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特許異議申立

2016-700752

合わせガラス用中間膜及び合わせガラス

審判番号
2016-700752
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2014-159965
登録番号
特許第5865451号(P5865451)
請求日
2016年08月17日
審決日
2018年03月09日
公報発行日
2018年06月29日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】積水化学工業株式会社
  • 【権利者代理人】田口 昌浩
  • 【権利者代理人】虎山 滋郎
  • 【権利者代理人】特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所
  • 【異議申立人】株式会社 クラレ
  • 【異議申立人代理人】森住 憲一
  • 【異議申立人代理人】梶田 真理奈
審判長/審判官
  • 審判長 大橋 賢一
  • 審判官 後藤 政博
  • 審判官 山本 雄一
分類
P1651.113-YAA(C03C) / P1651.121-YAA(C03C) / P1651.16 -YAA(C03C)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条の2、特許法第120条の5第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第5865451号発明「合わせガラス用中間膜及び合わせガラス」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第5865451号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~20〕について訂正することを認める。 特許第5865451号の請求項1、3ないし10、12ないし20に係る特許を維持する。 特許第5865451号の請求項2、11に係る特許についての特許異議の申立を却下する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 特許第5865451号(以下、「本件特許」という。)は、平成22年12月24日(優先権主張 平成21年12月25日)を国際出願日とする特願2010-550770号の一部を、平成23年 7月 1日に新たな特許出願とした特願2011-147481号の一部を、さらに平成26年 8月 6日に新たな特許出願としたものであって、特許請求の範囲に記載された請求項1~20に係る発明について、平成28年 1月 8日に設定登録がされたものである。 その後、その特許について、特許異議申立人 株式会社クラレ(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものであり、その手続の経緯は以下のとおりである。 平成28年 8月17日   特許異議の申立て 同年12月 1日付け 取消理由通知 平成29年 2月 6日   訂正の請求、意見書の提出 同年 3月22日   特許異議申立人による意見書の提出 同年 6月13日付け 取消理由通知 同年 7月27日   特許権者による意見書の提出 同年 9月11日付け 取消理由通知(決定の予告) 同年11月 9日   特許権者による意見書の提出 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 平成29年 2月 6日に提出された訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)による訂正の内容は、以下の(1)~(22)のとおりである(下線部は訂正箇所)。 (1)訂正事項1 請求項1、3~8、12~14、17及び18に、第1の層に含まれる成分として 「ポリビニルアセタール樹脂」 とあるのを、 「ポリビニルブチラール樹脂」 に訂正する。 (2)訂正事項2 請求項1に 「前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記可塑剤の含有量が、前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記可塑剤の含有量よりも22.5重量部以上多く、」 とあるのを、訂正事項1と併せて 「前記第1の層中の前記ポリビニルブチラール樹脂100重量部に対する前記可塑剤の含有量が、前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記可塑剤の含有量よりも25重量部以上多く、」 に訂正する。 (3)訂正事項3 請求項1に 「であり、前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率と前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率との差が、8.5モル%を超え、9.2モル%以下である場合には、前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が8モル%以下であり、」 とあるのを、訂正事項1と併せて 「であり、前記第1の層中の前記ポリビニルブチラール樹脂のアセチル化度が8モル%以下であり、」 に訂正する。 (4)訂正事項4 請求項1に 「前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度は前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度よりも多い、又は、前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度は前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度と同じである、合わせガラス用中間膜。」 とあるのを、訂正事項1と併せて 「前記第1の層中の前記ポリビニルブチラール樹脂のアセチル化度は前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度よりも多い、合わせガラス用中間膜。」 に訂正する。 (5)訂正事項5 請求項2を削除する。 (6)訂正事項6 請求項3に 「請求項1又は2に記載」 とあるのを、 「請求項1に記載」 に訂正する。 (7)訂正事項7 請求項4、5に、 「アセタール化度が68モル%以上である」 とあるのを、 「ブチラール化度が68モル%以上である」 に訂正する。 (8)訂正事項8 請求項4に 「請求項1~3のいずれか1項に記載」 とあるのを、 「請求項1に記載」 に訂正する。 (9)訂正事項9 請求項5に 「請求項1~4のいずれか1項に記載」 とあるのを、 「請求項1に記載」 に訂正する。 (10)訂正事項10 請求項6に 「請求項1~5のいずれか1項」 とあるのを、 「請求項1及び3~5のいずれか1項」 に訂正する。 (11)訂正事項11 請求項7に 「請求項1~6のいずれか1項」 とあるのを、 「請求項1及び3~6のいずれか1項」 に訂正する。 (12)訂正事項12 請求項8に 「ポリビニルアルコールのアセタール化物である」 とあるのを、 「ポリビニルアルコールのブチラール化物である」 に訂正する。 (13)訂正事項13 請求項8に 「請求項1~7のいずれか1項」 とあるのを、 「請求項1及び3~7のいずれか1項」 に訂正する。 (14)訂正事項14 請求項9に 「請求項1~8のいずれか1項」 とあるのを、 「請求項1及び3~8のいずれか1項」 に訂正する。 (15)訂正事項15 請求項10に 「請求項1~9のいずれか1項」 とあるのを、 「請求項1及び3~9のいずれか1項」 に訂正する。 (16)訂正事項16 請求項11を削除する。 (17)訂正事項17 請求項12に 「請求項1~11のいずれか1項」 とあるのを、 「請求項1及び3~10のいずれか1項」 に訂正する。 (18)訂正事項18 請求項13に 「であり、 前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率と前記第3の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率との差が、8.5モル%を超え、9.2モル%以下である場合には、前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が8モル%以下である」 とあるのを、 「である」 に訂正する。 (19)訂正事項19 請求項13に 「請求項1~12のいずれか1項」 とあるのを、 「請求項1,3~10及び12のいずれか1項」 に訂正する。 (20)訂正事項20 請求項19に 「前記第1~第3の層に含まれている前記ポリビニルアセタール樹脂としてそれぞれ、ポリビニルブチラール樹脂を含み、」 とあるのを、 「前記第2の層及び前記第3の層に含まれている前記ポリビニルアセタール樹脂としてそれぞれ、ポリビニルブチラール樹脂を含み、」 に訂正する。 (21)訂正事項21 請求項20に 「請求項1~19のいずれか1項」 とあるのを、 「請求項1,3~10及び12~19のいずれか1項」 に訂正する。 (22)訂正事項22 明細書中の実施例1~14、16、18、20を、参考例1~14、16、18及び20に訂正する。 具体的には、以下の訂正をする。 ○ 明細書【0108】、及び【0114】に、それぞれ「実施例1」とあるのを、「参考例1」に訂正する。 ○ 明細書【0114】に「実施例2~20」とあるのを、「参考例2~14、実施例15、参考例16、実施例17、参考例18、実施例19、参考例20」に訂正する。 ○ 明細書【0115】に「実施例5~20」とあるのを、「参考例5~14、実施例15、参考例16、実施例17、参考例18、実施例19、参考例20」に訂正する。 ○ 明細書【0126】の【表1】に、「実施例1」、「実施例2」、「実施例3」、「実施例4」、「実施例5」、「実施例6」、「実施例7」、「実施例8」、「実施例9」、「実施例10」及び「実施例11」とあるのを、それぞれ「参考例1」、「参考例2」、「参考例3」、「参考例4」、「参考例5」、「参考例6」「参考例7」、「参考例8」、「参考例9」、「参考例10」及び「参考例11」に訂正する。 ○ 明細書【0127】の【表2】に「実施例12」、「実施例13」、「実施例14」、「実施例16」、「実施例18」及び「実施例20」とあるのを、それぞれ「参考例12」、「参考例13」、「参考例14」、「参考例16」、「参考例18」及び「参考例20」に訂正する。 2 訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について 訂正事項1は、訂正前の請求項1、3~8、12~14、17及び18において、第1の層中の「ポリビニルアセタール樹脂」を、「ポリビニルブチラール樹脂」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 第1の層中の「ポリビニルアセタール樹脂」が「ポリビニルブチラール樹脂」であることは、訂正前の請求項19、本件明細書の【0030】、【0052】などに記載されているから、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであって、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、訂正前の請求項1において、「前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記可塑剤の含有量が、前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記可塑剤の含有量よりも22.5重量部以上多く、」を、訂正事項1と併せて、「前記第1の層中の前記ポリビニルブチラール樹脂100重量部に対する前記可塑剤の含有量が、前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記可塑剤の含有量よりも25重量部以上多く、」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 上記「・・・第2の層中の・・・可塑剤の含有量よりも25重量部以上」であることは、訂正前の請求項11及び本件明細書の【0095】に記載されているから、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであって、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3)訂正事項3について 訂正事項3は、訂正前の請求項1において、「であり、 前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率と前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率との差が、8.5モル%を超え、9.2モル%以下である場合には、前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が8モル%以下であり、」を、訂正事項1と併せて、「であり、 前記第1の層中の前記ポリビニルブチラール樹脂のアセチル化度が8モル%以下であり、」に訂正するものである。 