特許拒絶査定不服審判
2016-006771
エポキシ化合物をベースとするアミン付加物
- 審判番号
- 2016-006771
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2014-541563外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年05月09日
- 審決日
- 2017年11月10日
- 公報発行日
- 2018年05月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ビイク-ヒエミー ゲゼルシャフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
- 【請求人代理人】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
- 【請求人代理人】前川 純一
- 【請求人代理人】二宮 浩康
- 【請求人代理人】上島 類
- 分類
- P18 .121-WZ (C08G)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2014-541563「エポキシ化合物をベースとするアミン付加物」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 5月23日国際公開、WO2013/072053、平成26年12月15日国内公表、特表2014-533749〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、2012年11月15日(パリ条約に基づく優先権主張 外国庁受理2011年11月18日 欧州特許庁(EP))を国際出願日とする特許出願であって、平成27年6月26日付けで拒絶理由が通知され、同年12月7日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成28年1月4日付けで拒絶査定がされ、同年5月9日に拒絶査定不服審判の請求がされ、その後、当審において、平成29年6月7日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年9月11日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。
第2 本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1ないし9に係る発明は、平成29年9月11日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲及び平成26年7月15日に提出された明細書の翻訳文の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「【請求項1】
ポリアミン成分(A)と、ポリエステル成分(B)と、炭化水素成分(C)とを、
(A):(B)=1:100~1:4、および
(A):(C)=1:10~10:1
の質量比で反応させるアミン付加物の製造方法であって、前記反応は、
反応変法i)によれば、まずポリアミン成分(A)とポリエステル成分(B)から反応中間生成物(A-B)を生成し、それを引き続き炭化水素成分(C)と反応させるか、または
反応変法ii)によれば、まずポリアミン成分(A)と炭化水素成分(C)から反応中間生成物(A-C)を形成させ、それを次いでポリエステル成分(B)と反応させるか、または
反応変法iii)によれば、まずポリアミン成分(A)をポリエステル成分(B)および炭化水素成分(C)と同時に反応させるか、
のいずれかで実施し、その際、
前記ポリアミン成分(A)は、有機ポリアミン化合物(A’)の形で存在し、
前記有機ポリアミン化合物(A’)は、第一級および第二級アミノ基から選択される、それぞれポリエステル成分(B)および炭化水素成分(C)と反応可能なそれぞれ少なくとも3つのアミノ基(A’+)を有し、
前記ポリエステル成分(B)は、ポリエステル化合物(B’)の形で存在し、
前記ポリエステル化合物(B’)は、それぞれ第一級アミノ基を有さずかつそれぞれ第二級アミノ基を有さず、それぞれ少なくとも3つのエステル基を有し、かつカルボキシル基もしくは無水カルボン酸基として存在する、第一級および/または第二級アミノ基と反応可能なそれぞれ1つのカップリング基(B’+)を有し、かつ
前記炭化水素成分(C)は、それぞれ1つの結合基(C’+)を有する分枝鎖状もしくは非分枝鎖状の飽和もしくは不飽和の炭化水素化合物(C’)の形で存在し、
前記炭化水素化合物(C’)は、それぞれ第一級アミノ基を有さず、それぞれ第二級アミノ基を有さず、それぞれカルボキシル基を有さず、かつそれぞれ無水カルボン酸基を有さず、かつそれぞれ炭素原子の、元素O、N、P、S、Siの群から選択されるヘテロ原子に対する全体比が少なくとも2:1であり、その際、前記結合基(C’+)は、それぞれ、第一級アミノ基と反応して第二級アミノ基を生成する特性および/または第二級アミノ基と反応して第三級アミノ基を形成する特性を有し、かつ前記結合基(C’+)は、それぞれ更に一般式(I)
【化1】
[式中、R1、R2およびR3は、それぞれ同一または異なって、それぞれ互いに独立して、Hおよび/または飽和の分枝鎖状もしくは非分枝鎖状のC1~C12-炭化水素基によって表される]のエポキシ官能基の形で存在する(ただし、前記炭化水素成分(C)が、エチレンオキサイド、1,2-プロピレンオキサイド、1,2-ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、n-ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、4-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル、4-sec-ブチルフェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、バーサティック酸グリシジルエステル、又はシクロアルケン-1,2-エポキサイドである場合を除く)、アミン付加物の製造方法。」
第3 刊行物の記載等
1 刊行物1の記載等
(1)刊行物1の記載
当審拒絶理由で『刊行物2』として引用され、本願の優先権主張日前に頒布された刊行物である特開平2-48029号公報(以下、「刊行物1」という。)には、以下の記載がされている。なお、下線は当審で付したものである。
