特許異議申立
2016-700915
凹凸補正化粧料
- 審判番号
- 2016-700915
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2011-246915
- 登録番号
- 特許第5893896号(P5893896)
- 請求日
- 2016年09月23日
- 審決日
- 2018年01月22日
- 公報発行日
- 2018年04月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社コーセー
- 【権利者代理人】渡邊 薫
- 【権利者代理人】井上 美和子
- 【異議申立人】長谷川 隆治
- 審判長/審判官
- 審判長 須藤 康洋
- 審判官 安川 聡
- 審判官 関 美祝
- 分類
- P1651.113-YAA(A61K) / P1651.121-YAA(A61K) / P1651.537-YAA(A61K) / P1651.85 -YAA(A61K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第120条の5第7項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5893896号発明「凹凸補正化粧料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
1 特許第5893896号の明細書及び特許請求の範囲を,平成29年12月15日付け訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項[1~9]について,訂正することを認める。
2 特許第5893896号の請求項1,5,6及び9に係る特許を維持する。
3 特許第5893896号の請求項2~4,7及び8に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
【理 由】
第1 主な手続の経緯等
特許第5893896号(請求項の数は9。以下「本件特許」という。)は,平成23年11月10日にされた特許出願に係るものであって,平成28年3月4日にその特許権が設定登録されたものである。
その後,平成28年9月23日に特許異議申立人長谷川隆治(以下,単に「異議申立人」という。)より本件特許の請求項1~9に係る発明についての特許に対して特許異議の申立てがされ,同年11月30日付けで取消理由が通知され,平成29年2月2日に特許権者より意見書が提出されるとともに訂正請求書が提出されることで明細書及び特許請求の範囲の訂正が請求がされ(決定注:この訂正の請求は,特許法120条の5第7項の規定により,取り下げられたものとみなされる。),同年3月30日に異議申立人より意見書が提出され,同年5月15日付けで取消理由が通知され,同年7月14日に特許権者より意見書が提出されるとともに訂正請求書が提出されることで明細書及び特許請求の範囲の訂正が請求がされ(決定注:同様に,取り下げられたものとみなされる。),同年9月6日に異議申立人より意見書が提出され,同年10月12日付けで取消理由(以下,「決定の予告」という。)が通知され,同年12月15日に特許権者より意見書が提出されるとともに訂正請求書が提出されることで明細書及び特許請求の範囲の訂正(以下,「本件訂正」という。)が請求がされた。
第2 本件訂正の可否
1 特許権者の請求の趣旨
結論第1項に同旨。
2 訂正の内容
訂正請求書並びにそれに添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲によれば,特許権者の求める訂正は,実質,以下のとおりである。(決定注:各訂正事項は,訂正請求書によらず,本決定において整理したものである。)
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲を,請求項2~4,7及び8を削除することを含め,以下のとおり訂正する。
・ 本件訂正前
「【請求項1】
次の成分(a)~(c);
(a)ゲル状のフェニル基含有部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物
(b)皮膜形成性シリコーン樹脂
(c)屈折率1.4~1.8の粉体
を配合することを特徴とする凹凸補正化粧料。
【請求項2】
更に,成分(d)として,フェニル基含有非架橋型オルガノポリシロキサンを配合することを特徴とする請求項1に記載の凹凸補正化粧料。
【請求項3】
更に,成分(e)として,揮発性油剤を配合することを特徴とする請求項1又は2に記載の凹凸補正化粧料。
【請求項4】
前記成分(b)皮膜形成性シリコーン樹脂が,トリメチルシロキシケイ酸,アクリル-シリコーン系グラフト共重合体から選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の凹凸補正化粧料。
【請求項5】
前記成分(d)フェニル基含有非架橋型オルガノポリシロキサンがジフェニルジメチコン,ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン,トリメチルペンタフェニルトリシロキサン,フェニルトリメチコン,フェニルメチコンから選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の凹凸補正化粧料。
【請求項6】
前記成分(c)屈折率1.4~1.8の粉体の平均粒径が1~50μmであることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の凹凸補正化粧料。
【請求項7】
前記成分(c)屈折率1.4~1.8の粉体が,ポリアミド,ポリメチルシルセスキオキサン,シリコーンエラストマー,架橋型シリコーン・網状型シリコーン共重合体,ポリスチレン,ポリウレタン,ポリエチレン,結晶セルロース,ポリメタクリル酸エステル,ポリアクリル酸エステルから選ばれる1種または2種以上であるであることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の凹凸補正化粧料。
【請求項8】
更に,成分(f)として,ペースト油を配合することを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の凹凸補正化粧料。
【請求項9】
前記凹凸補正化粧料の剤型が,油性型,油中水型であることを特徴とする請求項1~8に記載の凹凸補正化粧料。」
・ 本件訂正後
「【請求項1】
次の成分(a)~(c);
(a)ゲル状のフェニル基含有部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物
(b)皮膜形成性シリコーン樹脂
(c)屈折率1.4~1.8の粉体
を配合し,
前記成分(b)皮膜形成性シリコーン樹脂が,トリメチルシロキシケイ酸,アクリル-シリコーン系グラフト共重合体から選ばれる1種または2種以上であり,
前記成分(c)屈折率1.4~1.8の粉体が,シリコーンエラストマー,架橋型シリコーン・網状型シリコーン共重合体,ポリスチレン,ポリウレタン,ポリエチレンから選ばれる1種または2種以上であり,
更に,成分(d)として,フェニル基含有非架橋型オルガノポリシロキサンを配合し,
更に,成分(e)として,揮発性油剤を配合し,
更に,成分(f)として,モノステアリン酸硬化ヒマシ油,ヒドロキシステアリン酸コレステリル,マカデミアンナッツ脂肪酸フィトステリル,ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチルから選ばれる1種または2種以上のペースト油を配合し,
前記成分(b)皮膜形成性シリコーン樹脂の配合量が,0.5~5質量%であり,
前記成分(c)屈折率1.4~1.8の粉体の配合量が,3~20質量%であり,
前記成分(f)モノステアリン酸硬化ヒマシ油,ヒドロキシステアリン酸コレステリル,マカデミアンナッツ脂肪酸フィトステリル,ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチルから選ばれる1種または2種以上のペースト油の配合量が,0.5~5質量%であることを特徴とする凹凸補正化粧料。
【請求項2】
【請求項3】
【請求項4】
【請求項5】
前記成分(d)フェニル基含有非架橋型オルガノポリシロキサンがジフェニルジメチコン,ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン,トリメチルペンタフェニルトリシロキサン,フェニルトリメチコン,フェニルメチコンから選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする請求項1に記載の凹凸補正化粧料。
【請求項6】
前記成分(c)屈折率1.4~1.8の粉体の平均粒径が1~50μmであることを特徴とする請求項1又は5に記載の凹凸補正化粧料。
【請求項7】
【請求項8】
【請求項9】
前記凹凸補正化粧料の剤型が,油性型,油中水型であることを特徴とする請求項1,5及び6のいずれかに記載の凹凸補正化粧料。」
(2) 訂正事項2
明細書の段落【0001】を,以下のとおり訂正する。
・ 本件訂正前
