特許異議申立
2016-700579
熱可塑性プリプレグ、積層基材及び成形品
- 審判番号
- 2016-700579
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2014-546236
- 登録番号
- 特許第5858171号(P5858171)
- 請求日
- 2016年06月27日
- 審決日
- 2017年02月03日
- 公報発行日
- 2017年05月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】三菱レイヨン株式会社
- 【権利者代理人】志賀 正武
- 【権利者代理人】高橋 詔男
- 【権利者代理人】鈴木 三義
- 【異議申立人】東レ 株式会社
- 審判長/審判官
- 審判長 小柳 健悟
- 審判官 加藤 友也
- 審判官 大島 祥吾
- 分類
- P1651.113-YAA(C08J) / P1651.121-YAA(C08J)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項特許法113条2号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5858171号発明「熱可塑性プリプレグ、積層基材及び成形品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第5858171号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔1ないし17〕について訂正することを認める。
特許第5858171号の請求項1、2及び4ないし17に係る特許を維持する。
特許第5858171号の請求項3に係る特許についての特許異議申立を却下する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第5858171号の請求項1ないし17に係る特許についての出願(以下、「本件出願」という。)は、2014年9月9日(優先権主張 平成25年9月10日)を国際出願日とする特許出願であって、平成27年12月25日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、平成28年6月27日付け(受理日:同年6月28日)で特許異議申立人 東レ株式会社(以下、単に「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし17)がされ、当審において同年10月7日付けで取消理由(以下、「取消理由」という。)が通知され、同年12月6日付け(受理日:同年12月7日)で特許権者 三菱レイヨン株式会社から意見書が提出されるとともに訂正の請求(以下、「本件訂正の請求」という。)がされ、同年12月12日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、それに対し特許異議申立人から何らの応答がされなかったものである。
第2 訂正の適否について
1 訂正の内容
本件訂正の請求による訂正の内容は、次のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示すものである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「一方向に配向した強化繊維と樹脂とからなるプリプレグであって、
前記プリプレグはシート状であり、
前記プリプレグは、前記強化繊維を切断する深さの切込みを有し、
前記切込みにより10~50mmの長さに切断された強化繊維Aを含む帯部分と、前記強化繊維の配向方向における前記プリプレグのシート長の50%以上の長さの強化繊維Bを含む帯部分のみからなり、
前記強化繊維Aを含む帯部分と、前記強化繊維Bを含む帯部分とが、交互に配列されており、
前記強化繊維Bを含む帯部分の平面視の面積が、前記プリプレグの平面視の全面積に対して、1.4%~35.0%であり、
前記強化繊維Bの少なくとも一端が、前記強化繊維の配向方向における前記プリプレグの端部に位置することを特徴とするプリプレグ。」とあるのを、
「一方向に配向した強化繊維と樹脂とからなるプリプレグであって、
前記プリプレグはシート状であり、
前記プリプレグは、前記強化繊維を切断する深さの切込みを有し、
前記切込みにより10~50mmの長さに切断された強化繊維Aを含む帯部分と、前記強化繊維の配向方向における前記プリプレグのシート長の50%以上の長さの強化繊維Bを含む帯部分のみからなり、
前記強化繊維Aを含む帯部分と、前記強化繊維Bを含む帯部分とが、交互に配列されており、
前記切込みにより切断された強化繊維Aを含む、帯部分と帯部分の間に、前記強化繊維Bを含む帯部分を有し、
前記強化繊維Bを含む帯部分の平面視の面積が、前記プリプレグの平面視の全面積に対して、1.4%~35.0%であり、
前記強化繊維Bの少なくとも一端が、前記強化繊維の配向方向における前記プリプレグの端部に位置することを特徴とするプリプレグ。」に訂正する。
