特許拒絶査定不服審判
2016-017084
無線通信システムにおける信号受信装置及び方法
- 審判番号
- 2016-017084
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2014-515706外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年11月15日
- 審決日
- 2018年01月04日
- 公報発行日
- 2018年07月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】サムスン エレクトロニクス カンパニー リミテッド
- 【請求人代理人】阿部 達彦
- 【請求人代理人】実広 信哉
- 【請求人代理人】崔 允辰
- 【請求人代理人】木内 敬二
- 分類
- P18 .121-Z (H04J) / P18 .113-Z (H04J)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第3項、特許法第17条の2第6項、特許法第29条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2014-515706「無線通信システムにおける信号受信装置及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年12月20日国際公開,WO2012/173321,平成26年9月4日国内公表,特表2014-522620〕について,次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は,成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は,2012年1月11日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2011年6月14日 韓国)を国際出願日とする出願であって,平成27年3月4日付けで手続補正がされ,同年11月20日付けで拒絶理由が通知され,平成28年2月29日付けで手続補正がされたが,同年7月7日付けで拒絶査定がされ,これに対し,同年11月15日に拒絶査定不服審判が請求され,同時に手続補正がされたものである。
第2 補正却下の決定
[結論]
平成28年11月15日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1 本願発明と補正後の発明
平成28年11月15日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)は,平成28年2月29日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された
「【請求項1】
無線通信システムにおける受信側装置であって,
チャネル推定のための少なくとも1つの基準信号(reference signal)を含む信号を受信する受信部と,
少なくとも1つの他の信号を用いて前記基準信号の歪みを補償する補償部と,
前記補償部によって補償された前記基準信号に基づいて信号をデコーディング(decoding)するデコーダ(decoder)と,を含むことを特徴とする装置。」(以下,「本願発明」という。)
を,
「【請求項1】
無線通信システムにおける受信側装置であって,
チャネル推定のための少なくとも1つの基準信号(reference signal)を含む信号を受信する受信部と,
少なくとも1つの他の信号を用いて前記基準信号の歪みを補償する補償部と,
前記補償部によって補償された前記基準信号に基づいて信号をデコーディング(decoding)するデコーダ(decoder)と,を含み,
歪まれた前記基準信号は,トーン干渉が発生する予め決められた副搬送波に位置し,トーン干渉による歪みを除去することで補償され,
前記トーン干渉は,物理的な資源内の固定位置から発生することを特徴とする装置。」(以下,「補正後の発明」という。)
に変更することを含むものである。
2 補正の適否
(1)新規事項の有無,シフト補正の有無,補正の目的要件
請求項1についての上記補正は,本件補正前の歪みが補償される「基準信号」について,「歪まれた前記基準信号は,トーン干渉が発生する予め決められた副搬送波に位置し,トーン干渉による歪みを除去することで補償され,前記トーン干渉は,物理的な資源内の固定位置から発生する」との限定を付すものであるから,特許法第17条の2第5項第2号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
