特許異議申立
2015-700071
繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグおよびその成形体、並びに繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグの製造方法
- 審判番号
- 2015-700071
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2013-556440
- 登録番号
- 特許第5700142号(P5700142)
- 請求日
- 2015年10月07日
- 審決日
- 2016年03月16日
- 公報発行日
- 2017年04月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】三菱レイヨン株式会社
- 【権利者代理人】志賀 正武
- 【権利者代理人】高橋 詔男
- 【権利者代理人】鈴木 三義
- 【異議申立人】東レ株式会社
- 審判長/審判官
- 審判長 須藤 康洋
- 審判官 平塚 政宏
- 審判官 大島 祥吾
- 分類
- P1651.113-Y (C08J) / P1651.121-Y (C08J) / P1651.536-Y (C08J) / P1651.537-Y (C08J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第29条、特許法第36条、特許法第113条、特許法第120条の5第2項第1号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5700142号「繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグおよびその成形体、並びに繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグの製造方法」の請求項1ないし15に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。
結論
特許第5700142号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。
特許第5700142号の請求項1、3ないし15に係る特許を維持する。
理由
第1 主な手続の経緯等
特許第5700142号(設定登録時の請求項の数は15。以下,「本件特許」という。)は,国際出願日である平成25年11月26日(優先権主張 平成24年11月27日,平成25年8月7日)にされたとみなされる特許出願に係るものであって,平成27年2月27日に設定登録された。
特許異議申立人 東レ株式会社(以下,単に「異議申立人」という。)は,平成27年10月7日,本件特許の請求項1~15に係る発明についての特許に対して特許異議の申立てをした。
当審において,平成27年12月11日付けで取消理由を通知したところ,特許権者は,平成28年2月15日付けで,訂正請求書(以下,当該訂正請求書による訂正を「本件訂正請求」という。)及び意見書を提出した。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下のア~サのとおりである。
ア 特許請求の範囲の請求項2を削除する。
イ 特許請求の範囲の請求項3に「請求項1または2に記載の繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグ」とあるのを,「請求項1に記載の繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグ」に訂正する。
ウ 特許請求の範囲の請求項4に「請求項1~3のいずれか1つに記載の繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグ」とあるのを,「請求項1または3に記載の繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグ」に訂正する。
エ 特許請求の範囲の請求項5に「請求項1~4のいずれか1つに記載の繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグ」とあるのを,「請求項1,3,4のいずれか1つに記載の繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグ」に訂正する。
オ 特許請求の範囲の請求項6に「請求項1~4のいずれか1つに記載の繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグ」とあるのを,「請求項1,3,4のいずれか1つに記載の繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグ」に訂正する。
カ 特許請求の範囲の請求項7に「請求項1~6のいずれか1つに記載の繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグ」とあるのを,「請求項1,3~6のいずれか1つに記載の繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグ」に訂正する。