併せて、特許請求の範囲の請求項1を引用する請求項2及び4ないし17についても、請求項1を訂正したことに伴う訂正をする。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4に「請求項1~3のいずれか一項に記載のプリプレグ」とあるのを、「請求項1又は2に記載のプリプレグ」に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項5に「請求項1~4のいずれか一項に記載のプリプレグ」とあるのを、「請求項1、2、4のいずれか一項に記載のプリプレグ」に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項6に「請求項1~5のいずれか一項に記載のプリプレグ」とあるのを、「請求項1、2、4、5のいずれか一項に記載のプリプレグ」に訂正する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項7に「請求項1~6のいずれか一項に記載のプリプレグ」とあるのを、「請求項1、2、4~6のいずれか一項に記載のプリプレグ」に訂正する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項8に「請求項1~7のいずれか一項に記載のプリプレグ」とあるのを、「請求項1、2、4~7のいずれか一項に記載のプリプレグ」に訂正する。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項9に「請求項1~8のいずれか一項に記載のプリプレグ」とあるのを、「請求項1、2、4~8のいずれか一項に記載のプリプレグ」に訂正する。
(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項10に「請求項1~9のいずれか一項に記載のプリプレグ」とあるのを、「請求項1、2、4~9のいずれか一項に記載のプリプレグ」に訂正する。
(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項11に「請求項1~10のいずれか一項に記載のプリプレグ」とあるのを、「請求項1、2、4~10のいずれか一項に記載のプリプレグ」に訂正する。
(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項12に「請求項1~11のいずれか一項に記載のプリプレグ」とあるのを、「請求項1、2、4~11のいずれか一項に記載のプリプレグ」に訂正する。
(12)訂正事項12
特許請求の範囲の請求項13に「請求項1~12のいずれか一項に記載のプリプレグ」とあるのを、「請求項1、2、4~12のいずれか一項に記載のプリプレグ」に訂正する。
(13)訂正事項13
特許請求の範囲の請求項14に「請求項1~13のいずれか一項に記載のプリプレグを少なくとも1枚含む積層基材」とあるのを、「請求項1、2、4~13のいずれか一項に記載のプリプレグを少なくとも1枚含む積層基材」に訂正する。
2 訂正の目的の適否、一群の請求項、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内か否か及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項1に係る発明に、「前記切込みにより切断された強化繊維Aを含む、帯部分と帯部分の間に、前記強化繊維Bを含む帯部分を有し、」という発明特定事項を追加して、さらに特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項1は、訂正前の請求項3に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。
さらに、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項3を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。
さらに、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)訂正事項3ないし13について
訂正事項3ないし13は、訂正前の請求項4ないし14が、訂正前の請求項3を引用する記載であったのを、訂正事項2による請求項3の削除に伴い、請求項3を引用しないものとするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項3ないし13は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。
さらに、訂正事項3ないし13は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4)一群の請求項
本件訂正の請求による訂正は、訂正後の請求項1ないし17についての訂正であるが、訂正前の請求項2ないし17は訂正前の請求項1を引用するものであるので、訂正前の請求項1ないし17は一群の請求項である。