1a 「2.特許請求の範囲
1.(1)(a)一般式(I)
(式中、R1はH、アルキル基、フェニル基、アルコキシメチル基、アルケノキシメチル基、フェノキシメチル基、アルキル置換フェノキシメチル基、アシルオキシメチル基を表わす。)で表わされる化合物及び/又は
(b)一般式(II)
(式中、nは3~10の整数を表わす。)
で表わされる化合物と
ポリエチレンイミンとの反応生成物と、
(2)一般式(III)
(式中、R2は炭素原子数7~38のアルキル基、アルキレン基、アルキルジエン基、シクロアルキル基、シクロアルキレン基、縮合多環式飽和炭化水素基、フェニル基、縮合多環式芳香族炭化水素基、ヒドロキシル基置換多環式芳香族炭化水素基を表わし、xは1~20の間の任意の数値を表わし、yは0.1~10の間の任意の数値を表わす。)
で表わされる化合物とを反応させて得られる生成物から成ることを特徴とする分散剤。
・・・
3.ポリエチレンイミンの数平均分子量が300~50,000の範囲にある請求項1記載の分散剤又は請求項2記載の分散液。
4.一般式(I)で表わされる化合物及び/又は一般式(II)で表わされる化合物の使用量が、ポリエチレンイミン100重量部に対し、0.01~100重量部の範囲にある請求項1記載の分散剤又は請求項2記載の分散液。
5.一般式(III)で表わされる化合物が、
(1)(a)一般式(IV)
(式中、R2は炭素原子数7~38のアルキル基、アルキレン基、アルキレンジエン基、シクロアルキル基、シクロアルキレン基、多環式飽和炭化水素基、フェニル基、多環式芳香族炭化水素基、ヒドロキシル基置換多環式芳香族炭化水素基を表わす。)
で表わされる化合物と
(b)ε-カプロラクトン
との反応生成物と、
(2)12-ヒドロキシステアリン酸
とを脱水縮合させて得られる化合物である請求項1記載の分散剤又は請求項2記載の分散液。
6.一般式(III)で表わされる化合物の酸価が20~120の範囲にある請求項1記載の分散剤又は請求項2記載の分散液。
・・・」(特許請求の範囲)
1b 「〔産業上の利用分野〕
本発明は、有機液体中に無機或は有機顔料の如き微細な粉末状固体を分散させる場合、その有機液体が極性系である場合は勿論のこと、非極性系である場合に於いても、当該分散系に対し、優れた流動性と分散安定性を賦与することができ、印刷インキや塗料の如き被覆組成物全般に利用できる分散剤に関するものであり、更に詳しくは、高濃度且つ低粘度で経時的に安定であり、少ない使用量で満足な性能をもった被覆用顔料分散液を与えることの可能な分散剤及び該分散剤を含有することによって、優れた流動性と分散安定性を有する分散液を提供しようとするものである。
〔従来の技術〕
一般に、印刷インキや塗料の様な各種被覆用の色材組成物に於て、高い着色力と優れた光沢、鮮明な色調を発揮することができる有用な顔料は、微細な固体粒子から成っている。
然し乍ら、公知の各種顔料の如き微細な粒子は、オフセットインキ、グラビヤインキ、フレキソインキ及び塗料におけるが如きビヒクルポリマーを含有する非極性有機溶剤に分散させた場合、殊に高い顔料濃度に於て、流動性、貯蔵安定性の優れた色材組成物を得ることが難かしく、製造工程上、並びに得られた製品の品質に重要な影響を及ぼす種々の問題を往々にして惹起する。
即ち、微細な粒子から成る顔料を含む濃厚な分散液は、屡々高粘度を呈し、撹拌、混合する際或は製品を分散機からとり出す場合或は移送時に取扱いが困難になったり、時には貯蔵中に著しく増粘して使用困難になるとか、フラッディング、フローティング、塗膜光沢の低下、経時変色など、好ましくない現象が起きる。
非水系の印刷インキ或は塗料は、ビヒクルポリマー及び他の助剤を含有する有機液体を分散媒体とする顔料分散体であるが、この分散体の流動学的な性質の基本的な部分は、微細粒子から成る顔料の性質に依存している。
即ち、分散液の流動性が著しく不良であるとか、経時的な粘度上昇が甚だしい様な分散系にあっては、当該系内における顔料の凝集が顕著であって、この様な系における色材は流動性が不良であるだけでなく、良好な分散状態を保持する色材に比べて展色時の着色力が劣り、粗大凝集体により塗面に凹凸を生じるので平滑を失うため、光沢も著しく低下する傾向があり、従って被塗装物の商品価値を損う。」(第2頁右上欄16行目~第3頁左上欄2行)
1c 「加うるに、例えば、米国特許第4,224,212号明細書に述べられている様な、ポリエチレンイミン塩型分散剤にあっては、その実施例から明かなごとく、当該分散剤成分中のポリエチレンイミン含有率が高い為、係る組成物中に於て極性基成分をなすポリエチレンイミンの、1級アミノ基による、可溶化基成分をなすポリエステル末端カルボキシル基のプロトン引き抜きが起こり徐々にアンモニアガスを発生する事によって、分散剤自体が顕著なアンモニア臭を生じ、環境衛生上好ましからざる現象を呈する事が知られている。」(第3頁左下欄6行目~16行目)
1d 「本発明が解決しようとする課題は、有機液体中に、微細な粉末状固体特に有機、無機顔料を分散させる場合、殊に、高い顔料濃度に於て当該分散液中における顔料の凝集を防ぎ、優れた流動性と分散安定性を賦与するのに有効で、かつ熱硬化型塗料或いはインキに使用した場合、塗膜と金属の密着性を低下させず、アンモニアに起因する悪臭の発生が認められない分散剤及び該分散剤を含有する分散液を提供することにある。」(第4頁左上欄14行目~右上欄2行目)
1e 「さて、本発明分散剤調製の出発物質たるヒドロキシアルキル化ポリエチレンイミン、或はヒドロキシシクロアルキルキル化ポリエチレンイミンは、一般式(I)で表わされる1,2-エポキシ化合物、例えばエチレンオキサイド、1,2-プロピレンオキサイド、1,2-ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、n-ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、4-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル、4-sec-ブチルフェニルグリシジルエーテルアリルグリシジルエーテル、バーサティック酸グリシジルエステル、或は一般式(II)で表わされるシクロアルケン-1,2-エポキサイド、例えばシクロペンテンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、シクロオクテンオキサイドなどを、各々ポリエチレンイミンと反応させることによって得られる。」(第5頁左下欄5行目~最終行)
