特許拒絶査定不服審判
2016-010475
焦電素子モジュール及び照明制御システム
- 審判番号
- 2016-010475
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2012-104027外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年07月11日
- 審決日
- 2017年06月26日
- 公報発行日
- 2017年09月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】パナソニックIPマネジメント株式会社
- 【請求人代理人】板谷 康夫
- 分類
- P18 .121-Z (G01J) / P18 .575-Z (G01J)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第6項、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2012-104027「焦電素子モジュール及び照明制御システム」拒絶査定不服審判事件〔平成25年11月14日出願公開、特開2013-231667〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成24年4月27日を出願日とする出願であって、平成27年9月25日付けで拒絶理由が通知され、同年11月25日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成28年4月6日付けで拒絶査定されたのに対し、同年7月11日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、それと同時に手続補正(以下「本件補正」という。)がなされたものである。
第2 本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。
[理由]
1 補正後の請求項1に係る発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】
(i)焦電素子を用いて検知範囲内の人体から放射される赤外線の変化を検知する複数の焦電センサと、
(ii)複数の前記焦電センサによる検知結果に基づいて負荷を動作制御するための制御情報を送信する通信部と、
を備える焦電素子モジュールであって、
(iii)複数の前記焦電センサは、それぞれ、複数の受熱素子を有する焦電素子と、複数のレンズが単一の円弧上に配列されたマルチレンズを備えており、
(iv)複数の前記焦電センサの各々に備わる前記焦電素子は、焦電素子モジュールとしての検出方向を正面としたとき、当該焦電素子の検出方向が当該正面の軸線に対して斜めになり、かつ互いに異なる方向に配置され、複数の前記焦電素子の検出方向は、前記軸線に対して軸対称となり、複数の前記焦電素子の検知範囲が前記軸線を含んで重複しており、
(v)それによってこの焦電素子モジュールの水平方向の検知範囲が180度以上となる、 ことを特徴とする焦電素子モジュール。」
」(以下「補正発明」という。下線は補正箇所を示す。)と補正された。なお、上記請求項1の記載において、各々の発明特定事項について、当審において(i)~(v)の符号を付した。
2 補正事項について
(1)請求項1において、補正前の「複数備え」た「焦電センサ」について、「複数の前記焦電センサは、それぞれ、複数の受熱素子を有する焦電素子と、複数のレンズが単一の円弧上に配列されたマルチレンズを備え」たものと限定する。
(2)請求項1において、補正前の「検知範囲」について、「複数の前記焦電素子の検知範囲が前記軸線を含んで重複しており、それによってこの焦電素子モジュールの」水平方向の検知範囲が180度以上となることを限定する。
上記(1)及び(2)の補正事項は、いわゆる限定的減縮を目的とするものといえることから、請求項1ついての本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。
3 引用刊行物の記載事項及び引用発明
(1)本願の出願前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開2005-37320(以下「引用例」という。)には、次の事項が記載されている。なお、以下の摘記において、引用発明の認定に関連する箇所に下線を付与した。
(1ア)「【0014】
