特許異議申立
2016-701016
タイヤトレッド
- 審判番号
- 2016-701016
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2013-540352
- 登録番号
- 特許第5909756号(P5909756)
- 請求日
- 2016年10月26日
- 審決日
- 2017年06月06日
- 公報発行日
- 2017年08月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】カンパニー ジェネラレ デ エスタブリシュメンツ ミシュラン
- 【権利者代理人】西島 孝喜
- 【権利者代理人】弟子丸 健
- 【権利者代理人】田中 伸一郎
- 【権利者代理人】箱田 篤
- 【権利者代理人】浅井 賢治
- 【権利者代理人】山崎 一夫
- 【権利者代理人】市川 さつき
- 【権利者代理人】服部 博信
- 【権利者代理人】秋澤 慈
- 【権利者】ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム
- 【権利者代理人】西島 孝喜
- 【権利者代理人】弟子丸 健
- 【権利者代理人】田中 伸一郎
- 【権利者代理人】箱田 篤
- 【権利者代理人】浅井 賢治
- 【権利者代理人】山崎 一夫
- 【権利者代理人】市川 さつき
- 【権利者代理人】服部 博信
- 【権利者代理人】秋澤 慈
- 【異議申立人】竹口 美穂
- 審判長/審判官
- 審判長 小野寺 務
- 審判官 加藤 友也
- 審判官 藤原 浩子
- 分類
- P1651.537-YAA(C08L) / P1651.113-YAA(C08L) / P1651.121-YAA(C08L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5909756号発明「タイヤトレッド」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第5909756号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔1ないし9〕について訂正することを認める。
特許第5909756号の請求項1ないし9に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第5909756号の請求項1ないし9に係る特許についての出願は、2011年11月24日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2010年11月26日、フランス国)を国際出願日とする特許出願であって、平成28年4月8日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、同年10月25日付け(受理日:同年10月26日)で特許異議申立人 竹口 美穂(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:全請求項)がされ、当審において平成29年1月13日付けで取消理由(以下、「取消理由」という。)が通知され、同年4月18日付け(受理日:同年4月19日)で特許権者 カンパニー ジェネラレ デ エスタブリシュメンツ ミシュラン(外1名)から意見書が提出されるとともに訂正の請求がされ、同年4月20日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、同年5月19日付け(受理日:同年5月22日)で特許異議申立人から意見書が提出されたものである。
第2 訂正の適否について
1 訂正の内容
平成29年4月18日付け(受理日:同年4月19日)でされた訂正の請求(以下、「本件訂正の請求」という。)による訂正の内容は、次のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示すものである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に第1ジエンエラストマーの含有量として「20~100phr」とあるのを、「50~100phr」に訂正する。
併せて、特許請求の範囲の請求項1を引用する請求項2ないし9についても、請求項1を訂正したことに伴う訂正をする。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に第2ジエンエラストマーの含有量として「0~80phr」とあるのを、「0~50phr」に訂正する。
併せて、特許請求の範囲の請求項1を引用する請求項2ないし9についても、請求項1を訂正したことに伴う訂正をする。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1の「補強用無機充填剤」を、「シリカ質タイプの鉱質充填剤」に訂正する。
併せて、特許請求の範囲の請求項1を引用する請求項2ないし9についても、請求項1を訂正したことに伴う訂正をする。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項9の「補強用無機充填剤」を、「シリカ質タイプの鉱質充填剤」に訂正する。
2 訂正の目的の適否、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内か否か、一群の請求項及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、第1ジエンエラストマーの含有量を「20~100phr」からより限定された範囲である「50~100phr」に訂正するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、訂正事項1は、本件特許の願書に添付した明細書及び特許請求の範囲(以下、「本件特許明細書等」という。)の「本発明のもう1つの好ましい実施態様によれば、第1ジエンエラストマーの含有量は、好ましくは40~100phr、より好ましくは50~100phr、さらにより好ましくは70~100phr、特に80~100phrの範囲内にある。」(段落【0039】)という記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。