独立請求項である請求項9についての補正も,請求項1についての上記補正と同様である。
そして,これらの補正は,特許法第17条の2第3項,第4項に違反するところはない。
(2) 独立特許要件
請求項1についての上記補正は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから,補正後の発明が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのか否かについて,以下検討する。
ア 補正後の発明
補正後の発明は,上記「1 本願発明と補正後の発明」の項の「補正後の発明」のとおりのものと認める。
イ 引用例と引用発明
原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された本願出願前に公開された刊行物である特開2009-44364号公報(以下,「引用例」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。
(ア) 「【請求項1】
OFDM方式により変調されたOFDM信号を受信するOFDM受信装置において,
前記OFDM信号にはデータキャリアの信号とパイロットキャリアの信号が含まれており,
当該OFDM受信装置は,受信信号に含まれるパイロットキャリアの信号を検出するパイロット検出手段と,
前記パイロット検出手段により検出されたパイロットキャリアの信号に基づいて,狭帯域のLPFを用いてキャリア方向の内挿補間処理を行って,データキャリアの信号の位置における伝送路特性を検出する第1の内挿補間処理手段と,
前記パイロット検出手段により検出されたパイロットキャリアの信号に基づいて,広帯域のLPFを用いてキャリア方向の内挿補間処理を行って,データキャリアの信号の位置における伝送路特性を検出する第2の内挿補間処理手段と,
前記受信信号に含まれる干渉波の状況を検出する干渉波検出手段と,
前記干渉波検出手段による検出結果に基づいて,周波数選択的な干渉波がないと判定された場合には前記第1の内挿補間処理手段による処理結果を選択し,周波数選択的な干渉波があると判定された場合には前記第2の内挿補間処理手段による処理結果を選択する選択手段と,
前記選択手段により選択された内挿補間処理手段による処理結果を用いて前記受信信号を等化処理する等化処理手段と,
を備えたことを特徴とするOFDM受信装置。」
(イ) 「【0001】
本発明は,直交周波数分割多重変調(OFDM:Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式により通信する受信装置(OFDM受信装置)に関し,特に,伝送路特性を精度良く推定するOFDM受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば,移動体向けのデジタル音声放送や,地上デジタルテレビジョン放送への応用に適した変調方式として,マルチパスフェージングやゴーストに強いという特徴のある直交周波数分割多重変調方式(OFDM方式)が用いられている。OFDM方式は,マルチキャリア変調方式の一種であり,互いに直交する複数であるn本(例えば,nは数十~数千)の搬送波(キャリア)にデジタル変調を施して,これら複数本の搬送波で情報符号を伝送する伝送方式である。
【0003】
OFDM方式による信号(OFDM信号)を構成するキャリアとしては,例えば,データキャリア,CP(Continual Pilot)のパイロットキャリア,SP(Scattered Pilot)のパイロットキャリア,TMCC(Transmission and Multiplexing Configuration Control)のキャリア,AC(Auxiliary Channel)のキャリアがある。
ここで,CPやSPは受信機での同期や復調に用いる信号であり,TMCCは変調方式や制御情報を伝送するために用いる信号である。
【0004】
OFDM方式は,その性質上,マルチパスやフェージングがある劣悪な環境下で使用されることが多い。このため,64QAM(Quadrature Amplitude Modulation)等で変調された信号を復調するためには,伝送路で生じた振幅変動や位相回転を補正する必要があり,図2に示されるように,数キャリア間隔毎に振幅と位相の基準キャリアであるパイロットキャリアを設けることが一般的に行われている。
【0005】
