特許異議申立
2016-700567
多段エマルションポリマーおよび向上した顔料効率
- 審判番号
- 2016-700567
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2014-110852外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年06月24日
- 審決日
- 2017年08月22日
- 公報発行日
- 2017年11月24日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ローム アンド ハース カンパニー
- 【権利者代理人】特許業務法人センダ国際特許事務所
- 【異議申立人】大竹 千代子
- 【異議申立人代理人】竹口 美穂
- 分類
- P1652.121-YAA(C08F) / P1652.536-YAA(C08F) / P1652.537-YAA(C08F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第5項、特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5837961号発明「多段エマルションポリマーおよび向上した顔料効率」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第5837961号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし3、5ないし7〕、4について訂正することを認める。
特許第5837961号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第5837961号の請求項1ないし7に係る特許についての出願は、平成23年8月17日(パリ条約による優先権主張 2010年9月3日 米国(US))の出願である特願2011-178307号の一部を新たな特許出願として平成26年5月29日に出願され、平成27年11月13日にその特許権の設定登録がされ、その後、特許異議申立人大竹千代子(以下、「特許異議申立人」という。)より請求項1ないし4に対して特許異議の申立てがされ、平成28年8月12日付けで取消理由が通知され、同年11月15日付け(受理日:同年11月16日)で意見書が提出され、同年11月29日付けで取消理由通知(決定の予告)がされ、平成29年3月2日付け(受理日:同年3月3日)で意見書の提出及び訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)がされ、同年3月28日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、同年4月27日付け(受理日:同年5月1日)で特許異議申立人から意見書が提出され、同年6月6日付けで訂正拒絶理由が通知され、同年7月31日付け(受理日:同年8月1日)で意見書が提出されたものである。
第2 本件訂正請求の適否
1.訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、次の訂正事項1ないし4のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示すものである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「当該エマルションポリマーは、全モノマー重量の10%~50%を含む段階中に、前記リン含有酸モノマーの75重量%~100重量%および前記エマルションポリマーの重量を基準にして0.01重量%~0.6重量%の第2の酸含有モノマーが前記第2のモノエチレン性不飽和モノマーと共に添加され、」と記載されているのを「当該エマルションポリマーは、リン含有酸モノマーリッチ段階中に、前記リン含有酸モノマーの75重量%~100重量%および前記エマルションポリマーの重量を基準にして0.01重量%~0.6重量%の第2の酸含有モノマーが前記第2のモノエチレン性不飽和モノマーと共に添加され、ここで前記リン含有酸モノマーリッチ段階中に添加される前記モノマーの総量は、全モノマー添加の10重量%の添加に対応する量から全モノマー添加の50重量%の添加に対応する量までであり、」に訂正する。
また、当該請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項2、3、5ないし7も併せて訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「前記段階は全添加モノマー重量の0~65%で始まり」と記載されているのを「前記リン含有酸モノマーリッチ段階は全添加モノマー重量の0~40%で始まり」に訂正する。
また、当該請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項2、3、5ないし7も併せて訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4に「(b)全モノマー重量の10%~50%を含む段階中に、前記リン含有酸モノマーの75重量%~100重量%および前記エマルションポリマーの重量を基準にして0.01重量%~0.6重量%の第2の酸含有モノマーを前記第2のモノエチレン性不飽和モノマーと共に添加することであって、」と記載されているのを「(b)リン含有酸モノマーリッチ段階中に、前記リン含有酸モノマーの75重量%~100重量%および前記エマルションポリマーの重量を基準にして0.01重量%~0.6重量%の第2の酸含有モノマーを前記第2のモノエチレン性不飽和モノマーと共に添加することであって、前記リン含有酸モノマーリッチ段階中に添加されるモノマーの総量は、全モノマー添加の10重量%の添加に対応する量から全モノマー添加の50重量%の添加に対応する量までであり、」に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に「前記段階を全添加モノマー重量の0~65%で始める」と記載されているのを「前記リン含有酸モノマーリッチ段階を全添加モノマー重量の0~40%で始める」に訂正する。
