特許異議申立
2016-700742
マグネトロンスパッタリング用ターゲットおよびその製造方法
- 審判番号
- 2016-700742
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2011-252103
- 登録番号
- 特許第5863411号(P5863411)
- 請求日
- 2016年08月16日
- 審決日
- 2017年05月31日
- 公報発行日
- 2017年10月27日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】田中貴金属工業株式会社
- 【権利者代理人】松山 圭佑
- 【権利者代理人】高矢 諭
- 【権利者代理人】牧野 剛博
- 【権利者代理人】藤田 崇
- 【異議申立人】特許業務法人 藤央特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 新居田 知生
- 審判官 後藤 政博
- 審判官 永田 史泰
- 分類
- P1651.113-ZC (C23C) / P1651.121-ZC (C23C) / P1651.536-ZC (C23C) / P1651.537-ZC (C23C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5863411号発明「マグネトロンスパッタリング用ターゲットおよびその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第5863411号の請求項12~19に係る特許を取り消す。
同請求項1~11に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第5863411号の請求項1~19に係る特許についての出願は、平成23年11月17日に特許出願され、平成28年 1月 8日に特許権の設定登録がされ、その後、特許異議申立人特許業務法人藤央特許事務所(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、平成28年12月16日付けで取消理由が通知されたが、特許権者からは応答がなかったものである。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~19に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1~19に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
【請求項1】
強磁性金属元素を有するマグネトロンスパッタリング用ターゲットであって、
前記強磁性金属元素を含む磁性相と、前記強磁性金属元素を含み、かつ、構成元素またはその含有割合の異なる複数の非磁性相と、酸化物相とを有しており、
前記複数の非磁性相のうちの少なくとも1つは、前記磁性相よりも細かく前記酸化物相と分散し合っていることを特徴とするマグネトロンスパッタリング用ターゲット。
【請求項2】
請求項1において、
前記複数の非磁性相のうちの1つは、他の非磁性相よりも細かく前記酸化物相と分散し合っていることを特徴とするマグネトロンスパッタリング用ターゲット。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記磁性相は、相の平均の大きさが40~80μmであることを特徴とするマグネトロンスパッタリング用ターゲット。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかにおいて、
前記複数の非磁性相は、2種の非磁性相であることを特徴とするマグネトロンスパッタリング用ターゲット。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかにおいて、
前記強磁性金属元素は、Coであることを特徴とするマグネトロンスパッタリング用ターゲット。
【請求項6】
請求項5において、
前記磁性相は、Coの含有割合が85at%以上であるCo-Cr合金相からなることを特徴とするマグネトロンスパッタリング用ターゲット。
【請求項7】
請求項5において、
前記磁性相は、Co単体であることを特徴とするマグネトロンスパッタリング用ターゲット。
【請求項8】
請求項5~7のいずれかにおいて、
前記非磁性相のうちの少なくとも1つは、Coの含有割合が0at%より大きく75at%以下であるCo-Cr合金相またはCoの含有割合が0at%より大きく73at%以下であるCo-Cr-Pt合金相からなることを特徴とするマグネトロンスパッタリング用ターゲット。
【請求項9】
請求項5~8のいずれかにおいて、
前記非磁性相のうちの少なくとも1つは、Coの含有割合が12at%以下であるCo-Pt合金相からなることを特徴とするマグネトロンスパッタリング用ターゲット。
【請求項10】
請求項1~9のいずれかにおいて、
前記酸化物相は、SiO2、TiO2、Ti2O3、Ta2O5、Cr2O3、CoO、Co3O4、B2O5、Fe2O3、CuO、Y2O3、MgO、Al2O3、ZrO2、Nb2O5、MoO3、CeO2、Sm2O3、Gd2O3、WO2、WO3、HfO2、NiO2のうちの少なくとも1種を含むことを特徴とするマグネトロンスパッタリング用ターゲット。