伝送路により生じる歪みを補正するために,例えば,複数のパイロットキャリアに基づいて伝送路特性を推定する。パイロットキャリアを抽出して,シンボル方向やキャリア方向に内挿補間の処理を行うことで,パイロットキャリアが配置されていないデータキャリア部分の振幅特性や位相特性を推定することができる。
【0006】
パイロットキャリアとしては,図3(a)に示されるCPや,図3(b)に示されるSPが良く知られている。
図4(a),(b),(c)には,SPを用いて内挿補間を行って,伝送路を推定する処理の一例が示されている。
受信機では,伝送路特性を推定し,受信データキャリア信号に対して補正を行う等化処理の後に,復調処理が行われる。」
(ウ) 「【0017】
他の構成例として,本発明に係るOFDM受信装置では,次のような構成とすることができる。
すなわち,第2の内挿補間処理手段は,上記のような構成ではなく,例えば第1の内挿補間処理手段により用いられるのと同様な狭帯域のLPFを用いてキャリア方向の内挿補間処理を行い,この場合に,周波数選択的に劣化したパイロットキャリアの信号の代わりにその近くに位置するパイロットキャリアの信号で置き換えてキャリア方向の内挿補間処理を行って,データキャリアの信号の位置における伝送路特性を検出(例えば,推定的に検出)する。
【0018】
従って,周波数選択的に劣化したパイロットキャリアの信号を無視してキャリア方向の内挿補間処理を行うことにより,例えば,周波数選択的に劣化したパイロットキャリアの信号を無視せずに用いる場合と比べて,伝送路特性を精度良く推定することができる。
【0019】
ここで,周波数選択的に劣化したパイロットキャリアの代わりに置き換える近くに位置する他のパイロットキャリアとしては,種々なものが用いられてもよく,例えば,周波数選択的に劣化していないパイロットキャリアの中で,周波数選択的に劣化したパイロットキャリアに対して最も近い位置にあるもの(例えば,2個のパイロットキャリアの間を内挿補間処理する場合における相手側のパイロットキャリアは除く)を用いることができる。具体例としては,あるデータキャリアの信号の位置を内挿補間する場合には,周波数選択的に劣化していないパイロットキャリアの信号の中で,そのデータキャリアの信号の位置を挟む最も近い2個のパイロットキャリアを用いる。」
(エ) 「【0021】
本発明に係る実施例を図面を参照して説明する。
図1には,本発明の一実施例に係るOFDM受信装置の構成例を示してある。
なお,本例では,主に,OFDM受信装置において伝送路の特性を補正する等化処理部などについて説明し,その前段で行われる同期処理やFFT(Fast Fourier Transform)処理などについては一般的に知られている技術を利用することができ,詳しい説明を省略する。
【0022】
本例のOFDM受信装置は,FFT処理後のOFDM信号を処理する処理部として,高域通過フィルタ(HPF)11と,干渉波検出部12と,パイロット検出部13と,内挿処理部(通常)14と,内挿処理部(干渉波対策用)15と,内挿処理選択部16と,等化処理部17を備えている。
【0023】
図2には,パイロットキャリアの配置の一例を示してある。図示されるように,データキャリアに対して数キャリア間隔毎にパイロットキャリアが設けられている。
図3(a)には,CPの配置の一例を示してある。横軸はキャリア番号(周波数)を表しており,縦軸はシンボル番号(時間)を表している。本例では,4個のキャリア間隔で(4個のうちの1個に)等間隔でパイロットキャリアが設けられており,他のキャリアはデータキャリアとなっている。パイロットキャリアのキャリア番号は固定されており,全てのシンボル番号でパイロットキャリアが設定される。」
(オ) 「【0027】
本発明の第1実施例を説明する。
本例のOFDM受信装置において行われる動作の一例を示す。
なお,本例では,SPのパイロットキャリアが用いられる場合を示すが,CPのパイロットキャリアが用いられる場合に適用することも可能である。
本例のOFDM受信装置では,送信側の装置(OFDM送信装置)によりOFDM方式で変調されて無線により送信された信号(OFDM信号)をアンテナにより受信し,受信信号(OFDM受信信号)に対して同期処理やFFT処理を行う。
FFT処理後のOFDM信号がHPF11とパイロット検出部13と等化処理部17に入力される。
【0028】
HPF11は、設定されたフィルタの周波数特性により、入力されたOFDM信号をフィルタリングして干渉波検出部12へ出力する。
干渉波検出部12は、HPF11から入力されたOFDM信号のフィルタリング結果に基づいて、当該OFDM信号に含まれる干渉波に関する情報を検出し、その検出結果を内挿処理選択部16へ出力する。
