特許拒絶査定不服審判
2016-012469
組織修復において使用するためのシステム
- 審判番号
- 2016-012469
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2013-532930外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年08月18日
- 審決日
- 2017年07月18日
- 公報発行日
- 2018年01月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】スミス アンド ネフュー インコーポレーテッド
- 【請求人代理人】村山 靖彦
- 【請求人代理人】実広 信哉
- 【請求人代理人】阿部 達彦
- 分類
- P18 .121-Z (A61B) / P18 .575-Z (A61B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2013-532930号「組織修復において使用するためのシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成24年4月12日国際公開、WO2012/048050、平成25年11月28日国内公表、特表2013-542776号〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成23年10月5日(パリ条約による優先権主張 2010年10月6日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成27年8月26日付けで拒絶理由が通知され、平成27年11月2日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされたところ、平成28年4月12日付けで拒絶査定がなされた。
これに対し、平成28年8月18日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに特許請求の範囲についての手続補正がなされたものである。
第2 平成28年8月18日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成28年8月18日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1 補正の内容
平成28年8月18日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、平成27年11月2日付けで補正された特許請求の範囲をさらに補正するものであって、特許請求の範囲の請求項1を次のように補正することを含むものである。
(1)補正前
「組織修復において使用するためのシステムであって、
挿管用のガイドと;
このガイドを通して挿入し得るよう構成された閉塞部材と;
前記ガイドを通して挿入し得るよう構成されたドリルであるとともに、基端部と、先端部と、これら基端部と先端部との間に位置したフレキシブル部分と、を有している、ドリルと;
前記ガイドを通して挿入し得るよう構成されたアンカー配送ツールと;
を具備していることを特徴とするシステム。」
(2)補正後
「組織修復において使用するためのシステムであって、
挿管用のガイドと;
このガイドを通して挿入し得るよう構成された閉塞部材と;
前記ガイドを通して挿入し得るよう構成されたドリルであるとともに、基端部と、先端部と、これら基端部と先端部との間に位置したフレキシブル部分と、を有している、ドリルと;
前記ガイドを通して挿入し得るよう構成されたアンカー配送ツールと;
を具備し、
前記ガイドが、ハンドルと、このハンドルに対して連結されたシャフトと、を備え、
前記シャフトが、長手方向軸線を有した長尺の直線形状のものとされ、
前記シャフトが、このシャフトの前記長手方向軸線に対して傾斜した先端部を有していることを特徴とするシステム。」(以下、「補正発明」という。下線部は補正個所を示し、当審で付加した。)
2 補正の適否の検討
本件補正のうち、特許請求の範囲の請求項1についてする補正は、補正前の請求項1に記載された、発明を特定するために必要な事項である「ガイド」について、「前記ガイドが、ハンドルと、このハンドルに対して連結されたシャフトと、を備え、前記シャフトが、長手方向軸線を有した長尺の直線形状のものとされ、前記シャフトが、このシャフトの前記長手方向軸線に対して傾斜した先端部を有している」との点を付加するものであるから、特許請求の範囲の減縮(特許法第17条の2第5項第2号)を目的とするものに該当する。そして、本件補正は、同条第3項及び第4項の規定に違反するものではない。
そこで、補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか、すなわち同条第6項において準用する同法第126条第7項に規定される特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならないとの要件に適合するかについて検討する。
(1)補正発明
補正発明は、特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、上記1(2)に示す、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであると認める。
(2)刊行物の記載事項
(2-1)引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用された、本件優先権主張日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった国際公開第2009/023034号(以下、「引用文献1」という。)には「ANCHOR DELIVERY SYSTEM」(アンカー送達システム)に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、括弧内の日本語は、引用文献1に対応する国際出願(PCT/US2007/079027)の日本語公表公報(特表2010-537676号公報)における翻訳文に準じて、当審で付した仮訳である。
A 「1. Field of the Invention
[0002] The present disclosure relates to methods and devices for use in surgical procedures and, more specifically, to an arthroscopic method and apparatus for installing a suture anchor into bone.
2. Related Art
[0003] Medical devices and methods for attaching soft tissue to bone have been developed. Of particular interest, especially in sports medicine procedures, are suture anchors. A suture anchor is typically inserted into and fixed in a bore hole drilled into a bone at a surgical repair site. Sutures are typically coupled to the anchor and are used to secure the soft tissue to the bone in order to effect the repair.・・・
[0004] Accurate placement of bore holes and suture anchors can be particularly challenging when repair is performed arthroscopically, as both access to and visibility of an arthroscopic surgical site may be more limited than is the case with open surgical procedures.・・・
[0006] Accordingly, a need exists for devices and methods that provide for the accurate placement of suture anchors used in arthroscopic surgical procedures.
