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特許拒絶査定不服審判

2016-013807

質量分析装置

審判番号
2016-013807
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2013-549677外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2016年09月14日
審決日
2017年10月30日
公報発行日
2018年05月25日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (H01J)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第17条の2第5項第1号、特許法第17条の2第3項、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2013-549677「質量分析装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 8月 2日国際公開、WO2012/100299、平成26年 2月24日国内公表、特表2014-504784〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

【理 由】 1 手続の経緯 平成24年 1月25日 国際特許出願(パリ条約による優先権主張20             11年1月25日、オーストラリア) 平成27年11月19日 拒絶理由通知(平成27年11月24日発送) 平成28年 1月29日 意見書・手続補正書 平成28年 7月14日 拒絶査定(同年7月26日送達) 平成28年 9月14日 拒絶査定不服審判の請求・手続補正書 平成29年 2月 6日 上申書 平成29年 4月17日 上申書 2 補正の適否 平成28年9月14日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、補正前の特許請求の範囲に、 「【請求項24】 第一予定進行経路に沿って移動するイオンの流れを提供するために所定量のイオンを供給できるイオン源と、 イオン分析素子による分析前にイオンの流れをろ過するために、第二予定進行経路に沿って移動する前記イオンの流れを受け取るように設置されたイオンフィルタ素子と、 前記第一予定進行経路に沿って移動するイオンを方向転換して前記第二予定進行経路に沿って移動させるように配列されたイオンガイドと、 を備える誘導結合プラズマ質量分析装置であって、 前記第二予定進行経路に実質的に直交する平面における前記誘導結合プラズマ質量分析装置の輪郭を縮小して前記誘導結合プラズマ質量分析装置の有効設置面積を小さくするよう、前記第一予定進行経路に沿ってイオンが進行する距離が前記第二予定進行経路に沿ってイオンが進行する距離よりも小さい、誘導結合プラズマ質量分析装置。 … 【請求項28】 前記イオンガイドと前記イオンフィルタ素子の中間に配置された衝突セルをさらに備える、請求項24~27のいずれか一項に記載の誘導結合プラズマ質量分析装置。」 とあるものを、 「【請求項23】 第一予定進行経路に沿って移動するイオンの流れを提供するために所定量のイオンを供給できるイオン源と、 イオン分析素子による分析前にイオンの流れをろ過するために、第二予定進行経路に沿って移動する前記イオンの流れを受け取るように設置されたイオンフィルタ素子と、 前記第一予定進行経路に沿って移動するイオンを方向転換して前記第二予定進行経路に沿って移動させるように配列されたイオンガイドと、 を備える誘導結合プラズマ質量分析装置であって、 前記第二予定進行経路に実質的に直交する平面における前記誘導結合プラズマ質量分析装置の輪郭を縮小して前記誘導結合プラズマ質量分析装置の有効設置面積を小さくするよう、前記第一予定進行経路に沿ってイオンが進行する距離が前記第二予定進行経路に沿ってイオンが進行する距離よりも小さく、 前記誘導結合プラズマ質量分析装置は、前記イオンガイドと前記イオンフィルタ素子との中間に配置された衝突セルをさらに備える、誘導結合プラズマ質量分析装置。」(注:下線は、請求人が付したものである。) に補正する補正事項を含んでいる。 上記補正事項は、補正前の請求項24を削除するとともに、当該請求項24を引用する補正前の請求項28の記載を独立形式に書き改め、新たな請求項23とするものである。 