【請求項11】
請求項1~10のいずれかにおいて、
前記ターゲットは、磁気記録層の形成に用いられることを特徴とするマグネトロンスパッタリング用ターゲット。
【請求項12】
強磁性金属元素を含む第1の非磁性金属粉末を酸化物粉末と混合分散して非磁性混合粉末を得る工程と、
前記得られた非磁性混合粉末と、前記強磁性金属元素を含む磁性金属粉末と、前記強磁性金属元素を含み、かつ、構成元素またはその含有割合が前記第1の非磁性金属粉末とは異なる第2の非磁性金属粉末と、を混合分散して加圧焼結用混合粉末を得る工程と、
を有することを特徴とするマグネトロンスパッタリング用ターゲットの製造方法。
【請求項13】
強磁性金属元素を含む第1の非磁性金属粉末を酸化物粉末と混合分散して非磁性混合粉末を得る工程と、
前記得られた非磁性混合粉末と、前記強磁性金属元素を含む磁性金属粉末と、前記強磁性金属元素を含み、かつ、構成元素またはその含有割合が前記第1の非磁性金属粉末とは異なる第2の非磁性金属粉末と、酸化物粉末と、を混合分散して加圧焼結用混合粉末を得る工程と、
を有することを特徴とするマグネトロンスパッタリング用ターゲットの製造方法。
【請求項14】
請求項12または13において、
前記複数の非磁性金属粉末は、2種の非磁性金属粉末であることを特徴とするマグネトロンスパッタリング用ターゲットの製造方法。
【請求項15】
請求項12~14のいずれかにおいて、
前記強磁性金属元素は、Coであることを特徴とするマグネトロンスパッタリング用ターゲットの製造方法。
【請求項16】
請求項15において、
前記磁性金属粉末はCoおよびCrを主成分として含み、該磁性金属粉末におけるCoの含有割合が85at%以上であることを特徴とするマグネトロンスパッタリング用ターゲットの製造方法。
【請求項17】
請求項15において、
前記磁性金属粉末はCo単体からなることを特徴とするマグネトロンスパッタリング用ターゲットの製造方法。
【請求項18】
請求項12~17のいずれかにおいて、
前記複数の非磁性金属粉末のうち少なくとも1つは、Coの含有割合が0at%より大きく75at%以下であるCo-Cr合金またはCoの含有割合が0at%より大きく73at%以下であるCo-Cr-Pt合金からなることを特徴とするマグネトロンスパッタリング用ターゲットの製造方法。
【請求項19】
請求項12~18のいずれかにおいて、
前記複数の非磁性金属粉末のうち少なくとも1つは、Coの含有割合が12at%以下であるCo-Pt合金からなることを特徴とするマグネトロンスパッタリング用ターゲットの製造方法。
第3 特許異議の申立てについて
1 取消理由通知について
(1)取消理由通知の概要
本件請求項12~19に係る特許に対して、平成28年12月16日付けで特許権者に通知した取消理由は、要旨次のとおりである。
(ア)本件請求項12~19に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消すべきものである。
(イ)本件特許の請求項12~19に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
甲4:米国特許出願公開第2008/0202916号明細書
甲5:特開2010-255088号公報
甲6:国際公開2009/119812号
甲7:特許第4673453号公報
(2)判断
平成28年12月16日付けで、本件請求項12~19に係る特許について取消理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者からは応答がなかった。
そして,上記取消理由は妥当なものと認められるので、本件請求項12~19に係る特許は,この取消理由によって取り消されるべきものである。
2 本件請求項1~11に係る特許に対する特許異議申立理由について
(1)本件請求項1~11に係る特許に対する特許異議申立理由
取消理由の対象としなかった本件請求項1~11に係る特許について、特許異議申立人は、概ね以下の理由を申し立てた。
ア 特許法第36条第6項第1号
(ア)本件特許明細書に実施例として具体的に記載されたCo-Cr合金、及びCo-Pt合金のターゲットを、膨大な金属元素の組合せ及び組成比を含む本件請求項1~11に係る発明にまで拡張ないし一般化することはできない。
(イ)「非磁性相」及び「磁性相」の数、体積割合、大きさを何ら特定していない本件請求項1-11に係る発明にまで本件明細書に具体的に開示された内容を拡張ないし一般化することはできない。
イ 特許法第36条第4項第1号
(ア)本件明細書には、「磁性相」や「非磁性相」が元素分析等によって特定されていないため、本件請求項1~11で特定するターゲットが得られたことが立証されていないから、本件明細書等は、本件請求項1~11に係る発明について、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない。
(イ)甲1~3によれば、本件明細書に記載されたボールミル粉砕条件は、「過粉砕」に該当し、本件明細書等は、本件請求項1~11に係る発明について、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない。
