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特許拒絶査定不服審判

2025-012150

ガス濃度測定器及びガス濃度測定方法

審判番号
2025-012150
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2025-503012外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2025年08月01日
審決日
2026年05月11日
公報発行日
2026年07月31日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (G01N)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

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特願2025-503012「ガス濃度測定器及びガス濃度測定方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 7年 4月17日国際公開、WO2025/079328〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、2024年(令和 6年)8月8日を国際出願日とする日本語特許出願であって(優先権主張 令和 5年10月13日、令和 5年12月25日)、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。 令和 7年 1月20日 手続補正書の提出 同年 2月12日付け 拒絶理由通知書 同年 3月 6日 意見書・手続補正書の提出 同年 5月13日付け 拒絶理由通知書 同年 6月 5日 意見書・手続補正書の提出 同年 6月18日付け 拒絶査定 同年 8月 1日 審判請求書・手続補正書の提出 以下では、令和 7年 6月18日付け拒絶査定を「原査定」という。 第2 本願発明について 本願の請求項1~14に係る発明は、令和 7年 8月 1日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~14に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおり特定されるとおりのものである 「【請求項1】 測定対象成分とキャリアガスとを含む測定対象ガスが通流するセルと、 前記セルに、波長が115nm以上320nm以下の紫外光を照射する光源と、 前記測定対象ガスを透過した前記紫外光の透過光を受光して前記透過光の強さを検出す る受光器と、 前記光源と前記受光器との間における、前記紫外光の光路上に配置された光学フィルタ と、を備え、 前記セルは、 前記紫外光を前記セル内に導入する入射部と、 前記透過光を前記セル外に導出する出射部と、を有し、 前記紫外光は、半値幅が50nm以上の連続スペクトルであり、 前記光学フィルタは、 前記入射部及び前記出射部の少なくとも一方に配置され、 前記紫外光における特定の波長帯のみを選択して透過させるバンドパスフィルタであり、 前記特定の波長帯は、少なくとも前記測定対象成分の吸収波長を含み、 前記受光器は、分光せずに前記透過光の強さを検出するガス濃度測定器。」 第3 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、以下の理由を含むものである。 理由(進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献2:特開平7-128229号公報(周知技術を示す文献) 引用文献3:特開2005-241249号公報(主たる引用文献) 引用文献5:国際公開第2021/182279号(周知技術を示す文献) 第4 本願発明の分節 本願発明は、前記第2に記載した請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。 ここで、検討の便宜上、本願発明の構成を次のように構成A~構成Gに分説する。(A~Gは、各構成単位毎に分説するために当審にて付した分説番号であり、以下、各構成単位について、該分説番号を用いて「構成A」等ということがある。