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特許異議申立

2016-700348

防水透湿性複合膜及び防水透湿性複合膜を有する防水透湿性布帛

審判番号
2016-700348
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2012-265413外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2016年04月21日
審決日
2017年03月31日
公報発行日
2017年06月30日
結論
訂正認容
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.121-YAA(B32B) / P1651.537-YAA(B32B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第5797184号発明「防水透湿性複合膜及び防水透湿性複合膜を有する防水透湿性布帛」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第5797184号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~11〕について訂正することを認める。 特許第5797184号の請求項1~4、6~11に係る特許を維持する。 特許第5797184号の請求項5に係る特許についての申立てを却下する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 特許第5797184の請求項1~11に係る特許についての出願は、平成24年12月4日(優先権主張平成24年9月13日)に特許出願され、平成27年8月28日にその特許権の設定登録がされ、その後、請求項1~11に係る特許について、特許異議申立人伊藤範子(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審において平成28年8月30日付けで取消理由を通知し、その指定期間内である平成28年10月28日に意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)がされ、それに対して平成29年2月1日に申立人から本件訂正請求についての意見書が提出されたものである。 第2 訂正の適否についての判断 1.訂正の内容 (1)訂正事項1、3、6、7 訂正事項1、3、6、7は、特許請求の範囲の請求項1、2、10、11に、「mm」とあるのを、それぞれ、「mmH2O」に訂正するものである。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1に 「前記多孔質ポリウレタン層は、防水性を有しており、疎水性であって前記多孔質ポリウレタン層の一方の表面から他方の表面まで気体が通過する経路を有する」とあるのを、 「前記多孔質ポリウレタン層は、防水性を有しており、疎水性であって前記多孔質ポリウレタン層の一方の表面から他方の表面まで気体が通過する経路を有し、前記多孔質ポリウレタン層の細孔サイズが10μm以下である」に訂正する。 (3)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項2に 「前記多孔質ポリウレタン層は、防水性を有し、疎水性であって前記多孔質ポリウレタン層の一方の表面から他方の表面まで気体が通過する経路を有する」とあるのを、 「前記多孔質ポリウレタン層は、防水性を有し、疎水性であって前記多孔質ポリウレタン層の一方の表面から他方の表面まで気体が通過する経路を有し、前記多孔質ポリウレタン層の細孔サイズが10μm以下である」に訂正する。 (4)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項5を削除する。 特許請求の範囲の請求項6に「請求項1乃至5」とあるのを「請求項1乃至4」に訂正する。 特許請求の範囲の請求項7に「請求項1乃至6」とあるのを「請求項1、2、3、4、又は6」に訂正する。 特許請求の範囲の請求項8に「請求項1乃至7」とあるのを「請求項1、2、3、4、6又は7」に訂正する。 特許請求の範囲の請求項9に「請求項1乃至8」とあるのを「請求項1、2、3、4、6、7又は8」に訂正する。 (5)訂正事項9 明細書の段落【0016】に 「前記多孔質ポリウレタン層は、防水性を有しており、疎水性であって前記多孔質ポリウレタン層の一方の表面から他方の表面まで気体が通過する経路を有する」とあるのを 「前記多孔質ポリウレタン層は、防水性を有しており、疎水性であって前記多孔質ポリウレタン層の一方の表面から他方の表面まで気体が通過する経路を有し、前記多孔質ポリウレタン層の細孔サイズが10μm以下である」に訂正する。 (6)訂正事項11 明細書の段落【0017】に 「前記多孔質ポリウレタン層は、防水性を有し、疎水性であって前記多孔質ポリウレタン層の一方の表面から他方の表面まで気体が通過する経路を有する」とあるのを 「前記多孔質ポリウレタン層は、防水性を有し、疎水性であって前記多孔質ポリウレタン層の一方の表面から他方の表面まで気体が通過する経路を有し、前記多孔質ポリウレタン層の細孔サイズが10μm以下である」に訂正する。 (7)訂正事項12 明細書の段落【0025】を削除する。 明細書の段落【0026】に「請求項1乃至5」とあるのを「請求項1乃至4」に訂正する。 明細書の段落【0027】に「請求項1乃至6」とあるのを「請求項1、2、3、4、又は6」に訂正する。 明細書の段落【0028】に「請求項1乃至7」とあるのを「請求項1、2、3、4、6又は7」に訂正する。 明細書の段落【0029】に「請求項1乃至8」とあるのを「請求項1、2、3、4、6、7又は8」に訂正する。 (8)訂正事項8、10、13~33 訂正事項8、10、13~33は、明細書の段落【0016】、【0017】、【0030】、【0031】、【0036】 、【0038】、【0039】、【0066】、【0070】、【0071】、【0072】、【0078】、【0081】、【0112】、【0114】、【0116】、【0158】 、【0160】、【0170】、【0171】、【0183】、【0184】、【0185】に「mm」とあるのを、それぞれ、「mmH2O」に訂正するものである。 2.訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1、3、6、7について ア 訂正の目的について 訂正事項1、3、6、7の訂正は、特許請求の範囲の請求項1、2、10、11に、「mm」とあるのを、それぞれ、「mmH2O」に訂正するもので、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 イ 新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について 耐水圧の測定に関しては、願書に添付した本件特許明細書の段落【0061】に「実施例1~2において、JIS L 1092B法における多孔質ポリウレタンフィルム側からの耐水圧及び多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルム側からの耐水圧を測定した。」と記載されている。その「JIS L 1092B法」は、耐水圧は水圧を測定すると規定している。そして水圧の単位として、「kpa」あるいは「mmH2O」が通常用いられる。圧力を表す単位として他に「mmHg」があるが、「mmHg」は、「生体内の圧力(例えば血圧)」に関して主に用いられるものであることを考慮すれば、願書に添付した本件特許明細書及び特許請求の範囲の耐水圧の単位「mm」は「mmH2O」を指すことは、当業者にとって明らかである。 よって、訂正事項1、3、6、7は、耐水圧の単位を明確にするもので、訂正事項1、3、6、7の訂正は、願書に添付した本件特許明細書及び特許請求の範囲に記載された事項の範囲内においてするものである。 そして、この訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (2)訂正事項2について ア 訂正の目的について 訂正事項2の訂正は、「前記多孔質ポリウレタン層の細孔サイズが10μm以下である」と前記多孔質ポリウレタン層について特定するものであるから、訂正事項2の訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について 訂正事項2に関連する記載として、願書に添付した本件特許明細書及び特許請求の範囲には、【請求項4】の「前記多孔質ポリウレタン層の細孔サイズが10μm以下である請求項1乃至3のいずれかに記載の防水透湿性複合膜。」の記載、段落【0024】の「請求項4の防水透湿性複合膜は、請求項1乃至3のいずれかに記載の防水透湿性複合膜において、記多孔質ポリウレタン層の空孔のサイズが10μm以下である。」(当審注、なお、「細孔」という用語は、発明の詳細な説明に用いられていないが、段落【0024】が請求項4の説明であり、請求項4の「多孔質ポリウレタン層の細孔」の用語を「多孔質ポリウレタン膜の空孔」としている点、段落【0014】の「しかしながら、多孔質ポリウレタン膜は外力を繰り返し受けると空孔の周囲が破壊され空孔が大きくなる。空孔が大きくなると、空孔への水の浸入をウレタン自体の疎水性だけでは防ぐことができなくなる。そのため、多孔質ポリウレタン膜の防水性が著しく低下する。」及び【0042】の「多孔質ポリウレタンフィルム1又は多孔質ポリウレタンフィルム2からなる多孔質ポリウレタン層は微細な空孔が多数存在する。多孔質ポリウレタン層はこれらの多数の空孔が相互に連通した構造を有する。したがって、多孔質ポリウレタン層は多孔質ポリウレタン層の一方の表面から他方の表面まで気体が通過する経路を有する。」に「多孔質ポリウレタン層の孔(あるいは微細な孔)」として「多孔質ポリウレタン層の空孔」の用語が使われている点からして、発明の詳細な説明の「(多孔質ポリウレタン膜の)空孔」は、請求項の「(多孔質ポリウレタン膜の)細孔」に相当する。以下同じ)の記載があり、訂正事項2の訂正は、願書に添付した本件特許明細書及び特許請求の範囲に記載された事項の範囲内においてするものである。 そして、この訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (3)訂正事項4について ア 訂正の目的について 訂正事項4は、「前記多孔質ポリウレタン層の細孔サイズが10μm以下である」と前記多孔質ポリウレタン層について特定するものであるから、訂正事項4の訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について 訂正事項2と同様の理由により、訂正事項4の訂正は、願書に添付した本件特許明細書及び特許請求の範囲に記載された事項の範囲内においてするものである。 そして、この訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (4)訂正事項5について ア 訂正の目的について 請求項5を削除する訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 それに伴い、請求項6~9について、引用する請求項から請求項5を除く訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とする。 イ 新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について 訂正事項5の訂正は、願書に添付した本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものである。 