・・・
[0008] In one aspect, the present disclosure relates to an anchor delivery system. The system includes a guide and an anchor delivery tool disposed within the guide. The tool includes a shaft and a handle coupled to the shaft.」
(1.技術分野
[0002] 本開示は、外科手術に使用する方法およびデバイスに関し、より詳細には、縫合糸アンカーを骨の中に装着するための関節鏡的方法および装置に関する。
2.関連技術
[0003] 軟部組織を骨に付着させる医療的なデバイスおよび方法が開発されてきた。特にスポーツ医療の手術において特に興味深いことは、縫合糸アンカーである。縫合糸アンカーは、一般に、外科的修復部位の骨に穴を開けられた穿孔穴に挿入され、その中に固定される。縫合糸は、一般に、アンカーに連結され、修復を行う目的で軟部組織を骨に固定するために使用される。・・・
[0004] 穿孔穴および縫合糸アンカーを正確に配置することは、関節鏡的外科手術部位へのアクセスおよび視認性の両方が、開放外科手術の場合よりも限定される可能性があるので、修復が関節鏡的に行われる場合に特に困難でありうる。・・・
[0006] したがって、関節鏡的外科手術において使用される縫合糸アンカーの正確な配置を可能にするデバイスおよび方法が求められている。
・・・
[0008] 1つの態様では、本開示はアンカー送達システムに関する。本システムは、ガイドおよびガイド内に配置されたアンカー送達ツールを含む。このツールは、シャフトおよびシャフトに連結されたハンドルを含む。・・・)
B 「[0038] ・・・Figure 1 shows a guide 10 of the present disclosure. The guide 10 includes a shaft 11 coupled to a handle 12. A central passage 13 extends through the shaft 11 and the handle 12 for receiving a drill and an anchor delivery tool, as described in more detail below. The shaft 11 includes a proximal portion 11a and a distal portion 11b.・・・The proximal portion lla is coupled to the handle 12 and partially extends a length of the handle 12.・・・
[0039] ・・・The guide 10 also includes a longitudinal axis 17 along its length.」
([0038] ・・・図1は、本開示のガイド10を示す。ガイド10は、ハンドル12に連結されたシャフト11を含む。中央通路13は、以下に詳細に説明されるように、ドリルおよびアンカー送達ツールを受け入れるために、シャフト11およびハンドル12を貫通して延在する。シャフト11は、近位部分11aおよび遠位部分11bを含む。・・・近位部分11aは、ハンドル12に連結され、ハンドル12の長手方向に部分的に延在する。・・・
[0039] ・・・ガイド10は、その長手方向に沿った長手方向軸17も含む。 )
C 「[0041] Fig. 2 shows an alternative embodiment of the guide 10 of Fig. 1 wherein the shaft 11 of the guide 10 is bent or curved relative to the longitudinal axis 17 of the guide 10. The bend or curve is incorporated into the shaft 11 to direct the drill and an anchor on the anchor delivery tool around anatomy during surgery, especially anatomy that prevents a straight trajectory.」
([0041] 図2は、図1のガイド10の別の実施形態を示し、ガイド10のシャフト11は、ガイド10の長手方向軸17に対して曲げられまたは湾曲されている。曲げまたは湾曲は、ドリルまたはアンカー送達ツールのアンカーを、手術中に生体組織、特に直線的な経路を妨げる生体組織を避けて移動させるために、シャフト11に付加される。)
D 「 [0043] Fig. 7 shows the anchor delivery tool 40 and anchor 45 of the present disclosure and Figs. 8 and 9 show the anchor delivery system 50 of the present disclosure.」
([0043] 図7は、本開示のアンカー送達ツール40およびアンカー45を示し、図8および9は、本開示のアンカー送達システム50を示す。)
E 「[0047] Fig. 10 shows an obturator 60 that may be used for percutaneous introduction of the guide 10 into the body.・・・ In use, the obturator 60 is inserted through the central passage 13 of the guide 10 and the combination is then passed over a previously implanted guide wire to be introduced into the body and delivered to the desired site for tissue repair. After delivery of the guide 10 into the body, the guide wire is removed. The obturator 60 allows for easier percutaneous introduction of the guide 10 to a desired site within the body by filling the inner diameter of the central passage 13 and substantially reducing the possibility of the tip 14 from becoming caught on tissue within the body.」
([0047] 図10は、身体内にガイド10を経皮的に導入するために使用できる閉塞具60を示す。・・・使用に際しては、閉塞具60は、ガイド10の中央通路13を貫通して挿入され、次いで、その組合せは、予め移植されたガイドワイヤの上を通され、身体内に導入され、組織の修復のための所望の部位に送達される。ガイド10を身体内に送達した後に、ガイドワイヤが取り除かれる。閉塞具60は、中央通路13の内径を満たすことにより、先端14が身体内の組織に引っ掛かる可能性を実質的に低下させて、ガイド10を、身体内の所望の部位に、より容易に経皮的に導入することができるようにする。)
F 「[0050] Fig. 13 shows a drill bit 90 that may be used for drilling of a hole into a bone. The drill bit 90 includes a shaft 91 having a proximal portion 91a and a distal portion 91b. ・・・After insertion of the guide 10 into the body and subsequent removal of the obturator 60 from the guide 10, the drill bit 90 is inserted into the central passage 13 of the guide 10 and a drive unit (not shown) is coupled to the attachment area 91d. The drive unit is then operated to rotate the drill bit 90 and drill a hole into the bone. ・・・At this time, full advancement of the drill bit 90 into the guide 10 has occurred, drilling of the hole is finished, and the drill bit 90 is removed from the central passage 13 of the guide 10.