当該訂正事項3は、「第1の層中のポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率と第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率との差が、8.5モル%を超え、9.2モル%以下」ではない場合にも、第1の層中の樹脂のアセタール化度が8モル%以下であることを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 第1の層中のポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度が8モル%以下であることは、本件明細書の【0067】、【0068】に記載されているから、訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであって、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (4)訂正事項4について 訂正事項4は、訂正前の請求項1において、「前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度は前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度よりも多い、又は、前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度は前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度と同じである、合わせガラス用中間膜。」を、訂正事項1と併せて、「前記第1の層中の前記ポリビニルブチラール樹脂のアセチル化度は前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度よりも多い、合わせガラス用中間膜。」に訂正するものである。 当該訂正事項4は、第1の層中の前記ポリビニルブチラール樹脂のアセチル化度が前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度よりも多いことを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 第1の層中の前記ポリビニルブチラール樹脂のアセチル化度は前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度よりも多いことは、本件明細書の【0059】に記載されているから、訂正事項4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであって、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (5)訂正事項5、16について 訂正事項5、16は、訂正前の請求項2及び11をそれぞれ削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (6)訂正事項6、8~11、13~15、17、19、21について 訂正事項6、8~11、13~15、17、19、21は、引用する請求項の一部を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (7)訂正事項7について 訂正事項7は、訂正事項1により第1の層中の「ポリビニルアルコール樹脂」を、「ポリビニルブチラール樹脂」に訂正することに併せて、請求項4、5の「アセタール化度」を「ブチラール化度」に訂正して、記載を整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当し、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (8)訂正事項12について 訂正事項12は、訂正事項1により第1の層中の「ポリビニルアルコール樹脂」を、「ポリビニルブチラール樹脂」に訂正することに併せて、請求項8の「アセタール化物」を「ブチラール化物」に訂正して、記載を整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当し、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (9)訂正事項18について 訂正事項18は、訂正事項1、3により、第1の層中の「ポリビニルアルコール樹脂」について、「ポリビニルブチラール樹脂のアセチル化度が8モル%以下である」と限定することに併せて、請求項13の記載を整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当し、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (10)訂正事項20について 訂正事項20は、訂正事項1により第1の層中の「ポリビニルアルコール樹脂」を、「ポリビニルブチラール樹脂」に訂正することに併せて、請求項19の重複する記載を削除するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当し、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (11)訂正事項22について 訂正事項22は、特許請求の範囲の減縮に伴って、発明の詳細な説明の記載を整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当し、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであって、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (12)一群の請求項について 上記訂正事項1~21に係る訂正前の請求項1~20は、請求項2~20が直接的又は間接的に請求項1を引用する関係にあるから、一群の請求項であり、上記訂正事項1~21は、一群の請求項ごとに請求されたものである。 また、訂正事項22は、この一群の請求項の全てについて明細書を訂正するものである。 3 むすび 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~20〕 について訂正を認める。 第3 特許異議の申立てについて 1 本件発明 本件訂正請求により訂正された請求項1、3~10、12~20に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」・・・「本件発明20」という。)は、次の事項により特定されるとおりのものである。 