引用発明等についても同様である。) 「【請求項1】 A 測定対象成分とキャリアガスとを含む測定対象ガスが通流するセルと、 前記セルに、波長が115nm以上320nm以下の紫外光を照射する光源と、 前記測定対象ガスを透過した前記紫外光の透過光を受光して前記透過光の強さを検出する受光器と、 B 前記光源と前記受光器との間における、前記紫外光の光路上に配置された光学フィルタ と、を備え、 C 前記セルは、 前記紫外光を前記セル内に導入する入射部と、 前記透過光を前記セル外に導出する出射部と、を有し、 D 前記紫外光は、半値幅が50nm以上の連続スペクトルであり、 E 前記光学フィルタは、 前記入射部及び前記出射部の少なくとも一方に配置され、 前記紫外光における特定の波長帯のみを選択して透過させるバンドパスフィルタであり、 F 前記特定の波長帯は、少なくとも前記測定対象成分の吸収波長を含み、 G 前記受光器は、分光せずに前記透過光の強さを検出するガス濃度測定器。」 第5 引用文献の記載事項、引用発明及び周知技術 1 引用文献3 (1) 引用文献3の記載 本願の優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由で引用文献3として引用された特開2005-241249号公報(以下「引用文献3」という。)には、図面とともに次の記載がある。(下線は当審において付与した。以下同様。)。 ア 「【0001】 本発明は、非常に活性が高く簡便な濃度測定が困難であったF2ガス濃度を簡便に測定することを可能としたF2ガス濃度の測定方法及びF2ガス濃度の測定装置に関するものである。」 イ 「【0008】 すなわち本発明は、F2ガスを充填したガスセルに紫外光を照射し吸収スペクトルを測定するF2ガス濃度の測定方法で、該ガスセルが、少なくとも1つの通気管を具備した筒状部材料で、その両端にCaF2、MgF2、BaF2、LiF、またはSiO2から選ばれる少なくとも1種の結晶からなる窓を具備し、該筒状部材料が、ステンレス鋼、鉄、アルミ、アルミ合金、ニッケル、ニッケル合金、銅、酸化アルミ、または窒化アルミのいずれかひとつからなることを特徴とし、さらに、F2ガス濃度を測定するに際し、前処理としてNaF吸着管もしくは深冷トラップでフッ化水素またはフッ化水素酸を除去することを特徴とするF2ガス濃度の測定方法であり、少なくとも、該筒状部材料からなるガス通気管を具備したガスセル、紫外光ランプ、分光器、検出器、ガスセルに入るF2ガスを精製するための薬剤充填管、ガスセルや薬剤充填管内を洗浄するための真空ポンプ、また迷光が入らないようにガスセル、分光器、検出器、光源を外部光と遮蔽するためのケースからなるF2ガス濃度の測定装置を提供するものである。 ウ 「【0010】 本発明の測定方法は、ガスセルを組み込んだ紫外光ランプ(重水素ランプ)と検出器(モノクロメータ)を具備する吸光度測定装置によりF2ガスの紫外光に対する吸光光度を測定することでF2ガス濃度を正確にかつ迅速に測定するものである。紫外光としては、280~290nmの波長光を使用する。」 エ 「【0013】 本発明において、測定に使用する光源は、200~400nmの紫外光を放出できる紫外光ランプ(光源)なら特に限定されないが、重水素ランプ、Hg-Xeランプなどが好ましい。また分光器は、プリズムもしくは回折格子を利用するものであれば良く、検出器は、シリコンフォトダイオードまたは光電子増倍管を用い、また検出方法は、透過光方式であれば、シングルビーム方式でもダブルビーム方式でも良い。」 オ 「【0017】 実施例1、2 図1は、本発明のF2ガス濃度測定装置の概略図(ダブルビーム方式)である。測定方法は、試料ガスをガス精製機1に通し、圧力計2で圧力を測定しながら試料用ガスセル3にガスを導入して測定を行う。導入したガスは調圧しながら流通させてもよいし、ガスを封入した状態で測定し、測定終了後にガスを排気して再度ガスを封入する方法で測定しても良い。測定は紫外光を分光器6で分光しセルを通過した光を光電子増倍管8で検出した。」 カ 「【0018】 F2とN2を混合し、色々な濃度のN2希釈F2ガスを作成し、紫外光に対する吸光度とF2ガス分圧(濃度)との相関を調べた。希釈F2ガスのサンプルセル内への導入圧力は0.1MPa、ガスセル温度は28℃に制御した。