧料(ただし、原料を塩酸分解したもの、鶏肉を原料としたもの、魚醤油、及び生揚醤油を除く)。
【請求項2】
食塩濃度が9%(w/v)以下である、請求項1に記載の醤油様調味料。
【請求項3】
食塩濃度が5%(w/v)以下である、請求項1に記載の醤油様調味料。
【請求項4】
醤油様調味料(ただし、原料を塩酸分解したもの、及び鶏肉を原料としたものを除く)にα-ケトグルタル酸を0.3mM以上添加することを含む、醤油様調味料にコクを付与する方法。
第4 当審の判断
1 取消理由通知に記載した取消理由について
(1) 取消理由の概要
[理由1]
本件発明1は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物(甲第1~4号証)に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
[理由2]
本件発明1~3は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物(甲第1~6号証)に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<刊行物>
甲第1号証:上田隆蔵,外3名,“しょうゆ中の有機酸含量についての再検討”,調味科学,1971年6月,第18巻,第6号,p32-38
甲第2号証:上田隆蔵,外2名,“醤油有機酸に関する研究(第2報) 醤油及びアミノ酸液中の有機酸組成について”,醗酵工学雑誌,大阪醸造学会,昭和34年3月15日,第37巻,第3号,p99-104
甲第3号証:森本茂美,外2名,“速醸醤油に関する研究 (第7報)アルコール醗酵応用新速醸醤油製造法について 有機酸組成”,醗酵工学雑誌,日本醗酵工学会,昭和42年1月25日,第45巻,第1号,p17-21
甲第4号証:小泉幸道,外4名,“ベトナムの魚醤油と小エビ塩辛ペーストの化学分析について”,日本醸造協会誌,1996年,第91巻,第11号,p828-833
甲第5号証:特開2004-357700号公報
甲第6号証:特開平9-275932号公報
(2) 取消理由についての判断
(2-1) 理由1について
(2-1-1) 甲第1号証記載の発明に基づく新規性
甲第1号証には、α-ケトグルタル酸をそれぞれ5.7及び6.2(mg/100mL)含有する生揚しょうゆ(試料番号31及び38)、並びにα-ケトグルタル酸を6.1(mg/100mL)含有する市販しょうゆ(試料番号43)が記載されている(34頁第2表)。
ここで、α-ケトグルタル酸の分子量は約146.11であることを踏まえ、上記試料番号31及び38の生揚しょうゆ並びに試料番号43の市販しょうゆのα-ケトグルタル酸濃度をmMに換算すると、それぞれ、試料番号31:0.39mM(=5.7÷146.11×1000/100)、試料番号38:0.42mM(=6.2÷146.11×1000/100)、試料番号43:0.42mM(=6.1÷146.11×1000/100)となり、いずれも本件発明1(α-ケトグルタル酸を0.3mM以上合有する)の範囲となるものである。
しかしながら、試料番号31及び38は、生揚しょうゆであり、また、試料番号43の市販しょうゆは、当業者の技術常識を踏まえれば(乙第1号証:野村圀夫、外3名,“しょう油分析法に関する研究(第5報) バニリン-硫酸法によるレブリン酸の比色定量法”,日本農芸化学会誌,1966年,第40巻,第9号,p331左欄2~8行、p334第1表、p335左欄7~21行)、そのレブリン酸の含有量(395.7mg/100mL)からみて、原料を塩酸分解したものと解される。
そうすると、本件発明1は、醤油様調味料のうち、生揚醤油及び原料を塩酸分解したものを除くものであるから、甲第1号証記載の試料番号31及び38の生揚しょうゆ並びに試料番号43の市販しょうゆではない。また、甲第1号証記載の試料番号31、38及び43以外の試料番号のしょうゆは、少なくともα-ケトグルタル酸の合有量が本件発明1の範囲外のものである。
したがって、本件発明1は、甲第1号証記載の発明とはいえない。
(2-1-2) 甲第2号証記載の発明に基づく新規性
甲第2号証には、α-ケトグルタル酸をそれぞれ6.8(mg/100mL)含有する溜生揚A(試料番号7)及びα-ケトグルタル酸を5.8(mg/100mL)含有する市販醤油K(試料番号26)が記載されている(100頁第1表)。
上記(2-1-1)と同様、上記試料番号7の溜生揚A及び試料番号26の市販醤油Kのα-ケトグルタル酸濃度をmMに換算すると、それぞれ、試料番号7:0.47mM、試料番号26:0.40mMとなり、いずれも本件発明1(α-ケトグルタル酸を0.3mM以上合有する)の範囲となるものである。
しかしながら、試料番号7の溜生揚Aは、生揚醤油に含まれるものであり、また、試料番号26の市販醤油Kは、当業者の技術常識を踏まえれば、そのレブリン酸の含有量(425.4mg/100mL)からみて、原料を塩酸分解したものと解される。