甲1 中川有三外,「打撃回数あるいはボールミル総回転数と粉砕正味仕事と粉砕量」,化学工学,第24巻,第7号,1960年,p.500~507
甲2 神保元二,「ボールミル中の金属磨耗」,粉体工学研究会誌,Vol.1,No.1,p.32~37
甲3 八嶋三郎編,「粉砕と粉体物性」,昭和61年12月15日, p.158,159
ウ 特許法第36条第6項第2号
(ア)「磁性相」、及び「非磁性相」の用語は不明確であるから、本件請求項1~11に係る発明は明確でない。
(イ)本件明細書において、各相の元素分析が行われていないため、「磁性相」、及び「非磁性相」に関して特定されている本件請求項1~11に係る発明は明確でない。
エ 特許法第29条第1項第3号及び同法第29条第2項
(ア)本件請求項1,4,5,7に係る発明は、甲4に記載された発明であるか、あるいは、甲4に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(イ)本件請求項2に係る発明は、甲4に記載された発明であるか、甲4、又は甲4,5に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(ウ)本件請求項3に係る発明は、甲4~7に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(エ)本件請求項6に係る発明は、甲4~6に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(オ)本件請求項8~10に係る発明は、甲4に記載された発明であるか、あるいは、甲4,5に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(カ)本件請求項11に係る発明は、甲4,5に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
甲4:米国特許出願公開第2008/0202916号明細書
甲5:特開2010-255088号公報
甲6:国際公開2009/119812号
甲7:特許第4673453号公報
(2)判断
ア 特許法第36条第6項第1号について
本件発明の課題は、「ターゲットに含まれる強磁性金属元素の含有量を減少させずに、マグネトロンスパッタリング時の漏洩磁束量を従来よりも増加させる」(本件明細書【0008】)というものである。
そして、本件発明は、「強磁性金属元素を含み、かつ構成元素またはその含有割合の異なる複数の非磁性相を設けるので、ターゲット全体における強磁性金属元素の量を一定に保ったまま、前記強磁性金属元素を含む磁性相のターゲット全体に対する体積分率を従来より減少させることができる。これにより、ターゲットに含まれる強磁性金属元素の含有量を減少させずに、マグネトロンスパッタリング時に、ターゲット表面からの漏洩磁束の量を従来よりも増加させることができ、マグネトロンスパッタリングを良好に行うことができる。」(本件明細書【0011】)というものである。
ここで、マグネトロンスパッタリング時の漏洩磁束の量に影響を与えるターゲットにおける物性は、ターゲットの磁気的性質であるところ、ターゲット全体の組成を一定に保ったまま、本件発明で特定する「磁性相」と「非磁性相」の磁性や配置状態を設定してターゲット全体の磁性を弱めることができることが、本件明細書の【0031】~【0041】などに説明され、また、本件明細書の【0042】~【0069】、及び【実施例】の欄に具体的な合金組成と磁性との関係が記載されている。
そうすると、実施例以外のターゲットにおいても、これらの記載にしたがって、ターゲット全体の磁性が弱まるように、合金組成と磁性との関係に基づいて、磁性相と非磁性相の組成、配置状態を設定すればよいことは、当業者であれば明らかである。
したがって、発明の詳細な説明には、本件請求項1~11に係る発明が、本件発明の課題を解決できることが認識できるように記載されているといえる。
よって、本件請求項1~11に係る発明は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないとはいえない。
イ 特許法第36条第4項第1号 について
発明の詳細な説明に記載された実施例は、各原料粉末の粒度、及び配合量が記載され、各原料粉末のボールミルによる混合回数などが具体的に記載されている。そして、各実施例において、加圧焼結により得られたターゲットの金属顕微鏡写真により、粒度、混合状態などを根拠として、酸化物相、非磁性相、及び磁性相を判別していることが説明されているから、発明の詳細な説明は、本願発明のターゲットが得られていることが実証されているといえる。
また、上記のとおり、実施例には、各原料粉末の粒度、及び配合量、ボールミルなどによる混合分散工程などの加圧焼結用粉末の調製工程、及び、ホットプレスによる加圧焼結条件が記載され、各実施例で作製したターゲットは漏洩磁束が増加することが示され、過粉砕などの問題が生じているとまではいえないから、発明の詳細な説明は、当業者であれば、本件発明を実施可能な程度に記載されているといえる。
よって、本件明細書の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないとはいえない。
ウ 特許法第36条第6項第2号について