[0051] Subsequent to removal of the drill bit 90 from the guide 10, the anchor delivery tool 40 is disposed within the central passage 13 of the guide 10, as shown in Figs.8 and 9, for delivery of the anchor 45 into the previously-drilled hole 100, as shown in Fig.14. 」
([0050] 図13は、骨の中に穴を開けるために使用できるドリルビット90を示す。ドリルビット90は、近位部分91aおよび遠位部分91bを有するシャフト91を含む。・・・ガイド10を身体内に挿入し、引き続いて閉塞具60をガイド10から取り除いた後に、ドリルビット90はガイド10の中央通路13に挿入され、駆動ユニット(図示されない)が取付け領域91dに接続される。次いで、駆動ユニットは、ドリルビット90を回転させ、骨に穴を開けるために作動される。・・・この時、ドリルビット90のガイド10への最大限の前進が起こり、穴開けが完了し、ドリルビット90がガイド10の中央通路13から取り除かれる。
[0051] ガイド10からのドリルビット90の除去に続き、図14に示されるように、予め開けられた穴100の中にアンカー45を送達するために、図8および9に示されるように、アンカー送達ツール40がガイド10の中央通路13内に配置される。)
G 「What is Claimed Is:
・・・
5. A method of repairing soft tissue comprising: providing a guide; providing an anchor delivery tool, the tool including a shaft and a handle coupled to the shaft, the shaft including a suture anchor coupled to a distal end of the shaft, the handle including a hub and a nose cone coupled to the hub; introducing the guide into a body; advancing the tool through the guide; placing the anchor in bone; and securing the tissue to the bone with the suture.
・・・
7. The method of claim 5 wherein introduction of the guide into the body occurs in a percutaneous manner via the use of an obturator.」
(請求の範囲
・・・
5. 軟部組織を修復する方法であって、
ガイドを提供するステップと、
アンカー送達ツールであって、シャフトおよび前記シャフトに接続されたハンドルを含み、前記シャフトが前記シャフトの遠位端に連結された縫合糸アンカーを含み、前記ハンドルがハブおよび前記ハブに連結されたノーズコーンを含んだアンカー送達ツールを提供するステップと、
前記ガイドを身体に差し込むステップと、
前記ガイドを通して前記ツールを前進させるステップと、
骨の中に前記アンカーを配置するステップと、
前記縫合糸によって前記組織を前記骨に固定するステップと、
を含んでいる方法。
・・・
7. 前記身体内に前記ガイドを差し込むステップが、閉塞具の使用を介して経皮的な様式で行われる、請求項5に記載の方法。)
続いて図面を参照しつつ、上記の各記載事項について検討する。
a 摘記事項Aによれば、「アンカー送達システム」は、「ガイドおよびガイド内に配置されたアンカー送達ツールを含む」ものであり、「修復を行う目的で軟部組織を骨に固定するために使用される」「縫合糸アンカー」 「の正確な配置を可能にするデバイス」であることが理解できるから、摘記事項Aのアンカー送達システムは、「組織修復において使用するための」アンカー送達システムであるといえる。
b 摘記事項Bの「ガイド10は、ハンドル12に連結されたシャフト11を含む。中央通路13は、以下に詳細に説明されるように、ドリルおよびアンカー送達ツールを受け入れるために、シャフト11およびハンドル12を貫通して延在する。」との記載、摘記事項Cの「図2は、図1のガイド10の別の実施形態を示し、ガイド10のシャフト11は、ガイド10の長手方向軸17に対して曲げられまたは湾曲されている。曲げまたは湾曲は、ドリルまたはアンカー送達ツールのアンカーを、手術中に生体組織、特に直線的な経路を妨げる生体組織を避けて移動させるために、シャフト11に付加される。」との記載からみて、ガイド10は、ドリル及びアンカー送達ツールを身体内に挿入する際に、それらを案内する機能を有するものであることが理解できるから、ガイド10は「挿管用の」のものということができる。
c 摘記事項Eの「閉塞具60は、ガイド10の中央通路13を貫通して挿入され」との記載からみて、閉塞具60は、「ガイド10を通して挿入し得るよう構成された」ものといえる。
d 摘記事項Fの「ドリルビット90は、近位部分91aおよび遠位部分91bを有するシャフト91を含む。・・・閉塞具60をガイド10から取り除いた後に、ドリルビット90はガイド10の中央通路13に挿入され」との記載からみて、ドリルビット90は、「ガイド10を通して挿入し得るよう構成されたドリルビット90であるとともに、近位部分91aと遠位部分91bを有するシャフト91を有している」ものといえる。
e 摘記事項Fの「ガイド10からのドリルビット90の除去に続き、・・・アンカー送達ツール40がガイド10の中央通路13内に配置される。」との記載からみて、アンカー送達ツール40は、「ガイド10を通して挿入し得るよう構成された」ものといえる。
f 摘記事項Bの「図1は、本開示のガイド10を示す。ガイド10は、ハンドル12に連結されたシャフト11を含む。・・・シャフト11は、近位部分11aおよび遠位部分11bを含む。・・・ガイド10は、その長手方向に沿った長手方向軸17も含む。」との記載を踏まえて図1をみると、ガイド10のシャフト11は、「長手方向軸17に沿って延びる長尺の直線形状」のものであることが図示されている。さらに、当該記載からガイド10が、「ハンドル12と、このハンドル12に対して連結されたシャフト11と、を備え」ることが理解できるから、これらを併せみれば、ガイド10が、「ハンドル12と、このハンドル12に対して連結されたシャフト11と、を備え、前記シャフト11が、長手方向軸17に沿って延びる長尺の直線形状のものとされ、前記シャフト11が、遠位部分11bを有している」ということができる。
