特許拒絶査定不服審判
2016-006026
フレーク状ガラス及びそれを配合した化粧料
- 審判番号
- 2016-006026
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2012-552687外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年04月22日
- 審決日
- 2017年07月24日
- 公報発行日
- 2017年10月27日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .121-WZ (A61K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2012-552687「フレーク状ガラス及びそれを配合した化粧料」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 7月19日国際公開、WO2012/096182〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1.手続の経緯
本願は、平成24年1月24日(優先権主張 平成23年1月14日 日本)を国際出願日とする出願であって、原審にて、平成27年7月16日付けで通知された拒絶理由により平成28年1月21日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これを不服として同年4月22日付けで本件審判が請求され、当審にて、平成29年3月30日付けで拒絶理由を通知したところ、同年5月31日付けで手続補正がされたものである。
第2.原査定の理由
原査定の理由の一つは、
国際公開第2008/133042号(以下、「引用例1」という。)
国際公開第2002/100356号(以下、「引用例2」という。)
を引用し、
「本願の請求項2に係る発明は、その優先権主張の基礎とされた先の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆利用可能となった発明に基いて、その優先権主張の基礎とされた先の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。」
というものである。
第3.本願発明の認定
本願の請求項1に係る発明は、平成29年3月30日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものであって、補正前(原査定時)の請求項2に係る発明に相当するものと認められる。
フレーク状ガラス基材と、前記フレーク状ガラス基材の表面を被覆する被覆膜とを含むフレーク状ガラスであって、
前記フレーク状ガラス基材は、平均厚さが0.1~1.0μm、且つ、平均粒径が1~100μmであり、
前記被覆膜は、アクリルシリコーンによって形成されており、前記被覆膜の含有割合が、625±20℃にて前記フレーク状ガラスを15分以上強熱することによって生じた前記フレーク状ガラスの強熱減量が0.15~2.20質量%となるような含有割合であり、
前記アクリルシリコーンがSi-H基を含有しない、
フレーク状ガラス。
第4.引用例の記載
引用例1
摘示1-1([0008])
本発明の目的は、上記の問題を解決し、滑らかで感触がよく、透明感及び皮膚への付着性に優れ、光り過ぎない自然な仕上がり、いわゆる素肌感のある化粧料を実現するためのフレーク状ガラスを提供することにある。さらに、本発明の別の目的は、このようなフレーク状ガラスを配合した化粧料を提供することである。
摘示1-2([0009])
本発明のフレーク状ガラスは、フレーク状ガラス基材と、前記フレーク状ガラス基材の表面を被覆する被覆膜とを含むフレーク状ガラスであって、前記フレーク状ガラス基材は、平均厚さが0.1~1.0μm、且つ、平均粒径が1~100μmであり、前記被覆膜は、メチルハイドロジエンシリコーンによって形成されており、前記被覆膜の含有割合が、625±20℃の強熱減量として測定した場合に0.05~2.50質量%である。
摘示1-3([0036]~[0038])
得られたフレーク状ガラス基材に、以下の方法にてメチルハイドロジエンシリコーン(信越化学工業株式会社製、「KF-9901」)の被覆膜を形成した。すなわち、イソプロピルアルコールにメチルハイドロジエンシリコーンを希釈して、これを溶液浸漬法によってフレーク状ガラス基材に塗布し、塗布膜を70℃にて4時間乾燥させた後、160℃にて2時間焼き付けを行うことによって、被覆膜を形成した。このようにして、実施例1~12のフレーク状ガラスの試料を作製した。実施例1~12のフレーク状ガラスに用いたガラスの種類と、フレーク状ガラス基材の平均厚さ及び平均粒径とは、表2に示すとおりである。
次に、これらの試料に対して行った強熱減量の測定方法について説明する。以上のように作製された実施例1~12のフレーク状ガラス(フレーク状ガラス基材の表面にメチルハイドロジエンシリコーンからなる被覆膜が設けられたもの)を、110±5℃にて60分以上乾燥させた後、625℃にて15分以上強熱した。この強熱によって生じたフレーク状ガラスの質量の減少(減量)を測定し、強熱前のフレーク状ガラスの質量に対する減量の百分率を求めて、強熱減量とした。実施例1~12のフレーク状ガラスにおける強熱減量は、表2に示すとおりである。
[表2]
摘示1-4([0044]~[0050])
