特許異議申立
2016-700712
合わせガラス用中間膜、合わせガラス用中間膜の製造方法及び合わせガラス
- 審判番号
- 2016-700712
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2015-521174
- 登録番号
- 特許第5855796号(P5855796)
- 請求日
- 2016年08月09日
- 審決日
- 2017年10月31日
- 公報発行日
- 2018年01月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】積水化学工業株式会社
- 【権利者代理人】田口 昌浩
- 【権利者代理人】虎山 滋郎
- 【権利者代理人】特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所
- 【異議申立人】株式会社 クラレ
- 【異議申立人代理人】森住 憲一
- 審判長/審判官
- 審判長 大橋 賢一
- 審判官 後藤 政博
- 審判官 山本 雄一
- 分類
- P1651.113-YAA(C03C) / P1651.121-YAA(C03C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5855796号発明「合わせガラス用中間膜、合わせガラス用中間膜の製造方法及び合わせガラス」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第5855796号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~14〕について訂正することを認める。
特許第5855796号の請求項1~3、5~14に係る特許を維持する。
特許第5855796号の請求項4に係る特許についての申立を却下する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第5855796号の請求項1~14に係る特許についての出願は、平成27年 3月31日(優先権主張 平成26年 3月31日、日本国)を国際出願日とする特許出願であって、平成27年12月18日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人 株式会社クラレ (以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、平成28年11月28日付けで取消理由が通知され、平成29年 1月27日付けで意見書の提出及び訂正の請求がされ、平成29年 3月 9日付けで特許異議申立人から意見書が提出され、平成29年 5月31日付けで取消理由が通知され、平成29年 7月27日付けで意見書の提出及び訂正の請求がされ、平成29年 8月31日付けで特許異議申立人から意見書が提出されたものである。
第2 訂正請求について
1 訂正の内容
平成29年 7月27日付けの訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである(下線部は訂正箇所)。
なお、平成29年 1月27日付けの訂正請求は、取り下げられたものとみなす。
(1)訂正事項1
請求項1に
「前記第1の層は、ジヨードメタンを用いて液滴法で測定した接触角が40.1°より大きい値を示す第1の層であるか、又は、エチレングリコールを用いて液滴法で測定した接触角が54.2°より大きい値を示す第1の層である」
とあるのを、
「前記第1の層は、ジヨードメタンを用いて液滴法で測定した接触角が41.2°以上の値を示す第1の層であり、かつ、エチレングリコールを用いて液滴法で測定した接触角が57.4°以上の値を示す第1の層であり、前記第1の層は、マグネシウムを100ppm以下で含む」
に訂正する。
(2)訂正事項2
請求項4を削除する。
(3)訂正事項3
請求項5に
「請求項1~4のいずれか1項」
とあるのを、
「請求項1~3のいずれか1項」
に訂正する。
(4)訂正事項4
請求項6に
「請求項1~5のいずれか1項」
とあるのを、
「請求項1~3及び5のいずれか1項」
に訂正する。
(5)訂正事項5
請求項9に
「請求項1~5のいずれか1項」
とあるのを、
「請求項1~3及び5のいずれか1項」
に訂正する。
(6)訂正事項6
請求項10に
「請求項1~9のいずれか1項」
とあるのを、
「請求項1~3及び5~9のいずれか1項」
に訂正する。
(7)訂正事項7
請求項13に
「請求項1~12のいずれか1項」
とあるのを、
「請求項1~3及び5~12のいずれか1項」
に訂正する。
(8)訂正事項8
請求項14に
「請求項1~12のいずれか1項」
とあるのを、
「請求項1~3及び5~12のいずれか1項」
に訂正する。
(9)訂正事項9
明細書中の実施例3、6~11を、それぞれ参考例3、6~11に訂正する。
具体的には、明細書の【0170】に
「実施例2~3及び比較例1」
とあるのを、
「実施例2、参考例3及び比較例1」
に訂正する。
明細書の【0171】、【0175】にそれぞれ
「実施例4~11」
とあるのを、
「実施例4~5、参考例6~11」
に訂正する。
明細書の【0181】の【表2】に
「実施例3」
とあるのを、
「参考例3」
に訂正する。
明細書の【0182】の【表3】に
「実施例6」~「実施例11」
とあるのを、
それぞれ、「参考例6」~「参考例11」
に訂正する。
2 訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載された「合わせガラス用中間膜」において、第1の層の接触角、金属元素の種類及び含有量をより限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
当該訂正事項は、本件明細書【0033】、【0034】及び【0116】に記載されているから、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものであって、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項4を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)訂正事項3~8について