g 摘記事項Aの「本開示はアンカー送達システムに関する。本システムは、ガイドおよびガイド内に配置されたアンカー送達ツールを含む」との記載、摘記事項Eの「閉塞具60は、ガイド10の中央通路13を貫通して挿入され、次いで、その組合せは・・・身体内に導入され、組織の修復のための所望の部位に送達される。」との記載、摘記事項Fの「ガイド10を身体内に挿入し、引き続いて閉塞具60をガイド10から取り除いた後に、ドリルビット90はガイド10の中央通路13に挿入され、・・・、穴開けが完了し、ドリルビット90がガイド10の中央通路13から取り除かれる。・・・ガイド10からのドリルビット90の除去に続き、・・・アンカー送達ツール40がガイド10の中央通路13内に配置される。」との記載を併せみれば、アンカー送達システムが、「ガイド10と;閉塞具60と;ドリルビット90と;アンカー送達ツール40と;を具備」したものということができる。
上記AないしGの摘記事項およびaないしgの検討内容を、技術常識を踏まえ、補正発明に照らして整理すると、引用文献1には、次の発明が記載されていると認める。
「組織修復において使用するためのアンカー送達システムであって、
挿管用のガイド10と;
このガイド10を通して挿入し得るよう構成された閉塞具60と;
前記ガイド10を通して挿入し得るよう構成されたドリルビット90であるとともに、近位部分91aと、遠位部分91bと、を有している、ドリルビット90と;
前記ガイド10を通して挿入し得るよう構成されたアンカー送達ツール40と;
を具備し、
前記ガイド10が、ハンドル12と、このハンドル12に対して連結されたシャフト11と、を備え、
前記シャフト11が、長手方向軸17に沿って延びる長尺の直線形状のものとされ、
前記シャフト11が、遠位部分11bを有しているアンカー送達システム。」 (以下、「引用発明」という。)
(2-2)引用文献2
原査定において周知例として提示され、本願優先権主張日前に頒布された刊行物である米国特許出願公開2008/0188854号明細書(以下、「引用文献2」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。なお、括弧内の日本語は、当審で付した仮訳である。
A 「More Detailed Description
[0017] As noted above, various embodiments of the present invention provide techniques for assisting a user during the delivery of a labral anchor into the glenoid. Referring to the figures and, in particular, FIGS. 1 and 2 , there is shown a system 10 for assisting a user during delivery of a labral anchor 40 , where the system generally includes a drill sleeve 12 , a drill bit 14 , and an insertion guide 16 . The drill sleeve 12 generally includes a curved portion 22 , and a flexible portion 28 of the drill bit 14 and a flexible portion 38 of the insertion guide 16 are each respectively adapted to conform to the drill sleeve's curved portion 22 when inserted into the drill sleeve 12 . The drill sleeve 12 is employed to position the drill bit substantially perpendicular to the surface of the glenoid 42 , while the drill bit 14 drills a hole 44 within the glenoid that is configured to accommodate a labral anchor 40 . The insertion guide 16 is used in conjunction with the drill sleeve 12 to deliver the labral anchor 40 into the hole 44 drilled by the drill bit 14 . The curved portion 22 and flexible portions 28 and 38 ensure that the labral anchor 40 is inserted substantially perpendicular to the surface of the glenoid 42 , which provides for better long-term fixation of the labral anchor.」
(より詳細な説明
【0017】 上述したように、本発明の様々な実施形態は、関節唇アンカーを関節窩に送達する際にユーザを支援するための技術を提供する。図面、特に、図1及び図2を参照すると、概ねドリルスリーブ12、ドリルビット14と、挿入ガイド16を含む、関節唇アンカー40を送達する際にユーザーを支援するためのシステム10が示されている。ドリルスリーブ12は、概ね、湾曲部分22を含み、ドリルビット14の可撓部分28と挿入補助具16の可撓部38は、ドリルスリーブ12に挿入されたとき、ドリルスリーブの湾曲部分22に一致するようにそれぞれ適合される。ドリルスリーブ12は、ドリルビットを関節窩42の表面に対して実質的に垂直にドリルビットを位置決めするために使用され、ドリルビット14は、関節唇アンカー40を収容するために、関節内に穴44を開ける。挿入ガイド16は、関節唇アンカー40をドリルビット14により穴あけされた穴44に送達するために、ドリルスリーブ12とともに使用される。湾曲部分22と可撓部分28と38は、関節唇アンカー40が関節窩42の表面に実質的に垂直に挿入されることを確実にして、関節唇アンカーの良好な長期固定をもたらす。)
B 「Drill Sleeve
[0019] FIGS. 3 and 3A depict a drill sleeve 12 according to one exemplary embodiment of the present invention. FIG. 3 shows that the drill sleeve 12 generally includes a handle 18 proximate to its proximal end, a substantially straight portion 20 , and a curved portion 22 proximate to its distal end. As shown in FIG. 3A , at least a portion of the handle 18 has a clover-shaped cross-section (or other suitable cross section) for enhancing gripping of the drill sleeve 12 by a user. FIG. 3A also illustrates that the drill sleeve 12 is cannulated and includes an elongated passageway 32 extending between the proximal and distal ends of the drill sleeve. In addition, FIG. 3A shows that the elongated passageway 32 is generally circular in cross section, although any cross section that is sized and configured to receive the drill bit 14 and insertion guide 16 may be employed.・・・