【請求項1】 ポリビニルブチラール樹脂と可塑剤とを含有する第1の層と、 前記第1の層の一方の面に積層されており、かつポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含有する第2の層とを備え、 前記第1の層中の前記ポリビニルブチラール樹脂100重量部に対する前記可塑剤の含有量が50重量部以上であり、 前記第1の層中の前記ポリビニルブチラール樹脂100重量部に対する前記可塑剤の含有量が、前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記可塑剤の含有量よりも25重量部以上多く、 前記第1の層中の前記ポリビニルブチラール樹脂の水酸基の含有率が、前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率よりも低く、 前記第1の層中の前記ポリビニルブチラール樹脂の水酸基の含有率と前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率との差が、9.2モル%以下であり、 前記第1の層中の前記ポリビニルブチラール樹脂のアセチル化度が8モル%以下であり、 前記第1の層中の前記ポリビニルブチラール樹脂のアセチル化度は前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度よりも多い、合わせガラス用中間膜。 【請求項3】 前記第1の層中の前記ポリビニルブチラール樹脂のアセチル化度が8モル%以下、水酸基の含有率が31.5モル%未満である、請求項1に記載の合せガラス用中間膜。 【請求項4】 前記第1の層中の前記ポリビニルブチラール樹脂のアセチル化度が8モル%以下、ブチラール化度が68モル%以上である、請求項1に記載の合わせガラス用中間膜。 【請求項5】 前記第1の層中の前記ポリビニルブチラール樹脂の水酸基の含有率が31.5モル%未満、ブチラール化度が68モル%以上である、請求項1に記載の合わせガラス用中間膜。 【請求項6】 前記第1の層中の前記ポリビニルブチラール樹脂の水酸基の含有率が22モル%以上である、請求項1及び3~5のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。 【請求項7】 前記第1の層中の前記ポリビニルブチラール樹脂のアセチル化度が1.2モル%以上である、請求項1及び3~6のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。 【請求項8】 前記第1の層中の前記ポリビニルブチラール樹脂は、重合度が1700を超え、2900以下であるポリビニルアルコールのブチラール化物であるポリビニルブチラール樹脂である、請求項1及び3~7のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。 【請求項9】 前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率が35モル%以下である、請求項1及び3~8のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。 【請求項10】 前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率が27モル%以上である、請求項1及び3~9のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。 【請求項12】 前記第1の層中の前記ポリビニルブチラール樹脂の水酸基の含有率と前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率との差が、8.5モル%以下である、請求項1及び3~10のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。 【請求項13】 前記第1の層の他方の面に積層されており、かつポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含有する第3の層をさらに備え、 前記第1の層中の前記ポリビニルブチラール樹脂の水酸基の含有率が、前記第3の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率よりも低く、 前記第1の層中の前記ポリビニルブチラール樹脂の水酸基の含有率と前記第3の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率との差が、9.2モル%以下である、請求項1,3~10及び12のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。 【請求項14】 前記第1の層中の前記ポリビニルブチラール樹脂のアセチル化度は前記第3の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度よりも多い、又は、前記第1の層中の前記ポリビニルブチラール樹脂のアセチル化度は前記第3の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度と同じである、請求項13に記載の合わせガラス用中間膜。 【請求項15】 前記第3の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率が35モル%以下である、請求項13又は14に記載の合わせガラス用中間膜。 【請求項16】 前記第3の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率が27モル%以上である、請求項13~15のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。 【請求項17】 前記第1の層中の前記ポリビニルブチラール樹脂100重量部に対する前記可塑剤の含有量が、前記第3の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記可塑剤の含有量よりも多い、請求項13~16のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。 【請求項18】 前記第1の層中の前記ポリビニルブチラール樹脂100重量部に対する前記可塑剤の含有量が、前記第3の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記可塑剤の含有量よりも22.5重量部以上多い、請求項17に記載の合わせガラス用中間膜。 【請求項19】 前記第2の層及び前記第3の層に含まれている前記ポリビニルアセタール樹脂としてそれぞれ、ポリビニルブチラール樹脂を含み、 前記第1~第3の層に含まれている前記可塑剤としてそれぞれ、トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエートを含む、請求項13~18のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。 