訂正事項3~8は、選択的に引用する請求項の一部を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4)訂正事項9について
訂正事項9は、訂正事項1による特許請求の範囲の訂正に伴って、明細書の【0170】、【0171】、【0175】、【0181】の表2及び【0182】の表3の記載を整合させるための訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
そして、訂正事項1と同様に、訂正事項9は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(5)一群の請求項について
上記訂正事項1~8に係る訂正前の請求項1~14は、請求項2~14が、直接又は間接的に請求項1を引用する関係にあるから、一群の請求項であり、上記訂正事項1~8は、この一群の請求項について請求されたものである。
また、訂正事項9は、この一群の請求項の全てについて明細書を訂正するものと認められる。
3 訂正の適否についてのむすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~14〕について訂正することを認める。
第3 特許異議申立てについて
1 本件発明の認定
本件訂正請求により訂正された本件特許の請求項1~3、5~14に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明3」、「本件発明5」~「本件発明14」という。)は,訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~3、5~14に記載された以下の事項により特定されるとおりのものであると認める(下線部は、訂正箇所)。
【請求項1】
1層の構造又は2層以上の構造を有する合わせガラス用中間膜であって、
中間膜における表面層として、熱可塑性樹脂と可塑剤と金属元素とを含む第1の層を備え、
前記第1の層は、ジヨードメタンを用いて液滴法で測定した接触角が41.2°以上の値を示す第1の層であり、かつ、エチレングリコールを用いて液滴法で測定した接触角が57.4°以上の値を示す第1の層であり、
前記第1の層は、マグネシウムを100ppm以下で含む、合わせガラス用中間膜。
【請求項2】
前記第1の層中の前記金属元素の含有量が20ppm以上、200ppm以下である、請求項1に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項3】
アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩の添加に由来して、前記第1の層が、前記金属元素を含む、請求項1又は2に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項5】
酢酸マグネシウム又は2-エチル酪酸マグネシウムの添加に由来して、前記第1の層が、前記金属元素を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項6】
2層以上の構造を有する合わせガラス用中間膜であって、
中間膜における表面層として、熱可塑性樹脂と可塑剤とを含む第2の層を備え、
前記第1の層の第1の表面側に、前記第2の層が配置されている、請求項1~3及び5のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項7】
前記第2の層が、金属元素を含み、
前記第2の層は、ジヨードメタンを用いて液滴法で測定した接触角が40.1°より大きい値を示す第2の層であるか、又は、エチレングリコールを用いて液滴法で測定した接触角が54.2°より大きい値を示す第2の層である、請求項6に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項8】
3層以上の構造を有する合わせガラス用中間膜であって、
熱可塑性樹脂と可塑剤とを含有する第3の層をさらに備え、
前記第1の層と前記第2の層との間に、前記第3の層が配置されている、請求項6又は7に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項9】
1層の構造を有する合わせガラス用中間膜であって、
前記第1の層のみを備える、請求項1~3及び5のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項10】
前記第1の層に含まれる熱可塑性樹脂が、ポリビニルアセタール樹脂である、請求項1~3及び5~9のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項11】
前記第1の層に含まれる熱可塑性樹脂が、ポリビニルアセタール樹脂であり、
前記第2の層に含まれる熱可塑性樹脂が、ポリビニルアセタール樹脂である、請求項6~8のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項12】
前記第1の層に含まれる熱可塑性樹脂が、ポリビニルアセタール樹脂であり、
前記第2の層に含まれる熱可塑性樹脂が、ポリビニルアセタール樹脂であり、
前記第3の層に含まれる熱可塑性樹脂が、ポリビニルアセタール樹脂である、請求項8に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項13】
請求項1~3及び5~12のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜の製造方法であって、 ベント式押出機を用いて、真空ベントのゲージ圧が500mmHg以上である条件で押出成形することにより、前記第1の層を得る工程を備える、合わせガラス用中間膜の製造方法。
【請求項14】
第1の合わせガラス部材と、
第2の合わせガラス部材と、
請求項1~3及び5~12のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜とを備え、
前記第1の合わせガラス部材と前記第2の合わせガラス部材との間に、前記合わせガラス用中間膜が配置されている、合わせガラス。
