特許拒絶査定不服審判
2022-012280
発光素子
- 審判番号
- 2022-012280
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-162631外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年08月05日
- 審決日
- 2023年12月26日
- 公報発行日
- 2024年03月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】住友化学株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人太陽国際特許事務所
- 分類
- P18 .121-Z (H05B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第3項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第29条、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2018-162631「発光素子」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 3月28日出願公開、特開2019- 50371〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 事案の概要
1 手続等の経緯
特願2018-162631号(以下「本件出願」という。)は、平成30年8月31日を出願日(先の出願に基づく優先権主張 平成29年9月6日)とする特許出願であって、その手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。
令和3年12月 2日付け:拒絶理由通知書
令和4年 2月 7日提出:意見書
令和4年 2月 7日提出:手続補正書
令和4年 3月 3日付け:拒絶理由通知書
令和4年 4月20日提出:意見書
令和4年 5月10日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和4年 8月 5日提出:審判請求書
令和4年 8月 5日提出:手続補正書
第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和4年8月5日にした手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正の内容
(1) 本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前である、令和4年2月7日に提出した手続補正書による手続補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。
「 陽極と、陰極と、陽極及び陰極の間に設けられた第1の有機層及び第2の有機層と、を有する発光素子であって、
前記第1の有機層が、要件(i)及び要件(ii)の少なくとも一方を満たす遷移金属を含まない低分子化合物と、デンドロンを有する燐光発光性遷移金属錯体とを含有する層であり、
前記第2の有機層が、架橋基を有する構成単位を含む高分子化合物の架橋体を含有する層であり、
前記高分子化合物を構成する全構成単位の分子量の合計をX1とし、前記高分子化合物を構成する全構成単位が有する架橋基の数の合計をY1としたとき、(Y1×1000)/X1の値が0.25以上である、前記発光素子。
(i)最低三重項励起状態のエネルギー準位と最低一重項励起状態のエネルギー準位との差の絶対値が0.25eV未満である。
(ii)式(T-1)で表される。
【化1】
[図:0001407170000001.jpg]
[式中、
nT1は、0以上5以下の整数を表す。nT1が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
nT2は、1以上10以下の整数を表す。
ArT1は、置換アミノ基又は1価の複素環基を表し、該1価の複素環基は、環内に二重結合を有さない窒素原子を含み、且つ、環内に=N-で表される基、-C(=O)-で表される基、-S(=O)-で表される基、及び、-S(=O)2-で表される基を含まない1価の複素環基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。ArT1が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
LT1は、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、2価の複素環基、-NRT1'-で表される基、酸素原子又は硫黄原子を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。RT1'は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。LT1が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
ArT2は、芳香族炭化水素基又は複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。
但し、ArT1のすべてが置換アミノ基、又は、式(T1-1A)で表される基である場合、ArT2は、環内に=N-で表される基を2個以上含む単環の複素環基、環内に-C(=O)-で表される基、-S(=O)-で表される基、-S(=O)2-で表される基及び=N-で表される基からなる群より選ばれる少なくとも1つを含む縮合環の複素環基、又は、電子求引性基若しくは環内に-C(=O)-で表される基を含む芳香族炭化水素基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。]
【化2】
[図:0001407170000002.jpg]
[式中、
XT1は、単結合、酸素原子、硫黄原子、-N(RXT1)-で表される基、又は、-C(RXT1')2-で表される基を表す。RXT1及びRXT1'は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、1価の複素環基、置換アミノ基、ハロゲン原子又はシアノ基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数存在するRXT1'は、同一でも異なっていてもよく、互いに結合して、それぞれが結合する原子とともに環を形成していてもよい。
RT1、RT2、RT3、RT4、RT5、RT6、RT7及びRT8は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、1価の複素環基、置換アミノ基、ハロゲン原子又はシアノ基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。]」
(2) 本件補正後の特許請求の範囲
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。なお、下線は補正箇所を示す。
「陽極と、陰極と、陽極及び陰極の間に設けられた第1の有機層及び第2の有機層と、を有する発光素子であって、
前記第1の有機層が、要件(i)及び要件(ii)の少なくとも一方を満たす遷移金属を含まない低分子化合物と、デンドロンを有する燐光発光性遷移金属錯体とを含有する層であり、
前記第2の有機層が、架橋基を有する構成単位と、式(X)で表される構成単位及び式(Y)で表される構成単位のうち少なくとも一方と、からなる高分子化合物の架橋体を含有する層であり、
前記高分子化合物を構成する全構成単位の分子量の合計をX1とし、前記高分子化合物を構成する全構成単位が有する架橋基の数の合計をY1としたとき、(Y1×1000)/X1の値が0.25以上であり、
前記デンドロンが、式(D-A)又は式(D-B)で表される基であり、
前記デンドロンを有する燐光発光性遷移金属錯体が、式(1)で表される金属錯体である、
前記発光素子。
(i)最低三重項励起状態のエネルギー準位と最低一重項励起状態のエネルギー準位との差の絶対値が0.25eV未満である。
(ii)式(T-1)で表される。
【化1】
[図:0001407170000003.jpg]
[式中、
nT1は、0以上5以下の整数を表す。nT1が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
nT2は、1以上10以下の整数を表す。
ArT1は、置換アミノ基又は1価の複素環基を表し、該1価の複素環基は、環内に二重結合を有さない窒素原子を含み、且つ、環内に=N-で表される基、-C(=O)-で表される基、-S(=O)-で表される基、及び、-S(=O)2-で表される基を含まない1価の複素環基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。ArT1が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
LT1は、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、2価の複素環基、-NRT1'-で表される基、酸素原子又は硫黄原子を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。RT1'は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。LT1が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
ArT2は、芳香族炭化水素基又は複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。
但し、ArT1のすべてが置換アミノ基、又は、式(T1-1A)で表される基である場合、ArT2は、環内に=N-で表される基を2個以上含む単環の複素環基、環内に-C(=O)-で表される基、-S(=O)-で表される基、-S(=O)2-で表される基及び=N-で表される基からなる群より選ばれる少なくとも1つを含む縮合環の複素環基、又は、電子求引性基若しくは環内に-C(=O)-で表される基を含む芳香族炭化水素基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。]
【化2】
[図:0001407170000004.jpg]
[式中、
XT1は、単結合、酸素原子、硫黄原子、-N(RXT1)-で表される基、又は、-C(RXT1')2-で表される基を表す。RXT1及びRXT1'は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、1価の複素環基、置換アミノ基、ハロゲン原子又はシアノ基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数存在するRXT1'は、同一でも異なっていてもよく、互いに結合して、それぞれが結合する原子とともに環を形成していてもよい。
RT1、RT2、RT3、RT4、RT5、RT6、RT7及びRT8は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、1価の複素環基、置換アミノ基、ハロゲン原子又はシアノ基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。]
【化3】
[図:0001407170000005.jpg]
[式中、
aX1及びaX2は、それぞれ独立に、0以上の整数を表す。
ArX1及びArX3は、それぞれ独立に、アリーレン基又は2価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。
ArX2及びArX4は、それぞれ独立に、アリーレン基、2価の複素環基、又は、少なくとも1種のアリーレン基と少なくとも1種の2価の複素環基とが直接結合した2価の基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。ArX2及びArX4が複数存在する場合、
それらは同一でも異なっていてもよい。
RX1~RX3は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。RX2及びRX3が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。]
【化4】
[図:0001407170000006.jpg]
[式中、ArY1は、アリーレン基、2価の複素環基、又は、少なくとも1種のアリーレン基と少なくとも1種の2価の複素環基とが直接結合した2価の基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。]
【化5】
[図:0001407170000007.jpg]
[式中、
mDA1、mDA2及びmDA3は、それぞれ独立に、0以上の整数を表す。
GDAは、芳香族炭化水素基又は複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。
ArDA1、ArDA2及びArDA3は、それぞれ独立に、アリーレン基又は2価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。ArDA1、ArDA2及びArDA3が複数ある場合、それらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
TDAは、アリール基又は1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数あるTDAは、同一でも異なっていてもよい。]
【化6】
[図:0001407170000008.jpg]
[式中、
mDA1、mDA2、mDA3、mDA4、mDA5、mDA6及びmDA7は、それぞれ独立に、0以上の整数を表す。
GDAは、芳香族炭化水素基又は複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数あるGDAは、同一でも異なっていてもよい。
ArDA1、ArDA2、ArDA3、ArDA4、ArDA5、ArDA6及びArDA7は、それぞれ独立に、アリーレン基又は2価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。ArDA1、ArDA2、ArDA3、ArDA4、ArDA5、ArDA6及びArDA7が複数ある場合、それらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
TDAは、アリール基又は1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数あるTDAは、同一でも異なっていてもよい。]
【化7】
[図:0001407170000009.jpg]
[式中、
Mは、ルテニウム原子、ロジウム原子、パラジウム原子、イリジウム原子又は白金原子を表す。
