特許拒絶査定不服審判
2016-003882
予め決められたタイプのアンビエント照明を生成するための方法及び装置
- 審判番号
- 2016-003882
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2013-517617外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年03月14日
- 審決日
- 2017年04月03日
- 公報発行日
- 2017年10月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】フィリップス ライティング ホールディング ビー ヴィ
- 【請求人代理人】特許業務法人M&Sパートナーズ
- 分類
- P18 .121-Z (H05B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第3項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2013-517617号「予め決められたタイプのアンビエント照明を生成するための方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年1月5日国際公開、WO2012/001588、平成25年9月9日国内公表、特表2013-535088号〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、2011年6月22日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2010年6月28日、(EP)欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、平成27年3月9日付けで拒絶理由が通知され、同年6月10日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年11月11日付けで拒絶査定がなされた。これに対し、平成28年3月14日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、その請求と同時に手続補正がなされ、その後、同年5月24日付けで前置報告がなされ、これに対し、同年9月20日に請求人から上申書が提出されたものである。
第2 平成28年3月14日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成28年3月14日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正の内容
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項11の記載は、次のとおりに補正された。(下線部は、補正箇所を示す。)
「予め決められたタイプのアンビエント照明を生成するための装置であって、
予め決められたタイプのアンビエント照明に対する複数の照明器具のそれぞれの影響を決定し、前記複数の照明器具のそれぞれの決定された影響に基づいて前記予め決められたタイプのアンビエント照明を生成するように前記複数の照明器具のそれぞれの照射を制御するためのプロセッサを有し、
前記プロセッサは、デバイスの少なくとも1つの動作状態をアンビエント照明の複数の予め決められたタイプのうち少なくとも1つにマッピングし、
前記デバイスの現在の動作状態を決定し、
前記マッピングに基づいて、前記複数の予め決められたタイプのアンビエント照明のうちの対応する予め決められたタイプのアンビエント照明を前記デバイスに適用し、該適用される予め決められたタイプのアンビエント照明は、前記デバイスの前記現在の動作状態を示すように更に動作する、装置。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の平成27年6月10日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項11の記載は、次のとおりである。
「予め決められたタイプのアンビエント照明を生成するための装置であって、
予め決められたタイプのアンビエント照明に対する複数の照明器具のそれぞれの影響を決定し、前記複数の照明器具のそれぞれの決定された影響に基づいて前記予め決められたタイプのアンビエント照明を生成するように前記複数の照明器具のそれぞれの照射を制御するためのプロセッサを有し、