キ 特許請求の範囲の請求項9に「請求項1~7のいずれか1つに記載の繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグ」とあるのを,「請求項1,3~7のいずれか1つに記載の繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグ」に訂正する。
ク 特許請求の範囲の請求項10に「請求項1~9のいずれか1つに記載の繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグ」とあるのを,「請求項1,3~9のいずれか1つに記載の繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグ」に訂正する。
ケ 特許請求の範囲の請求項11に「請求項1~10のいずれか1つに記載の繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグ」とあるのを,「請求項1,3~10のいずれか1つに記載の繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグ」に訂正する。
コ 特許請求の範囲の請求項12に「請求項1~11のいずれか1つに記載の繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグ」とあるのを,「請求項1,3~11のいずれか1つに記載の繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグ」に訂正する。
サ 特許請求の範囲の請求項15に「請求項1~11のいずれか1つに記載の繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグ」とあるのを,「請求項1,3~11のいずれか1つに記載の繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグ」に訂正する。
2 訂正の目的の適否,一群の請求項,新規事項の有無,及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記アの訂正事項は,請求項2を削除するものであるから,特許法120条の5第2項ただし書1号に該当し,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして,当該訂正事項アは,新規事項の追加に該当せず,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。
また、上記イ~サの訂正事項は,削除される請求項2の記載を引用していた請求項の記載を請求項2の記載を引用しないものとするものであるから,特許法120条の5第2項ただし書1号に該当し,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして,当該訂正事項イ~サは,新規事項の追加に該当せず,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。
さらに、これら訂正は一群の請求項ごとに請求されたものである。
3 むすび
以上のとおりであるから,本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項第1号に掲げる事項を目的とするものであり,かつ,同条第6項において準用する同法第126条第5項から第7項までの規定に適合するので,訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり,本件訂正請求による訂正は認容されるので,本件特許の請求項1~15に係る発明(以下,それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明15」という。)は,平成28年2月15日付け訂正請求書に添付された特許請求の範囲の請求項1~15に記載された事項により特定されるものであって,そのうちの本件発明1は以下のとおりである。
「強化繊維[A]、サイジング剤[B]、ポリアミド系樹脂[C]を含む繊維強化ポリアミドプリプレグであって、前記強化繊維[A]の目付(g/m2)が50~300であり、前記ポリアミド系樹脂[C]の融点が250℃以下であり、前記サイジング剤[B]と前記ポリアミド系樹脂[C]が以下の条件を満たす繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグ。
Nm/N0≦2.0
N0:ローラ型ブレードを有する容量60ccのミキサを用い、前記ミキサの容量に対して60%の充填率になるようにポリアミド樹脂[C]のみを前記ミキサに充填し、ポリアミド系樹脂[C]の融点+30℃の温度で加熱溶融したときのポリアミド系樹脂[C]の流動性を、前記ローラ型ブレードの回転数を15分間100rpmに維持するのに必要な前記ローラ型ブレードのトルクの値の平均値で表した値。