n1は1以上の整数を表し、n2は0以上の整数を表す。但し、Mがルテニウム原子、ロジウム原子又はイリジウム原子の場合、n1+n2は3であり、Mがパラジウム原子又は白金原子の場合、n1+n2は2である。
E1及びE2は、それぞれ独立に、炭素原子又は窒素原子を表す。但し、E1及びE2の少なくとも一方は炭素原子である。E1及びE2が複数存在する場合、それらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
環L1は、6員の芳香族複素環を表し、該環は置換基を有していてもよい。該置換基が複数存在する場合、互いに結合して、それぞれが結合する原子とともに環を形成していてもよい。環L1が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
環L2は、芳香族炭化水素環又は芳香族複素環を表し、これらの環は置換基を有していてもよい。該置換基が複数存在する場合、互いに結合して、それぞれが結合する原子とともに環を形成していてもよい。環L2が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
環L1が有していてもよい置換基と、環L2が有していてもよい置換基とは、互いに結合して、それぞれが結合する原子とともに環を形成していてもよい。
環L1及び環L2のうちの少なくとも一つは、デンドロンを有する。
A1-G1-A2は、アニオン性の2座配位子を表す。A1及びA2は、それぞれ独立に、炭素原子、酸素原子又は窒素原子を表し、これらの原子は環を構成する原子であってもよい。G1は、単結合、又は、A1及びA2とともに2座配位子を構成する原子団を表す。A1-G1-A2が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。]
(3) 本件補正について
ア 本件補正は、補正前の請求項1において、
(A) 本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「架橋基を有する構成単位を含む高分子化合物」を、「架橋基を有する構成単位と、式(X)で表される構成単位及び式(Y)で表される構成単位のうち少なくとも一方と、からなる」「高分子化合物」に限定し、
(B) 本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「デンドロン」を、「式(D-A)又は式(D-B)で表される基であ」るもの((当合議体注:「式(D-A)」及び「式(D-B)」の再掲は省略する。以下、他の構造式も同様に再掲を省略することがある。)に限定し、
(C) 本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「デンドロンを有する燐光発光性遷移金属錯体」を、「式(1)で表される金属錯体である」ものに限定する、補正事項を含むものである。
ここで、補正事項(A)は、本件出願の出願当初の明細書の【0260】~【0262】、【0283】等の記載、補正事項(B)は、同【0015】(最後の2行)~【0017】、【0051】等の記載、補正事項(C)は、同【0012】(最後の2行)~【0013】、【0081】等の記載にそれぞれ基づくものである。
さらに、本件補正前の請求項1に係る発明と、本件補正後の請求項1に係る発明の、産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一である(本件出願の明細書の【0001】及び【0005】)。
イ してみると、本件補正は、特許法17条の2第3項の規定に適合するものであり、また、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)を目的とするものに該当する。
ウ そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正後発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下検討する。
2 独立特許要件(進歩性)についての判断
(1) 引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由1(進歩性)において引用された特開2016-111355号公報(以下「引用文献1」という。)は、先の出願前に日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明が記載されたものであるところ、そこには以下の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものであり、引用発明の認定や判断等に活用した箇所を示す。
ア 「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子に関する。
・・・略・・・
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
・・・略・・・そこで、本発明は、電力効率に優れる発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面は、以下の発光素子に関する。
一側面は、以下の発光素子に関する。
【0009】
陽極と、
陰極と、
前記陽極及び前記陰極の間に設けられた第1の有機層と、
前記陽極及び前記第1の有機層の間に設けられた第2の有機層とを有する発光素子であって、
前記第1の有機層が、燐光発光性化合物を含み、
前記第2の有機層が、1種又は2種以上の高分子化合物が配合された高分子組成物から形成される高分子硬化物を含み、
前記高分子化合物の少なくとも1種が、架橋基を有し、
前記高分子化合物の少なくとも1種が、燐光発光性構成単位を含み、
前記高分子化合物を構成する各単量体単位について、全単量体単位の総モルに対するその単量体単位のモル比Cとその単量体単位の分子量Mとを乗じた値x、及び、前記モル比Cとその単量体単位が有する前記架橋基の数nとを乗じた値yを求めたとき、前記xの総和X1及び前記yの総和Y1から計算される(Y1×1000)/X1の値が、0.6以上である、発光素子。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電力効率に優れる発光素子を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
・・・略・・・
【0063】
「架橋基」とは、加熱処理、紫外線照射処理、ラジカル反応等に供することにより、新たな結合を生成することが可能な基であり、好ましくは、架橋基A群の式(XL-1)、(XL-2)、(XL-3)、(XL-4)、(XL-5)、(XL-6)、(XL-7)、(XL-8)、(XL-9)、(XL-10)、(XL-11)、(XL-12)、(XL-13)、(XL-14)、(XL-15)、(XL-16)又は(XL-17)で表される架橋基(以下、場合により「式(XL-1)~(LX-17)で表される基」という。)である。
【0064】
【化12】
[図:0001407170000010.jpg]
【0065】
式中、RXLは、メチレン基、酸素原子又は硫黄原子を表し、nXLは、0~5の整数を表す。RXLが複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよく、nXLが複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。*は結合位置を表す。これらの架橋性基は置換基を有していてもよい。
・・・略・・・
【0067】
<発光素子>
次に、本発明の一実施形態に係る発光素子について説明する。
【0068】
本実施形態に係る発光素子は、陽極と、陰極と、陽極及び陰極の間に設けられた第1の有機層と、陽極及び第1の有機層の間に設けられた第2の有機層とを有する。第1の有機層は、燐光発光性化合物を用いて形成される層であり、第2の有機層は、1種又は2種以上の高分子化合物が配合された高分子組成物を用いて形成される層である。高分子化合物の少なくとも1種は、架橋基を有する(具体的には、高分子化合物の少なくとも1種は、架橋基を有する架橋性構成単位を含む)。また、高分子化合物の少なくとも1種は、燐光発光性構成単位を含む。また、高分子化合物を構成する各単量体単位について、全単量体単位の総モルに対するその単量体単位のモル比Cとその単量体単位の分子量Mとを乗じた値x、及び、モル比Cとその単量体単位が有する架橋基の数nとを乗じた値yを求めたとき、xの総和X1及びyの総和Y1から計算される(Y1×1000)/X1の値は、0.6以上である。
・・・略・・・
【0073】
第2の有機層を塗布法により形成する場合、後述する第2の有機層用のインクを用いることが好ましい。第2の有機層を形成後、加熱又は光照射することで、高分子組成物に含有される架橋性高分子化合物を架橋させて、高分子組成物を硬化させることができる。
高分子組成物が硬化された状態で、第2の有機層に含有されている場合、第2の有機層は溶媒に対して実質的に不溶化されている。そのため、該第2の有機層は、発光素子の積層化に好適に使用することができる。
・・・略・・・
【0077】
<第1の有機層>
第1の有機層は、1種以上の燐光発光性化合物を用いて形成される層である。
【0078】
[燐光発光性化合物]
燐光発光性化合物は、燐光発光性を有する化合物である。燐光発光性化合物としては、室温で高い発光量子収率を有するものを好適に用いることができる。
【0079】
燐光発光性化合物としては、例えば、式(1)で表される燐光発光性化合物が挙げられる。
【0080】
【化13】
[図:0001407170000011.jpg]
【0081】
式中、
Mは、ルテニウム原子、ロジウム原子、パラジウム原子、イリジウム原子又は白金原子を表す。
n1は1~3の整数を表し、n2は0~2の整数を表し、n1+n2は2又は3である。Mがルテニウム原子、ロジウム原子又はイリジウム原子の場合、n1+n2は3であり、Mがパラジウム原子又は白金原子の場合、n1+n2は2である。
E1及びE2は、それぞれ独立に、炭素原子又は窒素原子を表す。但し、E1及びE2の少なくとも一方は炭素原子である。E1及びE2が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
環R1は、5員環又は6員環の芳香族複素環を表し、これらの環は置換基を有していてもよい。該置換基が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよく、互いに結合して、それぞれが結合する原子と共に環を形成していてもよい。環R1が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。但し、環R1が6員環の芳香族複素環である場合、E1は炭素原子である。
環R2は、5員環若しくは6員環の芳香族炭素環、又は、5員環若しくは6員環の芳香族複素環を表し、これらの環は置換基を有していてもよい。該置換基が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよく、互いに結合して、それぞれが結合する原子と共に環を形成していてもよい。環R2が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。但し、環R2が6員環の芳香族複素環である場合、E2は炭素原子である。
環R1が有していてもよい置換基と、環R2が有していてもよい置換基とは、互いに結合して、それぞれが結合する原子と共に環を形成していてもよい。
A1-G1-A2は、アニオン性の2座配位子を表す。A1及びA2は、それぞれ独立に、炭素原子、酸素原子又は窒素原子を表し、これらの原子は環を構成する原子であってもよい。G1は、単結合、又は、A1及びA2と共に2座配位子を構成する原子団を表す。A1-G1-A2が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
【0082】
式(1)で表される燐光発光性化合物は、中心金属であるMと、添え字n1でその数を規定されている配位子と、添え字n2でその数を規定されている配位子とから構成されている。
【0083】
Mがルテニウム原子、ロジウム原子又はイリジウム原子の場合、n1は2又は3であることが好ましく、3であることがより好ましい。
・・・略・・・
【0088】
環R1及び環R2が有していてもよい置換基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、1価の複素環基、ハロゲン原子又はデンドロンが好ましく、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、1価の複素環基、ハロゲン原子又はデンドロンがより好ましく、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ハロゲン原子又はデンドロンがさらに好ましく、これらの基はさらに置換基を有していてもよい。
・・・略・・・
【0093】
式(1)で表される燐光発光性化合物としては、式(1-A)で表される燐光発光性化合物又は式(1-B)で表される燐光発光性化合物を好適に用いることができる。
【0094】
【化16】
[図:0001407170000012.jpg]
【0095】
式中、
M、n1、n2、E1及びA1-G1-A2は、それぞれ式(1)におけるM、n1、n2、E1及びA1-G1-A2と同じ意味を表す。
E11A、E12A、E13A、E21A、E22A、E23A及びE24Aは、それぞれ独立に、窒素原子又は炭素原子を表す。E11A、E12A、E13A、E21A、E22A、E23A及びE24Aが複数存在する場合、それらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。E11A、E12A及びE13Aが窒素原子の場合、R11A、R12A及びR13Aは、存在しても存在しなくてもよい。E21A、E22A、E23A及びE24Aが窒素原子の場合、R21A、R22A、R23A及びR24Aは、存在しない。
R11A、R12A、R13A、R21A、R22A、R23A及びR24Aは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、1価の複素環基、置換アミノ基又はハロゲン原子を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。R11A、R12A、R13A、R21A、R22A、R23A及びR24Aが複数存在する場合、それらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。R11AとR12A、R12AとR13A、R11AとR21A、R21AとR22A、R22AとR23A、及び、R23AとR24Aは、それぞれ結合して、それぞれが結合する原子とともに環を形成していてもよい。
環L1Aは、窒素原子、E1、E11A、E12A及びE13Aとで構成されるトリアゾール環又はイミダゾール環を表す。
環L2Aは、2つの炭素原子、E21A、E22A、E23A及びE24Aとで構成されるベンゼン環、ピリジン環又はピリミジン環を表す。
【0096】
【化17】
[図:0001407170000013.jpg]
【0097】