1f 「これを反応式で示すと、式(F)で表わされる
ポリエステル(A) ・・・(F)」
「式(F)の反応に於て、モノカルボン酸(IV)とε-カプロラクトンのモル比は1:1~20、好ましくは1:8~15である。」
(第6頁左上欄14行目~15行目、同頁左下欄1~3行目)
1g 「更に本発明分散剤の特徴と利点を列挙すれば、次のような点が挙げられる:
(イ) 流動性の向上による分散時間、エネルギーコストの節約と分散機への仕込量増加、付着ロスの減少による生産性の向上
(ロ) ミルベース数の削減による練肉回数、貯蔵スペース、在庫金利の低減
(ハ) 平版インキフラッシュベース中の顔料濃度増加による輸送コストの節約
(ニ) 色材製品中に於ける分散状態の安定化による異常凝集、色分かれの防止と色濃度、光沢等品質の向上。」(第8頁左上欄10行目~右上欄1行目)
1h 「〔実施例〕
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、言う迄もなく、本発明の主旨は、これらの実施例によって限定せられるものではない。尚、実施例中の部は、重量部を意味する。
(分散剤の調製例)
実施例1(分散剤Aの調製)
温度計、窒素導入管、コンデンサー及び攪拌機を付けた5リットル-4ツ口フラスコに、2-エチルヘキサン酸173.1g、ε-カプロラクトン1369.7g、オルトチタン酸-n-ブチル1.0gを仕込み、窒素気流中で攪拌しながら160℃で3時間保ち、付いで180℃に昇温し、3時間攪拌した。
次に内温を100℃まで下げて工業用12-ヒドロキシステアリン酸540.9g,キシレン520.7g,オルトチタン酸-n-ブチル1.0を加え、ディーン・スタークトラップを付けたのち、162℃で15時間還流した。トラップ中に留出した水の量は21.3gであった。
反応生成物を冷却し、2574gの中間体(ポリエステルB)を得た。このものの酸価は37.5mgKOH/g、不揮発分は76%であった。
次に、キシレン112.5g「エポミン SP-200」(日本触媒化学(株)製ポリエチレンイミン;平均分子量10,000)30g、キシレン112.5gを混合、撹拌しつつ1,2-ブチレンオキサイド7.5gを加え、110℃で30分間保った。
この中に上記中間体ポリエステル150.0gを加え窒素気流中、138℃で2時間加熱還流してディーン・スタークトラップ中に1.7gの水分を留出させた。
内容物を冷却し、酸価15.2mgKOH/g、アミン価86.7mgKOH/g、不揮発分50.0%の淡黄褐色透明、やや粘稠性な分散剤溶液292.3gを得た。
実施例2(分散剤Bの調製)
キシレン79.5.g、「エポミン SP-200」20.5gを混合し、100℃に保って撹拌しつつスチレンオキサイド5.1gを加えた。これを130℃で30分加熱撹拌し、100℃に冷却、実施例1の中間体ポリエステル99.7gを加え、窒素気流中138℃で3時間加熱還流し、ディーン・スタークトラップ中に1.1gの水を分離した。
内容物を冷却し、酸価14、7mgKOH/g、アミン価82.0mgKOH/g、不揮発分52.0%の分散剤溶液203.6gを得た。このもののガードナー法による粘度は25℃に於てR~Sであり、ガードナー法による色数は7~8であった。
実施例3(分散剤Cの調製)
実施例1の中間体ポリエステル100.0g、「エポミン SP-018」(日本触媒化学(株)製ポリエチレンイミン;平均分子量1800)20.5g、キシレン79.5gを混合し、120℃に保って撹拌しつつ、「カージュラ E-10」(シェル油化エポキシ(株)製;バーサティック酸グリシジルエステル)5.1gを添加し、窒素気流中に於て138℃、3時間加熱撹拌し、ディーン・スタークトラップ中に1.5gの水を分離した。酸価14.6mgKOH/g、アミン価80.9mgKOH/g、不揮発分52.0%、粘度N~O(ガードナー法;25℃)、色数7~8(ガードナー法)の分散剤溶液204.3gを得た。
実施例4(分散剤Dの調製)
キシレン79.6g、「エポミン SP-012」(日本触媒化学(株)製ポリエチレンイミン;平均分子量1200)20.5gを混合攪拌しつつ、シクロヘキセンオキサイド5.1gを100℃で加えた。内温を120℃に上げ、2時間保ったのち、100℃に冷却し、実施例1の中間体ポリエステル100.0gを添加し、138℃で3時間加熱攪拌還流させ、ディーン・スタークトラップに1.3gの水を分離した。酸価10.5mgKOH/g、アミン価81.7mgKOH/g、粘度J~K(ガードナー法;25℃)、色数7~8(ガードナー法)、不揮発分50.0%の分散剤溶液206.8gを得た。
実施例5(分散剤Eの調製)
実施例1の中間体ポリエステル100.0g、キシレン79.6g、「エポミン SP-200」20.5gを混合攪拌し、120℃で攪拌しつつ、「エピオール B」(日本油脂(株)製;n-ブチルグリシジルエーテル)5.1gを加えた。窒素気流中で混合物を138℃で2時間加熱還流し、ディーン・スタークトラップ中に1.3gの水を分離した。
生成物の得量は199.1gであって、その酸価は14.1mgKOH/g、アミン価82.7mgKOH/g、不揮発分53.0%、ガードナー法による色数7~8、粘度O~P(ガードナー法、25℃)であった。
実施例6(分散剤Fの調製)
実施例1の中間体ポリエステル100.0g、「エポミン SP-006」(日本触媒化学(株)製ポリエチレンイミン;分子量600)20.5g、キシレン79.6gを混合攪拌して溶解した。混合物を120℃に加熱し、「エピオール TB」(日本油脂(株)製、t-ブチルフェニルグリシジルエーテル)5.1gを加え、窒素気流中138℃で2時間加熱還流し、ディーン・スタークトラップ中に1.2gの水を分離した。
反応液を冷却し、酸価13.5mgKOH/g、不揮発分53%、色数7(ガードナー法)、粘度Q~R(ガードナー法)の分散剤溶液204.9gを得た。
実施例1~6において、各分散剤の調製の際に、アンモニアに起因する悪臭の発生は認められなかった。また、実施例1~6で得た各分散剤を18リッター容器に各々1週間密封保存した後、容器を開封したところ、いずれの分散剤からもアンモニアに起因する悪臭の発生は認められなかった。
(分散液の調製例)
実施例7
「レジノ・レッドBH-1」(レジノ・カラー(株)製品 商品名:C.I.Pigment Red-48-3)15部、トルエン25部、分散剤A2部を径5mmのガラスビーズ100部と共にペイントシェイカーで2時間振盪して充分に解膠分散させた。分散液は良好な流動性を示し、グラビア印刷インキの製造に適しており、少なくとも一週間は凝集、沈降が認められなかった。