そして、この訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (5)訂正事項9 ア 訂正の目的について 訂正事項9の明細書の段落【0016】の訂正は、上記訂正事項2の訂正によって生じる特許請求の範囲と発明の詳細な説明との記載の不一致を解消して、記載の整合を図るものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 イ 新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について 訂正事項9の訂正は、願書に添付した本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものである。 そして、この訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (6)訂正事項11 ア 訂正の目的について 訂正事項11の明細書の段落【0017】の訂正は、上記訂正事項4の訂正によって生じる特許請求の範囲と発明の詳細な説明との記載の不一致を解消して、記載の整合を図るものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 イ 新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について 訂正事項11の訂正は、願書に添付した本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものである。 そして、この訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (7)訂正事項12 ア 訂正の目的について 訂正事項12の明細書の段落【0027】~【0029】の訂正は、上記訂正事項5の訂正によって生じる特許請求の範囲と発明の詳細な説明との記載の不一致を解消して、記載の整合を図るものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 イ 新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について 訂正事項12の訂正は、願書に添付した本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものである。 そして、この訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (8)訂正事項8、10、13~33 ア 訂正の目的について 訂正事項8、10、13~33の訂正は、明細書の該当する段落の「mm」とあるのを、それぞれ、「mmH2O」に訂正するもので、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 イ 新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について 上記第2 2.(1)イの訂正事項1、3、6、7についてと同様の理由により、訂正事項8、10、13~33は、耐水圧の単位を明確にするもので、訂正事項8、10、13~33の訂正は、願書に添付した本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものである。 そして、この訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (9)一群の請求項について そして、本件訂正は、訂正前の請求項1と、請求項1を直接あるいは間接に引用する請求項3~11と、請求項3~11で直接あるいは間接に引用される請求項2とを対象とするものであるから、上記訂正事項1~33に係る訂正は、請求項1~11について、一群の請求項ごとに請求されたものである。 3.小括 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~11〕について訂正を認める。 第3 本件訂正発明 本件訂正請求により訂正された請求項1~11に係る発明(以下「本件訂正発明1~本件訂正発明11」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~11に記載された次の事項により特定されるとおりのものであると認める。 「【請求項1】 少なくとも一層の多孔質ポリテトラフルオロエチレン層と少なくとも一層の多孔質ポリウレタン層が積層されている防水透湿性複合膜であって、 この防水透湿性複合膜は、JIS L 0217 103法における洗濯10~50回後に耐水圧が10000mmH2O以上であり、 前記多孔質ポリウレタン層は、防水性を有しており、疎水性であって前記多孔質ポリウレタン層の一方の表面から他方の表面まで気体が通過する経路を有し、前記多孔質ポリウレタン層の細孔サイズが10μm以下であることを特徴とする防水透湿性複合膜。 【請求項2】 少なくとも一層の多孔質ポリテトラフルオロエチレン層と少なくとも一層の多孔質ポリウレタン層が積層されている防水透湿性複合膜であって、 この防水透湿性複合膜は、JIS L 0217 103法における洗濯10~50回後に耐水圧が10000mmH2O以上であり、JIS L 1096 B法(ガーレー形法)におけるガーレー透気抵抗度が50~1000秒であり、 前記多孔質ポリウレタン層は、防水性を有し、疎水性であって前記多孔質ポリウレタン層の一方の表面から他方の表面まで気体が通過する経路を有し、前記多孔質ポリウレタン層の細孔サイズが10μm以下であることを特徴とする防水透湿性複合膜。 