また、シングルビームの場合、温度が大きく変化すると光量が変わり測定値の分布が大きくなる可能性があるので、実験室内温度は25℃に調整した。装置は、光源として重水素ランプ、分光器としては回折格子を用いた。測光方式はシングルビーム方式とダブルビーム方式の両方で行った。このシステムで検出される284nmの吸光度とガス圧力との関係の測定結果を表1、表2に示した。得られた測定結果を最小自乗法で計算し、相関係数を算出したところ、約1(シングルビーム方式:0.999、ダブルビーム方式:0.999)と非常に良い直線関係が得られた。このことは、他の手法では得られないほど精度の良い検量線を作成でき、測定の信頼性が高いことを意味している。」 キ 図1 「 [図:0001437245000001.jpg] 」 ク 段落【0008】には、「ガスセルに紫外光を照射し」と記載されており、段落【0017】には、「セルを通過した光を光電子増倍管8で検出した」と記載されており、また、図1には、光源部5からの紫外光を分光器6を介して試料用ガスセル3に入射させ、当該試料用ガスセル3から出射した光を検出器7の光電子増倍管8に導く点が図示されている。 そうすると、引用文献1に記載の測定装置におけるセルは、「紫外光をセル内に導入する入射部分」及び「通過した光をセル外に導出する出射部分」を有するものであるといえる。 (2) 引用文献3に記載された発明 上記ア~カの記載事項及び図面、クの認定事項を総合すると、引用文献3には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「 F2ガスを充填したガスセルに紫外光を照射し吸収スペクトルを測定するF2ガス濃度の測定装置において、(【0008】、【0001】) F2とN2を混合し、N2希釈F2ガスを作成し、試料ガスをガス精製機1に通し、圧力計2で圧力を測定しながら試料用ガスセル3にガスを導入して測定を行い、(【0018】、【0017】) 測定に使用する光源は、波長が200~400nmの紫外光を放出できる紫外光ランプ(光源)であり、重水素ランプなどが好ましく、(【0013】)、 測定は紫外光を分光器6で分光しセルを通過した光を光電子増倍管8で検出し、(【0017】) セルは紫外光をセル内に導入する入射部分と、通過した光をセル外に導出する出射部分を有し、 紫外光としては、280~290nmの波長光を使用し、(【0010】)、 284nmの吸光度とガス圧力との関係を検出する(【0018】) F2ガス濃度の測定装置。(【0001】) 」 2 周知技術を示す文献 (1) 周知文献1の記載 本願の優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由で、周知技術を示す文献である引用文献2として引用された特開平7-128229号公報(以下「周知文献1」という。)には図面とともに次の記載がある。 ア 「【0002】 【従来の技術】 (1)ガス濃度測定 従来、有機溶剤のガス濃度を計測する方法としては赤外吸光度式ガス濃度センサや半導体式ガス濃度センサが一般的であり、広く利用されてきている。通常ガス濃度計測においては、物質(気体、液体、固対すべて)が分子内の原子の結合により特定の波長で光を吸収をする事を利用して行っている。紫外光域における吸収は電子エネルギーの変化に起因する吸収であることが多く、紫外吸収スペクトルを調べることにより不飽和結合、共役系の結合を持つものの分析に利用されている。また赤外光域における吸収は分子内の原子振動により生じ、 2.5~25μmの範囲に現れる。赤外吸収スペクトルを調べることにより官能基の定性分析や化合物の同定に利用されている。」 イ 「【0003】 ガス濃度計測ではこの性質を利用して、対象のガスの吸光特性にあわせた単波長だけの光が分光器(光学バンドパスフィルタ(BPF)や回析格子等)により選択して照射するか、干渉系を通した光を照射して、その吸収量を計測している。紫外光域においても赤外光域においても、光の吸収がランバート・ビア(Lambart-beer) の法則に従う事を利用してガス濃度を求めている。対象ガスの濃度を精度良く計測する為には、共存ガス、特に大気中の窒素や酸素、炭酸ガス、水蒸気等による吸収が少なく、対象のガスだけに吸収される波長を用いて吸光度計測を行う必要がある。またパークロロエチレンの紫外光域から赤外光域までの透過率スペクトル特性を図3に示す。