「本発明は,フェニル基含有部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物,皮膜形成性シリコーン樹脂,屈折率1.4~1.8の粉体を配合する凹凸補正化粧料に関し,更に詳細には本願の化粧料は,凹凸補正効果およびその持続性に優れ,化粧料の肌への収まりが良く化粧膜が柔らかい化粧料に関する。」
・ 本件訂正後
「本発明は,ゲル状のフェニル基含有部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物,皮膜形成性シリコーン樹脂,屈折率1.4~1.8の粉体を配合し,前記皮膜形成性シリコーン樹脂が,トリメチルシロキシケイ酸,アクリル-シリコーン系グラフト共重合体から選ばれる1種または2種以上であり,前記屈折率1.4~1.8の粉体が,シリコーンエラストマー,架橋型シリコーン・網状型シリコーン共重合体,ポリスチレン,ポリウレタン,ポリエチレンから選ばれる1種または2種以上であり,更に,フェニル基含有非架橋型オルガノポリシロキサンを配合し,更に,揮発性油剤を配合し,更に,モノステアリン酸硬化ヒマシ油,ヒドロキシステアリン酸コレステリル,マカデミアンナッツ脂肪酸フィトステリル,ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチルから選ばれる1種または2種以上のペースト油を配合し,前記皮膜形成性シリコーン樹脂の配合量が,0.5~5質量%であり,前記屈折率1.4~1.8の粉体の配合量が,3~20質量%であり,前記モノステアリン酸硬化ヒマシ油,ヒドロキシステアリン酸コレステリル,マカデミアンナッツ脂肪酸フィトステリル,ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチルから選ばれる1種または2種以上のペースト油の配合量が,0.5~5質量%である凹凸補正化粧料に関し,更に詳細には本願の化粧料は,凹凸補正効果およびその持続性に優れ,化粧料の肌への収まりが良く化粧膜が柔らかい化粧料に関する。」
(3) 訂正事項3
明細書の段落【0007】を,以下のとおり訂正する。
・ 本件訂正前
「すなわち,本発明は,
次の成分(a)~(c);
(a)ゲル状のフェニル基含有部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物
(b)皮膜形成性シリコーン樹脂
(c)屈折率1.4~1.8の粉体
を配合することを特徴とする凹凸補正化粧料を提供するものである。」
・ 本件訂正後
「すなわち,本発明は,
次の成分(a)~(c);
(a)ゲル状のフェニル基含有部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物
(b)皮膜形成性シリコーン樹脂
(c)屈折率1.4~1.8の粉体
を配合し,前記成分(b)皮膜形成性シリコーン樹脂が,トリメチルシロキシケイ酸,アクリル-シリコーン系グラフト共重合体から選ばれる1種または2種以上であり,前記成分(c)屈折率1.4~1.8の粉体が,シリコーンエラストマー,架橋型シリコーン・網状型シリコーン共重合体,ポリスチレン,ポリウレタン,ポリエチレンから選ばれる1種または2種以上であり,更に,成分(d)として,フェニル基含有非架橋型オルガノポリシロキサンを配合し,更に,成分(e)として,揮発性油剤を配合し,更に,成分(f)として,モノステアリン酸硬化ヒマシ油,ヒドロキシステアリン酸コレステリル,マカデミアンナッツ脂肪酸フィトステリル,ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチルから選ばれる1種または2種以上のペースト油を配合し,前記成分(b)皮膜形成性シリコーン樹脂の配合量が,0.5~5質量%であり,前記成分(c)屈折率1.4~1.8の粉体の配合量が,3~20質量%であり,前記成分(f)モノステアリン酸硬化ヒマシ油,ヒドロキシステアリン酸コレステリル,マカデミアンナッツ脂肪酸フィトステリル,ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチルから選ばれる1種または2種以上のペースト油の配合量が,0.5~5質量%であることを特徴とする凹凸補正化粧料を提供するものである。」
(4) 訂正事項4
明細書の段落【0008】を,以下のとおり訂正する。
・ 本件訂正前
「本発明のフェニル基含有部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物,皮膜形成性シリコーン樹脂,屈折率1.4~1.8の粉体を配合する凹凸補正化粧料に関し,更に詳細には本願の化粧料は,凹凸補正効果およびその持続性に優れ,化粧料の肌への収まりが良く化粧膜が柔らかい化粧料に関する。」
・ 本件訂正後
「本発明のゲル状のフェニル基含有部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物,皮膜形成性シリコーン樹脂,屈折率1.4~1.8の粉体を配合し,前記皮膜形成性シリコーン樹脂が,トリメチルシロキシケイ酸,アクリル-シリコーン系グラフト共重合体から選ばれる1種または2種以上であり,前記屈折率1.4~1.8の粉体が,シリコーンエラストマー,架橋型シリコーン・網状型シリコーン共重合体,ポリスチレン,ポリウレタン,ポリエチレンから選ばれる1種または2種以上であり,更に,フェニル基含有非架橋型オルガノポリシロキサンを配合し,更に,揮発性油剤を配合し,更に,モノステアリン酸硬化ヒマシ油,ヒドロキシステアリン酸コレステリル,マカデミアンナッツ脂肪酸フィトステリル,ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチルから選ばれる1種または2種以上のペースト油を配合し,前記皮膜形成性シリコーン樹脂の配合量が,0.5~5質量%であり,前記屈折率1.4~1.8の粉体の配合量が,3~20質量%であり,前記モノステアリン酸硬化ヒマシ油,ヒドロキシステアリン酸コレステリル,マカデミアンナッツ脂肪酸フィトステリル,ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチルから選ばれる1種または2種以上のペースト油の配合量が,0.5~5質量%である凹凸補正化粧料に関し,更に詳細には本願の化粧料は,凹凸補正効果およびその持続性に優れ,化粧料の肌への収まりが良く化粧膜が柔らかい化粧料に関する。」
(5) 訂正事項5
明細書の段落【0033】を,以下のとおり訂正する。
・ 本件訂正前
「本発明の凹凸補正化粧料は,上記成分(a)~(c)に加え,成分(f)のペースト油を用いることにより,肌への密着性をあげ化粧料の肌への収まりを向上することができる。
成分(f)のペースト油としては,常温でペースト状を呈する油剤であり,ペースト状とは,30℃の粘度が5000~100000mPa・sのものを示す。本発明において,前記粘度は,試料を30℃で一日放置後,単一円筒型回転粘度計ビスメトロン型式VS-A1(芝浦システム社製)を用いて測定した。
例えば,炭化水素,動物油,植物油,鉱物油,高級脂肪酸エステル,架橋型シリコーン油,フッ素系油等が使用できる。具体的には,ワセリン,パーム油の硬化油,ヤシ油の硬化油,モノステアリン酸硬化ヒマシ油,ラノリン,ヒドロキシステアリン酸コレステリル,コレステロール脂肪酸エステル,フィトステロール脂肪酸エステル,ジペンタエリトリット脂肪酸エステル,架橋型メチルポリシロキサン,架橋型メチルフェニルポリシロキサン,高重合メチルポリシロキサン等が挙げられ,これらを一種又は二種以上用いることができる。市販品としては,ワセリンペンレコスノー(ペンレコ社製),ポリブテン35R,ポリブテン100R,ポリブテン300R(何れも,出光石油化学社製),サラコスHS,コスモール168シリーズ,ノムコートLAH(何れも,日清製油社製)等が挙げられる。」
・ 本件訂正後
「本発明の凹凸補正化粧料は,上記成分(a)~(c)に加え,成分(f)のペースト油を用いることにより,肌への密着性をあげ化粧料の肌への収まりを向上することができる。
成分(f)のペースト油としては,常温でペースト状を呈する油剤であり,ペースト状とは,30℃の粘度が5000~100000mPa・sのものを示す。本発明において,前記粘度は,試料を30℃で一日放置後,単一円筒型回転粘度計ビスメトロン型式VS-A1(芝浦システム社製)を用いて測定した。
例えば,炭化水素,動物油,植物油,鉱物油,高級脂肪酸エステル,フッ素系油等が使用できる。具体的には,ワセリン,パーム油の硬化油,ヤシ油の硬化油,モノステアリン酸硬化ヒマシ油,ラノリン,ヒドロキシステアリン酸コレステリル,コレステロール脂肪酸エステル,フィトステロール脂肪酸エステル,ジペンタエリトリット脂肪酸エステル,高重合メチルポリシロキサン等が挙げられ,これらを一種又は二種以上用いることができる。市販品としては,ワセリンペンレコスノー(ペンレコ社製),ポリブテン35R,ポリブテン100R,ポリブテン300R(何れも,出光石油化学社製),サラコスHS,コスモール168シリーズ,ノムコートLAH(何れも,日清製油社製)等が挙げられる。」
(6) 訂正事項6
