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特許異議申立

2016-700156

洗浄剤組成物及び洗浄方法

審判番号
2016-700156
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2014-258712外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2016年02月24日
審決日
2017年02月08日
公報発行日
2017年05月26日
結論
訂正認容
審判長/審判官
分類
P1651.113-YAA(C11D) / P1651.121-YAA(C11D) / P1651.536-YAA(C11D)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第5797829号発明「洗浄剤組成物及び洗浄方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第5797829号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-9〕について訂正することを認める。 特許第5797829号の請求項1、2、3、4、7、8に係る特許を維持する。 特許第5797829号の請求項5、6、9に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本件特許第5797829号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし9に係る発明についての出願は、平成26年10月7日に特許出願(特願2014-206598)されたものの一部を同年12月22日に新たな特許出願としたものであって、平成27年8月28日に特許の設定登録がされ、その後、平成28年2月24日に、その特許について、特許異議申立人特許業務法人藤央特許事務所により特許異議の申立てがなされ、同年6月17日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年8月15日に意見書の提出があり、同年9月28日付けで取消理由通知(決定の予告)が通知され、その指定期間内である同年12月5日に意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)があり、特許法第120条の5第5項の規定に基づき、特許異議申立人特許業務法人藤央特許事務所に対して本件訂正請求があった旨を通知したが、指定期間内に意見書が提出されなかったものである。 第2 本件訂正請求の適否についての判断 (1) 訂正の内容 本件訂正請求による訂正の内容は以下のとおりである。 ア 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1のアルカリ剤につき、「(C)アルカリ剤として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、メタケイ酸ナトリウム、セスキケイ酸ナトリウム、オルソケイ酸ナトリウム、メタケイ酸カリウム、セスキケイ酸カリウム、オルソケイ酸カリウム、及び、これらのアルカリ剤の水和物からなる群から選択された少なくとも1種」を、「(C)アルカリ剤として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及び、これらのアルカリ剤の水和物からなる群から選択された少なくとも1種」に訂正する。 また、「水1Lに洗浄剤組成物を0.5g溶解させた際の60℃での電気伝導度が1.2mS/cm以上」を、「水1Lに洗浄剤組成物を0.5g溶解させた際の60℃での電気伝導度が1.4mS/cm以上」に訂正する。 また、キレート剤につき、「前記ポリアクリル酸のナトリウム塩の含有量が2.76重量%以上であり、」を、「前記ポリアクリル酸のナトリウム塩の含有量が2.76重量%以上であり、 前記キレート剤(D)として、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸(HEDTA)、ニトリロトリ酢酸(NTA)、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸、エチレンジアミンコハク酸(EDDS)、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸(HIDA)、グルタミン酸二酢酸(GLDA)、メチルグリシン二酢酸(MGDA)、アスパラギン酸二酢酸(ASDA)及びこれらの塩からなる群から選択された少なくとも1種を含み、かつ、クエン酸及びその塩をいずれも含まず、」と訂正する。 イ 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項5を削除する。 ウ 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項6を削除する。 エ 訂正事項4 特許請求の範囲の請求項7が引用する請求項である「請求項1~6のいずれか」を、「請求項1~4のいずれか」に訂正する。 オ 訂正事項5 特許請求の範囲の請求項9を削除する。 (2) 訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項1は、アルカリ剤が「水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及び、これらのアルカリ剤の水和物からなる群から選択された少なくとも1種」を含むものであることを限定し、水1Lに洗浄剤組成物を0.5g溶解させた際の60℃での電気伝導度度が「1.4mS/cm以上」であることを限定し、さらに、キレート剤が「エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸(HEDTA)、ニトリロトリ酢酸(NTA)、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸、エチレンジアミンコハク酸(EDDS)、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸(HIDA)、グルタミン酸二酢酸(GLDA)、メチルグリシン二酢酸(MGDA)、アスパラギン酸二酢酸(ASDA)及びこれらの塩からなる群から選択された少なくとも1種を含み、かつ、クエン酸及びその塩をいずれも含ま」ないものであることを限定することにより、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。そして、当該訂正は、アルカリ剤、電気伝導度、キレート剤については、許容されていた範囲内での限定であり(しかも、対応する実施例も存在する。)、何ら新規な事項を追加するものでないから、いずれの訂正も、新規事項を追加するものでなく、また、特許請求の範囲の拡張・変更にも当たらないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第6項に適合するものである。 訂正事項2、3、5は、訂正前の請求項5、6、9の記載を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。そして、当該訂正が、新規事項を追加するものでなく、また、特許請求の範囲の拡張・変更にも当たらないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第6項に適合するものである。 訂正事項4は、訂正前の請求項7が訂正前の請求項5、6(本件訂正により削除)も引用する記載であったものを、請求項5、6を引用せずに引用請求項数を減少させるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。そして、当該訂正が、新規事項を追加するものでなく、また、特許請求の範囲の拡張・変更にも当たらないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第6項に適合するものである。 そして、本件訂正は、一群の請求項を構成する請求項1~9について訂正を請求するものであるから、特許法第120条の5第4項の規定に従うものである (3) まとめ 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、並びに、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-9〕について訂正することを認める。 第3 本件特許について 本件訂正請求により訂正された請求項1~9に係る発明(以下、項番に従い、「本件発明1」~「本件発明9」という。また、これらを併せて「本件発明」ということもある。)は、その特許請求の範囲の請求項1~9に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 洗浄剤組成物を含む洗浄液の電気伝導度をモニターして洗浄剤組成物の供給の要否を判断する制御機構を備えた、節水型の自動食器洗浄機を用いて洗浄対象物の洗浄を行うための固体の洗浄剤組成物であって、 (A)ノニオン界面活性剤 (B)高分子電解質としてのポリアクリル酸のナトリウム塩 (C)アルカリ剤として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及び、これらのアルカリ剤の水和物からなる群から選択された少なくとも1種 (D)キレート剤 を含み、 前記ノニオン界面活性剤(A)に対する前記高分子電解質(B)の重量比[(B)/(A)]が5/4~7/1であり、 水1Lに洗浄剤組成物を0.5g溶解させた際の60℃での電気伝導度が1.4mS/cm以上であり、 前記ポリアクリル酸のナトリウム塩の含有量が2.76重量%以上であり、 前記キレート剤(D)として、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸(HEDTA)、ニトリロトリ酢酸(NTA)、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸、エチレンジアミンコハク酸(EDDS)、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸(HIDA)、グルタミン酸二酢酸(GLDA)、メチルグリシン二酢酸(MGDA)、アスパラギン酸二酢酸(ASDA)及びこれらの塩からなる群から選択された少なくとも1種を含み、かつ、クエン酸及びその塩をいずれも含まず、 前記節水型の自動食器洗浄機は、 すすぎ水が食器の存在する通過面積3600cm2に対し3L/サイクル以下であるドアタイプの自動食器洗浄機、 すすぎ水が2.5L/ラック以下であるラックコンベアタイプの自動食器洗浄機、 すすぎ水が3L/分以下である1槽式コンベアタイプの自動食器洗浄機、又は、 すすぎ水が9L/分以下である複槽式コンベアタイプの自動食器洗浄機である ことを特徴とする洗浄剤組成物。 【請求項2】 前記ノニオン界面活性剤(A)を0.5重量%以上含有する請求項1に記載の洗浄剤組成物。 