Nm:ローラ型ブレードを有する容量60ccのミキサを用い、前記ミキサの容量に対して60%の充填率になるようにサイジング剤[B]とポリアミド系樹脂[C]を3:100(質量比)で混合した混合物を前記ミキサに充填し、ポリアミド系樹脂[C]の融点+30℃の温度で加熱溶融したときの前記混合物の流動性を、前記ローラ型ブレードの回転数を15分間100rpmに維持するのに必要な前記ローラ型ブレードのトルクの値の平均値で表した値。」
第4 取消理由とその判断
平成27年12月11日付けで通知した取消理由は,本件特許の請求項2及び請求項2を引用する請求項についての明確性に関する取消理由であった。しかし,上記第2のとおり,本件訂正請求による訂正が認容されることにより,対象となった請求項が存在しないこととなったので,当該取消理由はそもそも存在しないこととなった。取消理由通知における取消理由は,理由がない。
第5 申立理由の概要
異議申立人の主張は,概略,次のとおりである。
1 主たる証拠として特開2002-371141号公報(以下,「刊行物1」という。)と実験成績証明書である甲3,4号証及び甲2号証,甲7号証の記載を参酌すれば,本件発明1,5,6,11-13は,刊行物1に記載された発明である。また,主たる証拠として特開2011-174057号公報(以下,「刊行物9」という。)と実験成績証明書である甲10,11,12号証の記載を参酌すれば,本件発明1,3-6,11-14は,刊行物9に記載された発明であるから,特許法29条1項3号に該当し,特許を受けることができない(以下,「取消理由1」という。)ものである。
2 本件発明1~16は,主たる証拠として刊行物1又は9に記載されたいずれかの発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない(以下,「取消理由2」という。)ものである。
3 本件特許に係る明細書の発明の詳細な説明の記載は,特許法36条4項1号に規定する要件に適合しない(以下,「取消理由3」という。なお,当該要件を「実施可能要件」という場合がある。)ものである。
具体的には,異議申立人による証拠方法である甲13号証によれば,本件特許の発明の詳細な説明に記載の実施例で用いたポリアミドのN0の値が本件明細書での実施例の値と甲13号証による測定での値が異なることから,Nm/N0の測定方法について当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載していない。
4 本件特許に係る特許請求の範囲の請求項2の記載は,特許法36条6項1号に規定する要件に適合しない(以下「取消理由4」という。なお,当該要件を「サポート要件」という場合がある。)ものである。
5 そして,上記取消理由1~4にはいずれも理由があるから,本件特許の請求項1~15に係る発明についての特許は,特許法113条2号及び4号に該当し,取り消されるべきものである。
第6 当合議体の判断
当合議体は,以下述べるように,取消理由1~4にはいずれも理由はないと解する。
1 取消理由1及び2(新規性及び進歩性)について
(1) 刊行物1及び9に記載された発明
ア 刊行物1に記載の発明
刊行物1には,その実施例1,3に,以下の発明が記載されている。
「飛竜袋BNタイプ(旭化成ポリフレックス(株)製)にビスフェノールAエチレンオキサイド付加物がサイジング剤として付加されたPAN系炭素繊維からなる無撚りのストランドを一方向に引き揃えた目付200g/m2(当審注:刊行物1に「g/cm2」とあるのは誤記と認める。)のシートを配置して減圧し,ヒートシールして得られた繊維強化成形材料。」(以下,「刊行物1発明」という。)
イ 刊行物9に記載の発明
刊行物9には,その実施例15に,以下の発明が記載されている。
「ポリアミド6(東レ(株)製 ”アミラン(登録商標)”CM1001)とサイジング剤であるポリオキシエチレンオレイルエーテルを付着させた目付100g/m2であるPAN系炭素繊維からなる繊維強化成形材料。」(以下,「刊行物9発明」という。)
(2) 刊行物1に基づく取消理由1について
本件発明1と刊行物1発明とを対比する。
刊行物1発明の「飛竜袋BNタイプ」の樹脂は,異議申立人の証拠方法である甲2号証及び甲3号証により,融点が250℃以下のポリアミド系樹脂といえる。
刊行物1発明の「PAN系炭素繊維」,「繊維強化成形材料」は,それぞれ,本件発明1における「強化繊維」,「繊維強化ポリアミドプリプレグ」に相当する。
そうすると,両者は,
「強化繊維[A]、サイジング剤[B]、ポリアミド系樹脂[C]を含む繊維強化ポリアミドプリプレグであって、前記強化繊維[A]の目付(g/m2)が50~300であり、前記ポリアミド系樹脂[C]の融点が250℃以下である、繊維強化熱可塑性樹脂プリプレグ。」の点で一致し,以下の点で相違している。
<相違点1>
本件発明1は「前記サイジング剤[B]と前記ポリアミド系樹脂[C]が以下の条件を満たす
Nm/N0≦2.0