2 証拠
特許異議申立人から提出された証拠は、以下の甲第1~8号証である。
甲第1号証:特開2000-211952号公報
甲第2号証:特表2002-505210号公報
甲第3号証:特許第3635635号公報
甲第4号証:特開2010-201932号公報
甲第5号証:特開2013-91793号公報
甲第6号証:特開2013-108084号公報
甲第7号証:国際公開第2008/123150号
甲第8号証:実験結果報告書(平成28年8月5日付け 株式会社クラレ 作成)
3 取消理由の概要
(1)平成28年11月28日付けの取消理由
訂正前の請求項1~14に係る特許に対して平成28年11月28日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(ア)請求項1、2、4~12、14に係る発明は、甲第8号証を参酌すると、甲第1号証に記載された、実施例3又は比較例2の中間膜から認定される発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであり、請求項1、2、4~12、14に係る特許は取り消されるべきものである。
(イ)請求項1~3、7、8、13に係る発明は、甲第1~8号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、請求項1~3、7、8、13に係る特許は取り消されるべきものである。
(2)平成29年 5月31日付けの取消理由
平成29年 1月27日に訂正請求された請求項〔1~14〕に係る特許に対して平成29年 5月31日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
請求項1~3、5~14に係る発明は、甲第1、3、5~7号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、請求項1~3、5~14に係る特許は取り消されるべきものである。
4 甲第1~8号証の記載事項
(1)甲第1号証
甲第1号証には、次の事項が記載されている。
1a 「【特許請求の範囲】
【請求項1】 ポリビニルアセタール樹脂100重量部、トリエチレングリコールジ2-エチルヘキサノエート20~60重量部及びカルボン酸のマグネシウム塩混合物0.01~0.1重量部を含有する樹脂組成物が製膜されて成る合わせガラス用中間膜であって、上記カルボン酸のマグネシウム塩混合物が、2-エチル酪酸マグネシウム/酢酸マグネシウム(重量比)=0.5~3の関係を満たす混合物であることを特徴とする合わせガラス用中間膜。
【請求項2】 ポリビニルアセタール樹脂が、ブチラール化度が66~72モル%のポリビニルブチラール樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項3】 少なくとも一対のガラス間に、請求項1又は請求項2に記載の合わせガラス用中間膜を介在させ、一体化させて成ることを特徴とする合わせガラス。」
1b 「【0042】第1発明及び第2発明による中間膜においては、前述したポリビニルアセタール樹脂(ブチラール化度が66~72モル%のPVBを包含する)100重量部に対し、接着力調整剤として、2-エチル酪酸マグネシウム(以下、「C6Mg」と記す)と酢酸マグネシウム(以下、「C2Mg」と記す)とから成るカルボン酸のマグネシウム塩混合物(以下、単に「マグネシウム塩混合物」と記す)0.01~0.1重量部が添加されていることが必要であり、好ましくは0.03~0.08部である。
・・・
【0044】第1発明及び第2発明においては、上記マグネシウム塩混合物が、C6Mg/C2Mg(重量比)=0.5~3の関係を満たす混合物であることが必要であり、好ましくはC6Mg/C2Mg(重量比)=1~2.5である。・・・
【0045】上記C6Mg及びC2Mgは、・・・ 中間膜とガラスとの接着力を適正な範囲に保持させる機能を有し、その結果、得られる合わせガラスの衝撃吸収性や耐貫通性は優れたものとなる。
【0046】又、上記C6Mg及びC2Mgは、C6Mg/C2Mg(重量比)=0.5~3の関係を満たす割合で併用されることにより、・・・少量の添加量で優れた接着力調整効果を発揮する。その結果、得られる合わせガラスは、優れた衝撃吸収性や耐貫通性を有するものとなり、又、吸湿による白化現象も殆ど起こさないものとなる。
【0047】上記C6Mg/C2Mg(重量比)が0.5未満であると、・・・得られる合わせガラスの周縁部に白化現象を生じ易くなり、逆にC6Mg/C2Mg(重量比)が3を超えると、中間膜とガラスとの接着力が経時変化し易くなり、得られる合わせガラスの衝撃吸収性や耐貫通性が不安定となる。
【0048】又、前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する上記マグネシウム塩混合物の添加量が0.01重量部未満であると、接着力調整効果が不十分となって、得られる合わせガラスの衝撃吸収性や耐貫通性が十分に向上せず、逆にポリビニルアセタール樹脂100重量部に対するマグネシウム塩混合物の添加量が0.1重量部を超えると、得られる合わせガラスの透明性や耐白化性が低下する。」
1c 「【0053】第1発明及び第2発明による中間膜の製造方法は、特に限定されるものではなく、例えば、必須成分であるポリビニルアセタール樹脂(ブチラール化度が66~72モル%のPVBを包含する)、3GO及びC6Mg/C2Mg(重量比)=0.5~3の関係を満たすカルボン酸のマグネシウム塩混合物の各所定量と、必要に応じて添加される上記各種添加剤の1種もしくは2種以上の各所定量とを、例えばミキシングロールに供給し、混練して樹脂組成物を作製した後、この樹脂組成物をプレス成形機、カレンダーロール、押出機等を用いてシート状に製膜して可塑化ポリビニルアセタール樹脂膜を成形し、これを中間膜とすれば良い。
【0054】上記可塑化ポリビニルアセタール樹脂膜は、単層で中間膜とされても良いし、2枚以上が積層された状態で中間膜とされても良い。又、中間膜は単層で用いられても良いし、2枚以上が積層された状態で用いられても良い。」
1d 「【0064】(実施例1)
・・・
【0066】(2)中間膜の製造