式中、
M、n1、n2及びA1-G1-A2は、それぞれ式(1)におけるM、n1、n2及びA1-G1-A2と同じ意味を表す。
E11B、E12B、E13B、E14B、E21B、E22B、E23B及びE24Bは、それぞれ独立に、窒素原子又は炭素原子を表す。E11B、E12B、E13B、E14B、E21B、E22B、E23B及びE24Bが複数存在する場合、それらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。E11B、E12B、E13B、E14B、E21B、E22B、E23B及びE24Bが窒素原子の場合、R11B、R12B、R13B、R14B、R21B、R22B、R23B及びR24Bは、存在しない。
R11B、R12B、R13B、R14B、R21B、R22B、R23B及びR24Bは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、1価の複素環基、ハロゲン原子又は置換アミノ基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。R11B、R12B、R13B、R14B、R21B、R22B、R23B及びR24Bが複数存在する場合、それらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。R11BとR12B、R12BとR13B、R13BとR14B、R11BとR21B、R21BとR22B、R22BとR23B、及び、R23BとR24Bは、それぞれ結合して、それぞれが結合する原子とともに環を形成していてもよい。
環L1Bは、窒素原子、炭素原子、E11B、E12B、E13B及びE14Bとで構成されるピリジン環又はピリミジン環を表す。
環L2Bは、2つの炭素原子、E21B、E22B、E23B及びE24Bとで構成されるベンゼン環、ピリジン環又はピリミジン環を表す。
【0098】
以下、式(1-A)で表される燐光発光性化合物及び式(1-B)で表される燐光発光性化合物について詳述する。
【0099】
[式(1-A)で表される燐光発光性化合物]
・・・略・・・
【0113】
R11A、R12A、R13A、R21A、R22A、R23A及びR24Aがアリール基、1価の複素環基又は置換アミノ基である場合、発光素子の電力効率がより優れるので、デンドロンであることが好ましい。
【0114】
「デンドロン」とは、原子又は環を分岐点とする規則的な樹枝状分岐構造(即ち、デンドリマー構造)を有する基を意味する。
・・・略・・・
【0115】
デンドロンとしては、式(D-A)又は(D-B)で表される基が好ましい。
【0116】
【化18】
[図:0001407170000014.jpg]
【0117】
式中、
mDA1、mDA2及びmDA3は、それぞれ独立に、0以上の整数を表す。
GDAは、窒素原子、芳香族炭化水素基又は複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。
ArDA1、ArDA2及びArDA3は、それぞれ独立に、アリーレン基又は2価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。ArDA1、ArDA2及びArDA3が複数ある場合、それらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
TDAは、アリール基又は1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数あるTDAは、同一でも異なっていてもよい。
なお、*は結合位置を表す。
・・・略・・・
【0131】
式(D-A)で表される基は、好ましくは式(D-A1)、(D-A2)又は(D-A3)で表される基(以下、場合により「式(D-A1)~(D-A3)で表される基」という。)である。
【0132】
【化23】
[図:0001407170000015.jpg]
【0133】
式中、
Rp1、Rp2及びRp3は、それぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基又はハロゲン原子を表す。Rp1及びRp2が複数ある場合、それらはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
np1は、0~5の整数を表し、np2は0~3の整数を表し、np3は0又は1を表す。複数あるnp1は、同一でも異なっていてもよい。
・・・略・・・
【0149】
[式(1-B)で表される燐光発光性化合物]
式(1-B)で表される燐光発光性化合物は、中心金属であるMと、添え字n1でその数を規定されている配位子と、添え字n2でその数を規定されている配位子とから構成されている。
・・・略・・・
【0154】
R11B、R12B、R13B及びR14Bがアリール基、1価の複素環基又は置換アミノ基である場合、R11B又はR13Bがアリール基、1価の複素環基又は置換アミノ基であることがより好ましく、R11Bがアリール基、1価の複素環基又は置換アミノ基であることがより好ましい。これらの基は、発光素子の電力効率がより優れるので、デンドロンであることが好ましい。デンドロンの例示及び好ましい態様としては、式(1-A)で表される燐光発光性化合物におけるデンドロンの例示及び好ましい態様と同じものが挙げられる。
・・・略・・・
【0159】
R21B、R22B、R23B、及びR24Bがアリール基、1価の複素環基又は置換アミノ基である場合、発光素子の電力効率がより優れるので、デンドロンであることが好ましい。デンドロンの例示及び好ましい態様としては、式(1-A)で表される燐光発光性化合物におけるデンドロンの例示及び好ましい態様と同じものが挙げられる。
・・・略・・・
【0166】
式(1-B)で表される燐光発光性化合物としては、例えば、下記で表される燐光発光性化合物が挙げられる。
・・・略・・・
【0168】
【化33】
[図:0001407170000016.jpg]
・・・略・・・
【0171】
[ホスト材料]
本実施形態に係る発光素子の電力効率が優れるため、本実施形態に係る発光素子の第1の有機層は、少なくとも1種の燐光発光性化合物と、正孔注入性、正孔輸送性、電子注入性及び電子輸送性からなる群から選ばれる少なくとも1つの機能を有するホスト材料とを含有する組成物を用いて形成される層であることが好ましい。該組成物において、ホスト材料は、1種単独で含有されていても、2種以上含有されていてもよい。
・・・略・・・
【0174】
ホスト材料の有する最低励起三重項状態(T1)は、本実施形態に係る発光素子の電力効率が優れるので、第1の有機層の形成に用いられる燐光発光性化合物の有するT1と同等のエネルギー準位、又は、より高いエネルギー準位であることが好ましい。
・・・略・・・
【0176】
ホスト材料は、低分子化合物と高分子化合物とに分類される。
【0177】
[低分子ホスト]
ホスト材料として好ましい低分子化合物(以下、「低分子ホスト」という。)に関して以下に説明する。低分子ホストは、上記ホスト材料のうち、分子量分布を有さず、分子量が1×104以下の化合物である。
【0178】
低分子ホストは、好ましくは、式(H-1)で表される化合物である。
【0179】
【化35】
[図:0001407170000017.jpg]
式中、
ArH1及びArH2は、それぞれ独立に、アリール基又は1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。
nH1及びnH2は、それぞれ独立に、0又は1を表す。nH1が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。nH2が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
nH3は、0以上の整数を表す。
LH1は、アリーレン基、2価の複素環基、又は、-[C(RH11)2]nH11-で表される基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。LH1が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
nH11は、1~10の整数を表す。RH11は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基又は1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数存在するRH11は、同一でも異なっていてもよく、互いに結合して、それぞれが結合する炭素原子とともに環を形成していてもよい。
LH2は、-N(-LH21-RH21)-で表される基を表す。LH2が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
LH21は、単結合、アリーレン基又は2価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。RH21は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。
【0181】
ArH1及びArH2は、フェニル基、フルオレニル基、スピロビフルオレニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、チエニル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基、フリル基、ベンゾフリル基、ジベンゾフリル基、ピロリル基、インドリル基、アザインドリル基、カルバゾリル基、アザカルバゾリル基、ジアザカルバゾリル基、フェノキサジニル基又はフェノチアジニル基であることが好ましく、フェニル基、スピロビフルオレニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、ジベンゾチエニル基、ジベンゾフリル基、カルバゾリル基又はアザカルバゾリル基であることがより好ましく、フェニル基、ピリジル基、カルバゾリル基又はアザカルバゾリル基であることが更に好ましく、上記式(TDA-1)又は(TDA-3)で表される基であることが特に好ましく、上記式(TDA-3)で表される基であることがとりわけ好ましく、これらの基は置換基を有していてもよい。
【0182】
ArH1及びArH2が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基又は1価の複素環基が好ましく、アルキル基、シクロアルコキシ基、アルコキシ基又はシクロアルコキシ基がより好ましく、アルキル基又はシクロアルコキシ基が更に好ましく、これらの基は更に置換基を有していてもよい。
【0183】
nH1は、好ましくは1である。nH2は、好ましくは0である。
【0184】
nH3は、通常、0~10の整数であり、好ましくは0~5の整数であり、更に好ましくは1~3の整数であり、特に好ましくは1である。
【0185】
nH11は、好ましくは1~5の整数であり、より好ましく1~3の整数であり、更に好ましく1である。
【0186】
RH11は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は1価の複素環基であることが好ましく、水素原子、アルキル基又はシクロアルキル基であることがより好ましく、水素原子又はアルキル基であることが更に好ましく、これらの基は置換基を有していてもよい。
【0187】
LH1は、アリーレン基又は2価の複素環基であることが好ましい。
・・・略・・・
【0203】
[高分子ホスト]
ホスト材料として好ましい高分子化合物(以下、「高分子ホスト」という。)に関して以下に説明する。高分子ホストは、上記ホスト材料のうち、分子量分布を有し、ポリスチレン換算の数平均分子量が1×103~1×108の重合体である。
【0204】
高分子ホストとしては、例えば、後述の正孔輸送材料である高分子化合物、後述の電子輸送材料である高分子化合物が挙げられる。
【0205】
高分子ホストは、好ましくは、式(Y)で表される構成単位を含む高分子化合物である。
【0206】
【化41】
[図:0001407170000018.jpg]
【0207】
式中、ArY1は、アリーレン基、2価の複素環基、又は、少なくとも1種のアリーレン基と少なくとも1種の2価の複素環基とが直接結合した2価の基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。
・・・略・・・
【0264】
高分子ホストは、正孔輸送性が優れるので、更に、下記式(X)で表される構成単位を含むことが好ましい。
【0265】
【化64】
[図:0001407170000019.jpg]
【0266】
式中、
aX1及びaX2は、それぞれ独立に、0以上の整数を表す。
ArX1及びArX3は、それぞれ独立に、アリーレン基又は2価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。
ArX2及びArX4は、それぞれ独立に、アリーレン基、2価の複素環基、又は、少なくとも1種のアリーレン基と少なくとも1種の2価の複素環基とが直接結合した2価の基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。ArX2及びArX4が複数存在する場合、それらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
RX1、RX2及びRX3は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。RX2及びRX3が複数存在する場合、それらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0267】
aX1は、本実施形態に係る発光素子の輝度寿命がより優れるので、好ましくは2以下であり、より好ましくは1である。
【0268】
aX2は、本実施形態に係る発光素子の輝度寿命がより優れるので、好ましくは2以下であり、より好ましくは0である。
【0269】
RX1、RX2及びRX3は、好ましくはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は1価の複素環基であり、より好ましくはアリール基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
【0270】
ArX1及びArX3で表されるアリーレン基は、より好ましくは式(A-1)又は(A-9)で表される基であり、更に好ましくは式(A-1)で表される基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
・・・略・・・
【0279】
式(X)で表される構成単位は、好ましくは式(X-1)、(X-2)、(X-3)、(X-4)、(X-5)、(X-6)又は(X-7)で表される構成単位(以下、場合により「式(X-1)~(X-7)で表される構成単位」という。)であり、より好ましくは式(X-1)~(X-6)で表される構成単位であり、更に好ましくは式(X-3)~(X-6)で表される構成単位である。
・・・略・・・
【0282】