【請求項3】 前記ノニオン界面活性剤(A)が、アルコールのエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド付加物である請求項1又は2に記載の洗浄剤組成物。 【請求項4】 前記ノニオン界面活性剤(A)に含まれる、エチレンオキサイド(EO)に対するプロピレンオキサイド(PO)のモル比(PO/EO比)が1/2以上である請求項3に記載の洗浄剤組成物。 【請求項5】(削除) 【請求項6】(削除) 【請求項7】 洗浄剤組成物を含む洗浄液の電気伝導度をモニターして洗浄剤組成物の供給の要否を判断する制御機構を備えた節水型の自動食器洗浄機を用いて洗浄対象物の洗浄を行う洗浄方法であって、 前記節水型の自動食器洗浄機は、 すすぎ水が食器の存在する通過面積3600cm2に対し3L/サイクル以下であるドアタイプの自動食器洗浄機、 すすぎ水が2.5L/ラック以下であるラックコンベアタイプの自動食器洗浄機、 すすぎ水が3L/分以下である1槽式コンベアタイプの自動食器洗浄機、又は、 すすぎ水が9L/分以下である複槽式コンベアタイプの自動食器洗浄機であり、 前記洗浄剤組成物として請求項1~4のいずれかに記載の洗浄剤組成物を用いることを特徴とする洗浄方法。 【請求項8】 水によるすすぎ工程を行い、前記すすぎ工程の後、リンス剤を用いたリンス工程を行わずに乾燥工程を行う請求項7に記載の洗浄方法。 【請求項9】(削除)」 第4 取消理由の概要 当審において、本件訂正前の請求項1~9に係る特許に対して通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 本件訂正前の請求項1~9に係る発明は、いずれも甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、当該発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 第5 判断 ア. 取消理由通知に記載した取消理由について (1) 本件特許の原出願の出願日前に頒布されたことが明らかな刊行物 1.国際公開第2013/175659号(甲第1号証。以下、「刊行物1」という。) 2.特開2001-139099号公報(甲第4号証。以下、「刊行物2」という。) (2) 刊行物に記載の事項 (2-1)刊行物1に記載の事項 (1a) 「[請求項1] (A-1)メチルグリシンジアセテート及びそのアルカリ金属塩から選ばれる1種又は2種以上を6質量%以上、18質量%以下、 (A-2)クエン酸及びそのアルカリ金属塩から選ばれる1種又は2種以上を20質量%以上、30質量%以下、並びに、 (B-1)分岐鎖を有する炭素数10以上、14以下のアルコールにエチレンオキシド及びプロピレンオキシドがこの順にブロック結合した非イオン界面活性剤から選ばれる1種又は2種以上を3質量%以上、7質量%以下含有し、 (A-1)と(B-1)の合計含有量が10質量%以上、25質量%以下であり、 (A-1)の含有量と(B-1)の含有量の質量比(A-1)/(B-1)が1以上、5以下である、 自動食器洗浄機用洗浄剤組成物。」 「[請求項3] 更に、(C-1)ポリアクリル酸及びその塩、並びに(C-2)マレイン酸由来のモノマー単位を有する共重合体及びその塩からなる群より選ばれる1種以上の高分子化合物(C)を含有する、請求項1又は2記載の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物。」 「[請求項8] 更に、珪酸塩の無水物及び炭酸塩の無水物から選ばれる1種以上のアルカリ剤(E)を含有する、請求項1~7の何れか1項記載の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物。」 「[請求項16] 請求項1~14の何れか1項記載の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物を用いて自動食器洗浄機により食器を洗浄する工程と、該工程後の食器を、濯ぎ1回当たり、食器設置水平面2500cm2当たり2~3Lの水で濯ぐ工程と、を有する、 食器の洗浄方法。」 (1b) 「[0001] 本発明は自動食器洗浄機用洗浄剤組成物に関する。特に、業務用の節水型食器洗浄機での使用に適した自動食器洗浄機用洗浄剤組成物に関する。」 (1c) 「[0015] 本発明の課題は、節水型洗浄機で洗浄する場合のような濯ぎ水の使用量が少ない条件でも、茶渋付着の抑制とウォータースポットの低減に優れた効果を示す、自動食器洗浄機用洗浄剤組成物を提供する事にある。」 (1d) 「[0019] 本発明において、節水型洗浄機とは、従来の自動食器洗浄機よりも少ない水量で濯ぎ行う節水洗浄を実施できる自動食器洗浄機をいい、節水洗浄の専用機に限らず、節水洗浄ができる機能のついた洗浄機も含む。例えば、従来の自動食器洗浄機では、濯ぎ1回当たりに必要な水量は食器設置水平面2500cm2当たり4~6Lであるが、節水型洗浄機では、濯ぎ1回当たりに必要な水量は食器設置水平面2500cm2当たり2~3Lである。従って、濯ぎ1回当たりの水量が食器設置水平面2500cm2当たり2~3Lの濯ぎを実施できる自動食器洗浄機を節水型洗浄機としてよい。」 (1e) 「[0024] <(A-2)成分> 本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物は、茶渋付着抑制の観点から、(A-2)成分として、クエン酸及びそのアルカリ金属塩から選ばれる1種又は2種以上を含有する。