明細書の段落【0057】及び【0059】にある「実施例9」との記載を「参考例9」に,同段落【0060】及び【0062】にある「実施例10」との記載を「参考例10」に,同段落【0066】及び【0068】にある「実施例12」との記載を「参考例12」に,同段落【0069】及び【0071】にある「実施例13」との記載を「参考例13」に,並びに,同段落【0072】及び【0074】にある「実施例14」との記載を「参考例14」にそれぞれ訂正する。
3 本件訂正の可否についての判断
(1) 訂正事項1について
ア 請求項1についての訂正
この訂正は,請求項1に係る発明である「凹凸補正化粧料」を構成する成分について,訂正前に「成分(a)~(c)…を配合する」としていたものを「成分(a)~(c)…を配合し,前記成分(b)皮膜形成性シリコーン樹脂が,トリメチルシロキシケイ酸,アクリル-シリコーン系グラフト共重合体から選ばれる1種または2種以上であり,前記成分(c)屈折率1.4~1.8の粉体が,シリコーンエラストマー,架橋型シリコーン・網状型シリコーン共重合体,ポリスチレン,ポリウレタン,ポリエチレンから選ばれる1種または2種以上であり,更に,成分(d)として,フェニル基含有非架橋型オルガノポリシロキサンを配合し,更に,成分(e)として,揮発性油剤を配合し,更に,成分(f)として,モノステアリン酸硬化ヒマシ油,ヒドロキシステアリン酸コレステリル,マカデミアンナッツ脂肪酸フィトステリル,ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチルから選ばれる1種または2種以上のペースト油を配合し,前記成分(b)皮膜形成性シリコーン樹脂の配合量が,0.5~5質量%であり,前記成分(c)屈折率1.4~1.8の粉体の配合量が,3~20質量%であり,前記成分(f)モノステアリン酸硬化ヒマシ油,ヒドロキシステアリン酸コレステリル,マカデミアンナッツ脂肪酸フィトステリル,ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチルから選ばれる1種または2種以上のペースト油の配合量が,0.5~5質量%である」とすることで,成分(b)や(c)について限定したり,凹凸補正化粧料を構成する成分を付加したりするものであり,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。しかも,上述の限定事項,付加事項などについては,願書に添付した特許請求の範囲の請求項2~4,7及び8,明細書の【0025】,【0028】,【0033】や実施例1~8及び11に記載がある。
よって,請求項1についての訂正は,特許法(以下,単に「法」という場合がある。)120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項を目的とするものであり,願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであるから,同条9項で準用する法126条5項で規定する要件を満たすといえる。また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもないから,同126条6項で規定する要件を満たすと判断される。
イ 請求項2~4,7及び8についての訂正
請求項の記載を削除する訂正は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。そして,このような訂正が,設定登録時の願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり,また実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもないのは明らかである。
よって,請求項2~4,7及び8についての訂正は,法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項を目的とするものであり,また,同条9項で準用する法126条5項及び6項で規定する要件を満たすと判断される。
ウ 請求項5,6及び9についての訂正
この訂正は,請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項5,6及び9について,実質的に請求項1についての訂正と同様に訂正するとともに,請求項2~4,7及び8を削除するのにともないその引用関係を整理するものである。そして,請求項の記載の引用関係を整理する訂正は,明瞭でない記載の釈明を目的とするものと解される。
よって,請求項5,6及び9についての訂正は,法120条の5第2項ただし書1号及び3号に掲げる事項を目的とするものであり,また,同条9項で準用する法126条5項及び6項で規定する要件を満たすと判断される。
(2) 訂正事項2~6について
この訂正は,明細書の【0001】,【0007】,【0008】,【0033】,【0057】,【0059】,【0060】,【0062】,【0066】,【0068】,【0069】,【0071】,【0072】及び【0074】の記載について,特許請求の範囲の記載との整合を図るためのものであり,明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるといえる。しかも,この訂正は,願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり,また実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものとならないのは明らかである。
よって,訂正事項2~6は,法120条の5第2項ただし書3号に掲げる事項を目的とするものであり,また,同条9項で準用する法126条5項及び6項で規定する要件を満たす。
(3) 小括
以上のとおりであるから,本件訂正は,法120条の5第2項ただし書1号及び3号に掲げる事項を目的とするものであり,同条9項で準用する法126条5~6項で規定する要件を満たす。
よって,結論の第1項のとおり,本件訂正を認める。
第3 本件発明
上記第2で検討のとおり本件訂正は認められるので,本件特許の請求項1,5,6及び9に係る発明は,訂正特許請求の範囲の請求項1,5,6及び9に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下,請求項の番号に応じて各発明を「本件発明1」などといい,これらを併せて「本件発明」という場合がある。なお,請求項5,6及び9の記載は,これを省略する。)。
「【請求項1】
次の成分(a)~(c);
(a)ゲル状のフェニル基含有部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物
(b)皮膜形成性シリコーン樹脂
(c)屈折率1.4~1.8の粉体
を配合し,
前記成分(b)皮膜形成性シリコーン樹脂が,トリメチルシロキシケイ酸,アクリル-シリコーン系グラフト共重合体から選ばれる1種または2種以上であり,
前記成分(c)屈折率1.4~1.8の粉体が,シリコーンエラストマー,架橋型シリコーン・網状型シリコーン共重合体,ポリスチレン,ポリウレタン,ポリエチレンから選ばれる1種または2種以上であり,
更に,成分(d)として,フェニル基含有非架橋型オルガノポリシロキサンを配合し,
更に,成分(e)として,揮発性油剤を配合し,
更に,成分(f)として,モノステアリン酸硬化ヒマシ油,ヒドロキシステアリン酸コレステリル,マカデミアンナッツ脂肪酸フィトステリル,ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチルから選ばれる1種または2種以上のペースト油を配合し,
前記成分(b)皮膜形成性シリコーン樹脂の配合量が,0.5~5質量%であり,
前記成分(c)屈折率1.4~1.8の粉体の配合量が,3~20質量%であり,
前記成分(f)モノステアリン酸硬化ヒマシ油,ヒドロキシステアリン酸コレステリル,マカデミアンナッツ脂肪酸フィトステリル,ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチルから選ばれる1種または2種以上のペースト油の配合量が,0.5~5質量%であることを特徴とする凹凸補正化粧料。」
第4 決定の予告に係る取消理由の概要
要するに,請求項1及び3~9に係る発明(決定注:本件訂正後の特許請求の範囲の記載に照らすと,本件発明1,5,6及び9。)は,本件特許の出願前に頒布された下記の刊行物に記載された発明をそれぞれ主引用発明としたとき,これら発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであって,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから,その発明に係る特許は取り消すべき,というものである。
・ 特開2001-302456号公報(異議申立書の証拠方法である甲3。以下,単に「甲3」という。)
・ 特開2002-154918号公報(異議申立書の証拠方法である甲4。以下,単に「甲4」という。)
第5 決定の予告に係る取消理由についての当合議体の判断
