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特許拒絶査定不服審判

2021-004667

毛髪繊維を処理するための製剤の組成の計算

審判番号
2021-004667
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-512621
請求日
2021年04月09日
審決日
2022年07月19日
公報発行日
2023年01月27日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】ウエラ オペレーションズ ユーエス,エルエルシー
  • 【請求人代理人】高岡 亮一
  • 【請求人代理人】小田 直
  • 【請求人代理人】岩堀 明代
  • 【請求人代理人】三好 玲奈
  • 【請求人代理人】高橋 香元
審判長/審判官
  • 審判長 石井 哲
  • 審判官 福島 浩司
  • 審判官 伊藤 幸仙
分類
P18 .121-Z (G01J) / P18 .575-Z (G01J)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2019-512621「毛髪繊維を処理するための製剤の組成の計算」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 3月22日国際公開、WO2018/053266、令和 1年10月17日国内公表、特表2019-529888〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、2017年(平成29年)9月15日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2016年9月16日 欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、令和2年2月27日付けで拒絶理由が通知され、同年8月18日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年12月8日付けで拒絶査定されたところ、令和3年4月9日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。 第2 令和3年4月9日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和3年4月9日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について (1)本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。) 「【請求項1】 毛髪繊維を処理するための製剤の組成を計算する方法であって、 毛髪繊維の第1の画像を取得することと、 前記第1の画像に基づいて、前記毛髪繊維の所望の外観を示す修正画像を作成することと、 前記修正画像及び前記修正画像を作成するために前記第1の画像に対して行われた修正のうちの少なくとも1つに基づいて、目標仕様を導出することであって、前記目標仕様は、前記毛髪繊維の前記所望の外観を定義する1つ以上の数値パラメータを含む、該導出することと、 製剤の組成を、前記製剤によって処理されたときの前記毛髪繊維の予測される外観に関係付ける、第1の計算モデルを提供することと、 前記第1の計算モデル及び前記目標仕様を使用して、前記毛髪繊維が前記製剤で処理される場合に、前記所望の外観に類似又は同様の外観を生成することが予測される前記製剤の組成を計算することと、 を含み、前記第1の画像に対して、前記修正画像を作成することは、 光と毛髪繊維との相互作用を記述する第2の計算モデルを提供することと、 前記第1の画像について、前記第1の画像内の前記毛髪繊維を記述する第1の毛髪繊維光学パラメータのセットを取得することと、 複数の修正された毛髪繊維を記述する第2の毛髪繊維光学パラメータのセットを生成するために、前記第1の毛髪光学パラメータのセットを修正することと、 前記第2の計算モデル及び前記第2の毛髪繊維光学パラメータのセットを使用して、光が前記修正された毛髪繊維とどのように相互作用するかをシミュレートすることと、 前記シミュレーションの結果に基づいて、前記修正された毛髪繊維の前記外観を示す第1の合成画像をレンダリングすることと、 前記第1の合成画像を前記修正画像として提供することと、 を含み、 前記第1の計算モデルは、 毛髪繊維への製剤の物質輸送を記述する計算構成要素と、 製剤中の化学種の時間依存性濃度を前記製剤の初期組成に関係付ける計算構成要素と、 毛髪繊維中の化学種の時間性依存濃度を前記製剤中の化学種の時間依存性濃度に関係付ける計算構成要素と、 化学種の濃度を毛髪繊維の反射スペクトルに関係付ける計算構成要素と、 のうちの少なくとも1つ、又は2つ以上の任意の組み合わせを含むことを特徴とする方法。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の、令和2年8月18日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。 「【請求項1】 毛髪繊維を処理するための製剤の組成を計算する方法であって、 毛髪繊維の第1の画像を取得することと、 前記第1の画像に基づいて、前記毛髪繊維の所望の外観を示す修正画像を作成することと、 前記修正画像及び前記修正画像を作成するために前記第1の画像に対して行われた修正のうちの少なくとも1つに基づいて、目標仕様を導出することであって、前記目標仕様は、前記毛髪繊維の前記所望の外観を定義する1つ以上の数値パラメータを含む、該導出することと、 製剤の組成を、前記製剤によって処理されたときの前記毛髪繊維の予測される外観に関係付ける、第1の計算モデルを提供することと、 前記第1の計算モデル及び前記目標仕様を使用して、前記毛髪繊維が前記製剤で処理される場合に、前記所望の外観に類似又は同様の外観を生成することが予測される前記製剤の組成を計算することと、 を含み、前記第1の画像に対して、前記修正画像を作成することは、 光と毛髪繊維との相互作用を記述する第2の計算モデルを提供することと、 前記第1の画像について、前記第1の画像内の前記毛髪繊維を記述する第1の毛髪繊維光学パラメータのセットを取得することと、 複数の修正された毛髪繊維を記述する第2の毛髪繊維光学パラメータのセットを生成するために、前記第1の毛髪光学パラメータのセットを修正することと、 前記第2の計算モデル及び前記第2の毛髪繊維光学パラメータのセットを使用して、光が前記修正された毛髪繊維とどのように相互作用するかをシミュレートすることと、 前記シミュレーションの結果に基づいて、前記修正された毛髪繊維の前記外観を示す第1の合成画像をレンダリングすることと、 前記第1の合成画像を前記修正画像として提供することと、 を含むことを特徴とする方法。」 2 補正の適否 本件補正は、請求項1に記載された発明の「第1の計算モデル」は、「毛髪繊維への製剤の物質輸送を記述する計算構成要素と、製剤中の化学種の時間依存性濃度を前記製剤の初期組成に関係付ける計算構成要素と、毛髪繊維中の化学種の時間性依存濃度を前記製剤中の化学種の時間依存性濃度に関係付ける計算構成要素と、化学種の濃度を毛髪繊維の反射スペクトルに関係付ける計算構成要素と、のうちの少なくとも1つ、又は2つ以上の任意の組み合わせを含む」旨の限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。 (2)引用文献の記載事項 ア 引用文献1 (ア)引用文献1に記載された事項 原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特表2014-510099号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。 (引1a)「【0242】 I.ケラチン繊維の処理の結果の予測: ここで、所定の毛髪着色レシピ(所定の組成物)を使用する毛髪着色操作の結果を予測する例示的方法を表す図18を参照する。このような方法は、あらゆるケラチン繊維のあらゆる処理の結果を予測するために、利用可能である。 【0243】 「レシピ」の用語は、本明細書において、所定の濃度の、着色剤、アルカリ化剤、増粘剤および/もしくは酸化剤などの、活性剤を有する、ならびに/または、これらの薬剤の各々もしくは組成物全体を適用する所定の条件を有する、着色組成物を規定するために使用される。 【0244】 ステージS1において、一般には分光器を使用して、対象者の毛髪の初期スペクトルを得る。 【0245】 ステージS2において、この方法は、初期スペクトルから、ケラチン、ユーメラニン、フェオメラニンの初期濃度に加えて、毛髪の表面成分から反射された光(正反射および拡散反射の双方)および毛髪の直径およびキューティクルの状態の見積もりを含む、初期サウンダーソン係数を計算する。 【0246】 ステージS3において、この方法は、レシピから、アルカリ化剤濃度、酸化剤濃度、温度、溶液の粘度、毛髪の直径、キューティクル状態および曝露期間についての、染色過程に関する因子を得る。 【0247】 これらの因子は、ケラチン、ユーメラニン、フェオメラニン、人工色素の変更後濃度、およびサウンダーソン係数の変更後の値を決定するために、化学反応速度式で使用される。毛髪の損傷も評価される。 【0248】 ステージS4において、色付与剤(たとえば、染料物質)濃度因子を提供するためにレシピが使用され、色付与剤物質濃度は、毛髪中の人工着色剤の最終濃度を決定するために、アルカリ化剤濃度、酸化剤(たとえば、過酸化水素)濃度、温度、粘度、毛髪の直径、毛髪の気孔率および曝露期間についての因子と共に使用される。 【0249】 ステージS5において、スペクトル計算過程および毛髪への損傷の評価を用いて、毛髪の最終スペクトルを予測するために、人工着色剤の最終濃度、および、ケラチン、ユーメラニン、フェオメラニン、人工色素の最終濃度、ならびに、サウンダーソン係数の最終値が、まとめて使用される。 【0250】 最終スペクトルは、そのまま使用され、あるいは、表面反射作用からの反射光(正反射および拡散反射の双方)について補正されてよい。」 (引1b)「【0417】 センサーは、短時間に多数の画像を得てよく、したがって、多重測定を行うことができる。使用者は、毛髪読み取り器を用いて毛髪を走査して、毛髪に沿う複数個所についてデータを得てよい。」 (引1c)「【0967】 タブレットの組み合わせの選択: 以下において、タブレットへの言及には、酸化剤およびアルカリ化剤の濃度、漂白時間および処理時間、ならびに着色処理の他のパラメータとともに、タブレットの組み合わせが含まれる。 【0968】 本明細書に記載のいずれの方法および装置においても、タブレットの組み合わせは、一般に、次のように実施され得る:初期色およびケラチン繊維(たとえば、毛髪)の状態を確立し、次いで、望まれるカスタマイズされた色、または個々の対象に適する他の処理を選択する。