前記プロセッサは、デバイスの少なくとも1つの動作状態をアンビエント照明の複数の予め決められたタイプのうち少なくとも1つにマッピングするように更に動作する、装置。」
2 本件補正の適否
上記補正は、請求項11に記載された発明を特定するために必要な事項である「プロセッサ」に関し、「前記デバイスの現在の動作状態を決定し、前記マッピングに基づいて、前記複数の予め決められたタイプのアンビエント照明のうちの対応する予め決められたタイプのアンビエント照明を前記デバイスに適用し、該適用される予め決められたタイプのアンビエント照明は、前記デバイスの前記現在の動作状態を示す」ように更に動作するとの限定を付加するものであり、かつ、補正前の請求項11に記載された発明と、補正後の請求項11に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、特許法第17条の2第3項、第4項に違反するところはない。
そこで、本件補正後の前記請求項11に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。
3 独立特許要件(特許法第29条第2項)
(1)本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献の記載事項
(2-1)原査定の拒絶の理由において引用文献1として引用し、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2000-173783号公報(以下、「引用文献」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は、当審で付与。以下同様。)
ア.「【請求項1】 画像表示装置の画面に映し出された画像の臨場感が高まるように、該画像表示装置に映し出される画像に連動して、該画像を鑑賞する鑑賞者が存在する鑑賞空間の照明を制御する照明制御ステップを包含する、照明制御方法。
【請求項2】 前記照明制御ステップにおいては、前記鑑賞空間の照明印象を、前記画像表示装置に映し出される前記画像から仮想される仮想画像空間の照明印象にほぼ一致させるように、該鑑賞空間に設けられている一つ以上の光源の出力光のレベル、光色、配光、及び方向の少なくとも一つを制御する、請求項1に記載の照明制御方法。」
イ.「【請求項14】 前記仮想画像空間の光源を検出し、該検出された光源の輝度、光色、及び位置から該仮想画像空間内の光の分布及び方向を予測して、該予測された結果を前記鑑賞空間に外挿して得られる光色分布及び輝度分布が実現されるように、該鑑賞空間に設けられている一つ以上の光源の出力及び光色をそれぞれ制御し、それによって、前記鑑賞空間の照明の方向及び分布を、該仮想画像空間における照明の方向及び分布にほぼ一致させる、請求項3に記載の照明制御方法。」
ウ.「【請求項30】 画像表示装置の画面に映し出された画像の臨場感が高まるように、該画像表示装置に映し出される画像に連動して、該画像を鑑賞する鑑賞者が存在する鑑賞空間の照明を制御する手段を備える、照明装置。」
エ.「【0138】図5Aは、本発明の照明制御方法が適用され得るTV鑑賞室を模式的に描いた図であり、ここでは、一つの壁面を背にして、比較的大型(例えば36インチ)のTVが設置されている。鑑賞者は、TVの画面の縦の寸法をHとしたときにTV画面から7Hの距離だけ離れて座り、TVを鑑賞していることを想定している。鑑賞者とTV画面とを結ぶ直線を基準に、±15度以内が有効視野、±50度以内が誘導視野、±100度以内が補助視野に相当し、それぞれに対応して有効視野部、誘導視野部、及び補助視野部が形成されている。」
オ.「【0139】まず、このTV画面に、図6A(a)の画面が映し出された場合を想定する。図6A(a)の画面は、列柱がある大きな博物館の空間である。その空間全体は、青色の光で照明されている。一方、窓からは、赤い光が館内に射し込んできている状態を映し出している。
【0140】このとき、鑑賞空間の照明を、補助視野部及び誘導視野部の照明が画像内の青色光とほぼ同じ光色に調整することで、あたかも仮想画像空間の照明が鑑賞室の照明につながっているような印象を与える。これが、両空間の照明の連続性を高めることになり、臨場感が向上する。また、有効視野部の照明を赤色にして、画面の中の窓からこちらに向けて赤い光が照射されていることを表現することで、空間的なつながりを高めることにより、臨場感が向上する。」