以下述べるように,決定の予告に係る取消理由はいずれも理由がないと判断する。
1 証拠に記載された発明などについて
(1) 甲3に記載された発明
ア 甲3の記載
甲3には,次の記載がある。(下線は本決定で付記。以下同じ。)
・「【特許請求の範囲】
【請求項1】架橋型オルガノポリシロキサンと,有機シリコーン樹脂と,揮発性シリコーンと,非揮発性液状油と,粒子径0.001~0.05μmの不定形微粒子無水珪酸と,粒子径0.1~30μmの球状粉体とを含有し,固形ワックス無含有であることを特徴とする化粧料。
【請求項2】架橋型オルガノポリシロキサンを0.01~20重量%,有機シリコーン樹脂を1~30重量%,揮発性シリコーンを10~60重量%,非揮発性液状油を1~30重量%,粒子径0.001~0.05μmの不定形微粒子無水珪酸を0.01~10重量%,粒子径0.1~30μmの球状粉体を0.1~30重量%それぞれ含有することを特徴とする請求項1に記載の化粧料。…」
・「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,化粧料に関し,具体的には,口紅,アイシャドウ,アイライナー,頬紅,及びファンデーション等の油性の化粧料に関する。特に本発明は,唇,目元,及び頬等の皮膚に塗布したときにさっぱりとした良好な使用感が得られ,なおかつ,塗布後の唇や皮膚の乾燥,つっぱり感,粉っぽい感触といった不快感がなく,さらに,化粧効果の持続性,特に転写防止効果に優れ,保存安定性に優れる化粧料に関する。」
・「【0006】本発明の目的は,前記課題を解決することにある。すなわち本発明は,唇等の皮膚に塗布したときにさっぱりとした良好な使用感が得られ,塗布後の唇等の皮膚の乾燥,皮膜のつっぱり感,粉っぽい仕上がりといった不快感がなく,さらに,化粧効果の持続性,特に転写防止効果に優れ,保存安定性に優れる化粧料を得ることを目的とする。」
・「【0021】本発明において使用される有機シリコーン樹脂の含有量は1~30重量%が好ましく,5~25%の範囲が特に好ましい。本発明においては,有機シリコーン樹脂を含有することにより,本発明の目的を達成することができるが,前記含有量の場合,良好な化粧持続効果,特に良好な転写防止効果が得られる。」
・「【0042】本発明の化粧料の形態は,ゲル状であれば特に制限がなく,広く各種化粧品基剤として利用できる。例えば,口紅,リップクリーム,ファンデーション,頬紅,アイシャドウ,及びアイライナー等に特に適しているが,これに限定されるものではない。
【0043】
【実施例】以下に本発明の実施例を示し,本発明をさらに詳細に説明するが,本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。なお,配合量等は,特に指定がない限り,重量%で示す。製法は,以下に示す。
【0044】(実施例1~6の製法)架橋型オルガノポリシロキサン,有機シリコーン樹脂,揮発性シリコーン油,及び非揮発性液状油を均一に混合した後に,粉体成分をロールミルで分散させ,容器に充填して化粧料(フェイスカラー)を得た。成分として用いられた原料の種類及び含有量を表1に示す。」
・「【0051】
【表1】
」
・「【0052】・架橋型オルガノポリシロキサンA:架橋型メチルポリシロキサンとデカメチルシクロペンタシロキサンとの混合物,商品名 KSG15,信越化学工業(株)製
・架橋型オルガノポリシロキサンB:架橋型メチルポリシロキサンとメチルポリシロキサンとの混合物,商品名 KSG16,信越化学工業(株)製
・架橋型オルガノポリシロキサンC:架橋型メチルフェニルポリシロキサンとメチルフェニルポリシロキサンとの混合物,商品名 KSG18,信越化学工業(株)製
・揮発性シリコーン油A:デカメチルシクロペンタシロキサン
・非揮発性液状油A:メチルフェニルポリシロキサン
・非揮発性液状油B:スクワラン
・有機シリコーン樹脂A:トリメチルシロキシケイ酸とデカメチルシクロペンタシロキサンとの混合物,商品名 KF7312J,信越化学工業(株)製
・有機シリコーン樹脂B:トリメチルシロキシケイ酸とオクタメチルシクロテトラシロキサンとの混合物,商品名 KF7312F,信越化学工業(株)製
・不定形微粒子無水珪酸A:疎水性不定形微粒子無水珪酸,粒径0.007~0.030μm,商品名 アエロジルR972,日本アエロジル(株)製
・不定形微粒子無水珪酸B:不定形微粒子無水珪酸,粒径0.005~0.015μm,商品名 アエロジル300,日本アエロジル(株)製
・球状粉体A:疎水性球状無水珪酸,粒径1~16μm,商品名 SI-SB-700,三好化成(株)製
・球状粉体B:ポリメチルシルセスキオキサン粉末,粒径3~6μm,商品名トスパール145,東芝シリコーン(株)製)
・球状粉体:,ポリメタクリル酸メチル,粒径5~10μm,商品名 マツモトマイクロスフェアM-100,松本油脂(株)製」
イ 甲3発明
上記アでの摘記,特に実施例4の記載から,甲3には次のとおりの発明(以下「甲3発明」という。)が記載されていると認める。
「次の成分を配合する化粧料(フェイスカラー)。
・ 架橋型オルガノポリシロキサンC(架橋型メチルフェニルポリシロキサンとメチルフェニルポリシロキサンとの混合物,商品名:KSG18,信越化学工業(株)製) 20重量%
・ 揮発性シリコーン油A(デカメチルシクロペンタシロキサン) 10重量%
・ 非揮発性液状油B(スクワラン) 11重量%
・ 有機シリコーン樹脂B(トリメチルシロキシケイ酸とオクタメチルシクロテトラシロキサンとの混合物,商品名:KF7312F,信越化学工業(株)製) 30重量%
・ 不定形微粒子無水珪酸A(疎水性不定形微粒子無水珪酸,粒径0.007~0.030μm,商品名:アエロジルR972,日本アエロジル(株)製) 1重量%
・ 球状粉体A(疎水性球状無水珪酸,粒径1~16μm,商品名:SI-SB-700,三好化成(株)製) 10重量%
・ マイカ 9重量%
・ 赤色226号 1重量%
・ 黄色4号アルミニウムレーキ 2重量%
・ 酸化チタン 4重量%
・ ベンガラ 2重量%」
(2) 甲4に記載された発明
ア 甲4の記載
甲4には,次の記載がある。
・「【特許請求の範囲】
【請求項1】 少なくともシリコーン油を含む油性成分と,架橋型オルガノポリシロキサンと,不定形無水珪酸とを含有することを特徴とする油性化粧料。…
【請求項5】 架橋型オルガノポリシロキサンが,架橋型アルキルアリールポリシロキサン及び架橋型アルキルポリシロキサンからなる群から選ばれた一種または二種以上を含有してなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の油性化粧料。
【請求項6】 さらに,平均粒子径0.1~30μmの球状粉体の一種または二種以上を含有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の油性化粧料。
【請求項7】 さらに,有機シリコーン樹脂の一種または二種以上を含有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の油性化粧料。」
・「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,油性化粧料に関し,具体的には,口紅,アイシャドウ,アイライナー,頬紅,ファンデーション等の油性化粧料に関する。特に本発明は,唇,目元,頬等の皮膚に塗布したときにさっぱりとした良好な使用感が得られ,なおかつ,塗布後の唇や皮膚の乾燥,つっぱり感,粉っぽい感触といった不快感がなく,さらに,化粧効果の持続性,特に転写防止効果に優れ,保存安定性に優れる化粧料に関する。」
・「【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記事情に鑑み,架橋型オルガノポリシロキサンを配合した従来の油性化粧料が有する欠点を改良することを第一の目的とし,さらに従来にない優れた油性化粧料を提供することを第二の目的とする。したがって,本発明の目的は,唇等の皮膚に塗布したときにべたつきや油っぽさのないさっぱりとした良好な使用感が得られ,塗布した唇等の皮膚の乾燥,粉っぽい仕上がりといった不快感がなく,保存安定性に優れる化粧料を提供すること,さらに,皮膜のつっぱり感,つやがない等の欠点のない,化粧もちに,特に転写防止効果に優れた油性化粧料を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果,特定の油性成分とともに,架橋型オルガノポリシロキサンと不定形無水珪酸とを配合することにより上記課題が解決されることを見出し,本発明を完成するに至った。」
・「【0035】本発明の油形化粧料には,上記必須成分とともにさらに有機シリコーン樹脂を配合することが好適である。有機シリコーン樹脂を併用すると,前記本発明の効果に加え,さらに,皮膜のつっぱり感,つやがない等の欠点のない,化粧もちに,特に転写防止効果に優れた油性化粧料が得られる。」
・「【0039】有機シリコーン樹脂を配合する場合の含有量は,油性化粧料全量中1~30重量%が好ましく,5~25重量%の範囲が特に好ましい。前記含有量の場合,良好な化粧持続効果,特に良好な転写防止効果が得られる。」