【請求項20】 第1,第2の合わせガラス構成部材と、 前記第1,第2の合わせガラス構成部材の間に挟み込まれた中間膜とを備え、 前記中間膜が、請求項1,3~10及び12~19のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜である、合わせガラス。 2 平成28年12月1日付けの取消理由について (1)取消理由の概要 平成28年12月1日付けの取消理由の概要は、以下のとおりである。 ア 特許法第29条第1項第3号 訂正前の請求項1~20に係る発明は、甲1に、本件特許の請求項1~7、9~20に係る発明は、甲2に、及び本件特許の請求項1、6~20に係る発明は、甲3に、それぞれ記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。 イ 特許法第29条第2項 訂正前の請求項1~20に係る発明は、甲1、甲2及び甲5に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 ウ 特許法第29条の2 訂正前の請求項1~5、7~10及び12~20に係る発明は、先願(甲4)に記載された発明と同一であって、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。 (証拠方法) 甲1:特開2007-331959号公報 甲2:特表2008-532817号公報 甲3:特開2001- 48600号公報 甲4:特願2009-180344号(特開2010- 37193号公報参照) 甲5:特開2007-331964号公報 (2)対比・判断 ア 特許法第29条第1項第3号 下記「3(3)ア(ア)」のとおりであって、本件発明1と甲1に記載された発明とは、相違点があるから、本件発明1は、甲1に記載された発明であるとはいえない。 また、本件発明3~10,12~20は、本件発明1の特定事項の全てを含むものであるから、本件発明1と同様に、甲1に記載された発明であるとはいえない。 甲2に記載された、第1ポリマーシート及び第2ポリマーシートが積層された合わせガラス用中間膜において、各層におけるポリマーの残留アセテート含有量(アセチル化度)に関しては、 甲2には、 「【0026】 ・・・本発明の2つの隣接ポリマーシートは、前述のように異なる可塑剤含有量を有し、それぞれが5mol%未満、4mol%未満、3mol%未満、2mol%未満、または1mol%未満の、残留アセテート含有量をさらに有する。これらの残留アセテート濃度は、どの組み合わせにおいても、上で与えられた残留ヒドロキシル含有量と結合されて、可塑剤含有量および残留ヒドロキシル含有量において記述された差を有しながら、殆ど、ないし全く残留アセテート含有量を有しない、本発明の2つのポリマーシートを形成することができる。・・・」 などと記載されているのみであって、本件発明1の「第1の層中の前記ポリビニルブチラール樹脂のアセチル化度は前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度よりも多」く設定することについては記載されていない。 したがって、本件発明1は、甲2に記載された発明とはいえない。 また、本件発明3~10、12~20は、本件発明1の特定事項の全てを含むものであるから、本件発明1と同様に、甲2に記載された発明であるとはいえない。 本件発明1は、甲3による取消理由の対象とされていない訂正前の請求項2に記載された第1の層中のポリビニルブチラール樹脂のアセチル化度が8モル%以下であることが特定されたものである。 したがって、本件発明1は、甲3に記載された発明とはいえない。 また、本件発明6~20は、本件発明1の特定事項の全てを含むものであるから、本件発明1と同様に、甲3に記載された発明であるとはいえない。 イ 特許法第29条第2項について 甲2には、上記【0026】及びその他の記載をみても、第1の層中のポリビニルブチラール樹脂のアセチル基量を他方の層より大きくすることは何ら示唆されていない。 ここで、甲1には、下記「3(3)ア(ア)」のとおり、本件発明1で特定した「前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度は前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度よりも多い」ことが記載されているといえる。 しかし、甲1は、遮音層(第1の層)のアセチル化度が4~7モル%のポリビニルアセタールに対して、保護層(第2の層)のアセチル化度が3モル%以下のポリビニルアセタール(【請求項1】)の合わせガラス用中間膜であるところ、甲2に記載のポリマー中間層は、各層のアセチル基量をなるべく小さくなるように設定するものであるから、第1の層のアセチル化度を4~7モル%とする甲1の上記記載事項と組み合わせることはできない。 したがって、本件発明1は、甲2又は甲1及び甲2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 また、本件発明3~10、12~20は、本件発明1の特定事項の全てを含むものであるから、本件発明1と同様に、甲2又は甲1及び甲2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 さらに、甲5は、本件発明7で特定されたアセチル基量が1.2モル%である点について進歩性を否定するために引用されたものであって、本件発明7~10、12~20は、本件発明1の特定事項を全て含むものであるから、甲1、甲2及び甲5に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 ウ 特許法第29条の2について 甲4の表5によれば、A2/B9/A2の順に積層構造とした多層フィルムについて記載され、表3によれば、部分フィルムA2に可塑剤の量は26.5質量%であるから、部分フィルムA2に可塑剤は、樹脂100重量部に対して、36.1重量部(=[26.5/(100-26.5)])含まれ、表4によれば、部分フィルムB9の可塑剤の量は、37.5質量%であるから、部分フィルムB9に可塑剤は、樹脂100重量部に対して、60重量部(=[37.5/(100-37.5)])含まれる。 そうすると、部分フィルムB9の樹脂100重量部に対する可塑剤含有量と、部分フィルムA2の樹脂100重量部に対する可塑剤含有量との差は、22.5重量部(=60-37.5)であるから、本件発明1は、「前記第1の層中の前記ポリビニルブチラール樹脂100重量部に対する前記可塑剤の含有量が、前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記可塑剤の含有量よりも25重量部以上多」い点で、甲4に記載された発明と相違している。 