「磁性相」、及び「非磁性相」については、本件明細書の【0010】に定義されている他に、本件明細書【0032】~【0041】に、磁性相、及び非磁性相について説明され、また、本願発明で特定する磁性相と非磁性相の配置により、ターゲット全体の組成を一定に保ったまま、漏洩磁束の量を増加させることができるように機能するものであることが説明され、さらに、本件明細書【0042】~【0063】に磁性相、及び非磁性相の組成と磁性との関係について具体的に記載されているから、「磁性相」、及び「非磁性相」の定義は、明確であるといえる。
また、非磁性相の分散状態については、【0012】で定義されている他に、上記イに記載したとおり、各実施例には、原料粉末の混合分散状態などに基づいて、非磁性相の分散が行われたことが説明されていることから、これらを参照すれば、本件発明の非磁性相の分散状態についての特定事項は明確であるといえる。
よって、本件請求項1~11に係る発明は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないとはいえない。
エ 特許法第29条第1項第3号及び同法第29条第2項について
(ア)甲4~7に記載された事項及び記載された発明
甲4には、以下の事項が記載されている。
(4a)「[0002]The present invention is directed to methods for controlling magnetic flux in sputtering targets containing magnetic and non-magnetic elements.・・・」
(仮訳(特許異議申立人による抄訳を参照して当審で作成した。以下、同じ。):「本発明は、磁性元素及び非磁性元素を含有するスパッタリングターゲットの磁束を制御する方法に関する。」)
(4b)「[0006]Magnetron sputtering of magnetic target materials is very prevalent in the electronics industry・・・」
(「磁性ターゲット材料のマグネトロンスパッタリングは、エレクトロニクス産業において著しく普及している。」)
(4c)「[0015]・・・ The method relates to selecting a particle size of at least one non-magnetic phase in a microstructure, where the particle size of the non-magnetic phase is greater than or equal to one micron. The particle size of the non-magnetic phase may be selected to be greater than or equal to 10 microns. At least one non-magnetic phase is combined with at least one magnetic phase in the microstructure, where the at least one magnetic phase is greater than or equal to 10 atomic percent, and where the at least one magnetic phase in the microstructure is greater than one micron in size. The selected particle size of the at least one non-magnetic phase decreases the diffusion between the at least one magnetic phase and the at least one non-magnetic phase in the microstructure. The particle size of the at least non-magnetic phase is selected so as to increase the pass through flux (PTF) of the sputtering target by decreasing the diffusion between the at least one magnetic phase and the at least one non-magnetic phase in the microstructure. ・・・
[0016]・・・In various exemplary embodiments, the size, or distribution, or a combination thereof of the non-magnetic phases in the microstructure are varied to adjust the magnetic leakage flux of the target.」