N0:ローラ型ブレードを有する容量60ccのミキサを用い、前記ミキサの容量に対して60%の充填率になるようにポリアミド樹脂[C]のみを前記ミキサに充填し、ポリアミド系樹脂[C]の融点+30℃の温度で加熱溶融したときのポリアミド系樹脂[C]の流動性を、前記ローラ型ブレードの回転数を15分間100rpmに維持するのに必要な前記ローラ型ブレードのトルクの値の平均値で表した値。
Nm:ローラ型ブレードを有する容量60ccのミキサを用い、前記ミキサの容量に対して60%の充填率になるようにサイジング剤[B]とポリアミド系樹脂[C]を3:100(質量比)で混合した混合物を前記ミキサに充填し、ポリアミド系樹脂[C]の融点+30℃の温度で加熱溶融したときの前記混合物の流動性を、前記ローラ型ブレードの回転数を15分間100rpmに維持するのに必要な前記ローラ型ブレードのトルクの値の平均値で表した値。」と特定するのに対し,刊行物1発明では,この点を特定しない点。
以下,相違点1について検討する。
異議申立人の証拠方法である甲4号証には,樹脂としてポリアミド6「CM1021」(東レ(株)製)を用い,サイジング剤として「ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物「ニューポールBPシリーズ BPE-40」(三洋化成工業(株)製,j+k=4)」,「ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物「ニューポールBPシリーズ BPE-100」(三洋化成工業(株)製,j+k=10)」、「ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物「ニューポールBPシリーズ BPE-180」(三洋化成工業(株)製,j+k=180)」の3種を用いた実験結果が示されている。
しかし,少なくとも,甲4号証の実験結果の「ポリアミド6「CM1021」(東レ(株)製)」は,刊行物1発明における「飛竜袋BNタイプ」の樹脂と異なるものである。
また,甲4号証の実験結果のビスフェノールAエチレンオキサイド付加物である「ニューポールBPシリーズ」は,刊行物1発明の「ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物」とは異なるものである(刊行物1発明の「ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物」が甲4号証の実験結果の「BPE-40」,「BPE-100」,「BPE-180」のいずれかであるとの証拠は示されていない。)。
そうすると,甲4号証の実験のものが「Nm/N0≦2.0」の条件を満たすからといって,刊行物1発明のものが当該式を満足するとはいえない。その他に刊行物1発明が,「Nm/N0≦2.0」の条件を満たすと認めるべき証拠はない。
よって,相違点1は実質的な相違点である。
以上のことから,本件発明1は,刊行物1に記載された発明ということはできないから,新規性を有する。また,本件発明5,6,11-12は,いずれも本件発明1を引用する発明であって,同様に刊行物1に記載された発明ということはできないから,新規性を有する。
本件発明13と刊行物1に記載された発明とを対比すると,少なくとも上記相違点1で相違し,同様に,本件発明13は,刊行物1に記載された発明ということはできないから,新規性を有する。
よって,異議申立人が主張する刊行物1に基づく取消理由1には理由がない。
(3) 刊行物1に基づく取消理由2について
当該相違点1について検討する。
刊行物1には,サイジング剤の働きや作用等についての具体的な言及はなく,サイジング剤を変更する示唆もない。
そして,本件発明1は,上記相違点1の発明特定事項を有することにより,「強化繊維束にポリアミド系樹脂が良好に含浸し,力学特性の高いプリプレグおよび成形体を得ることができる。」(段落【0007】)という効果が奏されるものであり,当該効果について,具体的な実施例において確認されている。
一方,異議申立人の提示したいずれの証拠にも,サイジング剤とポリアミド系樹脂が「Nm/N0≦2.0」という条件を満たすことで,強化繊維束にポリアミド系樹脂が良好に含浸し,力学特性の高いプリプレグが得られることについての記載はなく,示唆もされていない。
そうすると,上記効果は,当業者が予測し得ない格別の効果といえる。
よって,相違点1は当業者であっても容易に想到し得たものとはいえない。
以上のことから,本件発明1は,刊行物1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから,進歩性を有する。
本件発明3-12,15は,いずれも本件発明1を引用する発明であるから,同様に進歩性を有する。
本件発明13及び14と刊行物1に記載された発明とを対比すると,少なくとも上記相違点1で相違し,同様に,本件発明13及び14は,刊行物1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから,進歩性を有する。
よって,異議申立人が主張する刊行物1に基づく取消理由2には理由がない。
(4) 刊行物9に基づく取消理由1について
本件発明1と刊行物9発明とを対比する。