したがって、本件発明1は、甲4に記載された発明と同一であるとはいえない。 また、本件発明3~5、7~10、12~20は、本件発明1の特定事項の全てを含むものであるから、本件発明1と同様に、甲4に記載された発明と同一であるとはいえない 3 平成29年 6月13日付けで通知した取消理由について (1)取消理由の概要 平成29年 6月13日付けで通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。 本件発明1、3~10、12~20は、甲1及び甲3に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その発明に係る特許は、取り消されるべきものである。 (2)甲1及び甲3の記載事項並びに甲1に記載された発明 ア 甲1の記載事項 甲1には、次の事項が記載されている。 1a「【請求項1】 遮音層と、前記遮音層を狭持する2層の保護層とからなる合わせガラス用中間膜であって、前記遮音層は、ポリビニルアルコールを炭素数が4又は5のアルデヒドによりアセタール化して得られる、アセチル化度が4~7モル%のポリビニルアセタール100重量部に対して、可塑剤を45~75重量部含有し、 前記保護層は、ブチラール化度が60~75モル%、アセチル化度が3モル%以下のポリビニルブチラール100重量部に対して、可塑剤を20~45重量部含有することを特徴とする合わせガラス用中間膜。」 1b「【0001】 本発明は、水に濡れても白化することがなく、優れた遮音性を有する合わせガラス用中間膜及び合わせガラスに関する。」 1c 「【0009】 ・・・遮音層に用いる樹脂について、ポリビニルアルコールをアセタール化するためのアルデヒドの炭素数を一定の範囲に限定し、かつ、ポリビニルアセタールのアセチル化度を一定の範囲に限定することにより、遮音性に優れ、かつ、車両のサイドガラス等に用いた場合であっても白化の生じにくい合わせガラス用中間膜が得られることを見出し、本発明を完成させた。 これは、一定の範囲に限定することにより、遮音層に極めて大量の可塑剤を安定して含有させることができるため、遮音層の疎水性(親油性)が高くなることから、水の浸透を防止することができ、白化を抑制することができる。また、大量の可塑剤を安定して含有していることから、合わせガラス用中間膜全体として高い遮音性を発揮することができる。」 1d「【0010】 本発明の合わせガラス用中間膜は、遮音層と、上記遮音層を狭持する2層の保護層とからなる。」 1e「【0011】 上記遮音層は、本発明の合わせガラス用中間膜に対して遮音性を付与するためのものである。 上記遮音層は、ポリビニルアルコールを炭素数が4又は5のアルデヒドによりアセタール化して得られる、アセチル化度が4~7モル%のポリビニルアセタール100重量部に対して、可塑剤を45~75重量部含有する。」 1f「【0012】 上記ポリビニルアルコールは、通常、ポリ酢酸ビニルをけん化することにより得られる。上記ポリビニルアルコールの重合度の好ましい下限は200、好ましい上限5000である。200未満であると、合わせガラス用中間膜の耐貫通性が低下することがあり、5000を超えると、層の成形性が悪くなり、しかも層の剛性が大きくなり過ぎ、加工性が悪くなることがある。より好ましい下限は500、より好ましい上限は4000である。 ・・・。 【0014】 上記炭素数が4又は5のアルデヒドとしては特に限定されず、直鎖状のものであってもよいし、分枝状のものであってもよく、例えば、n-ブチルアルデヒド、n-バレルアルデヒド等が挙げられる。」 1g 「【0040】 (実施例1) (1)遮音層の作製 平均重合度3000、アセチル化度7モル%、ペンチラール化度70%のポリビニルペンチラール100重量部に対して、可塑剤としてトリエチレングリコール-ジ-2-エチルヘキサノエート(略称3GO)65重量部を添加し・・・プレス成形し、平均膜厚0.1mmの遮音層を得た。 【0041】 (2)保護層の作製 平均重合度1700、アセチル化度1モル%、ブチラール化度68%のポリビニルブチラール100重量部に対して、可塑剤としてトリエチレングリコール-ジ-2-エチルヘキサノエート40重量部を添加し・・・プレス成形し、平均膜厚0.33mmの遮音層を得た。 【0042】 (3)合わせガラス用中間膜の作製 得られた遮音層を、2枚の保護層の間に挟み込み・・・プレスして、平均膜厚0.76mmの合わせガラス用中間膜を得た。 【0043】 (4)合わせガラスの作製 得られた合わせガラス用中間膜を透明なフロートガラス・・・で挟み込み・・・真空プレスした。このようにして予備圧着された合わせガラスをオートクレーブ中で135℃、圧力1176kPaの条件で20分間圧着を行い、合わせガラスを得た。」 1h「【0044】 (実施例2) 遮音層の作製においてアセチル化度5モル%のポリビニルペンチラールを用い、可塑剤配合量を60重量部としたこと以外は、実施例1と同様にして合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを作製した。 【0045】 (実施例3) 遮音層の作製においてアセチル化度7モル%のポリビニルブチラールを用い、可塑剤配合量を60重量部とし、遮音層の厚みを0.12mmとしたこと以外は、実施例1と同様にして合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを作製した。 【0046】 (実施例4) 遮音層の作製においてアセチル化度5モル%のポリビニルブチラールを用い、可塑剤配合量を60重量部とし、遮音層の厚みを0.12mmとしたこと以外は、実施例1と同様にして合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを作製した。」 1i「【0049】 <評価> 実施例1~4・・・で得られた合わせガラス用中間膜及び合わせガラスについて以下の評価を行った。結果を表1、表2に示した。 【0050】 (1)遮音性評価 ・・・ ・・・得られた損失係数と、ガラスとの共振周波数との比から、20℃における音周波数(Hz)と音響透過損失(dB)との関係を示すグラフを作成し、音周波数2000Hz付近における極小の音響透過損失(TL値)を求めた。このTL値が高いほど遮音性が高くなる。 【0051】 (2)耐湿試験(ヘイズ値測定) 得られた合わせガラス用中間膜を蒸留水中に全体が完全に漬かるように浸漬し、23℃、24時間放置した。放置後の合わせガラス用中間膜のヘイズ値をJIS K 6714に準拠した方法により積分式濁度計(東京電色社製)を用いて測定した。 【0052】 (3)耐湿試験(白化距離測定) JIS R 3212(1998)に準拠して、得られた合わせガラスを100℃95%RHの雰囲気に1ヶ月間放置し、その後、白化している部分の距離(白化距離)を合わせガラスの周辺から測定した。 