【請求項3】 多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルム、多孔質ポリウレタン層の順に積層させた二層構造、 多孔質ポリウレタン層、多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルムの順に積層させた二層構造、 多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルム、多孔質ポリウレタン層、多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルムの順に積層させた三層構造 又は、 多孔質ポリウレタン層、多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルム、多孔質ポリウレタン層の順に積層させた三層構造のいずれかを有することを特徴とする請求項1又は2に記載の防水透湿性複合膜。 【請求項4】 前記多孔質ポリウレタン層の膜厚が100μm以下である請求項1乃至3のいずれかに記載の防水透湿性複合膜。 【請求項5】 (削除) 【請求項6】 JIS L 1099A-1法における透湿度が5000g/平方メートル・24hを有する請求項1乃至4のいずれかに記載の防水透湿性複合膜。 【請求項7】 前記多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルム層と前記多孔質ポリウレタン層とは、重なり合う面同士が部分的に接着されている請求項1、2、3、4又は6のいずれかに記載の防水透湿性複合膜。 【請求項8】 前記多孔質ポリウレタン層は多孔質ポリウレタンフィルムからなる請求項1、2、3、4、6又は7のいずれかに記載の防水透湿性複合膜。 【請求項9】 請求項1、2、3、4、6、7又は8のいずれかに記載の防水透湿性複合膜を有する防水透湿性布帛。 【請求項10】 JIS L 0217 103法における洗濯10~50回後に耐水圧が10000mmH2O以上である請求項9に記載の防水透湿性複合膜を有する防水透湿性布帛。 【請求項11】 摩擦負荷200回後の耐水圧が6000mmH2O以上である請求項9又は請求項10に記載の防水透湿性複合膜を有する防水透湿性布帛。」 第4 取消理由の概要 訂正前の請求項1~11に係る特許に対して、特許権者に通知した平成28年8月30日付けの取消理由の概要は以下のとおりである。 以下の取消理由は、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由を全て含むものである。 1)本件特許の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 2)本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 記 甲1:国際公開第2008/090877号 甲2:特開2006-305937号公報 甲3:特開平5-239175号公報 甲4:特開平1-291927号公報 甲5:特表2007-512987号公報 甲6:特開2008-188808号公報 甲7:特開2003-326661号公報 <理由1)について> (1)請求項1~11に係る発明は、甲1記載発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明し得たものである。 甲1発明の用途(ウインドブレーカー、合羽、コート、ジャケット、スキーウエアー、スノーボードウエアー、登山用ヤッケ、テント、釣り用ズボン、手袋、靴、寝袋など)を考慮すれば、甲1発明において、洗濯後においても所望の耐水圧を得られるように透湿性防水シートを設計することは、当業者が適宜なし得たものである。 (2)請求項1~11に係る発明は、甲2記載発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明し得たものである。 <理由2)について> 請求項1~11に係る発明は、明確でない。 具体的な理由は、特許異議申立書の第25頁末行~第26頁第12行のとおり。 加えて、請求項1ないし11では、耐水圧の単位として「mm」を用いているが、かかる単位が、mmH2O、mmAg、あるいは、それ以外の単位のいずれの意味として用いているのか、明確でない。 第5 甲号証の記載、甲号証記載の発明 1.甲第1号証 甲第1号証には、以下の記載がある。 (1-1) 「[0006] 本発明の透湿性防水シート、及び本発明の製造方法により製造される透湿性防水シートは、塩化カルシウム法で測定した透湿性および酢酸カリウム法で測定した透湿性が共に高く、かつ、防水性にも優れている。このような透湿性防水シートを、ウインドブレーカー、合羽、コート、ジャケット、スキーウエアー、スノーボードウエアー、登山用ヤッケ、テント、釣用ズボン、手袋、靴、寝袋などに用いた場合には、衣服内等への水の浸入を抑えながら、蒸れを抑えることができ、快適な衣服内環境を提供できる。 さらに、本発明の透湿性防水シート、及び本発明の製造方法により製造される透湿性防水シートは、酢酸カリウム法により測定した透湿性が高いにもかかわらず、水膨潤性が低い。そのため、水滴が付着してもウレタン樹脂膜がほとんど膨潤しないので、該透湿性防水シートから得られるウインドブレーカー等の外観品位が損なわれにくい。 また、ウレタン樹脂膜と繊維布帛が接着剤層を介して繊維布帛と積層されているものは、風合いが柔らかいため、肌触りがよく、また、柔らかなシルエットを有する縫製品を得ることも可能である。」 (1-2) 「[0007] (第1の実施形態例(aspect)) 本発明の第1の実施形態例の透湿性防水シートについて説明する。 本実施形態例の透湿性防水シートは層状の多孔質部と、該多孔質部の少なくとも片面に形成された層状の防水部とからなるウレタン樹脂膜を有するものである。