[0020] In various embodiments, an angle A is defined between the longitudinal axis of the proximal portion of the drill sleeve 12 and the longitudinal axis of the distal portion of the drill sleeve, as shown in FIG. 3 . According to one aspect of the invention, the angle A is approximately 30 degrees. This configuration allows a user (e.g., a surgeon) to avoid neurovascular or other structures and position the distal end of the curved portion substantially perpendicular to the glenoid.」
(ドリルスリーブ
【0019】 図3及び図3Aは、本発明の一実施形態に係るドリルスリーブ12を示している。図3は、ドリルスリーブ12は、一般的に、近位端部に近接したハンドル18と、実質的に直線状の部分20と、遠位端部に近接した湾曲部分22を含むことを示している。図3Aに示すように、ハンドル18の少なくとも一部は、ユーザによるドリルスリーブ12の把持を強化するためのクローバ形断面(又は他の適切な断面)を有している。図3Aはさらに、ドリルスリーブ12がカニューレ状であり、ドリルスリーブの近位端と遠位端との間に伸びる細長形状の通路32を含むことを示す。加えて、図3Aは、細長い通路32は、その断面が略円形でありながら、ドリルビット14および挿入ガイド16を受け入れるようなサイズとされ構成されることを示す。・・・
【0020】 様々な実施形態では、角度Aは、図3に示すように、ドリルスリーブ12の近位部分の長手方向軸線とドリルスリーブの遠位部分の長手方向軸線のなす角として定義される。本発明の一態様によれば、角度Aは約30°である。この構成によれば、ユーザ(例えば、外科医)が、神経血管または他の構造体を回避し、湾曲部分の遠位端部は、関節窩に対して実質的に垂直に位置することを可能にする。)
C 「Drill Bit
[0022] FIG. 4 depicts a drill bit 14 according to an embodiment of the invention. The drill bit 14 is used to drill a hole into the glenoid or glenoid rim. This hole is preferably sized and configured to receive a particular type of labral anchor 40 and to maintain the labral anchor 40 in place due to the frictional engagement between the labral anchor 40 and the portion of the bone defining the hole. The drill bit 14 includes a shank 26 extending from its distal (当審注:proximalの誤記と認められる)end, a flexible portion 28 adjacent to the shank 26 , and a cutting portion 30 adjacent to the flexible portion and proximate to its proximal (当審注:distalの誤記と認められる)end of the drill bit. According to one aspect, the shank 26 extends from the distal (当審注:proximalの誤記と認められる)end and slightly past the midpoint of the drill bit 14 , while the flexible portion 28 and the cutting portion 30 comprise the remaining portion of the drill bit. In various embodiments, the flexible portion 28 is located adjacent to the cutting portion 30 such that when the drill bit 14 is axially positioned in operating engagement with the drill sleeve 12 , the drill bit's cutting portion 30 extend out of the distal end of the drill sleeve's curved portion 22 while the flexible portion 28 aligns with the curved portion as shown in FIG. 1 . Thus, the drill bit 14 is configured to slide proximally and distally within the elongated passageway 32 of the drill sleeve 12 , and to contact the glenoid substantially perpendicular to the glenoid.・・・
[0023] The drill bit 14 is preferably adapted to be attached to a conventional drill (or other suitable rotating device) via a drill chuck (not shown) and driven by the drill (not shown). ・・・」