【化67】
[図:0001407170000020.jpg]
・・・略・・・
【0284】
式中、RX4及びRX5は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、1価の複素環基又はシアノ基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数存在するRX4は、同一でも異なっていてもよい。複数存在するRX5は、同一でも異なっていてもよく、隣接するRX5同士は互いに結合して、それぞれが結合する炭素原子と共に環を形成していてもよい。
・・・略・・・
【0331】
<第2の有機層>
第2の有機層は、1種又は2種以上の高分子化合物が配合された高分子組成物を用いて形成される層である。上記高分子化合物の少なくとも1種は、架橋基を有する高分子化合物(具体的には、上記高分子化合物の少なくとも1種は、架橋基を有する構成単位を含む高分子化合物)(以下、「架橋性高分子化合物」ともいう。)である。また、上記高分子化合物の少なくとも1種は、燐光発光性構成単位を含む高分子化合物(以下、「燐光発光性高分子化合物」ともいう。)である。第2の有機層は、好ましくは、上記高分子組成物から形成される高分子硬化物を含む。
【0332】
本実施形態においては、一種の高分子化合物が、燐光発光性構成単位及び架橋基の両方を有していてもよい(具体的には、一種の高分子化合物が、燐光発光性構成単位、及び、架橋基を有する構成単位の両方を含んでいてもよい)。すなわち、上記高分子化合物は、燐光発光性構成単位及び架橋基を有する高分子化合物(具体的には、燐光発光性構成単位、及び、架橋基を有する構成単位を含む高分子化合物)(以下、「架橋性燐光発光性高分子化合物」ともいう。)を含むものであってよい。
【0333】
また、本実施形態においては、異なる高分子化合物が、それぞれ燐光発光性構成単位及び架橋基を有していてもよい(具体的には、異なる高分子化合物が、それぞれ燐光発光性構成単位、及び、架橋基を有する構成単位を含んでいてもよい)。すなわち、上記高分子化合物は、燐光発光性高分子化合物、及び、架橋性高分子化合物の2種を少なくとも含むものであってもよい。
【0334】
好適な一態様において、高分子化合物(架橋性高分子化合物を含む1種又は2種以上の高分子化合物)は、高分子化合物を構成する各単量体単位について、全単量体単位の総モルに対するその単量体単位のモル比Cとその単量体単位の分子量Mとを乗じた値x、及び、モル比Cとその単量体単位が有する架橋基の数nとを乗じた値yを求めたとき、xの総和X1及びyの総和Y1から計算される(Y1×1000)/X1の値が、0.6以上となる。
【0335】
第2の有機層が、一種の高分子化合物(架橋性燐光発光性高分子化合物)を用いて形成される層である場合、一種の高分子化合物を構成する各単量体単位について、一種の高分子化合物を構成する全単量体単位の総モルに対するその単量体単位のモル比Cとその単量体単位の分子量Mとを乗じた値x、及び、モル比Cとその単量体単位が有する架橋基の数nとを乗じた値yを求めたとき、xの総和X1及びyの総和Y1から計算される(Y1×1000)/X1の値が、0.6以上となる。
【0336】
第2の有機層が、二種以上の高分子化合物(架橋性高分子化合物、及び、燐光発光性高分子化合物を含む二種以上の高分子化合物)が配合された高分子組成物を用いて形成される層である場合、各高分子化合物について求めた(Y1×1000)/X1の値の加重平均(二種以上の高分子化合物の配合量比からの平均値)が、0.6以上となる。
【0337】
第2の有機層が、架橋基を有する架橋性高分子化合物と、架橋基を有さない高分子化合物(具体的には、燐光発光性高分子化合物)とが配合された高分子組成物を用いて形成される層である場合、架橋基を有さない高分子化合物としては、例えば、式(Y)で表される構成単位及び式(X)で表される構成単位からなる群から選ばれる少なくとも一種の構成単位を含む高分子化合物が挙げられる。
【0338】
[架橋性高分子化合物]
架橋性高分子化合物は、本実施形態に係る発光素子の電力効率が優れるので、架橋基A群から選ばれる少なくとも1種の架橋基を有する高分子化合物であることが好ましい。
【0339】
架橋基A群から選ばれる架橋基としては、本実施形態に係る発光素子の電力効率がより優れるので、・・・略・・・更に好ましくは、式(XL-1)又は(XL-17)で表される架橋基である。
【0340】
架橋性高分子化合物は、架橋基を有する構成単位(以下、「架橋構成単位」ともいう。)を有する。架橋構成単位は、後述する式(2)又は(3)で表される構成単位であることが好ましいが、下記式で表される構成単位であってもよい。
・・・略・・・
【0342】
架橋性高分子化合物は、架橋基A群から選ばれる少なくとも一種の架橋基を有する架橋構成単位を有することが好ましく、該架橋構成単位は、式(2)で表される構成単位又は式(3)で表される構成単位であることが好ましい。
【0343】
【化75】
[図:0001407170000021.jpg]
【0344】
式中、
nAは0~5の整数を表し、nは1又は2を表す。
Ar1は、芳香族炭化水素基又は複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。
LAは、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、2価の複素環基、-NR’-で表される基、酸素原子又は硫黄原子を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。R’は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。LAが複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
Xは、架橋基A群から選ばれる架橋基を表す。Xが複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
【0345】
nAは、本実施形態に係る発光素子の電力効率が優れるため、好ましくは0又は1であり、より好ましくは0である。
【0346】
nは、本実施形態に係る発光素子の電力効率が優れるので、好ましくは2である。
【0347】
Ar1は、本実施形態に係る発光素子の電力効率が優れるので、好ましくは置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基である。
【0348】
Ar1で表される芳香族炭化水素基において、芳香環を構成する炭素原子の数は、通常6~60であり、好ましくは6~30であり、より好ましくは6~18である。
【0349】
Ar1で表される芳香族炭化水素基のn個の置換基を除いたアリーレン基部分は、好ましくは式(A-1)~(A-20)で表される基であり、より好ましくは式(A-1)、(A-2)、(A-6)~(A-10)、(A-19)又は(A-20)で表される基であり、さらに好ましくは、式(A-1)、(A-2)、(A-7)、(A-9)又は(A-19)で表される基である。これらの基は置換基を有していてもよい。
【0350】
Ar1で表される複素環基において、複素環及び複素環と縮環した環を構成する炭素原子の数は、通常2~60であり、好ましくは3~20であり、より好ましくは4~15である。
【0351】
Ar1で表される複素環基のn個の置換基を除いた2価の複素環基部分は、好ましくは式(AA-1)~(AA-34)で表される基である。
【0352】
Ar1で表される芳香族炭化水素基及び複素環基は置換基を有していてもよい。芳香族炭化水素基及び複素環基が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、1価の複素環基及びシアノ基が挙げられる。
【0353】
LAで表されるアルキレン基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常1~10であり、好ましくは1~5であり、より好ましくは1~3である。LAで表されるシクロアルキレン基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常3~10である。
【0354】
LAで表されるアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基が挙げられる。LAで表されるアルキレン基は、置換基を有していてもよく、該置換基としては、例えば、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、ハロゲン原子及びシアノ基が挙げられる。
【0355】
LAで表されるシクロアルキレン基としては、例えば、シクロヘキシレン基、シクロペンチレンが挙げられる。LAで表されるシクロアルキレン基は、置換基を有していてもよく、該置換基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、ハロゲン原子及びシアノ基が挙げられる。
【0356】
LAで表されるアリール基は、置換基を有していてもよい。アリール基としては、o-フェニレン、m-フェニレン、p-フェニレンが挙げられる。アリール基が有してもよい置換基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、1価の複素環基、ハロゲン原子、シアノ基及び架橋基A群から選ばれる架橋基が挙げられる。
【0357】
LAは、架橋基含有高分子化合物の合成が容易になるため、好ましくは、フェニレン基又はメチレン基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
【0358】
Xで表される架橋基の好ましい範囲、より好ましい範囲及び更に好ましい範囲は、前述の架橋基A群から選ばれる架橋基の好ましい範囲、より好ましい範囲及び更に好ましい範囲と同じである。
【0359】
式(2)で表される構成単位は、架橋基含有高分子化合物中に、1種のみ含まれていてもよく、2種以上含まれていてもよい。
【0360】
【化76】
[図:0001407170000022.jpg]
・・・略・・・
【0375】
X’で表される架橋基の好ましい範囲、より好ましい範囲及び更に好ましい範囲は、前述の架橋基A群から選ばれる架橋基の好ましい範囲、より好ましい範囲及び更に好ましい範囲と同じである。
【0376】
式(3)で表される構成単位は、架橋性高分子化合物中に、1種のみ含まれていてもよく、2種以上含まれていてもよい。
【0377】
式(2)で表される構成単位としては、例えば、式(2-1)、(2-2)・・・略・・・(2-30)又は(2-31)で表される構成単位(以下、場合により「式(2-1)~(2-31)で表される構成単位」という。)が挙げられる。式(3)で表される構成単位としては、例えば、式(3-1)、(3-2)、(3-3)・・・略・・・で表される構成単位・・・略・・・が挙げられる。
・・・略・・・
【0378】
これらの中でも、架橋性高分子化合物の架橋性が優れるため、・・・略・・・特に好ましくは、式(2-1)~(2-9)、(2-20)、(2-27)、(2-30)又は(2-31)で表される構成単位である。
・・・略・・・
【0379】
【化77】
・・・略・・・
[図:0001407170000023.jpg]
・・・略・・・
【0380】
【化78】
・・・略・・・
[図:0001407170000024.jpg]
・・・略・・・
[図:0001407170000025.jpg]
・・・略・・・
[図:0001407170000026.jpg]
【0381】
【化79】
・・・略・・・
[図:0001407170000027.jpg]
・・・略・・・
【0382】
架橋性高分子化合物は、正孔輸送性が優れるので、式(X)で表される構成単位をさらに含むことが好ましい。
【0383】
架橋性高分子化合物が含んでいてもよい式(X)で表される構成単位の定義及び例は、前述の高分子ホストが含んでいてもよい式(X)で表される構成単位の定義及び例と同じである。
・・・略・・・
【0386】
架橋性高分子化合物は、式(Y)で表される構成単位をさらに含んでいてもよい。
【0387】
架橋性高分子化合物が含んでいてもよい式(Y)で表される構成単位の定義及び例は、前述の高分子ホストが含んでいてもよい式(Y)で表される構成単位の定義及び例と同じである。
・・・略・・・
【0405】
[燐光発光性高分子化合物]
燐光発光性高分子化合物は、燐光発光性構成単位を含む高分子化合物である。燐光発光性構成単位とは、燐光発光性化合物から、該化合物を構成する炭素原子又はヘテロ原子に直接結合する水素原子を取り除いてなる基を含む構成単位をいう。燐光発光性化合物としては、例えば、上述した第1の有機層の形成に用いられる燐光発光性化合物が挙げられる。
・・・略・・・
【0530】
燐光発光性高分子化合物は、式(X)で表される構成単位を更に含んでいてもよい。また、燐光発光性高分子化合物は、式(Y)で表される構成単位及び/又は式(Y12)で表される構成単位を更に含んでいてもよい。
【0531】
燐光発光性高分子化合物における式(X)で表される構成単位及び式(Y12)で表される構成単位の例示、好ましい態様及び含有量は、上述の架橋性高分子化合物における各構成単位と同じである。
【0532】
燐光発光性高分子化合物は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体のいずれであってもよいし、その他の態様であってもよいが、複数種の原料モノマーを共重合してなる共重合体であることが好ましい。
【0533】
一態様において、燐光発光性高分子化合物は、少なくとも燐光発光性構成単位を有する第1のブロックと、燐光発光性構成単位を有しない第2のブロックと、を含有していてよい。例えば、第1のブロックは、燐光発光性構成単位と他の構成単位の1種以上とが共重合したブロックであってよい。また、第2のブロックは、燐光発光性構成単位以外の他の構成単位が重合したブロックであってよく、他の構成単位の2種以上が共重合したブロックであってよい。この態様では、第1のブロックと第2のブロックとに構成単位の位置を分けることで、隣接させることが好ましくない構成単位を同じ高分子化合物中に含有させることができる。
・・・略・・・
【0543】
[高分子化合物の製造方法]
第2の有機層の形成に用いられる高分子化合物は、前述の高分子ホストの製造方法と同様の方法で製造することができる。
【0544】
[架橋基の平均数]
第2の有機層は、架橋基を有する架橋性高分子化合物を含む1種又は2種以上の高分子化合物が配合された高分子組成物を用いて形成される。本実施形態では、第2の有機層の形成に用いられる高分子化合物における架橋基の平均数を示す指標を、以下の方法で求めることができる。
【0545】
まず、高分子化合物を構成する各単量体単位について、全単量体単位の総モルに対するその単量体単位のモル比Cとその単量体単位の分子量Mとを乗じた値x、及び、モル比Cとその単量体単位が有する架橋基の数nとを乗じた値yを求める。次いで、各単量体単位について求めたxの総和をX1、各単量体単位について求めたyの総和をY1とする。
【0546】