アルカリ金属塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩が好ましく、ナトリウム塩がより好ましい。本発明の(A-2)成分としては、クエン酸三ナトリウムが好ましい。本発明の(A-2)成分としては、クエン酸三ナトリウムの2水塩が好ましい。」 (1f) 「[0058] <(C)成分> 本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物は(C)成分として、(C-1)ポリアクリル酸及びその塩〔以下、(C-1)成分という〕、並びに(C-2)マレイン酸由来のモノマー単位を有する共重合体及びその塩〔以下、(C-2)成分という〕からなる群より選ばれる1種以上の高分子化合物を含有することが好ましい。 [0059] (C-1)成分の塩としては、アルカリ金属塩が好ましく、ナトリウム塩、カリウム塩がより好ましい。」 「[0068] 本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物における(C)成分の含有量は、スケール付着抑制の観点から、組成物中、5質量%以上、更に6質量%以上、更に7質量%以上が好ましく、そして、15質量%以下、更に14質量%以下、更に13質量%以下が好ましい。また、同様の理由により、(C)成分の含有量は、組成物中、5~15質量%が好ましく、6~14質量%がより好ましく、7~13質量%が更に好ましい。」 (1g) 「[0079] <(E)成分> 本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物は、(E)成分として、洗浄性の観点から、珪酸塩の無水物及び炭酸塩の無水物から選ばれる1種以上のアルカリ剤(但し(D)成分を除く)を含有することが好ましい。 [0080] (E)成分のアルカリ剤としては、珪酸アルカリ金属塩の無水物及び炭酸アルカリ金属塩の無水物から選ばれる1種以上のアルカリ剤が好ましく、無水炭酸ナトリウム、無水炭酸カリウム、及び無水珪酸ナトリウムから選ばれる1種以上のアルカリ剤がより好ましい。」 「[0082] 本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物における(E)成分の含有量は、洗浄性の観点から、組成物中、40質量%以上が好ましく、そして、70質量%以下、更に65質量%以下、更に60質量%以下が好ましい。同様の理由により、(E)成分の含有量は、組成物中、40~80質量%が好ましく、40~70質量%がより好ましく、40~60質量%が更に好ましい。」 (1h) 「[0094] 本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物は、固体、即ち、固体ブロック、顆粒、粉末、などの形態であることが好ましく、作業性の確保と洗浄剤の保存安定性の観点から、粉末状がより好ましい。」 (1i) 「[0153] <洗浄性評価> 〔1〕茶渋付着抑制効果の評価 所定量(約2kg)の洗浄剤組成物を1ドアタイプの業務用食器洗浄機〔三洋電機株式会社製 SANYO DR53〕のホッパーに投入し、洗浄機を、洗浄液濃度が0.1質量%となるような設定で運転し、洗浄温度60℃、洗浄剤組成物濃度0.1質量%、洗浄時間40秒、濯ぎ温度80℃、濯ぎ時間10秒の条件で50回空運転を行い、運転時の濃度制御の振れがない様に調整を行った。なお、以下の方法で、洗浄の開始から洗浄の終了まで、洗浄槽(38L)の内にモデル汚れ(カゼインCa塩、タンニンCa塩、サラダ油)が存在するように設定した。 [0154] (洗浄条件) ・洗浄温度:60℃ ・洗浄剤組成物濃度0.1質量% ・洗浄時間:40秒 ・濯ぎ温度:80℃ ・濯ぎ時間:10秒 ・濯ぎ1回当たりの水量:2L ・洗浄水の硬度:ドイツ硬度3°dH又は6°dH」 (1j) 「[0162] [表1] [0163] [表2] 表中の成分は以下のものである。 ・メチルグリシンジアセテート:メチルグリシン二酢酸3Na、商品名「Trilon M Compactate」(BASF社製) ・クエン酸三ナトリウム・2水塩:商品名「精製クエン酸ナトリウム M」(扶桑化学工業株式会社製) [0165] ・非イオン界面活性剤1-1:一般式(b-1)中のR1が炭素数12~14の第2級アルキル基、s=7.0、t=8.5の非イオン界面活性剤、商品名「ソフタノールEP7085」(株式会社日本触媒製) ・非イオン界面活性剤1-2:一般式(b-1)中のR1が炭素数12~14の第2級アルキル基、s=5.0、t=4.5の非イオン界面活性剤、商品名「ソフタノールEP5045」(株式会社日本触媒製) ・非イオン界面活性剤2-1:一般式(b-2)中のR2が炭素数12~14の直鎖アルキル基、p=3、q=1.5、r=3の非イオン界面活性剤、商品名「エマルゲンLS-106」(花王株式会社製) ・非イオン界面活性剤2-2:下記合成例により製造された高級アルコールのエチレンオキシド・プロピレンオキシドブロック付加物〔便宜的に一般式(b-2)で表わすと、一般式(b-2)中のR2が炭素数12~13のアルキル基、p=3、q=3、r=0の非イオン界面活性剤に相当する。