そうすると、本件発明1は、醤油様調味料のうち、生揚醤油及び原料を塩酸分解したものを除くものであるから、甲第2号証記載の試料番号7の溜生揚A及び試料番号26の市販醤油Kではない。また、甲第2号証記載の試料番号7及び26以外の試料番号のものは、醤油様調味料に該当しないものであるか、又は、醤油様調味料に該当するものであっても、少なくともα-ケトグルタル酸の合有量が本件発明1の範囲外のものである。
したがって、本件発明1は、甲第2号証記載の発明とはいえない。
(2-1-3) 甲第3号証記載の発明に基づく新規性
甲第3号証には、α-ケトグルタル酸をそれぞれ12.26及び6.89(mg/dL)含有する市販醤油(試料番号1及び2)、α-ケトグルタル酸を5.38(mg/dL)含有する糖液仕込(試料番号4)、α-ケトグルタル酸をそれぞれ4.62及び10.37(mg/dL)含有する普通仕込(試料番号5及び6)、α-ケトグルタル酸をそれぞれ8.08及び6.60(mg/dL)含有するアルコール発酵液仕込(試料番号7及び10)、並びにα-ケトグルタル酸を21.80、14.20及び5.14(mg/dL)含有するアルコール溶液仕込(試料番号12、13及び14)が記載されている(18~20頁、Table1.及び2.)。
上記(2-1-1)と同様、上記試料番号1、2、4~7、10、12~14のα-ケトグルタル酸濃度をmMに換算すると、いずれの試料番号のものも本件発明1(α-ケトグルタル酸を0.3mM以上合有する)の範囲となるものである。
しかしながら、これら試料番号1、2、4、7及び10のものは、当業者の技術常識を踏まえれば(乙第1号証に加え、乙第2号証:森本茂美,“速醸醤油に関する研究(第1報)アルコール醗酵応用新速醸醤油製造法について”,醗酵工学雑誌,日本醗酵工学会,1962年,第40巻,第11号,p539-544、乙第3号証:上野喬宏,“新式醤油に関する研究(第8報)有機酸の分離、定量”,日本農芸化学会誌,1961年,第35巻,第5号,p458-464参照)、原料を塩酸分解したものであることが明らかなもの、あるいは、そのレブリン酸の含有量からみて、原料を塩酸分解したものと解されるものである。また、試料番号4~7、10、12~14は、甲第3号証記載の実験方法やTable1.の記載からみて、火入れ(加熱処理)を行っていないもの、すなわち生揚醤油に該当するものと解される。
そうすると、本件発明1は、醤油様調味料のうち、生揚醤油及び原料を塩酸分解したものを除くものであるから、甲第3号証記載の試料番号1、2、4~7、10、12~14の醤油ではない。また、甲第3号証記載の上記試料番号1、2、4~7、10、12~14以外の試料番号のものは、少なくともα-ケトグルタル酸の合有量が本件発明1の範囲外のものである。
したがって、本件発明1は、甲第3号証記載の発明とはいえない。
(2-1-4) 甲第4号証記載の発明に基づく新規性
甲第4号証には、α-ケトグルタル酸を5(mg/100g)含有する魚醤油(サンプルコードF-2)が記載されている(831頁Table3)。
上記(2-1-1)と同様、上記F-2の魚醤油のα-ケトグルタル酸濃度をmMに換算すると、0.34mM/1000gとなり、魚醤油の比重は通常1g/mL以上であることを考慮すれば、本件発明1(α-ケトグルタル酸を0.3mM以上合有する)の範囲となる蓋然性が高い。
しかしながら、本件発明1は、醤油様調味料のうち、魚醤油を除くものであるから、本件発明1は、甲第4号証記載のF-2の魚醤油ではない。また、甲第4号証記載のサンプルコードF-2以外のものは、魚醤油であるか、又は、醤油様調味料には該当しない小エビ塩辛ペーストである。
したがって、本件発明1は、甲第4号証記載の発明とはいえない。
(2-1-5) 小括
以上のとおり、本件発明1は、甲第1~4号証記載の発明のいずれでもないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、特許を受けることができないとすることはできない。
したがって、本件発明1に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、取り消されるべきものとすることはできない。
(2-2) 理由2について
上記(2-1)に示したとおり、甲第1~4号証記載の発明は、本件発明1の「原料を塩酸分解したもの、鶏肉を原料としたもの、魚醤油、及び生揚醤油を除」いた「醤油様調昧料」ではない。また、甲第1~4号証は、いずれも、当該甲各号証に記載された各種の醤油ないしは醤油様調味料の有機酸等の成分組成を単に分析したにとどまるものであって、そのコク、味の厚み、旨味等といった官能評価については何ら記載はなく、本件発明の「コクが付与された新規な醤油様調味料を提供する」という課題についての示唆も見当たらない。
そうすると、甲第1~4号証に接した当業者にとって、当該甲第1~4号証記載の発明について、「コクが付与された新規な醤油様調味料を提供する」ことを目的として、「原料を塩酸分解したもの、鶏肉を原料としたもの、魚醤油、及び生揚醤油を除」いた「醤油様調昧料」について、α-ケトグルタル酸酸濃度を特定の範囲に設定しようとする動機付けがあるとはいえない。