・「【0043】本発明の化粧料の形態は,広く各種化粧品基剤として利用できる。例えば,フェースカラー,口紅,リップクリーム,ファンデーション,頬紅,アイカラー,アイシャドウ,アイライナー等に特に適しているが,これに限定されるものではない。」
・「【0050】…なお、架橋型オルガノポリシロキサンAは「KSG15」、不定形微粒子無水珪酸Aは「アエロジルR972」(疎水性不定形微粒子無水珪酸、平均粒径0.007~0.030μm)である。」
・「【0056】…なお,架橋型オルガノポリシロキサンBは「KSG16」,架橋型オルガノポリシロキサンCは「KSG18」,不定形微粒子無水珪酸Bは「アエロジル300」(不定形微粒子無水珪酸、平均粒径0.005~0.015μm)…
【0061】(実施例11~17)表1と同様に,粉体成分以外の成分を均一に混合した後に,粉体成分をロールミルで分散させ,容器に充填して化粧料(フェースカラー)を得た。成分として用いられた原料の種類と含有量を表5に示す。なお,架橋型オルガノポリシロキサンAは表1と同様,架橋型オルガノポリシロキサンB及びCは表3と同様,不定形微粒子無水珪酸Aは表1と同様,不定形微粒子無水珪酸Bは表3と同様,球状粉体Cは,ポリメタクリル酸メチル,平均粒径5~10μm,商品名マツモトマイクロスフェアM-100(松本油脂株式会社製),有機シリコーン樹脂Aは「KF-7312J」,有機シリコーン樹脂Bは「KF-7312F」,有機シリコーン樹脂Cは「KF-7312K」である。」
・「【0062】
【表5】
」
イ 甲4発明
上記アでの摘記,特に実施例16の記載から,甲4には次のとおりの発明(以下「甲4発明」という。)が記載されていると認める。
「次の成分を配合する化粧料(フェイスカラー)。
・ 架橋型オルガノポリシロキサンC(KSG18) 20重量%
・ デカメチルシクロペンタシロキサン 10重量%
・ ジメチルポリシロキサン 18重量%
・ ジカプリン酸ネオペンチルグリコール 18重量%
・ 不定形微粒子無水珪酸A(アエロジルR972,疎水性不定形微粒子無水珪酸,平均粒径0.007~0.030μm) 1重量%
・ 不定形微粒子無水珪酸B(アエロジル300,粒径0.005~0.015μm) 1重量%
・ 球状粉体C(ポリメタクリル酸メチル,平均粒径5~10μm,商品名:マツモトマイクロスフェアM-100(松本油脂株式会社製)) 8重量%
・ 有機シリコーン樹脂C(KF-7312K) 10重量%
・ マイカ 6重量%
・ 赤色226号 1重量%
・ 黄色4号アルミニウムレーキ 1重量%
・ 酸化チタン 6重量%」
2 本件発明1について
(1) 甲3発明との対比,判断
ア 一致点,相違点
本件発明1と甲3発明を対比すると,甲3発明の「架橋型オルガノポリシロキサンC」は架橋型メチルフェニルポリシロキサンとメチルフェニルポリシロキサンとの混合物であるとされる商品名:KSG18(信越化学工業(株)製)であるところ,本件発明1の「(a)ゲル状のフェニル基含有部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物」について,本件明細書の【0013】は,その具体的な市販品として「KSG-18(15%ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン溶液)(信越化学工業社製)」を挙げる。さすれば,甲3発明の「架橋型オルガノポリシロキサンC」を構成する成分である「架橋型メチルフェニルポリシロキサン」は,本件発明1の「(a)ゲル状のフェニル基含有部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物」に相当する。
また,甲3発明の「有機シリコーン樹脂B」はトリメチルシロキシケイ酸とオクタメチルシクロテトラシロキサンとの混合物であり,商品名:KF7312F(信越化学工業(株)製)であるところ,本件発明1の「(b)皮膜形成性シリコーン樹脂」について,本件明細書には「オルガノポリシロキサン骨格をもち,皮膜を形成するものであれば特に限定されない…。具体的には,例えば,トリメチルシロキシケイ酸…が挙げられ…。」(【0015】)との記載があり,その具体的な説明として,「トリメチルシロキシケイ酸としては,シロキサン構造を主骨格とした架橋構造を持つ化合物で,[(CH3)3SiO1/2]x[SiO2]yで表されるもの(Xは1~3,Yは0.5~8)等であり,シリコーン油で溶解した溶液も使用することができる。市販品としては…KF-7312T(60%メチルトリメチコン溶液),KF-7312J(50%デカメチルシクロペンタシロキサン溶液),KF-7312K(60%ジメチコン溶液)…(何れも信越化学工業社製)…を使用することができる。」(【0016】)との記載もある。さすれば,甲3発明の「有機シリコーン樹脂B」は,本件発明1の「トリメチルシロキシケイ酸,アクリル-シリコーン系グラフト共重合体から選ばれる1種または2種以上」であるとされる「(b)皮膜形成性シリコーン樹脂」に相当する。
また,甲3発明の「球状粉体A」は,疎水性球状無水珪酸からなる粒径1~16μmの粒子であり,商品名:SI-SB-700(三好化成(株)製)であるところ,本件発明1の「(c)屈折率1.4~1.8の粉体」について,本件明細書にはその具体例として「無水ケイ酸」からなる粒径1~50μmの粒子を挙げていることなどからすると(【0026】),甲3発明の「球状粉体A」は,本件発明1の「(c)屈折率1.4~1.8の粉体」に相当する。
また,甲3発明の「揮発性シリコーン油A(デカメチルシクロペンタシロキサン)」は,本件発明1の成分(e)である「揮発性油剤」に相当する。
さらに,上記「架橋型オルガノポリシロキサンC」を構成する成分である「メチルフェニルポリシロキサン」は,本件発明1の成分(d)である「フェニル基含有非架橋型オルガノポリシロキサン」に相当するといえる。
そうすると,両発明の一致点,相違点はそれぞれ次のとおりと認めることができる。
・ 一致点
次の成分(a)~(c);
(a)ゲル状のフェニル基含有部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物
(b)皮膜形成性シリコーン樹脂
(c)屈折率1.4~1.8の粉体
を配合し,前記成分(b)皮膜形成性シリコーン樹脂がトリメチルシロキシケイ酸,アクリル-シリコーン系グラフト共重合体から選ばれる1種または2種以上であり,更に,成分(d)として,フェニル基含有非架橋型オルガノポリシロキサンを配合し,更に,成分(e)として,揮発性油剤を配合し,前記成分(c)屈折率1.4~1.8の粉体の配合量が3~20質量%である化粧料。
・ 相違点1
ゲル状のフェニル基含有部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物(架橋型メチルフェニルポリシロキサン),皮膜形成性シリコーン樹脂(有機シリコーン樹脂B),屈折率1.4~1.8の粉体(球状粉体A),フェニル基含有非架橋型オルガノポリシロキサン(メチルフェニルポリシロキサン)及び揮発性油剤(揮発性シリコーン油A(デカメチルシクロペンタシロキサン))を配合する化粧料について,本件発明1は「凹凸補正化粧料」と特定するのに対し,甲3発明は「化粧料(フェイスカラー)」と特定する点。
・ 相違点2
成分(b)皮膜形成性シリコーン樹脂(有機シリコーン樹脂B)の配合量について,本件発明1は「0.5~5質量%」と特定するのに対し,甲3発明は「30重量%」と特定する点。
・ 相違点3
成分(c)屈折率1.4~1.8の粉体について,本件発明1は「シリコーンエラストマー,架橋型シリコーン・網状型シリコーン共重合体,ポリスチレン,ポリウレタン,ポリエチレンから選ばれる1種または2種以上」であると特定するのに対し,甲3発明はそのような特定を有しない点。
・ 相違点4
本件発明1は,成分(a)~(c)のほかに,更に,「成分(f)として,モノステアリン酸硬化ヒマシ油,ヒドロキシステアリン酸コレステリル,マカデミアンナッツ脂肪酸フィトステリル,ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチルから選ばれる1種または2種以上のペースト油を配合」し,その配合量が「0.5~5質量%」であると特定するのに対し,甲3発明はそのような特定を有しない点。
イ 相違点についての検討
(ア) 相違点3について
甲3発明の「球状粉体A」は,上述のとおり,疎水性球状無水珪酸からなる粒径1~16μmの粒子であり,商品名:SI-SB-700(三好化成(株)製)である。そして,この球状粉体(球状粉体A)に代えて,例示などがあれば格別ではあるものの,甲3における球状粉体についての例示(【0037】)の中に記載も示唆もないような「シリコーンエラストマー,架橋型シリコーン・網状型シリコーン共重合体,ポリスチレン,ポリウレタン,ポリエチレンから選ばれる1種または2種以上」の粉体を採用することの動機をみいだすことができず,よって相違点3に係る構成は当業者であっても想到容易であるということはできない。
(イ) 相違点4について