カスタマイズされた処理は、使用者が、最終色調のコレクションから、または望むとおりに、選択することができる。システムは、次に、顧客が望む繊維の処理に、組み合わせにおいて適するタブレットの量を決定することになる。 【0969】 前記初期色の確立には、初期反射スペクトルの測定が含まれてよい。カスタマイズされた色の選択には、カスタマイズされた色の反射スペクトルを決定することが含まれてよく、両反射スペクトルは個別に色座標表現に変換されてよい。 【0970】 使用するタブレットの量は、初期反射スペクトルに、1つの基本色調の1つのタブレットの正または負の寄与を加えて、中間の計算色座標表現を得ることによって決定してよい。次いで、中間の計算色と所望の色との色座標表現の差が最小になるまで、同じまたは異なる基本色調のタブレットについてその計算を繰り返してよい。 【0971】 決定は、アルカリ化剤、酸化剤または増粘剤などの活性剤の、計算色座標表現への、正および/または負の寄与を考慮して行ってよい。 【0972】 選択は、ケラチン繊維の個々の特徴の寄与に基づいてなされてよい。 【0973】 選択は、コンピュータ実装システムによって行われてよい。 【0974】 測定は、光学毛髪測定装置または毛髪読み取り器によって行われてよい。毛髪読み取り器は、毛髪を照明する照明ユニット、および、照明の間に毛髪を光学的に測定する少なくとも1つのセンサーを含む測定ユニットを含んでよい。センサーおよび照明ユニットからの光束は、測定中の毛髪での光拡散角をそれぞれ規定してよく、これにより、センサーは、確実に、毛髪によって拡散または散乱された光を主として測定する。」 (引1d)「【0978】 ここで、毛髪読み取り器が色予測部に入力を提供し、次に、色予測部が、分配器を制御して、所望の色を達成するために必要な染料を分配させる、実施形態を表す簡略化したダイヤグラムである図47を参照する。 【0979】 図47において、毛髪読み取り器600は、光の正反射および散乱に特に注目して毛髪を読み取る。これは、前述のように、これらが毛髪の状態について広範な情報を提供するからである。さらに、前述のように、可視スペクトルを超えて情報が得られる。 【0980】 使用者は、ユーザ入力装置602を通じて、特定の最終結果、つまり所望の毛髪色を要求する。 【0981】 色予測システム604は、こうして、使用者の要求を受け、種々の波長での使用者の毛髪の状態についての詳細な情報を得る。これで、色予測システムは、異なる染料混合物が使用者の毛髪に適用された場合に、上述の方法を使用して、結果の色を予測することが可能になる。 【0982】 使用者の望む色を示す予測の染料混合物が見つかると、色予測モジュールは、分配器606に指示を出力して、必要なタブレットおよび媒体を分配し、その染料を調製させる。」 (イ)引用文献1に記載された発明 a 上記(引1a)より引用文献1には、「ケラチン繊維の処理の結果を予測する」方法として、以下の方法が記載されている。 「ケラチン繊維の処理の結果を予測するために、利用可能な、 所定の濃度の、着色剤、アルカリ化剤、増粘剤および/もしくは酸化剤などの、活性剤を有する、ならびに/または、これらの薬剤の各々もしくは組成物全体を適用する所定の条件を有する、着色組成物を規定する 所定の毛髪着色レシピ(所定の組成物)を使用する毛髪着色操作の結果を予測する方法において、 一般には分光器を使用して、対象者の毛髪の初期スペクトルを得るステージS1と、 初期スペクトルから、ケラチン、ユーメラニン、フェオメラニンの初期濃度に加えて、毛髪の表面成分から反射された光(正反射および拡散反射の双方)および毛髪の直径およびキューティクルの状態の見積もりを含む、初期サウンダーソン係数を計算するステージS2と、 レシピから、アルカリ化剤濃度、酸化剤濃度、温度、溶液の粘度、毛髪の直径、キューティクル状態および曝露期間についての、染色過程に関する因子を得るステージS3と、 これらの因子は、ケラチン、ユーメラニン、フェオメラニン、人工色素の変更後濃度、およびサウンダーソン係数の変更後の値を決定するために、化学反応速度式で使用され、毛髪の損傷も評価されるものであり、 色付与剤(たとえば、染料物質)濃度因子を提供するためにレシピが使用され、色付与剤物質濃度は、毛髪中の人工着色剤の最終濃度を決定するために、アルカリ化剤濃度、酸化剤(たとえば、過酸化水素)濃度、温度、粘度、毛髪の直径、毛髪の気孔率および曝露期間についての因子と共に使用されるステージS4と、 スペクトル計算過程および毛髪への損傷の評価を用いて、毛髪の最終スペクトルを予測するために、人工着色剤の最終濃度、および、ケラチン、ユーメラニン、フェオメラニン、人工色素の最終濃度、ならびに、サウンダーソン係数の最終値が、まとめて使用されるステージS5と、 最終スペクトルは、そのまま使用され、あるいは、表面反射作用からの反射光(正反射および拡散反射の双方)について補正される 方法。」 b 上記(引1c)より、引用文献1には、「タブレットの組み合わせを実施する方法」として、以下の方法が記載されている。 「タブレットの組み合わせを実施する方法において、 前記初期色の確立には、初期反射スペクトルの測定が含まれ、 カスタマイズされた色の選択には、カスタマイズされた色の反射スペクトルを決定することが含まれ、 両反射スペクトルは個別に色座標表現に変換され、 使用するタブレットの量は、初期反射スペクトルに、1つの基本色調の1つのタブレットの正または負の寄与を加えて、中間の計算色座標表現を得ることによって決定し、 次いで、中間の計算色と所望の色との色座標表現の差が最小になるまで、同じまたは異なる基本色調のタブレットについてその計算を繰り返し、 測定は、光学毛髪測定装置または毛髪読み取り器によって行われ、 毛髪読み取り器は、毛髪を照明する照明ユニット、および、照明の間に毛髪を光学的に測定する少なくとも1つのセンサーを含む測定ユニットを含み、 センサーおよび照明ユニットからの光束は、測定中の毛髪での光拡散角をそれぞれ規定し、 センサーは、確実に、毛髪によって拡散または散乱された光を主として測定し、 毛髪読み取り器が色予測部に入力を提供し、 次に、色予測部が、分配器を制御して、所望の色を達成するために必要な染料を分配させる方法。」 c 上記(引1d)より、引用文献1には、「毛髪読み取り器が色予測部に入力を提供し、次に、色予測部が、分配器を制御して、所望の色を達成するために必要な染料を分配させる」装置として、以下の装置が記載されている。 「光の正反射および散乱に特に注目して毛髪を読み取る毛髪読み取り器600と、 使用者が、特定の最終結果、つまり所望の毛髪色を要求するための入力を行うユーザ入力装置602と、 種々の波長での使用者の毛髪の状態についての詳細な情報を得、 異なる染料混合物が使用者の毛髪に適用された場合に、上述の方法を使用して、結果の色を予測し、 使用者の望む色を示す予測の染料混合物が見つかると、分配器606に指示を出力する色予測システム604と、 出力された指示により、必要なタブレットおよび媒体を分配し、その染料を調製する分配器606と、 を備える装置。」 d 上記bの「タブレットの組み合わせを実施する方法」は、上記cの装置が「毛髪読み取り器が色予測部に入力を提供し、次に、色予測部が、分配器を制御して、所望の色を達成するために必要な染料を分配させる」ことにより実施されるものであって、上記bの方法における、「カスタマイズされた色」は、上記cの装置の「ユーザ入力装置602」において入力された「特定の最終結果、つまり所望の毛髪色」である。そして、上記cの装置の「色予測システム604」が「結果の色を予測」するために「使用」される「上述の方法」は、上記aの「ケラチン繊維の処理の結果を予測する」方法であることは明らかである。 そして、上記bの「色予測部」及び「分配器」と上記cの「色予測システム604」及び「分配器606」とは、それぞれ同じものを指していることは明らかであるから、「色予測部」及び「分配器」として整理すると、引用文献1には、上記cの「毛髪読み取り器が色予測部に入力を提供し、次に、色予測部が、分配器を制御して、所望の色を達成するために必要な染料を分配させる」装置が実施する上記bの「タブレットの組み合わせを実施する方法」として、以下の発明(以下「引用発明」という)が記載されているといえる。 「光の正反射および散乱に特に注目して毛髪を読み取る毛髪読み取り器600と、 使用者が、特定の最終結果、つまり所望の毛髪色を要求するための入力を行うユーザ入力装置602と、 種々の波長での使用者の毛髪の状態についての詳細な情報を得、 異なる染料混合物が使用者の毛髪に適用された場合に、上述の方法を使用して、結果の色を予測し、 使用者の望む色を示す予測の染料混合物が見つかると、分配器に指示を出力する色予測部と、 出力された指示により、必要なタブレットおよび媒体を分配し、その染料を調製する分配器と、 を備える装置が実施するタブレットの組み合わせを実施する方法であって、 前記初期色の確立には、初期反射スペクトルの測定が含まれ、 カスタマイズされた色の選択には、カスタマイズされた色の反射スペクトルを決定することが含まれ、 両反射スペクトルは個別に色座標表現に変換され 使用するタブレットの量は、初期反射スペクトルに、1つの基本色調の1つのタブレットの正または負の寄与を加えて、中間の計算色座標表現を得ることによって決定し、 次いで、中間の計算色と所望の色との色座標表現の差が最小になるまで、同じまたは異なる基本色調のタブレットについてその計算を繰り返し、 測定は、光学毛髪測定装置または毛髪読み取り器によって行われ、 毛髪読み取り器は、毛髪を照明する照明ユニット、および、照明の間に毛髪を光学的に測定する少なくとも1つのセンサーを含む測定ユニットを含み、 センサーおよび照明ユニットからの光束は、測定中の毛髪での光拡散角をそれぞれ規定し、 センサーは、確実に、毛髪によって拡散または散乱された光を主として測定し、 毛髪読み取り器が色予測部に入力を提供し、 次に、色予測部が、分配器を制御して、所望の色を達成するために必要な染料を分配させ、 前記色予測部が結果の色を予測するために使用する方法は、 ケラチン繊維の処理の結果を予測するために、利用可能な、所定の濃度の、着色剤、アルカリ化剤、増粘剤および/もしくは酸化剤などの、活性剤を有する、ならびに/または、これらの薬剤の各々もしくは組成物全体を適用する所定の条件を有する、着色組成物を規定する所定の毛髪着色レシピ(所定の組成物)を使用する毛髪着色操作の結果を予測する方法であって、 一般には分光器を使用して、対象者の毛髪の初期スペクトルを得るステージS1と、 初期スペクトルから、ケラチン、ユーメラニン、フェオメラニンの初期濃度に加えて、毛髪の表面成分から反射された光(正反射および拡散反射の双方)および毛髪の直径およびキューティクルの状態の見積もりを含む、初期サウンダーソン係数を計算するステージS2と、 レシピから、アルカリ化剤濃度、酸化剤濃度、温度、溶液の粘度、毛髪の直径、キューティクル状態および曝露期間についての、染色過程に関する因子を得るステージS3と、 これらの因子は、ケラチン、ユーメラニン、フェオメラニン、人工色素の変更後濃度、およびサウンダーソン係数の変更後の値を決定するために、化学反応速度式で使用され、毛髪の損傷も評価されるものであり、 色付与剤(たとえば、染料物質)濃度因子を提供するためにレシピが使用され、色付与剤物質濃度は、毛髪中の人工着色剤の最終濃度を決定するために、アルカリ化剤濃度、酸化剤(たとえば、過酸化水素)濃度、温度、粘度、毛髪の直径、毛髪の気孔率および曝露期間についての因子と共に使用されるステージS4と、 スペクトル計算過程および毛髪への損傷の評価を用いて、毛髪の最終スペクトルを予測するために、人工着色剤の最終濃度、および、ケラチン、ユーメラニン、フェオメラニン、人工色素の最終濃度、ならびに、サウンダーソン係数の最終値が、まとめて使用されるステージS5と、 最終スペクトルは、そのまま使用され、あるいは、表面反射作用からの反射光(正反射および拡散反射の双方)について補正される方法である タブレットの組み合わせを実施する方法。」 