実施例8
「シムラー・レッド3014」(大日本インキ化学工業(株)製品 商品名:C.I.Pigment Red-48-2)15部、トルエン25部、分散剤B2部を径5mmのガラスビーズ100部と共にペイントシェイカーで2時間振盪して充分に解膠分散させた。分散液は良好な流動性を示し、グラビア印刷インキの製造に適しており、長時間放置後も凝集、沈降が認められなかった。
実施例9
「シムラー・レッド3014」25部、トルエン40部、メチルエチルケトン20部、酢酸エチル10部、“ビニライト”VAGH(U.C.C社製:塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂)3部、分散剤C2部を径5mmのガラスビーズ200部と共にペイントシェイカーで3時間振盪して充分に解膠分散させた。分散液は良好な流動性を示し、グラビア印刷インキの製造に適しており、長時間放置後も凝集、沈降やゲル化が認められず分散安定性は良好であった。
実施例10
「シムラー・レッド3084」(大日本インキ化学工業(株)製品 商品名:C.I.Pigment Red-48-3)15部、トルエン20部、メチルエチルケトン5部、酢酸エチル5部、「ビニライト VAGH」(U.C.C社製:塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂)3部、分散剤D2部を径5mmのガラスビーズ100部と共にペイントシェイカーで3時間振盪して充分に解膠分散させた。分散液は良好な流動性を示し、グラビア印刷インキの製造に適しており、長時間放置後も凝集、沈降やゲル化が認められず分散安定性は良好であった。
実施例11
「シムラー・ブリリアント・カーミン6B」233(大日本インキ化学工業(株)製品 商品名:C.I.Pigment Red 57)20部、トルエン40部、メチルエチルケトン20部、酢酸nブチル10部、イソホロン5部、“ビニライト”VAGH3部、分散剤E2部を径5mmのガラスビーズ200部と共にペイントシェイカーで3時間振盪して充分に解膠分散させた。分散液は良好な流動性を示し、グラビア印刷インキの製造に適しており、1ケ月後も凝集、沈降やゲル化が認められず分散安定性は良好であった。
実施例12
「シムラー・レッド4134A」(大日本インキ化学工業(株)製品 商品名:C.I.Pigment Red150)18部、「パーマネントカーミンFRB-02」(Hoechat A.G製:C.I.Pigmsnt Red 146)2部、トルエン40部、メチルエチルケトン20部、シクロヘキサノン5部、イソホロン5部、セロソルブアセテート5部、“ビニライト”VAGH3部、分散剤F2部を径5mmのガラスビーズ200部と共にペイントシェイカーで3時間振盪して充分に解膠分散させた。分散液は良好な流動性を示し、グラビア印刷インキの製造に適しており、1ケ月後も凝集、沈降やゲル化が認められず分散安定性は良好であった。
実施例13
「ファストデン・グリーンS」(大日本インキ化学工業(株)製品 商品名:C.I.Pigment Green7)20部、トルエン40部、メチルエチルケトン20部、酢酸エチル10部、シクロヘキサノン5部、「ビニライト VAGH」2部、分散剤G3部を径5mmガラスビーズ200部と共にペイントシェイカーで3時間振盪して充分に解膠分散させた。分散液は良好な流動性を示し、グラビア印刷インキの製造に適しており、長時間放置後も凝集、沈降やゲル化が認められず分散安定性は良好であった。
実施例14
「シムラー・レッド3075」(大日本インキ化学工業(株)製品 商品名:C.I.Pigment Red-48-3)15部、キシレン32部、分散剤H3部を径5mmのガラスビーズ100部と共にペイントシェイカーで3時間振盪して充分に解膠分散させた。分散液は良好な流動性を示し、グラビア印刷インキの製造に適しており、長時間放置後も凝集、沈降やゲル化が認められず分散安定性は良好であった。
実施例15
「カーミン6Bトナー750」(大同化成(株)製品 商品名:C.I.Pigment Rad 57)20部、トルエン40部、酢酸エチル10部、メチルエチルケトン25部、分散剤I5部を径5mmのガラスビーズ100部と共にペイントシェイカーで3時間振盪して充分に解膠分散させた。分散液は良好な流動性を示し、グラビア印刷インキの製造に適しており、少なくても一週間は凝集、沈降やゲル化が認められず分散安定性は良好であった。
実施例16
「シムラー・ファスト・イエロー4090G」(大日本インキ化学工業(株)製品 商品名:C.I.Pigment Yellow 14)20部、トルエン40部、酢酸エチル10部、シクロヘキサノン25部、分散剤J5部を径5mmのガラスビーズ300部と共にペイントシェイカーで4時間振盪して充分に解膠分散させた。分散液は良好な流動性を示し、グラビア印刷インキの製造に適しており、少なくても一週間は凝集、沈降やゲル化が認められず分散安定性は良好であった。
実施例17
「イルガジン・イエロー2GLTE」(CIBA-Geigy社製品 商品名:C.I.Pigment Yellow 109)20部、トルエン45部、メチルエチルケトン25部、酢酸エチル5部、分散剤J5部を径5mmのガラスビーズ200部と共にペイントシェイカーで3時間振盪して充分に解膠分散させた。分散液は良好な流動性を示し、グラビア印刷インキの製造に適ており、少なくても一週間は凝集、沈降やゲル化が認められず分散安定性は良好であった。
実施例18
「ラーベン450」(コロンビアカーボン(株)製カーボンブラック)15部、キシレン34部、分散剤A1部を径5mmのガラスビーズ50部と共にペイントシェイカーで1時間振盪して充分に解膠分散させた。分散液は良好な流動性を示し、少なくても一週間は凝集、沈降やゲル化が認められず分散安定性は良好であった。
実施例19
「ファストゲン・ブルーFGF」(大日本インキ化学工業(株)製品 商品名:C.I.Pigment Blue15-3)15部、キシレン34部、分散剤A1部を径5mmのガラスビーズ50部と共にペイントシェイカーで1時間振盪して充分解膠分散させた。分散液は良好な流動性を示し、少なくても一週間は凝集、沈降やゲル化が認められず分散安定性は良好であった。
実施例20