〕 ・非イオン界面活性剤2-3:一般式(b-2)中のR2が炭素数12~14の直鎖アルキル基、p=5、q=1.5、r=5の非イオン界面活性剤、商品名「エマルゲンLS-110」(花王株式会社製) [0166] ・非イオン界面活性剤3:便宜的に一般式(b-1)で表わすと、一般式(b-1)中のR1が炭素数12~14の第2級アルキル基、s=7.0、t=0の非イオン界面活性剤、商品名「ソフタノール70」(株式会社日本触媒製) ・非イオン界面活性剤4:便宜的に一般式(b-2)で表わすと、一般式(b-2)中のR2が炭素数12~14の直鎖アルキル基、p=6、q=0、r=0の非イオン界面活性剤、商品名「エマルゲン106」(花王株式会社製) ・非イオン界面活性剤5:プロピレンオキシド・エチレンオキシド・プロピレンオキシドブロックポリマー、重量平均分子量3,100、プロピレンオキシド/エチレンオキシド比=80/20、商品名「プルロニックRPE2520」(BASFジャパン社製) ・ポリアクリル酸:Sokalan PA25CL Granules(BASF社製、重量平均分子量5,400) ・アクリル酸-マレイン酸共重合体:Sokalan CP5 Granules(BASF社製、重量平均分子量85,000) ・非晶質シリカ:トクシールNR(株式会社トクヤマ製)、吸油能250ml/100g、平均粒子径130μm、比表面積195m2/g ・無水炭酸ナトリウム:ソーダ灰(軽灰)(セントラル硝子株式会社製) ・無水炭酸カリウム:炭酸カリウム(旭硝子株式会社製) ・無水メタ珪酸ナトリウム:ムスイメタケイソーD(広栄化学工業株式会社製) ・トリポリリン酸ナトリウム:商品名「トリポリ燐酸ソーダ」(下関三井化学株式会社製) ・GLDA:グルタミン二酢酸4Na、商品名「Dissolvine GL-PD-S」(AkzoNobel社製) ・EDTA4Na・2水塩:エチレンジアミン四酢酸Na、商品名「Triron B Powder」(BASF社製)」(当審注:上記[0165]、[0166]中の「一般式(b-1)」は上記摘示事項(1d)参照。また、同段落中の「一般式(b-2)」とは、刊行物1の[0044]の「 R2-O-(EO)p-(PO)q-(EO)r-H   (b-2) 〔式中、R2は炭素数8以上、18以下の炭化水素基、また、炭素数8~18の炭化水素基を示し、EOはエチレンオキシ基、POはプロピレンオキシ基を示す。p、q、rはそれぞれ平均付加モル数を表し、pは1以上、10以下、qは0.5以上、5以下、rは1以上、10以下、また、p=1~10、q=0.5~5、r=1~10である。「-(EO)p-(PO)q-(EO)r-」はブロック結合である。〕」のことである。) (2-2)刊行物2に記載の事項 (2a) 「【0004】これらのうち、業務用自動食器洗浄機を例にとって、洗浄剤供給システムについて説明する。 【0005】なお、上記業務用自動食器洗浄機は、ホテル、レストラン、学校、社員食堂、飲食店、食品加工工場等で広く用いられているもので、構造上、フードタイプ、アンダーカウンタータイプ、ドアタイプ、ラックコンベアタイプ、フライトコンベアタイプ等に分類される。」 「【0008】そして、上記洗浄液の調製は、例えば、洗浄タンク5に温水を溜めたのち、洗浄剤原液を、原液ボトル11からポンプ12を介して注入して所定濃度に希釈することによって行われる。ただし、上記洗浄タンク5内には、すすぎ工程で使用したすすぎ水が流入し、オーバーフロー分が洗浄タンク5外に流出する構造になっているため、洗浄タンク5内の洗浄液濃度はすすぎ工程におけるすすぎ水により希釈されて低下する。そこで、洗浄液の濃度を経時的に測定するセンサ13とコントロール部14とを設け、上記コントロール部14において、センサ13からの測定データにもとづきポンプ12からの洗浄剤原液注入を制御して、洗浄タンク5内の洗浄液濃度を一定に保つようにしている。 【0009】 【発明が解決しようとする課題】上記センサ13としては、図11に示すように、2本の電極15間に電圧をかけて、洗浄タンク5内の洗浄液の導電率を測定するタイプのものが多く用いられている。」 (3) 刊行物1に記載された発明 (ア) 上記摘示事項(1a)の[請求項1]、[請求項3]、[請求項8]、[請求項16]によれば、刊行物1には、 「(A-1)メチルグリシンジアセテート及びそのアルカリ金属塩から選ばれる1種又は2種以上を6質量%以上、18質量%以下、 (A-2)クエン酸及びそのアルカリ金属塩から選ばれる1種又は2種以上を20質量%以上、30質量%以下、 (B-1)分岐鎖を有する炭素数10以上、14以下のアルコールにエチレンオキシド及びプロピレンオキシドがこの順にブロック結合した非イオン界面活性剤から選ばれる1種又は2種以上を3質量%以上、7質量%以下、 (C-1)ポリアクリル酸及びその塩、並びに(C-2)マレイン酸由来のモノマー単位を有する共重合体及びその塩からなる群より選ばれる1種以上の高分子化合物(C)、 並びに、 珪酸塩の無水物及び炭酸塩の無水物から選ばれる1種以上のアルカリ剤(E)を含有し、 (A-1)と(B-1)の合計含有量が10質量%以上、25質量%以下であり、 (A-1)の含有量と(B-1)の含有量の質量比(A-1)/(B-1)が1以上、5以下である、 自動食器洗浄機により食器を洗浄する工程で用いる自動食器洗浄機用洗浄剤組成物」が記載されていると認められる。 (イ) 上記摘示事項(1h)によれば、刊行物1に記載の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物は、固体であるといえる。 (ウ) 上記摘示事項(1b)、(1d)によれば、刊行物1に記載の自動食器洗浄機は、業務用の節水型食器洗浄機であるといえる。 そして、上記摘示事項(1i)の[0153]によれば、「洗浄液濃度が0.1質量%となるような設定で運転し、・・運転時の濃度制御の振れがない様に調整を行った」とあることから、刊行物1に記載の自動食器洗浄機は、洗浄液濃度の何らかの制御機構を備えたものであると認められる。 