このとき、(Y1×1000)/X1の値は、高分子化合物の分子量1000あたりの架橋基の平均数とほぼ等しい値となり、高分子化合物における架橋基の平均数を示す指標として有効に用いることができる。以下、場合により(Y1×1000)/X1の値を「分子量1000あたりの架橋基の平均数」という。
【0547】
具体的な架橋基の平均数の算出方法を、下記実施例1で用いた高分子化合物P1で詳細に説明する。
【0548】
高分子化合物P1は、単量体である化合物MM1、化合物MM2、化合物MM3及び化合物MM4から形成される単量体単位を有する。全単量体の総モルに対する比率は、化合物MM1が0.40、化合物MM2が0.10、化合物MM3が0.47、化合物MM4が0.03である。また、化合物MM1から形成される単量体単位の分子量は776.45、化合物MM2から形成される単量体単位の分子量は240.20、化合物MM3から形成される単量体単位の分子量は750.51、化合物MM4から形成される単量体単位の分子量は1682.77である。また、化合物MM1が有する架橋基の数は2、化合物MM2が有する架橋基の数は2、化合物MM3が有する架橋基の数は0、化合物MM4が有する架橋基の数は0である。
【0549】
よって、X1は、以下のとおり求められる。
(0.40×776.45)+(0.10×240.20)+(0.47×750.51)+(0.03×1682.77)=737.82
【0550】
また、Y1は、以下のとおり求められる。
(0.40×2)+(0.10×2)+(0.47×0)+(0.03×0)=1.00
【0551】
よって、分子量1000あたりの架橋基の平均数は、以下のとおり求められる。
(1.00×1000)/737.82=1.36
【0552】
高分子組成物が、高分子化合物として2種以上の高分子化合物を含む場合、(Y1×1000)/X1の値は、各高分子化合物を構成する単量体単位に基づいて求められる。また、各高分子化合物について(Y1×1000)/X1の値を求め、各高分子化合物の配合量比から、高分子化合物全体の(Y1×1000)/X1の値を求めることができる。
【0553】
具体的な算出方法を、下記実施例2の高分子化合物P1及び高分子化合物P2を90:10の比で配合した場合について説明する。
【0554】
高分子化合物P1における分子量1000あたりの架橋基の平均数は、1.36である。
【0555】
高分子化合物P2は、単量体である化合物MM1、化合物MM2、化合物MM5、化合物MM3及び化合物MM4から形成される単量体単位を有する。全単量体の総モルに対する比率は、化合物MM1が0.05、化合物MM2が0.05、化合物MM5が0.40、化合物MM3が0.47、化合物MM4が0.03である。また、・・・略・・・化合物MM5から形成される単量体単位の分子量は244.23・・・略・・・である。また、・・・略・・・化合物MM5が有する架橋基の数は0・・・略・・・である。
【0556】
よって、X1は、以下のとおり求められる。
(0.05×776.45)+(0.05×240.20)+(0.40×244.23)+(0.47×750.51)+(0.03×1682.77)=551.75
【0557】
また、Y1は、以下のとおり求められる。
(0.05×2)+(0.05×2)+(0.40×0)+(0.47×0)+(0.03×0)=0.20
【0558】
よって、分子量1000あたりの架橋基の平均数は、以下のとおり求められる。
(0.20×1000)/551.75=0.36
【0559】
高分子化合物P1及び高分子化合物P2を90:10の比で配合した場合の高分子化合物全体の(Y1×1000)/X1の値は、以下のとおり求められる。
(1.36×0.9)+(0.36×0.1)=1.26
【0560】
本実施形態において、分子量1000あたりの架橋基の平均数は、好ましくは0.7以上であり、より好ましくは0.8以上であり、さらに好ましくは1.0以上であり、1.1以上であることが一層好ましく、1.2以上であることが特に好ましい。架橋基の平均数が増えることによって、架橋性高分子化合物により緻密な膜が形成され、第2の有機層の電荷輸送性及び/又は第2の有機層から第1の有機層への電荷注入が改善されると考えられる。
【0561】
また、本実施形態において、分子量1000あたりの架橋基の平均数は、例えば10以下であってよく、3以下であってもよい。架橋基の平均数をこの範囲とすることで、本実施形態に係る発光素子の輝度寿命が優れるという効果が奏される。
【0562】
[第2の有機層の組成物]
第2の有機層は、上記高分子化合物と、正孔輸送材料、正孔注入材料、電子輸送材料、電子注入材料、発光材料、酸化防止剤及び溶媒からなる群から選ばれる少なくとも1種の材料とを含有する組成物(以下、「第2の有機層の組成物」ともいう。)を用いて形成される層であってもよい。
【0563】
例えば、第2の有機層は、第2の有機層の組成物を硬化させた硬化物を含む層であってよい。第2の有機層の組成物は、例えば、高分子化合物中の架橋基を架橋することによって硬化することができる。」
イ 「【実施例】
【0637】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
・・・略・・・
【0642】
(1)燐光発光性化合物
・・・略・・・
【0644】
<1-2>燐光発光性化合物2
燐光発光性化合物2として、下記化合物をLuminescence Technology Corp社より購入した。
【0645】
【化113】
[図:0001407170000028.jpg]
【0646】
<1-3>燐光発光性化合物3
燐光発光性化合物3は、特開2006-188673号公報に記載の方法に従って合成した。
【0647】
【化114】
[図:0001407170000029.jpg]
・・・略・・・
【0650】
<1-5>燐光発光性化合物5
・・・略・・・
【0651】
【化116】
[図:0001407170000030.jpg]
・・・略・・・
【0654】
(2)高分子化合物
・・・略・・・
【0690】
<2-10>高分子化合物P1の合成
以下の工程1~4により、高分子化合物P1を合成した。
【0691】
【化126】
[図:0001407170000031.jpg]
【0692】
(工程1)反応容器内を不活性ガス雰囲気とした後、化合物MM1(0.81933g)、国際公開第2013/146806号に記載の化合物MM2(0.09907g)、国際公開第2005/049546号に記載の化合物MM3(0.86215g)、国際公開第2009/157424号に記載の化合物MM4(0.11290g)、ジクロロビス(トリス-o-メトキシフェニルホスフィン)パラジウム(1.76mg)及びトルエン(34mL)を加え、105℃に加熱した。
【0693】
(工程2)反応液に、20重量%水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液(6.7mL)を滴下し、6時間還流させた。
【0694】
(工程3)反応後、そこに、フェニルボロン酸(48.8mg)及びジクロロビス(トリス-o-メトキシフェニルホスフィン)パラジウム(0.88mg)を加え、14.5時間還流させた。
【0695】
(工程4)その後、そこに、ジエチルジチアカルバミン酸ナトリウム水溶液を加え、80℃で2時間撹拌した。冷却後、得られた反応液を、水で2回、3重量%酢酸水溶液で2回、水で2回洗浄し、得られた溶液をメタノールに滴下したところ、沈澱が生じた。得られた沈殿物をトルエンに溶解させ、アルミナカラム、シリカゲルカラムの順番で通すことにより精製した。得られた溶液をメタノールに滴下し、撹拌した後、得られた沈殿物をろ取し、乾燥させることにより、高分子化合物P1を1.22g得た。
【0696】
高分子化合物P1のポリスチレン換算の数平均分子量は3.0×104であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は2.7×105であった。
【0697】
高分子化合物P1は、仕込み原料の量から求めた理論値では、化合物MM1から形成される構成単位と、化合物MM2から形成される構成単位と、化合物MM3から形成される構成単位と、化合物MM4から形成される構成単位とを、40:10:47:3のモル比で含む共重合体である。高分子化合物P1について、上述の方法で計算した分子量1000あたりの架橋基の平均数は1.36であった。
・・・略・・・
【0722】
<2-16>高分子化合物P3の合成
以下の方法により、高分子化合物P3を合成した。
【0723】
【化132】
[図:0001407170000032.jpg]
【0724】
上記高分子化合物P1の合成における(工程1)を、下記(工程1-3)に変更したこと以外は、上記高分子化合物P1の合成と同様の方法により、高分子化合物P3を1.19g得た。
【0725】
(工程1-3)反応容器内を不活性ガス雰囲気とした後、化合物MM6(0.80419g)、国際公開第2013/191088号に記載の化合物MM7(0.11088g)、化合物MM3(0.86213g)、化合物MM4(0.11288g)、ジクロロビス(トリス-o-メトキシフェニルホスフィン)パラジウム(0.88mg)及びトルエン(34mL)を加え、105℃に加熱した。
【0726】
高分子化合物P3のポリスチレン換算の数平均分子量は3.0×104であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は2.0×105であった。
【0727】
高分子化合物P3は、仕込み原料の量から求めた理論値では、化合物MM6から形成される構成単位と、化合物MM7から形成される構成単位と、化合物MM3から形成される構成単位と、化合物MM4から形成される構成単位とを、40:10:47:3のモル比で含む共重合体である。高分子化合物P3について、上述の方法で計算した分子量1000あたりの架橋基の平均数は0.82であった。
【0728】
<2-17>高分子化合物P4の合成
以下の方法により、高分子化合物P4を合成した。
【0729】
【化133】
[図:0001407170000033.jpg]
【0730】
上記高分子化合物P1の合成における(工程1)を下記(工程1-4)に変更し、(工程2)を下記(工程2-4)に変更し、(工程3)を下記(工程3-4)に変更したこと以外は、上記高分子化合物P1の合成と同様の方法により、高分子化合物P4を2.01g得た。
【0731】
(工程1-4)反応容器内を不活性ガス雰囲気とした後、特開2011-174062号公報に記載の化合物MM12(0.27281g)、化合物MM3(0.37418g)、化合物MM4(0.16929g)、ジクロロビス(トリス-o-メトキシフェニルホスフィン)パラジウム(0.44mg)及びトルエン(31mL)を加え、105℃に加熱した。
【0732】
(工程2-4)反応液に、20重量%水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液(10.0mL)を滴下し、3.5時間還流させた後、化合物MM1(0.92538g)、化合物MM7(0.16637g)、化合物MM3(0.91904g)、ジクロロビス(トリス-o-メトキシフェニルホスフィン)パラジウム(0.88mg)及びトルエン(13mL)を加え、さらに、6時間還流させた。
【0733】
(工程3-4)反応後、そこに、フェニルボロン酸(73.2mg)及びジクロロビス(トリス-o-メトキシフェニルホスフィン)パラジウム(1.32mg)を加え、14.5時間還流させた。
【0734】
高分子化合物P4のポリスチレン換算の数平均分子量は3.3×104であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は1.7×105であった。
【0735】
高分子化合物P4は、仕込み原料の量から求めた理論値では、化合物MM12から形成される構成単位と、化合物MM1から形成される構成単位と、化合物MM7から形成される構成単位と、化合物MM3から形成される構成単位と、化合物MM4から形成される構成単位とを、10:30:10:47:3のモル比で含む共重合体である。高分子化合物P4について、上述の方法で計算した分子量1000あたりの架橋基の平均数は1.09であった。
【0736】
<2-18>高分子化合物P5の合成
以下の方法により、高分子化合物P5を合成した。
【0737】
【化134】
[図:0001407170000034.jpg]
【0738】
上記高分子化合物P1の合成における(工程1)を下記(工程1-5)に変更し、(工程2)を下記(工程2-5)に変更し、(工程3)を下記(工程3-5)に変更したこと以外は、上記高分子化合物P1の合成と同様の方法により、高分子化合物P5を1.26g得た。
【0739】
(工程1-5)反応容器内を不活性ガス雰囲気とした後、化合物MM1(1.23596g)、化合物MM2(0.14849g)、特開2007-511636号公報に記載の化合物MM13(0.60981g)、化合物MM4(0.16851g)、ジクロロビス(トリス-o-メトキシフェニルホスフィン)パラジウム(2.64mg)及びトルエン(31mL)を加え、105℃に加熱した。
【0740】
(工程2-5)反応液に、16重量%水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液(20.7mL)を滴下し、6時間還流させた。
【0741】
(工程3-5)反応後、そこに、フェニルボロン酸(73.2mg)及びジクロロビス(トリス-o-メトキシフェニルホスフィン)パラジウム(1.32mg)を加え、14.5時間還流させた。
【0742】
高分子化合物P5のポリスチレン換算の数平均分子量は3.7×104であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は1.7×105であった。
【0743】
高分子化合物P5は、仕込み原料の量から求めた理論値では、化合物MM1から形成される構成単位と、化合物MM2から形成される構成単位と、化合物MM13から形成される構成単位と、化合物MM4から形成される構成単位とを、40:10:47:3のモル比で含む共重合体である。高分子化合物P5について、上述の方法で計算した分子量1000あたりの架橋基の平均数は2.87であった。
・・・略・・・
【0756】
(3)その他の高分子化合物
・・・略・・・
【0767】
<3-3>高分子化合物E3の合成
・・・略・・・
【0768】
高分子化合物E3は、理論上では、下記で表される構成単位からなる共重合体である。
【0769】
【化137】
[図:0001407170000035.jpg]
・・・略・・・
【0775】
[実施例1]発光素子1の作製と評価
・・・略・・・
【0777】
(発光層の形成)
トルエンに、2,8-di(9H-carbazol-9-yl)dibenzo[b,d]thiophene(DCzDBT)(Luminescence Technology Corp社製)及び燐光発光性化合物1(DCzDBT/燐光発光性化合物1=75重量%/25重量%)を2.0重量%の濃度で溶解させた。得られたトルエン溶液を用いて、正孔輸送層の上にスピンコート法により75nmの厚さで成膜し、窒素ガス雰囲気下において、130℃、10分間加熱させることにより発光層を形成した。