すなわち、このウレタン樹脂膜は、別個の部材の多孔質部と防水部とが積層されたものではなく、ウレタン樹脂膜の中に、防水部と多孔質部とが層状に各々形成されたものである。 [0008]<ウレタン樹脂膜>  ウレタン樹脂膜は、層状の多孔質部と、該多孔質部の少なくとも片面に形成された層状の防水部とからなるものである。なかでも、ウレタン樹脂膜の片面が多孔質部、もう一方の片面が防水部であると好ましい。 ウレタン樹脂膜の厚さは10~100μmであることが好ましい。ウレタン樹脂膜の厚さが10μm未満であると、防水性が不安定になることがあり、100μmを超えると、得られる透湿性防水シートの風合いが硬化したり、透湿性が低下したりすることがある。 [0009][多孔質部]  多孔質部は、平均サイズ0.1~8.0μmの空隙を有する。例えば、多孔質部は、サイズが0.1~8.0μmの空隙を主として有する。具体的には、サイズが1~5μm程度の大きな空隙の壁面に、隣接する空隙との連通孔の役割を果たすと思われるサイズ0.1~1μm程度の小さな空隙を有して、多くの空隙が連通している。また、いくつかの空隙がつながって形成されたと推測できるいびつな形状でサイズが5~8μm程度の空隙を有していてもよい。また、多孔質部は、サイズが0.1μm未満の空隙や8μmを超える空隙を多少有していても構わない。しかし、平均サイズが0.1μm未満の空隙を有するものは、透湿性が不充分になり、平均サイズが8μmを超える空隙を有するものは、防水性が不充分であるため、本発明における多孔質部に含まれない。」 (1-3) 「[0011] 多孔質部の厚みは9.5~99.5μmであることが好ましい。多孔質部の厚みが9.5μm未満であると、透湿性が不足することがあり、99.5μmを超えると、透湿性防水シートの風合いが損なわれることがある。 [0012][防水部] 防水部は、空隙部総量が多孔質部より少ないものである。ここで、空隙部総量とは、空隙の容積を総和した量のことである。 具体的には、防水部では、走査型電子顕微鏡を用いて10000倍にて断面を観察した際に、空隙が全く見られない、あるいは、僅かにしか見られない。より具体的には、走査型電子顕微鏡を用いて10000倍で表面を観察した際に、サイズ0.1~1μmの空隙が25μm 2あたり0~20個程度しか有さないものが好ましく、1~10個程度しか有さないものがより好ましい。 なお、防水部はウレタン樹脂膜の表皮となる部分であり、表皮部と称することもできる。また、防水部は主として防水機能を発揮する部分であるが、防水部のみで防水性が発揮されるのではなく、多孔質部も防水性を有している。 防水部が空隙を有している場合には、その空隙の平均サイズは、多孔質部の空隙の平均サイズより小さいことが好ましい。また、防水部が空隙を有している場合には、その空隙の数は、多孔質部の空隙の数より少ないことが好ましい。さらには、防水部の空隙の平均サイズが多孔質部の空隙の平均サイズより小さく、かつ、防水部の空隙の数が、多孔質部の空隙の数より少ないことがより好ましい。 上記好ましい形態では、防水部の空隙部総量が確実に多孔質部より少なくなるため、塩化カルシウム法で測定した透湿性および酢酸カリウム法で測定した透湿性が共により高く、かつ、防水性がより優れる。 なお、防水部の空隙の平均サイズが多孔質部の空隙の平均サイズより小さい、すなわち多孔質部の空隙の平均サイズが大きいため、単位体積あたりの空隙の数が多孔質部の空隙の数が防水部の空隙の数に比べて少なくなる形態もある。」 (1-4) 「[0023]また、ウレタン樹脂膜には、例えば、顔料、イソシアネート系化合物などの架橋剤、触媒、酸化防止剤、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系などの紫外線吸収剤、撥水剤、ポリエチレングリコールなどの親水化剤、シルクなどのプロテインパウダー、ゼラチンパウダーなどの添加剤が含まれてもよい。 [0024]上記添加剤の中でも、撥水性が著しく向上することから、撥水剤が含まれることが好ましい。撥水剤としては、フッ素系、シリコーン系、パラフィン系などのものを用いることができる。 ウレタン樹脂膜に撥水剤を含ませる方法としては、例えば、ウレタン樹脂膜を形成するためのウレタン樹脂溶液中に撥水剤を添加する方法、ウレタン樹脂膜を製膜した後、ウレタン樹脂膜表面にパディング法(パディング法のことをディップ・ニップ法ということもある。)等により撥水剤を付与する方法などが挙げられる。これらの方法によれば、ウレタン樹脂膜の空隙の表面に撥水剤を付与することができる。」 (1-5) 「[0030]また、ウレタン樹脂膜の少なくとも片面に多孔質のポリテトラフルオロエチレン膜が積層されていてもよい。 ウレタン樹脂膜の少なくとも片面に、ウレタン樹脂やアクリル樹脂等の他の樹脂膜の無孔質膜や多孔質のポリテトラフルオロエチレン膜が積層された場合には、防水性を向上させることができる。ただし、その場合には、透湿度(特に塩化カルシウム法により測定される透湿度)が低くなることがある。 [0031][透湿性防水シートの特性]  本実施形態の透湿性防水シートは、用途に応じた透湿性および防水性になるように適宜調整すればよいが、塩化カルシウム法により測定し、24時間あたりに換算した透湿度が6500~13000g/m 2 ・24時間であることが好ましく、9000~13000g/m 2 ・24時間であることがより好ましい。 塩化カルシウム法での透湿度が6500g/m 2 ・24時間未満であると、縫製の方法によっては、該透湿性防水シートから得られる衣服等を着用した際に蒸れることがある。 また、塩化カルシウム法での透湿度が13000g/m 2 ・24時間を超えると、充分な防水性が得られないことがある。」 (1-6) 「[0033] また、本実施形態の透湿性防水シートは、耐水圧が63~196kPaであることが好ましく、98~196kPaであることがより好ましい。