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特許異議申立

2016-700640

赤外線反射フィルム

審判番号
2016-700640
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2013-083371
登録番号
特許第5859476号(P5859476)
請求日
2016年07月25日
審決日
2017年04月18日
公報発行日
2017年07月28日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】日東電工株式会社
  • 【権利者代理人】西島 孝喜
  • 【権利者代理人】弟子丸 健
  • 【権利者代理人】田中 伸一郎
  • 【権利者代理人】大塚 文昭
  • 【権利者代理人】須田 洋之
  • 【権利者代理人】上杉 浩
  • 【権利者代理人】近藤 直樹
  • 【権利者代理人】岸 慶憲
  • 【異議申立人】株式会社 レクレアル
  • 【異議申立人代理人】松浦 孝
  • 【異議申立人】特許業務法人 朝日奈特許事務所
  • 【異議申立人】山田 宏基
  • 【異議申立人】笹川 拓
  • 【異議申立人】宇根 佳奈
審判長/審判官
  • 審判長 久保 克彦
  • 審判官 千葉 成就
  • 審判官 井上 茂夫
分類
P1651.113-YAA(B32B) / P1651.121-YAA(B32B) / P1651.536-YAA(B32B) / P1651.537-YAA(B32B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第29条、特許法第36条
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第5859476号発明「赤外線反射フィルム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第5859476号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕について訂正することを認める。 特許第5859476号の請求項1、4、5に係る特許を維持する。 特許第5859476号の請求項2、3、6に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