・・・ポリビニルブチラール樹脂100部、可塑剤としてトリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート(3GO)39部、接着力調整剤として2-エチル酪酸マグネシウム(C6Mg)0.02部及び酢酸マグネシウム(C2Mg)0.01部をミキシングロールに供給し、混練して樹脂組成物を得た。上記樹脂組成物中のC6Mg/C2Mg(重量比)は2であった。次いで、得られた樹脂組成物をプレス成形機に供給し、温度150℃、圧力100kg/cm2 、時間30分間の条件でプレス成形を行って製膜し、厚さ0.8mmの中間膜を得た。
【0067】(3)合わせガラスの作製
上記で得られた中間膜を300mm×300mmに裁断して、2枚のフロートガラス(厚さ2.5mm)間に挟着し、この挟着物を真空バッグに入れて真空度20torrで20分間保持した後、真空にしたままの状態で90℃のオーブン内に入れ、30分間保持して予備接着を行った。次いで、予備接着された挟着物を真空バッグから取り出し、オートクレーブ中で温度150℃、圧力13kg/cm2 の条件で本接着を行って、合わせガラスを得た。」
1e 「【0068】(4)評価
(3)で得られた合わせガラスの性能 ・・・ を以下の方法で評価した。その結果は表2に示すとおりであった。
【0069】・・・ パンメル値:-18±0.6℃の温度下に16時間放置して調温した合わせガラスを頭部が0.45Kgのハンマーで叩いて、ガラスの粒子径が6mm以下となるまで粉砕した。次いで、ガラスが部分剥離した後の中間膜の露出度を予めグレード付けした限度見本で判定し、その結果を下記表1に示す判定基準に従ってパンメル値として表した。尚、パンメル値は初期及び50℃-4週間放置後の2条件について求めた。上記パンメル値が大きいほど中間膜とガラスとの接着力が大きく、パンメル値が小さいほど中間膜とガラスとの接着力が小さい。
【0070】
」
1f 「【0075】(実施例3)中間膜の製造において、接着力調整剤としてのC6Mgの添加量を0.02部及びC2Mgの添加量を0.02部としたこと以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。上記樹脂組成物中のC6Mg/C2Mg(重量比)は1であった。次いで、上記樹脂組成物を用いたこと以外は実施例1と同様にして中間膜及び合わせガラスを得た。
・・・
【0077】(比較例2)中間膜の製造において、接着力調整剤としてのC6Mgの添加量を0.08部及びC2Mgの添加量を0.04部としたこと以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。上記樹脂組成物中のC6Mg/C2Mg(重量比)は2であった。又、ポリビニルブチラール樹脂100部に対するC6Mg及びC2Mgの合計添加量は0.12部であった。次いで、上記樹脂組成物を用いたこと以外は実施例1と同様にして中間膜及び合わせガラスを得た。
・・・
【0079】実施例2及び3、並びに、比較例1~3で得られた5種類の合わせガラス及び中間膜の性能 ・・・ を実施例1の場合と同様にして評価した。その結果は表2に示すとおりであった。」
1g 「【0080】
【表2】
【0081】表2から明らかなように、本発明による実施例1~3の中間膜を用いて製せられた実施例1~3の合わせガラスは、初期及び経時後(50℃-4週間後)のいずれにおいても適正なパンメル値、即ち中間膜とガラスとの適正な接着力を保持しており、耐貫通性に優れていた。 ・・・」
(2)甲第2号証
甲第2号証には、次の事項が記載されている。
2a 「【特許請求の範囲】
【請求項1】 少なくとも1層のガラスと可塑化ポリビニルブチラールのシートとを含む積層体であって、前記ポリビニルブチラールは、前記ガラスの層と前記ポリビニルブチラールのシートとの間に予め選択された接着レベルを提供するための接着制御剤と、表面エネルギー改変剤とをその中に含有し、前記表面エネルギー改変剤は、前記ガラスの層と前記ポリビニルブチラールのシートと間の予め選択された接着レベルを実質的に変化させることなしに約52dyne/cm未満の全表面エネルギーを有する前記ポリビニルブチラールのシートを提供するのに十分な量で存在することを特徴とする積層体。
・・・
【請求項5】 改変剤が、中鎖から長鎖のカルボン酸の塩である。
【請求項6】 前記全表面エネルギーが35から52dyne/cmであることを特徴とする請求項1記載の積層構造体。
【請求項7】 前記接着制御剤が、有機酸のアルカリ金属またはアルカリ土類金属または遷移金属の塩からなる群から選ばれることを特徴とする請求項1記載の積層構造体。
・・・ 」
2b 「【0009】
・・・ 接着レベルが高すぎると、積層体がモノリシックになり、衝撃が吸収できなくなる可能性があるか、または、接着力が低すぎると、衝撃時に構造体からガラスの破片が飛散してしまうことは周知である。どちらの場合にも、接着レベルの変化により、積層体は許容しがたいものになる。
【0010】
したがって本発明の目的は、積層構造体の接着レベルまたは他の重要な特性を不利な方向に変化させることなく、耐層剥離性の付与により、好ましくない虫食い状、樹枝状の層剥離のない積層構造体を提供することである。
【0011】
(発明の概要)
本発明によれば、少なくとも1層のガラスと可塑化PVBのシートとを含むガラス/接着シートの積層構造体を提供するものであり、前記PVBには、前記ガラスの層と前記PVBのシートとの間に、自動車のフロントガラス、サイドウィンドウおよび車体ガラスとして使用するのに適した、予め選択された接着レベルを提供するための接着制御剤がその中に混合されており、前記PVBはまた、前記ポリマーのバルク中に表面エネルギー改変剤を、前記ポリビニルブチラール中間層のシートが約52dyne/cm未満の全表面エネルギーを有するような量で含んでいる。」
2c 「【0013】
本発明によれば、空気を分散状態に保ち、微細な気泡が合一して層剥離に成長するのを防ぐことによって、層剥離をなくすか、またはこれを大幅に減少させる。これはPVBシートのバルクの表面エネルギーを制御することにより達成される。一般に、その表面エネルギーは約52dyne/cm未満とすべきである。積層体が自動車のフロントガラスおよび他の自動車用途に使用できるように、ガラスとPVB中間層との間の接着レベルまたはコンプライアンス、剛性、エネルギー吸収特性のようなPVB中間層の諸特性のバランスを実質的に変化させることなく非溶解空気および揮発性物質を安定化するには、約35から50dyne/cmの範囲の表面エネルギーが有効である。」