イ 引用文献2について (ア)引用文献2に記載された事項 原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、米国特許出願公開第2016/0110915号明細書(以下「引用文献2」という。)には、図面とともに、次の記載がある。 (引2a)「[0001] This invention relates to a method and apparatus for synthesizing an image-in particular, an image showing a plurality of fibers. In some embodiments, the method and apparatus can be used to generate synthetic images of human hair. These embodiments may be particularly relevant for specifying a desired appearance of the hair, such as a desired hair color to be achieved by treatments such as dyeing.」(当審訳:「【0001】本発明は、画像(特に、複数の繊維を示す画像)を合成する方法及び装置に関する。幾つかの実施形態では、方法及び装置は、人毛の合成画像の生成に使用することができる。これらの実施形態は、特に、染色等の処置により達成することが望まれるヘアカラー等の毛髪の所望の外観を指定することに特に関連し得る。」) (引2b)「[0047] The method may further comprise formulating ahair dye composition, using the appearance of the hair in thesynthetic image as a reference.」(当審訳:「【0047】本方法は、合成画像での毛髪の外観を参照として使用して、毛髪染料の組成を処方することを更に含み得る。」) (引2c)「[0134] FIG. 1 shows an image processing apparatus for synthesizing an image of fibers. The apparatus comprises a computer 130; a display screen 140; and a camera 150. The computer 130 comprises a memory 110 and a processor 120. The processor 120 and memory 110 are coupled to one another and configured to communicate with one another (for example, using an internal bus of the computer 130). The display screen 140 and the camera 150 are coupled to the computer 130 (for example, using wired or wireless connections) and configured to communicate with the processor 120. The apparatus further comprises two additional computers: a first computer 130a and a second computer 130b. These additional computers are coupled to the computer 130 via a network and are configured to communicate with the processor 120 across that network. Each computer 130a, 130b comprises a respective processor 120a, 120b. As will be explained in greater detail below, the two computers 130a and 130b may be used to assist in synthesizing images of fibers by implementing parallel processing. The camera 150 is configured to obtain an image of a plurality of real fibers 160 and to communicate this image to the processor 120 of the computer 130. The display screen 140 is configured to receive from the processor 120 control signals to control the display screen to display a synthesized image of fibers. The display screen 140 is preferably color-calibrated. [0135] FIG. 2 is a flow-chart illustrating a method of synthesizing an image of fibers, implemented by the apparatus of FIG. 1. In the example of FIGS. 1 and 2, the fibers in question comprise human hair. According to the exemplary method, a computational model describing the interaction of light with fibers is provided (step 210). This model may be stored in the memory 110 and provided to the processor 120 during an initialization phase of the method. In step 220, the processor 120 obtains a first set of fiber parameters for use with the model. The first set of fiber parameters describes a plurality of real fibers-namely, the sample of real human hair 160. Ways of obtaining the fiber parameters will be described in greater detail below. In step 230, the processor 120 modifies the first set of fiber parameters to produce a second set of fiber parameters. The second set of fiber parameters describes a modified version of the real hair fibers 160. In this example, the first set of parameters includes at least one parameter relating to a color of the hair fibers 160. This is modified in the second set of parameters, such that the second set of parameters describes a modified version of the hair fibers 160 having a different color. This can be used to model the effect of a chemical treatment on the fibers. For example, the second set of parameters can model the effect of bleaching or dyeing the hair fibers 160. The parameters may be modified automatically by the processor, or they may be modified in response to user input-for example, user input that indicates the chemical treatment whose effect the user wishes to model, or user input that indicates the way in which it is desired to modify the parameters. In one example, the system provides the user with a user interface to modify the parameters and the user inputs modified parameters using this interface. In step 240, the processor 120 simulates how light would interact with the modified fibers. This comprises calculations using the computational model together with the second set of fiber parameters. Based on the result of the simulation 240, the processor 120 renders a synthetic image showing the appearance of the modified fibers (step 250). The processor 120 may store the rendered image in the memory 110. Alternatively or in addition, it may display the rendered synthetic image on the display screen 140, in step 270.」