したがって、本件訂正の請求は、一群の請求項に対してされたものである。
3 むすび
以上のとおり、訂正事項1ないし13は、特許法120条の5ただし書き第1及び3号に掲げる事項を目的とするものである。
また、本件訂正の請求は、一群の請求項ごとに請求された訂正であるから、同法第120条の5第4項の規定に適合する。
さらに、訂正事項1ないし13は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではないので、同法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。
したがって、本件訂正の請求は適法なものであり、訂正後の請求項1ないし17について訂正することを認める。
第3 特許異議の申立てについて
1 本件特許発明
上記第2のとおり、訂正後の1ないし17について訂正することを認めるので、本件特許の請求項1ないし17に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいう。)は、平成28年12月6日付け(受理日:同年12月7日)で提出された訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし17に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
一方向に配向した強化繊維と樹脂とからなるプリプレグであって、
前記プリプレグはシート状であり、
前記プリプレグは、前記強化繊維を切断する深さの切込みを有し、
前記切込みにより10~50mmの長さに切断された強化繊維Aを含む帯部分と、前記強化繊維の配向方向における前記プリプレグのシート長の50%以上の長さの強化繊維Bを含む帯部分のみからなり、
前記強化繊維Aを含む帯部分と、前記強化繊維Bを含む帯部分とが、交互に配列されており、
前記切込みにより切断された強化繊維Aを含む、帯部分と帯部分の間に、前記強化繊維Bを含む帯部分を有し、
前記強化繊維Bを含む帯部分の平面視の面積が、前記プリプレグの平面視の全面積に対して、1.4%~35.0%であり、
前記強化繊維Bの少なくとも一端が、前記強化繊維の配向方向における前記プリプレグの端部に位置することを特徴とするプリプレグ。
【請求項2】
前記切込みにより切断された強化繊維Aを含む帯部分と、前記強化繊維Bを含む帯部分が、前記プリプレグの全面において交互に配列されている請求項1に記載のプリプレグ。
【請求項3】(削除)
【請求項4】
前記強化繊維Bを含む帯部分の幅Wnが0.5mm以上、10.0mm以下であり、前記強化繊維Bを含む帯部分と帯部分の間隔Wpが5mm以上、150mm以下である請求項1又は2に記載のプリプレグ。
【請求項5】
前記強化繊維Bを含む帯部分の幅Wnが、全て同一長である請求項1、2、4のいずれか一項に記載のプリプレグ。
【請求項6】
前記強化繊維Bが、前記プリプレグの一辺から他辺までの間において切断されていない強化繊維である請求項1、2、4、5のいずれか一項に記載のプリプレグ。
【請求項7】
前記プリプレグの1辺と、前記強化繊維の配向方向が平行である請求項1、2、4~66のいずれか一項に記載のプリプレグ。
【請求項8】
前記プリプレグの平面視の面積1m2あたりにおいて、前記切込みにより形成される切込長の総和が20m以上、150m以下である請求項1、2、4~7のいずれか一項に記載のプリプレグ。
【請求項9】
前記切込みと前記強化繊維のなす角度が30°以上、60°以下である請求項1、2、4~8のいずれか一項に記載のプリプレグ。
【請求項10】
厚さが50μm以上、200μm以下である請求項1、2、4~9のいずれか一項に記載のプリプレグ。
【請求項11】
前記強化繊維が炭素繊維である請求項1、2、4~10のいずれか一項に記載のプリプレグ。
【請求項12】
前記プリプレグを形成する樹脂が、熱可塑性樹脂である請求項1、2、4~11のいずれか一項に記載のプリプレグ。
【請求項13】
前記プリプレグの少なくとも1辺が、500mm~2000mmである請求項1、2、4~12のいずれか一項に記載のプリプレグ。
【請求項14】
プリプレグを複数枚積層した積層基材であって、請求項1、2、4~13のいずれか一項に記載のプリプレグを少なくとも1枚含む積層基材。
【請求項15】
さらに、熱可塑性樹脂からなり、前記強化繊維を含まない層を少なくとも1層含む請求項14に記載の積層基材。
【請求項16】
積層基材に含まれる前記強化繊維の体積含有率が、前記積層基材の総体積に対して、15体積%以上、55体積%以下である請求項14又は15に記載の積層基材。
【請求項17】
請求項14~16のいずれか一項に記載の積層基材を加熱加圧して成形した成形品。」
2 取消理由の概要
取消理由の概要は次のとおりである。
「1.(新規性)本件特許の請求項1、2、4ないし14、16及び17に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、同法第113条第2号に該当し、本件特許の請求項1、2、4ないし14、16及び17に係る特許は取り消すべきものである。
