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特許拒絶査定不服審判

2016-011754

センサー素子、その製造方法、及びそれを含むセンサー装置

審判番号
2016-011754
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2013-531611外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2016年08月04日
審決日
2017年10月16日
公報発行日
2018年04月27日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (G01N)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2013-531611「センサー素子、その製造方法、及びそれを含むセンサー装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 4月19日国際公開、WO2012/050686、平成25年11月21日国内公表、特表2013-542422〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本願は、2011年(平成23年)9月7日(パリ条約による優先権主張 2010年9月30日  米国)を国際出願日とする出願であって、平成27年5月27日付けで拒絶理由が通知され、同年11月20日に意見書及び手続補正書が提出され、平成28年3月31日付けで拒絶査定されたところ、同年8月4日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。その後当審において平成29年6月1日付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年9月5日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1ないし3に係る発明は、平成29年9月5日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定される発明であって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりの発明である。 なお、本願発明は、以下のとおり、当審にて分節しA)~G)の見出しを付けた。 「  【請求項1】 A)センサー素子であって、 B)電気的に結合された第1導電性部材を有する第1導電性電極と、 C)固有ミクロ孔質のポリマーを含む吸収性誘電体層と、 D)電気的に結合された第2導電性部材を有する熱蒸着された第2導電性電極と、を備え、 E)熱蒸着された前記第2導電性電極が少なくとも1種類の貴金属を含み、熱蒸着された前記第2導電性電極が、前記吸収性誘電体層の主表面と同一の広がりを持つと共に4~8ナノメートルの厚さを有し、少なくとも1種類の有機蒸気に対して透過性があり、 F)前記吸収性誘電体層が、少なくとも部分的に前記第1導電性電極と熱蒸着された前記第2導電性電極との間に配置されている、 G)センサー素子。」 第3 引用文献、引用発明等 1 引用文献1について (1)引用文献1に記載された事項 当審拒絶理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である、特開2002-328110号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審による。以下同様。)。 (引1a)「【0002】 【従来の技術】感湿材料として高分子膜を用いた湿度検出センサは、大別して静電容量を測定するタイプのものと電気抵抗を測定するタイプの2種類がある。これらのうち、静電容量を測定して湿度を検出するタイプのものは、湿度応答性が良好で、ヒステリシスが小さく、感湿特性の湿度依存性も小さく、計測可能な湿度・温度範囲も広いという特徴を備えている。 【0003】このタイプのセンサは、一般に、次のような構造になっている。すなわち、基板の片面に、薄い下側電極と電気絶縁性でかつ感湿特性を有する高分子膜と多孔質構造の薄い上側電極とをこの順序で積層して成るセンサ本体が形成され、下側電極と上側電極のそれぞれからはリード線を引き出した構造である。その場合、基板としては電気絶縁性で適当な強度を有する絶縁材料が使用され、それでセンサ全体の強度を確保している。 【0004】したがって、このセンサ構造において、基板上に形成されている上記センサ本体は、平行平板型のコンデンサ構造になっている。このセンサは次のような作動原理に基づいて環境中の湿度を検出する。上記センサをある相対湿度の環境下に置くと、環境中の水蒸気ガス(水分子)は多孔質構造の上側電極を透過してその下に位置する高分子膜の表面にまで到達し、更に、当該高分子膜の内部に吸蔵される。 ・・・ 【0006】したがって、上側電極と下側電極から引き出されている各リード線をインピーダンスアナライザに接続して、センサ本体の静電容量に関する出力信号を検出すれば、その出力信号に基づいて高分子膜への水蒸気ガスの吸蔵量、すなわち、環境中の相対湿度を測定することができる。そして、実際の湿度検出は次のようにして行われる。 ・・・ 【0008】そして実際の湿度検出が行われる。すなわち、このセンサを湿度測定対象の環境下に配置し、そのときの出力信号を検出する。その出力信号が、仮にCnであったとすれば、測定対象の環境における相対湿度をXnとして測定装置が読みとる。この検出方式は、上記した水蒸気ガス以外の分子、例えば極性を有するホルムアルデヒド、アセトン、アルコールなどに対しても適用することができる。」 (引1b)「【0012】 【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記した目的を達成するための研究過程で、静電容量測定型の湿度検出センサにおけるドリフト劣化の発生要因に関して以下のような考察を行った。 (1)一般に高分子膜は、高分子の重縮合によって形成された骨格部と、この骨格部の中に微細孔の形態をとって3次元的に分布する自由体積部とで構成されている。そして、水蒸気ガスの高分子膜への吸蔵現象とは、水蒸気ガスが上記した自由体積部に捕捉される現象であると解釈することができる。」 (引1c)「【0018】 【発明の実施の形態】本発明の静電容量センサを、湿度検出センサを例にして以下に詳細に説明する。最初に、センサAについて説明する。まず、図1に本発明のセンサAの1例A1を示す。このセンサA1は、厚み方向に貫通する貫通孔1Aが中央に1個形成されている枠形状をした基板1の上に、前記した貫通孔1Aの上部開口を閉塞するようにして、下側電極2Aと高分子膜2Bと多孔質構造または網目状構造の上側電極2Cとをこの順序で積層してなる平行平板型のコンデンサ構造のセンサ本体2が配置されている。そして、下側電極2Aと上側電極2Cの端部には、それぞれ、例えば導電性接着剤を用いてリード線3a、3bが接続されている。 ・・・ 【0020】まず、図2で示したように、所定形状の基板1の上に、例えば真空蒸着法やスパッタ法を適用して電極材料を成膜して下側電極2Aを形成する。基板1としては、電気絶縁性の材料から成る基板であれば何であってもよく、例えば、ガラス;石英;シリコン;窒化ケイ素、窒化アルミニウム、ジルコニア、サイアロンのようなセラミックス;サファイアなどの基板をあげることができる。これらのうち、ガラス基板は価格の点や後述する基板加工が行いやすいなどの点から好適である。 ・・・ 【0022】この下側電極2Aの厚みは格別限定されるものではないが、通常は、0.02~1μm程度にすればよい。ついで、図3で示したように、下側電極2Aを埋設して高分子膜2Bが成膜される。この高分子膜2Bの構成材料としては、電気絶縁性でかつ感湿特性を備えるものであれば何であってもよく、例えば、ポリイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテル、ポリアミドイミド、ポリフェニレンオキサイド、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、セルロースアセテートブチル、セルロースアセテートなどの有機高分子材料、および架橋高分子材料をあげることができる。 ・・・ 【0025】ついで、図4で示したように、高分子膜2Bの上に例えば真空密着法やスパッタ法を適用して多孔質構造または網目状構造の上側電極2Cを成膜してコンデンサ構造のセンサ本体2を形成する。上側電極2Cの形成に用いる電極材料としては、例えば、Cr、Au、Pt、Nb、Ru、Ti、Ta、Al、W、C、Si、Ni、Ag、Pd、Cuなどをあげることができる。これらのうち、Crは耐食性に優れていると同時に、電極形成時に微細クラックが発生して多孔質構造になりやすく、そのため、センサの検出応答性を高めるので好適である。 【0026】この上側電極2Cの厚みをあまり厚くすると、環境における湿度変化に対する応答速度の低下が起こりはじめ、逆に薄くなりすぎると、電極面が島状構造に近づいて電極としての導電性が低下するようになるので、その厚みは、通常、10~300nm程度に設定される。」 (引1d)図1は、以下のようなものである。 (2)引用文献1の記載から把握できる事項 ア (引1c)の【0025】段落の「真空密着法」は、【0020】段落の記載などから「真空蒸着法」の誤記であることは明らかであるから、「真空蒸着法」と読み替える。 (3)引用文献1に記載された発明 上記(引1a)-(引1c)の下線部の事項に、上記(2)での事項を加えて整理すると、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という)が記載されている。 