(実施例13~24、比較例13~24)
実施例1~12のフレーク状ガラス、比較例1~12の試料を用い、表4に示す各成分によりパウダーファンデーションを作製し、化粧料としての評価を行った。(実施例13~24及び比較例13~24)
表4の成分(1)~(8)をヘンシェルミキサーで混合し、この混合物に対して成分(9)~(13)を加熱溶解混合したものを添加した後、パルペライザーで粉砕し、これを直径6cmの皿に1.5kg/cm2の圧力で成形し、パウダーファンデーションを得た。
[表4]
実施例1~12のフレーク状ガラス及び比較例1~12の試料を用いて作製した実施例13~24及び比較例13~24のファンデーションの官能試験を行った。
官能試験は、10人の被験者を起用し、この10人の評価の平均値をもって、化粧料の使用感を評価した。評価基準を表5に、評価結果を表6に示す。
[表5]
[表6]
引用例2
摘示2-1(2頁18~24行)
・・・このように反応性オルガノポリシロキサンによる粉体処理は一般的に知られている技術であるが、いずれの場合も粉体表面の活性封鎖の効果が充分ではなく、特にメチルハイドロジェンポリシロキサン系の処理剤(メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルメチルハイドロジェンポリシロキサン)においては粉体に表面処理後も未反応のSi-Hが残存するため、その粉体を化粧料に配合した場合、化粧料の液性の条件によっては水素ガスが発生するなどの問題点があった。
摘示2-2(3頁10~16行)
本発明者らは、表面活性の封鎖、耐水性及び耐皮脂性等が更に改善された表面処理粉体を得る為に鋭意研究した結果、1分子中に少なくとも1個の加水分解性シリル基を有するアクリル/シリコーン系共重合体で粉体を表面処理することにより、良好な表面処理粉体を得ることが出来ること、及びこの表面処理粉体を化粧料に配合することによって、使用感に優れると共に化粧持ちの良い経時安定性に優れた化粧料が得られることを見出し、本発明を完成した。
摘示2-3(28頁6行~31頁15行)
実施例
以下に、本発明を実施例によって更に詳述するが本発明はこれによって限定されるものではない.尚,特に断らない限り,以下に記載する「%」は「重量%」を意味する。
(製造例1)
攪拌機、温度計、還流冷却器を備えたガラス製フラスコに、下記式(6)で表されるラジカル重合性オルガノポリシロキサン100重量部、メチルメタクリレート10重量部、ステアリルメタクリレート80重量部、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン10重量部、トルエン200重量部及びアゾビスイソブチロニトリル4重量部を入れ、窒素気流下に加熱し100℃で10時間重合反応を行なった。次にトルエンを減圧下で蒸留除去してアクリル/シリコーン系グラフト共重合体を得た。この共重合体は淡黄色の固体で融点は30℃であった。GPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量は42,000であった。
(製造例2)
製造例1と同様な操作で、式(6)で表されるラジカル重合性オルガノポリシロキサン100重量部、メチルメタクリレート60重量部、ブチルメタクリレート15重量部、2-エチルヘキシルアクリレート15重量部及びγ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン10重量部の共重合反応を行ない、アクリル/シリコーン系グラフト共重合体を得た。この共重合体は淡黄色透明な樹脂で、軟化点は93℃であった。GPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量は55,000であった。
・・・
実施例1~4、比較例1~4
製造例1~2で得られたアクリル/シリコーン系グラフト共重合体、及び市販品の処理剤を用いて、下記(表1)の配合にて表面処理粉体を製造した。
KF99:信越化学工業(株)製、メチルハイドロジェンポリシロキサン
KF9901:信越化学工業(株)製、ジメチルメチルハイドロジェンポリシロキサン
上記の処理剤による表面処理粉体の製造法;
減圧乾燥によってあらかじめ熱処理した未処理の酸化チタン98部(セリサイト95部)を反応器に仕込み、上記の処理剤2部(5部)をトルエンに希釈した溶液を徐々に加えながら攪拌した。さらに昇温してトルエンを溜去し、150℃にて3時間攪拌することにより焼き付け処理を行い、実施例1~4、比較例1~4の表面処理粉体を製造した。
次に、得られた表面処理粉体の評価を表面活性、耐水性、水素発生量について測定し、その結果を(表2)に示す。
【表2】
評価方法
・・・粉体の表面活性は高いほど、その色変化(色差)は大きくなる。(表2)から明らかなように、本発明のアクリル/シリコーン系グラフト共重合体による表面処理粉体、実施例1~4は、水素発生が全くなく、表面活性が抑えられ、耐水性に優れていることがわかった。
第5.引用発明の認定
引用例1には、フレーク状ガラスの発明として、
「フレーク状ガラス基材と、前記フレーク状ガラス基材の表面を被覆する被覆膜とを含むフレーク状ガラスであって、前記フレーク状ガラス基材は、平均厚さが0.1~1.0μm、且つ、平均粒径が1~100μmであり、前記被覆膜は、メチルハイドロジエンシリコーンによって形成されており、前記被覆膜の含有割合が、625±20℃の強熱減量として測定した場合に0.05~2.50質量%である」もの(摘示1-2)が記載され、その実施例において、強熱減量が、625℃にて15分以上強熱して生じたフレーク状ガラスの質量減少を意味し、また、「実施例8」として、平均厚さが0.4μm、平均粒径が10μmのフレーク状ガラス基材にメチルハイドロジエンシリコーン(信越化学工業株式会社製、「KF-9901」)を強熱減量0.26質量%となる含有割合で被覆したもの(摘示1-3)が記載されている。