甲3の【0040】には,「本発明の化粧料には,前記必須成分の他に,使用目的により,化粧料に通常に使用される半固形状の炭化水素類,エステル類,動植物油脂,高級脂肪酸類,…を,本発明の目的を阻害しない範囲で,種類及び含有量を適切な範囲で選定して配合することができる。」との記載はあるものの,技術思想というより単なる一実施形態(甲3の実施例4)にすぎない甲3発明において,そこにさらに「モノステアリン酸硬化ヒマシ油,ヒドロキシステアリン酸コレステリル,マカデミアンナッツ脂肪酸フィトステリル,ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチルから選ばれる1種または2種以上」との限定が付された特定のペースト油を,特定の配合量(0.5~5質量%)で配合しようとする動機が見あたらない。よって相違点4に係る構成は,当業者であっても想到容易であるとはいえない。
(ウ) 小括
以上のとおりであるから,上記相違点1~2について検討するまでもなく,本件発明1は,甲3に記載された発明(甲3発明)を主たる引用発明としたとき,甲3発明から想到容易であるということはできない。
(2) 甲4発明との対比,判断
ア 一致点,相違点
本件発明1と甲4発明を対比すると,甲4発明の「架橋型オルガノポリシロキサンC」を構成する成分である「架橋型メチルフェニルポリシロキサン」は本件発明1の「(a)ゲル状のフェニル基含有部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物」に,「有機シリコーン樹脂C」は「(b)皮膜形成性シリコーン樹脂」に,「球状粉体C」は「(c)屈折率1.4~1.8の粉体」に,上記「架橋型オルガノポリシロキサンC」を構成する成分であると解される「メチルフェニルポリシロキサン」は成分(d)としての「フェニル基含有非架橋型オルガノポリシロキサン」にそれぞれ相当するといえる。
また,本件明細書が,本件発明1の「揮発性油剤」の例としてデカメチルシクロペンタシロキサンを挙げていることを踏まえると(【0031】),「デカメチルシクロペンタシロキサン」を含有する甲4発明は,本件発明1で特定するところの「更に,成分(e)として,揮発性油剤を配合」するとの条件を満たす。
そうすると,両発明の一致点は,上記(1)アで認定するところと同じである。また相違点は,上記相違点1,3及び4と同旨の相違点のほか,以下の相違点2’を認めることができる。
・ 相違点2’
成分(b)皮膜形成性シリコーン樹脂(有機シリコーン樹脂C)の配合量について,本件発明1は「0.5~5質量%」と特定するのに対し,甲4発明は「10重量%」と特定する点。
イ 相違点についての検討
上記(1)イで検討したところと同様の理由により,相違点3及び4に係る構成は容易に推考できるものではなく,よって,上記相違点1及び2’について検討するまでもなく,本件発明1は,甲4に記載された発明(甲4発明)を主たる引用発明としたとき,甲4発明から想到容易であるということはできない。
(3) 小括
以上のとおり,本件発明1は,本件特許の出願前に頒布された刊行物(甲3,甲4)に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
3 本件発明5,6及び9について
本件訂正後の請求項5,6及び9の記載は請求項1を直接又は間接的に引用するものであるから,これら請求項に係る本件発明5,6及び9についても,本件発明1と同様に,甲3発明あるいは甲4発明から想到容易であるとはいえない。
4 まとめ
以上のとおり,請求項1,5,6及び9に係る発明は本件特許の出願前に頒布された刊行物(甲3,甲4)に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであって特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから,その発明に係る特許は取り消すべき,との決定の予告に係る取消理由には,理由がない。
第6 異議申立人の主張に係る申立理由の概要
異議申立人の主張は,概略,次のとおりである。
(1) 請求項1,3,4,6及び7に係る発明は,法29条1項3号に該当し特許を受けることができない発明である。すなわち,これら発明は,甲3あるいは甲4に記載された発明である(以下「申立理由1」という。)。
(2) 請求項1~9に係る発明は,法29条2項の規定により特許を受けることができない発明である。すなわち,これら発明は,甲1に記載された発明を主たる引用発明としたとき,この主たる引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである(以下「申立理由2」という。)。
(3) 本件特許に係る特許請求の範囲の請求項1~9の記載は,法36条6項1号に規定する要件に適合しない(以下「申立理由3」という。なお,当該要件を「サポート要件」という場合がある。)。
(4) 本件特許に係る特許請求の範囲の請求項1~9の記載は,法36条6項2号に規定する要件に適合しない(以下「申立理由4」という。なお,当該要件を「明確性要件」という場合がある。)。
(5) 請求項1及び3~9に係る発明は,甲3発明あるいは甲4発明を主たる引用発明,甲8に記載された発明を従たる引用発明としたとき,これら引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,法29条2項の規定により特許を受けることができない発明である(平成29年9月6日付け意見書において追加された申立理由。以下「申立理由5」という。)。
(6) そして,上記申立理由1~5にはいずれも理由があるから,本件の請求項1~9に係る発明についての特許は,法113条2号及び4号に該当し,取り消されるべきものである。
(7) また,証拠方法として書証を申出,以下の文書(甲1~8)を提出する。
・甲1: 特開2005-41795号公報
・甲2: 信越シリコーン社ホームページ(https://www.silicone.jp/products/personalcare/products/silicone_gels.shtml)
・甲3: 特開2001-302456号公報
・甲4: 特開2002-154918号公報
・甲5: 信越シリコーン社ホームページ(https://www.silicone.jp/products/personalcare/products/silicone_powders.shtml)
・甲6: AICA株式会社ホームページ(http://www.aica.co.jp/products/functional-materials/organic-particles/ganz-paru/technology.html)
・甲7: 信越シリコーン社「化粧品用シリコーン」カタログ(https://www.silicone.jp/catalog/pdf/pc_j.pdf)
・甲8: 特開平11-60440号公報
第7 申立理由についての当合議体の判断
当合議体は,以下述べるように,申立理由1~5にはいずれも理由はないと判断する。
1 申立理由1について
(1) 本件発明1と甲3発明とを対比すると,両者は,上記第5_2(1)アで認定するところの相違点1~4の点で相違するものと認められる。そして,これら相違点のうち,少なくとも相違点2~4は実質的な相違点であるといえる。そうすると,本件発明1は甲3発明と同一であるとはいえず,よって,甲3に記載された発明ではない。
甲4との関係についても,同様に,本件発明1は甲4発明と同一であるとはいえず,よって,甲4に記載された発明ではない。
(2) 請求項6の記載は請求項1を直接又は間接的に引用するものであるところ,請求項1に係る本件発明1が甲3あるいは甲4に記載された発明であるといえないのは上述のとおりであるから,請求項6に係る本件発明6についても同様に,甲3あるいは甲4に記載された発明とはいえない。
(3) よって,請求項1,3,4,6及び7に係る発明(決定注:本件訂正後の特許請求の範囲の記載に照らすと,本件発明1及び6。)は,甲3あるいは甲4に記載された発明であるから法29条1項3号に該当し特許を受けることができないとの異議申立人の主張に係る申立理由1は,理由がない。
2 申立理由2について
(1) 甲1に記載された発明
ア 甲1の記載
甲1には,次の記載がある。
・「【請求項1】
シリコーン油及びシリコーンゲル化剤を基材とし,且つ
(A)架橋型シリコーン・網状型シリコーンブロック共重合体からなるシリコーン粉末と,
(B)架橋型ポリメタクリル酸メチル(PMMA)粉末と,
を含有することを特徴とする油性化粧料。」
・「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は,油性化粧料,特に小皺や毛穴を,自然に素肌感を損なわずに目立たなくする補正効果に優れ,使用感や効果の持続性も良好な凹凸補正用油性化粧料に関する。」
・「【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の化粧料は,シリコーンゲル基材を連続相とし,これに粉体が分散した油性化粧料である。