2d 「【0014】
(詳細な説明)
・・・ 広範囲の接着制御剤が、ポリビニルブチラールのシート材と共に使用できる。本発明において、PVBシートは、トリエチレングリコールジ-n-ヘプタノエートまたはエステル類およびテトラエチレングリコールジ-n-ヘプタノエートからなる群から選ばれた相容可能な量のエステルで、またはトリエチレングリコールジ-2-エチルブチレートおよびトリエチレングリコールジ-2-ヘキサノエートのような相容可能な量の同様の分岐または非分岐のグリコールジエステルで可塑化され、接着制御剤として、アルカリまたはアルカリ土類金属カルボン酸塩、例えばギ酸塩、酢酸塩等のようなものを含んでいる。 ・・・ 他の適切な接着制御剤には、酢酸カリウム、ギ酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、ネオデカン酸マグネシウム、種々の有機酸の亜鉛およびカルシウム塩が含まれる。
【0015】
本発明には、 ・・・ 2-エチルヘキサン酸マグネシウムなどのような少なくとも炭素原子数4の中鎖から長鎖の分岐または非分岐のカルボン酸の塩など種々の表面エネルギー改変剤を使用することができる。 ・・・ 」
2e 「【0024】
表面エネルギーは当技術分野で公知の接触角法によって求められ、ここに要約する。この測定には、PVBシート材の平滑表面を用意しなければならない。PVBシート材の表面パターンは、 ・・・ PVB上の水およびヨウ化メチレンの前進および後退接触角を測定する。PVBの表面エネルギーを、下記に記載した調和平均法を使って、平均前進接触角から計算した。」
(3)甲第3号証
甲第3号証には、次の事項が記載されている。
3a 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均アセタール化度が66~72モル%のポリビニルアセタール100重量部とトリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート、オリゴエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート及びテトラエチレングリコールジ-n-ヘプタノエートからなる群より選択される少なくとも1種の可塑剤30~50重量部とからなる可塑化ポリビニルアセタール中に、炭素数2~10のカルボン酸のマグネシウム塩及び炭素数2~100カルボン酸のカリウム塩からなる群より選択される少なくとも2種の塩が合計5ppm以上含有されてなる可塑化ポリビニルアセタール樹脂膜からなることを特徴とする合わせガラス用中間膜。
【請求項2】
150℃で1時間放置した際の重量減少が3重量%以下であることを特徴とする請求項1記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項3】
厚さ2.0~4.0mmの2枚のガラスで挟み込んで合わせガラスを作製した後、前記合わせガラスを80℃、相対湿度95%の環境下に2週間放置した際の端辺からの白化距離が7mm以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項4】
ポリビニルアセタールは、平均ブチラール化度が66~72モル%のポリビニルブチラールであることを特徴とする請求項1、2又は3記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項5】
塩の含有量は、10~150ppmであることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項6】
請求項1、2、3、4又は5記載の合わせガラス用中間膜が用いられていることを特徴とする合わせガラス。」
3b 「【0021】
上記合わせガラス用中間膜は、上記可塑剤のほかに、炭素数2~10のカルボン酸のマグネシウム塩及び炭素数2~10のカルボン酸のカリウム塩からなる群より選択される少なくとも2種を含むが、これらは、接着力調整剤として用いられるものである。
・・・
【0023】
上記合わせガラス用中間膜中の炭素数2~10のカルボン酸のマグネシウム塩及び炭素数2~10のカルボン酸のカリウム塩からなる群より選ばれる2種以上の塩は、合わせガラス用中間膜中に合計量で5ppm以上含有されていることが好ましい。塩の含有量が5ppm未満では、得られる合わせガラス用中間膜の接着力の調整がしにくくなるからである。より好ましくは、10~150ppmである。塩の含有量が150ppmを超えた場合には、得られる中間膜の耐湿性が低下することがある。 」
3c 「【0033】
実施例1
(1)ポリビニルブチラールの合成
純水2890gに、平均重合度1700、鹸化度99.2モル%のポリビニルアルコール275gを加えて加熱溶解した。反応系を15℃に温度調節し、35重量%の塩酸201gとn-ブチルアルデヒド157gとを加え、この温度を保持しながら反応物を析出させた。その後 ・・・ 白色粉末状のポリビニルブチラールを得た。このポリビニルブチラールの平均ブチラール化度は68.5モル%であった。
【0034】
(2)合わせガラス用中間膜の製造
上記で得られたポリビニルブチラール100重量部に対し、トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート39重量部を配合し、更に、酢酸マグネシウムが20ppm、2-エチル酪酸マグネシウムが40ppmの含有量となるようにこれらを添加し、ミキシングロールで充分に溶融混練した後、プレス成形機を用いて150℃で30分間プレス成形し、平均膜厚0,76mmの合わせガラス用中間膜を得た。
【0035】
(3)合わせガラスの製造
上記で得られた合わせガラス用中間膜を、その両端から透明なフロートガラス(縦30cm×横30cm×厚さ3mm)で挟み込み、これをゴムバック内に入れ、20torrの真空度で20分間脱気した後、脱気したままオーブンに移し、更に、90℃で30分間保持しつつ真空プレスした。このようにして予備圧着された合わせガラスをオートクレーブ内で135℃、圧力12kg/cm2の条件で20分間圧着を行い、合わせガラスを得た。