【0053】 (4)総合判定 (1)~(3)の評価を基に、以下の基準により総合判定を行った。 ○:ヘイズ値が50%以下、かつ、白化距離が2mm以下であった。 ×:ヘイズ値が50%を超えるか、又は、白化距離が2mmを超えた。」 1j「【表1】 」 1k「【表2】 」 イ 甲3の記載事項 甲3には、次の事項が記載されている。 3a「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、合わせガラス用中間膜及びその中間膜を用いた合わせガラスに関する。 【0002】 【従来の技術】可塑剤の添加により可塑化されたポリビニルアセタール樹脂のような透明で柔軟性に富む樹脂を製膜してなる合わせガラス用中間膜で少なくとも一対のガラス板を接着して得られる合わせガラスは、破損時に破片が飛散せず安全性に優れているため、例えば自動車等の交通車輌の窓ガラス用や建築物の窓ガラス用等として広く用いられている。 【0003】このような中間膜のなかでも、可塑剤の添加により可塑化されたポリビニルブチラール樹脂が製膜されてなる中間膜は、ガラスとの適正な接着力、強靱な引張り強度、優れた透明性等の諸性能を兼備しているので、特に交通車輌の窓ガラス用として好適に用いられている・・・」 3b「【0046】こうして得られる各種ポリビニルアセタール樹脂のなかでも、・・・ PVAとn-ブチルアルデヒドとを反応させて得られるポリビニルブチラール樹脂(PVB)等が好適に用いられ、なかでも特に好適に用いられるのはPVBである。ポリビニルアセタール樹脂としてPVBを用いることにより、樹脂層及び中間膜の透明性、耐候性、ガラスに対する接着力等が優れたものとなる。 ・・・ 【0048】上記ポリビニルアセタール樹脂は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。又、樹脂層(A)に用いられるポリビニルアセタール樹脂(a)と樹脂層(B)に用いられるポリビニルアセタール樹脂(b)とは、同一のものであっても良いし、異なるものであっても良い。」 3c「【0057】前記ポリビニルアセタール樹脂と上記可塑剤との組合せのなかでも、ポリビニルアセタール樹脂としてポリビニルブチラール樹脂を用い、可塑剤として3GH、3GO及び3G7からなる群より選択される少なくとも1種を用いる組合せが特に好ましい。 【0058】上記組合せによる樹脂層(A)及び樹脂層(B)からなる中間膜は、遮音性能のみならず、透明性、耐候性、耐貫通性、衝撃エネルギー吸収性、ガラスと中間膜との適正な接着力等の基本性能に一段と優れる合わせガラスを得るに適する。」 3d「【0074】(実施例1) 【0075】(1)樹脂層(A)の作製 ポリビニルアセタール樹脂(a)としてポリビニルブチラール樹脂 ・・・ 100部に対し、可塑剤(a)として・・・(3GH)40部を添加し・・・プレス成形し、膜厚0.2mmの樹脂層(A)を作製した。 【0076】(2)樹脂層(B)の作製 ポリビニルアセタール樹脂(b)としてポリビニルブチラール樹脂 ・・・ 100部に対し、可塑剤(b)として3GH65部を添加し・・・プレス成形し、膜厚0.4mmの樹脂層(B)を作製した。 ・・・ 【0078】(4)中間膜及び合わせガラスの作製 上記で得られた樹脂層(A)及び樹脂層(B)を用い、積層構成が樹脂層(A)/樹脂層(B)/樹脂層(A)となるように積層して、三層中間膜を得た。 ・・・」 ウ 甲1に記載された発明 記載事項1a~1dによれば、甲1には、遮音層と、前記遮音層を挟持する2層の保護層とからなる、合わせガラス用中間膜について記載されているから、保護層は、遮音層に積層されているといえる。 記載事項1g、1jなどによれば、実施例1の合わせガラス用中間膜において、遮音層は、アセチル化度7モル%、アセタール化度70モル%であるポリビニルペンチラール樹脂100重量部に対して、可塑剤65重量部を含み、保護層は、アセチル化度1モル%、アセタール化度68モル%であるポリビニルブチラール樹脂100重量部に対して、可塑剤40重量部を含むことが記載されている。 そうすると、実施例1の合わせガラス用中間膜の遮音層、及び保護層の可塑剤の含有量を比較すると、遮音層は、保護層よりも樹脂100重量部に対して25重量部多く含まれている。 これらのことから、甲1には、 「ポリビニルペンチラール樹脂と可塑剤とを含有する遮音層と、 前記遮音層に積層され、ポリビニルブチラール樹脂と可塑剤とを含有する保護層とからなり、 前記遮音層の前記ポリビニルペンチラール樹脂100重量部に対して前記可塑剤の含有量が65重量部であり、 前記遮音層の前記ポリビニルペンチラール樹脂100重量部に対する前記可塑剤の含有量が、前記遮音層の前記保護層に対する前記可塑剤の含有量よりも25重量部多く、 前記遮音層のポリビニルペンチラール樹脂のアセチル化度、及びアセタール化度は、それぞれ7モル%、70モル%であり、 前記保護層のポリビニルブチラール樹脂のアセチル化度、及びアセタール化度は、それぞれ1モル%、68モル%である、合わせガラス用中間膜。」の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 (3)対比・判断 ア 本件発明1について (ア)発明の対比 本件発明1と甲1発明とを対比する。 本件発明1及び甲1発明の「ポリビニルブチラール樹脂」、並びに甲1発明の「ポリビニルペンチラール樹脂」は、共にポリビニルアセタール樹脂である。 甲1発明の遮音層のポリビニルペンチラール樹脂のアセチル化度、及びアセタール化度が、それぞれ7モル%、及び70モル%であるから、ポリビニルペンチラール樹脂の水酸基含有率は、100-(7+70)=23モル%である。 また、甲1発明の遮音層のポリビニルブチラール樹脂のアセチル化度、及びアセタール化度が、それぞれ1モル%、及び68モル%であるから、ポリビニルペンチラールの水酸基含有率は、100-(1+68)=31モル%である。 そうすると、甲1発明の遮音層の水酸基含有率と保護層の水酸基含有率との差は、31-23=8モル% となる。 ここで、甲1発明の「遮音層」、及び「保護層」は、それぞれ、本件発明1の「第1の層」及び「第2の層」に相当し、前記「遮音層」の可塑剤の含有量は、樹脂100重量部に対して65重量部であるから、前記「第1の層」の樹脂100重量部に対する可塑剤の含有量が50重量部以上であることに相当し、また、前記「遮音層」の樹脂の水酸基の含有率と前記「保護層」の樹脂の水酸基の含有率との差は、前記「第1の層」中の樹脂の水酸基の含有率と前記「第2の層」中の樹脂の水酸基の含有率との差と共通している。 さらに、甲1発明の前記「遮音層」の樹脂のアセチル化度は7モル%であるから、本件発明1の「第1の層」の樹脂のアセチル化度と一致し、また、甲1発明の「遮音層」の樹脂のアセチル化度が、「保護層」のアセチル化度より多い点も、本件発明1の「第1の層」のアセチル化度が、「第2の層」のアセチル化度よりも多い点と一致している。 