してみると、上記補正事項は、特許法第17条の2第5項第1号に規定する請求項の削除を目的とし、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであるから、特許法第17条の2第3項の規定に適合する。 したがって、新たな請求項23についての本件補正は適法である。 3 本願発明 本願の請求項23に係る発明は、特許請求の範囲の請求項23に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項23の記載は以下のとおりである。 「第一予定進行経路に沿って移動するイオンの流れを提供するために所定量のイオンを供給できるイオン源と、 イオン分析素子による分析前にイオンの流れをろ過するために、第二予定進行経路に沿って移動する前記イオンの流れを受け取るように設置されたイオンフィルタ素子と、 前記第一予定進行経路に沿って移動するイオンを方向転換して前記第二予定進行経路に沿って移動させるように配列されたイオンガイドと、 を備える誘導結合プラズマ質量分析装置であって、 前記第二予定進行経路に実質的に直交する平面における前記誘導結合プラズマ質量分析装置の輪郭を縮小して前記誘導結合プラズマ質量分析装置の有効設置面積を小さくするよう、前記第一予定進行経路に沿ってイオンが進行する距離が前記第二予定進行経路に沿ってイオンが進行する距離よりも小さく、 前記誘導結合プラズマ質量分析装置は、前記イオンガイドと前記イオンフィルタ素子との中間に配置された衝突セルをさらに備える、誘導結合プラズマ質量分析装置。」(以下「本願発明」という。) 4 引用発明 (1)刊行物の記載 原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-311650号公報(以下「刊行物」という。)には、図面と共に、以下の事項が記載されている。 ア 【特許請求の範囲】の記載 「【請求項12】試料をプラズマ中でイオン化するプラズマイオン源と、前記プラズマイオン源で生成した前記試料のイオンを分析する質量分析計と、を備えたプラズマイオン源質量分析装置において、 試料を設置する試料設置部、プラズマを発生させる燃焼室、前記イオンを真空部に導入するためのインタフェース部、前記真空部において前記イオンの透過率を高めるためのイオン光学系、及び前記イオンを偏向させる偏向電極を有し、 前記試料設置部と前記燃焼室とが高さ方向に配置され、 前記燃焼室、前記インタフェース部、前記イオン光学系および前記偏向電極が横方向に配置され、 前記偏向電極と前記質量分析計とが縦方向に配置される事を特徴とするプラズマイオン源質量分析装置。」(注:下線は当審が付加した。以下同様。) イ 【発明の属する技術分野】の記載 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は分析化学分野に属し、特にプラズマイオン源質量分析装置に関する。」 ウ 【発明が解決しようとする課題】の記載 「【0011】本発明は、イオントラップ型の質量分析計の高感度な特性を更に発揮させるために、試料をより短い距離で取り込んで、取り込み時間を短縮し、取り込み時における汚染を防止することのできる装置を提供する事を目的とする。 【0012】本発明は、更にコンパクトな使い勝手のよい装置を提供することを目的とする。」 エ 【発明の実施の形態】の第四の実施例の記載 「【0098】ICP用トーチ7は三重管構造を有する。中心部に霧化用ガスが送られ、ネブライザで生成された試料溶液の微細な液滴が導入される。霧化用ガスの外周部にはプラズマ生成用のプラズマガス(主にアルゴン)が流される。更にその外周部には、トーチ内に所定の気流を発生させプラズマを維持させるためのシースガスが導入される。トーチ7先端の外周部には、誘導コイル103が配置され、高周波電力が供給される。誘導コイル103により生成される交流磁界により、トーチ7先端部に電界が誘導され、この電界によりプラズマガスが電離してプラズマ104が生成される。 … 【0100】静電イオンガイドを通過したイオンは、レンズ電極115で収束された後、ゲート電極116を介して分析装置に送られ、イオン取り込み口117から分析装置に取り込まれる。分析装置は1対のエンドキャップ電極118、119とリング電極120とで構成される。ゲート電極116は、分析装置へのイオンの入射のタイミングを制御するために設けられている。分析装置の内部は、ヘリウムガス供給器(図示せず)からヘリウムが供給され、1ミリトール程度の圧力に保たれている。分析装置に入射したイオンは、ヘリウムガスと衝突することでエネルギーを失い、イオン閉じ込めポテンシャルに捕捉される。分析装置により質量分離されたイオンは分析装置の外部に排出され、イオン検出器121により検出される。