【0778】
【化139】
[図:0001407170000036.jpg]
・・・略・・・
【0812】
[実施例10]発光素子10の作製と評価
(陽極及び正孔注入層の形成)
ガラス基板にスパッタ法により45nmの厚みでITO膜を付けることにより陽極を形成した。該陽極上に、ポリチオフェン・スルホン酸系の正孔注入剤であるAQ-1200(Plextronics社製)をスピンコート法により35nmの厚さで成膜し、大気雰囲気下において、ホットプレート上で170℃、15分間加熱することにより正孔注入層を形成した。
【0813】
(正孔輸送層の形成)
キシレンに、高分子化合物P1を0.7重量%の濃度で溶解させた。得られたキシレン溶液を用いて、正孔注入層の上にスピンコート法により20nmの厚さで成膜し、窒素ガス雰囲気下において、ホットプレート上で180℃、60分間加熱させることにより正孔輸送層を形成した。
【0814】
(発光層の形成)
トルエンに、2,8-di(9H-carbazol-9-yl)dibenzo[b,d]thiophene(DCzDBT)(Luminescence Technology Corp社製)、燐光発光性化合物2及び燐光発光性化合物3(DCzDBT/燐光発光性化合物2/燐光発光性化合物3=74重量%/25重量%/1重量%)を2.0重量%の濃度で溶解させた。得られたトルエン溶液を用いて、正孔輸送層の上にスピンコート法により75nmの厚さで成膜し、窒素ガス雰囲気下において、130℃、10分間加熱させることにより発光層を形成した。
【0815】
(電子輸送層の形成)
2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロ-1-ペンタノールに、高分子化合物E3を0.25重量%の濃度で溶解させた。得られた2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロ-1-ペンタノール溶液を用いて、発光層の上にスピンコート法により10nmの厚さで成膜し、窒素ガス雰囲気下において、130℃、10分加熱させることにより電子輸送層を形成した。
【0816】
(陰極の形成)
電子輸送層を(当合議体注:「電子輸送層の」における「の」は、「を」の誤記と認められる。)形成した基板を蒸着機内において、1.0×10-4Pa以下にまで減圧した後、陰極として、発光層の上にフッ化ナトリウムを約4nm、次いで、フッ化ナトリウム層の上にアルミニウムを約80nm蒸着した。蒸着後、ガラス基板を用いて封止することにより、発光素子10を作製した。
【0817】
(発光光素子の評価)
発光素子10に電圧を印加することによりEL発光が観測された。駆動電圧が6.1[V]の時に1000cd/m2を示し、電力効率は19.1lm/W、色度座標(x,y)は(0.43,0.47)であった。
【0818】
[実施例11]発光素子11の作製と評価
(発光素子の作製)
高分子化合物P1に代えて、高分子化合物P3を用いたこと以外は、実施例10と同様にして発光素子11を作製した。
【0819】
(発光素子の評価)
発光素子11に電圧を印加することによりEL発光が観測された。駆動電圧が5.2[V]の時に1000cd/m2を示し、電力効率は21.6lm/W、色度座標(x,y)は(0.44,0.45)であった。
【0820】
[実施例12]発光素子12の作製と評価
(発光素子の作製)
高分子化合物P1に代えて、高分子化合物P4を用いたこと以外は、実施例10と同様にして発光素子12を作製した。
【0821】
(発光素子の評価)
発光素子12に電圧を印加することによりEL発光が観測された。駆動電圧が5.4[V]の時に1000cd/m2を示し、電力効率は18.5lm/W、色度座標(x,y)は(0.48,0.44)であった。
・・・略・・・
【0824】
実施例10~12及び比較例4の結果を表6に示す。
【0825】
【表6】
[図:0001407170000037.jpg]
・・・略・・・
【0857】
[実施例17]発光素子17の作製と評価
(陽極及び正孔注入層の形成)
ガラス基板にスパッタ法により45nmの厚みでITO膜を付けることにより陽極を形成した。該陽極上に、ポリチオフェン・スルホン酸系の正孔注入剤であるAQ-1200(Plextronics社製)をスピンコート法により35nmの厚さで成膜し、大気雰囲気下において、ホットプレート上で170℃、15分間加熱することにより正孔注入層を形成した。
【0858】
(正孔輸送層の形成)
キシレンに、高分子化合物P1を0.7重量%の濃度で溶解させた。得られたキシレン溶液を用いて、正孔注入層の上にスピンコート法により20nmの厚さで成膜し、窒素ガス雰囲気下において、ホットプレート上で180℃、60分間加熱させることにより正孔輸送層を形成した。
【0859】
(発光層の形成)
トルエンに、2,8-ジ(9H-カルバゾール-9-イル)ジベンゾ[b,d]チオフェン(DCzDBT)(Luminescence Technology Corp社製)、燐光発光性化合物5(DCzDBT/燐光発光性化合物5=75重量%/25重量%)を2.0重量%の濃度で溶解させた。得られたトルエン溶液を用いて、正孔輸送層の上にスピンコート法により75nmの厚さで成膜し、窒素ガス雰囲気下において、130℃、10分間加熱させることにより発光層を形成した。
【0860】
(電子輸送層の形成)
2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロ-1-ペンタノールに、高分子化合物E3を0.25重量%の濃度で溶解させた。得られた2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロ-1-ペンタノール溶液を用いて、発光層の上にスピンコート法により10nmの厚さで成膜し、窒素ガス雰囲気下において、130℃、10分加熱させることにより電子輸送層を形成した。
【0861】
(陰極の形成)
電子輸送層を(当合議体注:「電子輸送層の」における「の」は、「を」の誤記と認められる。)形成した基板を蒸着機内において、1.0×10-4Pa以下にまで減圧した後、陰極として、発光層の上にフッ化ナトリウムを約4nm、次いで、フッ化ナトリウム層の上にアルミニウムを約80nm蒸着した。蒸着後、ガラス基板を用いて封止することにより、発光素子17を作製した。
【0862】
(発光素子の評価)
発光素子17に電圧を印加することによりEL発光が観測された。駆動電圧が3.2[V]の時に1000cd/m2を示し、電力効率は38.9lm/W、色度座標(x,y)は(0.55,0.40)であった。
【0863】
[実施例18]発光素子18の作製と評価
(発光素子の作製)
高分子化合物P1に代えて、高分子化合物P5を用いたこと以外は、実施例17と同様にして発光素子18を作製した。
【0864】
(発光素子の評価)
発光素子18に電圧を印加することによりEL発光が観測された。駆動電圧が4.1[V]の時に1000cd/m2を示し、電力効率は28.3lm/W、色度座標(x,y)は(0.44,0.38)であった。
・・・略・・・
【0867】
実施例17~18及び比較例8の結果を表10に示す。
【0868】
【表10】
[図:0001407170000038.jpg]
」
(2) 引用文献1に記載された発明(引用発明1)
上記(1)の引用文献1の記載(【0545】~【0546】、【0548】~【0551】、【0645】、【0647】、【0691】、【0697】、【0768】~【0769】、【0778】、【0812】~【0817】等)からみて、引用文献1には、「実施例10」において作製され、評価された「発光素子10」に係る発明として、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「 ガラス基板にスパッタ法により45nmの厚みでITO膜を付けることにより陽極を形成し、該陽極上に、ポリチオフェン・スルホン酸系の正孔注入剤であるAQ-1200(Plextronics社製)をスピンコート法により35nmの厚さで成膜し、大気雰囲気下において、ホットプレート上で170℃、15分間加熱することにより正孔注入層を形成し、(【0812】)
キシレンに、高分子化合物P1を0.7重量%の濃度で溶解させ、得られたキシレン溶液を用いて、正孔注入層の上にスピンコート法により20nmの厚さで成膜し、窒素ガス雰囲気下において、ホットプレート上で180℃、60分間加熱させることにより正孔輸送層を形成し、(【0813】)
トルエンに、2,8-di(9H-carbazol-9-yl)dibenzo[b,d]thiophene(DCzDBT)(Luminescence Technology Corp社製)、燐光発光性化合物2及び燐光発光性化合物3(DCzDBT/燐光発光性化合物2/燐光発光性化合物3=74重量%/25重量%/1重量%)を2.0重量%の濃度で溶解させ、得られたトルエン溶液を用いて、正孔輸送層の上にスピンコート法により75nmの厚さで成膜し、窒素ガス雰囲気下において、130℃、10分間加熱させることにより発光層を形成し、(【0814】)
2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロ-1-ペンタノールに、高分子化合物E3を0.25重量%の濃度で溶解させ、得られた2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロ-1-ペンタノール溶液を用いて、発光層の上にスピンコート法により10nmの厚さで成膜し、窒素ガス雰囲気下において、130℃、10分加熱させることにより電子輸送層を形成し、(【0815】)
電子輸送層を形成した基板を蒸着機内において、1.0×10-4Pa以下にまで減圧した後、陰極として、発光層の上にフッ化ナトリウムを約4nm、次いで、フッ化ナトリウム層の上にアルミニウムを約80nm蒸着し、蒸着後、ガラス基板を用いて封止することにより作製した、発光素子10であって、(【0816】)
発光素子10に電圧を印加することによりEL発光が観測され、駆動電圧が6.1[V]の時に1000cd/m2を示し、電力効率は19.1lm/W、色度座標(x,y)は(0.43,0.47)であり、(【0817】)
高分子化合物P1は、理論値では、化合物MM1から形成される構成単位と、化合物MM2から形成される構成単位と、化合物MM3から形成される構成単位と、化合物MM4から形成される構成単位とを、40:10:47:3のモル比で含む共重合体であり、MM1、MM2、MM3及びMM4はそれぞれ以下のものであり、(【0697】)
[図:0001407170000039.jpg]
(【0691】)
高分子化合物P1を構成する各単量体単位について、全単量体単位の総モルに対するその単量体単位のモル比Cとその単量体単位の分子量Mとを乗じた値x、及び、モル比Cとその単量体単位が有する架橋基の数nとを乗じた値yを求め、次いで、各単量体単位について求めたxの総和をX1、各単量体単位について求めたyの総和をY1とした時、化合物MM1から形成される単量体単位の分子量は776.45、化合物MM2から形成される単量体単位の分子量は240.20、化合物MM3から形成される単量体単位の分子量は750.51、化合物MM4から形成される単量体単位の分子量は1682.77であり、化合物MM1が有する架橋基の数は2、化合物MM2が有する架橋基の数は2、化合物MM3が有する架橋基の数は0、化合物MM4が有する架橋基の数は0であり、(Y1×1000)/X1から計算した、分子量1000あたりの架橋基の平均数は1.36であり、(【0545】~【0546】、【0548】~【0551】、【0697】)
2,8-di(9H-carbazol-9-yl)dibenzo[b,d]thiophene(DCzDBT)(Luminescence Technology Corp社製)、燐光発光性化合物2、燐光発光性化合物3及び高分子化合物E3は、それぞれ、
[図:0001407170000040.jpg]
、(【0778】)
[図:0001407170000041.jpg]
、(【0645】)
[図:0001407170000042.jpg]
、(【0647】)
[図:0001407170000043.jpg]
高分子化合物E3である、(【0768】)
発光素子10。」
(3) 対比
本件補正後発明と引用発明1とを対比する。
ア 低分子化合物、燐光発光性遷移金属錯体、第1の有機層
(ア) 引用発明1の「発光層」の製造工程からみて、引用発明1の「発光層」は、「DCzDBT」及び「燐光発光性化合物3」を含有する。
(イ) 引用発明1の「DCzDBT」の分子量は、その構造式より、514.64程度であり、引用発明1の「DCzDBT」は、遷移金属を含まない。
ここで、本件出願の明細書の【0029】によれば、「低分子化合物」とは、「分子量分布を有さず、分子量が1×104以下の化合物を意味する」から、引用発明1の「DCzDBT」と本件補正後発明の「低分子化合物」とは、「遷移金属を含まない低分子化合物」である点で共通する。
(ウ) 引用発明1の「発光層」の「燐光発光性化合物3」は、その名称及び構造式からみて、デンドロンを有する、「燐光発光性」の遷移金属(Ir)錯体である(「デンドロン」については、引用文献1の【0114】や本件出願の明細書【0049】等参照)。
また、引用発明1の「燐光発光性化合物3」が有するデンドロンは、本件補正後発明の「式(D-A)」において、「0以上の整数を表す」「mDA1」及び「mDA2」をそれぞれ「0」とし、「GDA」を「芳香族炭化水素基」とし、「TDA」を「置換基」を有する「アリール基」としたものに該当する。
さらに、引用発明1の「燐光発光性化合物3」は、本件補正後発明の「式(1)」の式中において、「M」を「イリジウム原子」とし、「Mが」「イリジウム原子の場合」は、「n1+n2は3であ」るところ、「n1」を「3」、「n2」を「0」とし(この場合、「A1-G1-A2」は存在しないことになる。)、3つの「E1及びE2」を「炭素原子」とし、3つの「環L1」を、(炭素原子1個が窒素原子に置き換わった)「6員の芳香族複素環」とし、3つの「環L2」を、「デンドロン」を「置換基」として有する「芳香族炭化水素環」としたものに該当する。
そうすると、引用発明1の「燐光発光性化合物3」は、本件補正後発明の、「デンドロンを有する」とされる、「燐光発光性遷移金属錯体」に相当する。
また、引用発明1は、本件補正後発明の、「前記デンドロンが、式(D-A)又は式(D-B)で表される基であり」及び「前記デンドロンを有する燐光発光性遷移金属錯体が、式(1)で表される金属錯体である」との構成を具備する。
(エ) 引用発明1の「発光層」を構成する各材料の構造式からみて、引用発明1の「発光層」は、有機層ということができる。
そうすると、上記(ア)~(ウ)より、引用発明1の「発光層」は、本件補正後発明の「第1の有機層」に相当する。また、引用発明1と本件補正後発明は、「前記第1の有機層が」、「遷移金属を含まない低分子化合物と、デンドロンを有する燐光発光性遷移金属錯体とを含有する層であ」る点で共通する。
イ 架橋基を有する構成単位、式(X)で表される構成単位、第2の有機層