以上のことから、本件発明1と甲1発明とは、 「ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含有する第1の層と、 前記第1の層の一方の面に積層されており、かつポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含有する第2の層とを備え、 前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記可塑剤の含有量が50重量部以上であり、 前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記可塑剤の含有量が、前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記可塑剤の含有量よりも25重量部以上多く、 前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率が、前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率よりも低く、 前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率と前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率との差が、9.2モル%以下であり、 前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が8モル%以下であり、 前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度は前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度よりも多い、合わせガラス用中間膜。」 の点で一致し、次の点でのみ両者は相違する。 ( 相違点 ) 本件発明1において、第1の層中のポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルブチラール樹脂であるのに対し、甲1発明において、遮音層のポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルペンチラール樹脂である点。 (イ)相違点の判断 上記相違点について検討する。 記載事項1g~1kによると、甲1発明を含む甲1記載の実施例・比較例は、いずれも同一の保護層を使用していることから、遮音層の違いにより、性能がどのように変化するかを開示したものと認められる。 すなわち、実施例3と実施例4は、ポリビニルブチラール樹脂を含む遮音層では、可塑剤の配合量(60重量部)及びアセタール化度(70モル%)を変えずに、アセチル化度を高める(5→7モル%)ことで遮音性能及び耐湿性能が向上することを示し、一方、甲1発明(実施例1)と実施例2は、ポリビニルペンチラール樹脂を含む遮音層では、アセタール化度(70モル%)を変えずに、可塑剤の配合量(60→65重量部)とアセチル化度(5→7モル%)を高めると遮音性能及び耐湿性能が向上することを示している。 してみると、甲1発明における可塑剤の配合量は、遮音層にポリビニルペンチラール樹脂が含まれることを前提に調整されたものであって、ポリビニルブチラール樹脂に対して調整されたものではないと認められる。 さらに、実施例2と実施例4は、遮音層における可塑剤の配合量(60重量部)や、樹脂のアセチル化度(5モル%)及びアセタール化度(70モル%)が同じ場合には、ポリビニルペンチラール樹脂が、ポリビニルブチラール樹脂よりも、膜厚が薄い(120μmに対し100μm)にもかかわらず遮音性能及び耐湿性能が優れていることを示している。 そうすると、甲3の記載事項3a~3dにあるように、ポリビニルブチラール樹脂を含むガラス用中間膜が透明性等に優れていることが当業者に周知であるとしても、甲1発明において、ポリビニルペンチラール樹脂をポリビニルブチラール樹脂に変更した場合には、樹脂の種類に応じて可塑剤の量も変更する可能性があり、ポリビニルペンチラール樹脂を前提に調整された可塑剤の配合量を変えないとする保障はない。そして、甲1の実施例におけるポリビニルブチラール樹脂を含む遮音層の可塑剤の配合量は60重量部(実施例3と実施例4)であるから,当業者であれば、甲1発明において,ポリビニルペンチラール樹脂をポリビニルブチラール樹脂に変更した場合には、可塑剤の配合量を65重量部から減らす方が自然であるといえるが、この場合には、本件発明1の「前記第1の層中の ・・・ 可塑剤の含有量が、前記第2の層中の ・・・ 可塑剤の含有量よりも25重量以上多く」という発明特定事項を充足しないこととなる。 したがって、甲1発明において、ポリビニルペンチラール樹脂を、それよりも遮音性能及び耐湿性能に劣るポリビニルブチラール樹脂に仮に変更したとしても、その結果、可塑剤の配合量が本件発明1の範囲外となる可能性があるから、一義的に本件発明1の構成に至るということはできない。 また、本件明細書の記載によれば、本件発明1に係る合わせガラス用中間膜は、「合わせガラスにおける発泡の発生及び発泡の成長を抑制できる。」(【0032】、「実施例」(【0108】~【0127】))という効果を奏するが、甲1及び甲3には、合わせガラスにおける発泡について何ら記載はないから、本件発明1の効果は、甲1及び甲3の記載からは予期し得ないものといえる。 以上によれば、本件発明1は、甲1及び甲3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 イ 本件発明3~10、12~20について 本件発明3~10、12~20は、本件発明1の特定事項を全て含むものであるから、本件発明3~10、12~20は、本件発明1と同様な理由により、甲1及び甲3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由によっては、請求項1、3~10、12~20に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1、3~10、12~20に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 そして、請求項2、11に係る特許は、訂正により削除されたため、本件特許の請求項2、11に対する特許異議の申立については、対象となる請求項が存在しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2016-700752

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