刊行物9発明の「ポリアミド6(東レ(株)製 ”アミラン(登録商標)”CM1001)」,「PAN系炭素繊維」,「繊維強化成形材料」は,それぞれ,本件発明1における「融点が250℃以下のポリアミド系樹脂」,「強化繊維」,「繊維強化ポリアミドプリプレグ」に相当する。
そうすると,両者は,上記(2)における相違点1で相違し、その余の点で一致している。
以下、相違点1について検討する。
異議申立人の証拠方法である甲10号証には,樹脂として「ポリアミド6(東レ(株)製 ”アミラン(登録商標)”CM1001)」を用い,サイジング剤として「ポリオキシエチレンオレイルエーテル「BF1519」(竹本油脂(株)製)」を用いた実験結果が示されている。
しかし,少なくとも,実験結果の「ポリオキシエチレンオレイルエーテル「BF1519」(竹本油脂(株)製)」は,刊行物9発明における「ポリオキシエチレンオレイルエーテル」とは異なるものである(刊行物9発明の「ポリオキシエチレンオレイルエーテル」が「BF1519」(竹本油脂(株)製)であるとの証拠は示されていない。)。
そうすると,甲10号証の実験のものが「Nm/N0≦2.0」の条件を満たすからといって,刊行物9発明のものが当該式を満足するとはいえない。その他に刊行物9発明が,「Nm/N0≦2.0」の条件を満たすと認めるべき証拠はない。
よって,相違点1は実質的な相違点である。
以上のことから,本件発明1は,刊行物9に記載された発明ということはできないから,新規性を有する。また,本件発明3-6,11-12は,いずれも本件発明1を引用する発明であって,同様に刊行物9に記載された発明ということはできないから,新規性を有する。
本件発明13及び14と刊行物9に記載された発明とを対比すると,少なくとも上記相違点1で相違し,同様に,本件発明13及び14は,刊行物9に記載された発明ということはできないから,新規性を有する。
よって,異議申立人が主張する刊行物9に基づく取消理由1には理由がない。
(5) 刊行物9に基づく取消理由2について
当該相違点1について検討する。
刊行物9には,サイジング剤の働きや作用等についての具体的な言及はなく,サイジング剤を変更する示唆もない。
そして,本件発明1は,相違点1の発明特定事項を有することにより,上記(3)に記載のとおり当業者が予測し得ない効果を奏するものであるから,相違点1は当業者であっても容易に想到し得たものとはいえない。
以上のことから,本件発明1は,刊行物9発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから,進歩性を有する。
本件発明3-12,15は,いずれも本件発明1を引用する発明であるから,同様に進歩性を有する。
本件発明13及び14と刊行物9に記載された発明とを対比すると,少なくとも上記相違点1で相違し,同様に,本件発明13及び14は,刊行物9発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから,進歩性を有する。
よって,異議申立人が主張する刊行物9に基づく取消理由2には理由がない。
2 取消理由3(実施可能要件)について
本件明細書には,本件特許に係る「Nm/N0」に関して,段落【0020】に「ラボプラストミルを用いた混練評価においては,ミキサ容量やブレード(スクリュー形状等)もトルク値に影響を与える」との記載があるとともに,段落【0074】において具体的な測定方法が記載され,段落【0075】~【0092】に,実施例1~5として熱可塑性樹脂プリプレグが当該プリプレグの「Nm/N0」の測定された結果と共に具体的な製造方法が記載され,さらに,当該プリプレグから成形品(成形板,積層板)が成形されたことが記載されている。
ここで,絶対値であるN0については,測定するラボプラストミルの機種によりその値が変化するものといえるが,本件特許の「Nm/N0」は,相対的な無次元値となっているから,個々のラボプラストミルに基づく値の変化は相殺されるとみるのが相当であり,甲13号証に記載されるところの事実が認められるからといって,本件特許に係る「Nm/N0」について当業者が実施できなくなるものではない。
してみれば,出願当時の技術常識に基づき当業者がその物を製造することができ,さらに,製造された物を使用することができるから,本件特許に係る発明は当業者が実施できると認められる。
よって,本件特許に係る明細書の発明の詳細な説明の記載は,実施可能要件を満たすと判断される。異議申立人が主張する取消理由3には理由がない。
3 取消理由4(サポート要件)について
上記第2のとおり,本件訂正請求による訂正が認容されることにより,本件発明2は削除され,取消理由4の対象となる請求項が存在しないこととなったので,異議申立人が主張する取消理由4には理由がない。
第7 むすび
したがって,異議申立人の主張する申立ての理由及び証拠方法によっては,特許異議の申立てに係る特許を取り消すことはできない。また,他に当該特許が特許法113条各号のいずれかに該当すると認めうる理由もない。
よって,結論のとおり決定する。
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2015-700071