(ドリルビット
【0022】 図4は本発明の実施の形態におけるドリルビット14を示している。ドリルビット14は関節窩または関節窩周縁に穿孔するのに使用される。この穴は、特定のタイプの関節唇アンカー40を受け入れるのに、好ましいサイズとされ構成とされるとともに、関節唇アンカー40と孔を画成する骨の一部との間の摩擦係合により、適所に関節唇アンカー40を維持するように構成される。ドリルビット14は、その近位端から延びる軸部26と、軸部26に隣接した可撓部分28と、可撓部分に隣接するとともにドリルビットのその遠位端に近接する切削部分30を含む。一態様によれば、軸部26は、近位端からドリルビット14の中間点をやや越えて延在し、ドリルビットの残りの部分は可撓部分28及び切削部分30からなる。ドリルビット14がドリルスリーブ12と作動係合して軸方向に位置し、図1に示されるように可撓部分28は湾曲部分と整列するとともに、ドリルビットの切削部分30はドリルスリーブの湾曲部分22の遠位端から延出するように、可撓部分28は切削部分30に隣接して位置する。ドリルビット14は、ドリルスリーブ12の細長い通路32の中で近位方向及び遠位方向に摺動するように構成され、関節窩に対して実質的に垂直に、関節窩に接触する。・・・
【0023】 ドリルビット14は、ドリルチャック(図示されていない)を介して、通常のドリル(またはその他適切な回転装置)に装着されるように適応され、ドリル(図示されていない)によって駆動される。・・・」
D 「[0032] As indicated above, embodiments of the system 10 of the invention may be utilized, for example, for repairing Bankart lesions and superior labral anterior posterior (SLAP) lesions. In various embodiments, the system 10 is configured to be used with existing arthroscopic surgical techniques to deliver a labral anchor 40 . ・・・」
(【0032】 先に示したように、本発明のシステム10の実施例は、例えば、バンカート損傷および上方関節唇損傷を修復するために利用することができる。様々な実施例では、システム10は、関節唇アンカー40の送達のために、既存の関節鏡外科技術とともに用いられるように構成されている。・・・)
(2-3)引用文献3
原査定において周知例として提示され、本願優先権主張日前に頒布された刊行物である特表2003-521327号公報(以下、「引用文献3」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。
A 「【0001】
(発明の分野)
本発明は、大略組織除去に使用される回転バー(rotary bur)器具に関し、さらに詳しくは、カッティング処置の結果生じるデブリス(debris)を除去するための吸込み又は吸引通路を有する回転バー器具に関するものである。
【0002】
(関連技術の検討)
狭い門脈又は通路を介して外科処置位置へのアクセスが得られる外科処置において、長尺の管状アウター部材内で長尺のインナー部材が回転する外科用切断器具が広く受け入れられている。一般に、管状アウター部材は開口を有する末端を備え、インナー部材は開口を介して身体の組織に係合するためのカッティングチップを有する末端を備える。・・・ 前述のタイプの回転組織切断器具の一例が、関節鏡検査式の踵の外科手術の実行における使用について、ボンネル他の米国特許第4,203,444号に開示されている。・・・
【0003】
ボンネル他の特許に開示された管状のインナー及びアウター部材は、直線状である。しかしながら、多くの外科処置では、一般的に直線状のカッティング器具ではアクセスできない外科位置へアクセスするために、カッティング器具が撓み、曲がり、あるいは湾曲していることが望ましい。湾曲した又は撓むことができるシャフトを備える回転組織カッティング器具が、アンクティル他の米国特許第5,922,003号、クラウゼ他の米国特許第5,322,505号及び第5,152,744号、トロットの米国特許第4,646,738号、ロッシャー他の米国特許第4,466,429号、並びにアウスの米国特許第4,445,509号に例示されている。
【0004】
頭部及び頚部の外科手術、特に、副鼻腔の外科手術の領域では、患者の鼻の正面先端からの骨の除去のような組織除去のために、カッティングチップとしてバーを有する回転組織カッティング器具が使用されている。いくつかの回転バー器具は曲がっており、そのアウター部材又はシャフトは曲がり、撓み、又は湾曲を有する。・・・」
B 「【0021】
好ましい実施形態の説明
本発明による回転バー器具10は、図1に示すように、細長のアウター部材12と、このアウター部材に回転可能に受け入れられる細長のインナー部材14とを含む。回転バー器具10は、曲がり、撓み又は湾曲したアウターチューブと、曲がり、撓み、又は湾曲部に隣接する可撓領域を含むインナーチューブとを有する曲がった回転バー器具として図示されている。・・・アウター部材12は、アウターハブ16と、剛体のアウターチューブ又はシャフト18とを含む。このアウターチューブ18は、長手方向即ち軸方向に真直な形状を有する基端伸長部20を有する。この基端伸長部20は、ハブ16から先端側へ曲がり、撓みまたは湾曲部22に向かって延びている。この曲がり、撓み又は湾曲部22は、基端伸長部20を先端伸長部24と接続している。この先端伸長部24は、基端伸長部20の中心の長手方向軸26に対してある角度に向けられている。アウターチューブの先端伸長部24は、曲がり22から、図1を見れば、上方に開口先端28まで延びている。・・・ 曲率、曲がり角度の大きさ、先端28に対する曲がりの位置は、行われる処置、アクセスする手術部位又は領域の位置に依存する。好ましくは、曲がり22の曲がり角度は、0から70度の範囲であり、さらに好ましくは、曲がり角度は、40度であるのがよい。」
C 「【0025】
インナー部材14は、インナー部材14がアウター部材12内に配置されたときにアウターハブ16の基端側に配置されるインナーハブ32と、ハブ32から先端側に延びてアウターチューブ内に同軸又は同心で配置される細長のインナーチューブ又はシャフト34と、インナーチューブ34の末端のバーチップ36とを含む。インナーチューブ34は、中空の円筒形状を有し、末端側は末端38で終わっており、この末端38はバーチップ36が接続されている。インナーチューブ34内にその長さに沿って、ルーメンが形成されている。また、インナーチューブ34は、アウター部材内で回転している間にインナー部材が曲がることができるように、アウター部材の曲がり22内に隣接し、又は当該曲がり22内に配置される可撓領域39を有している。・・・
【0026】