カ.「【0157】・・・多数の代表的な画像とその適性照明条件とをデータベースとしてファイルに記憶しておき、画像の再生時に、映し出される画像のデータと先に記憶されたファイルの画像データとを照合させながら、最適照明条件を抽出する方法が考えられる。このようなデータベースとの照合に要する時間は、メモリなどのコンピュータ技術の進展により、今後、ますます短縮されることが期待できる。」
キ.「【0161】一方、図6E(a)及び(b)は、有効視野を照明する光源として使用され得る多機能光源の構成及び機能を説明する図である。上記の目的で使用され得る多機能光源は、図6E(a)に模式的に示すように複数の光源(光源1~光源x:xは2以上の任意の自然数)から構成されており、個々の光源は、点灯制御、R・G・B光色可変制御、配光可変制御、及び、光の方向の可変制御を実施できる。図6E(b)には、上記の各制御を模式的に示しており、点灯制御とは、光の出力を瞬時に点灯或いは消灯できる機能、R・G・B光色可変制御とは、光出力の色を自由に変化できる制御、配光可変制御とは、光出力の配光(図中では同心の楕円で示している)、すなわち光の広がる角度を制御できる機能、光の方向の可変制御とは、回転動作などによって光源の向きをあらゆる方向に変化できる機能である。
【0162】・・・
【0163】以上で述べた照明制御方法は、どのような照明器具或いは光源で実現してもよい。光源とそれを制御する回路の数が多い程、細かな制御が可能であり、それらを適切に使うことにより、臨場感はますます向上する。」
ク.「【0181】一般的な画像は、静止画ではなく、動画である場合が多い。・・・」
ケ.「【0275】(第13の実施形態)本発明の照明装置に含まれ得る光源、或いは照明器具は、照明に使用される光の状態を制御するために、図28(d)に示すような光色可変制御部、配光可変制御部、及び方向可変制御部の中の1つ、或いは2つ以上を組み合わせて有することができる。
【0276】図28(a)は、上記の3つの制御部の中の何れか一つ(「A制御部」と表記)を有する光源の構成、図28(b)は、上記の3つの制御部の中の何れか2つ(「A制御部」及び「B制御部」と表記)を有する光源の構成、図28(c)は、上記の3つの全ての制御部(「A制御部」、「B制御部」、及び「C制御部」と表記)を有する光源の構成を、模式的に描いている。これらにおける「A制御部」、「B制御部」、及び「C制御部」とは、図28(d)に示す光色可変制御部、配光可変制御部、及び方向可変制御部の中の何れかに対応する。
【0277】更に、図28(e)~(k)には、光源に更に付加され得る機能を別個に描いている。図28(e)の受信部は、照明信号、画像信号、及び/或いは音声信号を受信する機能を有する。図28(f)のデータ解析部は、受信した画像信号及び/或いは音声信号を解析して、所定の照明信号を生成する機能を有する。図28(g)のデータマッピング部は、受信した画像信号及び/或いは音声信号を、あらかじめ記憶されている照明信号と対応させて(マッピングして)、所定の照明信号を選定する機能を有する。図28(h)のセンサ部は、照明制御に有用な各種の出力値を測定する機能を有する。図28(i)の再生部は、照明信号、画像信号、及び/或いは音声信号を再生する機能を有する。図28(j)の記憶部は、照明信号、画像信号、及び/或いは音声信号を記憶する機能を有する。図28(k)の送信部は、照明信号、画像信号、及び/或いは音声信号を、離れて位置する他の装置(例えば、離れて位置する各出力部など)に送信する機能を有す
【0278】これらの中の一つ或いはそれ以上を適切に光源に組み込むことによって、それらの機能が光源に付加される。」
コ.上記記載事項ウ.(【請求項30】)の照明装置における「鑑賞空間の照明を制御する手段」の具体的構成は、上記記載事項ケ.の(第13の実施形態)を参酌すると、画像信号を解析するデータ解析部、データマッピング部、及び照明器具の光の状態を制御するための光色可変制御部、配光可変制御部、及び方向可変制御部の中の1つ、或いは2つ以上を組み合わせてなる制御部とを含み、前記データマッピング部は、画像表示装置から受信した画像信号を、あらかじめ記憶されている照明信号とマッピングして、所定の照明信号を選定する機能を有していることが理解できる。
以上の記載事項ア.~ケ.、認定事項コ.及び図示内容を総合すると、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「画像を鑑賞する鑑賞者が存在する鑑賞空間の照明を制御する手段を備える、照明装置であって、