2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、一群の請求項及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項1の「全モノマー重量の10%~50%を含む段階中」が、「前記リン含有酸モノマーリッチ段階中に添加される前記モノマーの総量は、全モノマー添加の10重量%の添加に対応する量から全モノマー添加の50重量%の添加に対応する量まで」という要件を満たす「リン含有酸モノマーリッチ段階中」であると訂正するものであり、願書に添付した外国語明細書の翻訳文の段落【0017】の記載に照らせば、段階とは具体的には当該リン含有酸モノマーリッチ段階であるものと認められ、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。また、訂正事項1は、願書に添付した外国語書面の翻訳文に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。さらに、訂正事項1は、訂正後の請求項1ないし3、5ないし7についての訂正であるが、訂正前の請求項2、3、5ないし7は訂正前の請求項1を直接的又は間接的に引用するものであるので、訂正前の請求項1ないし3、5ないし7は、一群の請求項である。
(なお、訂正事項1は、異議申立がされていない請求項5ないし7にも係るものであるが、上記のとおり、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する目的要件を満たすものであるから、同法同条第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する要件(いわゆる独立特許要件)に係る検討は要しない。次に述べる訂正事項2についても、同様である。)
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項1の「前記段階」を「前記リン含有酸モノマーリッチ段階」と訂正し、訂正前の請求項1の「全添加モノマー重量の0~65%で始まり」を「全添加モノマー重量の0~40%で始まり」と訂正するものであり、訂正事項1について述べたように、段階とは具体的にはリン含有酸モノマーリッチ段階であるものと認められるとともに、訂正前の請求項1の「全モノマー重量の10%~50%を含む段階」が全添加モノマー重量の50~65%で始まる不合理を解消するものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。また、訂正事項2は、願書に添付した外国語明細書の翻訳文の段落【0017】の記載に基づくものであるから、願書に添付した外国語書面の翻訳文に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。さらに、訂正事項2は、訂正後の請求項1ないし3、5ないし7についての訂正であるが、訂正前の請求項2、3、5ないし7は訂正前の請求項1を直接的又は間接的に引用するものであるので、訂正前の請求項1ないし3、5ないし7は、一群の請求項である。
(3)訂正事項3について
訂正事項3は、訂正前の請求項4の「全モノマー重量の10%~50%を含む段階中」が、「前記リン含有酸モノマーリッチ段階中に添加されるモノマーの総量は、全モノマー添加の10重量%の添加に対応する量から全モノマー添加の50重量%の添加に対応する量まで」という要件を満たす「リン含有酸モノマーリッチ段階中」であると訂正するものであり、訂正事項1について述べたように、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。また、訂正事項3は、願書に添付した外国語書面の翻訳文に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4)訂正事項4について
訂正事項4は、訂正前の請求項4の「前記段階」を「前記リン含有酸モノマーリッチ段階」と訂正し、訂正前の請求項4の「全添加モノマー重量の0~65%で始める」を「全添加モノマー重量の0~40%で始める」と訂正するものであり、訂正事項2について述べたように、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。また、訂正事項4は、願書に添付した外国語書面の翻訳文に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
3.小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求の訂正事項1ないし4による訂正は、いずれも特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものであり、同法同条第4項、かつ、同法同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、本件訂正請求による訂正を認める。