「ファストゲン・ブルーNK」(大日本インキ化学工業(株)製品 商品名:C.I.Pigment Blue15-3)10部、「スーパーベッカミン L-105」(大日本インキ化学工業(株)製品 商品名)3.5部、キシレン35.5部、分散剤A1部を径5mmのガラスビーズ50部と共にペイントシェイカーで1時間振盪して充分に解膠分散させた。これを分散液Aとする。
一方、「ダイアナール 5650」(三菱レーヨン(株)製品 商品名)24部、「スーパーベッカミン L-105」(大日本インキ化学工業(株)製品 商品名)6部、「タイペーク CR-5N-2」(石原産業(株)製品 商品名)20部を径5mmのガラスビーズ50部と共にペイントシェイカーで1時間振盪して充分に解膠分散させた。これを分散液Bとする。
そして分散液Aと分散液Bとを1:10で配合し、ホモミキサーで2000RPM、2分間撹拌して充分に解膠分散させた。これを分散液Cとする。
<塗料試練>
〔碁盤目剥離試験〕
分散液CをNo.40のバーコーターで亜鉛引き鉄板上に塗布し、200℃、90秒間焼き付けた。この塗膜にカッターで縦横11本ずつ、1mm間隔で格子状の刻みを入れ、その上にセロハンテープを貼り、これを剥してもまったく塗膜の欠落は見られなかった。また塗膜の光沢も良好であった。
〔色分かれ試験〕
また同様に分散液CをNo.40のバーコーターでアート紙上に塗布し、その一部を指で軽くこすり、別の一部に分散液Cを数滴垂らした。それぞれの部分の色合いや光沢にはほとんど差がなく、色むらや顔料の固まりなども見られなかった。
比較例1
実施例20の塗料試験で分散液Aの中に配合した分散剤Aの代わりに、「ソルスパース13240」(ICI社製品 商品名)を用いた場合は、セロハンテープによる剥離試験で塗膜がほとんど欠落してしまい、またアート紙上に展色した塗膜の表面と、指で軽くこすった部分の色合いや光沢が異なってしまった。
比較例2
また実施例20の塗料試験で、分散剤Aの代わりに疎水基が12-ヒドロキシステアリン酸のみのもの(特願61-154190、特開No.63-12335)を用いた場合は、セロハンテープによる剥離試験で塗膜が3~4割欠落してしまい、親水基にエポキシ化合物を含まないもの(特願No.62-30768)を用いた場合はアート紙上に展色した塗膜の表面と、指で軽くこすった部分の色合いや光沢が異なった。
〔発明の効果〕
本発明の分散剤を顔料分散剤として使用した非水系塗料、印刷インキ及びそれらの着色ベースは、優れた流動性及び分散安定性を示す。また、本発明の分散剤は金属用の塗料又は印刷インキに使用した場合にも塗膜と金属との接着性を阻害しない。
更に、本発明の分散剤は、アンモニアに起因する悪臭の発生が認められないので、分散剤を用いる製造現場の環境を大巾に改善することができる。」(第8頁右上欄2行目~第12頁最終行)
(2)引用発明
記載1aの請求項1の記載は、要するに、「一般式(I)で表される化合物及び/又は一般式(II)で表される化合物と、ポリエチレンイミンとの反応生成物と、一般式(III)で表される化合物とを反応させて得られる生成物から成る分散剤」という物に関する記載であるが、この記載から、実質的に、「一般式(I)で表される化合物及び/又は一般式(II)で表される化合物」と、「ポリエチレンイミン」とを反応させ、その結果得られた反応生成物と、当該反応生成物と一般式(III)で表される化合物とを反応させ、その結果得られる生成物の製造方法が実質的に記載されているといえる。
なお、記載1aの請求項1には、一般式(III)の記載があり、当該式中のyの括弧に存在するメチレン鎖の数は「18」と記載されているが、請求項1を引用する請求項5や実施例には、繰り返し数がyとして括弧書きで表される化学構造の具体的な化合物として、「12-ヒドロキシステアリン酸」が記載されており、12-ヒドロキシステアリン酸は、総炭素数18の酸であるものの、繰り返し数がyで表される部位のメチレン鎖の数は10であるから、一般式(III)中における「18」の記載は、「10」の誤記であると認められる。
したがって、刊行物1には、記載1aの請求項1、3及び4の記載から、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。
「(a)一般式(I)
(式中、R1はH、アルキル基、フェニル基、アルコキシメチル基、アルケノキシメチル基、フェノキシメチル基、アルキル置換フェノキシメチル基、アシルオキシメチル基を表わす。)で表わされる化合物及び/又は
(b)一般式(II)
(式中、nは3~10の整数を表わす。)
で表わされる化合物と
ポリエチレンイミンとの反応生成物と、
(2)一般式(III)
(式中、R2は炭素原子数7~38のアルキル基、アルキレン基、アルキルジエン基、シクロアルキル基、シクロアルキレン基、縮合多環式飽和炭化水素基、フェニル基、縮合多環式芳香族炭化水素基、ヒドロキシル基置換多環式芳香族炭化水素基を表わし、xは1~20の間の任意の数値を表わし、yは0.1~10の間の任意の数値を表わす。)
で表わされる化合物とを反応させて得られる生成物の製造方法であって、
ポリエチレンイミンの数平均分子量が300~50,000の範囲にあり、
一般式(I)で表わされる化合物及び/又は一般式(II)で表わされる化合物の使用量が、ポリエチレンイミン100重量部に対し、0.01~100重量部の範囲にある、生成物の製造方法。」
2 刊行物2の記載
当審拒絶理由で『刊行物1』として引用され、本願の優先権主張日前に頒布された刊行物である特開平11-197485号公報(以下、「刊行物2」という。)には、以下の記載がされている。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 一般式(1)
(合議体注:式は省略)
(式中kは9~230の整数、mは2~6の整数を示す。)で示されるポリアルキレンポリアミンに、一般式(1-1)
(合議体注:式は省略)
(式中R1は水素原子または、炭素数8~22のカルボン酸又は分枝ヒドロキシカルボン酸残基を示し、pは2~11の整数、qは2~1000の整数を示す。)で示されるポリエステル基、一般式(1-2)
(合議体注:式は省略)
(式中Yは炭素数8~22のカルボン酸残基を示す。)で示される脂肪酸基、および一般式(1-3)
(合議体注:式は省略)
(式中R2は水素またはメチル基を示し、nは1~50の整数を示す)で示されるポリオキシアルキレン基の置換基を一般式(1)1重量部に対し、一般式(1-1)を0~50重量部、一般式(1-2)を0.01~1.6重量部、一般式(1-3)を0~2.0重量部導入した化合物またはその塩からなることを特徴とする分散剤。」(請求項1)