ここで、耐水圧は、JIS L1092-1998の耐水度試験(静水圧法)B法(高水圧法)に準じた方法で測定した値のことである。なお、水圧をかけることにより試験片が伸びる場合には、試験片の上にナイロンタフタ(2.54cm当りのタテ糸とヨコ糸の密度の合計が210本程度のもの)を重ねて、試験機に取り付けて測定をおこなう。 透湿性防水シートの耐水圧が63kPa未満であると、雨などで濡れた際に水が浸入することがあり、196kPaを超えると、透湿性が低くなることがある。 [0034] また、本実施形態の透湿性防水シートは、通気度がガーレ法による測定で100~1000秒/100mlであることが好ましい。通気度を前記範囲にすると、透湿性、防水性、防寒性のいずれもが確保される。 しかし、通気度が100秒未満であると、外からの風が通りやすくなってしまい、防寒性が低下すると共に防水性も低下することがあり、1000秒を超えると、透湿性(塩化カルシウム法及び酢酸カリウム法)が低下することがある。」 (1-7) 「[0062] また、ウレタン樹脂膜の少なくとも片面に多孔質のポリテトラフルオロエチレン膜を、接着剤を介してまたは熱融着、熱圧着等により積層してもよい。 ウレタン樹脂膜の少なくとも片面に、ウレタン樹脂やアクリル樹脂等の他の樹脂膜の無孔質膜や多孔質のポリテトラフルオロエチレン膜を積層した場合には、防水性を向上させることができる。ただし、その場合には、透湿度(特に塩化カルシウム法により測定される透湿度)が低くなることがある。」 甲第1号証の上記(1-1)~(1-7)の記載事項から、甲第1号証には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。 「ウレタン樹脂膜の少なくとも片面に多孔質のポリテトラフルオロエチレン膜が積層されている透湿性防水シートであって、 前記ウレタン樹脂膜は、層状の多孔質部と、該多孔質部の少なくとも片面に形成された層状の防水部とからなり、 JIS L1092-1998の耐水度試験(静水圧法)B法(高水圧法)に準じた方法で測定した、透湿性防水シートの耐水圧が63~196kPa(6420~20000mmH2O)であり、 前記ウレタン樹脂膜は、防水性を有しており、撥水剤が含まれ、前記多孔質部は、平均サイズ0.1~8.0μmの空隙を有し、空隙が連通し、前記防水部は、空隙部総量が多孔質部より少ないものである、透湿性防水シート。」 2.甲第2号証 甲第2号証には、以下の記載がある。 (2-1) 「【請求項4】 延伸PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)からなる可撓性を有する多孔質シートと、 ポリウレタン樹脂またはその誘導体からなる弾性シートとを備え、 前記多孔質シートと弾性シートとが積層状態で接着されて一体化され、水蒸気透過度(MVTR)が3000g/m2/24Hr以上とされている透湿性を有する複合材料。」 (2-2) 「【0001】 本発明は複合材料の製造方法および複合材料に関し、詳しくは、ポリウレタンからなる弾性シートとPTFE多孔質シートとを積層した透湿性、防水性、柔軟性に優れた複合材料に関し、特に、防水衣料やスポーツ衣料等の衣料用材料として好適に用いられるものである。」 (2-3) 「【0023】 図1は本発明の第1実施形態の複合素材1を示し、該複合材料1は延伸PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)の多孔質シート2とポリウレタンあるいはポリウレタン(メタ)アクリレートから形成した弾性シート3とを積層し、それらの界面を直接接着させて一体化した布帛状の連続シートからなる。」 (2-4) 「【0030】 前記加熱圧着により、多孔質シート2と弾性シート3とは、その界面においてミクロ的には完全に連続した線状に固着されるのではなく不連続に形成され、かつ、弾性シート3に透湿性を予め付与しているため、接着面においても水蒸気を透過できる。」 (2-5) 「【0033】 図3は第1実施形態の変形例を示し、該複合材料1は弾性シート3’として発泡ポリウレタンを用いている点が第1実施形態と相違している。 該弾性シート3’も第1実施形態と同様に、離型紙上に発泡剤を添加したポリウレタン溶液を塗布し、その後、加熱して溶剤を焼き飛ばし、その後、乾燥固化させ、離型紙を剥離して弾性シート3’を作製している。該弾性シート3’の発泡は連続発泡でも独立発泡でもいずれでもよい。 前記弾性シート3’を多孔質シート2と積層し、該積層状態で加熱加圧して、弾性シート3’のポリウレタンが多孔質シート2の気孔2aを塞がない状態で、多孔質シート2と弾性シート3’を接着して一体化している点は第1実施形態と同様である。 【0034】 前記第1実施形態の変形例の複合材料1として、厚さ30μmの多孔質シートと厚さ6μmの弾性シートとからなる複合材料を作製した。 該複合材料も、JIS L 1092 B法を用いて防水性を測定した結果、防水性の点で合格であった。また、洗濯試験 JIS L 1096 F-3法を用いて測定した結果、耐摩耗性も合格であった。」 (2-6) 「【0038】 「実施例」 前記第2実施形態の構成とした実施例1~実施例3、前記第1実施形態の変形例の構成とした実施例4の複合材料を下記の表1に示す条件で作製した。 作製した実施例1~実施例4の複合材料の透湿性、耐水圧、剥離強度を測定した。 剥離強度の測定は、複合材料の幅を10mmとし、100mm/minの速度で測定した。 【0039】 【表1】」 」 甲第2号証の上記(2-1)~(2-8)の記載事項から、甲第2号証には、以下の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されている。 「ポリテトラフルオロエチレンからなる可撓性を有する多孔質シートと、 発泡ポリウレタンからなる弾性シートとを備えた防水性透湿性複合材料であって、 発泡ポリウレタンの発泡は連続発泡であり、 JIS L 1092 B法を用いて測定した耐水圧が450kpa(45900mmH2O)である、防水性透湿性複合材料。」 