なお、引用発明の認定の根拠となった対応する段落番号等を付記した。 「基板の上に、下側電極2Aと、高分子膜2Bと多孔質構造の上側電極2Cとをこの順序で積層してなる平行平板型のコンデンサ構造のセンサ本体2であって(【0018】)、 上記センサをある相対湿度の環境下に置くと、環境中の水蒸気ガス(水分子)は多孔質構造の上側電極を透過してその下に位置する高分子膜の表面にまで到達し、更に、当該高分子膜の内部に吸蔵され(【0004】)、 高分子膜は、高分子の重縮合によって形成された骨格部と、この骨格部の中に微細孔の形態をとって3次元的に分布する自由体積部とで構成されており、水蒸気ガスの高分子膜への吸蔵現象とは、水蒸気ガスが上記した自由体積部に捕捉される現象であると解釈することができ(【0012】)、 センサ本体の静電容量に関する出力信号を検出すれば、その出力信号に基づいて高分子膜への水蒸気ガスの吸蔵量を測定することができるものであって(【0006】)、 多孔質構造の上側電極2Cの形成に用いる電極材料としては、Au、Pt、Pdなどであり(【0025】)、 多孔質構造の上側電極2Cは、真空蒸着法を適用して成膜され(【0025】、上記(2)ア)、 この上側電極2Cの厚みをあまり厚くすると、環境における湿度変化に対する応答速度の低下が起こりはじめ、逆に薄くなりすぎると、電極面が島状構造に近づいて電極としての導電性が低下するようになるので、その厚みは、通常、10~300nm程度に設定され(【0026】)、 水蒸気ガス以外の分子、例えば極性を有するホルムアルデヒド、アセトン、アルコール等に対しても適用することができる(【0008】) センサ本体。」 2 引用文献2について 当審拒絶理由に引用された、本願の優先日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、国際公開第2009/045733号(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている(日本語訳は、引用文献2のパテントファミリーである特表2010-540966号公報を参照して、当審が作成した。)。 (引2a)「These discussions will refer to both Fig. 1, which depicts an exemplary sensing element based on the general configuration of a parallel plate capacitor, and Figs. 2, 2a, and 3, which depict exemplary sensing elements based on the general configuration of an interdigitated capacitor.」(第6頁15-18行目) 日本語訳:これらの説明は、平行平板コンデンサの一般的な構成に基づく代表的なセンサ要素を表わす図1、及び交互配置コンデンサの一般的な構成に基づく代表的なセンサ要素を表わす図2、2a、3の両方を参照する。 (引2b)「In one embodiment, the analyte-responsive dielectric material is chosen from the family of materials comprising so-called "polymers of intrinsic microporosity" (hereafter called PIMs). 」(第7頁17-19行目) 日本語訳:一実施形態では、検体反応性誘電体材料は、いわゆる「固有マクロ孔質のポリマー」(以降、PIMsと称される)を含む材料の一群から選択される。 (引2c)「PIMs have the advantage of possessing microporosity that is not significantly dependent on the thermal history of the material. PIMs thus may offer advantages in terms of being reproducibly manufacturable in large quantities, and in terms of not exhibiting properties that change upon aging, shelf life, etc.」(第8頁7-10行目) 日本語訳:PIMsは、材料の熱履歴に顕著に依存することのない、ミクロ孔質を備えることの利点を提供する。したがって、PIMsは、大量に再生可能に製造可能であるという点で、また老朽化、及び貯蔵寿命等によって変化する特性を呈さないという点で、利益を提供することがある。 (引2d)「In this context, the terms "microporous" and "microporosity" mean that the material has a significant amount of internal, interconnected pore volume, with the mean pore size (as characterized, for example, by sorption isotherm procedures) being less than about 100 nm. Such microporosity provides that molecules of organic analyte (if present) will be able to penetrate the internal pore volume of the material and take up residence in the internal pores. The presence of such analyte in the internal pores can alter the dielectric properties of the material such that a change in the dielectric constant (or any other suitable electrical property) can be observed. Without being limited by theory or mechanism, applicant considers that the disclosed sensing element 1/101, relying on a microporous dielectric material, may have advantageous properties with regard to the sensing of an organic analyte, in that a measurable change in an electrical property of the dielectric material may be caused by the presence of the analyte molecules in the pores. Thus, it may be possible to detect the analyte without the analyte molecules being required to be solubilized in the polymeric material itself to a sufficient extent to cause a change in a property of the polymeric material such as swelling and/or expansion (although such a phenomenon may also occur and may also contribute to a measurable electrical response). Such a microporous nature of the analyte-responsive dielectric material may contribute to increased sensitivity of the dielectric material to small amounts of organic analyte.」(第8頁11-28行目) 日本語訳:この文脈において、用語「ミクロ孔質の」及び「ミクロ孔質」は、材料が有意な規模の、内部の相互接続された間隙体積を有し、平均孔径(例えば、吸着等温線手段によって特徴付けられる)は、約100nm未満である。このようなミクロ孔質により、有機検体の分子(存在する場合)が、材料の内部細孔容積に浸透し、内部細孔に定着することが可能となる。内部細孔中のこのような検体の存在は、材料の誘電特性を変化させることができ、それによって誘電率(又は他の任意の好適な電気的特性)の変化が観察され得る。理論又は機構によって制限されることなく、出願人は、ミクロ孔質誘電体材料に依存する開示される感知素子1/101は、誘電体材料の電気的特性の測定可能な変化が細孔中の検体分子の存在によって生じ得るという点において、有機検体の感知に関する有利な特性を有することがあるものと考える。したがって、検体分子が、増大及び/又は膨張(ただし、このような現象もまた生じることがあり、やはり測定可能な電気的反応に寄与することがある)などの、ポリマー材料の特性の変化を生じるために十分な程度、ポリマー材料自体の中で可溶化されることを必要とせずに、検体を検出することが可能であり得る。このような検体応答性誘電体材料のミクロ孔質特性は、誘電体材料の、少量の有機検体への高い応答性に寄与することがある。 (引2e)「In general, the edges of the various layers can be aligned flush with each other (as depicted in the exemplary embodiment of Fig.1).」(第16頁3-4行目) 日本語訳:一般的には、(図1の代表的な実施形態において示されるように、)各層の端部は互いにピッタリと重なるように位置合わせされ得る。 (引2f)Fig.1は、以下のようなものである。 第4 当審の判断 1 対比 (1) A)、G)について 引用発明の「センサ本体2」は、本願発明の「センサー素子」に相当する。 (2) B)について 引用発明の「下側電極2A」は、電極である以上、電気的に結合された導電性部材を含んでいることは明らかであるから、本願発明の「電気的に結合された第1導電性部材を有する第1導電性電極」に相当する。 (3) C)について 引用発明の「高分子膜2B」は、平行平板型のコンデンサにおける誘電体層として機能し、「微細孔の形態をとって3次元的に分布する自由体積部」を有して、「自由体積部に」「ガス」を「補足」する「吸蔵現象」を起こす層であるから、引用発明の「高分子膜2B」と本願発明の「固有ミクロ孔質のポリマーを含む吸収性誘電体層」とは、「孔質のポリマーを含む吸収性誘電体層」である点で共通する。 (4) D)について 引用発明の「真空蒸着法を適用して成膜され」た「上側電極2C」は、電極である以上、電気的に結合された導電性部材を有していることは明らかであり、また、「真空蒸着法」が材料を加熱する工程を含む蒸着方法すなわち熱蒸着方法であることは明らかであるから、本願発明の「電気的に結合された第2導電性部材を有する熱蒸着された第2導電性電極」に相当する。 (5) E)について ア 「熱蒸着された前記第2導電性電極が少なくとも1種類の貴金属を含み」について 引用発明の「真空蒸着法を適用して成膜され」た「上側電極2Cの形成に用いる電極材料としては、Au、Pt、Pdなどであ」ることは、本願発明の「熱蒸着された前記第2導電性電極が少なくとも1種類の貴金属を含」むことに相当する。 イ 「少なくとも1種類の有機蒸気に対して透過性があ」ることについて 引用発明の「平行平板型のコンデンサ構造のセンサ本体2」における「多孔質構造の上側電極」は、「環境中の水蒸気ガス(水分子)」を「透過」させるものであって、引用発明の「センサ本体2」は、「水蒸気ガス以外の分子、例えば極性を有するホルムアルデヒド、アセトン、アルコール等」といった有機蒸気「に対しても適用することができる」ものであるから、そのようなセンサ本体2における「多孔質構造の上側電極2C」が、少なくともホルムアルデヒド、アセトン、アルコールといった有機蒸気に対して透過性があることは明らかである。 したがって、引用発明の「水蒸気ガス以外の分子、例えば極性を有するホルムアルデヒド、アセトン、アルコール等に対しても適用することができる」「平行平板型のコンデンサ構造のセンサ本体2」における「多孔質構造の上側電極2C」は、本願発明の「少なくとも1種類の有機蒸気に対して透過性があ」る「第2導電性電極」に相当する。 ウ E)について、まとめ 上記ア-イから、引用発明の「真空蒸着法を適用して成膜され」た「上側電極2Cの形成に用いる電極材料としては、Au、Pt、Pdなどであり」、「真空蒸着法を適用して成膜され」た「上側電極2C」が、「水蒸気ガス以外の分子、例えば極性を有するホルムアルデヒド、アセトン、アルコール等に対しても適用することができる」「平行平板型のコンデンサ構造のセンサ本体2」における「多孔質構造の上側電極2C」であることと、本願発明の「熱蒸着された前記第2導電性電極が少なくとも1種類の貴金属を含み、熱蒸着された前記第2導電性電極が、前記吸収性誘電体層の主表面と同一の広がりを持つと共に4~8ナノメートルの厚さを有し、少なくとも1種類の有機蒸気に対して透過性があ」ることとは、「熱蒸着された前記第2導電性電極が少なくとも1種類の貴金属を含み、熱蒸着された前記第2導電性電極が、少なくとも1種類の有機蒸気に対して透過性があ」る点で共通する。 (6) F)について 引用発明の「下側電極2Aと、高分子膜2Bと多孔質構造の上側電極2Cとをこの順序で積層」されていることは、「高分子膜2B」が「下側電極2A」と「多孔質構造の上側電極2C」との間に配置されていることを意味しているから、本願発明の「前記吸収性誘電体層が、少なくとも部分的に前記第1導電性電極と熱蒸着された前記第2導電性電極との間に配置されている」ことに相当する。 (7) 上記(1)-(6)から、本願発明と、引用発明とは、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。 <一致点> 「センサー素子であって、 電気的に結合された第1導電性部材を有する第1導電性電極と、 孔質のポリマーを含む吸収性誘電体層と、 電気的に結合された第2導電性部材を有する熱蒸着された第2導電性電極と、を備え、 熱蒸着された前記第2導電性電極が少なくとも1種類の貴金属を含み、熱蒸着された前記第2導電性電極が、少なくとも1種類の有機蒸気に対して透過性があり、 前記吸収性誘電体層が、少なくとも部分的に前記第1導電性電極と熱蒸着された前記第2導電性電極との間に配置されている、 センサー素子。」 <相違点> (相違点1)「孔質のポリマーを含む吸収性誘電体層」について、本願発明は、「固有ミクロ孔質」のポリマーであるのに対して、引用発明は、「高分子の重縮合によって形成された骨格部と、この骨格部の中に微細孔の形態をとって3次元的に分布する自由体積部とで構成されて」いるものである点。 (相違点2)第2導電性電極が、本願発明では「吸収性誘電体層の主表面と同一の広がりを持つ」のに対して、引用発明では、広がりについて明確に特定されていない点。 (相違点3)貴金属を用いた場合の第2導電性電極の厚さについて、本願発明は、「4~8ナノメートル」であるのに対して、引用発明は、「多孔質構造の上側電極2Cは、真空蒸着法を適用して成膜され、この上側電極2Cの厚みをあまり厚くすると、環境における湿度変化に対する応答速度の低下が起こりはじめ、逆に薄くなりすぎると、電極面が島状構造に近づいて電極としての導電性が低下するようになるので、その厚みは、通常、10~300nm程度に設定され」ている点。 2 判断 (1)相違点1について 引用文献2には、(引2a)ないし(引2d)の記載からみて、平行平板コンデンサ型のセンサー本体において、第1電極と第2電極との間に配置されて、有機検体の分子がその内部細孔容積に浸透し内部細孔に定着することで材料の誘電率が変化する検体反応性誘電体材料として、固有マクロ孔質のポリマー(PIMs)を採用することで、大量に再生可能に製造可能であり、また老朽化、及び貯蔵寿命等によって変化する特性を呈さず、少量の有機検体への高い応答性に寄与するものとする利点が得られるという技術的事項が記載されている。 また、引用発明における「高分子膜」と引用文献2記載の「固有マクロ孔質のポリマー」の層とは、ともに、平行平板コンデンサ型の有機蒸気センサ本体に用いられる誘電体層であって、引用文献1の(引1a)の【0002】-【0008】、(引1b)の【0012】段落に記載がされている高分子膜中の自由体積部へのガス分子の吸蔵による誘電率の変化と、引用文献2の(引2d)に記載されている固有マクロ孔質のポリマー中の内部間隙容積への浸透及び内部細孔への定着による誘電率の変化とは、同様の物理化学的原理に基づくものであることは明らかである。 したがって、引用発明における「高分子膜」に替えて、引用文献2に開示された上記利点を有する「固有マクロ孔質のポリマー」を採用することは、十分な動機があるから、引用発明の「高分子膜」に替えて、引用文献2記載の「固有ミクロ孔質のポリマー」を採用することは、当業者であれば容易に想到しうることである。 (2)相違点2について 引用文献2には、(引2a)、(引2e)及び(引2f)の記載からみて、平行平板コンデンサ型のセンサ本体において、上側電極は吸収性誘電体層の主表面と同一の広がりを持つように形成されるものが開示されている。 引用発明において、上記平行平板コンデンサ型の上側電極と吸収性誘電体層との位置関係について、引用文献2に開示されている平行平板コンデンサ型の電極形状を採用することは、当業者であれば容易に想到しうることである。 (3)相違点3について 引用発明における「上側電極2C」の厚さは、「この上側電極2Cの厚みをあまり厚くすると、環境における湿度変化に対する応答速度の低下が起こりはじめ、逆に薄くなりすぎると、電極面が島状構造に近づいて電極としての導電性が低下するようになる」ことを考慮して設定されたものである。 また、上側電極の材料として貴金属を用いる際の具体的な膜厚の上限値及び下限値は、貴金属の具体的材料、被蒸着面の材料や表面性状、真空蒸着の各種条件などにより変化することは、当業者に自明のことである。 すると、上記事項を考慮して適宜実験等を行なって最適化することは、当業者の通常の創作能力の発揮の範囲内のものであって、その結果、4~8nmとすることは、当業者が設計する範囲のものである。 なお、引用発明の「その厚みは、通常、10~300nm程度に設定される」との数値範囲は、種々設計される「上側電極」の厚さを例示しただけのものであって、4~8nmに設定することの阻害要因とはならない。 (4)本願発明の効果について 本願発明の効果は、引用発明及び引用文献2記載の技術的事項に基づいて、当業者であれば予測しえたものであって、格別なものではない。 (5)小括 上記(1)-(4)から、本願発明は、引用発明及び引用文献2記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第5 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2016-011754

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