また、イオンの質量を分析する段階を除き、イオンストップ電極122に高い電圧を印加して、迷走イオンが検出器121に到達するのを防止する。」 (2)引用発明 ア 上記(1)ア によれば、 「試料をプラズマ中でイオン化するプラズマイオン源と、前記プラズマイオン源で生成した前記試料のイオンを分析する質量分析計と、を備えたプラズマイオン源質量分析装置において、 試料を設置する試料設置部、プラズマを発生させる燃焼室、前記イオンを真空部に導入するためのインタフェース部、前記真空部において前記イオンの透過率を高めるためのイオン光学系、及び前記イオンを偏向させる偏向電極を有し、 前記試料設置部と前記燃焼室とが高さ方向に配置され、 前記燃焼室、前記インタフェース部、前記イオン光学系および前記偏向電極が横方向に配置され、 前記偏向電極と前記質量分析計とが縦方向に配置される、 プラズマイオン源質量分析装置。」 が記載されている。 イ 上記(1)エ【0100】に記載されるように、一般に、質量分析装置は、質量分離されたイオンを検出する「イオン検出器」を備える。 ウ 上記ア、イによれば、刊行物には、以下の発明が記載されている。 「試料をプラズマ中でイオン化するプラズマイオン源と、前記プラズマイオン源で生成した前記試料のイオンを分析する質量分析計と、質量分離されたイオンを検出するイオン検出器を備えたプラズマイオン源質量分析装置において、 試料を設置する試料設置部、プラズマを発生させる燃焼室、前記イオンを真空部に導入するためのインタフェース部、前記真空部において前記イオンの透過率を高めるためのイオン光学系、及び前記イオンを偏向させる偏向電極を有し、 前記試料設置部と前記燃焼室とが高さ方向に配置され、 前記燃焼室、前記インタフェース部、前記イオン光学系および前記偏向電極が横方向に配置され、 前記偏向電極と前記質量分析計とが縦方向に配置される、 プラズマイオン源質量分析装置。」 5 対比 本願発明と引用発明を対比する。 (1)本願発明の「第一予定進行経路に沿って移動するイオンの流れを提供するために所定量のイオンを供給できるイオン源」と、引用発明の「試料をプラズマ中でイオン化するプラズマイオン源」であって、イオン化した「前記イオンを真空部に導入するためのインタフェース部」と「横方向に配置され」た「燃焼室」を対比する。 引用発明の「燃焼室」は、プラズマを発生させ、そのプラズマ中でイオンが発生するから、引用発明の「燃焼室」は、プラズマイオン源の一部である。また、前記「燃焼室」と「横方向に配置され」た「インタフェース部」が、「前記イオンを真空部に導入する」から、引用発明の「プラズマイオン源」は、「インタフェース部」に対し、横方向に移動するするイオンの流れを提供するために所定量のイオンを供給するものである。 そして、引用発明の「プラズマイオン源」、「横方向」は、それぞれ、本願発明の「イオン源」、「第一予定進行経路」に相当する。 してみると、両者は相当関係にある。 (2)本願発明の「イオン分析素子による分析前にイオンの流れをろ過するために、第二予定進行経路に沿って移動する前記イオンの流れを受け取るように設置されたイオンフィルタ素子」と、引用発明の「前記プラズマイオン源で生成した前記試料のイオンを分析する質量分析計」であって、「イオンを偏向させる」「偏向電極」が「縦方向に配置」されるとともに、「質量分離されたイオン」が「イオン検出器」で検出される「質量分析計」を対比する。 ア はじめに、本願発明の「イオンフィルタ素子」の技術的意味について検討する。 本願の請求項26には、 「【請求項26】 前記イオンフィルタ素子が四重極質量分析器である、請求項23~25のいずれか一項に記載の誘導結合プラズマ質量分析装置。」 との記載がある。上記記載によれば、本願発明の「イオンフィルタ素子」は、質量分析器の機能を有する素子と解される。 イ 上記アの解釈を踏まえて検討する。引用発明の「前記プラズマイオン源で生成した前記試料のイオンを分析する質量分析計」は、質量分析器の機能を有するから、本願発明の「イオンフィルタ素子」に相当する。そして、引用発明の「質量分離されたイオンを検出するイオン検出器」は、本願発明の「イオン分析素子」に相当する。 ウ 引用発明の「質量分析計」は、「イオンを偏向させる」「偏向電極」と「縦方向に配置」され、「質量分析されたイオン」が「検出器」で検出されることから、引用発明の「質量分析計」は、縦方向に移動するイオンの流れを受け取り、質量分析し、質量分析されたイオンは、「イオン検出器」に出力されるものである。 