第3 本件発明
本件訂正請求により訂正された訂正後の請求項1ないし4に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
多段エマルションポリマーの重量を基準にして1.0重量%~4重量%のリン含有酸モノマー、
多段エマルションポリマーの重量を基準にして0重量%~0.05重量%の多エチレン性不飽和モノマー、および
少なくとも1種の第2のモノエチレン性不飽和モノマー、
を共重合単位として含む多段エマルションポリマーであって;
当該エマルションポリマーは-10℃~20℃の計算Tgを有し;
当該エマルションポリマーは、リン含有酸モノマーリッチ段階中に、前記リン含有酸モノマーの75重量%~100重量%および前記エマルションポリマーの重量を基準にして0.01重量%~0.6重量%の第2の酸含有モノマーが前記第2のモノエチレン性不飽和モノマーと共に添加され、ここで前記リン含有酸モノマーリッチ段階中に添加される前記モノマーの総量は、全モノマー添加の10重量%の添加に対応する量から全モノマー添加の50重量%の添加に対応する量までであり、前記リン含有酸モノマーリッチ段階は全添加モノマー重量の0~40%で始まり、前記少なくとも1種の第2のモノエチレン性不飽和モノマーの乳化共重合により形成される;
多段エマルションポリマー。
【請求項2】
前記第2の酸含有モノマーがメタクリル酸およびスチレンスルホン酸ナトリウムからなる群から選択される、請求項1に記載の多段エマルションポリマー。
【請求項3】
前記リン含有酸モノマーの75重量%~100重量%が前記第2のモノエチレン性不飽和モノマーと共に添加される前記段階が前記エマルションポリマーの重量を基準にして0.01~3重量%のアルデヒド反応性基含有モノマーの添加をさらに含む、請求項1に記載の多段エマルションポリマー。
【請求項4】
多段エマルションポリマーの重量を基準にして1.0重量%~4重量%のリン含有酸モノマー、
多段エマルションポリマーの重量を基準にして0重量%~0.05重量%の多エチレン性不飽和モノマー、および
少なくとも1種の第2のモノエチレン性不飽和モノマー、
を共重合単位として含み、-10℃~20℃の計算Tgを有する多段エマルションポリマーを形成する方法であって;
(a)前記少なくとも1種の第2のモノエチレン性不飽和モノマーを乳化共重合すること;および
(b)リン含有酸モノマーリッチ段階中に、前記リン含有酸モノマーの75重量%~100重量%および前記エマルションポリマーの重量を基準にして0.01重量%~0.6重量%の第2の酸含有モノマーを前記第2のモノエチレン性不飽和モノマーと共に添加することであって、前記リン含有酸モノマーリッチ段階中に添加されるモノマーの総量は、全モノマー添加の10重量%の添加に対応する量から全モノマー添加の50重量%の添加に対応する量までであり、前記リン含有酸モノマーリッチ段階を全添加モノマー重量の0~40%で始めることを含む;ことを含む;
多段エマルションポリマーを形成する方法。」
第4 特許異議申立人が主張する取消理由
特許異議申立人が特許異議申立書において主張する取消理由の概要は、次のとおりである。
・本件特許の請求項1ないし4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、請求項1ないし4に係る特許は、同法第113条第2号の規定に該当し、取り消すべきものである。
・本件の請求項1ないし4に係る発明についての特許は、明細書の発明の詳細な説明の記載が不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号の規定に該当し、取り消すべきものである。
・本件の請求項1ないし4に係る発明についての特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号の規定に該当し、取り消すべきものである。
・本件の請求項1ないし4に係る発明についての特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号の規定に該当し、取り消すべきものである。
甲第1、2号証は、次のとおりである。
・甲第1号証:特開2004-99901号公報
・甲第2号証:特許第4498756号公報
第5 当審が通知した取消理由(決定の予告)の概要
当審が通知した取消理由(決定の予告)の概要は、本件の請求項1ないし4に係る発明についての特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号の規定に該当し、取り消すべきものであるというものである。
第6 当審の判断
1.取消理由(決定の予告)について
請求項1において「全添加モノマー重量の0~65%で始まり」が「全添加モノマー重量の0~40%で始まり」に訂正され、また、請求項4において「全添加モノマー重量の0~65%で始める」が「全添加モノマー重量の0~40%で始める」に訂正されたことにより、訂正前の請求項1、4の「全モノマー重量の10%~50%を含む段階」が全添加モノマー重量の50~65%で始まる旨の不合理が解消され、特許請求の範囲の記載は明確である。
2.取消理由(決定の予告)において採用しなかった特許異議の申立理由について
(1)特許異議申立書の3.(4)ウの主張について
特許異議申立人は、請求項1ないし4に係る発明は甲第1号証である特開2004-99901号公報(以下、「甲1」という。)に記載された発明及び甲第2号証である特許第4498756号公報(以下、「甲2」という。)に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである旨を主張している。