前記鑑賞空間の照明を制御する手段は、画像信号を解析するデータ解析部、データマッピング部、及び照明器具の光の状態を制御するための光色可変制御部、配光可変制御部、及び方向可変制御部の中の1つ、或いは2つ以上を組み合わせてなる制御部とを含み、
前記鑑賞空間の照明を制御する手段に含まれている前記データマッピング部は、画像信号を、あらかじめ記憶されている照明信号とマッピングして、所定の照明信号を選定する機能を有し、
前記鑑賞空間の照明を制御する手段は、画像表示装置の画面に映し出された画像の臨場感が高まるように、前記画像表示装置に映し出される画像に連動して、該画像を鑑賞する鑑賞者が存在する鑑賞空間の照明を制御する照明装置。」
(3)対比
本件補正発明と引用発明とを対比すると、その意味、機能または構造からみて、
ア.後者の「鑑賞空間の照明」は後者の「アンビエント照明」の概念に含まれるといえるところ、後者の「鑑賞空間の照明」は、「照明信号」として「あらかじめ記憶されている」ものであるから、後者の「鑑賞空間の照明」は予め決められたタイプのものといえる。
そうするうと、後者の「画像を鑑賞する鑑賞者が存在する鑑賞空間の照明を制御する手段を備える、照明装置」は、「予め決められたタイプのアンビエント照明を生成するための装置」に相当する。
イ.後者の「画像信号を解析するデータ解析部、データマッピング部、及び照明器具の光の状態を制御するための光色可変制御部、配光可変制御部、及び方向可変制御部の中の1つ、或いは2つ以上を組み合わせてなる制御部とを有」する「鑑賞空間の照明を制御する手段」は前者の「前記予め決められたタイプのアンビエント照明を生成するように前記照明器具の照射を制御するためのプロセッサ」の限度で一致する。
以上のことから、本件補正発明と引用発明とは以下の点で一致し、また、以下の点で相違する。
[一致点]
「予め決められたタイプのアンビエント照明を生成するための装置であって、
前記予め決められたタイプのアンビエント照明を生成するように照明器具の照射を制御するためのプロセッサを有する、装置。」
[相違点1]
本件補正発明の「プロセッサ」は、「予め決められたタイプのアンビエント照明に対する複数の照明器具のそれぞれの影響を決定し、前記複数の照明器具のそれぞれの決定された影響に基づいて」前記予め決められたタイプのアンビエント照明を生成するように前記「複数」の照明器具の「それぞれの」照射を制御するのに対し、
引用発明の「鑑賞空間の照明を制御する手段」は、制御対象の「照明器具」が「少なくとも一つ」であり、かかる影響に基づいて鑑賞空間の照明を制御することが特定されていない点。
[相違点2]
本件補正発明は「前記プロセッサは、デバイスの少なくとも1つの動作状態をアンビエント照明の複数の予め決められたタイプのうち少なくとも1つにマッピングし、
前記デバイスの現在の動作状態を決定し、
前記マッピングに基づいて、前記複数の予め決められたタイプのアンビエント照明のうちの対応する予め決められたタイプのアンビエント照明を前記デバイスに適用し、該適用される予め決められたタイプのアンビエント照明は、前記デバイスの前記現在の動作状態を示すように更に動作する」のに対し、
引用発明は、「前記鑑賞空間の照明を制御する手段に含まれている前記データマッピング部は、画像表示装置から受信した画像信号を、あらかじめ記憶されている照明信号とマッピングして、所定の照明信号を選定する機能を有し、
前記鑑賞空間の照明を制御する手段は、画像表示装置の画面に映し出された画像の臨場感が高まるように、前記画像表示装置に映し出される画像に連動して、該画像を鑑賞する鑑賞者が存在する鑑賞空間の照明を制御する」点。
(4)相違点についての判断
ア. 相違点1について
(ア)引用文献の記載事項キ.の段落【0161】には、「複数の光源(光源1~光源x:xは2以上の任意の自然数)から構成されており、個々の光源は、点灯制御、R・G・B光色可変制御、配光可変制御、及び、光の方向の可変制御を実施できる」ことが記載されているとともに、段落【0163】には「光源とそれを制御する回路の数が多い程、細かな制御が可能であり、それらを適切に使うことにより、臨場感はますます向上する」ことが記載されている。(以下、「引用文献に記載されている事項1」という。)