パイロット検出部13は、入力されたOFDM信号に含まれるパイロットキャリアを検出し、その検出結果を内挿処理部(通常)14及び内挿処理部(干渉波対策用)15へ出力する。なお、後段の処理で必要な場合には、そのOFDM信号をその検出結果と共に出力してもよい。」
(カ) 「【0034】
等化処理部17は,内挿処理選択部16から入力された内挿補間処理結果による伝送路特性(例えば,振幅変動や位相回転)に基づいて,入力されたFFT処理後のOFDM信号を等化処理することでその伝送路特性(例えば,振幅変動や位相回転)を補正して出力する。」
(キ) 「【0036】
これに対して,ある特定のキャリアのみが著しく劣化するような周波数選択性の干渉がある場合には,その干渉波は広い帯域を持つ。(以下略)」
(ク) 「【0042】
本発明の第2実施例を説明する。
本例では,主に,上記した第1実施例とは異なる構成や動作について説明し,同様な部分については詳しい説明を省略する。
本例では,上記した第1実施例と比べて,主に,内挿処理部(干渉波対策用)15により行われる内挿補間処理が異なっている。
本例の内挿処理部(干渉波対策用)15では,キャリア方向の内挿補間処理において,内挿処理部(通常)14と同様な狭帯域のLPFを用いており,上記した第1実施例とは異なる手法により干渉波対策を行う。
【0043】
図6を参照して,本例の内挿処理部(干渉波対策用)15により行われる干渉波対策用の内挿補間処理について更に詳しく説明する。本例では,周波数選択性の干渉波があると判定された場合に,干渉波対策用の内挿補間処理の結果が採用される。
本例の内挿処理部(干渉波対策用)15では,図6に示されるように,キャリア方向の内挿補間処理において,周波数選択性の干渉波により劣化したパイロットキャリアの信号がある場合には,その劣化したパイロットキャリアの信号を無視して,キャリア方向で一つ前(一つ隣)のパイロットキャリアの信号(例えば,振幅値や位相値)をその劣化したパイロットキャリアの信号の代わりに置き換えて内挿する処理を行う。
【0044】
図6には,劣化したパイロットキャリアの代わりに,劣化していないその隣のパイロットキャリアで置き換えた場合における内挿補間処理結果の一例を示してある。具体的には,実際の伝送路の特性の一例と,通常の内挿補間による推定特性の一例を示してあり,また,干渉波による劣化により信頼性が低いパイロットキャリアの一例と,その劣化したパイロットキャリアの代わりに置き換える一つ前のパイロットキャリアの一例と,このようにしてホールドして内挿補間した推定特性の一例を示してある。なお,横軸は,周波数を表している。
【0045】
ここで,干渉波により劣化したパイロットキャリアを検出する手法としては,種々な手法が用いられてもよく,一例として,本例では,HPF11によりOFDM信号の変動を抽出し,干渉波検出部12により,当該抽出された変動が所定の閾値を超える(又は,所定の閾値以上となる)場合には,HPF11の通過後の信号において閾値を超える(又は,閾値以上となる)成分の近傍のパイロットキャリアは干渉波により劣化しているとみなすようなことが可能である。」
(ケ) 「【0047】
このように,周波数選択性の干渉波による劣化があると,あるパイロットキャリアの信号のみが干渉波により著しく劣化していることが考えられる。このような場合には,その劣化したパイロットキャリアを用いて内挿補間した結果を用いて等化処理を行うと,逆に,他のデータに対して,そのパイロットキャリアが持つ劣化成分を付加する結果を招いてしまうこととなる。このため,本例では,そのような劣化したパイロットキャリアの信号は信頼性が低いと判断し,一つ前のパイロットキャリアの信号で置き換えて内挿補間することによって,周波数選択性の干渉波による妨害を無視した伝送路の特性を得ることができる。
【0048】
以上のように,本例のOFDM受信装置では,OFDM方式により変調されたOFDM信号を受信する場合に,周波数選択的な干渉波を検出し,その干渉波があるパイロットキャリアを無視して,その近くの(例えば,その一つ前の)パイロットキャリアをホールドして,伝送路特性を推定する。
【0049】
従って,本例では,OFDM方式を用いた伝送装置による復調処理において,受信されたパイロットキャリアに基づいて内挿補間処理を行うことで,パイロットキャリアが配置されていないデータキャリア部分の振幅特性や位相特性等の伝送路特性を推定するに際して,例えば,フェージングや周波数選択的な干渉波などにより,ある特定のキャリアのみが著しく劣化するような環境下においても,そのキャリアによって推定される伝送路特性が劣化してしまう問題を解消することができ,伝送路推定の精度を向上させることができる。