(当審訳:「【0134】図1は、繊維の画像を合成する画像処理装置を示す。装置は、コンピュータ130、表示画面140、及びカメラ150を備える。 コンピュータ130は、メモリ110及びプロセッサ120を備える。プロセッサ120及びメモリ110は、互いと結合され、互いと通信するように構成される(例えば、コンピュータ130の内部バスを使用して)。 表示画面140及びカメラ150は、コンピュータ130に結合され(例えば、有線又は無線接続を使用して)、プロセッサ120と通信するように構成される。 装置は、第1のコンピュータ130a及び第2のコンピュータ130bの2つの追加のコンピュータを更に備える。これらの追加のコンピュータは、ネットワークを介してコンピュータ130に結合され、そのネットワークを介してプロセッサ120と通信するように構成される。各コンピュータ130a、130bは、各プロセッサ120a、120bを備える。以下に更に詳細に説明するように、2つのコンピュータ130a及び130bは、並列処理を実施することによる繊維の画像合成を支援するのに使用し得る。 カメラ150は、複数の実際の繊維160の画像を取得し、この画像をコンピュータ130のプロセッサ120に通信するように構成される。 表示画面140は、プロセッサ120から、繊維の合成画像を表示するように表示画面を制御する制御信号を受信するように構成される。表示画面140は、好ましくは、色較正される。 【0135】 図2は、図1の装置により実施される、繊維の画像を合成する方法を示すフローチャートである。図1及び図2の例では、問題となっている繊維は人毛を含む。例示的な方法によれば、繊維との光の相互作用を記述する計算モデルが提供される(ステップ210)。このモデルは、メモリ110に記憶され、方法の初期化フェーズ中、プロセッサ120に提供され得る。 ステップ220において、プロセッサ120は、モデルと併用する第1の繊維パラメータのセットを取得する。第1の繊維パラメータのセットは、複数の実際の繊維、すなわち、実際の人毛160のサンプルを記述する。繊維パラメータを取得する方法については、以下に更に詳細に説明する。 ステップ230において、プロセッサ120は、第1の繊維パラメータのセットを変更して、第2の繊維パラメータのセットを生成する。第2の繊維パラメータのセットは、実際の毛髪繊維160の変更版を記述する。 この例では、第1のパラメータのセットは、毛髪繊維160のカラーに関連する少なくとも1つのパラメータを含む。これは、第2のパラメータのセットにおいて変更され、それにより、第2のパラメータのセットは、異なるカラーを有する毛髪繊維160の変更版を記述する。これは、繊維への化学的処理の効果をモデリングするのに使用することができる。例えば、第2のパラメータのセットは、毛髪繊維160をブリーチ又は染色する効果をモデリングすることができる。 パラメータは、プロセッサにより自動的に変更されてもよく、又はユーザ入力、例えば、ユーザが効果のモデリングを望む化学的処理を示すユーザ入力若しくはパラメータの変更に望ましい方法を示すユーザ入力などに応答して変更されてもよい。一例では、システムは、ユーザにユーザインタフェースを提供して、このインタフェースを使用してパラメータ及びユーザ入力変更パラメータを変更する。 ステップ240において、プロセッサ120は、光が改変繊維といかに相互作用するかをシミュレートする。これは、第2の繊維パラメータのセットと一緒に計算モデルを使用する計算を含む。 シミュレーション240の結果に基づいて、プロセッサ120は、改変繊維の外観を示す合成画像をレンダリングする(ステップ250)。プロセッサ120は、レンダリングされた画像をメモリ110に記憶し得る。代替又は追加として、ステップ270において、プロセッサ120は、レンダリングされた合成画像を表示画面140に表示し得る。」 (引2d)「[0144] FIG. 4 is a flow-chart illustrating a method for measuring the optical properties of fibers, performed by the apparatus of FIGS. 1 and 3. In step 221, the camera 150 captures an image of the hair fibers 160 wrapped around the material holder 165. In step 222, the processor 120 processes the image to determine an initial set of estimated fiber parameters. The method then follows an “analysis by synthesis” approach. In step 223, the processor 120 simulates, using the computational model and the initial estimated fiber parameters, how light would interact with a plurality of fibers having those initial estimated parameters. In step 224, the results of this simulation are compared with the image captured by the camera 150. An error metric is computed, characterizing the difference between the simulated results and the real image. In step 225, the processor 120 updates the estimated fiber parameters, based on the error metric. The processor then tests, in step 226, whether the estimated fiber parameters have converged to stable values yet. If the estimated fiber parameters have not yet converged sufficiently, the steps of simulating 223, computing the error metric 224, and updating the parameters 225 are repeated. The iterations continue until the estimated fiber parameters converge-that is, until the previous set of parameters and the updated parameters after step 225 are sufficiently similar. Convergence can also be determined by detecting when the magnitude of the error metric falls below a predefined threshold. When the parameters have converged, the method proceeds to step 227 and the first set of fiber parameters, describing the hair fiber sample 160, are determined by setting them equal to the converged estimated fiber parameters. [0145] One suitable method for estimating and updating fiber parameters is described in the paper Zinke et al. (Arno Zinke, Tomas Lay, and Anton Andriyenko, “A practical approach for photometric acquisition of hair color”, ACM transactions on graphics, Volume 28, No. 5, Article 165, December 2009). The set of fiber parameters captures the most important optical properties of the hair fibers. It comprises an “optical fingerprint” of the hair. The set of fiber parameters preferably includes the parameters described below. These parameters are discussed in greater detail in Zinke et al. A suitable computational model for use with these parameters, known as the Bidirectional Fiber Scattering Distribution Function (BFSDF), is described in Zinke and Weber (Arno Zinke and Andreas Weber, “Light Scattering from Filaments”, IEEE Transactions on Visualization and Computer Graphics (Volume: 13, Issue: 2), pages 342-356, March-April 2007). Briefly, this computational model locally approximates a fiber by its minimum enclosing cylinder. [0146] Three absorption coefficients σa can be used to describe how