(イ)また、本件補正発明の「予め決められたタイプのアンビエント照明に対する複数の照明器具のそれぞれの影響を決定し、前記複数の照明器具のそれぞれの決定された影響に基づいて前記予め決められたタイプのアンビエント照明を生成する」の意味は、本件明細書の段落【0042】の「複数の照明器具、制御可能な光源が導入される(ステップ201)。これらの位置及び向きが記録される。オブジェクト(例えば家具)の位置及び配置、部屋のサイズ、ユーザの位置、影、他の照明(例えば屋外の場合の自然光)の影響のような影響ファクタは、位置及び/又は動作検出部を用いて取得デバイス101により測定される(ステップ211)。アンビエント照明の予め決められたタイプに対するこれらの影響は、照明器具の位置及び向き、並びに、影響ファクタの予測された効果に基づいて決定され(ステップ213)、決定された影響を考慮する要求されたアンビエント照明を生成するために照明器具の照射が制御される(ステップ215)。」との記載を参酌すると、光源を導入し、オブジェクト(例えば家具)の位置及び配置、部屋のサイズ、ユーザの位置、影、他の照明(例えば屋外の場合の自然光)の影響のような影響ファクタを考慮し、要求されたアンビエント照明を生成することと解される。
他方、引用文献の記載事項イ.請求項14の「前記仮想画像空間の光源を検出し、該検出された光源の輝度、光色、及び位置から該仮想画像空間内の光の分布及び方向を予測して、該予測された結果を前記鑑賞空間に外挿して得られる光色分布及び輝度分布が実現されるように、該鑑賞空間に設けられている一つ以上の光源の出力及び光色をそれぞれ制御し、それによって、前記鑑賞空間の照明の方向及び分布を、該仮想画像空間における照明の方向及び分布にほぼ一致させる」との記載内容から引用文献には、「光源の輝度、光色、及び位置から仮想画像空間内の光の分布及び方向を予測した結果を考慮し、鑑賞空間の照明の方向及び分布を、該仮想画像空間における照明の方向及び分布にほぼ一致させる」ことが記載されているといえる。(以下、「引用文献に記載されている事項2」という。)
ここで、「光源の輝度、光色、及び位置から仮想画像空間内の光の分布及び方向を予測した結果」は、本件補正発明の「影響ファクタ」といえ、「鑑賞空間の照明の方向及び分布を、該仮想画像空間における照明の方向及び分布にほぼ一致させる」ことは、本件補正発明の「要求されたアンビエント照明を生成すること」といえる。
(ウ)そうすると、引用発明に、引用文献に記載されている事項1を適用し、引用発明の制御対象である「一つ以上の照明器具」を複数の照明器具とするとともに、引用文献に記載されている事項2を適用して、「光源の輝度、光色、及び位置から仮想画像空間内の光の分布及び方向を予測した結果を考慮し、鑑賞空間の照明の方向及び分布を、該仮想画像空間における照明の方向及び分布にほぼ一致させる」ことは当業者であれば適宜になし得ることである。
よって、引用発明において、上記相違点1に係る本件補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
イ 相違点2について
(ア)引用発明の「画像信号を、あらかじめ記憶されている鑑賞空間の照明を制御するための照明信号とマッピングして、所定の照明信号を選定する機能を有し」との構成に関し、「画像信号」は「画像表示装置の画面に映し出される画像」となるものであり、「あらかじめ記憶されている鑑賞空間の照明を制御するための照明信号」が複数存在していることは明らかであり、「所定の照明信号」により「鑑賞空間の照明」を生成しているものあるから、上記構成は、
「画像表示装置の画面に映し出される画像を複数の鑑賞空間の照明のうちの対応する鑑賞空間の照明にマッピングし」との構成を含むことは明らかである。
そうすると、本件補正発明の「デバイスの少なくとも1つの動作状態をアンビエント照明の複数の予め決められたタイプのうち少なくとも1つにマッピングし」と、
引用発明の「画像信号を、あらかじめ記憶されている鑑賞空間の照明を制御するための照明信号とマッピングして、所定の照明信号を選定する機能を有し」とは、
本件補正発明は、アンビエント照明とマッピングしている主体が、「デバイスの少なくとも1つの動作状態」であるに対し、引用発明は、鑑賞空間の照明とマッピングしている主体が、「画像表示装置の画面に映し出される画像」である点で相違していることになる。