この発明の人体検出装置では、焦電型センサは、検知範囲内に人体が存在すれば、人体から放射される遠赤外線を検出して、検出対象(人体)が存在することを検知する。赤外線方式測距センサは、例えば各赤外線発光素子からそれぞれ時間をずらして赤外線を出射させる。検知範囲内の特定の方向に検出対象が存在すれば、その方向に出射された赤外線が検出対象によって反射されて、検出対象からの反射光が位置検出素子の受光面に入射する。したがって、その赤外線の出射方向に応じて検出対象が存在する方向が分かる。また、位置検出素子は、この受光面内の入射光の位置に応じて上記検出対象までの距離を表す信号を出力する。このようにして、人体の存在を検知するとともに人体までの方向と距離を知ることができる。」
(1イ)「【0027】
一実施形態の人体検知装置では、上記焦電型センサを複数個備え、これらの焦電型センサの検出範囲が互いにずらされていることを特徴とする。
【0028】
この一実施形態の人体検知装置では、上記焦電型センサを複数個備え、これらの焦電型センサの検出範囲が互いにずらされているので、全体として検出範囲が広がる。
【0029】
また、上記複数の焦電型センサの検出範囲が互いにオーバラップしているのが望ましい。その場合、検出範囲がオーバラップしている焦電型センサの出力を比較し、演算することにより、人体のおおよその位置を検知することができる。」
(1ウ)「【0060】
図7(a)は、電子機器としての空気調和機(以下「エアコン」という。)60に、上記人体検出装置1を制御部40と一体に搭載した例を示している。このエアコン60は室内へ送風Wを行う機器部61を備えている。このエアコン60では、制御部40が出力部として働いて、焦電型センサ7および測距センサ2によって検出された内容を表す人体検知信号HSを出力する。そして、制御部40が人体検知信号HSに基づいて機器部61の制御を行うので、室内(検出範囲内)における人体の存在の有無や人体までの方向と距離に応じて送風Wを制御することができる。例えば、人が存在する方向へ冷風または温風を送り、より効率的に室内の空調を行うことができる。」
(1エ)「【0065】
図9は、室内でエアコン60Bとは別の位置(壁など)に、上記人体検出装置1を制御部40′と一体に設置した例を示している。この例では、制御部40′は、出力部として、上記人体検知信号HSを赤外線または電波(符号HS′で表す。)で送信するようになっている。このようにした場合、電気ケーブルを使用することなく、人体検知信号HS′をエアコン60Bへ送ることができる。
【0066】
図10(a)は人体検出装置の変形例(符号1Aで表す。)を側方から見たところ、図10(b)はその人体検出装置1Aの内部を正面から見たところをそれぞれ模式的に示している。この人体検出装置1Aは、図3(a)(b)に示した人体検出装置1に対して、2個の焦電型センサ7-1および7-2を備えた点が異なっている。他の構成は人体検出装置1と同じである。
【0067】
図11は人体検出装置1Aの内部を上方から見たところを模式的に示している。焦電型センサ7-1は右方へ向けて、焦電型センサ7-2は左方へ向けてそれぞれ設置されている結果、それらの検出範囲A-1,A-2は上下に互いにずらされている。したがって、全体として検出範囲が広がる。また、二つの検出範囲A-1,A-2は互いにオーバラップしているので、焦電型センサ7-1,7-2の出力を比較し、演算することにより、人体のおおよその位置を検知することができる。」
(1オ)【図11】として、以下の図面が記載されている。なお、下図における軸線(点線)は、当審において追記したものである。
【図11】
上記図から、焦電型センサ7-1、7-2は、人体検出装置としての検出方向を正面としたとき、当該焦電型センサ7-1、7-2の検出方向が当該正面の軸線に対して斜めになり、かつ互いに異なる方向に配置され、当該焦電型センサ7-1、7-2の検出方向は、前記軸線に対して軸対称となり、当該焦電型センサ7-1、7-2の検知範囲が前記軸線を含んで重複していることが見て取れる。
(2)引用発明について
ア 上記摘記(1ウ)及び(1エ)には、「制御部40」と「制御部40′」、「人体検知信号HS」と「人体検知信号HS′」との記載があるが、「′」は 赤外線または電波で送信する時に「′」を付しており、実質的に同じものである。
イ してみれば、上記引用例の記載事項を総合すると、引用例には、以下の発明が記載されていると認められる。
「検知範囲内に人体が存在すれば、人体から放射される遠赤外線を検出して、検出対象(人体)が存在することを検知する複数個の焦電型センサと、測距センサとを備えた人体検出装置であって、
人体検出装置と一体に設置した制御部が、上記焦電型センサおよび測距センサによって検出された内容を表す人体検知信号をエアコンへ送信し、その人体検知信号に基づいてエアコンの機器部の制御を行う、人体検出装置において、