【0050】
具体的には,本例では,キャリア方向の内挿補間処理において,周波数選択的な干渉波により劣化したパイロットキャリアがある場合には,そのパイロットキャリアを無視して,そのパイロットキャリアより一つ前のパイロットキャリア(例えば,一つ前も劣化していたら更に前でもよい)の信号をホールドして内挿補間することにより,干渉波の近傍の伝送路の特性を可能な限り忠実に再現することが図られる。ある程度の間隔で配置されるパイロットキャリアに対して帯域の制限されたフィルタをかけることから,急激な変動がある箇所については正確に再現することは困難であるが,干渉波の前後の特性の再現性を高めるために,干渉波の部分を無視して内挿補間処理を行う。これにより,干渉波があるところでは著しい劣化が生じることが考えられるが,その前後が干渉波に引っ張られて共に劣化してしまうことが回避されると考えられ,干渉波による劣化が軽減される。
【0051】
なお,本例のOFDM受信装置では,内挿処理部(干渉波対策用)15が,周波数選択的な干渉波により劣化したパイロットキャリアを無視して,他のパイロットキャリアを用いてキャリア方向の内挿補間処理を行う機能により第2の内挿補間処理手段が構成されている。」
上記(イ),(オ)より,引用例には「無線システムにおけるOFDM受信装置」が記載されているといえ,該「OFDM受信装置」について,上記(ア)ないし(ケ)及び図面より,引用例には以下の事項が記載されている。
a 上記(イ),(オ)の【0027】より,「伝送路特性を推定するための複数のパイロットキャリアの信号を含むOFDM信号を受信する手段」を備えているといえる。
b 上記(ア),(オ)の【0028】より,「FFT処理後の前記OFDM信号から前記パイロットキャリアの信号を検出するパイロット検出手段13」を備えているといえる。
c 上記(ク)より,(ウ),(ケ)も参照すると,「劣化したパイロットキャリアの信号の代わりに,劣化していないその隣のパイロットキャリアの信号で置き換えるとともに,置き換えたパイロットキャリアの信号に基づいてデータキャリアの信号の位置における伝送路特性を推定する内挿処理部(干渉波対策用)15」を備えているといえる。
d 上記(カ)より,「前記推定した伝送路特性に基づいて,入力されたFFT処理後のOFDM信号を等価処理することでその伝送路特性を補正して出力する等価処理部17」を備えているといえる。
e 上記(イ)は,背景技術の記載であるが,上記「OFDM受信装置」と共通事項についての「受信機では,伝送路特性を推定し,受信データキャリア信号に対して補正を行う等化処理の後に,復調処理が行われる。」(【0006】)及び「OFDM方式は,マルチキャリア変調方式の一種であり,互いに直交する複数であるn本(例えば,nは数十~数千)の搬送波(キャリア)にデジタル変調を施して,これら複数本の搬送波で情報符号を伝送する伝送方式である。」(【0002】)の各記載より,前記「OFDM受信装置」は,さらに「前記等価処理した信号を復調処理する手段と,前記復調処理した信号から情報符号を得る手段と,を備え」ているといえる。
f 上記cと上記(キ)より,「前記劣化したパイロットキャリアの信号は,周波数選択性の干渉波のある帯域のキャリアに位置し,劣化していないその隣のパイロットキャリアの信号で置き換えられる」ものといえる。
以上の事項を総合すると,引用例には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認める。
「無線システムにおけるOFDM受信装置において,
伝送路特性を推定するための複数のパイロットキャリアの信号を含むOFDM信号を受信する手段と,
FFT処理後の前記OFDM信号から前記パイロットキャリアの信号を検出するパイロット検出手段と,
劣化したパイロットキャリアの信号の代わりに,劣化していないその隣のパイロットキャリアの信号で置き換えるとともに,置き換えたパイロットキャリアの信号に基づいてデータキャリアの信号の位置における伝送路特性を推定する内挿処理部(干渉波対策用)と,
前記推定した伝送路特性に基づいて,入力されたFFT処理後のOFDM信号を等価処理することでその伝送路特性を補正して出力する等価処理部と,
前記等価処理した信号を復調処理する手段と,
前記復調処理した信号から情報符号を得る手段と,を備え,
前記劣化したパイロットキャリアの信号は,周波数選択性の干渉波のある帯域のキャリアに位置し,