本発明で用いるシリコーン粉末(A)は,架橋型シリコーン・網状型シリコーンブロック共重合体[INCI名:Vinyl Dimethicone/Methicone Silsesquioxane Crosspolymer,表示名:(ジメチコン/ビニルジメチコン/メチコン)クロスポリマー]からなり,形状としては,球状のものが効果や使用感の点で好適である。市販品では,例えば,信越化学工業(株)製のKSP-100,KSP-101,KSP-102,KSP-105等が好適に用いられる。平均粒子径としては,1~50μm,特に好ましくは1~5μmである。
上記シリコーン粉末(A)は,シリコーンゴム表面に3次元網目状のシリコーン樹脂を結合させて被覆した複合粉末であり,シリコーン油中で膨潤せず,シリコーン油をゲル化させるものではない。この点で,後述するシリコーンゲル化剤とは異なる。
【0009】
本発明で用いる架橋型PMMA粉末(B)は,通常化粧料に用いられているものであれば特に制限されないが,形状としては球状粉末が好ましく,またポーラスなものを用いれば,軽い感触でありまた伸びも良好である。
平均粒子径は,1~50μmのものを使用することができるが,特に好ましくは1~10μmである。市販品としては,例えばガンツパールGMP-820が好適に用いられる。
これら粉体(A),(B)はいずれも,伸びやさらさら感を与える粉体として化粧料に使用されているものであるが,本発明においては,この両者をシリコーンゲル基材中で併用することで,シワ・毛穴等を目立たなくする補正効果に優れ,しかも仕上がりの自然さ,素肌感,透明感も高い化粧料とすることができる。」
・「【0013】
本発明の基材であるシリコーンゲルは,シリコーン油とシリコーンゲル化剤とを含む。シリコーン油としては,常温で液体の,直鎖,分岐,あるいは環状構造を有するオルガノポリシロキサンであり,通常化粧料に配合可能なものであれば特に制限されない。例えば,ジメチルポリシロキサン,メチルフェニルポリシロキサンなどの鎖状ポリシロキサン,オクタメチルシクロテトラシロキサン,デカメチルシクロペンタシロキサン等の環状ポリシロキサンの他,アミノ変性ポリシロキサン,ポリエーテル変性ポリシロキサン,アルキル変性ポリシロキサン,フッ素変性ポリシロキサン等の変性ポリシロキサンなどが挙げられる。本発明においては,これらシリコーンの2種以上を用いてもよい。このうち,粘度が50cs以下の低粘度シリコーン油が好ましく,中でもオクタメチルシクロテトラシロキサン,デカメチルシクロペンタシロキサン,ジメチルポリシロキサン(6~10cs)等の揮発性シリコーンは,特にのびがよく,べたつきがないので好適である。…
【0014】
シリコーンゲル化剤としては,シリコーン油をゲル化するものであれば何れも使用可能であるが,本発明においては,架橋型メチルポリシロキサン[INCI名:Dimethicone/Vinyl Dimethicone Crosspolymer,表示名:(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー],あるいは架橋型メチルフェニルポリシロキサン[INCI名:Dimethicone/Phenyl Vinyl Dimethicone Crosspolymer,表示名:(ジメチコン/フェニルジメチコン)クロスポリマー]などの架橋型オルガノポリシロキサンが特に好適である。これらの架橋型ポリシロキサンは,オルガノポリシロキサンの架橋重合体で,一部あるいは全部に三次元構造を有するものである。架橋型ポリシロキサンは,シリコーン油中で膨潤してゲル化する能力が高く,また,使用感の点でも優れる。
【0015】
これらの架橋型ポリシロキサンを,50cs以下の低粘度シリコーン油と混合し,ペースト状としたものが市販されており,簡便に使用できる。市販品としては,例えば,信越化学工業(株)のKSG-15(架橋型メチルポリシロキサン4~10%とデカメチルシクロペンタシロキサン90~96%の混合物),KSG-16(架橋型メチルポリシロキサン20~30%とメチルポリシロキサン70~80%の混合物),KSG-18(架橋型メチルフェニルポリシロキサン10~20%とメチルフェニルポリシロキサン80~90%の混合物)などが挙げられる。…」
・「【0017】
また,本発明においては,粉体成分を肌上に固定し,化粧塗膜の耐水性や耐油性を高めて効果を持続させるために,油性皮膜形成剤を配合することが好適である。このような皮膜形成剤としては,他の成分との相溶性や,補正効果や仕上がりへの影響,持続性付与効果等の点で,有機シリコーン樹脂,特にトリメチルシロキシケイ酸が好適である。トリメチルシロキシケイ酸を配合することにより,本発明の効果を損なわずに,肌への密着性,補正効果や仕上がり感の持続性を向上させることができる。
【0018】
本発明の化粧料は,シリコーンゲルを基材とする油性化粧料であるが,シリコーン油以外の油分を本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合してもよい。このような油分としては,例えば,液体油脂,固体油脂,ロウ,炭化水素,高級脂肪酸,高級アルコール,エステル油,フッ素系油分などが挙げられる。…」
・「【0020】
【実施例】
以下,具体例を挙げて本発明をより詳細に説明するが,本発明は,これらに限定されるものではない。なお,配合量については,特に指定のない限り,質量%で示す。…」
・「【0033】
処方例1 ゲル状化粧料
(1)シリコーンゲル化剤(KSG-16) 42%
(2)メチルポリシロキサン(6cs) 15
(3)デカメチルシクロペンタシロキサン 15
(4)シリコーン粉末(A)(KSP-105) 9
(5)PMMA粉末(B)(ガンツパールGMP-820) 10
(6)トリメチルシロキシケイ酸 3
(7)イソノナン酸イソノニル 2
(8)ベヘニル変性アクリレートシリコーン 2
(9)疎水性シリカ粉末 1
(10)微粒子酸化チタン(20~30nm) 1
【0034】
(製法)
成分(1)~(6)を減圧下,良く混合分散し,これに成分(7)及び(8)を添加して,さらに混合分散した。得られた分散液を攪拌しながら,成分(9)~(10)を添加し,十分に混合後,容器に充填して,油性ゲル状化粧料を得た。」
イ 甲1発明
上記アでの摘記,特に処方例1に係る記載から,甲1には次のとおりの発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認める。
「次の成分を配合する凹凸補正用のゲル状化粧料。
・ シリコーンゲル化剤(KSG-16) 42質量%
・ メチルポリシロキサン(6cs) 15
・ デカメチルシクロペンタシロキサン 15
・ シリコーン粉末(A)(KSP-105) 9
・ PMMA粉末(B)(ガンツパールGMP-820) 10
・ トリメチルシロキシケイ酸 3
・ イソノナン酸イソノニル 2
・ ベヘニル変性アクリレートシリコーン 2
・ 疎水性シリカ粉末 1
・ 微粒子酸化チタン(20~30nm) 1 」
(2) 本件発明1について
ア 甲1発明との対比,判断
(ア) 一致点,相違点
本件発明1と甲1発明を対比すると,甲1発明の「トリメチルシロキシケイ酸」は本件発明1の「(b)皮膜形成性シリコーン樹脂」に,「シリコーン粉末(A)(KSP-105)」及び「PMMA粉末(B)(ガンツパールGMP-820)」はいずれも「(c)屈折率1.4~1.8の粉体」に,「デカメチルシクロペンタシロキサン」は成分(e)としての「揮発性油剤」にそれぞれ相当する(甲1発明の「シリコーン粉末(A)(KSP-105)」については,甲1の【0008】からみて,本件発明1の「成分(c)屈折率1.4~1.8の粉体が,シリコーンエラストマー,架橋型シリコーン・網状型シリコーン共重合体,ポリスチレン,ポリウレタン,ポリエチレンから選ばれる1種または2種以上であ」るとの条件を満たすものでもある。)。
また,甲1発明の「シリコーンゲル化剤(KSG-16)」は,部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物である点で,本件発明1の「(a)ゲル状のフェニル基含有部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物」に対応するものである。
そうすると,両発明の一致点,相違点はそれぞれ次のとおりと認めることができる。
・ 一致点
次の成分(a)~(c);
(a)ゲル状の部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物
(b)皮膜形成性シリコーン樹脂
(c)屈折率1.4~1.8の粉体
を配合し,
前記成分(b)皮膜形成性シリコーン樹脂が,トリメチルシロキシケイ酸,アクリル-シリコーン系グラフト共重合体から選ばれる1種または2種以上であり,
前記成分(c)屈折率1.4~1.8の粉体が,シリコーンエラストマー,架橋型シリコーン・網状型シリコーン共重合体,ポリスチレン,ポリウレタン,ポリエチレンから選ばれる1種または2種以上であり,
更に,成分(e)として,揮発性油剤を配合し,
前記成分(b)皮膜形成性シリコーン樹脂の配合量が,0.5~5質量%であり,
前記成分(c)屈折率1.4~1.8の粉体の配合量が,3~20質量%である凹凸補正化粧料。
・ 相違点a