light at different wavelengths is absorbed by the fibers. One coefficient is provided for each of the red, green, and blue channels. The coefficient for each color channel describes how much light of that color is absorbed (and therefore not scattered) by the fiber. The coefficients are labeled Absorption Red; Absorption Green; and Absorption Blue. Each of these three parameters has units of the inverse of the radius of the fiber (radius-1). [0147] A good approximation for the scattering of light by the fibers is obtained by considering the first three scattering modes. A first backward scattering component describes how incident light is reflected from a first surface of the enclosing cylinder. This is called the “R” (Reflection) component. A first forward scattering component describes how incident light is transmitted through the first surface of the cylinder and also through a second surface of the cylinder. This is called the “TT” (Transmission-Transmission) component. A second backward scattering component describes how incident light is transmitted through the first surface of the cylinder, reflected from the second surface of the cylinder, and transmitted through a third surface of the cylinder. This is called the “TRT” (Transmission-Reflection-Transmission) component. For a perfect dielectric fiber, specular scattering would result in a cone of scattered light, for each scattering mode. For hair fibers, in particular, the tiled surface structure of the hair fibers is believed to lead to shifted specular cones, compared with the perfect dielectric fiber. Consequently, for each of the three scattering components, there is preferably a parameter α describing the longitudinal shift of the specular cone. Furthermore, due to surface roughness and inhomogeneity inside the fiber, the scattering distribution is blurred, compared with the ideal dielectric fiber. To capture this effect, the plurality of fiber parameters can also include a longitudinal width parameter β, for each of the three scattering modes. This gives six parameters, labeled: Long Shift R (αR), Long Shift TT (αTT), Long Shift TRT (αTRT), Long Width R (βR), Long Width TT (βTT), and Long Width TRT (βTRT). Each of these six parameters is an angle, having units of degrees. A scaling factor sR, also known as Scale R, can also be included, which determines the strength of the R-component. This parameter is dimensionless.」(当審訳:「【0144】図4は、図1及び図3の装置により実行される繊維の光学特性を測定する方法を示すフローチャートである。 ステップ221において、カメラ150は、材料ホルダ165に巻かれた毛髪繊維160の画像を捕捉する。 ステップ222において、プロセッサ120は、画像を処理して、1組の初期推定繊維パラメータを特定する。 方法は次に、「合成による分析」手法に続く。 ステップ223において、プロセッサ120は、計算モデル及び初期推定繊維パラメータを使用して、それらの初期推定パラメータを有する複数の繊維と光とがいかに相互作用するかをシミュレートする。 ステップ224において、このシミュレーションの結果が、カメラ150により捕捉された画像と比較される。シミュレーション結果と実際の画像との差を特徴付ける誤差尺度が計算される。 ステップ225において、プロセッサ120は、誤差尺度に基づいて推定繊維パラメータを更新する。 次に、ステップ226において、プロセッサは、推定繊維パラメータが安定値に収束したか否かをテストする。推定繊維パラメータがまだ十分に収束してない場合、シミュレートするステップ223、誤差尺度を計算するステップ224、及びパラメータを更新するステップ225が繰り返される。反復は、推定繊維パラメータが収束するまで、すなわち、前のパラメータのセット及びステップ225後の更新されたパラメータが十分に類似するまで、続けられる。収束は、誤差尺度の大きさが予め定義される閾値未満になったときを検出することにより、判断することもできる。 パラメータが収束した場合、方法はステップ227に続き、毛髪繊維サンプル160を記述する第1の繊維パラメータのセットが、収束した推定繊維パラメータに等しく設定されることにより特定される。 【0145】 繊維パラメータの推定及び更新に適する一方法が、Zinkeらの論文(Arno Zinke,Tomas Lay,and Anton Andriyenko,“A practical approach for photometric acquisition of hair color”,ACM transactions on graphics,Volulme 28,No.5,Article 165,December 2009)に記載されている。 1組の繊維パラメータは、毛髪繊維の最も重要な光学特性を捕捉する。これは、毛髪の「光学指紋」を含む。1組の繊維パラメータは、後述するパラメータを含む。これらのパラメータについては、Zinkeらにおいて更に詳細に考察されている。 双方向繊維散乱分布関数(BFSDF)として知られる、これらのパラメータとの併用に適する計算モデルは、Zinke及びWeber(Arno Zinke and Andreas Weber,“Light Scattering from Filaments”,IEEE Transactions on Visualization and Computer Graphics(Volume:13,Issue:2),pages 342-356,March-April 2007)に記載されている。手短に、この計算モデルは、最小包囲シリンダ(minimum enclosing cylinder)により繊維を局所的に近似する。 【0146】 3つの吸収係数σaを使用して、異なる波長の光が繊維によりいかに吸収されるかを記述することができる。一係数が赤チャネル、緑チャネル、及び青チャネルのそれぞれに提供される。各カラーチャネルの係数は、その色の光が繊維により吸収される(したがって、散乱されない)量を記述する。係数は赤吸収、緑吸収、及び青吸収と記される。これらの3つのパラメータはそれぞれ、繊維の半径の逆数(半径-1)の単位を有する。 【0147】 繊維による光の散乱の良好な近似は、第1の3つの散乱モデルを考慮することにより得られる。 第1の後方散乱成分は、入射光が包囲シリンダの第1の表面からいかに反射されるかを記述する。これは「R」(反射)成分と呼ばれる。 第1の前方散乱成分は、入射光が、シリンダの第1の表面及びシリンダの第2の表面をいかに透過するかを記述する。これは「TT」(透過-透過)成分と呼ばれる。 第2の後方散乱成分は、入射光が、いかにシリンダの第1の表面を透過し、シリンダの第2の表面から反射され、シリンダの第3の表面を透過するかを記述する。これは「TRT」(透過-反射-透過)成分と呼ばれる。 完全な誘電繊維の場合、スペクトル散乱は、各散乱モデルで散乱光の錐体を生じさせる。毛髪繊維の場合、特に、毛髪繊維のタイル状表面構造が、完全誘電繊維と比較して、シフトしたスペクトル錐体に繋がると信じられている。したがって、3つの散乱成分のそれぞれで、好ましくは、スペクトル錐体の長手方向シフトを記述するパラメータαがある。 更に、表面の凸凹性及び繊維内部の不均質性に起因して、散乱分布は、理想的な誘電繊維と比較してぼやける。この影響を捕捉するために、複数の繊維パラメータは、3つの散乱モデルのそれぞれに長手方向幅パラメータβを含むこともできる。 これにより、長シフトR(αR)、長シフトTT(αTT)、長シフトTRT(αTRT)、長幅R(βR)、長幅TT(βTT)、及び長幅TRT(βTRT)と記される6つのパラメータが与えられる。これらの6つのパラメータはそれぞれ、度を単位とした角度である。スケールRとしても知られているスケーリング係数sRを含めることもでき、この係数はR成分の強度を決める。このパラメータは次元を有さない。」) (イ)引用文献2に記載された技術事項 a 上記(引2a)より、引用文献2には、「・・・方法・・・は、人毛の合成画像の生成に使用することができる。