エ してみると、引用発明の「前記プラズマイオン源で生成した前記試料のイオンを分析する質量分析計」であって、「イオンを偏向させる」「偏向電極」が「縦方向に配置」されるとともに、「質量分離されたイオン」が「イオン検出器」で検出される「質量分析計」は、本願発明の「イオン分析素子による分析前にイオンの流れをろ過するために、第二予定進行経路に沿って移動する前記イオンの流れを受け取るように設置されたイオンフィルタ素子」に相当する。 (3)本願発明の「前記第一予定進行経路に沿って移動するイオンを方向転換して前記第二予定進行経路に沿って移動させるように配列されたイオンガイド」と、引用発明の「イオンを偏向させる偏向電極」であって、「イオン光学系」と横方向に配置され、「質量分析計」と縦方向に配置される「偏向電極」を対比する。 引用発明の「横方向」が本願発明の「第一予定進行経路」に相当し、引用発明の「縦方向」が本願発明の「第二予定進行経路」に相当する。 そして、引用発明の「偏向電極」は、横方向に配置された「イオン光学系」からのイオンを、縦方向に配置された「質量分析計」へ偏向させるものである。 してみると、引用発明の「イオンを偏向させる偏向電極」であって、「イオン光学系」と横方向に配置され、「質量分析計」と縦方向に配置される「偏向電極」は、本願発明の「前記第一予定進行経路に沿って移動するイオンを方向転換して前記第二予定進行経路に沿って移動させるように配列されたイオンガイド」に相当する。 (4)本願発明の「誘導結合プラズマ質量分析装置」と、引用発明の「プラズマイオン源質量分析装置」を対比する。 ア 本願の発明の詳細な説明には、以下の記載がある。 「【0003】…質量分析法の一つの形式は、その中にテストサンプルを導入するプラズマ場を生成するために誘導結合プラズマ(ICP)トーチの使用を伴う。この形式において、プラズマは、サンプルからのイオンが抽出されて質量分析計へ導入され得るように、サンプルを気化してイオン化する。」 上記記載によれば、本願の「誘導結合プラズマ質量分析装置」は、プラズマ場を生成するために誘導結合プラズマ(ICP)トーチを使用する質量分析装置と解される。 してみると、両者は、「プラズマ質量分析装置」の点で一致する。 (5)以上によれば、本願発明と引用発明は、 「第一予定進行経路に沿って移動するイオンの流れを提供するために所定量のイオンを供給できるイオン源と、 イオン分析素子による分析前にイオンの流れをろ過するために、第二予定進行経路に沿って移動する前記イオンの流れを受け取るように設置されたイオンフィルタ素子と、 前記第一予定進行経路に沿って移動するイオンを方向転換して前記第二予定進行経路に沿って移動させるように配列されたイオンガイドと、 を備えるプラズマ質量分析装置。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 相違点1:本願発明は、「前記第二予定進行経路に実質的に直交する平面における前記誘導結合プラズマ質量分析装置の輪郭を縮小して前記誘導結合プラズマ質量分析装置の有効設置面積を小さくするよう、前記第一予定進行経路に沿ってイオンが進行する距離が前記第二予定進行経路に沿ってイオンが進行する距離よりも小さ」いのに対し、引用発明は、そのようなものなのか否か明らかでない点。 相違点2:本願発明は、「前記イオンガイドと前記イオンフィルタ素子と の中間に配置された衝突セルをさらに備える」のに対し、引用発明は、「衝突セル」を備える旨の特定がない点。 相違点3:「プラズマ質量分析装置」が、本願発明では「誘導結合プラズマ質量分析装置」であるのに対し、引用発明は、そのようなものであるのか否か明らかでない点。 6 判断 以下、上記相違点について検討する。 (1)相違点1について ア はじめに、本願発明の「前記誘導結合プラズマ質量分析装置の有効設置面積を小さくする」ことの技術的な意味について検討する。 本願の発明の詳細な説明には、「【0009】…、イオンフィルタ素子によって受取り可能なイオンが、イオン分析素子によって受け取られるように、第二予定進行経路に沿って流れるように配列される。従って、イオンガイドが、イオンを第一予定進行経路から方向転換または案内して第二予定進行経路に沿って流れさせるように、配列され得る。配列は、装置が台上または机上のような典型的な支持表面上に支持されたとき装置の設置面積が減少するような配列である。」との記載がある。上記記載によれば、イオンガイドがイオンの進行経路を第一予定進行経路から第二予定進行経路に方向転換することにより、装置の有効設置面積は、第一予定進行経路に沿う方向の装置サイズに応じて実質的に決まり、装置の有効設置面積が減少することを意味するものと解される。 イ 上記アを踏まえて検討すると、引用発明は、「偏向電極」が、横方向から縦方向にイオンを偏向する装置である。