(「本方法は、非磁性相の粒子径が1ミクロン以上である、微細組織における少なくとも1つの非磁性相の粒子径の選択に関する。非磁性相の粒子径は、10ミクロン以上から選択されてもよい。少なくとも1つの非磁性相は、微細組織において少なくとも1つの磁性相と混合しており、ここで、少なくとも1つの磁性相は10原子パーセント以上であり、微細組織における少なくとも1つの磁性相はサイズが1ミクロン以上である。少なくとも1つの非磁性相の選択された粒子径は、微細組織において、少なくとも1つの磁性相と少なくとも1つの非磁性相との間の拡散を減少させる。少なくとも1つの非磁性相の粒子径は、微細組織において、少なくとも1つの磁性相と少なくとも1つの非磁性相との間の拡散を減少させることによってスパッタリングターゲットの漏洩磁束(PTF)を増加させるように選択される。・・・
・・・様々な例示の実施形態において、微細組織における非磁性相のサイズ、分布、又はその組合せは、ターゲットの漏洩磁束を調節するために変更される。」)
(4d)([0021]FIG. 1 is an SEM image of an exemplary Co-Cr-Pt-TiO2 powder composite material depicting four separate measurement areas (i.e., spectrum 1 , spectrum 2 , spectrum 3 , and spectrum 4 )the areas having various magnetic and non-magnetic phases in the microstructure, according to various exemplary embodiments of the present invention;」
(「図1は、本発明の様々な例示の実施形態に係る、4個の測定領域(すなわち、スペクトル1、スペクトル2、スペクトル3、及びスペクトル4)であり、微細組織における様々な磁性相及び非磁性相を有する領域を示す、例示のCo-Cr-Pt-TiO2粉末複合材料のSEM画像である。」)
(4e)(「[0038]・・・ For example, area 10 (spectrum 1), area 20 (spectrum 2), area 30 (spectrum 3), and area 40 (spectrum 4) illustrate the selection and distribution of different elements and phases in order to achieve a desired PTF in a Co-Cr-Pt-TiO2 composite. These areas (i.e., areas 10 , 20 , 30 , and 40) may have magnetic or non-magnetic phases, and may be comprised of either a single element or multiple elements. ・・・ exemplary atomic weight percentage values for each for area (spectrum 1 - spectrum 4 ) for an exemplary composite of Co-Cr-Pt-TiO2 are indicated in Table 1 below:
」
(「例えば、領域10(スペクトル1)、領域20(スペクトル2)、領域30(スペクトル3)、及び領域40(スペクトル4)は、Co-Cr-Pt-TiO2複合体において所望のPTFを達成するために、異なる元素と相の選択及び分布を示す。これらの領域(すなわち、領域10、20、30、40)は、磁性相又は非磁性相を有してもよく、単一の元素、又は複数の元素のいずれかから構成されてよい。 ・・・ 例示のCo-Cr-Pt-TiO2複合体における各領域(スペクトル1-スペクトル4)の原子重量パーセントを下記表1に示す。
表1
例示のCo-Cr-Pt-TiO2の元素別原子重量パーセント
スペクトル O Cr Co Pt
スペクトル1 - - - 100.00
スペクトル2 - 25.21 74.79 -
スペクトル3 - - 100.00 -
スペクトル4 - - 10.76 89.24
(4f)「[0039]・・・ a non-magnetic Pt phase of the Co-Cr-Pt-TiO2 composite is present in area 10 of FIG. 1 .」
(「Co-Cr-Pt-TiO2複合体の非磁性Pt相は、図1の領域10に存在する。」)
(4g)「[0040]・・the Cr and Co phases of the Co-Cr-Pt-TiO2 powder composite, given their composition, are in a non-magnetic phase.・・・」
(「Co-Cr-Pt-TiO2粉末複合体のCr相、及びCo相は、それらの組成を考慮すると、非磁性相にある。」)
(4h)「[0041]・・・in area 30 depicted in FIG. 1 , the Co phase is a magnetic phase portion of the overall microstructure of the Co-Cr-Pt-TiO2 powder composite, and co-exists with other phases in different areas of the microstructure.」