・・・特に、染色等の処置により達成することが望まれるヘアカラー等の毛髪の所望の外観を指定することに特に関連し得る。」と記載されており、(引2b)に「本方法は、合成画像での毛髪の外観を参照として使用して、毛髪染料の組成を処方することを・・・含み得る」と記載されていることから、引用文献2には、以下の技術事項が記載されているといえる。 「染色等の処置により達成することが望まれるヘアカラー等の毛髪の所望の外観を指定し、合成画像での毛髪の外観を参照として使用して、毛髪染料の組成を処方するための、人毛の前記合成画像を生成する方法」 b また、上記(引2c)より、引用文献2には、「コンピュータ130、表示画面140、及びカメラ150を備え」、「コンピュータ130は、メモリ110及びプロセッサ120を備え」、「カメラ150は、・・・繊維160の画像を取得し、この画像をコンピュータ130のプロセッサ120に通信するように構成され」、「表示画面140は、プロセッサ120から」、「色較正され」た「繊維の合成画像を表示するように表示画面を制御する制御信号を受信するように構成される」装置において使用される「繊維の画像を合成する方法」として、以下の方法が記載されている。 「コンピュータ130、表示画面140、及びカメラ150を備え、 コンピュータ130は、メモリ110及びプロセッサ120を備え、 カメラ150は、繊維160の画像を取得し、 この画像をコンピュータ130のプロセッサ120に通信するように構成され、 表示画面140は、プロセッサ120から、色較正された、繊維の合成画像を表示するように表示画面を制御する制御信号を受信するように構成される装置において使用される繊維の画像を合成する方法であって、 繊維は人毛を含み、 繊維との光の相互作用を記述する計算モデルが提供され、 モデルと併用する第1の繊維パラメータのセットを取得し、 第1の繊維パラメータのセットは、人毛160のサンプルを記述し、 繊維パラメータを取得する方法は、 第1の繊維パラメータのセットを変更して、第2の繊維パラメータのセットを生成し、 第2の繊維パラメータのセットは、実際の毛髪繊維160の変更版を記述し、 第2の繊維パラメータのセットと一緒に計算モデルを使用する計算を含むことにより、光が改変繊維といかに相互作用するかをシミュレートし、 シミュレーション240の結果に基づいて、レンダリングすることにより改変繊維の外観を示す合成画像を合成する 繊維の画像を合成する方法」 c 上記bにおいて、「繊維は人毛を含」むものであるから、上記bの「繊維の画像を合成する方法」において「繊維」が「人毛」である場合はは、上記aの「人毛の合成画像を生成する方法」であるといえる。 そうすると、上記a及びbより、引用文献2には、以下の技術事項(以下「技術事項2」という。)が記載されている。 「コンピュータ130、表示画面140、及びカメラ150を備え、 コンピュータ130は、メモリ110及びプロセッサ120を備え、 カメラ150は、繊維160の画像を取得し、 この画像をコンピュータ130のプロセッサ120に通信するように構成され、 表示画面140は、プロセッサ120から、色較正された、繊維の合成画像を表示するように表示画面を制御する制御信号を受信するように構成される装置において使用される 染色等の処置により達成することが望まれるヘアカラー等の毛髪の所望の外観を指定し、合成画像での毛髪の外観を参照として使用して、毛髪染料の組成を処方するための、人毛の前記合成画像を生成する方法であって、 人毛との光の相互作用を記述する計算モデルが提供され、 モデルと併用する第1の繊維パラメータのセットを取得し、 第1の繊維パラメータのセットは、人毛160のサンプルを記述し、 繊維パラメータを取得する方法は、 第1の繊維パラメータのセットを変更して、第2の繊維パラメータのセットを生成し、 第2の繊維パラメータのセットは、実際の毛髪繊維160の変更版を記述し、 第2の繊維パラメータのセットと一緒に計算モデルを使用する計算を含むことにより、光が改変繊維といかに相互作用するかをシミュレートし、 シミュレーション240の結果に基づいて、レンダリングすることにより改変繊維の外観を示す合成画像を合成する 人毛の合成画像を生成する方法」 (3)引用発明との対比 ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。 (ア)引用発明の「タブレットの組み合わせを実施する方法」は、「色予測部が、分配器を制御して、所望の色を達成するために必要な染料を分配させ」ることにより「タブレットの組み合わせを実施する」ものである。そして、「所望の色を達成するために必要な染料を分配させ」るためには、「所望の色を達成するために必要な染料」の組成を計算しているといえる。また、引用発明の「所望の色」は、「使用者が」、「ユーザ入力装置602」により入力した「所望の毛髪色」である。 そうすると、引用発明の「所望の毛髪色」「を達成するために必要な染料」は、本件補正発明の「毛髪繊維を処理するための製剤」に相当し、引用発明の「タブレットの組み合わせを実施する方法」における「所望の毛髪色」「を達成するために必要な染料」の組成を計算する方法は、本件補正発明の「毛髪繊維を処理するための製剤の組成を計算する方法」に相当する。 (イ)引用発明の「前記初期色の確立には、初期反射スペクトルの測定が含まれ」、「測定は、光学毛髪測定装置または毛髪読み取り器によって行われ」、「毛髪読み取り器は、毛髪を光学的に測定する少なくとも1つのセンサーを含む測定ユニットを含み」、「センサーは、確実に、毛髪によって拡散または散乱された光を主として測定し」ているから、引用発明は、「測定」により「前記初期色の確立」するための「初期反射スペクトル」を取得しているといえる。そして、本件補正発明の「第1の画像」は、「修正画像を作成する」ための初期の画像である。 そうすると、引用発明の「前記初期色の確立」するための、「初期反射スペクトル」を取得することと、本件補正発明の「毛髪繊維の第1の画像を取得すること」とは、「毛髪繊維」の初期の光学データを取得することで共通する。 (ウ)引用発明の方法は、測定された毛髪の「初期反射スペクトル」が「所望の毛髪色であるカスタマイズされた色の」「反射スペクトル」となるようにするために、「初期反射スペクトルに、1つの基本色調の1つのタブレットの正または負の寄与を加えて、中間の計算色座標表現を得ることによって」、「中間の計算色と所望の色との色座標表現の差が最小になるまで、同じまたは異なる基本色調のタブレットについてその計算を繰り返」すものであって、「所望の色との色座標表現の差が最小になる」「計算色座標表現」は、「所望の毛髪色」の「反射スペクトル」に近いものであるといえる。 そして、測定された毛髪の「初期反射スペクトル」が、「所望の色との色座標表現の差が最小になる」「計算色座標表現」である「所望の毛髪色」の「反射スペクトル」となるようにすることは、「初期反射スペクトル」に基づいて、「所望の毛髪色」の「反射スペクトル」を作成することであるといえる。そして、本件補正発明の「毛髪繊維の所望の外観を示す修正画像」は、前記毛髪繊維の所望の毛髪色であるカスタマイズされた色を作成するためのものである。 そうすると、引用発明の「初期反射スペクトル」に基づいて、「所望の毛髪色であるカスタマイズされた色の」「反射スペクトル」を作成することと、本件補正発明の「前記第1の画像に基づいて、前記毛髪繊維の所望の外観を示す修正画像を作成すること」とは、初期の光学データに基づいて、前記毛髪繊維の所望の毛髪色であるカスタマイズされた色を作成することで共通する。 (エ)引用発明の「カスタマイズされた色」は、「使用者が、特定の最終結果、つまり所望の毛髪色を要求するための入力」に基づくものであるから、「カスタマイズされた色」は、本件補正発明の「前記毛髪繊維の前記所望の外観」に相当する。 そうすると、引用発明の「カスタマイズされた色」から「決定」された「反射スペクトル」は、本件補正発明の「前記毛髪繊維の前記所望の外観を定義する1つ以上の数値パラメータ」に相当する。 また、引用発明は、「初期反射スペクトル」に基づいて、「スペクトル計算過程および毛髪への損傷の評価を用いて」、「人工着色剤の最終濃度、および、ケラチン、ユーメラニン、フェオメラニン、人工色素の最終濃度、ならびに、サウンダーソン係数の最終値」を「まとめて使用」して「毛髪の最終スペクトルを予測」するものであって、「毛髪の最終スペクトル」は、「使用者が、特定の最終結果、つまり所望の毛髪色を要求するため」に「入力」された「カスタマイズされた色」から「決定」された「反射スペクトル」に近づけた結果のスペクトルである。 また、本件補正発明の「目標仕様」は、「前記修正画像及び前記修正画像を作成するために前記第1の画像に対して行われた修正のうちの少なくとも1つに基づいて」「導出」されるものであって、「前記修正画像」は、「前記第1の画像に基づいて」作成されるものであるから、「目標仕様」は、「前記第1の画像に基づいて」導出されるといえる。 そうすると、引用発明の「初期反射スペクトル」に基づいて、「スペクトル計算過程および毛髪への損傷の評価を用いて」、「人工着色剤の最終濃度、および、ケラチン、ユーメラニン、フェオメラニン、人工色素の最終濃度、ならびに、サウンダーソン係数の最終値」を「まとめて使用」して「毛髪の最終スペクトルを予測」することと、本件補正発明の「前記修正画像及び前記修正画像を作成するために前記第1の画像に対して行われた修正のうちの少なくとも1つに基づいて、目標仕様を導出することであって、前記目標仕様は、前記毛髪繊維の前記所望の外観を定義する1つ以上の数値パラメータを含む、該導出すること」とは、毛髪繊維の初期の光学データに基づいて、目標仕様を導出することであって、前記目標仕様は、前記毛髪繊維の前記所望の外観を定義する1つ以上の数値パラメータを含む該導出することである点で共通する。 (オ)引用発明の「ステージS3」では、「レシピから、アルカリ化剤濃度、酸化剤濃度、温度、溶液の粘度、毛髪の直径、キューティクル状態および曝露期間についての、染色過程に関する因子を得」ており、「これらの因子は、ケラチン、ユーメラニン、フェオメラニン、人工色素の変更後濃度、およびサウンダーソン係数の変更後の値を決定するために、化学反応速度式で使用され、毛髪の損傷も評価されるものであ」って、「これらの因子は」、「所定の毛髪着色レシピ」によって規定された「着色組成物」から得られる「因子」であるといえるから、「ケラチン、ユーメラニン、フェオメラニン、人工色素の変更後濃度、およびサウンダーソン係数の変更後の値」は、「所定の毛髪着色レシピ」によって規定された「着色組成物」から得られる値であるといえる。 また、引用発明の「ステージS5」の「スペクトル計算過程および毛髪への損傷の評価」は、「人工着色剤の最終濃度、および、ケラチン、ユーメラニン、フェオメラニン、人工色素の最終濃度、ならびに、サウンダーソン係数の最終値」をまとめて用いて「毛髪の最終スペクトルを予測するため」のものであるから、「スペクトル計算過程および毛髪への損傷の評価」は、「毛髪の最終スペクトルを予測するため」の計算モデルであるといえる。 