そうすると、引用発明のプラズマイオン源質量分析装置の有効設置面積は、横方向の装置の絶対的なサイズに応じて実質的に決まり、本願と同様に装置の有効設置面積が小さくなっているものと認められる。 そして、「第一予定進行経路に沿ってイオンが進行する距離」が「第二予定進行経路に沿ってイオンが進行する距離」よりも小さくするという相対的な大小関係は、装置の有効設置面積を小さくすることと直接には関係しないこと、装置をコンパクト化することは一般的な課題であることを踏まえると、引用発明において、横方向に配置される「前記燃焼室、前記インタフェース部、前記イオン光学系および前記偏向電極」のサイズが、縦方向に配置される「前記偏向電極と前記質量分析計」のサイズよりも小さくなるようにすることは、当業者が適宜為し得る設計事項と認められる。 ウ してみると、引用発明において、横方向にイオンが進行する距離を、縦方向にイオンが進行する距離を小さくして上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項となすことは、当業者が適宜為し得る設計事項と認められる。 (2)相違点2について ア 分析するイオンの信号と干渉するイオンの信号を低減する等の目的で、質量分析器のイオンが入力する側に衝突セルを設けることは、例えば、原査定の拒絶の理由に引用された特開2007-187657号公報(【0001】、【0013】~【0017】、【0021】~【0023】、図1-1、1-2等参照)に記載されるように周知の技術手段である。そうすると、引用発明において、分析するイオンの信号と干渉するイオンの信号を低減する目的で、質量分析計のイオンが入力する側、言い換えると、偏向電極と質量分析計の間に衝突セルを設け、上記相違点2に係る本願発明の発明特手事項となすことは、当業者が引用発明と周知の技術手段に基づいて容易に想到し得たことと認められる。 イ 審判請求人は、審判請求書において、 「引用文献1には、その段落[0005]~[0011]等の記載から明らかなように、特に「イオントラップ型」の質量分析計に関する発明が開示されています。このような「イオントラップ型」の質量分析計において、本願発明で使用するような「衝突セル」を使用することは、「イオントラップ型」の原理に矛盾することになります。」 と阻害要因がある旨主張するので、以下、上記主張について検討する。 (ア) 上記4(1)ウに摘記したように、刊行物の【0011】には、試料をより短い距離で取り込んで、取り込み時間を短縮し、取り込み時における汚染を防止することのできる装置を提供し、イオントラップ型の質量分析計の高感度な特性を更に発揮させることが記載されているが、刊行物の特許請求の範囲の請求項12には、イオントラップ型である旨の特定はない。試料の取り込み時における汚染を防止することのできる装置は、イオントラップ型の質量分析計に用いることで高感度な特性を更に発揮できるとしても、他の形式の質量分析計にも適用可能なものである。 よって、審判請求人の上記主張は採用できない。 (イ)念のため、引用発明の質量分析計がイオントラップ型の質量分析計である場合について、以下に検討しておく。 a 国際公開第2010/028081号 「[0031] Switching multipole device 140 to ion trap mode (which may be done in a data-dependent manner, as discussed above in connection with the FIG. 4 embodiment) causes mass spectrometer 500 to function as a QMF-ion trap instrument (commonly referred to in the art as a "Q-trap"). Ions are selectively transmitted through QMF 510 and undergo collision induced dissociation in collision cell 520. The resultant product ions are delivered to multipole device 140 for trapping, manipulation and mass analysis. In one illustrative example, the product ions delivered to multipole device 140 may be subjected to one or more additional stages of fragmentation in order to provide confirmation of the identification of an ion species of interest.」