これから確認できる様にパークロロエチレンはC-CL,C=Cによる吸収が紫外光域においては0.35μm以下、赤外光域においては10.6~13.5μmに現れており、パークロロエチレンの定量分析を行う場合一般に赤外光域の吸収波長が選ばれる。」 (2) 周知文献2の記載 本願の優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由で、周知技術を示す文献である引用文献5として引用された国際公開第2021/182279号(以下「周知文献2」という。)には、図面とともに次の記載がある。 ア 「【0003】 この種の濃度測定装置では、ガスが流れる測定セルに光源からの所定波長の光を入射させ、測定セルを通過した透過光を受光素子で受光することによって吸光度を測定する。また、測定した吸光度から、ランベルト・ベールの法則に基づいて測定ガスの濃度を求めることができる(例えば、特許文献1~3)。」 イ 「【0038】 そこで、本実施形態の電気ユニット20においては、光源22にバンドパスフィルタ(以下、BPFと記載することがある)30を設けている。図1に示すように、BPF30は、各発光素子23a、23bの前にそれぞれ配置されている。本実施形態では、BPF30は、BPF固定用カプラを用いて固定されており、必要に応じてBPF30を交換することができる。BPF30としては、例えば、シグマ光機社製のものを用いることができる。 【0039】 バンドパスフィルタ30は、発光素子23a、23bのピーク波長から離れた波長の成分を減衰させるように作用する。バンドパスフィルタ30を通過した光のスペクトルは、より急峻となり、その半値幅(例えばFWHM(Full Width at Half Maximum))の値は、より小さくなる。」 (3) 周知文献3の記載 上記周知文献1及び2に加えて、原査定の周知技術を示す文献として、周知文献3(特表2017―532535号公報)を念のため追加する。 周知文献3には、図面とともに次の記載がある。 ア 「【0021】 本発明に係る装置は、先行技術における1つ以上の短所を克服し、流体中のイオン、分子、または原子の濃度を測定できる。本発明に係る装置は、光源としての固体発光部材(例えば、発光ダイオード(LED)またはレーザダイオード(LD)の形態における固体発光装置)を含み、流体中のイオン、分子、または原子の濃度を測定するために240nmより小さい波長の光の透過率の測定結果を用いる。当該装置は、水中の硝酸イオン濃度の測定に使用されてもよい。 【0022】 駆動中、光源から放射された強度P1の光は検体に入射し、光検出手段により透過光の強度P2が測定される。光の透過率P2/P1から、イオン、分子または、原子(以降、「対象物」とよぶ)による光の吸光度が測定可能となり、対象物の濃度は、ランベルト・ベールの法則を用いて決定され得る。任意ではあるが、強度P1は第2光検出手段により測定されてもよい。」 イ 「【0035】 本発明に係るセンサ装置は、従来技術のセンサの短所を克服しつつ、流体内のイオンまたは分子の濃度を測定することができる。本発明に係るセンサ装置は、固体発光部品(例えば、発光ダイオード(LED)またはレーザダイオード(LD))を光源として備え、240nm未満の波長λを有する光の透過率の測定値を用いて、流体内に存在するイオンまたは分子の濃度を測定する。上記装置は、水中の硝酸イオン濃度を測定するのに用いてもよい。 【0036】 本発明の一態様に係る例示的なセンサ装置を図2に示す。上記センサ装置は、検体2中の対象物1の濃度を測定するよう構成されている。対象物1は、一または複数種類のイオン、分子、原子、またはそれらの任意の組み合わせでよい。光源3は固体発光素子4(固体発光装置とも称する)を有し、240nm未満の一または複数の波長を有する光5を発し、当該波長は少なくともその一部が対象物1に吸収される。光源の発した光5の一部またはすべてが検体2に入射し、検体2内を伝搬する。検体に入射する光を入射光6と称し、強度P1を有する。当該光は検体の判明した距離Lを伝搬する。上記光の一部は、検体2内に存在する任意の対象物1に吸収される。検体2内を伝搬し終えると、上記光は透過光8と称され、強度P2を有する。透過光8は第1光検出手段9に入射し、第1光検出手段9を用いて透過光8の強度を測定する(光源3および第1光検出手段9を第1センシング素子と称してもよい)。