(「図1に示す領域30において、Co相は、Co-Cr-Pt-TiO2粉末複合体の全体の微細組織の異なる領域において、その他の相と共存している。」)
(4i)「[0042]・・・the Co and Pt phases present in this area of the microstructure are non-magnetic. ・・・」
(「微細組織のこの領域に存在するCo相、及びPt相は、非磁性である。」)
(4j)「[0051]・・・The raw materials of composition 500 of exemplary FIG. 10A are Co powder, Co-Cr powder, Pt powder, and TiO2, and the raw materials of composition 600 of Co powder, Cr powder, Pt powder, and TiO2. ・・・」
(「例示の図10Aの組成物500の原料は、Co粉末、Co-Cr粉末、Pt粉末、及びTiO2であり、組成物600の原料は、Co粉末、Cr粉末、Pt粉末、及びTiO2である。」)
(4k)「[0052]・・・Composition 600 of FIG. 10B may have area 610 , which illustrates Pt particles. Area 620 may depict Co or Cr particles, or a combination of Co and Cr particles. Area 630 , which is darkly shaded in comparison to area 620 , depicts TiO2 particles.」
(「図10Bの組成物600は、Pt粒子を示す領域600を有することができる。領域620は、Co粒子、若しくはCr粒子、又はCoとCr粒子の組合せを示すことができる。領域620と比較して黒い影の領域630は、TiO2粒子を示す。」)
(4l)「[0053]Composition 500 of FIG. 10A is comprised of the Co-Cr alloyed powder, while composition 600 of FIG. 10B is comprised of elemental Co powder and elemental Cr powder.」)
(「図10Aの組成物は、Co-Cr合金形成粉末から構成されている一方、図10Bの組成物600は、単体のCo粉末、及び単体のCr粉末から構成されている。」)
(4m)「[0055]In at least one of the various examples described above, Hot Isostatic Pressing (HIP) processes and temperatures are described for combining elements to form a microstructure. However, normal sintering,・・・ or other suitable processing methods and temperatures to facilitate these processing method may be used to combine the raw materials (e.g., Co powder, Cr powder, Co-Cr alloy powder, Pt powder, SiO2, TiO2, etc.) to form a composition (e.g., Co-Cr-Pt-TiO2, Co-Cr-Pt-SiO2, etc.).」
(上記の様々な例の少なくとも1つにおいて、熱間等方圧加圧法(HIP)プロセス、及び温度は、元素を混合させて微細組織を形成するために記載されている。しかしながら、通常の焼結・・・又はその他の処理加工方法、及びこれらの処理加工方法を容易にする温度は、原料(例えば、Co粉末、Cr粉末、Co-Cr合金粉末、Pt粉末、SiO2、TiO2など)を混合して組成物(例えば、Co-Cr-Pt-TiO2、Co-Cr-Pt-SiO2など)を形成するために用いてもよい。)
(4n)「
」
(図1)
(4o)「
」
(図10)
甲4の摘記(4d)~(4i)などによれば、Co-Cr-Pt-TiO2複合体からなるマグネトロンスパッタリング用ターゲットにおいて、該複合体は、Co相、Pt相、Co-Cr相、Co-Pt相の領域を有していることが記載されている。また、摘記(4j)~(4l)、(4o)によれば、図10の黒い影の領域はTiO2であるから、摘記(4n)の図1においても、黒い領域にTiO2が存在していると認められる。さらに、Pt相、Co-Pt相、及びCo-Cr相は、非磁性相であり、Co相は、磁性相であることが記載されている。
そうすると、甲4には、
「Coからなる磁性相と、Coを含む複数の非磁性相と、酸化物相とを含む、マグネトロンスパッタリング用ターゲット」
の発明(以下、「甲4発明」という。)が記載されていると認められる。