甲1には、多段エマルションポリマーが多エチレン性不飽和モノマーを共重合単位として含むことは記載されているが、その含有量が「0重量%~0.05重量%」であることは記載されていない。一方、甲2には、1分子中に2つ以上の不飽和基を有する架橋性モノマーを含むモノマー混合液(a)から得られるエマルション樹脂(A)と、モノマー混合液(b)から得られるエマルション樹脂(B)とを含むエマルション塗料組成物が記載され(請求項1)、当該モノマー混合液(b)は、1分子中に2つ以上の不飽和基を有する架橋性モノマーを含んでいないことが好ましいことが記載されている(段落【0024】)。しかしながら、甲2には、多段エマルションポリマーは記載されておらず、甲2に記載された特定のエマルション塗料組成物における特定のモノマー混合液に関して、1分子中に2つ以上の不飽和基を有する架橋性モノマーを含んでいないことが好ましいことが記載されているのであって、甲1に記載された多段エマルションポリマーにおいて、多エチレン性不飽和モノマーの含有量を0重量%~0.05重量%にすることについては、甲2には記載も示唆もされていない。
したがって、上記主張は理由がない。
(2)特許異議申立書の3.(4)エ(ア-1)の主張について
特許異議申立人は、本件特許明細書において、請求項1に係る発明に含まれない実施例の隠蔽性等の特性が、比較例よりも優れる一方、請求項1に係る発明に含まれる実施例と同等であり、その発明特定事項にどのような技術的意義があるのかを理解することができず、当業者が発明を実施することができるとはいえない旨を主張している。
しかしながら、請求項1に係る発明に含まれる実施例の隠蔽性等の特性が優れたものであることは理解できるから、その発明特定事項の技術的意義は理解することができるといえる。また、当業者が発明を実施することができないとするような事情は認められない。
したがって、上記主張は理由がない。
(3)特許異議申立書の3.(4)エ(ア-2)の主張について
特許異議申立人は、酸含有モノマーの割合が多段エマルションポリマーの特性に影響することは明らかであるから、請求項1に係る発明に含まれるあらゆる発明の範囲まで、実施例の結果を拡張ないし一般化できるとはいえない旨を主張している。
しかしながら、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、請求項1に係る発明の課題は、塗膜の隠蔽効率等を向上させることである旨記載されており、本件特許明細書に記載された実施例、比較例からみて、特定の濃度のリン含有酸モノマーを特定の段階中に添加すること等によって、当該課題を解決することができるといえる。そうすると、酸含有モノマーの割合が特定されなくても、請求項1に係る発明は発明の詳細な説明に記載したものといえる。
したがって、上記主張は理由がない。
(4)特許異議申立書の3.(4)エ(ア-3)の主張について
特許異議申立人は、請求項1に記載されたリン含有酸モノマー、多エチレン性不飽和モノマー、第2のモノエチレン性不飽和モノマー、第2の酸含有モノマーについて、実施例ではそれぞれ1種類又は2種類の化合物が用いられているのみであり、請求項1に係る発明に含まれるあらゆる発明の範囲まで、実施例の結果を拡張ないし一般化できるとはいえない旨を主張している。
しかしながら、特許異議申立書の3.(4)エ(ア-2)の主張について述べたように、特定の濃度のリン含有酸モノマーを特定の段階中に添加すること等によって、塗膜の隠蔽効率等を向上させるという課題を解決することができるといえるから、上記の各モノマーの化合物が特定されなくても、請求項1に係る発明は発明の詳細な説明に記載したものといえる。
したがって、上記主張は理由がない。
(5)特許異議申立書の3.(4)エ(ア-4)の主張について
特許異議申立人は、請求項1ないし4に係る発明は、多段エマルションポリマーにTiO2を混合した形態となって技術的意義が発揮されるものであり、発明の詳細な説明に記載したものでない旨を主張している。
しかしながら、特許異議申立書の3.(4)エ(ア-2)の主張について述べたように、特定の濃度のリン含有酸モノマーを特定の段階中に添加すること等によって、塗膜の隠蔽効率等を向上させるという課題を解決することができるといえるから、TiO2と混合することが特定されなくても、請求項1ないし4に係る発明は発明の詳細な説明に記載したものといえる。
したがって、上記主張は理由がない。
(6)特許異議申立書の3.(4)エ(ア-5)の主張について
特許異議申立人は、請求項1に係る発明には、プロダクト・バイ・プロセスクレームについて発明が明確であることという要件に適合するための不可能・非実際的事情が存在するとは認められない旨を主張している。
しかしながら、平成28年11月15日付け(受理日:同年11月16日)で提出された意見書で主張されているように、リン含有酸基の分布や配置に関係する要因は様々であり、請求項1に係る発明の多段エマルションポリマーをその構造又は特性によって直接特定することは不可能又はおおよそ実際的ではなく、不可能・非実際的事情が存在するものと認められる。
したがって、上記主張は理由がない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議の申立理由によっては、請求項1ないし4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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