上記複数個の焦電型センサは、2個の焦電型センサ7-1および7-2を備え、
その焦電型センサ7-1、7-2は、人体検出装置としての検出方向を正面としたとき、当該焦電型センサ7-1、7-2の検出方向が当該正面の軸線に対して斜めになり、かつ互いに異なる方向に配置され、当該焦電型センサ7-1、7-2の検出方向は、前記軸線に対して軸対称となり、当該焦電型センサ7-1、7-2の検知範囲が前記軸線を含んで重複している、
人体検出装置。」(以下「引用発明」という。)
4 対比・判断
(1)対比
補正発明と引用発明とを対比する。
ア 補正発明の(i)の特定事項にいて
引用発明の「焦電型センサ」について、焦電型センサは焦電素子を用いて赤外線等による起電力の変化を検知するものであるから、引用発明の「検知範囲内に人体が存在すれば、人体から放射される遠赤外線を検出して、検出対象(人体)が存在することを検知する複数個の焦電型センサ」は、補正発明の「焦電素子を用いて検知範囲内の人体から放射される赤外線の変化を検知する複数の焦電センサ」に相当する。
イ 補正発明の(ii)の特定事項にいて
引用発明の「複数個の焦電型センサ」「によって検出された内容を表す人体検知信号」は、補正発明の「複数の前記焦電センサによる検知結果に基づい」た「制御情報」に相当し、引用発明の「エアコンの機器部の制御を行う」ことは、補正発明の「負荷を動作制御する」ことに相当する。
してみれば、引用発明の「複数個の焦電型センサ」「によって検出された内容を表す人体検知信号」を「エアコンの機器部の制御を行う」ために「送信」する「制御部」は、補正発明の「複数の前記焦電センサによる検知結果に基づいて負荷を動作制御するための制御情報を送信する通信部」に相当する。
ウ 補正発明の(iv)の特定事項にいて
上記アで記載したように、引用発明の「焦電型センサ」は焦電素子が備わるもので、引用発明の「焦電型センサ7-1、7-2」の各々に焦電素子が備わるものであるから、「焦電型センサ7-1、7-2」の各々に備わる焦電素子は、「人体検出装置としての検出方向を正面としたとき、当該焦電型センサ7-1、7-2の」各々に備わる焦電素子の「検出方向が当該正面の軸線に対して斜めになり、かつ互いに異なる方向に配置され、当該焦電型センサ7-1、7-2の」各々に備わる焦電素子の「検出方向は、前記軸線に対して軸対称となり、当該焦電型センサ7-1、7-2の」各々に備わる焦電素子の「検知範囲が前記軸線を含んで重複している」ことになる。
してみれば、引用発明の「上記複数個の焦電型センサは、2個の焦電型センサ7-1および7-2を備え、その焦電型センサ7-1、7-2は、人体検出装置としての検出方向を正面としたとき、当該焦電型センサ7-1、7-2の検出方向が当該正面の軸線に対して斜めになり、かつ互いに異なる方向に配置され、当該焦電型センサ7-1、7-2の検出方向は、前記軸線に対して軸対称となり、当該焦電型センサ7-1、7-2の検知範囲が前記軸線を含んで重複している」ことは、補正発明の「複数の前記焦電センサの各々に備わる前記焦電素子は、焦電素子モジュールとしての検出方向を正面としたとき、当該焦電素子の検出方向が当該正面の軸線に対して斜めになり、かつ互いに異なる方向に配置され、複数の前記焦電素子の検出方向は、前記軸線に対して軸対称となり、複数の前記焦電素子の検知範囲が前記軸線を含んで重複して」いることに相当する。
エ そして、引用発明の「焦電型センサ」「を備えた人体検出装置」は、焦電素子を備えた装置であるから、補正発明の「焦電素子モジュール」に相当する。
してみれば、補正発明と引用発明とは、
(一致点)
「(i)焦電素子を用いて検知範囲内の人体から放射される赤外線の変化を検知する複数の焦電センサと、
(ii)複数の前記焦電センサによる検知結果に基づいて負荷を動作制御するための制御情報を送信する通信部と、
を備える焦電素子モジュールであって、
(iv)複数の前記焦電センサの各々に備わる前記焦電素子は、焦電素子モジュールとしての検出方向を正面としたとき、当該焦電素子の検出方向が当該正面の軸線に対して斜めになり、かつ互いに異なる方向に配置され、複数の前記焦電素子の検出方向は、前記軸線に対して軸対称となり、複数の前記焦電素子の検知範囲が前記軸線を含んで重複している、
焦電素子モジュール。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点1)
複数の焦電センサが、補正発明では、「それぞれ、複数の受熱素子を有する焦電素子と、複数のレンズが単一の円弧上に配列されたマルチレンズを備えて」いるのに対し、引用発明では、そのようなものか不明である点。
(相違点2)