また、甲第5及び6号証には、α-ケトグルタル酸を0.3mM以上合有する醤油様調昧料についての記載はない。
よって、本件発明1は、甲第1~4号証記載の発明並びに甲第5及び6号証記載の事項に基いて当業者が容易に想到し得るものとはいえない。
そして、本件発明1は、その構成により、コクと味の厚みが良好となる効果を奏するものである(本件特許明細書【0037】、【0040】、【0043】、【0046】及び【0050】参照)。
よって、本件発明1は、甲第1~4号証記載の発明並びに甲第5及び6号証記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
同様に、本件発明1の構成をすべて含む本件発明2及び3についても、甲第1~4号証記載の発明並びに甲第5及び6号証記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、本件発明1~3に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、取り消されるべきものとすることはできない。
2 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
(1) 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由の概要
[理由3]
本件特許の請求項4に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物(甲第1~4、7及び8号証)に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<刊行物>
甲第1~4号証については、上記1(1)参照。
甲第7号証:北海道立消費生活センター,「食品添加物一覧表」(2013(平成25)年12月4日改訂),http://www.do-syouhi-c.jp/edu/img/Taro-%E9%A3%9F%E5%93%81%E6%B7%BB%E5%8A%A0%E7%89%A9%E4%B8%80%E8%A6%A7%E8%A1%A813.12.4.pdf
甲第8号証:伏木亨編著,“光琳選書[1]食品と味”,株式会社光琳,平成15年9月30日,p.65
(2) 上記[理由3]についての判断
上記1(2-2)に示したとおり、甲第1~4号証は、いずれも、当該甲各号証に記載された各種の醤油ないしは醤油様調味料の有機酸等の成分組成を単に分析したにとどまるものであって、そのコク、味の厚み、旨味等といった官能評価については何ら記載はなく、本件発明4に係る、醤油様調味料にコクを付与するために、α-ケトグルタル酸を0.3mM以上添加する方法についての記載や示唆は見当たらない。そうすると、甲第1~4号証に接した当業者にとって、「醤油様調昧料」について、「コクが付与された新規な醤油様調味料を提供する」ことを目的として、「α-ケトグルタル酸を0.3mM以上添加する」方法を行う動機付けがあるとはいえない。
また、甲第7号証は、α-ケトグルタル酸が食品添加物における酸味料として周知であることを示すにすぎず、たとえ甲第8号証に「こくを“あつみのある酸味”と表現して官能検査を行い、食肉エキス中のクレアチンとメチルグリオキサールの縮合物(N-(4-methyl-5-oxo-1-imidazolin-2-il)sarcosine)がその本体であることが報告された」という記載があったとしても、上記と同様、甲第1~4号証に接した当業者にとって、「醤油様調味料」に「酸味料」を添加する方法を行う動機付けがあるとはいえない。そうすると、甲第1~4号証並びに甲第7及び8号証記載の事項にに接した当業者にとって、「醤油様調昧料」について、「コクが付与された新規な醤油様調味料を提供する」ことを目的として、「α-ケトグルタル酸を0.3mM以上添加する」方法を行う動機付けがあるとはいえない。
よって、本件発明4は、甲第1~4号証記載の発明並びに甲第7及び8号証記載の事項に基いて当業者が容易に想到し得るものとはいえない。
そして、本件発明4は、その方法により、醤油様調味料にコクを付与する効果を奏するものである(本件特許明細書【0037】、【0040】、【0043】、【0046】及び【0050】参照)。
よって、本件発明4は、甲第1~4号証記載の発明並びに甲第7及び8号証記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、本件発明4に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、取り消されるべきものとすることはできない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件発明1~4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2016-701069