図2及び4に示されるように、らせん状(spiral)即ちヘリカルな(herical)カット部40は、可撓領域に対応するその伸長部に沿ってインナーチューブ34を貫いて形成されている。・・・それにより頭部及び頸部及び身体の他の部分の手術においてたまに出くわす到達困難な領域において回転バーカッティング器具の使用が容易になっている。」
D 「【0043】
本発明の回転バー器具は、撓み、曲がり、湾曲を設けることができるし、設けなくてもよい。曲がりを設ける場合、曲がりの位置とその曲がりの角度の大きさは、実行する処置に依存して変化させることができる。例えば、本発明の器具の曲がりは、従来の曲がった回転バー器具の曲がりよりもさらに末端側に位置させて、従来の器具ではアクセスできなかった解剖学的領域にアクセスするようにしてもよい。インナーチューブはアダプタの基端に隣接、又は近接して撓みやすいので、本発明の回転バー器具は、従来の器具よりバーチップに近接して曲げることにより、頭部や首部の外科手術、特に鼻の外科手術において、到達困難な領域へのアクセスを向上することができる。・・・」
(3)対比
補正発明と引用発明とを対比する。
補正発明と引用発明(以下、それぞれを「前者」、「後者」といい、それらを併せて「両者」ということがある。)とを、それぞれの構成が奏する機能及び技術常識を踏まえ対比すると、後者の「アンカー送達システム」は前者の「システム」に相当し、以下同様に、「ガイド10」は「ガイド」に、「閉塞具60」は「閉塞部材」に、「ドリルビット90」は「ドリル」に、「近位部分91a」は「基端部」に、「遠位部分91b」は「ドリル」の「先端部」に、「アンカー送達ツール40」は「アンカー配送ツール」に、「ハンドル12」は「ハンドル」に、「シャフト11」は「シャフト」に、「長手方向軸17に沿って延びる長尺の直線形状のもの」は「長手方向軸線を有した長尺の直線形状のもの」に、「遠位部分11b」は「シャフト」の「先端部」に、それぞれ相当する。
してみると、補正発明と引用発明とは、以下の点において一致する。
(一致点)
「組織修復において使用するためのシステムであって、
挿管用のガイドと;
このガイドを通して挿入し得るよう構成された閉塞部材と;
前記ガイドを通して挿入し得るよう構成されたドリルであるとともに、基端部と、先端部と、を有している、ドリルと;
前記ガイドを通して挿入し得るよう構成されたアンカー配送ツールと;
を具備し、
前記ガイドが、ハンドルと、このハンドルに対して連結されたシャフトと、を備え、
前記シャフトが、長手方向軸線を有した長尺の直線形状のものとされ、
前記シャフトが、先端部を有する、システム。」
そして、補正発明と引用発明とは、以下の相違点1及び2において相違する。
(相違点1)
ドリルに関し、補正発明では、その基端部と先端部との間に位置したフレキシブル部分を有しているのに対して、引用発明では、そのようなフレキシブル部分を有しているか明らかでない点。
(相違点2)
ガイドのシャフトの先端部に関し、補正発明では、シャフトの長手方向軸線に対して傾斜しているのに対して、引用発明では、シャフトの長手方向軸線に対して傾斜していない点。
(4)判断
相違点1及び2の判断に当たり、まず上記引用文献2及び3に記載された事項について検討する。
A 引用文献2について
引用文献2には、「関節唇アンカー40の送達システム」に関する事項が記載されているところ、当該送達システムは、「関節鏡外科技術とともに用いられ」(摘記事項D)、「関節唇アンカーを関節窩に送達する」(摘記事項A)ために「関節窩または関節窩周縁に穿孔する」(摘記事項C)システムであって、「ドリルスリーブ12、ドリルビット14と」を具備し、当該「ドリルスリーブ12」は、「湾曲部分22を含み、」「ドリルビットを関節窩42の表面に対して実質的に垂直にドリルビットを位置決めするために使用され、」(摘記事項A)当該「ドリルビット14」は、「その近位端から延び」、「中間点をやや越えて延在」する「軸部26」と、「軸部26に隣接した可撓部分28と、可撓部分に隣接するとともにドリルビットのその遠位端に近接する切削部分30を含」(摘記事項C)み、「ドリルチャック・・・を介して、通常のドリル(またはその他適切な回転装置)に装着され・・・駆動されるものであり」(摘記事項C)、当該「可撓部分28」「は、ドリルスリーブ12に挿入されたとき、ドリルスリーブの湾曲部分22に一致するように適合され」(摘記事項A)、当該「ドリルスリーブ12」は、「実質的に直線状の部分20と、遠位端部に近接した湾曲部分22を含」み、「ドリルスリーブ12の近位部分の長手方向軸線とドリルスリーブの遠位部分の長手方向軸線のなす」「角度Aは約30°であ」(摘記事項B)るという構成を備えたものである。
ここで、当該送達システムは、関節鏡外科技術とともに用いられ、関節窩に関節唇アンカーを送達するために、体内に存する関節窩または関節窩周縁に穿孔するものであるから、“外科手術の際に体内に挿入して、骨に穿孔するための器具”ということができる。また、ドリルスリーブ12は、ドリルビットを関節窩42の表面に対して位置決めするために使用されるのであるから、ドリルスリーブ12は、“ドリルビット14を穿孔すべき個所に案内する”ためのものということができる。さらに、ドリルスリーブに挿入されるドリルビット14がドリルチャックを介して、通常のドリル(またはその他適切な回転装置)に装着されて駆動されるというのであるから、ドリルスリーブ12は、“ドリルビット14を回転可能に受け入れる”ことも明らかである。さらに、ドリルビット14の可撓部分28は、ドリルビット14の近位端から延び、中間点をやや越えて延在する軸部26と、遠位端に近接する切削部分30との両者に隣接するというのであるから、ドリルビット14の“近位端と遠位端との間に位置する”ということができる。そして、ドリルスリーブ12の近位部分の長手方向軸線とドリルスリーブの遠位部分の長手方向軸線のなす角度Aは約30°というのであるから、ドリルスリーブ12の先端部である遠位部分は、“ドリルスリーブの長手方向軸線と傾斜した”ものということができる。
してみると、引用文献2には、“外科手術の際に体内に挿入して、骨に穿孔するための器具において、ドリルビット14を回転可能に受け入れるとともに穿孔すべき個所に案内するためのドリルスリーブ12と、近位端と遠位端との間に位置する可撓部分28を有したドリルビット14とを備え、ドリルスリーブ12は遠位端部に近接した湾曲部分22を含み、ドリルスリーブ12は、このドリルスリーブ12の長手方向軸線と傾斜した遠位部分を有する”という事項が実質的に開示されている。
B 引用文献3について
引用文献3には、「外科手術」の際に、「骨の除去のような組織除去のために」に使用される「回転バー器具」(摘記事項A)に関する事項が記載されているところ、当該「回転バー器具」は、「細長のアウター部材12と、」「このアウター部材に回転可能に受け入れられる細長のインナー部材14とを含」(摘記事項B)み、当該「インナー部材14」は「基端側に配置されるインナーハブ32」「から先端側に延びてアウターチューブ内に同軸又は同心で配置される」「インナーチューブ」「と、インナーチューブ34の末端のバーチップ36とを含」み、当該「インナーチューブ34は、アウター部材内で回転している間にインナー部材が曲がることができるように、アウター部材の曲がり22内に」「配置される可撓領域39を有している」(摘記事項C)とともに、当該「アウター部材12」は、「剛体のアウターチューブ」を含み、「このアウターチューブ18は、長手方向即ち軸方向に真直な形状を有する基端伸長部20」と「曲がり22」と「先端伸長部24」とを有し、当該「先端伸長部24は、基端伸長部20の中心の長手方向軸26に対してある角度に向けられ」(摘記事項B)るという構成を備えたものである。