上記(ア)ないし(ウ)の検討事項より、刊行物1には、 「(A-1)メチルグリシンジアセテート及びそのアルカリ金属塩から選ばれる1種又は2種以上を6質量%以上、18質量%以下、 (A-2)クエン酸及びそのアルカリ金属塩から選ばれる1種又は2種以上を20質量%以上、30質量%以下、 (B-1)分岐鎖を有する炭素数10以上、14以下のアルコールにエチレンオキシド及びプロピレンオキシドがこの順にブロック結合した非イオン界面活性剤から選ばれる1種又は2種以上を3質量%以上、7質量%以下、 (C-1)ポリアクリル酸及びその塩、並びに(C-2)マレイン酸由来のモノマー単位を有する共重合体及びその塩からなる群より選ばれる1種以上の高分子化合物(C)、 並びに、 珪酸塩の無水物及び炭酸塩の無水物から選ばれる1種以上のアルカリ剤(E)を含有し、 (A-1)と(B-1)の合計含有量が10質量%以上、25質量%以下であり、 (A-1)の含有量と(B-1)の含有量の質量比(A-1)/(B-1)が1以上、5以下である、 洗浄液濃度の何らかの制御機構を備えた業務用の節水型食器洗浄機により食器を洗浄する工程で用いる固体の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物。」(以下、「引用発明1」という。)、及び、 「自動食器洗浄機用洗浄剤組成物を用いて、洗浄液濃度の何らかの制御機構を備えた業務用の節水型食器洗浄機により食器を洗浄する工程と、該工程後の食器を、濯ぎ1回当たり、食器設置水平面2500cm2当たり2~3Lの水で濯ぐ工程と、を有する、 食器の洗浄方法であって、 自動食器洗浄機用洗浄剤組成物として、 (A-1)メチルグリシンジアセテート及びそのアルカリ金属塩から選ばれる1種又は2種以上を6質量%以上、18質量%以下、 (A-2)クエン酸及びそのアルカリ金属塩から選ばれる1種又は2種以上を20質量%以上、30質量%以下、 (B-1)分岐鎖を有する炭素数10以上、14以下のアルコールにエチレンオキシド及びプロピレンオキシドがこの順にブロック結合した非イオン界面活性剤から選ばれる1種又は2種以上を3質量%以上、7質量%以下、 (C-1)ポリアクリル酸及びその塩、並びに(C-2)マレイン酸由来のモノマー単位を有する共重合体及びその塩からなる群より選ばれる1種以上の高分子化合物(C)、 並びに、 珪酸塩の無水物及び炭酸塩の無水物から選ばれる1種以上のアルカリ剤(E)を含有し、 (A-1)と(B-1)の合計含有量が10質量%以上、25質量%以下であり、 (A-1)の含有量と(B-1)の含有量の質量比(A-1)/(B-1)が1以上、5以下である、 固体の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物を用いる洗浄方法。」(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。 (4) 対比・判断 (4-1) 本件発明1について 本件発明1と引用発明1とを対比する。 ○引用発明1の「固体の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物」は、本件発明1の「固体の洗浄剤組成物」に相当する。 ○引用発明1の「洗浄液濃度の何らかの制御機構を備えた業務用の節水型食器洗浄機により食器を洗浄する工程で用いる」と本件発明1の「洗浄剤組成物を含む洗浄液の電気伝導度をモニターして洗浄剤組成物の供給の要否を判断する制御機構を備えた、節水型の自動食器洗浄機を用いて洗浄対象物の洗浄を行うための」とは、「洗浄液濃度の何らかの制御機構を備えた、節水型の自動食器洗浄機を用いて洗浄対象物の洗浄を行うための」である点で一致する。 ○引用発明1の「(B-1)分岐鎖を有する炭素数10以上、14以下のアルコールにエチレンオキシド及びプロピレンオキシドがこの順にブロック結合した非イオン界面活性剤」は、本件発明1の「(A)ノニオン界面活性剤」に相当する。 ○引用発明1の「(C-1)ポリアクリル酸及びその塩」は、上記摘示事項(1f)によれば、ナトリウム塩である場合を含み、また、高分子電解質であることは構造上自明であるから、本件発明1の「(B)高分子電解質としてのポリアクリル酸のナトリウム塩」に相当する。 ○引用発明1の「珪酸塩の無水物及び炭酸塩の無水物から選ばれる1種以上のアルカリ剤(E)」と本件発明1の「(C)アルカリ剤として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及び、これらのアルカリ剤の水和物からなる群から選択された少なくとも1種」とは、「(C)アルカリ剤」である点で一致する。 ○引用発明1の「(A-1)メチルグリシンジアセテート及びそのアルカリ金属塩」、「(A-2)クエン酸及びそのアルカリ金属塩」は、本件特許明細書の段落【0042】によれば、いずれも、本件発明1の「(D)キレート剤」に相当すると認められる。 以上より、本件発明1と引用発明1とは、 「洗浄液濃度の何らかの制御機構を備えた、節水型の自動食器洗浄機を用いて洗浄対象物の洗浄を行うための固体の洗浄剤組成物であって、 (A)ノニオン界面活性剤 (B)高分子電解質としてのポリアクリル酸のナトリウム塩 (C)アルカリ剤 (D)キレート剤 を含む、洗浄剤組成物」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1> 洗浄液濃度の何らかの制御機構が、本件発明1では、「洗浄剤組成物を含む洗浄液の電気伝導度をモニターして洗浄剤組成物の供給の要否を判断する制御機構」であることが特定されているのに対し、引用発明1では斯かる事項が特定されていない点。 <相違点2> アルカリ剤として、本件発明1では、「水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及び、これらのアルカリ剤の水和物からなる群から選択された少なくとも1種」を含むことが特定されているのに対し、引用発明1では、「珪酸塩の無水物及び炭酸塩の無水物から選ばれる1種以上」を含有することが特定されている点。 <相違点3> 本件発明1では、「ノニオン界面活性剤(A)に対する高分子電解質(B)の重量比[(B)/(A)]が5/4~7/1」であることが特定されているのに対し、引用発明1では斯かる事項が特定されていない点。 <相違点4> 本件発明1では、「水1Lに洗浄剤組成物を0.5g溶解させた際の60℃での電気伝導度が1.4mS/cm以上」であることが特定されているのに対し、引用発明1では斯かる事項が特定されていない点。 <相違点5> 本件発明1では、「ポリアクリル酸のナトリウム塩の含有量が2.76重量%以上」であることが特定されているのに対し、引用発明1では斯かる事項が特定されていない点。 <相違点6> キレート剤として、本件発明1では、「エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸(HEDTA)、ニトリロトリ酢酸(NTA)、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸、エチレンジアミンコハク酸(EDDS)、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸(HIDA)、グルタミン酸二酢酸(GLDA)、メチルグリシン二酢酸(MGDA)、アスパラギン酸二酢酸(ASDA)及びこれらの塩からなる群から選択された少なくとも1種を含み、かつ、クエン酸及びその塩をいずれも含ま」ないことが特定されているのに対し、引用発明1では、「(A-1)メチルグリシンジアセテート及びそのアルカリ金属塩から選ばれる1種又は2種以上」及び「(A-2)クエン酸及びそのアルカリ金属塩から選ばれる1種又は2種以上」を含有することが特定されている点。 <相違点7> 節水型の自動食器洗浄機が、本件発明1では、「すすぎ水が食器の存在する通過面積3600cm2に対し3L/サイクル以下であるドアタイプの自動食器洗浄機、 すすぎ水が2.5L/ラック以下であるラックコンベアタイプの自動食器洗浄機、 すすぎ水が3L/分以下である1槽式コンベアタイプの自動食器洗浄機、又は、 すすぎ水が9L/分以下である複槽式コンベアタイプの自動食器洗浄機」であることが特定されているのに対し、引用発明1では、「業務用」であることが特定されているに留まる点。 <相違点2>及び<相違点6>について 引用発明1に含有されるアルカリ剤について、上記摘示事項(1a)の[請求項8]及び上記摘示事項(1g)によれば、ナトリウム塩及びカリウム塩の開示はあるものの、それらは珪酸塩及び炭酸塩から選択されるとあり、水酸化物をも選択し得ることは、刊行物1には記載も示唆もされていない(実際、上記摘示事項(1j)を参照しても、アルカリ剤として水酸化物は用いられていない。)。また、仮に、洗浄剤組成物に配合するアルカリ剤として、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムを用いること自体は公知技術であるとしても、刊行物2や甲第2、3号証の記載、及び、本件特許の出願時の技術常識を参照しても、引用発明1において、これらの水酸化物を積極的に配合する動機は見当たらない。 また、上記摘示事項(1c)によれば、引用発明1は、茶渋付着の抑制を課題の一つとするものであり、上記摘示事項(1e)によれば、茶渋付着抑制の観点から、クエン酸又はそのアルカリ金属塩を含有するものであるから、引用発明を実施するに際し、クエン酸又はそのアルカリ金属塩は必須成分であることが理解され、これを除くことは、引用発明1の態様から外れるものであって阻害要因があるから、容易になし得ることでない(実際、上記摘示事項(1j)を参照すると、全ての実施例で、クエン酸塩が用いられている。)。 したがって、引用発明1に基づいて相違点2、6に係る事項を想到することは、刊行物1の記載の他、刊行物2や甲第2、3号証の記載、及び、本件特許の出願時の技術常識を参照しても、当業者といえども容易であるとはいえない。 よって、相違点1、3~5、7について検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでない。 (4-2) 本件発明2~4について 本件発明2~4は、本件発明1をさらに限定するものであるから、本件発明2~4も本件発明1と同様の理由により、当業者といえども容易に発明をすることができたものでない。 (4-3) 本件発明7、8について 本件発明7、8と引用発明2とを対比すると、両者は、用いる洗浄剤組成物について、本件発明7、8では、「請求項1~4のいずれかに記載の洗浄剤組成物」であることが特定されているのに対し、引用発明2では、「(A-1)メチルグリシンジアセテート及びそのアルカリ金属塩から選ばれる1種又は2種以上を6質量%以上、18質量%以下、 (A-2)クエン酸及びそのアルカリ金属塩から選ばれる1種又は2種以上を20質量%以上、30質量%以下、 (B-1)分岐鎖を有する炭素数10以上、14以下のアルコールにエチレンオキシド及びプロピレンオキシドがこの順にブロック結合した非イオン界面活性剤から選ばれる1種又は2種以上を3質量%以上、7質量%以下、 (C-1)ポリアクリル酸及びその塩、並びに(C-2)マレイン酸由来のモノマー単位を有する共重合体及びその塩からなる群より選ばれる1種以上の高分子化合物(C)、 並びに、 珪酸塩の無水物及び炭酸塩の無水物から選ばれる1種以上のアルカリ剤(E)を含有し、 (A-1)と(B-1)の合計含有量が10質量%以上、25質量%以下であり、 (A-1)の含有量と(B-1)の含有量の質量比(A-1)/(B-1)が1以上、5以下である、 固体の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物」である点で相違する。 