2.(進歩性)本件特許の請求項1、2及び4ないし17に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、同法第113条第2号に該当し、本件特許の請求項1、2及び4ないし17に係る特許は取り消すべきものである。
記
第1 本件特許発明
・・・(略)・・・
第2 理由1及び2(新規性及び進歩性)
1 本件特許の優先日前に日本国内において、頒布された刊行物
甲第3号証:特開昭58-201614号公報
・・・(略)・・・
2 甲3の記載等
・・・(略)・・・
3 対比・判断
・・・(略)・・・
4 まとめ
以上のとおり、本件特許発明1、2、4ないし14、16及び17は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないか、または、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
また、本件特許発明15は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
したがって、本件特許の請求項1、2及び4ないし17に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当する。」
3 取消理由についての判断
(1)甲3の記載等
ア 甲3の記載
取消理由で引用した甲第3号証(特開昭58-201614号公報)には、「プリプレグシート」に関して、図面とともに次の記載がある(以下、総称して「甲3の記載」という。なお、下線は当審で付したものである。)。
・「一方向引揃え補強用繊維シート状物にマトリツクス樹脂を含浸せしめたプリプレグシートの両端みみ部に至らない範囲に、その中央部に、プリプレグシートの横方向に切れ目を設けたことを特徴とするプリプレグシート。」(第1ページ左下欄第5ないし9行)
・「本発明のプリプレグシートの一例を第1図に示した。第1図中(1)は本発明のプリプレグシートであり、(2)はマトリツクス樹脂を含浸した一方向引揃え補強繊維シート面を、(3)は切れ目部を、(4)はプリプレグシートの両端みみ部を示すものである。」(第2ページ左上欄第9ないし14行)
・「本発明を実施するに際して用いる補強用繊維としては炭素繊維、硝子繊維、アラミド繊維、シリコンカーバイト繊維、アルミナ繊維等通常の繊維強化プラスチツクに利用されている補強用繊維なら、いずれのものをも用いることができ、・・・(略)・・・また、引揃え補強繊維シートの中央部の巾方向へ設ける切れ目はシートの垂直方向に、或いは可成りの角度をもたせて設けることができ、この切れ目の間隔は通常10-100mmなる間隔で設けるのが、その作業性並びに得られる成形体の強度の面より好しい。」(第2ページ左上欄第15行ないし右上欄第16行)
・「上述した一方向引揃え補強用繊維シートの両端みみ部を残し、その中央部に設ける切り込み部の大きさは、本発明のプリプレグシートを利用する繊維強化プラスチツク成形体の大きさ、形状に合せて適宜その巾を選定することが好しく、通常5-100mmなる範囲であることが好しい。この巾が余り狭くなると、本発明のプリプレグシートの成形用型への巻付は作業性が低下すると共に、得られる繊維強化プラスチツク成形体の端部強度が低下するようになり、一方、この巾が余り広くなると成形用型への巻付は時に補強用繊維へ不都合な折り曲げ部が生ずるようになるので好しくない。」(第2ページ右上欄第17行ないし左下欄第11行)
・「本発明を実施するに際して用いるマトリツクス樹脂としては・・・(略)・・・ポリアミド、ポリエステル樹脂、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンエーテルポリカーボネート、ABS樹脂等の熱可塑性樹脂を用いることができ、これらの樹脂は本発明のプリプレグの用途に応じ20-80%なる範囲で補強用繊維シートに含浸せしめるのがよい。」(第2ページ左下欄第12行ないし右下欄第2行)
・「本発明のプリプレグシートは、タイコ状成形型に巻き付けたものの正面図を第3図(イ)に示した。同図中(4)がプリプレグのみみ部に相当し、(9)が切り込み部に相当するものである。ツヅミ状成形型に本発明のプリプレグを巻き付けたものの成形物を第3図(ロ)に、本発明のプリプレグシートを積層し、成形用金型にて凸状成形体に成形したものの斜視図を第3図(ハ)に示した。」(第2ページ右下欄第3ないし11行)
・第1図として、次の図面が記載されている。
・第3図として、次の図面が記載されている。
イ 甲3発明
甲3の記載及び図面を整理すると、甲3には、次の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されていると認める。
「一方向に引揃えた補強用繊維と熱可塑性樹脂を含浸せしめたプリプレグであって、
前記プリプレグシートはシート状であり、
前記プリプレグは、前記補強繊維を切断する深さの切り込み部を有し、
前記切り込み部により10~100mmの長さに切断された補強繊維を含む中央部と、前記補強繊維の引揃えた一方向における前記プリプレグのシート長の長さの補強繊維を含むみみ部のみからなり、