してみると、引用例1には、実施例8のフレーク状ガラスとして次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「フレーク状ガラス基材と、前記フレーク状ガラス基材の表面を被覆する被覆膜とを含むフレーク状ガラスであって、
前記フレーク状ガラス基材は、平均厚さが0.4μm、且つ、平均粒径が10μmであり、
前記被覆膜は、メチルハイドロジエンシリコーン(信越化学工業株式会社製、「KF-9901」)によって形成されており、前記被覆膜の含有割合が、625℃にて前記フレーク状ガラスを15分以上強熱することによって生じた前記フレーク状ガラスの強熱減量が0.26質量%となるような含有割合であるフレーク状ガラス。」
第6.発明の対比
本願発明と引用発明とを対比すると、本願発明のうち、
「フレーク状ガラス基材と、前記フレーク状ガラス基材の表面を被覆する被覆膜とを含むフレーク状ガラスであって、
前記フレーク状ガラス基材は、平均厚さが0.4μm、且つ、平均粒径が10μmであり、
前記被覆膜の含有割合が、625℃にて前記フレーク状ガラスを15分以上強熱することによって生じた前記フレーク状ガラスの強熱減量が0.26質量%となるような含有割合であるフレーク状ガラス。」の点は、引用発明と一致し、次の点で両者は相違する。
相違点:本願発明が、「前記被覆膜は、アクリルシリコーンによって形成されており、前記アクリルシリコーンがSi-H基を含有しない」のに対し、引用発明は、前記被覆膜は、メチルハイドロジエンシリコーン(信越化学工業株式会社製、「KF-9901」)によって形成されており、前記メチルハイドロジエンシリコーンがSi-H基を含有する点。
第7.相違点の判断
上記相違点について検討する。
引用例1には、引用発明のフレーク状ガラスが、化粧料に配合されること(摘示1-1)が記載されている。
これに対し、引用例2には、メチルハイドロジェンポリシロキサン系の処理剤で粉体を表面処理すると、未反応のSi-Hが残存し、粉体を化粧料に配合した場合に水素ガスが発生するなどの問題点があること(摘示2-1)が記載され、その解決手段として、1分子中に少なくとも1個の加水分解性シリル基を有するアクリル/シリコーン系共重合体で表面処理することで経時安定性に優れた化粧料が得られること(摘示2-2)が記載されている。そして、引用例2には、いずれもSi-H基を含有しない、ラジカル重合性オルガノポリシロキサン、メチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート及びγ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを重合してアクリル/シリコーン系共重合体を製造し、当該アクリル/シリコーン系共重合体で表面処理した粉体が、同じ量のメチルハイドロジェンポリシロキサン(信越化学工業(株)製のKF9901)で表面処理した粉体と比較して、水素発生もなく、表面活性を抑え、耐水性にも優れたものになること(摘示2-3)が記載されている。
してみると、引用発明において、Si-H基を含有するメチルハイドロジエンシリコーン(信越化学工業株式会社製、「KF-9901」)に代えて、同じ量のSi-H基を含有しないアクリル/シリコーン系共重合体を被覆すること、すなわち、上記相違点を解消することは、引用例1,2の記載から、化粧料に配合した際の水素発生を避けるために、当業者が容易になし得た表面処理剤の変更といえる。
ここで請求人は審判請求書で、本願発明は、被覆膜の含有割合を0.15~2.20質量%に限定することで、化粧料に配合した際に特に優れた透明感と使用感(伸び性)とを両立している点で、引用例1,2に記載された発明に対して進歩性を有する旨主張している。
しかし、引用例1には、引用発明のフレーク状ガラスを化粧料に配合した「実施例20」において、本願発明の実施例と同程度の透明感と使用感(伸び性)が得られたこと(摘示1-4)が記載されており、また、本願明細書にも、メチルハイドロジエンシリコーンを用いた「比較例15,16」において、本願発明の実施例と同程度の透明感と使用感(伸び性)が得られたこと(【表6-2】)が記載されている。
してみると、請求人の主張する透明感や使用感(伸び性)が、引用例1,2の記載から当業者が予期し得ないほどの効果とはいえないし、また、本願発明の用途が化粧料であることが、請求項1に記載されていないのだから、当該効果を本願発明が当然に奏する効果であるということもできない。
したがって、上記主張は採用できない。
第8.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1,2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願は、原査定の理由により拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する
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