特許異議申立
2016-700511
吸水性樹脂組成物、吸収体及び吸収性物品
- 審判番号
- 2016-700511
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2011-149387外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年06月02日
- 審決日
- 2017年03月03日
- 公報発行日
- 2017年05月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】住友精化株式会社
- 【権利者代理人】細田 芳徳
- 【異議申立人】株式会社 日本触媒
- 【異議申立人代理人】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
- 分類
- P1651.113-YAA(C08L) / P1651.537-YAA(C08L) / P1651.121-YAA(C08L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第4項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第36条第6項第1号、特許法第113条第2号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5825888号発明「吸水性樹脂組成物、吸収体及び吸収性物品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第5825888号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕について訂正することを認める。
特許第5825888号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 主な手続の経緯
特許第5825888号の請求項1ないし3に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、平成23年7月5日に特許出願され、平成27年10月23日に設定登録され、同年12月2日に特許公報が発行され、その後、平成28年6月2日付けで特許異議申立人株式会社日本触媒(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、同年9月21日付けで請求項1ないし3に係る特許について取消理由が通知され、その指定期間内である同年11月18日付けで意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)がされ、平成29年1月6日付けで特許異議申立人に対して本件訂正請求があった旨の通知がされたが、特許異議申立人から意見書が提出されなかったものである。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記キク科植物抽出物の含有量が、吸水性樹脂100質量部に対して0.005~5質量部である、吸水性樹脂組成物。」とあるのを、「前記キク科植物抽出物の含有量が、吸水性樹脂100質量部に対して0.005~5質量部であり、前記キク科植物抽出物がステビア、トウキンセンカ及びフキタンポポより選択される1種以上の抽出物を含む、吸水性樹脂組成物。」と訂正する。なお、下線は訂正箇所を示すものである。
2 訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1
(1) 訂正前の「キク科植物抽出物」について、「ステビア、トウキンセンカ及びフキタンポポより選択される1種以上の抽出物を含む」と限定するものであり、「ステビア」、「トウキンセンカ」、「フキタンポポ」はいずれもキク科植物であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(2) 訂正前の請求項1ないし3は、請求項1の記載を、請求項2ないし3が直接・間接に引用しているものであるから、訂正前の請求項1ないし3は、一群の請求項である。
したがって、訂正後の請求項1ないし3は、特許法第120条の5第4項に規定する関係を有する一群の請求項である。
(3) 「前記キク科植物抽出物の含有量が、吸水性樹脂100質量部に対して0.005~5質量部であり、前記キク科植物抽出物がステビア、トウキンセンカ及びフキタンポポより選択される1種以上の抽出物を含む」は、願書に添付した明細書の段落【0014】に記載されているから、新規事項の追加に該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。
(4) 特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。
3 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-3〕について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
本件訂正請求により訂正された請求項1ないし3に係る発明(以下、それぞれ順に「本件特許発明1」ないし「本件特許発明3」といい、これらを総称して「本件特許発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
吸水性樹脂とキク科植物抽出物とを含有する吸水性樹脂組成物であって、前記キク科植物抽出物の含有量が、吸水性樹脂100質量部に対して0.005~5質量部であり、前記キク科植物抽出物がステビア、トウキンセンカ及びフキタンポポより選択される1種以上の抽出物を含む、吸水性樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1記載の吸水性樹脂組成物と親水性繊維とを含有する吸収体。
【請求項3】
液体透過性シートと液体不透過性シートの間に請求項2記載の吸収体が保持されている吸収性物品。」
第4 取消理由の概要
1 取消理由1
本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
記
本件特許発明の課題は、「抗菌、消臭性能に優れ、安全に取り扱うことができ、かつゲル安定性に優れた吸水性樹脂組成物を提供すること」(段落【0008】)であって、かかる課題が解決されたか否かは、所定の試験(段落【0042】ないし段落【0047】参照)によって確認される性質のものである。
しかるところ、発明の詳細な説明には、上記課題(「ゲル安定性」等)の解決手段として、極めて広汎な「キク科植物抽出物」(【請求項1】)のうち「ステビア、トウキンセンカ及びフキタンポポ」(段落【0014】及び【表1】)からの抽出物を用いる旨の記載はあるものの、これら以外の「キク科植物抽出物」の場合、上記課題が解決されているのか否か不明である。
また、発明の詳細な説明には、「ステビア、トウキンセンカ及びフキタンポポ」以外の「植物」からの抽出物によって上記課題(「ゲル安定性」等)が解決されると当業者が理解できる記載もないし、上記課題(「ゲル安定性」等)が解決されるとの出願時の技術常識があるともいえない。
そうすると、本件特許発明は、発明の詳細な説明において上記課題(「ゲル安定性」等)が解決されることを当業者が理解できるように記載された範囲を超えているものである。
よって、本件特許発明は、発明の詳細な説明に記載されているとはいえない。
2 取消理由2
本件特許発明1ないし3は、その出願前に日本国内において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
よって、本件特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるものである。
記
刊行物 特表2009-513507号公報(特許異議申立書に添付された甲第1号証)
第5 対比・判断
1 取消理由1
発明の詳細な説明には、「抗菌性や安全性、また吸水性樹脂組成物のゲル安定性に効果があることから、ステビア、トウキンセンカ及びフキタンポポが好ましい」との記載があり(段落【0014】)、その効果も所定の試験(段落【0042】ないし段落【0047】参照)によって確認されているから(【表1】)、発明の詳細な説明には、本件特許発明の課題(段落【0008】)が解決されることを当業者が理解できるように記載されているといえる。
よって、本件特許発明は、発明の詳細な説明に記載されている。
2 取消理由2
(1)刊行物には、取消理由通知書で説示したように、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「吸水性ポリマー及び活性物質を含有する組成物であって、
活性物質として、吸水性ポリマー及び活性物質を含有する組成物に基づいて0.001~30重量%の治療物質または傷治療物質と、
吸水性ポリマー及び活性物質を含有する組成物に基づいて70~99.999重量%の吸収体マトリックスと、
を含む組成物。」
(2)確かに、引用発明の「治療物質または傷治療物質」は、「キク科植物抽出物」である「カミツレ抽出物」、「アルニカ・・・抽出物」及び「マリーゴールド抽出物」を含み得るものの、「ステビア、トウキンセンカ及びフキタンポポより選択される1種以上の抽出物を含む」ものではないから、この点で、本件特許発明1と相違する。
したがって、本件特許発明1は、引用発明と異なるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないとはいえない。
(3)本件特許発明2及び3は、本件特許発明1を直接・間接に引用するものであるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないとはいえない。
3 その他
なお、特許異議申立人が提出した甲各号証には、「キク科植物抽出物」として「ステビア、トウキンセンカ及びフキタンポポより選択される1種以上の抽出物を含む」ものを選択する動機づけが記載ないし示唆されていないから、本件特許発明1ないし3は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件訂正請求による訂正後の請求項1ないし3に係る特許を取り消すことができない。
また、他に本件訂正請求による訂正後の請求項1ないし3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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