【0036】
得られた合わせガラスを下記の評価方法で評価した。結果を表2に示した。
【0037】
評価方法1、パンメル値
中間膜のガラスに対する接着性はパンメル値で評価した。即ち、合わせガラスを-18±0.6℃の温度に16時間放置した後、これを頭部が0.45kgのハンマーで叩いてガラスの粒径が6mm以下になるまで粉砕した。ガラスが部分剥離した後の膜の露出度を予めグレード付けした限度見本で判定し、その結果を下記表1に従いパンメル値として表した。なお、パンメル値が大きい程ガラスとの接着力も大きく、パンメル値が小さい程ガラスとの接着力も小さい。
【0038】
【表1】
」
3d 「【0041】
実施例2
接着力調整剤として、酢酸カリウム70ppm、2-エチル酪酸マグネシウム20ppmとなるように添加した以外は実施例1と同様にして合わせガラスを作製し評価した。得られた結果を表2に示した。
【0042】
実施例3
接着力調整剤として、酢酸マグネシウム20ppm、2-エチルヘキシル酸マグネシウム60ppmとなるように添加した以外は実施例1と同様にして合わせガラスを作製し評価した。得られた結果を表2に示した。」
3e 「【0048】
【表2】
」
(4)甲第4号証
甲第4号証には、次の事項が記載されている。
4a 「【0001】
本発明は、複数種のポリビニルアセタール系樹脂層を積層した構造を有する熱可塑性樹脂シート及び熱可塑性樹脂シートを用いた積層体に関し、例えば車両等に用いられる合わせガラスの中間膜に好適に用いられる熱可塑性樹脂シート及び該熱可塑性樹脂シートを用いた積層体に関する。」
4b 「【0145】
(実施例1)
重合度1700のポリビニルアルコールをブチルアルデヒドでアセタール化してなるPVB(平均重合度1700、ブチラール化度68.5モル%、残存アセチル基0.7モル%)100重量部に、可塑剤としてトリエチレングリコール-ジ-2-エチルヘキサノエート(3GO)40重量部、接着力調整剤として酢酸マグネシウム/2-エチル酪酸マグネシウム混合物を樹脂組成物全量に対してマグネシウム量が50ppmになるように添加・混合し、第1のポリビニルアセタール樹脂層(A)を形成するための第1の樹脂を調製した。
【0146】
別途、重合度2000のポリビニルアルコールをアセトアルデヒド及びブチルアルデヒドを用いて共アセタール化することにより得られた共アセタール化ポリビニルアセタール樹脂(平均重合度2000、全アセタール化度69.5モル%、残存アセチル基1.3モル%、アセトアルデヒドによるアセタール化度37.8モル%、ブチルアルデヒドによるアセタール化度31.8モル%)100重量部に対し、可塑剤としてトリエチレングリコール-ジ-2-エチルヘキサノエート(3GO)25重量部を混合し、第2のポリビニルアセタール樹脂層(B)用の樹脂を調製した。
【0147】
多層押出し成形機に、上記第1,第2の樹脂を供給し、一体成形することにより、第1の外層(第1のポリビニルアセタール樹脂層(A))/内層(第2のポリビニルアセタール樹脂層(B))/第2の外層:第1のポリビニルアセタール樹脂層(A)の3層構造の厚さ0.75mmの熱可塑性樹脂シートを得た。」
(5)甲第5号証
甲第5号証には、次の事項が記載されている。
5a 「【0001】
本発明は、加熱ラミネート時に適切な範囲内で収縮するポリビニルアセタール系樹脂フィルムおよびその製造方法、並びに、そのフィルムを少なくとも一層に用いた多層構造体、そのフィルムを用いた太陽電池用封止材および太陽電池モジュール、そのフィルムを用いた合わせガラス用中間膜および合わせガラスに関する。」
5b 「【0053】
本発明のポリビニルアセタール系フィルムの製造方法としては、押出機を用いてフィルムを製造する方法が好適に用いられる。押出し時の樹脂温度は150~250℃が好ましく、180~230℃がより好ましい。樹脂温度が高くなりすぎるとポリビニルアセタール系樹脂が分解を起こし、揮発性物質の含有量が多くなる。逆に温度が低すぎると、やはり揮発性物質の含有量は多くなる。揮発性物質を効率的に除去するためには、押出機のベント口から減圧により、揮発性物質を除去することが好ましい。」
(6)甲第6号証
甲第6号証には、次の事項が記載されている。
6a 「【0001】
本発明は、太陽電池モジュールおよびエレクトロクロミック機能またはエレクトロルミネッセンス機能を有する合わせガラス等、酸成分による腐食の影響を受けやすい物質を含む、ガラスとの積層体に使用されるポリビニルアセタールフィルムおよびその製造方法、並びにそのフィルムを用いてなる太陽電池モジュールおよび合わせガラスに関する。」
6b 「【0064】
また、本発明の可塑化ポリビニルアセタールフィルムは、ヘッドスペースガスクロマトグラフィーで、120℃で30分加熱した後にフィルムに含まれるアルデヒドの3量体およびそれよりも低沸点の有機揮発分の合計量が500ppm以下であることが好ましく、300ppm以下であることがより好ましく、200ppm以下がさらに好ましく、100ppm以下が特に好ましく、50ppm以下が最も好ましい。特に、酸化によりカルボン酸を生じるアルデヒドの単量体、2量体および3量体の合計量が300ppm以下であることが好ましく、200ppm以下であることがより好ましく、150ppm以下がさらに好ましく、100ppm以下が特に好ましく、50ppm以下がより好ましい。」
6c 「【0075】
これらの添加剤を適宜添加し、フィルムを製造する方法は特に制限はなく、公知の方法が用いられるが、押出機を用いてフィルムを製造する方法が好適に用いられる。 ・・・ 揮発性物質を効率的に除去するためには、押出機のベント口から減圧により、揮発性物質を除去することが好ましい。」
(7)甲第7号証
甲第7号証には、次の事項が記載されている。
7a 「【0006】
本発明は、 ・・・ 製造時および取り扱い時に臭気の発生がほとんどない、ポリビニルブチラール樹脂ペレットを提供することを目的とする。」
7b 「【0027】