P1およびP2の値を用いて、光の透過率(P2/P1)を測定し、それによって、検体内の対象物による入射光6の吸光度を測定してもよい。それから、当該吸光度から、検体内の対象物の濃度を計算してもよい。すべての部材間での光の結合は、自由空間伝搬によって行ってもよいし、レンズのようなビーム成形手段によって行ってもよい。 【0037】 光6の波長において実質的に透過性の二つの窓10および11(例えば、各窓は光の少なくとも10%、好ましくは少なくとも50%を透過する)のあいだに検体2を任意で配置し、入射光6が結合して、検体の判明した距離Lだけ通過するようにしてもよい。検体2は流体(例えば、液体または気体)である。例えば、検体は水でもよい。 ウ 「【0052】 この問題を解決するため、本発明の一態様では、光源3の発した光5の中心波長を、光源の動作条件の変動に対して安定させる。本発明の一態様によれば、これを実現しうるものとしては、以下に掲げるもののうち一つまたはそれらの任意の組み合わせが考えられるが、これらに限定されるものではない。 1)光学波長安定素子24の使用。波長安定素子24は、固体発光素子4の発した光の中心波長が、動作条件の変動により変動するのを低減する。例えば、波長安定素子は、表面回折格子、ボリュームブラッグ格子、他の回折格子、あるいは固体発光素子4の発した光の一部を固体発光素子4に戻し固体発光素子4が特定波長を発光するのを優先的に促進する2色性ミラーでよく、それにより、動作条件が変化するときの発光波長の変化を、波長安定素子がない場合に比べて低減する。例えば、固体発光素子4がレーザダイオードを備えており、波長安定素子24が表面回折格子である場合、当該表面回折光子を用いて外部共振器型ダイオードレーザ(例えば、リトロウ型またはリットマン・メトカーフ型)を構成してもよい。これは、図2に概略的に示される、例示的な構成である。レンズのような光学素子を、固体発光素子4と波長安定素子24のあいだに配置してもよい(この光学素子は図2には示していない)。波長安定素子24は、図2の例のように、必ずしも固体発光素子4と検体2のあいだに配置しなければならないわけではない。 2)任意の温度制御手段25の使用。温度制御手段25は、固体発光素子4の温度を特定範囲内に保ち、それにより、固体発光素子の発した光の波長が動作条件の変化により変動するのを低減する。例えば、固体発光素子4の温度を中心温度から±1°Cの特定範囲内に保ってもよく、それにより、周辺温度および/または固体発光素子4に供給される電流が変動する際の発光の波長の変動が、温度制御手段25がない場合より低減される。温度制御手段25は、任意のコントローラ23から制御入力を受け取ってもよい。図2に概略的に示す例示的な構成は、温度制御手段25を含む。 3)光学波長フィルタ26の使用。波長フィルタ26は、ある範囲内の一つ以上の波長を有する光を、その範囲外の波長よりもよく透過する。したがって、固体発光素子の発した光の波長が動作条件の変化により変化した場合でも、フィルタ内を伝搬した光の波長の変動を低減する。適切な波長フィルタの例としては、バンドパスフィルタ、ショートパスフィルタ、ロングパスフィルタ、回折格子、およびプリズムが挙げられる。」 エ 図2 「 [図:0001437245000002.jpg] 」 (4)周知技術 上記(1)~(3)の記載事項に例示されるように、以下の技術的事項は、本願優先日前における周知技術であると認められる(以下「周知技術1」という。)。 なお、(1)で示したとおり、周知文献1には「単波長」と記載されているところ、この単波長とは、一般的な分光器の特性上、そのピーク波長を中心に非常に狭い半値幅(波長帯)を持つものとして把握されるものであることは、技術常識に照らして明らかである。 「ガス濃度測定装置において、光源に、分光器として、バンドパスフィルタを設けること、及び、バンドパスフィルタ、回折格子等を適宜に選択して設けて、特定の光の波長又は波長帯を選択して照射すること。」 第6 対比 本願発明と引用発明とを対比する。 1 構成Aについて 引用発明は、「F2ガスを充填したガスセルに紫外光を照射し吸収スペクトルを測定するF2ガス濃度の測定装置において、F2とN2を混合し、N2希釈F2ガスを作成し、試料ガスをガス精製機1に通し、圧力計2で圧力を測定しながら試料用ガスセル3にガスを導入して測定を行い、導入したガスは調圧しながら流通させ、測定に使用する光源は、200~400nmの紫外光を放出できる紫外光ランプ(光源)であり、重水素ランプなどが好ましく、測定は紫外光を分光器6で分光しセルを通過した光を光電子増倍管8で検出」するものである。 