さらに、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、第2ジエンエラストマーの含有量を「0~80phr」からより限定された範囲である「0~50phr」に訂正するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、本件特許明細書等には、第2ジエンエラストマーの含有量として「0~50phr」という記載はないが、訂正事項2は、「0~80phr」という数値範囲をより狭い範囲である「0~50phr」へ限定したものであり、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。
さらに、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)訂正事項3について
訂正事項3は、「補強用充填剤」を下位概念である「シリカ質タイプの鉱質充填剤」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、訂正事項3は、本件特許明細書等の「シリカ質タイプの鉱質充填剤、好ましくはシリカ(SiO2)は、補強用無機充填剤として特に適している。」(段落【0048】)という記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。
さらに、訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4)訂正事項4について
訂正事項4は、「補強用充填剤」を下位概念である「シリカ質タイプの鉱質充填剤」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、訂正事項4は、本件特許明細書等の「シリカ質タイプの鉱質充填剤、好ましくはシリカ(SiO2)は、補強用無機充填剤として特に適している。」(段落【0048】)という記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。
さらに、訂正事項4は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(5)一群の請求項
訂正前の請求項2ないし9は訂正前の請求項1を引用するものであるから、訂正前の請求項1ないし9は一群の請求項に該当するものである。
そして、訂正事項1ないし4は、それらについてされたものであるから、一群の請求項ごとにされたものである。
3 むすび
以上のとおり、訂正事項1ないし4は、それぞれ、特許法120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる事項を目的とするものである。
また、訂正事項1ないし4は、一群の請求項ごとに請求された訂正であるから、同法第120条の5第4項の規定に適合する。
さらに、訂正事項1ないし4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないので、同法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
そして、特許異議の申立ては、訂正前の全ての請求項に対してされているので、訂正を認める要件として、同法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。
したがって、本件訂正の請求は適法なものであり、訂正後の請求項〔1ないし9〕について訂正することを認める。
第3 特許異議の申立てについて
1 本件特許発明
上記第2のとおり、訂正後の請求項〔1ないし9〕について訂正することを認めるので、本件特許の請求項1ないし9に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいう。)は、平成29年4月18日付け(受理日:同年4月19日)で提出された訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
トレッドが、少なくとも下記を含むゴム組成物を含むことを特徴とするタイヤ:
・少なくとも1個のSiOR官能基 (Rは水素または炭化水素基である)を担持する50~100phrの第1ジエンエラストマー;
・任意構成成分としての0~50phrの第2ジエンエラストマー:
・100~160phrのシリカ質タイプの鉱質充填剤;
・下記を含む可塑化系:
・5phrと60phrの間の含有量Aの、20℃よりも高いTgを有する炭化水素樹脂;
・5phrと60phrの間の含有量Bの液体可塑剤;
・45phrよりも多い総含有量A+B。
【請求項2】
前記第1ジエンエラストマーが、ビニル芳香族単位を含む、請求項1記載のタイヤ。
【請求項3】
前記第1ジエンエラストマーが、ブタジエン単位を含む、請求項1または2記載のタイヤ。
【請求項4】
Rが水素である、請求項1~3のいずれか1項記載のタイヤ。
【請求項5】
Rがアルキルである、請求項1~3のいずれか1項記載のタイヤ。
【請求項6】
前記第1ジエンエラストマーが、少なくとも1個のアミン官能基も含む、請求項1~5のいずれか1項記載のタイヤ。
【請求項7】
前記第2ジエンエラストマーが、ポリブタジエン、天然ゴム、合成ポリイソプレン、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマーおよびこれらのエラストマーの混合物からなる群から選ばれる、請求項1~6のいずれか1項記載のタイヤ。
【請求項8】
前記第2ジエンエラストマーが、少なくとも1個のスズ官能基を担持する、請求項1~7のいずれか1項記載のタイヤ。
【請求項9】
シリカ質タイプの鉱質充填剤の含有量が、105~150phrの範囲内にある、請求項1~8のいずれか1項記載のタイヤ。」
2 取消理由の概要
取消理由の概要は次のとおりである。
「(サポート要件)本件特許の請求項1ないし9に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。」
3 取消理由についての判断