「【0004】本発明者らによる検討によると、分散剤の効果は、ポリアミン部分のアミンは顔料吸着基であり、ポリエステル部分の極性は溶媒との溶解性の作用部分すなわち分散性能に寄与するものと推定された。また、ポリアミン部分の分子量とポリエステル部分の分子量の大きさとその比もまた分散性能に関係している事も判明した。さらに、アミノ基近隣がポリエステル等の立体的に嵩高い鎖が密集していると立体障害のために顔料が吸着するためには不利であることが解った。」(段落【0004】)
3 刊行物3の記載
当審拒絶理由で従来技術として引用され、刊行物1に先行技術として記載のある、本願の優先権主張日前に頒布された刊行物である米国特許第4224212号明細書(以下、「刊行物3」という。)には、以下の記載がされている。(なお、和訳は対応日本公開特許公報である特開昭54-37082号公報によった。)
「特許請求の範囲
1.ポリ(低級アルキレン)イミンと、遊離のカルボン酸基を有するポリエステルとの反応生成物より成り、その中でそれぞれのポリ(低級アルキレン)イミン連鎖に最低2つのポリエステル連鎖が結合された分散剤」(請求項1)
「該分散剤中のポリエステル対ポリアルキレンイミンの重量比は、好ましくは1以上、および有利に1~10の範囲内である。」(第2頁第2欄36~38行)
第4 対比
本願発明と引用発明を対比する。
1 本願発明の「ポリアミン成分(A)」は、ポリエチレンイミンを包含する概念であって(本願明細書の段落【0029】、【0120】)、「ポリエチレンイミン」は、有機ポリアミン化合物といえるから、引用発明の「ポリエチレンイミン」は、本願発明の「有機ポリアミン化合物の形で存在する」、「ポリアミン成分(A)」に相当する。
そして、引用発明の「ポリエチレンイミン」の数平均分子量が300~50,000の範囲にあり、「ポリエチレンイミン」の分子式が、[(CH2-CH2-NH2)n](分子量44の繰返し単位)で表されることを考慮すれば、少なくとも6.8個(=300/6.8)の上記分子式を有するものであり、当該ポリエチレンイミンは、少なくとも3つのアミノ基を有するものであるといえる。
2 引用発明の「一般式(III)で表される化合物」は、エステル結合によってポリマー鎖が形成されていることから、本願発明の「ポリエステル成分(B)」に相当する。
そして、一般式(III)で表される化合物は、ポリエステル化合物の形で存在し、一般式(III)中には第一級及び/又は第二級アミノ基を有さず、エステル基を有し、また一般式(III)の右末端に、カルボキシル基として存在する、第一級及び/又は第二級アミノ基と反応可能なカップリング基を有するものである。
3 引用発明の「一般式(I)で表される化合物」は、本願発明の「炭化水素成分(C)」に相当する。
そして、引用発明の「一般式(I)で表される化合物」は、エポキシ基を有し、この基は、本願発明の一般式(I)で表され、R1~R3がそれぞれHである、エポキシ官能基の形で存在する結合基(C’+)に相当する。また、「一般式(I)で表される化合物」は、置換基R1の選択肢の記載からみて、分岐鎖状もしくは非分岐鎖状の飽和もしくは不飽和の炭化水素化合物の形で存在し、アミノ基を有さず、カルボキシル基、無水カルボン酸基を有さないものであり、さらに、炭素原子の、元素O、N、P、S、Siの群から選択されるヘテロ原子に対する全体比が少なくとも2:1であるものを包含すると認められる。
4 引用発明においては、「一般式(I)で表される化合物」と「ポリエチレンイミン」とを反応させ、その反応生成物を、「一般式(III)で表される化合物」と反応させて、「生成物」を製造しているから、これらの工程は、本願発明における「反応変法ii)によれば、まずポリアミン成分(A)と炭化水素成分(C)から反応中間生成物(A-C)を形成させ、それを次いでポリエステル成分(B)と反応させる」、「アミン付加物の製造方法」に相当し、引用発明の「生成物」は、本願発明の「アミン付加物」に相当する。
5 そして、引用発明も、上記のように、「一般式(I)で表される化合物」と「ポリエチレンイミン」、それに引き続き、「一般式(III)で表される化合物」とを製造していることから、「ポリエチレンイミン」のアミノ基は、「一般式(I)で表される化合物」、「一般式(III)で表される化合物」と反応可能であると認められ、「一般式(III)で表される化合物」のカルボキシル基は、「ポリエチレンイミン」中の第一級及び/又は第二級アミノ基と反応可能であり、「一般式(I)で表される化合物」中のエポキシ基は、「ポリエチレンイミン」中に存在する第一級アミノ基と反応して第二級アミノ基を生成する特性および/または第二級アミノ基と反応して第三級アミノ基を形成する特性を有するものと認められる。
6 また、引用発明は、ポリエチレンイミン100重量部に対し、一般式(I)で表される化合物の使用量を0.01~100重量部の範囲とするものであるから、本願発明で特定される「ポリアミン成分(A)と炭化水素成分(C)の質量比(A):(C)=1:10~10:1」と重複一致するものである。
7 したがって、両者は、
「ポリアミン成分(A)と、ポリエステル成分(B)と、炭化水素成分(C)とを、
(A):(C)=1:10~10:1
の質量比で反応させるアミン付加物の製造方法であって、前記反応は、
反応変法ii)によれば、まずポリアミン成分(A)と炭化水素成分(C)から反応中間生成物(A-C)を形成させ、それを次いでポリエステル成分(B)と反応させ、その際、
前記ポリアミン成分(A)は、有機ポリアミン化合物(A’)の形で存在し、
前記有機ポリアミン化合物(A’)は、第一級および第二級アミノ基から選択される、それぞれポリエステル成分(B)および炭化水素成分(C)と反応可能なそれぞれ少なくとも3つのアミノ基(A’+)を有し、
前記ポリエステル成分(B)は、ポリエステル化合物(B’)の形で存在し、
前記ポリエステル化合物(B’)は、それぞれ第一級アミノ基を有さずかつそれぞれ第二級アミノ基を有さず、それぞれエステル基を有し、かつカルボキシル基として存在する、第一級および/または第二級アミノ基と反応可能なそれぞれ1つのカップリング基(B’+)を有し、かつ
前記炭化水素成分(C)は、それぞれ1つの結合基(C’+)を有する分枝鎖状もしくは非分枝鎖状の飽和もしくは不飽和の炭化水素化合物(C’)の形で存在し、