ここで、当該回転バー器具は、外科手術の際に、骨の除去のような体内の組織除去のために使用されるものであるから、“外科手術の際に体内に挿入して、骨を除去するための器具”ということができる。また、アウターチューブがアウター部材12の一部であり、かつ、インナーチューブはインナー部材14の一部であることを踏まえれば、アウター部材12は、アウターチューブ内に同軸で配置され、処置部位に位置付けられるべきバーチップ36を末端に備えるインナー部材14を、“処置部位に案内するための”ものであるといえる。さらに、インナー部材14は、アウター部材12内に配置されたときに基端側に配置されるインナーハブ32と、インナーチューブ34の末端のバーチップ36とを含み、アウター部材内で回転している間にインナー部材が曲がることができるように、アウター部材の曲がり22内に配置される可撓領域39を有しているのであるから、インナー部材14の可撓領域39は、“基端と末端との間に位置する”ことが理解できる。そして、アウター部材12の先端伸長部24は、真直な形状を有する基端伸長部20の長手方向軸26に対してある角度に向けられるというのであるから、アウター部材12の“長手方向軸線に対して傾斜”したものということができる。
してみると、引用文献3には、“外科手術の際に体内に挿入して、骨を除去するための器具において、インナー部材を回転可能に受け入れるとともに処置部位に案内するためのアウター部材と、基端と末端との間に位置する可撓領域を有するインナー部材とを備え、アウター部材は曲がりを有するとともにその長手方向軸線に対して傾斜した先端伸長部を備えた”という事項が実質的に開示されている。
C 相違点1及び2の判断
事案に鑑み、相違点1及び2を併せて検討する。
上記A及びBによれば、“外科手術の際に体内に挿入して、処置するための器具において、回転処置具を回転可能に受入れるとともに処置部位に案内するための案内部材と、基端部と先端部との間に位置した可撓性の部分を有した回転処置具とを備え、前記案内部材がその長手方向軸線に対して傾斜した先端部を備える”という事項は、引用文献2、3の開示内容に照らし、本願優先権主張日前における周知技術であったものといえる。
そして、引用発明の「アンカー送達システム」も、外科手術の際に体内に挿入して、処置するための器具であって、回転処置具を回転可能に受入れるとともに処置部位に案内するための案内部材と、回転処置具とを備えた器具ということができる。さらに、外科手術の際に、そのような器具が直線的な形状であると、その挿入を妨げる体内組織が存在するために、器具を湾曲する必要があるという課題は、引用文献1の摘記事項C「ガイド10のシャフト11は、ガイド10の長手方向軸17に対して曲げられまたは湾曲されている。曲げまたは湾曲は、ドリルまたはアンカー送達ツールのアンカーを、手術中に生体組織、特に直線的な経路を妨げる生体組織を避けて移動させるために、シャフト11に付加される。」との記載、引用文献2の摘記事項B「角度Aは、図3に示すように、ドリルスリーブ12の近位部分の長手方向軸線とドリルスリーブの遠位部分の長手方向軸線のなす角として定義される。本発明の一態様によれば、角度Aは約30°である。この構成によれば、ユーザ(例えば、外科医)が、神経血管または他の構造体を回避し、湾曲部分の遠位端部は、関節窩に対して実質的に垂直に位置することを可能にする。」との記載、引用文献3の摘記事項A「ボンネル他の特許に開示された管状のインナー及びアウター部材は、直線状である。しかしながら、多くの外科処置では、一般的に直線状のカッティング器具ではアクセスできない外科位置へアクセスするために、カッティング器具が撓み、曲がり、あるいは湾曲していることが望ましい。」との記載のいずれからも示唆される共通した課題であることから、引用発明において、その共通する課題を解決するための具体的手段として上記周知技術を適用し、ドリルビット90の近位部分91aと遠位部分91bとの間に位置した可撓性の部分を設けるとともに、ガイド10のシャフト11の遠位部分11bを、その長手方向軸に対して傾斜したものとすることは、当業者であれば容易に想到し得たことということができる。
そうすると、引用発明において、上記周知技術を適用することにより、相違点1及び2に係る補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到できたことである。
また、補正発明の効果をみても、引用文献1ないし3に接した当業者であれば、当然に予測し得たものであって、格別のものということはできない。
よって、補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでない。
(5)本件補正についての結び
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反している。よって、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により、本件補正は却下すべきものである。
よって、上記[補正却下の決定の結論]のとおり決定する。
第3 本件発明について
1 本件発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1~22に係る発明は、平成27年11月2日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1~22に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、上記第2 1 (1)に示すとおりのものである。
第4 引用文献の記載事項及び引用文献に記載された発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献の記載事項は、上記第2 2 (2)に示したとおりである。そして、引用発明は上記第2 2 (2-1)で認定したとおりのものである。
第5 対比及び判断
本件発明は、補正発明から「、
前記ガイドが、ハンドルと、このハンドルに対して連結されたシャフトと、を備え、
前記シャフトが、長手方向軸線を有した長尺の直線形状のものとされ、
前記シャフトが、このシャフトの前記長手方向軸線に対して傾斜した先端部を有し」という発明特定事項を削除したものに相当する。つまり、補正発明は、本件発明の発明特定事項の全てを含んでいる。
そうすると、補正発明が上記第2 2 (3)~(4)に示したように、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、本件発明も同様に、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。
第6 結び
以上のとおり、本件発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2016-012469