【理 由】 1.手続の経緯 特許第5859476号の請求項1ないし6に係る特許についての出願は、平成25年4月11日に特許出願され、平成27年12月25日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人株式会社レクレアル、特許業務法人朝日奈特許事務所、山田宏基、笹川拓、宇根佳奈により特許異議の申立てがされ、平成28年10月18日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成28年12月19日に意見書の提出及び訂正の請求があり、その訂正の請求に対して特許異議申立人特許業務法人朝日奈特許事務所、山田宏基、宇根佳奈から意見書が提出されたものである。 2.訂正の適否についての判断 (1)訂正の内容 本件訂正の請求による訂正の内容は、以下のとおりである。 ア.請求項1に「銀を主成分とする」とあるのを「銀を96~99.9重量%含有し、」に訂正する。 イ.請求項1に「銀合金」とあるのを「パラジウムを0.1重量%以上含有する銀合金」に訂正する。 ウ.請求項1に「前記第一金属酸化物層および前記第二金属酸化物層のそれぞれは、前記金属層に直接接しており」とあるのを「前記第一金属酸化物層および前記第二金属酸化物層のそれぞれは、前記金属層に直接接した、酸化亜鉛を含有する非晶質の複合金属酸化物層であり」に訂正する。 エ.請求項1に「前記透明保護層は有機物からなり」とあるのを「前記透明保護層は、厚み300nm以下の有機物からなり」に訂正する。 オ.請求項2を削除する。 カ.請求項3を削除する。 キ.請求項4に「請求項1~3のいずれか1項に記載の赤外線反射フィルム」とあるのを「請求項1に記載の赤外線反射フィルム」に訂正する。 ク.請求項5に「請求項1~4のいずれか1項に記載の赤外線反射フィルム」とあるのを「請求項1または4に記載の赤外線反射フィルム」に訂正する。 ケ.請求項6を削除する。 (2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、一群の請求項 上記アの訂正事項に関する記載として、段落0025には「金属層25は、銀を96~99.9重量%含有することが好ましい。」との記載がある。 上記イの訂正事項に関する記載として、段落0010には「金属層は、パラジウムを0.1重量%以上含有することが好ましい。」との記載がある。 ア、イの訂正は、明細書に記載された事項の範囲内において、銀合金を限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 上記ウの訂正事項に関する記載として、段落0012には「本発明の赤外線反射フィルムは、第一金属酸化物層および第二金属酸化物層のそれぞれが、・・・等の、酸化亜鉛を含有する非晶質の複合金属酸化物層であることが好ましい。」との記載がある。 ウの訂正は、明細書に記載された事項の範囲内において、金属酸化物層の材料を限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 上記エの訂正事項に関する記載として、段落0035には「透明保護層の厚みは、300nm以下が好ましく」との記載がある。 エの訂正は、明細書に記載された事項の範囲内において、透明保護層の厚みを限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 オ、カ、ケの訂正は、請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 キ、クの訂正は、請求項の削除に伴い、引用関係を整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 そして、これら訂正は一群の請求項に対して請求されたものである。 (3)小括 以上のとおりであるから、本件訂正の請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-6〕について訂正を認める。 3.特許異議の申立てについて (1)本件発明 本件訂正請求により訂正された訂正請求項1ないし6に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された次のとおりのものである。 【請求項1】 透明フィルム基材上に、赤外線反射層および透明保護層をこの順に備える赤外線反射フィルムであって、可視光透過率が65%以上であり、遮蔽係数が0.60未満であり、前記透明保護層側から測定した修正放射率が0.20以下であり、 前記赤外線反射層は、前記透明フィルム基材側から、第一金属酸化物層、銀を96~99.9重量%含有し、パラジウムを0.1重量%以上含有する銀合金からなる金属層、および第二金属酸化物層を備え、 前記第一金属酸化物層および前記第二金属酸化物層のそれぞれは、前記金属層に直接接した、酸化亜鉛を含有する非晶質の複合金属酸化物層であり、 前記透明保護層は、厚み300nm以下の有機物からなり、 前記透明フィルム基材と前記赤外線反射層との間、および前記赤外線反射層と前記透明保護層との間には、いずれも金属層を有していない、 赤外線反射フィルム。 【請求項2】 (削除) 【請求項3】 (削除) 【請求項4】 前記第一金属酸化物層および前記第二金属酸化物層のそれぞれが、インジウム-亜鉛複合酸化物、亜鉛-錫複合酸化物、およびインジウム-錫-亜鉛複合酸化物からなる群から選択される複合金属酸化物層である、請求項1に記載の赤外線反射フィルム。 【請求項5】 50℃の5重量%塩化ナトリウム水溶液に5日間浸漬後の放射率の変化が0.05以下である、請求項1または4に記載の赤外線反射フィルム。 【請求項6】 (削除) (2)取消理由の概要 訂正前の請求項1ないし6に係る特許に対して特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 特許異議申立人株式会社レクレアルによる特許異議申立書を「申立書1」、同様に、特許業務法人朝日奈特許事務所によるものを「申立書2」、山田宏基によるものを「申立書3」、笹川拓によるものを「申立書4」、宇根佳奈によるものを「申立書5」とする。 甲第○号証を「甲○」と略記する。 1)本件特許の請求項1~6に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 2)本件特許の請求項1~6に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 3)本件特許は、明細書、特許請求の範囲及び図面の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号及び第6項第1、2号に規定する要件を満たしていない。 記 (29条) 1.特公昭60-59147号公報(申立書1の甲1、申立書3の甲4) 2.特開2008-105251号公報(申立書1の甲2、申立書3の甲2) 3.特開2007-250430号公報(申立書1の甲3、申立書2の甲1) 4.特開2012-135888号公報(申立書2の甲2、申立書3の甲5、申立書5の甲1) 5.特開2001-33622号公報(申立書3の甲1、申立書4の甲2) 6.国際公開第2012/96304号(申立書1の甲5、申立書2の甲3) 7.特許第2918659号公報(申立書1の甲6) 8.特開平10-286900号公報(申立書2の甲4、申立書3の甲3) 9.