前記炭化水素化合物(C’)は、それぞれ第一級アミノ基を有さず、それぞれ第二級アミノ基を有さず、それぞれカルボキシル基を有さず、かつそれぞれ無水カルボン酸基を有さず、かつそれぞれ炭素原子の、元素O、N、P、S、Siの群から選択されるヘテロ原子に対する全体比が少なくとも2:1であり、その際、前記結合基(C’+)は、それぞれ、第一級アミノ基と反応して第二級アミノ基を生成する特性および/または第二級アミノ基と反応して第三級アミノ基を形成する特性を有し、かつ前記結合基(C’+)は、それぞれ更に一般式(I)
【化1】
[式中、R1、R2およびR3は、それぞれHで表される]のエポキシ官能基の形で存在する、アミン付加物の製造方法。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1>
本願発明は、ポリアミン成分(A)と、ポリエステル成分(B)の質量比が、(A):(B)=1:100~1:4の質量比で反応させると特定されているのに対し、引用発明は、その点が特定されていない点。
<相違点2>
本願発明は、ポリエステル化合物(B’)が、少なくとも3つのエステル基を有すると特定されているのに対し、引用発明は、その点が特定されていない点。
<相違点3>
本願発明は、炭化水素成分(C)が、エチレンオキサイド、1,2-プロピレンオキサイド、1,2-ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、n-ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、4-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル、4-sec-ブチルフェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、バーサティック酸グリシジルエステル、又はシクロアルケン-1,2-エポキサイドである場合を除くと特定されているのに対し、引用発明では、その点が特定されていない点。
第5 相違点についての判断
そこで、相違点について、以下に検討する。
1 相違点1について
本願発明の解決しようとする課題は、「品質的に価値が高く、かつできるだけ汎用的に使用できる分散添加剤の製造方法を提供すること」(本願明細書段落【0008】)であると認められるところ、引用発明が解決しようとする課題も、「有機液体中に無機或は有機顔料の如き微細な粉末状固体を分散させる場合、その有機液体が極性系である場合は無論のこと、非極性系である場合に於いても、当該分散系に対し、優れた流動性と分散安定性を賦与することができ、・・・高濃度且つ低粘度で経時的に安定であり、少ない使用量で満足な性能を持った被覆用顔料分散液を得ること」(記載1b)、「有機液体中に、微細な粉末状固体・・・を分散させる場合、殊に、高い顔料濃度に於て当該分散液中における顔料の凝集を防ぎ、優れた流動性と分散安定性を賦与するのに有効で、・・・分散剤・・・を提供すること」(記載1d)であると認められるから、両者の解決しようとする課題は同じである。
確かに、刊行物1には、ポリエチレンイミンと、一般式(III)で表されるポリエステルとの質量比については、一般的な明示の記載はない。しかし、引用発明の実施例1には、ポリエチレンイミンと一般式(III)で表される化合物である中間体ポリエステルBとの質量比は、(30g):(150g×不揮発分76%=114g)=1:3.8であり、本願発明で特定される(A):(B)の質量比の下限である1:4よりわずかにポリエステルの比率が低い質量比が開示されている。
そして、刊行物1の記載1cには、先行技術として、刊行物3が記載されており、刊行物3には、分散剤中のポリエステル対ポリアルキレンイミンの重量比が、好ましくは1以上、有利には1~10の範囲内であることが記載されている。
また、刊行物2には、ポリアミン部分とポリエステル部分とを有する分散剤としては、ポリアミン部分は顔料吸着基であり、ポリエステル部分は溶媒との分散性能に寄与すると推定され、ポリアミン部分の分子量とポリエステル部分の分子量の大きさとその比は、分散性能に関係することが記載されており(刊行物2の段落【0004】)、また、ポリエステル成分及びポリエチレンイミン成分を含む分散剤の技術分野において、ポリエステル対ポリアルキレンイミンの重量比の数値範囲として、1:100~1:4という数値範囲は周知の技術事項である(例えば刊行物2の請求項1、刊行物3の第2頁第2欄36~38行、特開平7-25993号公報の段落【0016】、【0017】)。
そうすると、引用発明において、刊行物2及び3の記載を参照しつつ、また上記周知の技術事項も考慮し、溶媒や分散させるべき顔料の性質等に応じて、ポリエステル対ポリエチレンイミンの重量比を、上記周知の数値範囲から好適な範囲を選択し、本願発明で特定される1:100~1:4の範囲内とすることは、当業者が容易に想到することができたものである。
また、本願発明において、(A):(B)を1:100~1:4の範囲とすることに、格別の臨界的意義を認めることができない。
2 相違点2について
刊行物1の記載1fには、一般式(III)で表される化合物の製造方法に関して、R2COOHで表されるモノカルボン酸と、ε-カプロラクトンとの反応式(F)が記載されており、さらに、式(F)の反応において、モノカルボン酸とε-カプロラクトンとのモル比が、1:1~20、好ましくは1:8~15であることが記載されている。ε-カプロラクトンは、一般式(III)の化合物における繰返し数xで表される単位の原料になる化合物であるから、この記載から、一般式(III)における繰り返し数xが、8~15であることが実質的に記載されているといえる。
また、刊行物1の実施例1には、2-エチルへキサン酸(分子量144.21)を173.1g(約1.2モル)、ε-カプロラクトン(分子量114.14)1369.7g(約12モル)、12-ヒドロキシステアリン酸(分子量300.48)540.9g(1.5モル)の原料を反応させて、不揮発分76%の2574gのポリエステルBを製造したことが記載されている。(なお、得られたポリエステルBの量は、2574g×76%=1956gであり、上記3種の原料の合計量が、173.1g+1369.7g+540.9g=2083.7gであること、原料を全て重合すると、エステルの縮合により水が失われ(概算で、12モル×18g/モル(水の分子量)=約216g)、2083.7-216=1867.7gのポリエステルが生成することを考慮すると、上記3種の原料は、ほぼ全て反応したものと考えられる。)