ここで、引用発明の「F2」、「N2」、「N2希釈F2ガス」及び「試料ガス」、「試料用ガスセル3」は、それぞれ本願発明の「測定対象成分」、「キャリアガス」、「測定対象ガス」、「セル」に相当する。 そして、引用発明は、「試料ガスを」「試料用ガスセル3にガスを導入し」、「流通させ」るから、引用発明は、本願発明の「測定対象成分とキャリアガスとを含む測定対象ガス」が「通流」する「セル」を含む。 また、引用発明の「200~400nmの紫外光を放出できる紫外光ランプ(光源)」は、本願発明の「波長が115nm以上320nm以下の紫外光」を放出する「光源」に相当し、引用発明は、当該「紫外光を」「ガスセルに」「照射」するから、本願発明の「セルに、波長が115nm以上320nm以下の紫外光を照射する光源」を含む。 さらに、引用発明は、「セルを通過した光を光電子増倍管8で検出」するから、当該「光」は「セル」内の「測定対象ガス」を「透過」することは明らかである。 また、引用発明の「光電子増倍管」は、本願発明の「受光器」に相当し、当該「光電子増倍管」は、「セルを通過した光」を「検出」するから、「透過光」を「受光」していることは明らかであり、前記「透過」した「光」の強さを「検出」することも明らかであるから、引用発明は、本願発明の「前記測定対象ガスを透過した前記紫外光の透過光を受光して前記透過光の強さを検出する受光器」を含むものである。 2 構成Bについて 引用発明は、「測定は紫外光を分光器6で分光しセルを通過した光を光電子増倍管8で検出」するものである。 ここで、当該「紫外光」は、「光源」から発出されるものであるから、当該「分光器6」は「光源」と「光電子増倍管8」の間にあり、また、当該紫外光の光路上に配置されることは明らかである。 そして、当該「分光器6」は、本願発明の「光学フィルタ」に相当するから、引用発明は、本願発明の「前記光源と前記受光器との間における、前記紫外光の光路上に配置された光学フィルタ」を含むものである。 3 構成Cについて 引用発明は、「セルは紫外光をセル内に導入する入射部分と、通過した光をセル外に導出する出射部分を有」するものである。 そして、引用発明の「入射部分」、「出射部分」は、それぞれ本願発明の「入射部」、「出射部」に相当するから、引用発明は、本願発明の「前記セルは、前記紫外光を前記セル内に導入する入射部と、前記透過光を前記セル外に導出する出射部と、を有」するという構成を備える。 4 構成Eについて 引用発明は、「測定は紫外光を分光器6で分光しセルを通過した光を光電子増倍管8で検出し」「紫外光としては、280~290nmの波長光を使用」するものである。 ここで、引用発明は、「紫外光を分光器6で分光しセル」に入射させるから、「分光器6」は「セル」の「入射部分」に配置されることは明らかである。 また、引用発明の「280~290nmの波長光を使用」について、「280~290nm」の全ての波長を含む波長帯であるかどうかは必ずしも明らかではないが、一般的な分光器の特性上、分光された光はピーク波長を中心に波長に幅がある「波長帯」を持つものとして把握されるものであることは技術常識であり、その使用波長は幅を有する波長帯であるから、引用発明の上記「280~290nmの波長光」は、本願発明の「紫外光における特定の波長帯」に相当する。 そして、引用発明の「分光器6」は、当該「波長帯のみを選択して透過」させることは明らかであり、当該「分光器6」は、本願発明の「フィルタ」に相当する。 してみると、引用発明は、本願発明の「前記光学フィルタは、前記入射部及び前記出射部の少なくとも一方に配置され、前記紫外光における特定の波長帯のみを選択して透過させる」「フィルタであ」る構成を備えるといえる。 5 構成Fについて 引用発明は、「紫外光としては、280~290nmの波長光を使用し、284nmの吸光度とガス圧力との関係を検出する」ものである。 ここで、引用発明の「284nmの吸光度」とは、ガス濃度測定装置において使用する紫外線領域において、測定対象ガスであるF2が一般に284nmを中心波長として吸収極大を持つことを踏まえると、当該「284nm」は本願発明の「測定対象成分の吸収波長」に相当する。 