特開2013-10341号公報(申立書5の甲2) 10.特表2011-509193号公報(申立書1の甲7) 11.特開昭61-111940号公報(申立書1の甲8) 12.特開2012-30577号公報(申立書4の甲3) 請求項1~6は、上記刊行物1~5のいずれとも同一、又は、刊行物1~5のいずれかに刊行物6~12の周知技術を適用し、容易想到である。 可視光透過率、遮蔽係数、修正放射率については、層構造が同じである以上、同じである蓋然性が高い。異なるとしても、周知技術を踏まえ、望ましい機能を特定したにすぎない。 (36条) 1.請求項1で特定する、極限的理想状態を含む可視光透過率、遮蔽係数、修正放射率を実現するための具体的構成が不明確である。単に、願望を記載したにすぎないのではないか。 2.請求項1で特定する「銀を主成分」とは、体積比か質量比か不明であり、その程度も不明確である。段落0079の表1では、95%、100%が、ともに「比較例」とされている。 3.請求項2の「パラジウム」、請求項3の「非晶質」の技術的意義、発明の詳細な説明との関係が不明確である。 4.請求項6は「赤外線反射フィルム」という「物」の発明であるが、「ウエットコーティングにより形成された」という「製造方法」が含まれており、明確でない。 (3)判断 ア.特許法第29条 (ア)本件発明1 本件発明1は、段落0001、0009~0010、0014、0023の記載からみて、所定の三層の赤外線反射層構成を採用することにより、金属層が単層であっても、遮熱性と断熱性を両立し、かつ可視光の透過性および耐久性を兼ね備えた、主にガラス窓等の室内側に配置して用いられる赤外線反射フィルムに関するものである。 (イ)刊行物1 刊行物1には、本件発明1が特定する遮蔽係数、修正放射率、酸化亜鉛を含有する非晶質の複合金属酸化物層について、記載も示唆もない。 また、透明保護層の厚みも異なる。 刊行物1発明の課題は、耐久性の改良であり、そのために、銅を含む銀合金、酸化チタン薄膜を採用している。 よって、本件発明1が刊行物1発明であるとすることはできず、刊行物1発明を本件発明1とする動機もなく、容易想到とすることもできない。 (ウ)刊行物2 刊行物2には、本件発明1が特定する遮蔽係数、修正放射率、パラジウムを0.1重量%以上含有する銀合金、酸化亜鉛を含有する非晶質の複合金属酸化物層について、記載も示唆もない。 また、透明保護層の厚みも不明である。 刊行物2発明の課題は、耐久性であり、そのために、ビスマスを含有する銀系薄膜を採用している。 その実施例1~16は7層構造であり、三層構造の実施例17もビスマスを含有する銀系薄膜を採用している。 よって、本件発明1が刊行物2発明であるとすることはできず、刊行物2発明を本件発明1とする動機もなく、容易想到とすることもできない。 (エ)刊行物3 刊行物3には、本件発明1が特定する可視光透過率、遮蔽係数、修正放射率について、記載も示唆もない。 刊行物3発明は、対質性と耐薬品性を兼ね備えた透明導電膜に関するものであり、本件発明1とは課題、用途が異なり、上記各事項に着目する動機を見出すことはできない。 よって、本件発明1が刊行物3発明であるとすることはできず、刊行物3発明を本件発明1とする動機もなく、容易想到とすることもできない。 (オ)刊行物4 刊行物4には、本件発明1が特定する遮蔽係数、修正放射率、酸化亜鉛を含有する非晶質の複合金属酸化物層について、記載も示唆もない。 また、透明保護層の厚みも異なる。 刊行物4発明は、本件発明1と層構造が異なり、本件発明1のように三層構造とするときの具体的層構造が明らかでない。 よって、本件発明1が刊行物4発明であるとすることはできず、刊行物4発明を本件発明1とする動機もなく、容易想到とすることもできない。 (カ)刊行物5 刊行物5には、本件発明1が特定する遮蔽係数、修正放射率、酸化亜鉛を含有する非晶質の複合金属酸化物層について、記載も示唆もない。 刊行物5発明は、本件発明1と層構造が異なり、本件発明1のように三層構造とするときの具体的層構造が明らかでない。 よって、本件発明1が刊行物5発明であるとすることはできず、刊行物5発明を本件発明1とする動機もなく、容易想到とすることもできない。 (キ)本件発明4、5 本件発明4、5は、本件発明1を引用し、本件発明1の構成を全て含むものであるから、本件発明1の判断と同様に、刊行物1、2、3、4、又は5発明であるとすることはできず、これら各発明から容易想到とすることもできない。 イ.特許法第36条について 取消理由として指摘した1、2については、訂正により取消理由が解消した。 3について検討する。 「パラジウム」に関し、段落0027に、以下の記載がある。 耐久性を高める観点から、金属層25は、銀以外の金属を0.1重量%以上含有することが好ましく、・・・。金属層の耐久性を高める目的で添加される金属としては、パラジウム(Pd)・・・等が好ましい。中でも、銀に高い耐久性を付与する観点から、Pdが最も好適に用いられる。Pd等の添加量を増加させると、金属層の耐久性が向上する傾向がある。一方で、Pd等の添加量が過度に多いと、赤外線反射フィルムの可視光線透過率が低下する傾向がある。そのため、金属層25中の銀以外の金属の含有量は、4重量%以下が好ましく、・・・。 また、段落0079の表1をみると、金属層にパラジウム(Pd)を0.5重量%を含む実施例1における耐塩水性は「○」、金属層が銀のみである比較例2における耐塩水性は「×」とされている。 すなわち、「パラジウム」の技術的意義は、耐久性の向上であり、明確である。 「非晶質」に関し、段落0030に、以下の記載がある。 金属酸化物層21,22中の酸化亜鉛の含有量は、金属酸化物の合計100重量部に対して、3重量部以上が好ましく、・・・。酸化亜鉛の含有量が上記範囲であれば、金属酸化物層が非晶質層となりやすく、耐久性が高められる傾向がある。一方、酸化亜鉛の含有量が過度に大きいと、逆に耐久性が低下したり、可視光線透過率が低下する傾向がある。そのため、金属酸化物層21,22中の酸化亜鉛の含有量は、金属酸化物の合計100重量部に対して、60重量部以下が好ましく、・・・。 また、段落0079の表1をみると、酸化亜鉛の含有量(19重量部)が金属酸化物層が非晶質層となりやすい範囲である実施例3における耐塩水性は「○」、酸化亜鉛の含有量(100重量部)が金属酸化物層が非晶質層となりやすい範囲から外れている比較例6における耐塩水性は「×」とされている。 すなわち、「非晶質」の技術的意義は、耐久性の向上であり、明確である。 4については、訂正により請求項6が削除され、取消理由が解消した。 ウ.本件発明2、3、6 本件発明2、3、6は、訂正により削除された。 4.むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由によっては、本件請求項1、4ないし5に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1、4ないし5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 請求項2、3、6に係る特許は、対象が存在しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2016-700640

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