劣化していないその隣のパイロットキャリアの信号で置き換えられる,
OFDM受信装置。」
ウ 周知例と周知事項
新たに引用する特表2003-529287号公報(以下,「周知例」という。)には,以下のとおり記載されている。(下線は当審で付与した。)
「【0079】
こうして、一例では、パンクチャリングは既知のジャミング信号を回避するために使用できる。したがって、上記したように、もしOFDMに基づくシステム内の特定の周波数ビン(あるいは単一キャリヤシステムにおける他のサンプル)がエラーを含んでいると考えられるときには、これらのビン(または他のサンプル)がパンクできて完全に無視されるか、エラーのもつマイナスの効果を減らすために小さな重み付けをされるようにでき、その際にある種の有用な情報が抽出されるようにできる。特定の周波数ビンは次のようなものに起因してエラーを含むものとなる。すなわち、送信機もしくは受信機回路雑音、両立不能な通信プロトコルからの同じ周波数空間を占有しているジャムの原因となるもの、消費者のマイクロ波オーブン(電子レンジ)のようなRF干渉を放出するデバイスが原因となってエラーを含むことになる。」
周知例に記載されているように,以下の事項(以下,「周知事項」という。)は周知である。
「OFDM信号を受信する受信機において,前記受信機の内部回路により,特定のサブチャネルが干渉を受けること。」
エ 対比・判断
補正後の発明と引用発明とを対比する。
a 引用発明の「OFDM受信装置」は,補正後の発明の「受信側装置」に含まれる。
b 引用発明の「伝送線路特性を推定する」ことは,補正後の発明の「チャネル推定」に相当し,そのための引用発明の「パイロットキャリアの信号」は,補正後の発明の「基準信号(reference signal)」に含まれるから,引用発明の「複数のパイロットキャリアの信号を含むOFDM信号」は,補正後の発明の「少なくとも1つの基準信号(reference signal)を含む信号」に含まれる。
よって,引用発明の「OFDM信号を受信する手段」は,補正後の発明の「受信部」に含まれる。
c 引用発明の「内挿処理部(干渉波対策用)」の「劣化したパイロットキャリアの信号の代わりに,劣化していないその隣のパイロットキャリアの信号で置き換える」ことは,劣化したパイロットキャリアの信号を劣化していないその隣のパイロットキャリアの信号で置き換えることで,「干渉波の近傍の伝送路の特性を可能な限り忠実に再現する」(【0050】)ものである。一方,補正後の発明の「前記基準信号の歪みを補償する」態様として,本願明細書(【0051】,【0052】)には,拡張法を適用すること,すなわち,トーン干渉が発生した位置のチャネル値を隣接するパイロット位置のチャネル値で置き換えることが記載されているから,引用発明の「置き換え」は,補正後の発明の「補償する」ことに含まれる。この場合,引用発明の「その隣のパイロットキャリアの信号」が,補正後の発明の「少なくとも1つの他の信号」に相当する。
そうすると,引用発明の「内挿処理部(干渉波対策用)」は,補正後の発明の「補償部」に含まれる。
d 引用発明は,「置き換えたパイロットキャリアの信号に基づいてデータキャリアの信号の位置における伝送路特性を推定する内挿処理部(干渉波対策用)と,前記推定した伝送路特性に基づいて,入力されたFFT処理後のOFDM信号を等価処理することでその伝送路特性を補正して出力する等価処理部と,前記等価処理した信号を復調処理する手段と,前記復調処理した信号から情報符号を得る手段」を備え,置き換えたパイロットキャリアの信号に基づいて推定された伝送路特性に基づいて処理された信号を復調して情報符号を得ていることから,上記記載の構成全体として,「内挿処理部(干渉波対策用)により置き換えたパイロットキャリアの信号に基づいて前記OFDM信号から情報符号を得る手段,すなわち前記OFDM信号をデコーディングする手段」を備えているといえ,該「デコーディングする手段」が,上記cも勘案すると,補正後の発明の「デコーダ(decorder)」に含まれるといえる。
e 引用発明の「前記劣化したパイロットキャリアの信号」は,補正後の発明の「歪まれた前記基準信号」に含まれる。また引用発明のパイロットキャリアの信号の劣化は,「周波数選択性の干渉波」により該干渉波のある帯域のキャリア((副)搬送波)に位置するパイロットキャリアの信号で干渉が発生することによるものであり,この干渉を「トーン干渉」と称することは任意である。そうすると,引用発明の「劣化していないその隣のパイロットキャリアの信号で置き換えられ」ることは,トーン干渉による劣化を除去して補償するものといえる。