(ファミリー文献である特表2012-502433号公報を参考にした訳:[0031]多極デバイス140をイオントラップモードに切り換える(これは、図4の実施形態と関連して上述したようにデータ依存方式で行われるのが良い)ことにより、質量分析装置500は、QMFイオントラップ機器(当該技術分野においては「Qトラップ」と通称されている)として機能する。イオンは、QMF510を通って選択的に伝達され、そして、衝突セル520内において衝突により誘起される会合を生じる。結果的に得られた生成イオンは、トラッピング、操作及び質量分析のために多極デバイス140に送られる。例示の一例では、多極デバイス140に送られた生成イオンは、関心のあるイオン種の同定の確認を行うために1つ又は2つ以上の追加のフラグメント化段階を受けるのが良い。) b 国際公開2010/084310号(16頁11行~同頁14行) 「 Fig. 6A shows a conventional triple quadrupole mass spectrometer comprising a quadrupole rod set ion guide 17, a first quadrupole rod set mass filter 18, a collision cell 19 and a second quadrupole rod set 20. The second quadrupole rod set 20 may be operated in a mode of operation as a linear ion trap. 」(ファミリー文献である特表2012-515999号公報を参考にした訳:図6Aは、四重極ロッドセットイオンガイド17と、第1の四重極ロッドセットマスフィルタ18と、衝突セル19と、第2の四重極ロッドセットマスフィルタ20と、を備える従来のトリプル四重極質量分析計を示す。第2の四重極ロッドセットマスフィルタ20は、動作モードでリニア・イオントラップとして作動させることができる。) c 特開2006-226730号公報 「【0062】 イオントラップ型質量分析計(ITMS)は、高周波電場や静電場と静磁場とを組み合わせて作ったポテンシャルの井戸にイオンを長時間閉じこめる手法を利用した質量分析計である。閉じこめられたイオンの質量分析は、高周波電圧やその周波数の走査によりイオンをm/z別にイオントラップから追い出すことにより行う。ここで、ITMSは、エンドキャップ型、リニアイオントラップ型の両方を含む。イオントラップ型質量分析計の場合は、イオントラップ内に閉じこめたイオンについて衝突誘起解離(CID)を行うことができるため、イオントラップ質量分析計自体が衝突セルとしての役割を担ってもよい。」 上記cに記載されるように、イオントラップ質量分析計自体が衝突セルの役割を担うことが可能であるとしても、イオントラップ質量分析計の前段に衝突セルを配置することに阻害要因があるわけではない。そして、上記a、bに記載されるよう、イオントラップ型の質量分析器の前段に衝突セルを配置することも可能である。したがって、阻害要因がある旨の請求人の上記主張は採用できない。 ウ 小括 以上のとおり、上記相違点2は、当業者が引用発明と周知の技術手段に基づいて容易に想到し得たことと認められる (3)相違点3について 上記4(1)エ【0098】の記載によれば、刊行物には、プラズマを生成するためにICP用トーチを用いることが記載されており、「誘導結合プラズマ質量分析装置」が開示されている。してみると、引用発明の「プラズマ質量分析装置」を「誘導結合プラズマ質量分析装置」として構成し、上記相違点3に係る本願発明の発明特定事項となすことに困難性は無い。 (4)そして、本願発明が奏する作用効果は、引用発明と周知の技術手段に基いて当業者が容易に予測しうる程度のものであって、格別のものとは認められない。 7 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明と周知の技術手段に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである よって、結論のとおり審決する。

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2016-013807

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