そうすると、当該実施例では、2-エチルへキサン酸に対するε-カプロラクトンの比xは12/1.2=10であり、2-エチルへキサン酸に対する12-ヒドロキシステアリン酸の比yは、1.8/1.2=1.5であるから、一般式(III)のx、yに当てはめて考えると、エステル基を11.5個有する化合物に相当し、刊行物1の実施例において、少なくとも3つのエステル基を有するポリエステル化合物が記載されている。
そうすると、引用発明のポリエステル化合物(B’)は、少なくとも3つのエステル基を有するものを包含しているといえるから、相違点2は、実質的な相違点とはいえないか、仮にそうでないとしても、刊行物1の上記明細書及び実施例の記載に基づいて、一般式(III)で表される化合物のエステル基を少なくとも3つ以上とすることは、当業者が容易になし得たものである。
そして、本願明細書の記載等を考慮しても、ポリエステル化合物(B’)におけるエステル基の数を、少なくとも3つ以上と特定することに、格別の臨界的意義及び技術的意義を認めることができない。
3 相違点3について
刊行物1の記載1eには、一般式(I)及び/又は(II)で表される化合物の例示として、「一般式(I)で表わされる1,2-エポキシ化合物、例えばエチレンオキサイド、1,2-プロピレンオキサイド、1,2-ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、n-ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、4-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル、4-sec-ブチルフェニルグリシジルエーテルアリルグリシジルエーテル、バーサティック酸グリシジルエステル、或は一般式(II)で表わされるシクロアルケン-1,2-エポキサイド、例えばシクロペンテンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、シクロオクテンオキサイドなど」の記載があり、刊行物1の1hには、その実施例が記載され、一般式(I)及び/又は(II)で表される化合物として、1,2-ブチレンオキサイド(実施例1)、スチレンオキサイド(実施例2)、バーサティック酸グリシジルエステル(実施例3)、シクロヘキサンオキサイド(実施例4)、n-ブチルグリシジルエーテル(実施例5)、t-ブチルフェニルグリシジルエーテル(実施例6)のように多種類の化合物を用いた実施例が開示され、効果の裏付けがなされている。
本願発明の相違点3に係る発明特定事項は、引用発明の一般式(I)及び/又は(II)で表される化合物のうち、これらの例示された又は実施例において具体的に使用された化合物を除く、いわゆる除くクレームによるものである。
しかしながら、上記除くクレームによっても、依然として、引用発明の一般式(I)で表される化合物で、かつ、上記除くクレームにより除外されていない化合物は、本願発明の炭化水素成分(C)と重複一致するものである(一例を挙げれば、一般式(I)で表される化合物で、R1がアルキル基であり、メチルやエチルでないもの、R1がアルコキシメチル基であり、n-ブトキシメチル基でないもの等)。
また、上記記載1eの「例えば」との文言や、記載1hの「以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、言う迄もなく、本発明の主旨は、これらの実施例によって限定せられるものではない。」との記載からも明らかなように、上記記載1e及び記載1hの記載は、あくまで一般式(I)等で表わされる1,2-エポキシ化合物の単なる例示や具体的な実施例にすぎないものであるから、一般式(I)に係る化合物の上記以外の化合物が、具体的に記載されていないことをもって、実質的な記載がなされていないとすることはできない。
したがって、相違点3は、実質的な相違点ではない。
また、相違点3が実質的な相違点であるとしても、刊行物1の実施例1~6において、一般式(I)で表わされる化合物のうち、構造がかなり異なる6種類の化合物において、効果の裏付けがなされており、一般式(I)で表わされる化合物のうち、上記以外の多少構造を変えた化合物においても、実施例1~6と同様の効果を奏することが当業者にしてみれば当然予期されるものであるから、この点を考慮しつつ、一般式(I)で特定される1,2-エポキシ化合物の中から、記載1e及び記載1hで具体的に例示・実施される以外の化合物を選択することは、当業者が容易になし得たものである。
そして、本願明細書の記載等を考慮しても、炭化水素成分(C)から、上記の特定の化合物を除くことを特定をすることに、格別の技術的意義を認めることができない。
4 効果について
刊行物1には、引用発明の効果として、多種の溶媒への優れた流動性、分散安定性、低粘度、経時的な安定性(刊行物1の記載1b)、流動性の向上、異常凝集、色分かれの防止、色濃度、光沢等の品質の向上(記載1g)が挙げられている。
また、記載1hの実施例7~20において、多種類の顔料及び複数種類の溶媒の系で、流動性、分散安定性、光沢等に優れた分散剤が実際に得られたことが確認されている。
そうすると、本願発明の効果は、引用発明1からみて格別顕著なものとはいえない。
なお、審判請求人は、平成27年12月7日付けの意見書において、比較データを添付し、本願発明は、(A):(B)の比率を1:100~1:4にすることによって、引用発明と同質ではあるが際だって優れた効果を奏する旨を主張している。
しかしながら、上記主張は、以下の理由から採用できない。
すなわち、意見書において添付された実験データの実施例1及び2は、本願発明の炭化水素成分(C)に相当する成分として、いずれも刊行物1の実施例3で用いられた「Cardula E」(バーサティック酸グリシジルエステル)を用いるものであるが、本願発明の炭化水素成分(C)は、バーサティック酸グリシジルエステルを除外するものであるから、上記実施例1及び2は、いずれも本願発明の実施例ではなく、この実験データを参酌できない。
したがって、審判請求人の主張を認めることができない。
5 まとめ
よって、本願発明は、引用発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
第6 むすび
上記第5のとおり、本願発明、すなわち請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2016-006771