そうすると、引用発明の「所定の毛髪着色レシピ」によって規定された「着色組成物」から得られる「人工着色剤の最終濃度、および、ケラチン、ユーメラニン、フェオメラニン、人工色素の最終濃度、ならびに、サウンダーソン係数の最終値」をまとめて用いて「毛髪の最終スペクトルを予測する」「スペクトル計算過程および毛髪への損傷の評価」は、本件補正発明の「製剤の組成を、前記製剤によって処理されたときの前記毛髪繊維の予測される外観に関係付ける、第1の計算モデル」に相当する。 そして、引用発明は、「色予測部」が予測した「結果の色」のスペクトルである「最終スペクトル」に基づく「所望の色を達成するために必要な染料」を分配することから、「色予測部」は、「所望の色を達成するために必要な染料」の組成を計算しているといえる。 そうすると、引用発明の「スペクトル計算過程および毛髪への損傷の評価を用いて、毛髪の最終スペクトルを予測」し、得られた「最終スペクトル」に基づく「所望の色を達成するために必要な染料」の組成を計算することは、本件補正発明の「前記第1の計算モデル及び前記目標仕様を使用して、前記毛髪繊維が前記製剤で処理される場合に、前記所望の外観に類似又は同様の外観を生成することが予測される前記製剤の組成を計算すること」に相当する。 (カ)引用発明は「スペクトル計算過程および毛髪への損傷の評価を用いて、毛髪の最終スペクトルを予測する」ために「人工色素の最終濃度」を使用しており、「人工色素の最終濃度」は、「毛髪の最終スペクトル」に関連付ける計算構成要素であって、化学種の濃度であるといえるから、引用発明の「人工色素の最終濃度」を、「毛髪の最終スペクトル」に関連付ける計算構成要素として含む「スペクトル計算過程および毛髪への損傷の評価」と、本件補正発明の「毛髪繊維への製剤の物質輸送を記述する計算構成要素と、製剤中の化学種の時間依存性濃度を前記製剤の初期組成に関係付ける計算構成要素と、毛髪繊維中の化学種の時間性依存濃度を前記製剤中の化学種の時間依存性濃度に関係付ける計算構成要素と、化学種の濃度を毛髪繊維の反射スペクトルに関係付ける計算構成要素と、のうちの少なくとも1つ、又は2つ以上の任意の組み合わせを含む」「前記第1の計算モデル」とは、「化学種の濃度を毛髪繊維の反射スペクトルに関係付ける計算構成要素を含む」「前記第1の計算モデル」である点で一致する。 イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 (一致点)「毛髪繊維を処理するための製剤の組成を計算する方法であって、 毛髪繊維の初期の光学データを取得することと、 毛髪繊維の初期の光学データに基づいて、目標仕様を導出することであって、前記目標仕様は、前記毛髪繊維の前記所望の外観を定義する1つ以上の数値パラメータを含む、該導出することと、 製剤の組成を、前記製剤によって処理されたときの前記毛髪繊維の予測される外観に関係付ける、第1の計算モデルを提供することと、 前記第1の計算モデル及び前記目標仕様を使用して、前記毛髪繊維が前記製剤で処理される場合に、前記所望の外観に類似又は同様の外観を生成することが予測される前記製剤の組成を計算することと、 を含み、 前記第1の計算モデルは、 毛髪繊維への製剤の物質輸送を記述する計算構成要素と、 製剤中の化学種の時間依存性濃度を前記製剤の初期組成に関係付ける計算構成要素と、 毛髪繊維中の化学種の時間性依存濃度を前記製剤中の化学種の時間依存性濃度に関係付ける計算構成要素と、 化学種の濃度を毛髪繊維の反射スペクトルに関係付ける計算構成要素と、 のうちの少なくとも1つ、又は2つ以上の任意の組み合わせを含むことを特徴とする方法。」 (相違点)初期の光学データが、本件補正発明は、「毛髪繊維の第1の画像」であって、「前記第1の画像に基づいて、前記毛髪繊維の所望の外観を示す修正画像を作成」し、「目標仕様を導出すること」が、「前記修正画像及び前記修正画像を作成するために前記第1の画像に対して行われた修正のうちの少なくとも1つに基づいて」行われるものであって、「前記第1の画像に対して、前記修正画像を作成することは、光と毛髪繊維との相互作用を記述する第2の計算モデルを提供することと、前記第1の画像について、前記第1の画像内の前記毛髪繊維を記述する第1の毛髪繊維光学パラメータのセットを取得することと、複数の修正された毛髪繊維を記述する第2の毛髪繊維光学パラメータのセットを生成するために、前記第1の毛髪光学パラメータのセットを修正することと、前記第2の計算モデル及び前記第2の毛髪繊維光学パラメータのセットを使用して、光が前記修正された毛髪繊維とどのように相互作用するかをシミュレートすることと、前記シミュレーションの結果に基づいて、前記修正された毛髪繊維の前記外観を示す第1の合成画像をレンダリングすることと、前記第1の合成画像を前記修正画像として提供することと、を含」んでいるのに対し、引用発明は「初期反射スペクトル」であって、「毛髪の最終スペクトル」の「予測」は、「初期反射スペクトル」に基づくものであって、「初期スペクトルから、ケラチン、ユーメラニン、フェオメラニンの初期濃度に加えて、毛髪の表面成分から反射された光(正反射および拡散反射の双方)および毛髪の直径およびキューティクルの状態の見積もりを含む、初期サウンダーソン係数を計算」しているものの、修正画像を作成する旨の特定はない点。 (4)判断 以下、相違点について検討する。 ア 技術事項2の「人毛の合成画像」は、「染色等の処置により達成することが望まれるヘアカラー等の毛髪の所望の外観を指定するため」に使用されるものであって、「シミュレーション240の結果に基づいて、レンダリングすることにより改変繊維の外観を示す」ように「合成」されたものであるから、本件補正発明の「修正画像」に相当する。また、技術事項2の「第1の繊維パラメータのセット」は「繊維160の画像」から取得されたものであることは明らかであって、技術事項2の「繊維160」は人毛であるから、「繊維160の画像」は、本件補正発明の「毛髪繊維の第1の画像」に相当する。そして、技術事項2の「人毛の合成画像を生成」は、「第1の繊維パラメータのセットを変更」することにより行われるから、「カメラ150」により取得された「繊維160の画像」に対して行われるものであるといえる。 そうすると、技術事項2の「繊維160の画像」に対して行われる「人毛の合成画像を生成」することは、本件補正発明の「前記第1の画像に対して、前記修正画像を作成すること」に相当する。 イ 技術事項2の「人毛との光の相互作用を記述する計算モデル」、「第1の繊維パラメータのセット」及び「第2のパラメータのセット」は、本件補正発明の「光と毛髪繊維との相互作用を記述する第2の計算モデル」、「第1の毛髪繊維光学パラメータのセット」及び「前記第2の毛髪繊維光学パラメータのセット」に相当する。そして、技術事項2の「第1の繊維パラメータのセットは、人毛160のサンプルを記述し」ているものであって、「人毛160」は、「繊維160の画像」内の「繊維160」であるから、技術事項2の「繊維160の画像」について、「繊維160の画像」内の「人毛160」について記述する「第1の毛髪繊維光学パラメータのセット」は、本件補正発明の「前記第1の画像について、前記第1の画像内の前記毛髪繊維を記述する第1の毛髪繊維光学パラメータのセット」に相当し、技術事項2の「第1の繊維パラメータのセットを取得」することは、本件補正発明の「前記第1の画像について、前記第1の画像内の前記毛髪繊維を記述する第1の毛髪繊維光学パラメータのセットを取得すること」に相当する。 ウ 技術事項2の「第2の繊維パラメータのセット」は、「第1の繊維パラメータのセットを変更して」「生成」されるから、「第2の繊維パラメータのセット」を「生成」するために「第1の繊維パラメータのセットを変更」することは、本件補正発明の「複数の修正された毛髪繊維を記述する第2の毛髪繊維光学パラメータのセットを生成するために、前記第1の毛髪光学パラメータのセットを修正すること」に相当する。 エ 技術事項2の「第2の繊維パラメータのセットと一緒に計算モデルを使用する計算を含むことにより、光が改変繊維といかに相互作用するかをシミュレート」することは、本件補正発明の「前記第2の計算モデル及び前記第2の毛髪繊維光学パラメータのセットを使用して、光が前記修正された毛髪繊維とどのように相互作用するかをシミュレートすること」に相当する。 オ 技術事項2の「シミュレーション240の結果に基づいて、レンダリングすることにより改変繊維の外観を示す合成画像を合成する」ことは、本件補正発明の「前記シミュレーションの結果に基づいて、前記修正された毛髪繊維の前記外観を示す第1の合成画像をレンダリングすること」に相当する。 カ そして、技術事項2は「人毛の合成画像を生成する方法」によって生成された「人毛の合成画像」を提供するから、「人毛の合成画像」を提供することは、本件補正発明の「前記第1の合成画像を前記修正画像として提供すること」に相当する。 キ 以上、アないしカより、技術事項2は、本件補正発明の「前記第1の画像に対して、前記修正画像を作成することは、光と毛髪繊維との相互作用を記述する第2の計算モデルを提供することと、前記第1の画像について、前記第1の画像内の前記毛髪繊維を記述する第1の毛髪繊維光学パラメータのセットを取得することと、複数の修正された毛髪繊維を記述する第2の毛髪繊維光学パラメータのセットを生成するために、前記第1の毛髪光学パラメータのセットを修正することと、前記第2の計算モデル及び前記第2の毛髪繊維光学パラメータのセットを使用して、光が前記修正された毛髪繊維とどのように相互作用するかをシミュレートすることと、前記シミュレーションの結果に基づいて、前記修正された毛髪繊維の前記外観を示す第1の合成画像をレンダリングすることと、前記第1の合成画像を前記修正画像として提供すること」に相当する技術であるといえる。 ク 引用発明の「初期の光学データ」である「初期反射スペクトル」は、選択された「カスタマイズされた色の反射スペクトル」である「毛髪の最終スペクトル」の「予測」のために使用されるものであって、技術事項2の「染色等の処置により達成することが望まれるヘアカラー等の毛髪の所望の外観を指定し、合成画像での毛髪の外観を参照として使用して、毛髪染料の組成を処方するため」に使用される「人毛の前記合成画像」と同じ目的で使用されるものである。また、引用文献1の段落【0417】には「センサーは、短時間に多数の画像を得てよく、・・・」(上記(引1b)参照)と、センサーが取得するデータとして、画像が使用できる旨示唆されている。 そうすると、引用発明の選択された「カスタマイズされた色の反射スペクトル」である「毛髪の最終スペクトル」の「予測」のために使用される「初期反射スペクトル」に代えて、技術事項2の「人毛の前記合成画像を生成する方法」で生成された「人毛の前記合成画像」を適用し、「毛髪の最終スペクトル」の「予測」を、該「人毛の前記合成画像」に基づいて行うこととすることは、当業者が容易に想到できたことであるといえる。 ケ したがって、本件補正発明は、引用発明及び技術事項2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5)請求人の主張について 請求人は、審判請求書において、 「引用文献1及び2には、本願発明の構成について開示又は示唆されていません。