部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物(シリコーンゲル化剤(KSG-16))について,本件発明1は「フェニル基含有」の部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物であるのに対し,甲1発明は「フェニル基含有」でない点。
・ 相違点b
本件発明1は,成分(a)~(c)のほかに,更に,「成分(d)として,フェニル基含有非架橋型オルガノポリシロキサンを配合」すると特定するのに対し,甲1発明はそのような特定を有しない点。
・ 相違点c
本件発明1は,成分(a)~(c)のほかに,更に,「成分(f)として,モノステアリン酸硬化ヒマシ油,ヒドロキシステアリン酸コレステリル,マカデミアンナッツ脂肪酸フィトステリル,ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチルから選ばれる1種または2種以上のペースト油を配合」し,その配合量が「0.5~5質量%」であると特定するのに対し,甲1発明はそのような特定を有しない点。
(イ) 相違点についての検討
a 相違点aについて
異議申立人は,甲1の【0015】の記載を根拠に,甲1発明のフェニル基を含有しない部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物である「シリコーンゲル化剤(KSG-16)」に代えて,フェニル基を含有する部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物である「KSG-18」を採用することは想到容易であると主張するので,当該主張の当否について,以下検討する。
本件明細書の【0006】の記載,並びに,部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物としてフェニル基を含有しないものを使用した場合の比較例1と,フェニル基を含有するものを使用した場合の実施例1~8との対比から,フェニル基を含有するもののほうが,フェニル基を含有しないものに比し,本件発明1の解決課題,特に化粧膜の柔らかさを実現する点で有利な効果を奏することが理解できるところ,このような効果が当業者の予測の範囲内であるということはできない(決定注:相違点aについて検討するにあたり,甲1発明は,本件明細書における比較例1に対応するものといえる。)。さすれば,甲1の【0015】にはシリコーンゲル化剤の例としてKSG-16とKSG-18が併記されてはいるものの,だからといって,甲1発明の「KSG-16」を「KSG-18」に代えることが想到容易とまではいえない。
b 相違点cについて
上記相違点4について検討したことと同旨である。甲1発明において,さらに「モノステアリン酸硬化ヒマシ油,ヒドロキシステアリン酸コレステリル,マカデミアンナッツ脂肪酸フィトステリル,ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチルから選ばれる1種または2種以上」との限定の付された特定のペースト油を,特定の配合量(0.5~5質量%)で配合しようとする動機は見あたらない。
(ウ) 小括
以上のとおりであるから,上記相違点bについて検討するまでもなく,本件発明1は,甲1に記載された発明(甲1発明)を主たる引用発明としたとき,甲1発明から想到容易であるということはできない。
(3) 本件発明5,6及び9について
本件訂正後の請求項5,6及び9の記載は請求項1を直接又は間接的に引用するものであるから,これら請求項に係る本件発明5,6及び9についても,本件発明1と同様に,甲1発明から想到容易であるということはできない。
(4) まとめ
以上のとおりであるから,申立理由2には理由がない。
3 申立理由4について
事案に鑑み,申立理由3に先だって,申立理由4について検討する。
(1) 異議申立人は,請求項1の「ゲル状のフェニル基含有部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物」の意味が不明である,すなわち,「フェニル基含有部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物」はゲル化剤ではあるが単なる樹脂粉末であって,単体ではゲル状とはなり得ないため,請求項1の記載はいわゆる明確性要件を満足しない旨主張する。
(2) そこで上記主張の当否について検討するに,「フェニル基含有部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物」は,異議申立人が主張するように単体では樹脂粉末である一方,本件明細書(特に【0013】)にも記載されているように,炭化水素油やエステル油などのベースオイルが配合されることでゲル状を呈することが技術常識である。
であれば,請求項1の「ゲル状のフェニル基含有部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物」とは,単体としてのフェニル基含有部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物を意味するものではなく,何らかのベースオイルが配合されたことでゲル状を呈するフェニル基含有部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物を意味するものと当業者は理解するといえる。
(3) よって,請求項1の「ゲル状のフェニル基含有部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物」の意味が不明であるということはできず,異議申立人の上記主張は採用できない。また,このことは,他の請求項(請求項5,6及び9)についても同様である。
申立理由4には理由がない。
4 申立理由3について
(1) 異議申立人は,本件明細書の【0013】の記載によれば,請求項1の「ゲル状のフェニル基含有部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物」の「ゲル」とは,フェニル基含有部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物に炭化水素油やエステル油を配合したものであるとされるところ,請求項1には「ゲル状のフェニル基含有部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物」と記載されているのみで,炭化水素油やエステル油の配合について記載されていないから,本件発明はいわゆるサポート要件を満足しない旨主張する。
(2) そこで,上記主張の当否について検討するに,上記3で検討のとおり,請求項1の「ゲル状のフェニル基含有部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物」とは,炭化水素油やエステル油などの何らかのベースオイルが配合されたことでゲル状を呈するフェニル基含有部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物を意味するものと当業者は理解するといえる。
そうすると,請求項1の「ゲル状のフェニル基含有部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物」について,炭化水素油やエステル油の配合についての記載がないからといって,請求項1の記載がサポート要件を満足しないということにはならない。
(3) よって,異議申立人の上記主張は採用できない。また,このことは他の請求項(請求項5,6及び9)についても同様である。
取消理由3には理由がない。
5 申立理由5について
(1) 申立理由5は,特許異議申立書について,証拠(甲8)を追加しつつ,特許異議の申立ての理由を補正するものであり,実質的にみて,その要旨を変更するものである(法115条2項)。
(2) また,上記第5において検討のとおり,本件発明1,5,6及び9は,本件特許の出願前に頒布された刊行物(甲3,甲4)に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであって特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものとはいえないところ,このような判断は,上記相違点3及び4に係る構成が想到容易とはいえないことに基づくものである。そして,申立理由5はこれら相違点とは何ら関係がなく,上記判断を左右するものではない。
そうすると,仮に,申立理由5を検討したとしても,申立理由5に理由がないこととなるのは,上記第5において検討のとおりである。
第8 むすび
したがって,決定の予告に係る取消理由並びに異議申立人の主張する申立理由1~5によっては,請求項1,5,6及び9に係る特許を取り消すことはできない。また,他に当該特許が法113条各号のいずれかに該当すると認めうる理由もない。
請求項2~4,7及び8に係る特許については,上述のとおり,これら請求項を削除する訂正を含む本件訂正が認容されるため,特許異議申立ての対象となる特許が存在しない。
よって,結論の第2項及び第3項のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2016-700915