そして、上記4で述べたように、引用発明の「280~290nmの波長」は、本願発明の「特定の波長帯」に相当し、当該「280~290nm」は、「284nm」を含むことは明らかである。 してみると、引用発明は、本願発明の「前記特定の波長帯は、少なくとも前記測定対象成分の吸収波長を含」むとの構成を備えるといえる。 6 構成Gについて 引用発明は、「測定は紫外光を分光器6で分光しセルを通過した光を光電子増倍管8で検出」する「F2ガス濃度の測定装置」である。 ここで、1で述べたように、引用発明の「光電子増倍管8」は、本願発明の「受光器」に相当する。 そして、「光電子増倍管」は、検出光を分光せずに、光の強さを検出する検出器であることは明らかである。 また、引用発明の「F2ガス濃度の測定装置」は、本願発明の「ガス濃度測定器」に相当するから、引用発明は、本願発明の「前記受光器は、分光せずに前記透過光の強さを検出するガス濃度測定器」に相当する事項を有するといえる。 7 一致点、相違点 上記1~6のとおりであるから、本願発明と引用発明とは、下記(1)の点で一致し、下記(2)の点で相違する。 (1) 一致点 「A 測定対象成分とキャリアガスとを含む測定対象ガスが通流するセルと、 前記セルに、波長が115nm以上320nm以下の紫外光を照射する光源と、 前記測定対象ガスを透過した前記紫外光の透過光を受光して前記透過光の強さを検出する受光器と、 B 前記光源と前記受光器との間における、前記紫外光の光路上に配置された光学フィルタ と、を備え、 C 前記セルは、 前記紫外光を前記セル内に導入する入射部と、 前記透過光を前記セル外に導出する出射部と、を有し、 E’ 前記光学フィルタは、 前記入射部及び前記出射部の少なくとも一方に配置され、 前記紫外光における特定の波長帯のみを選択して透過させるフィルタであり、 F 前記特定の波長帯は、少なくとも前記測定対象成分の吸収波長を含み、 G 前記受光器は、分光せずに前記透過光の強さを検出するガス濃度測定器。 」 (2) 相違点1(構成Dについて) 光源の紫外光が、本願発明では、「半値幅が50nm以上の連続スペクトルであ」るのに対し、引用発明の光源の紫外光は、そのような特定がされていない点。 (3) 相違点2(構成Eについて) 光学フィルタが、本願発明では、「バンドパスフィルタ」であるのに対し、引用発明では、分光器である点。 第7 判断 1 相違点について (1) 相違点1 引用発明は、「紫外光ランプ(光源)」が「重水素ランプなどが好まし」いものである。 そして、重水素ランプの紫外光はブロードな連続スペクトルであり、スペクトル半値幅が50nm以上であることは技術常識であるから、相違点1は実質的な相違点ではない。 (2) 相違点2 引用発明において、セルを照射する特定の波長帯のみを選択する光学フィルタは「分光器」と特定され、具体的には、上記引用文献3の【0018】に記載されているとおり「回折格子」を使用しているものの、上記第5の2(4)に記載した周知技術1のとおり、光学フィルタとしてバンドパスフィルタを設けること、及び、バンドパスフィルタと回折格子は適宜に選択して設けられるものであり、同等の機能を有する相互に代替可能な分光手段であることから、引用発明における光学フィルタとしてバンドパスフィルタを採用することは、当業者において設計事項にすぎない。また、引用文献3における光学フィルタとしての「分光器」は、特定の波長を選択する機能を発揮する部材として設けられたものであり、特定の波長を選択する同等の機能を有する分光手段である「バンドパスフィルタ」を、引用発明の光学フィルタとして採用したことにより想定される弊害を示唆する記載もない。 (3)よって、引用発明及び周知技術1に基づいて、本願発明の相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 2 効果について 本願発明により奏される効果も、引用発明及び周知技術1から当業者が予測し得るものであり、格別顕著なものではない。 3 まとめ 以上より、本願発明は、引用発明及び周知技術1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4 請求人の主張について 請求人は、令和 7年 8月 1日提出の審判請求書において、縷々主張されているが、その主張内容の肝要な部分は、以下の4点にあるものといえる。