(ア) 引用発明1の「正孔輸送層」は、「キシレンに、高分子化合物P1を」「溶解させ、得られたキシレン溶液を用いて、」「正孔注入層の上に」「20nmの厚さで成膜し、窒素ガス雰囲気下において、ホットプレート上で180℃、60分間加熱させることにより」「形成し」たものである。
(イ) また、引用発明1の「高分子化合物P1」は、以下に示す「化合物MM1から形成される構成単位と、化合物MM2から形成される構成単位と、化合物MM3から形成される構成単位と、化合物MM4から形成される構成単位とを、40:10:47:3のモル比で含む共重合体」であり、「化合物MM1が有する架橋基の数は2、化合物MM2が有する架橋基の数は2、化合物MM3が有する架橋基の数は0、化合物MM4が有する架橋基の数は0であ」る。
[図:0001407170000044.jpg]
(ウ) 上記(イ)より、引用発明1の「化合物MM1から形成される構成単位」及び「化合物MM2から形成される構成単位」は、本件補正後発明の「架橋基を有する構成単位」に相当する。
また、「MM3」の構造式からみて、引用発明1の「化合物MM3から形成される構成単位」は、本件補正後発明の「式(X)で表される構成単位」において、「式(X)」中、「aX2」を「0」(この場合、「ArX4」及び「RX3」は存在しない)、「aX1」を「1」とし、「ArX1及びArX3」をそれぞれ「アリーレン基」とし、「ArX2」を「置換基」を有する「アリーレン基」とし、「RX1」及び「RX2」をそれぞれ「アリール基」としたものに該当する。
そうすると、引用発明1の「化合物MM3から形成される構成単位」は、本件補正後発明の「式(X)で表される構成単位」に相当する。
してみると、引用発明1の「高分子化合物P1」と本件補正後発明の「高分子化合物」とは、「架橋基を有する構成単位と、式(X)で表される構成単位及び式(Y)で表される構成単位のうち少なくとも一方と」を含有する「高分子化合物」である点で共通する。
(エ) 引用発明1の「架橋基」は、「加熱処理、紫外線照射処理、ラジカル反応等に供することにより、新たな結合を生成することが可能な基」であり、「加熱又は光照射することで、高分子組成物に含有される架橋性高分子化合物を架橋させて、高分子組成物を硬化させることができる」ものである(引用文献1【0063】及び【0073】参照)。
また、引用発明1の「高分子化合物P1」に含まれる「化合物MM1が有する架橋基の数は2、化合物MM2が有する架橋基の数は2」であり、「分子量1000あたりの架橋基の平均数は1.36であ」るところ、引用文献1の【0560】には、「分子量1000あたりの架橋基の平均数は、・・・略・・・1.2以上であることが特に好ましい。架橋基の平均数が増えることによって、架橋性高分子化合物により緻密な膜が形成され、第2の有機層の電荷輸送性及び/又は第2の有機層から第1の有機層への電荷注入が改善されると考えられる。」と記載されている。
上記「正孔輸送層」形成時の加熱条件(「ホットプレート上で180℃、60分間加熱」)からみて、引用発明1の「正孔輸送層」は、「化合物MM1から形成される構成単位と、化合物MM2から形成される構成単位と、化合物MM3から形成される構成単位と、化合物MM4から形成される構成単位とを」「含む共重合体」である「高分子化合物P1」が、「化合物MM1が有する架橋基」及び「化合物MM2が有する架橋基」が「架橋」した層、すなわち、架橋体を含有する層であるといえる。
(オ) (Y1×1000)/X1の値
引用発明1は、「高分子化合物P1を構成する各単量体単位について、全単量体単位の総モルに対するその単量体単位のモル比Cとその単量体単位の分子量Mとを乗じた値x、及び、モル比Cとその単量体単位が有する架橋基の数nとを乗じた値yを求め、次いで、各単量体単位について求めたxの総和をX1、各単量体単位について求めたyの総和をY1とした時」、「化合物MM1が有する架橋基の数は2、化合物MM2が有する架橋基の数は2、化合物MM3が有する架橋基の数は0、化合物MM4が有する架橋基の数は0であり」、「(Y1×1000)/X1」「は1.36であ」る。
「X1」、「Y1」及び「(Y1×1000)/X1」に関する上記定義によれば、引用発明1の「高分子化合物P1」の「X1」、「Y1」及び「(Y1×1000)/X1」は、本件補正後発明の「高分子化合物」の「X1」、「Y1」及び「(Y1×1000)/X1」に相当する(本件出願明細書の【0328】~【0329】の記載からも理解される。)。
そうすると、引用発明1は、本件補正後発明の、「前記高分子化合物を構成する全構成単位の分子量の合計をX1とし、前記高分子化合物を構成する全構成単位が有する架橋基の数の合計をY1としたとき、(Y1×1000)/X1の値が0.25以上であり」との構成を具備するといえる。
(カ) 引用発明1の「正孔輸送層」を構成する各材料の構造式からみて、引用発明1の「正孔輸送層」は、有機層である。
そうすると、上記(ア)~(オ)より、引用発明1の「正孔輸送層」は、本件補正後発明の「第2の有機層」に相当する。また、引用発明1と、本件補正後発明は、「前記第2の有機層が、架橋基を有する構成単位と、式(X)で表される構成単位及び式(Y)で表される構成単位のうち少なくとも一方と」を含有する「高分子化合物の架橋体を含有する層であ」る点において共通する。
エ 陽極、陰極
引用発明1の「陽極」は、本件補正後発明の「陽極」に相当する。
引用発明1の、「陰極として」、「発光層の上に」「蒸着し」た「フッ化ナトリウム層」及び「フッ化ナトリウム層の上に」「蒸着し」た「アルミニウム」は、本件補正後発明の「陰極」に相当する。
オ 発光素子
上記ア~エより、引用発明1の「発光素子10」は、本件補正後発明の「発光素子」に相当する。
また、引用発明1の上記製造工程から理解される積層構造からみて、引用発明1の「発光素子10」は、本件補正後発明の「発光素子」の、「陽極と、陰極と、陽極及び陰極の間に設けられた第1の有機層及び第2の有機層と、を有する」との構成を具備する。
(4) 一致点及び相違点
上記(3)の対比結果を踏まえると、本件補正後発明と引用発明1は、
「陽極と、陰極と、陽極及び陰極の間に設けられた第1の有機層及び第2の有機層と、を有する発光素子であって、
前記第1の有機層が、遷移金属を含まない低分子化合物と、デンドロンを有する燐光発光性遷移金属錯体とを含有する層であり、
前記第2の有機層が、架橋基を有する構成単位と、式(X)で表される構成単位及び式(Y)で表される構成単位のうち少なくとも一方と、を含有する高分子化合物の架橋体を含有する層であり、
前記高分子化合物を構成する全構成単位の分子量の合計をX1とし、前記高分子化合物を構成する全構成単位が有する架橋基の数の合計をY1としたとき、(Y1×1000)/X1の値が0.25以上であり、
前記デンドロンが、式(D-A)又は式(D-B)で表される基であり、
前記デンドロンを有する燐光発光性遷移金属錯体が、式(1)で表される金属錯体である、
前記発光素子。
【化3】
[図:0001407170000045.jpg]
[式中、
aX1及びaX2は、それぞれ独立に、0以上の整数を表す。
ArX1及びArX3は、それぞれ独立に、アリーレン基又は2価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。
ArX2及びArX4は、それぞれ独立に、アリーレン基、2価の複素環基、又は、少なくとも1種のアリーレン基と少なくとも1種の2価の複素環基とが直接結合した2価の基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。ArX2及びArX4が複数存在する場合、
それらは同一でも異なっていてもよい。
RX1~RX3は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。RX2及びRX3が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。]
【化4】
[図:0001407170000046.jpg]
[式中、ArY1は、アリーレン基、2価の複素環基、又は、少なくとも1種のアリーレン基と少なくとも1種の2価の複素環基とが直接結合した2価の基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。]
【化5】
[図:0001407170000047.jpg]
[式中、
mDA1、mDA2及びmDA3は、それぞれ独立に、0以上の整数を表す。
GDAは、芳香族炭化水素基又は複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。
ArDA1、ArDA2及びArDA3は、それぞれ独立に、アリーレン基又は2価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。ArDA1、ArDA2及びArDA3が複数ある場合、それらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
TDAは、アリール基又は1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数あるTDAは、同一でも異なっていてもよい。]
【化6】
[図:0001407170000048.jpg]
[式中、
mDA1、mDA2、mDA3、mDA4、mDA5、mDA6及びmDA7は、それぞれ独立に、0以上の整数を表す。
GDAは、芳香族炭化水素基又は複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数あるGDAは、同一でも異なっていてもよい。
ArDA1、ArDA2、ArDA3、ArDA4、ArDA5、ArDA6及びArDA7は、それぞれ独立に、アリーレン基又は2価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。ArDA1、ArDA2、ArDA3、ArDA4、ArDA5、ArDA6及びArDA7が複数ある場合、それらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
TDAは、アリール基又は1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数あるTDAは、同一でも異なっていてもよい。]
【化7】
[図:0001407170000049.jpg]
[式中、
Mは、ルテニウム原子、ロジウム原子、パラジウム原子、イリジウム原子又は白金原子を表す。
n1は1以上の整数を表し、n2は0以上の整数を表す。但し、Mがルテニウム原子、ロジウム原子又はイリジウム原子の場合、n1+n2は3であり、Mがパラジウム原子又は白金原子の場合、n1+n2は2である。
E1及びE2は、それぞれ独立に、炭素原子又は窒素原子を表す。但し、E1及びE2の少なくとも一方は炭素原子である。E1及びE2が複数存在する場合、それらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
環L1は、6員の芳香族複素環を表し、該環は置換基を有していてもよい。該置換基が複数存在する場合、互いに結合して、それぞれが結合する原子とともに環を形成していてもよい。環L1が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
環L2は、芳香族炭化水素環又は芳香族複素環を表し、これらの環は置換基を有していてもよい。該置換基が複数存在する場合、互いに結合して、それぞれが結合する原子とともに環を形成していてもよい。環L2が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
環L1が有していてもよい置換基と、環L2が有していてもよい置換基とは、互いに結合して、それぞれが結合する原子とともに環を形成していてもよい。
環L1及び環L2のうちの少なくとも一つは、デンドロンを有する。
A1-G1-A2は、アニオン性の2座配位子を表す。A1及びA2は、それぞれ独立に、炭素原子、酸素原子又は窒素原子を表し、これらの原子は環を構成する原子であってもよい。G1は、単結合、又は、A1及びA2とともに2座配位子を構成する原子団を表す。A1-G1-A2が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。]」である点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点1-1)
「遷移金属を含まない低分子化合物」が、本件補正後発明においては、「要件(i)及び要件(ii)の少なくとも一方を満たす」のに対して、引用発明1においては、「DCzDBT」が、「要件(i)及び要件(ii)の少なくとも一方を満たす」かどうか不明である点。
(相違点1-2)
「高分子化合物」が、本件補正後発明においては、「架橋基を有する構成単位と」「式(X)で表される構成単位及び式(Y)で表される構成単位のうち少なくとも一方と」「からなる」のに対して、引用発明1においては、「高分子化合物P1」が、「化合物MM1から形成される構成単位」、「化合物MM2から形成される構成単位」(「架橋基を有する構成単位」)と、「化合物MM3から形成される構成単位」(「式(X)で表される構成単位」)と、「化合物MM4から形成される構成単位」と「からなる」ものである点。
(5) 判断
ア 相違点1-1について
相違点1-1について検討する。
(ア) 原査定の拒絶の理由1(進歩性)において引用された国際公開2017/119203号(以下「引用文献2」という。特に、請求項1、5、[0006](消光物質に励起子のエネルギーが移動し易いこと)、[0048]~[0053](生成した消光物質へのエネルギー移動速度(Kq)を抑制することについて、コアシェル型ドーパントの利点(Kqの抑制)と欠点(ホスト14からコア部11へのキャリア、及び励起子のエネルギーの移動までもが抑制されてしまうこと、ホスト14上でのキャリアの再結合確率が高くなり、生成したホスト14上の励起子のエネルギーがホスト14上で失活しやすく、薄膜の発光寿命が短くなること等)について)、[0055](発光性金属錯体について)、[0059]~[0061](発光中心であるコア部と消光物質との間に物理的距離を設ける構造について)、[0067]~[0071]、[0079]~[0080]、[0086]~[0090](発光性金属錯体に構造部分について)、[0091](ホストについて)、[0096]~[0099](ホストとして、最低三重項励起状態の準位と最低一重項励起状態の準位との間隔が小さく、両状態の間で逆項間交差現象を発現するTADFを用いる場合(図5参照)及び具体的な材料H-4~H-7について)、各実施例(H-4~H-7について)等参照。)には、消光物質からコア部へ物理的な距離を設けることができるコアシェル型ドーパントにおいては、ホストからコア部へのキャリア、及び励起子のエネルギーの移動が抑制される、生成したホスト上の励起子のエネルギーがホスト上で失活しやすく薄膜の発光寿命が短くなる、との問題があるところ、最低三重項励起状態の準位と最低一重項励起状態の準位との間隔(ΔEst)が小さく逆項間交差を示す熱活性型遅延蛍光(TADF)を示す化合物をフェルスター型ホストとして採用すること(課題解決手段)によって上記課題を解決したことが記載されている。