3.甲第3号証 甲第3号証には、疎水性ポリウレタン樹脂から構成された多孔質シート材料が記載されている。(請求項1~4)。 4.甲第4号証 甲第4号証には、疎水性物質が内添されたウレタン樹脂から構成された多孔質層を有する透湿性加工布が記載されている(特許請求の範囲)。 5.甲第5号証 甲第5号証には、ポリテトラフルオロエチレンとポリウレタンの層を含み、連結された孔を有するポリマーフィルムが、テキスタイル物質層に接着された、通気性及び防水性のラミネートが記載されている(請求項1~15)。 6.甲第6号証 甲第6号証には、繊維布帛の少なくとも片面に多孔質のウレタン樹脂膜を有する透湿性防水布帛加工布が記載されている(請求項1)。 7.甲第7号証 甲第7号証には、繊維布帛を有し、連続多孔質ポリテトラフルオロエチレン膜のの少なくとも片面に親水性ポリウレタン樹脂膜を含む無孔質層が形成されている透湿性防水シートが記載されている(請求項1、2、8)。 第6 判断 事案に鑑み、理由2(36条第6項第2号)をまず、検討する。 1.理由2(36条第6項第2号) 本件請求項1、2には、「前記多孔質ポリウレタン層は、防水性を有しており、疎水性であって」と記載されている。 取消理由で引用した、特許異議申立書の第25頁末行~第26頁第12行には、『「防水性」と「疎水性」について、どのような測定方法や指標を用いて、どのような数値範囲に入る場合に、「防水性」を有する、あるいは「疎水性」であると理解できるのか、請求項の記載のみならず、明細書の記載を参照しても不明である。』とある。それらの「防水性」と「疎水性」の記載が不明確かどうか、検討する。 本件特許明細書の段落【0002】「従来、防水性と透湿性の両方を備える薄膜がスポーツ衣料や雨具等に用いられている。」の記載から、「防水性」は、スポーツ衣料や雨具等に用いられる布帛として機能する程度のものと理解でき、さらに発明の詳細な説明の実施例(【表1】~【表6】、段落【0050】~【0185】)には、その具体的な数値が挙げられているから、当業者は、「防水性」の程度は理解できる。 したがって、本件請求項1、2の「防水性」の記載は、明確でないとはいえない。 次に、「疎水性」について検討する。本件特許明細書の段落【0006】「ポリウレタン自体が疎水性であるので、多孔質ポリウレタン膜は空孔のサイズが充分に小さい場合には空孔への水の浸入を防止することができる。したがって、多孔質ポリウレタン膜は防水性を備える。」の記載から、「疎水性」は、上記多孔質ポリウレタン膜が上記「防水性」を発揮できる程度のものと当業者は理解できる。 したがって、本件請求項1、2の「疎水性」の記載は、明確でないとはいえない。 よって、本件請求項1、2に係る発明、及び請求項1、2を引用する請求項3、4、6~11に係る発明は明確でないとはいえない。 2.理由1(29条第2項) 請求項5に係る発明は、訂正により削除されたため、以下、本件訂正発明1~4、6~11について判断する。 (1)本件訂正発明1について ア 甲1発明を主引用例とする理由について 本件訂正発明1と甲1発明と対比すると、少なくとも、以下の点で相違する。 (相違点1) 本件訂正発明1では、防水透湿性複合膜は、JIS L 0217 103法における洗濯10~50回後に耐水圧が10000mmH2O以上であるのに対して、甲1発明では、JIS L1092-1998の耐水度試験(静水圧法)B法(高水圧法)に準じた方法で測定した、透湿性防水シートの耐水圧が63~196kPa(6420~20000mmH2O)である点。 (相違点2) 本件訂正発明1では、多孔質ポリテトラフルオロエチレン層と多孔質ポリウレタン層とで防水透湿性複合膜が構成され、多孔質ポリウレタン層の一方の表面から他方の表面まで気体が通過する経路を有しているのに対し、甲1発明では、ウレタン樹脂膜は、層状の多孔質部と、層状の防水部とからなり、ウレタン樹脂膜に多孔質のポリテトラフルオロエチレン膜が積層されて透湿性防水シートが構成され、多孔質部は連通する空隙を有している点。 相違点について検討する。 (相違点1について) 甲1発明においては、JIS L1092-1998の耐水度試験(静水圧法)B法(高水圧法)に準じた方法で測定した、透湿性防水シートの耐水圧が63~196kPa(6420~20000mmH2O)であるが、耐水度試験に、洗濯10~50回後のものを用いることは、甲第1号証に記載されていない。また、甲1発明の耐水度試験のJIS L1092-1998の耐水度試験(静水圧法)B法(高水圧法)は、洗濯10~50回後のものを用いることを前提条件としていない。そうすると、甲1発明において、耐水度試験に、洗濯10~50回後のものを用いることの動機付けがない。 (相違点2について) 甲1発明は、ウレタン樹脂膜は、層状の多孔質部と、層状の防水部とからなり、多孔質部は連通する空隙を有するが、防水部は、そのような空隙を有することの規定がないため、上記ウレタン樹脂膜の一方の表面から他方の表面まで気体が通過する経路を有するか不明であり、それを示唆する記載も甲第1号証に見出せない。そして、防水部を削除すると、甲1発明の本来の課題(「水による膨潤が抑制されて外観品位が損なわれにくする等」甲第1号証段落[0004])を解決しなくなるので、甲1発明において、ウレタン樹脂膜から防止部を削除するには、阻害要因がある。 また、「防水透湿性複合膜は、JIS L 0217 103法における洗濯10~50回後に耐水圧が10000mmH2O以上である」点は、甲第3号証~甲第7号証のいずれにも記載されておらず、示唆もされていない。 そして、相違点1及び2に係る発明特定事項を合わせもつことにより、本件訂正発明1は、「防水透湿性複合膜は透湿性を維持しつつ防水性の低下を抑制することができる。」