そして、引用発明2の上記自動食器洗浄機用洗浄剤組成物は、引用発明1の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物と同一であるから、本件請求項1に記載の洗浄剤組成物と、引用発明2に記載の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物とは、上記(4-1)で検討した相違点を有し、その相違点に係る構成は、上記検討のとおり、容易に想到し得るものでないから、本件発明7、8も、本件発明1と同様の理由により、当業者といえども容易に発明をすることができたものでない。 (5) 結論 よって、本件発明1~4、7、8は、引用発明1、2に基いても容易に発明をすることができたものでない。 イ. 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由 (1)特許法第29条第1項第3号の規定について 上記ア.(4-1)で検討したように、本願発明1と引用発明1とは相違点1~7の点で相違し、少なくとも相違点2、6で実質的に相違することから、本件発明1及び本件発明1を引用する本件発明2~4、7、8は、引用発明1と同一でない。 (2)特許法第36条第4項第1号の規定について (2-1)具体的な供給条件について(異議申立書16頁15行~19頁7行) 当該異議申立理由は、要は、本件特許明細書段落【0019】に、「洗浄剤組成物の電気伝導度が低いと洗浄剤組成物を供給しても電気伝導度がすぐに上昇しない(拡散に時間がかかる)ので・・・洗浄剤組成物を過剰に供給してしまう」と記載されているから、本件発明が課題とする洗浄剤組成物の過剰供給は、洗浄剤組成物の拡散時間に関係して生じると解されるところ、「洗浄剤の拡散時間が、洗浄剤の供給開始から制御レベルの電気伝導度を検知するまでの時間になるべく影響をしないようにすることが、当業者の常識である」ことからして、「通常当業者が実施する供給条件」では問題となることはなく、したがって、本件発明は、特殊な供給条件を前提とした発明であると推察されるが、その点が本件特許明細書に開示されていないことを問題としているものと理解される。 しかしながら、明細書のいずれにも、洗浄剤組成物の供給条件についての記載はないことからして、改めて説明する必要がないほどに一般的な供給条件が採用されていると解するのが自然であり、また、上記意見書6頁5行以降「(2-3)について」を参照すれば、実際に、特殊な供給条件が採用されているわけではないことが見て取れるから、この点で、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号の規定(実施可能要件)を満たしていないとまではいえない。 (2-2)濃度制御試験について(異議申立書19頁8~28行) 当該異議申立理由は、要は、本件発明は節水型の自動食器洗浄機における洗浄剤組成物の過剰供給を解決課題とする発明であるから、節水型でない自動食器洗浄機では過剰供給とならず、節水型の自動食器洗浄機では過剰供給となるような洗浄剤組成物の供給条件を前提とするものと認められるところ、本件特許明細書に、そのような供給条件が示されておらず、このような課題(現象)を確認するために、過度の試行錯誤が求められることを問題としているものと理解される。 しかしながら、本件特許に係る発明は、出願時においては、節水型の自動食器洗浄機と節水型でない自動食器洗浄機をどちらも対象とした「洗浄剤組成物を含む洗浄液の電気伝導度をモニターして洗浄剤組成物の供給の要否を判断する制御機構を備えた自動食器洗浄機を用いて洗浄対象物の洗浄を行うための液体又は固体の洗浄剤組成物」の発明であったことからして、「本件発明は節水型の自動食器洗浄機」でのみ問題となる「洗浄剤組成物の過剰供給を解決課題とする発明である」との認識は妥当でなく、それを前提とする当該異議申立理由は、的を射たものとはいえない。 (なお、上記(1)、(2)の点に関連する本件特許明細書段落【0019】の記載の意図するところについて、必要であれば、平成28年7月26日付け意見書2頁以降「(3)審尋に対する回答」、特に、「(1-3)について」及び「(1-5)について」を参照されたい。) 第6 まとめ 上記「第5」で検討したとおり、上記取消理由、及び、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件請求項1~4、7、8に係る特許を取り消すことはできないし、他に本件請求項1~4、7、8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 また、請求項5、6、9に係る発明は、訂正により削除されたため、本件請求項5、6、9に係る特許に対し、特許異議申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2016-700156

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