よって,引用発明の「前記劣化したパイロットキャリアの信号は,周波数選択性の干渉波のある帯域のキャリアに位置し,劣化していないその隣のパイロットキャリアの信号で置き換えられ」は,補正後の発明の「歪まれた前記基準信号は,トーン干渉が発生する予め決められた副搬送波に位置し,トーン干渉による歪みを除去することで補償され」とは,「歪まれた前記基準信号は,トーン干渉が発生する」「副搬送波に位置し,トーン干渉による歪みを除去することで補償され」の点で共通する。
上記aないしeより,補正後の発明と引用発明とは,以下の点で一致し,また相違する。
<一致点>
「無線通信システムにおける受信側装置であって,
チャネル推定のための少なくとも1つの基準信号(reference signal)を含む信号を受信する受信部と,
少なくとも1つの他の信号を用いて前記基準信号の歪みを補償する補償部と,
前記補償部によって補償された前記基準信号に基づいて信号をデコーディング(decoding)するデコーダ(decoder)と,を含み,
歪まれた前記基準信号は,トーン干渉が発生する副搬送波に位置し,トーン干渉による歪みを除去することで補償される装置。」
<相違点>
一致点である「トーン干渉」について,補正後の発明では「物理的な資源内の固定位置から発生」するのに対し,引用発明では,「周波数選択性の干渉波」の発生要因が特定されていない点。
相違点について検討する。
引用発明の「OFDM受信装置」を構成する各手段を実現するために,内部回路を備えることは,技術常識に鑑みて当業者に自明の事項である。そして,「OFDM信号を受信する受信機において,前記受信機の内部回路により,特定のサブチャネルが干渉を受けること。」(上記「ウ 周知例と周知事項」の項参照)は周知事項である。
してみると,引用発明の「周波数選択性の干渉波」の発生要因を,引用発明の「OFDM受信装置」が備える内部回路,すなわち,物理的な資源内の固定位置により発生したものと特定することは,当業者が容易に想到し得たものである。
よって,相違点に係る補正後の発明の事項は,引用発明に基づいて周知事項を勘案することで当業者が容易に想到し得たものである。
エ 小括
したがって,補正後の発明は,引用発明に基づいて周知事項を勘案することで当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により独立して特許を受けることができない。
(4)結語
以上のとおり,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
第3 本願発明について
1 本願発明
平成28年11月15日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本願発明は,上記「第2 補正却下の決定」の項中の「1 本願発明と補正後の発明」の項の「本願発明」のとおりのものと認める。
2 引用発明
引用発明は,上記「第2 補正却下の決定」の項中の「2 補正の適否」の項中の「(2)独立特許要件」の項中の「イ 引用例と引用発明」の項で認定したとおりである。
3 対比・判断
そこで,本願発明と引用発明とを対比するに,本願発明は補正後の発明から本件補正に係る限定である,「歪まれた前記基準信号は,トーン干渉が発生する予め決められた副搬送波に位置し,トーン干渉による歪みを除去することで補償され,前記トーン干渉は,物理的な資源内の固定位置から発生する」ことの限定を省いたものであるから,補正後の発明と引用発明との相違点に係る構成も省いたものである。
そうすると,本願発明と引用発明との間で,発明を特定するために必要な事項に差異はないから,両発明は同一である。
また,仮に本願発明と引用発明との間に差異があるとしても,当業者が引用発明に基づいて容易に想到し得たものである。
4 むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明と同一であるから特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができない。また,仮に同一でないとしても引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。
本願は,その余の請求項に論及するまでもなく拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
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2016-017084