焦電素子モジュールの水平方向の検知範囲が、補正発明では「180度以上」であるのに対し、引用発明では、何度であるのか不明である点。
(2)当審の判断
ア 相違点1についての検討
赤外線による人体検知用焦電センサにおいて、人体の検知を向上させるために、焦電素子を複数の受熱素子を有するものとすること(例えば、特開平7-120316号公報の【0011】及び【図3】参照。なお、この点は、本願明細書の【0004】にも本出願前広く使用されている技術であることとして記載されている。)、そして、赤外線の集光性を向上させるために、複数のレンズが単一の円弧上に配列されたマルチレンズを備えたものとすること(例えば、同公報の【0010】及び【図2】参照。)は本出願前周知技術であることに鑑み、引用発明の「複数個の焦電型センサ」においても、人体の検知を向上させるという動機のもと、「それぞれ、複数の受熱素子を有する焦電素子と、複数のレンズが単一の円弧上に配列されたマルチレンズを備え」るようにすることは当業者が容易になし得たことである。
イ 相違点2についての検討
引用発明の「人体検出装置」について、摘記(1ウ)に、室内(検出範囲内)における人体の存在の有無を検出すること、そして、摘記(1エ)にはエアコンとは別の位置(壁など)に設置することが記載されており、より広い範囲にわたって人体の存在を検出する動機があることから、引用発明において、人体検出装置の水平方向の検知範囲を「180度以上」とすることは当業者が容易になし得たことである。
ウ 補正発明の効果について
補正発明の効果として、本願明細書には「【発明の効果】
【0014】本発明に係る焦電素子モジュールによれば、複数の焦電センサに備わる複数の焦電素子は、焦電素子モジュールとしての検出方向の正面の軸線に対して斜めになり、かつ互いに異なる方向に配置される。この構成により、焦電素子モジュールは、正面方向から人が進入してくる場合でも、高感度での人検知を可能とする。」と記載されているが、引用発明において「焦電型センサ7-1、7-2は、人体検出装置としての検出方向を正面としたとき、当該焦電型センサ7-1、7-2の検出方向が当該正面の軸線に対して斜めになり、かつ互いに異なる方向に配置され」る構成となっている以上、引用発明においても、正面方向から人が進入してくる場合でも高感度での人検知が可能となっているといえ、上記補正発明の効果は、引用発明において奏し得る効果であることから、格別顕著なものとはいえない。
(3)小括
したがって、補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
5 まとめ
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1~3に係る発明は、平成27年11月25日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】
焦電素子を用いて検知範囲内の人体から放射される赤外線の変化を検知する焦電センサと、前記焦電センサによる検知結果に基づいて負荷を動作制御するための制御情報を送信する通信部と、を備える焦電素子モジュールであって、
前記焦電センサを複数備え、
前記焦電センサの各々に備わる焦電素子は、焦電素子モジュールとしての検出方向を正面としたとき、当該焦電素子の検出方向が当該正面の軸線に対して斜めになり、かつ互いに異なる方向に配置され、
複数の前記焦電素子の検出方向は、前記軸線に対して軸対称となり、
水平方向の検知範囲が180度以上となる、ことを特徴とする焦電素子モジュール。」
2 引用刊行物及びその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である上記引用例の記載事項は、上記第2の3に記載したとおりである。
3 対比・判断
上記第2の2で記載したとおり、本願発明は、補正発明の上記焦電センサについての限定(上記第2の2(1)参照)及び上記検知範囲についての限定(上記第2の2(2)参照)を省いた発明である。その補正発明が、前記第2の4で記載したとおり、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである以上、本願発明も、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その余の請求項に係る発明について言及するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり、審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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