(本件特許明細書段落【0034】)という効果を奏するものである。 よって、本件訂正発明1は、甲1発明及び周知技術(甲第3号証~甲第7号証)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 甲2発明を主引用例とする理由について 本件訂正発明1と甲2発明と対比すると、少なくとも、以下の点で相違する。 (相違点3) 本件訂正発明1では、防水透湿性複合膜は、JIS L 0217 103法における洗濯10~50回後に耐水圧が10000mmH2O以上であるのに対して、甲2発明では、防水性透湿性複合材料は、JIS L 1092 B法を用いて測定した耐水圧が450kpa(45900mmH2O)である点。 (相違点4) 本件訂正発明1では、前記多孔質ポリウレタン層の細孔サイズが10μm以下であるのに対し、甲2発明では、弾性シートの発泡ポリウレタンの連続気泡の径が不明である点。 相違点について検討する。 (相違点3について) 甲第2号証の段落【0034】に「前記第1実施形態の変形例の複合材料1として、厚さ30μmの多孔質シートと厚さ6μmの弾性シートとからなる複合材料を作製した。 該複合材料も、JIS L 1092 B法を用いて防水性を測定した結果、防水性の点で合格であった。また、洗濯試験 JIS L 1096 F-3法を用いて測定した結果、耐摩耗性も合格であった。」とあるが、「洗濯試験 JIS L 1096 F-3法」は、洗濯試験の高温ワッシャ法に関するもので、耐水圧試験に、洗濯10~50回後のものを用いることとは関係がない。すなわち、耐水圧試験に、洗濯10~50回後のものを用いることは、甲第2号証に記載されていない。そうすると、甲2発明において、耐水圧試験に、洗濯10~50回後のものを用いることの動機付けがない。 (相違点4について) 甲第2号証には、弾性シートの発泡ポリウレタンの気泡に関して、段落【0033】に「該弾性シート3’の発泡は連続発泡でも独立発泡でもいずれでもよい。」とあるだけで、弾性シートの発泡ポリウレタンの連続気泡の径を特定の範囲にすることは、記載されていない。また、弾性シートの発泡ポリウレタンの連続気泡の径と防水性の関係についても、甲第2号証に記載も示唆もない。そうすると、甲2発明において、弾性シートの発泡ポリウレタンの連続気泡の径を10μm以下にすることの動機付けがない。 また、「防水透湿性複合膜は、JIS L 0217 103法における洗濯10~50回後に耐水圧が10000mmH2O以上である」点は、甲第3号証~甲第7号証のいずれにも記載されておらず、示唆もされていない。 そして、相違点3及び4に係る発明特定事項を合わせもつことにより、本件訂正発明1は、「防水透湿性複合膜は透湿性を維持しつつ防水性の低下を抑制することができる。」(本件特許明細書段落【0034】)という効果を奏するものである。 よって、本件訂正発明1は、甲2発明及び周知技術(甲第3号証~甲第7号証)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件訂正発明2について 本件訂正発明2は、本件訂正発明1で特定された事項を包含し、さらに、「(この防水透湿性複合膜は、)JIS L 1096 B法(ガーレー形法)におけるガーレー透気抵抗度が50~1000秒であり、」の点が限定された発明である。 そうすると、上記第6 2.(1)に示したとおり、本件訂正発明1は、甲1発明及び周知技術(甲第3号証~甲第7号証)、あるいは甲2発明及び周知技術(甲第3号証~甲第7号証)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないので、本件訂正発明1の特定事項の全てを包含し、さらに限定された本件訂正発明2も、同様に、甲1発明及び周知技術(甲第3号証~甲第7号証)、あるいは甲2発明及び周知技術(甲第3号証~甲第7号証)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件訂正発明3、4~11について 本件訂正発明3、4~11は、直接あるいは間接に本件訂正発明1を引用するものであるから、本件訂正発明3、4~11は、本件訂正発明1で特定された事項を包含し、さらに、限定された発明である。 そうすると、上記第6 2.(1)に示したとおり、本件訂正発明1は、甲1発明及び周知技術(甲第3号証~甲第7号証)、あるいは甲2発明及び周知技術(甲第3号証~甲第7号証)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないので、本件訂正発明1の特定事項の全てを包含し、さらに限定された本件訂正発明3、4~11も、同様に、甲1発明及び周知技術(甲第3号証~甲第7号証)、あるいは甲2発明及び周知技術(甲第3号証~甲第7号証)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 第7 むすび 上記第6に示したとおり、本件訂正請求により訂正された請求項1~4、6~11に係る特許は、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由を全て含む、取消理由通知に記載した取消理由によっては、取り消すことができない。 また、他に本件訂正請求により訂正された請求項1~4、6~11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 そして、本件訂正請求により、請求項5に係る特許は、削除されたため、請求項5に対して申立人がした特許異議の申立ては、対象となる請求項が存在しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2016-700348

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