(イ)引用発明の「前記鑑賞空間の照明を制御する手段は、画像表示装置の画面に映し出された画像の臨場感が高まるように、前記画像表示装置に映し出される画像に連動して、該画像を鑑賞する鑑賞者が存在する鑑賞空間の照明を制御する」との構成に関し、「画像表示装置の画面に映し出された画像に連動」する際には、画像表示装置の画面に映し出された現在の画像を決定してること明らかであり、上記(ア)に基づけば、マッピングに基づいて、複数の鑑賞空間の照明のうちの対応する鑑賞空間の照明を選択しているといえ、加えて、本件補正発明の「アンビエント照明を前記デバイスに適用し」とは、本件明細書の段落【0038】に「複数の照明器具、制御可能な光源が導入される(ステップ201)。複数の照明器具は、要求される部屋又は屋外エリアの範囲内において、・・・導入され得る。」と記載されているように、アンビエント照明をデバイス自体に適用することではなく、デバイスの置かれた部屋又は屋外エリアに適用することと解されるから、引用発明においても「鑑賞空間の照明」を「画像表示装置」に適用するものといえる。そうすると、上記構成は、
「前記画像表示装置の画面に映し出された現在の画像を決定し、
前記マッピングに基づいて、前記複数の鑑賞空間の照明のうちの対応する鑑賞空間の照明を前記画像表示装置に適用し、該適用される鑑賞空間の照明は、前記画像表示装置に映し出される前記画像と連動すように更に動作」しているものといえる。
以上のことより、本件補正発明の「前記デバイスの現在の動作状態を決定し、
前記マッピングに基づいて、前記複数の予め決められたタイプのアンビエント照明のうちの対応する予め決められたタイプのアンビエント照明を前記デバイスに適用し、該適用される予め決められたタイプのアンビエント照明は、前記デバイスの前記現在の動作状態を示すように更に動作する」と、
引用発明の「前記鑑賞空間の照明を制御する手段は、画像表示装置の画面に映し出された画像の臨場感が高まるように、前記画像表示装置に映し出される画像に連動して、該画像を鑑賞する鑑賞者が存在する鑑賞空間の照明を制御する」との構成とは、
本件補正発明は、「デバイス」の現在の「動作状態」を決定し、アンビエント照明は現在の「前記動作状態を示す」のに対し、引用発明は、「画像表示装置」の画面に映し出された現在の「画像」を決定し、鑑賞空間の照明は「画像表示装置の画面に映し出された現在の画像に連動」する点で相違していることになる。
(ウ)上記(ア)及び(イ)により、上記相違点2を整理すると、
本件補正発明は、アンビエント照明とマッピングしている主体が、「デバイス」の「少なくとも1つの動作状態」であり、プロセッサは「デバイス」の現在の「動作状態」を決定し、アンビエント照明は「デバイス」の前記現在の「動作状態を示す」のに対し、
引用発明は、鑑賞空間の照明とマッピングしている主体が、「画像表示装置の画面に映し出された画像」であり、鑑賞空間の照明を制御する手段は「画像表示装置」の画面に映し出された現在の「画像」を決定し、鑑賞空間の照明は「画像表示装置」の画面に映し出された現在の「画像に連動する」点で相違しているといえる。
(エ)上記(ウ)を踏まえて上記相違点2ついて検討する。
本件補正発明の「デバイス」は、本件明細書の段落【0053】に「任意のデバイスの動作状態の連続的で拡散したフィードバックが与えられてもよく、又は、フィードバックがユーザにより起動されてもよい。それ故、これは、任意の家庭用器具、メディアプレーヤ、オーディオ製品等に適用され得る。」と記載されているように、任意の家庭用器具、メディアプレーヤ、オーディオ製品等に適用され得るものであるところ、引用発明の「画像表示装置」も引用文献の記載事項エ.(【図5A】~【図5C】)に開示されているようにTV画面が挙げられているから、引用発明の「画像表示装置」は「デバイス」に含まれるものといえる。また、引用発明の「画像表示装置の画面に映し出された画像」は、引用文献の記載事項ク.に記載されているように動画を実施態様として含むものであり、動画は、時間の経過とともに色合い等が変化する静止画の集合体であるから、時間軸のある時点での画像表示装置の「少なくとも1つの動作状態」といえる。
そうすると、引用発明の「画像表示装置の画面に映し出された画像」は、本件補正発明の「デバイスの現在の少なくとも1つの動作状態」といえる。
加えて、引用発明の「画像表示装置の画面に映し出された画像の臨場感が高まるように、前記画像表示装置に映し出される画像に連動」することは、例えば、引用文献の記載事項ア.の【請求項2】並びに記載事項オ.を参酌すると、画像表示装置の画面に映し出される現在の画像が、空間全体は青色の光で照明されていて、窓からは赤い光が館内に射し込んできている状態であるときに、鑑賞空間の照明を同じ光色に調整して鑑賞空間の照明印象と光仮想画像空間の印象とを一致させることであるから、鑑賞空間の照明は、画像表示装置の画面に映し出される現在の画像が青色の光及び赤色の光であることを鑑賞者に示すものといえる。