本発明の目的を達成するためには、溶融時に脱揮が行われる、すなわち溶融が減圧下で行われる必要がある。したがって、溶融工程には、少なくとも1ヶ所の減圧手段を備えた脱揮用のベント部を有する溶融押出し機を用いる。 ・・・ 脱揮の条件としては、減圧度が0.05MPa以上、好ましくは0.07MPa以上、さらに好ましくは0.08MPa以上である。
・・・
【0032】
・・・ 上記の方法により製造された、上記のような優れた特性を有するポリビニルブチラール樹脂ペレットが、ブチルアルデヒドおよび2-エチル-2-ヘキセナールの合計含有量が100重量ppm以下であるという特徴を有していることを見出した ・・・ 」
(8)甲第8号証
甲第8号証には、甲第1号証に記載の実施例3及び比較例2の合わせガラス用中間膜について、本件明細書【0172】~【0175】の記載の方法に倣って、ジヨードメタンを用いて液滴法で測定した接触角及びエチレングリコールを用いて液滴法で測定した接触角は、それぞれ実施例3が41.0°及び56.3°であり、比較例2が42.1°及び56.6°であることが示されている。
5 当審の判断
(1)特許法第29条第1項第3号について
(ア)本件発明1について
本件発明1と、甲第1号証の実施例3及び比較例2にそれぞれ記載された合わせガラス用中間膜とを対比する。
ジヨードメタンを用いて液滴法で測定した接触角及びエチレングリコールを用いて液滴法で測定した接触角について、本件発明1の合わせガラス用中間膜は、それぞれ41.2°以上の値及び57.4°以上の値を示すものである。
これに対して、甲第8号証を参照すると、甲第1号証の実施例3に記載された合わせガラス用中間膜は、上記各接触角がそれぞれ41.0°及び56.3°であり、また、甲第1号証の比較例2に記載された合わせガラス用中間膜は、上記各接触角がそれぞれ42.1°及び56.6°である。
そうすると、本件発明1と、甲第1号証の実施例3に記載された合わせガラス用中間膜とは、エチレングリコール及びジヨードメタンを用いて液滴法で測定した接触角の値がいずれも相違し、また、本件発明1と、甲第1号証の比較例2に記載された合わせガラス用中間膜とは、エチレングリコールを用いて液滴法で測定した接触角の値が相違している。
したがって、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえない。
(イ)本件発明2、3、5~14について
本件発明2、3、5~14は、本件発明1の特定事項の全てを含むものである。
そうすると、上記(ア)と同様の理由により、本件発明2、3、5~14は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえない。
(2)特許法第29条第2項について
(ア)本件発明1について
本件発明1は、合わせガラス用中間膜の第1の層は、マグネシウムを100ppm以下で含むものであり、ジヨードメタンを用いて液滴法で測定した接触角が41.2°以上の値を示し、かつ、エチレングリコールを用いて液滴法で測定した接触角が57.4°以上の値を示すことを特定することにより、中間膜と合わせガラス部材との接着力を効果的に良好にすることができるというものである(請求項1,本件明細書【0027】)。
また、前記第1の層は、ベント式押出機を用いて、真空ベントのゲージ圧が500mmHg以上である条件で押出成形することにより得られるというものである(本件明細書【0019】)。
そして、具体的には、実施例1、4において、マグネシウムの含有量を70ppmとした樹脂を、ベント式押出機を用いて、真空ベントのゲージ圧(ベント圧)を520mmHgの条件で押出成形して、ジヨードメタン及びエチレングリコールを用いて測定した接触角がそれぞれ42.1°及び57.4°であり、パンメル値が3.3である合わせガラス用中間膜を作成し、また、実施例2、5において、マグネシウムの含有量を80ppmとした樹脂を、ベント式押出機を用いて、真空ベントのゲージ圧(ベント圧)を700mmHgの条件で押出成形して、ジヨードメタン及びエチレングリコールを用いて測定した接触角がそれぞれ41.5°及び61.9°であり、パンメル値が2.5である合わせガラス用中間膜を作成している。
これに対して、記載事項1a~1cによれば、甲第1号証に記載された合わせガラス用中間膜は、接着力調整剤として、2-エチル酪酸マグネシウムと酢酸マグネシウムとからなるカルボン酸のマグネシウム塩混合物を0.01~0.1重量部含み、また、上記マグネシウム塩混合物は、2-エチル酪酸マグネシウム/酢酸マグネシウム(重量比)=0.5~3の関係を満たすように含むものである。
ここで、記載事項1aで規定された、ポリビニルアセタール樹脂100重量部、トリエチレングリコールジ2-エチルヘキサノエート20~60重量部が含まれる中間膜のマグネシウムの含有量(ppm)を計算すると、以下のとおりになる。
● マグネシウム含有量の上限値
ポリビニルアセタール樹脂100重量部
トリエチレングリコールジ2-エチルヘキサノエート20重量部
マグネシウム塩混合物0.1重量部
(2-エチル酪酸マグネシウム 0.033重量部
酢酸マグネシウム 0.066重量部 )
[0.033×(24.3/254.6)+0.066×(24.3/142.4)]÷[100+20+(0.1)]×106 ≒ 120ppm
● マグネシウム含有量の下限値
ポリビニルアセタール樹脂100重量部
トリエチレングリコールジ2-エチルヘキサノエート60重量部
マグネシウム塩混合物0.01重量部
(2-エチル酪酸マグネシウム 0.0075 重量部
酢酸マグネシウム 0.0025 重量部 )
[0.0075 ×(24.3/254.6)+0.0025 ×(24.3/142.4)]÷[100+60+(0.01)]×106 ≒ 7ppm
したがって、甲第1号証に記載された合わせガラス用中間膜は、マグネシウムの含有量が7ppm~120ppmの範囲内で、接着力調整剤を添加することを想定しているといえるから、マグネシウムの含有量は、本件発明1と重複している。