特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
そこで、本件特許発明1ないし9に関して、特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かを検討する。
本件特許発明1ないし9は、「トレッドが、少なくとも下記を含むゴム組成物を含むことを特徴とするタイヤ:
・少なくとも1個のSiOR官能基 (Rは水素または炭化水素基である)を担持する50~100phrの第1ジエンエラストマー;
・任意構成成分としての0~50phrの第2ジエンエラストマー:
・100~160phrのシリカ質タイプの鉱質充填剤;
・下記を含む可塑化系:
・5phrと60phrの間の含有量Aの、20℃よりも高いTgを有する炭化水素樹脂;
・5phrと60phrの間の含有量Bの液体可塑剤;
・45phrよりも多い総含有量A+B。」という発明特定事項を有するものである。
本件特許発明1ないし9が解決しようとする課題(以下、「発明の課題」という。)は、本件特許明細書等の「しかしながら、特に湿潤地面上でのグリップ特性を増強することは、依然としてタイヤ設計者等の不変の懸念事である。」(段落【0003】)及び「研究の継続中に、本出願人等は、予期に反して、ある種の官能性ジエンエラストマー、補強用無機充填剤および特定の可塑化系の組合せ使用がこれらタイヤの湿潤地面上でのグリップ性能を改良することを低転がり抵抗性でもって可能にすることを見出した。」(段落【0004】)という記載からみて、「タイヤの湿潤地面上でのグリップ性能を改良すること」である。
そして、本件特許明細書等の発明の詳細な説明には、「第1ジエンエラストマー」を80phr含み、「第2ジエンエラストマー」を20phr含んだゴム組成物C1-1を使用したタイヤP1-1並びに「第1ジエンエラストマー」を100phr含み、「第2ジエンエラストマー」を0phr含んだゴム組成物C2-1、C2-2及びC2-3を使用したタイヤP2-1、P2-2及びP2-3について、タイヤの湿潤地面上でのグリップ性能を測定した結果が記載されており、「第1ジエンエラストマー」を「第2ジエンエラストマー」の含有量以上含んだゴム組成物を使用した場合には、発明の課題を解決できることを当業者は認識できる。
また、本件特許明細書等の発明の詳細な説明には、シリカ質タイプの鉱質充填剤である「HDSタイプのRhodia社からの“Zeosil 1165MP”シリカ;」を120phr含んだゴム組成物C1-1を使用したタイヤP1-1並びにシリカ質タイプの鉱質充填剤である「HDSタイプのRhodia社からの“Zeosil 1165MP”シリカ;」を110phr含んだゴム組成物C2-1、C2-2及びC2-3を使用したタイヤP2-1、P2-2及びP2-3について、タイヤの湿潤地面上でのグリップ性能等を測定した結果が記載されており、「100~160phrのシリカ質タイプの鉱質充填剤」を含んだゴム組成物を使用した場合には、発明の課題を解決できることを当業者は認識できる。
他方、本件特許発明1ないし9は、「第1ジエンエラストマー」を「第2ジエンエラストマー」の含有量以上含んだゴム組成物を使用するものであり、また、「100~160phrのシリカ質タイプの鉱質充填剤」を含んだゴム組成物を使用するものであるから、本件特許発明1ないし9は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。
したがって、本件特許発明1ないし9に関して、特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合していないとはいえない。
以上のとおりであるから、請求項1ないし9に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものとはいえず、同法第113条第4号に該当するものではない。
なお、平成29年5月19日付け(受理日:同年5月22日)で特許異議申立人が提出した意見書も検討したが、上記判断は左右されない。
4 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由は、甲第1ないし29号証(刊行物名については、特許異議申立書参照。)に基づく新規性・進歩性違反、特許請求の範囲の請求項1の「20℃よりも高いTgを有する炭化水素樹脂」及び「液体可塑剤」という記載に関するサポート要件違反・明確性違反並びに特許請求の範囲の請求項1に記載された各成分の含有量に関するサポート要件違反である。
そこで、検討する。
タイヤの湿潤地面上でのグリップ特性を改良するために、「・100~160phrのシリカ質タイプの鉱質充填剤」という事項と「・下記を含む可塑化系:
・5phrと60phrの間の含有量Aの、20℃よりも高いTgを有する炭化水素樹脂;
・5phrと60phrの間の含有量Bの液体可塑剤;
・45phrよりも多い総含有量A+B」という事項を組み合わせて採用することについて、甲第1ないし29号証には記載も示唆もされていないので、請求項1ないし9に係る特許は、甲第1ないし29号証に基づく新規性・進歩性に違反してされたものであるとはいえない。
また、特許請求の範囲の請求項1の「20℃よりも高いTgを有する炭化水素樹脂」及び「液体可塑剤」という記載は、それ自体明確であるし、本件特許明細書等の記載からみて、特定のものでなければ発明の課題を解決できないとまではいえない。さらに、各成分の含有量に関しても、本件特許明細書等の記載からみて、請求項1において規定された範囲以外では発明の課題を解決できないとまではいえない。
したがって、請求項1ないし9に係る特許に係る出願が、サポート要件違反・明確性違反であるとまではいえない。
よって、上記特許異議申立理由は理由がない。
第4 結語
上記第3のとおりであるから、取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、請求項1ないし9に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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