すなわち、 「引用文献3は、「分光器6」において284nmの単波長(輝線)の紫外光を抽出して284nmの吸光度を測定する場合のみを引用発明3として開示しています。これらの開示が、単波長ではない波長をバンドパスフィルタで選択して透過させること(相違点2)を示唆しているはずがありません。」(審判請求書第4.3(2)記載)(主張1)、「引用文献2の開示からは、例えばバンドパスフィルタをどこに配置するのかに係る技術的事項を把握することもできません。…引用文献5は、セルにバンドパスフィルタを配置する発明(相違点3)を開示も示唆もしていません。」(審判請求書第4.3(2)記載)(主張2)、「引用文献3の段落0008には、引用発明3に係る測定装置が「少なくとも、該筒状部材料からなるガス通気管を具備したガスセル、紫外光ランプ、分光器、検出器、ガスセルに入るF2ガスを精製するための薬剤充填管、ガスセルや薬剤充填管内を洗浄するための真空ポンプ、また迷光が入らないようにガスセル、分光器、検出器、光源を外部光と遮蔽するためのケースからなる」ものであることが記載されています。そして、「少なくとも(中略)分光器(中略)からなる」、とは、換言すれば、「分光器」は必須であるということです。」(審判請求書第4.3(4)記載)(主張3)、「引用文献3の開示にも示唆されているように、プリズムや回折格子のような「分光器6」と、バンドパスフィルタのような光学フィルタとは、当業者にとって、単純に置き換え可能と言えるものではありません。プリズムや回折格子のような分光器と、バンドパスフィルタのような光学フィルタとの置換は、一定の課題を解決するための均等物による置換と言えるものではありません。」(審判請求書第4.3(5)記載)(主張4)との主張をしているので、検討する。 (主張1)について、 請求人の主張は、引用発明は、「分光器6」において284nmのみを抽出するものであるとの判断を踏まえたものと理解するが、引用発明は、「紫外光としては、280~290nmの波長光を使用し、284nmの吸光度とガス圧力との関係を検出する」ものであり、「284nmの吸光度」とは、測定対象ガスであるF2の284nmを中心波長として吸収極大を持つ波長帯の吸光度のことを示していると認められる。 そして、第6の4で述べたように、引用発明の「紫外光としては、280~290nmの波長光を使用」について、「280~290nm」の全ての波長を含む波長帯であるかどうかは必ずしも明らかではないが、一般的な分光器の特性上、分光された光はピーク波長を中心に波長に幅がある「波長帯」を持つものとして把握されるものであることは技術常識であり、その使用波長は幅を有する波長帯であるから、「「分光器6」において284nmの単波長(輝線)の紫外光を抽出」するとの判断は、引用文献3記載の技術を技術常識を踏まえて正当に理解したものとはいえない。 (主張2)について、 第6の4で述べたように、引用発明は「紫外光を分光器6で分光しセル」に入射させるから、「分光器6」は「セル」の「入射部分」に配置されることは明らかである。 そして、第7の1(2)で述べたように、引用発明において、「光学フィルタ」として当該「分光器6」に替えて周知技術1を採用しバンドパスフィルタとする際に、「分光器6」と同様に「セル」の「入射部分」に配置することになると認められる。 (主張3、4)について 第7の1(2)で述べたように、引用発明において、「分光器」は、セルを照射する特定の波長帯のみを選択する光学フィルタとして使用されており、第5の2(4)に記載した周知技術1のとおり、光学フィルタとしてバンドパスフィルタを設けること、及び、バンドパスフィルタと回折格子は適宜に選択して設けられるものであり、同じ機能を有する相互に代替可能な分光手段であることは周知技術であるから、引用発明における光学フィルタとしての「分光器」を、特定の波長を選択するという同じ機能を有する分光手段に置換して「バンドパスフィルタ」とすることは、当業者において当然なし得る設計事項にすぎない。 よって、審判請求人の上記主張は採用できない。 第8 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2025-012150

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