甲5には、特許請求の範囲の請求項12、実施例の記載などからみて、強磁性金属元素を含む非磁性金属粉末と、酸化物粉末とを、該酸化物粉末が所定の粒径以下になるまで混合分散して第1の混合粉末を得る工程、前記第1の混合粉末と、強磁性金属元素を含む磁性金属粉末とを、混合分散して、第2の混合粉末を得る工程を有する、マグネトロンスパッタリング用ターゲットの製造方法が記載されていると認められる。
また、甲5には、
「強磁性金属を含む非磁性相のマトリックス中に、酸化物相及び強磁性金属を含む磁性相が分散した構造である、マグネトロンスパッタリング用ターゲット」の発明が記載されていると認められる。
甲6の、特許請求の範囲、実施例の記載などからみて、甲6には、
「Crが5at%以上20at%以下、残余がCoであるCo-Cr合金からなる強磁性材料の中に、酸化物からなる非磁性材粒子が分散した非磁性材粒子分散型強磁性材スパッタリングターゲット」の発明が記載されていると認められる。
甲7の、特許請求の範囲、実施例の記載などからみて、甲7には、
「磁性相、金属素地、及び酸化物相を有する、マグネトロンスパッタリング用ターゲット」
の発明が記載されていると認められる。
(イ)対比
(a)本件請求項1に係る発明について
本件請求項1に係る発明と甲4発明とを対比すると、両者は、
「強磁性金属元素を有するマグネトロンスパッタリング用ターゲットであって、 前記強磁性金属元素を含む磁性相と、前記強磁性金属元素を含み、かつ、構成元素またはその含有割合の異なる複数の非磁性相と、酸化物相とを有する、マグネトロンスパッタリング用ターゲット。」
の点で一致し、以下の点で相違するものと認められる。
相違点:本件請求項1に係る発明は、「複数の非磁性相のうちの少なくとも1つは、前記磁性相よりも細かく前記酸化物相と分散し合っている」ものであるのに対し、甲4発明は、磁性相と非磁性相の分散状態について規定されていない点。
上記相違点について検討する。
摘記(4c)などによれば、甲4には、非磁性相、及び磁性相を所定の粒子径以上として、磁性相と非磁性相との拡散を減少させて漏洩磁束を増加させることが記載され、甲4発明において、非磁性相の粒子径を小さくすると拡散が増加すると考えられるから、非磁性相を磁性相よりも細かく酸化物相と分散させることの動機付けは存在しない。
したがって、上記相違点は、実質的な相違点であるから、本件請求項1に係る発明は、甲4に記載された発明であるとはいえない。
次に、上記相違点に係る事項を、当業者が容易に想到し得たものであるかどうかについて検討する。
甲5には、強磁性金属を含む非磁性相のマトリックス中に、酸化物相及び強磁性金属を含む磁性相が分散した構造であるマグネトロンスパッタリング用ターゲットの発明が記載され、甲5のターゲットの製造工程からみて、当該ターゲットは、非磁性相は磁性相よりも細かく酸化物相と分散し合っているといえるが、上記のとおり甲4において、非磁性相を細かくするという動機付けは存在しないから、甲4発明において、甲5の記載に基いて、上記相違点に係る事項を導出することはできない。
また、甲5は、ターゲットに1つの非磁性相を含むことが開示されているのみであるから、非磁性相が複数あることを開示する甲4を参照しても、甲5に記載の発明において、非磁性相を複数にすることを導出することはできない。
さらに、甲6,7に記載の発明、及びそれらの記載事項を検討しても、上記相違点に係る事項を導出することはできない。
したがって、本件請求項1に係る発明は、甲4~7に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
なお、特許異議申立人は、特許異議申立書において、「「非磁性相」(Spectrum4)が「磁性相」(Spectrum3)よりも細かく分散していることはFIG.1から明白である」と主張しているが、FIG.1の上記「非磁性相」と「磁性相」は、一部分の領域が示されているにすぎず、また、FIG.1のターゲットの製造工程において、本願発明の実施例のように、原料粉末の具体的な粒度などが記載されているものではないから、FIG.1の記載から、非磁性相が磁性相よりも細かく分散しているとまで認定することはできない。
(b)本件請求項2~11に係る発明について
本件請求項1に係る発明が、甲4に記載された発明であるとはいえず、また、甲4~7に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、本件請求項1に係る発明を特定するための事項をすべて含む本件請求項2、4,5,7~10に係る発明は、甲4に記載された発明であるとはいえず、また、同じく本件請求項2~11に係る発明は、甲4~7に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
第4 むすび
以上のとおりであるから、 本件請求項1~11に係る特許は,特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことができない。
また、他に本件請求項1~11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、本件請求項12~19に係る特許は,取消理由通知書に記載した取消理由によって取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2016-700742