引用文献1及び2には、本願発明の構成、特に「前記第1の計算モデルは、毛髪繊維への製剤の物質輸送を記述する計算構成要素と、製剤中の化学種の時間依存性濃度を前記製剤の初期組成に関係付ける計算構成要素と、毛髪繊維中の化学種の時間性依存濃度を前記製剤中の化学種の時間依存性濃度に関係付ける計算構成要素と、化学種の濃度を毛髪繊維の反射スペクトルに関係付ける計算構成要素と、のうちの少なくとも1つ、又は2つ以上の任意の組み合わせを含む」に関しては、全く開示も示唆もされていません。本願発明の構成、特に第1の計算モデルの構成について引用文献1及び2は開示も示唆もされていないため、当業者であっても、引用文献1及び2に基づいて、本願発明の構成に容易に想到することはできないもの思料致します。 また、第1の計算モデルを用いることにより目標色度を達成する製剤用の組成の設計を補助することができ、本願発明の構成を組み合わせることにより、所望の目標色度を正確に達成する染料製剤を設計することを可能にするという有利な効果を奏します。この有利な効果の観点からも本願発明は進歩性を有するものと思料致します。 したがって、本願発明は、引用文献1及び2に対して進歩性を有するものと思料致します。」 旨主張し、また、令和3年8月20日に提出した上申書において、 「審判請求書にて記載したように、引用文献1-2には、「毛髪繊維への製剤の物質輸送を記述する計算構成要素と、製剤中の化学種の時間依存性濃度を前記製剤の初期組成に関係付ける計算構成要素と、毛髪繊維中の化学種の時間性依存濃度を前記製剤中の化学種の時間依存性濃度に関係付ける計算構成要素と、化学種の濃度を毛髪繊維の反射スペクトルに関係付ける計算構成要素と、のうちの少なくとも1つ、又は2つ以上の任意の組み合わせ」について記載されていません。 審査官殿は、「引用文献1には、上記のように、少なくとも「化学種の濃度を毛髪繊維の反射スペクトルに関係付ける計算構成要素」が記載されていると認められる。」とご指摘ですが、引用文献1に仮にこの記載が認められたとしても、これは本願の4つの計算構成要素のうちの1つの計算構成要素に過ぎません。 すなわち、引用文献1-2には、「毛髪繊維への製剤の物質輸送を記述する計算構成要素」、「製剤中の化学種の時間依存性濃度を前記製剤の初期組成に関係付ける計算構成要素」、「毛髪繊維中の化学種の時間性依存濃度を前記製剤中の化学種の時間依存性濃度に関係付ける計算構成要素」については開示も示唆もされていません。開示も示唆もされていないため、当業者であっても、引用文献1-2を参照して、本願発明の構成「前記第1の計算モデルは、 毛髪繊維への製剤の物質輸送を記述する計算構成要素と、 製剤中の化学種の時間依存性濃度を前記製剤の初期組成に関係付ける計算構成要素と、 毛髪繊維中の化学種の時間性依存濃度を前記製剤中の化学種の時間依存性濃度に関係付ける計算構成要素と、 化学種の濃度を毛髪繊維の反射スペクトルに関係付ける計算構成要素と、のうちの少なくとも1つ、又は2つ以上の任意の組み合わせ」について容易に想到することができないものと思料します。したがって、本願発明は進歩性を有するものと思料します。 さらに、第1の計算モデルを用いることにより目標色度を達成する製剤用の組成の設計を補助することができ、本願発明の構成を組み合わせることにより、所望の目標色度を正確に達成する染料製剤を設計することを可能にするという有利な効果を奏します。この有利な効果の観点からも本願発明は進歩性を有するものと思料します。」 旨主張している。 しかしながら、引用文献1及び2に、「毛髪繊維への製剤の物質輸送を記述する計算構成要素」、「製剤中の化学種の時間依存性濃度を前記製剤の初期組成に関係付ける計算構成要素」、「毛髪繊維中の化学種の時間性依存濃度を前記製剤中の化学種の時間依存性濃度に関係付ける計算構成要素」については開示も示唆もなかったとしても、上記(3)ア(カ)で指摘したとおり、引用発明の「人工色素の最終濃度」を、「毛髪の最終スペクトル」に関連付ける計算構成要素として含む「スペクトル計算過程および毛髪への損傷の評価」と、本件補正発明の「毛髪繊維への製剤の物質輸送を記述する計算構成要素と、製剤中の化学種の時間依存性濃度を前記製剤の初期組成に関係付ける計算構成要素と、毛髪繊維中の化学種の時間性依存濃度を前記製剤中の化学種の時間依存性濃度に関係付ける計算構成要素と、化学種の濃度を毛髪繊維の反射スペクトルに関係付ける計算構成要素と、のうちの少なくとも1つ、又は2つ以上の任意の組み合わせを含む」「前記第1の計算モデル」とは、「化学種の濃度を毛髪繊維の反射スペクトルに関係付ける計算構成要素を含む」「前記第1の計算モデル」である点で一致するものであるから、上記主張は採用されない。 また、請求人は、審判請求書において、 「さらに、2020年8月18日付提出の意見書において記載したように、本願発明は、色座標の割り当て計算(初期反射スペクトルをCIE色座標へ変換)によって、顧客が望む繊維の処理に適するタブレットの組み合わせの量を決定する処理を主眼とするものではありません。本願発明では、コンピュータグラフィックス技術を使用して、毛髪繊維(未処理のバージン繊維)を表す第1の画像から、様々な修正された毛髪繊維の所望の外観を示す合成画像を作成します。引用文献1は、この様々に修正された合成画像を作成するために、光と毛髪繊維との相互作用を記述する第2の計算モデルを使用する点にについて、何らの教示もありません。具体的には、第2の計算モデルで使用するための、毛髪繊維を記述する第1の毛髪繊維光学パラメータのセットを取得します。そして、その第1の繊維光学パラメータのセットを修正して、実毛髪繊維の修正されたバージョンを記述する第2の毛髪繊維光学パラメータのセットを生成します。例えば、第1の毛髪繊維光学パラメータのセットは、毛髪繊維への製剤の物質輸送を記述する計算構成要素と、製剤中の化学種の時間依存性濃度を前記製剤の初期組成に関係付ける計算構成要素と、毛髪繊維中の化学種の時間性依存濃度を前記製剤中の化学種の時間依存性濃度に関係付ける計算構成要素と、化学種の濃度を毛髪繊維の反射スペクトルに関係付ける計算構成要素の内の少なくとも1つのパラメータを含みます。この第1の毛髪繊維光学パラメータのセットは、第2の毛髪繊維光学パラメータのセットが、異なる色を有する毛髪繊維の修正バージョンを記述するように、第2の毛髪繊維光学パラメータのセットで修正されます。この修正は、毛髪繊維を染色する効果をモデル化します。そして、第2の計算モデルおよび第2の毛髪繊維光学パラメータのセットを使用して、その修正された繊維と光がどのように相互作用するかをシミュレートします。その後、修正された繊維の外観を示す合成画像をレンダリングして修正画像として出力します。 このように第2の計算モデルを使用して、未処理の第1の画像から修正された合成画像を作成することは、目標色度を定義することができるということを意味するものであって、その目標色度を定義することは、照明(蛍光灯、野外の光等)、他の要因を、合成画像内で考慮して制御することができるという特有の利点を有します。すなわち、第2の計算モデルを使用して作成された、修正された合成画像を用いて、所望の外観と同様な外観を生成するための製剤の組成を計算することが可能となります。引用文献1は、第2の計算モデルから得られた修正された合成画像を用いて、所望の外観と同様な外観を生成するための製剤の組成を計算することについては、何らの開示も示唆もありません(明細書段落0216~0218)。よって、本願発明の構成、特に第2の計算モデルの構成についても引用文献1及び2は全く開示も示唆もされていないため、当業者であっても、引用文献1及び2に基づいて、本願発明の構成に容易に想到することはできないもの思料致します。 したがって、少なくとも上記の理由により、本願発明は、引用文献1及び2に対して進歩性を有するものと思料致します。」 旨主張しているが、上記(4)で検討したとおり、技術事項2は、本件補正発明の「前記第1の画像に対して、前記修正画像を作成することは、光と毛髪繊維との相互作用を記述する第2の計算モデルを提供することと、前記第1の画像について、前記第1の画像内の前記毛髪繊維を記述する第1の毛髪繊維光学パラメータのセットを取得することと、複数の修正された毛髪繊維を記述する第2の毛髪繊維光学パラメータのセットを生成するために、前記第1の毛髪光学パラメータのセットを修正することと、前記第2の計算モデル及び前記第2の毛髪繊維光学パラメータのセットを使用して、光が前記修正された毛髪繊維とどのように相互作用するかをシミュレートすることと、前記シミュレーションの結果に基づいて、前記修正された毛髪繊維の前記外観を示す第1の合成画像をレンダリングすることと、前記第1の合成画像を前記修正画像として提供すること」に相当する技術であって、該技術を引用発明に適用することにより、上記相違点に係る構成とすることは当業者が容易に想到できたことであるといえるから、上記請求人の主張も採用されない。 3 本件補正についてのむすび よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 令和3年4月9日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和2年8月18日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~15に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1~15に係る発明は、本願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 引用文献1:特表2014-510099号公報 引用文献2:米国特許出願公開第2016/0110915号明細書 3 引用文献 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1、2及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「第1の計算モデル」は、「毛髪繊維への製剤の物質輸送を記述する計算構成要素と、製剤中の化学種の時間依存性濃度を前記製剤の初期組成に関係付ける計算構成要素と、毛髪繊維中の化学種の時間性依存濃度を前記製剤中の化学種の時間依存性濃度に関係付ける計算構成要素と、化学種の濃度を毛髪繊維の反射スペクトルに関係付ける計算構成要素と、のうちの少なくとも1つ、又は2つ以上の任意の組み合わせを含む」旨の限定事項を削除したものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明及び引用文献2に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び引用文献2に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2021-004667

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