そうすると、上記(ウ)で整理した引用発明における、鑑賞空間の照明を制御する手段は「画像表示装置」の画面に映し出された現在の「画像」を決定し、鑑賞空間の照明は「画像表示装置」の画面に映し出された現在の「画像に連動する」ことは、本件補正発明のプロセッサはデバイスの現在の「動作状態」を決定し、アンビエント照明はデバイスの前記現在の「動作状態を示す」との間に格別な差異はないといえる。
したがって、本件補正発明の「前記プロセッサは、デバイスの少なくとも1つの動作状態をアンビエント照明の複数の予め決められたタイプのうち少なくとも1つにマッピングし、
前記デバイスの現在の動作状態を決定し、
前記マッピングに基づいて、前記複数の予め決められたタイプのアンビエント照明のうちの対応する予め決められたタイプのアンビエント照明を前記デバイスに適用し、該適用される予め決められたタイプのアンビエント照明は、前記デバイスの前記現在の動作状態を示すように更に動作する」ことと、
引用発明の「前記鑑賞空間の照明を制御する手段に含まれている前記データマッピング部は、画像信号を、あらかじめ記憶されている照明信号とマッピングして、所定の照明信号を選定する機能を有し、
前記鑑賞空間の照明を制御する手段は、画像表示装置の画面に映し出された画像の臨場感が高まるように、前記画像表示装置に映し出される画像に連動して、該画像を鑑賞する鑑賞者が存在する鑑賞空間の照明を制御する」こととは、実質的な差異はない。
(オ)そして、本件補正発明の効果についても、引用発明及び引用文献に記載されている事項1及び2から予測し得る程度のものであり、格別のものとはいえない。
(5)まとめ
以上のとおり、本件補正発明は、引用発明及び引用文献に記載されている事項1及び2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反してなされたものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
第3 本願発明について
1.平成28年3月14付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1~15に係る発明は、平成27年6月10日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~15に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項11に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その請求項11に記載された事項により特定される、上記「第2[理由]1(2)」に記載のとおりのものである。
2.引用文献の記載事項及び引用発明
原査定の拒絶の理由において引用文献1として引用し、本願の優先日前に頒布された刊行物である引用文献には、上記「第2[理由]3(2)(2-1)」に記載したとおりの事項及び引用発明が記載されている。
3.対比・判断
本願発明は、前記「第2[理由]1(1)」に記載した本件補正発明から、「前記デバイスの現在の動作状態を決定し、前記マッピングに基づいて、前記複数の予め決められたタイプのアンビエント照明のうちの対応する予め決められたタイプのアンビエント照明を前記デバイスに適用し、該適用される予め決められたタイプのアンビエント照明は、前記デバイスの前記現在の動作状態を示す」との限定事項を省くものである。そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、上記限定事項により減縮したものに相当する本願補正発明が、前記「第2[理由]3」に記載したとおり、引用発明、引用文献に記載されている事項1及び2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、実質的に同様の理由により、引用発明、引用文献に記載されている事項1及び2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
4.むすび
以上のとおり、本願発明(請求項11に係る発明)は、引用発明、引用文献に記載されている事項1及び2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2016-003882