前記切り込み部により10~100mmの長さに切断された補強繊維を含む中央部と、前記補強繊維の引揃えた一方向における前記プリプレグのシート長の長さの補強繊維を含むみみ部とが交互に配置されており、前記補強繊維の引揃えた一方向における前記プリプレグのシート長の長さの補強繊維の少なくとも一端が、前記補強繊維の引揃えた一方向における前記プリプレグの端部に位置するプリプレグ。」
(2)対比・判断
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲3発明を対比する。
甲3発明における「引揃えた」は、その機能、構成または技術的意義からみて、本件特許発明1における「配向した」に相当し、以下、同様に「補強用繊維」は「強化繊維」に、「熱可塑性樹脂」は「樹脂」に、「切り込み部」は「切込み」に、「10~100mmの長さに切断された補強繊維を含む中央部」は「10~50mmの長さに切断された強化繊維Aを含む帯部分」に、「前記補強繊維の引揃えた一方向における前記プリプレグのシート長の長さの補強繊維を含むみみ部」は「前記強化繊維の配向方向における前記プリプレグのシート長の50%以上の長さの強化繊維Bを含む帯部分」に、それぞれ、相当するから、両者は、次の点で相違または一応相違し、それ以外には、相違点は認められない。
<相違点1>
本件特許発明1においては、「前記切込みにより切断された強化繊維Aを含む、帯部分と帯部分の間に、前記強化繊維Bを含む帯部分を有」しているのに対し、甲3発明においては、そうでない点。
<相違点2>
本件特許発明1においては、「前記強化繊維Bを含む帯部分の平面視の面積が、前記プリプレグの平面視の全面積に対して、1.4%~35.0%」であるのに対し、甲3発明においては、そうであるか不明な点。
そこで、まず、相違点1について検討する。
甲3発明は、「前記切り込み部により10~100mmの長さに切断された補強繊維を含む中央部と、前記補強繊維の引揃えた一方向における前記プリプレグのシート長の長さの補強繊維を含むみみ部のみ」からなるものであり、「前記補強繊維の引揃えた一方向における前記プリプレグのシート長の長さの補強繊維を含むみみ部」(本件特許発明1における「強化繊維Bを含む帯部分」に相当する。)を「前記切り込み部により10~100mmの長さに切断された補強繊維を含む中央部」(本件特許発明1における「切込みにより切断された強化繊維Aを含む、帯部分」に相当する。)の両端に有するものであるから、相違点1は実質的な相違点であり、本件特許発明1は甲3発明であるとはいえない。
また、甲第3号証には、「前記切込みにより切断された強化繊維Aを含む、帯部分と帯部分の間に、前記強化繊維Bを含む帯部分を有」することに相当する事項は記載されていないし、それを示唆する記載もない。
したがって、甲3発明において、相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項を想到することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
よって、相違点2について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲3発明であるとはいえないし、甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
イ 本件特許発明2及び4ないし17について
次に、本件特許発明2及び4ないし17について検討する。
本件特許発明2及び4ないし17は、訂正後の請求項1を引用するものであり、本件特許発明1をさらに限定した発明であるから、本件特許発明1と同様に、甲3発明であるとはいえないし、甲3発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
4 むすび
以上のとおりであるから、本件特許発明1、2及び4ないし17は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものではなく、また、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものでもないので、請求項1、2及び4ないし17に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものとはいえず、同法第113条第2号に該当するものではない。
第4 結語
上記第3のとおりであるから、取消理由によっては、請求項1、2及び4ないし17に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1、2及び4ないし17に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、請求項3は、訂正により削除されたため、請求項3に対して、特許異議申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2016-700579