しかし、甲第1号証に記載された具体例である実施例1~3は、マグネシウムの含有量を上記と同様に計算すると、26~38ppmの範囲であるが、パンメル値は、5又は6であり、また、上記実施例3よりも接触角が大きい比較例2は、マグネシウムの含有量は104ppmであるが、パンメル値は4であり、本件明細書の表1と記載事項1eを参照すると、いずれも、本件明細書に記載の参考例の中間膜のパンメル値と重複する範囲のものにすぎず、当該参考例のジヨードメタン及びエチレングリコールによる接触角の少なくとも一方は、本件発明1で規定する接触角の値を充足しないから、甲第1号証において、本件発明1で規定する接触角を有する合わせガラス用中間膜が想定されているとまではいえない。
しかも、上記のとおり、本件発明1の実施例では、マグネシウムの含有量と押出成形時のベント圧を設定することにより、本件発明1で規定する接触角を得ているものであるのに対し、甲第1号証では、具体的には、樹脂組成物をプレス成型機に供給しプレス成形を行って成膜しているから、具体的な中間膜の成形方法も異なるものであって、甲第1号証に記載された中間膜にマグネシウムが本件発明1と重複する範囲で含まれているとしても、本件発明1の実施例のように押出成形時のベント圧を設定して合わせガラス用中間膜の接触角を調節していることも想定できない。
そうすると、甲第1号証の記載から、本件発明1で規定する接触角を、当業者が容易に設定し得たとはいえない。
次に、甲第2号証は、記載事項2a~2eによれば、酢酸マグネシウムなどの接着制御剤、及び2-エチルヘキサン酸マグネシウムなどの表面エネルギー改変剤を含有させることで、ポリビニルブチラールシートの中間膜の表面エネルギーを52dyne/cm未満に制御することについて記載されている。
したがって、甲第2号証には、中間膜の接触角を大きくする方向に設定することについて記載されているといえるが、マグネシウム塩を添加した具体例の記載はなく、中間膜の層を、本件発明1で規定する接触角の範囲に調節することが示唆されているとはいえない。
甲第3号証は、記載事項3c~3eによれば、接着力調整剤として、酢酸マグネシウム20ppm、2-エチルヘキシル酸マグネシウム60ppmを添加して、パンメル値3の中間膜を得ている。
本件明細書の表1と記載事項3cを参照すると、当該パンメル値は、本件発明1の実施例のパンメル値と近似しているといえる。
しかし、上記接着力調整剤の含有量は、記載事項3bによれば、中間膜中のマグネシウム塩の含有量として規定するものであるから、上記実施例3のマグネシウムの含有量は、本件発明1のマグネシウムの含有量が70ppm又は80ppmである実施例と同一であるとはいえず、また、甲第3号証の上記中間膜はプレス成形により得るものであるから、甲第3号証の記載から、本件発明1で規定する接触角を、当業者が容易に設定し得えたとはいえない。
甲第4号証は、記載事項4a、4bによれば、接着力調整剤として酢酸マグネシウム/2-エチル酪酸マグネシウム混合物を樹脂組成物全量に対してマグネシウム量が50ppmとなるように添加したポリビニルアセタール樹脂を含む2種類の樹脂を多層押出し成形機に供給し、一体成形することにより中間膜用熱可塑性樹脂シートを得たことが記載されている。
しかし、押出し成形機のベントの条件は何ら記載されていないから、甲第4号証の記載から、本件発明1で規定する接触角を、当業者が容易に設定し得えたとはいえない。
甲第5、6号証には、記載事項5a、5b及び記載事項6a~6cによれば、押出機を用いて合わせガラス用中間膜を製造する際に、揮発性物質を除去するためにベント口から減圧することが記載され、また、甲第7号証には、記載事項7a、7bによれば、ポリビニルブチラール樹脂ペレット中のブチルアルデヒド及び2-エチル-2-ヘキセナールの合計含有量を100ppm以下とするために、溶融工程では、脱揮用のベント部を有する溶融押出し機を用いて、減圧度を、好ましくは0.07MPa以上、さらに好ましく
は0.08MPa以上とすることが記載されている。
しかし、甲第5~7号証には、押出成形時のベント圧を設定することで中間膜の表面層の接触角を調節することは何ら示唆されておらず、中間膜を押出成形で製造することが周知の技術手段であるとしても、甲第5~7号証の記載から、本件発明1で規定する接触角を、当業者が容易に設定し得たとはいえない。
したがって、本件発明1は、甲第1~8号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(イ)本件発明2、3、5~14について
本件発明2、3、5~14は、本件発明1の特定事項の全てを含むものである。
そうすると、上記(ア)と同様の理由により、本件発明2、3、5~14は、甲第1~8号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
6 特許異議申立人の意見について
特許異議申立人は、平成29年 8月31日付けの意見書において、進歩性に関する主張の他に、本件明細書の実施例及び参考例を比較すると、特にエチレングリコールを用いて液滴法で測定した接触角は同じベント圧であっても大きくばらついているなどの理由から、本件発明1を実施することができない旨主張している(意見書8ページ)。
しかし、実施例及び参考例は、マグネシウムの含有量をそれぞれ変更して中間膜を作製して接触角を測定したものであり、同じベント圧であっても接触角はマグネシウムの含有量に応じて当然変動することが想定され、また、実施例1、2、4、5では、上記5に記載したとおり、マグネシウムの含有量に応じてベント圧を調節して本件発明1で規定する接触角が得られたことが記載されているから、本件明細書の発明の詳細な説明が、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていないとはいえない。
第4 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由によっては、本件請求項1~3、5~14に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1~3、5~14に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、請求項4に係る特許は、訂正により削除されたため、本件特許の請求項4に対する特許異議の申立については、対象となる請求項が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2016-700712