そして、引用文献2の[0099]には、ΔEstが小さく逆項間交差を示す熱活性型遅延蛍光(TADF)を示す化合物の具体例として、
[図:0001407170000050.jpg]
、
[図:0001407170000051.jpg]
、
[図:0001407170000052.jpg]
、
が具体的に開示されている。
ここで、「H-7」は、「DIC-TRZ」と略され、ΔEst=0.06eVであること、「H-6」は、「Cz2BP」と略され、ΔEst=0.21eVであることは、先の出願時における当業者の技術常識である。
また、ΔEstが小さい「H-4」及び「H-5」の置換基「R」の「~」部分を最も単純な直接結合としたものは、それぞれ「4CzIPN」及び「2CzPN」としてよく知られ、そのΔEstがそれぞれ0.083eV及び0.09eVであることも、先の出願時における当業者の技術常識である(各材料のΔEstについて、例えば、「4CzIPN」(H-4)に関しては、Chihaya Adachi 他,Highly efficient organic light-emitting diodes from delayed fluorescence,NATURE,Vol.492,13 December 2012,p.234-238(他補足資料2頁)(特に、234頁右欄4行~19行、234頁Fig1(a,b)、238頁Fig4(d)等)、「4CzIPN」(H-4)、「2CzPN」(H-5)及び「Cz2BP」(H-6)に関しては、Ye Tao 他,Thermally Activated Delayed Fluorescence Materials Towards the Breakthrough of Organoelectronics,ADVANCED MATERAIALS,Vol.26,2014,p.7931-7958(特に、7939頁「Table2」のTADF「45」、「44」、「82」の「ΔEst/eV」欄、7946頁「Figure13a」「45」、「44」、7952頁「Scheme7」「82」等)、「DIC-TRZ」(H-7)に関しては、Dongdong Zhang 他,High-Efficiency Fluorescent Organic Light-Emitting Devices Using Sensitizing Hosts with a Small Singlet-Triplet Exchange Energy,ADVANCED MATERIALS,Vol.26,2014,p.5050-5055(特に、5051頁右欄7~9行、同頁「Figure 2」「a」「DIC-TRZ」)等)を参照。「H-7」のΔEstについては、本件出願の明細書の【0376】【化82】の「化合物H5」、【0390】【表4】(「実施例D20」の「化合物H5」の「ΔEst」「0.066」)等からも確認できる。)。
(イ) また、引用発明1の「燐光発光性化合物3」は、デンドロン(樹状構造)の配位子を有するものであるところ、当該デンドロン構造(樹状構造)は、引用文献2の「コアシェル型ドーパント」([0067]~[0075](特に[0074])、請求項5等に記載の第2実施形態に係る発光性金属錯体)と同様、金属錯体(コア)を取り囲む嵩高い分子構造に起因して、ドーパントとホストとの物理的距離が大きくなるから、引用文献1及び2に接した当業者は、引用発明1の「燐光発光性化合物3」(ドーパントに対応)においても、上記(ア)で述べた問題(ホストとからゲストへのエネルギーの移動が抑制されるという問題)が生じることを直ちに理解する。また、電力効率に優れる発光素子を提供すること(引用文献1の【0007】参照。)を課題とする引用発明1においても、発光寿命が長いことは好ましい特性である(例えば、引用文献1の【0561】には、分子量1000あたりの架橋基の平均数を所定の範囲とすることにより、「発光素子の輝度寿命が優れるという効果が奏される。」ことが記載されている。)。
してみると、引用発明1において、引用文献2の上記(ア)の課題解決手段(下線部)を心得た当業者が、長い発光寿命が得られるように、フェルスター型ホストとして、引用文献2に具体的に示された、ΔEstが小さいH-7(ΔEst=0.06eV)、H-6(ΔEst=0.21eV)、置換基「R」の「~」部分を直接結合とした「H-4」(4CzIPN、ΔEst=0.083eV)、あるいは、置換基「R」の「~」部分を直接結合とした「H-5」(2CzPN、ΔEst=0.09eV)で表されるTADF材料を採用して、相違点1-1に係る、本件補正後発明の、要件(i)(最低三重項励起状態のエネルギー準位と最低一重項励起状態のエネルギー準位との差の絶対値が0.25eV未満である。)を満たす構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
さらに、要件(ii)の充足性については、次のとおりである。
「H-6」は、本件補正後発明の要件(ii)の式(T-1)において、「nT1」を「0」(この場合、「LT1」は存在しない。)、「nT2」を「2」、2つの「ArT1」(の全てを)を「式(T1-1A)で表される基」とし、「ArT2」を、「電子求引性基」(「-C(=O)-」)「を含む芳香族炭化水素基」としたものに対応するから、上記のようにH-7あるいはH-6で表されるTADFを示す化合物を採用した引用発明1は、相違点1-1に係る本件補正後発明の、要件(i)(最低三重項励起状態のエネルギー準位と最低一重項励起状態のエネルギー準位との差の絶対値が0.25eV未満である。)及び要件(ii)(式(T-1)で表される。)の少なくとも一方を満たす構成を具備することとなる。
同様に、置換基「R」の「~」部分を直接結合とした「H-4」(4CzIPN)は、同要件(ii)において、「nT1」を「0」、「nT2」を「4」、4つの「ArT1」(全て)を、「環内に二重結合を有さない窒素原子を含み、且つ、環内に=N-で表される基、-C(=O)-で表される基、-S(=O)-で表される基、及び、-S(=O)2-で表される基を含まない1価の複素環基」であって、「式(T1-1A)で表される基」とし、「ArT2」を、「置換基」として電子吸引性の2つのシアノ基(-CN)を有する「芳香族炭化水素基」とし、「ArT1のすべてが」「式(T1-1A)で表される基である場合」において、「ArT2」を、「電子求引性基」「を含む芳香族炭化水素基」としたものに対応し、
置換基「R」の「~」部分を直接結合とした「H-5」(2CzPN)は、同要件(ii)において、「nT1」を「0」、「nT2」を「2」、2つの「ArT1」を、「環内に二重結合を有さない窒素原子を含み、且つ、環内に=N-で表される基、-C(=O)-で表される基、-S(=O)-で表される基、及び、-S(=O)2-で表される基を含まない1価の複素環基」であって、「式(T1-1A)で表される基」とし、「ArT2」を、「置換基」として電子吸引性の2つのシアノ基を有する「芳香族炭化水素」とし、「ArT1のすべてが」「式(T1-1A)で表される基である場合」において、「ArT2」を、「電子求引性基」「を含む芳香族炭化水素基」としたものに対応するから、上記のようにH-4あるいはH-5の置換基「R」の「~」部分を直接結合としたTADFを示す化合物を採用した引用発明1は、同要件(i)及び要件(ii)の少なくとも一方を満たす構成を具備することとなる。
(ウ) 小括
以上のとおりであるから、引用発明1において、引用文献2に記載された技術に基づき、相違点1-1に係る本件補正後発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
イ 相違点1-2について
相違点1-2について検討する。
ここで、相違点1-2に係る、本件補正後発明における、「高分子化合物」が、「架橋基を有する構成単位と」「式(X)で表される構成単位及び式(Y)で表される構成単位のうち少なくとも一方と」「からなる」における「からなる」とは、「高分子化合物」が、「架橋基を有する構成単位と」「式(X)で表される構成単位及び式(Y)で表される構成単位のうち少なくとも一方と」、のみからなること、すなわち、上記「高分子化合物」が上記3種(あるいは2種)の構成単位のみを含み、それ以外の構成単位を含まないこと、を通常意味すると解される(審判請求書の「(4)本願発明と引用発明との対比」における、請求人の、「引用文献1に記載されている高分子化合物はいずれも、燐光発光性構成単位を含む高分子化合物であり、本願の「架橋基を有する構成単位と、式(X)で表される構成単位及び式(Y)で表される構成単位のうち少なくとも一方と、からなる高分子化合物」に相当しません。」との主張も、上記の解釈に基づいている。)から、以下においては、「~からなる」を上記通常の意味に解して検討を行う。
(ア) 引用発明1の「高分子化合物P1」について、引用文献1には、次の記載がある。
(A)「第2の有機層は、1種又は2種以上の高分子化合物が配合された高分子組成物を用いて形成される層である。」、「上記高分子化合物の少なくとも1種は、架橋基を有する高分子化合物(具体的には、上記高分子化合物の少なくとも1種は、架橋基を有する構成単位を含む高分子化合物)(以下、「架橋性高分子化合物」ともいう。)である。」、「上記高分子化合物の少なくとも1種は、燐光発光性構成単位を含む高分子化合物(以下、「燐光発光性高分子化合物」ともいう。)である。」(【0331】)
(B)「上記高分子化合物は、燐光発光性高分子化合物、及び、架橋性高分子化合物の2種を少なくとも含むものであってもよい。」(【0333】)
(C)「第2の有機層が、二種以上の高分子化合物・・・略・・・が配合された高分子組成物を用いて形成される層である場合、各高分子化合物について求めた(Y1×1000)/X1の値の加重平均(二種以上の高分子化合物の配合量比からの平均値)が、0.6以上となる。」(【0336】)
(D)「第2の有機層が、架橋基を有する架橋性高分子化合物と、架橋基を有さない高分子化合物(具体的には、燐光発光性高分子化合物)とが配合された高分子組成物を用いて形成される層である場合、架橋基を有さない高分子化合物としては、例えば、式(Y)で表される構成単位及び式(X)で表される構成単位からなる群から選ばれる少なくとも一種の構成単位を含む高分子化合物が挙げられる。」(【0337】)
(E)「架橋性高分子化合物は、正孔輸送性が優れるので、式(X)で表される構成単位をさらに含むことが好ましい。」(【0382】)
ここで、式(X)及び式(Y)は、それぞれ、引用文献1の【0264】~【0270】、及び、【0205】~【0207】に記載されたものである。
(イ) 引用文献1の上記(ア)(A)~(C)及び(E)の各記載からみて、引用文献1には、「正孔輸送層」(「第2の有機層」)を、「架橋性高分子化合物」と、「架橋基を有さない高分子化合物(具体的には、燐光発光性高分子化合物)」との2種の高分子化合物が配合された高分子組成物を用いて形成された層とすること、2種の高分子化合物とした場合には、「各高分子化合物について求めた(Y1×1000)/X1の値の加重平均(二種以上の高分子化合物の配合量比からの平均値)」を「0.6以上」とすることが記載ないし示唆されているといえる。
そうすると、引用発明1において、上記記載ないし示唆に基づき、「高分子化合物P1」に替えて、(架橋基の数が2の)「化合物MM1から形成される構成単位」と、(架橋基の数が2の)「化合物MM2から形成される構成単位」(「架橋基を有する構成単位」)と、(架橋基の数が0の)「化合物MM3から形成される構成単位」(「式(X)で表される構成単位」)のみからなる共重合体からなる架橋性高分子化合物(1)(上記(ア)(E))と、(架橋基の数が0の)「化合物MM3から形成される構成単位」(「式(X)で表される構成単位」)と、「化合物MM4から形成される構成単位」を含む共重合体(以下「燐光発光性高分子化合物(2)」という。)からなる「2種」の高分子化合物を採用してなる高分子組成物を用いて、成膜・加熱処理し、「正孔輸送層」を形成すること、その際、上記(ア)(C)に基づいて、「正孔輸送層」全体に含まれるMM1~MM4の構成単位のモル比(40:10:47:3)をある程度維持しつつ、「各高分子化合物について求めた(Y1×1000)/X1の値の加重平均(二種以上の高分子化合物の配合量比からの平均値)」として、0.6以上(上記(C))に調整することは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、上記構成とした引用発明1の「正孔輸送層」は、
(I)「化合物MM1から形成される構成単位」及び「化合物MM2から形成される構成単位」(以上「架橋基を有する構成単位」)と、「化合物MM3から形成される構成単位」(「式(X)で表される構成単位」)(のみ)からなる「架橋性高分子化合物(1)」の架橋体と、
(II)(架橋反応に関与しない)「化合物MM3から形成される構成単位」(「式(X)で表される構成単位」)と「化合物MM4から形成される構成単位」の共重合体からなる「架橋基を有さない燐光発光性高分子化合物(2)」とを含有することとなり、上記(I)の「架橋性高分子化合物(1)」の架橋体は、架橋基を有する構成単位と、式(X)で表される構成単位とからなる、ということができ、「正孔輸送層」は、上記(II)の「架橋基を有さない燐光発光性高分子化合物(2)」と、上記(I)の「架橋性高分子化合物(1)」の架橋体を含有する層である、という構成を備えたものとなる。
したがって、引用文献1の上記(ア)の各記載に接した当業者が、引用発明1の「高分子化合物P1」を、相違点1-2に係る本件補正後発明の構成を具備するものとすることは容易に想到し得たことである。
なお、「高分子化合物P1」についての上記材料変更の結果、引用発明1における「(Y1×1000)/X1」の値が変動し得るが、引用文献1の【0068】や上記(ア)(C)の記載からみて、当業者が前記値が「0.25」を下回るような材料変更(上記(3)イ(オ)で「一致点」とした点が相違点となるような材料変更)を行うことはない。
(ウ) 小括
以上のとおりであるから、引用発明1において、引用文献1の記載に基づき、相違点1-2に係る本件補正後発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
ウ 本件補正後発明の効果について
本件補正後発明の発光効率が優れる発光素子を提供することができる(【0023】)との効果は、先の出願時、本件補正後発明の構成が奏するものとして当業者が予測することができたものであり、当該構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものではない。
エ 審判請求書における請求人の主張について
(ア) 請求人は、審判請求書の「3.本願発明が特許されるべき理由において」「(4)本願発明と引用発明との対比」において、「引用文献1には、本願の「第2の有機層が、架橋基を有する構成単位と、式(X)で表される構成単位及び式(Y)で表される構成単位のうち少なくとも一方と、からなる高分子化合物の架橋体を含有する層である」という構成(以下、「構成A」という)について記載も示唆もありません。」、「引用文献1に記載されているDCzDBTは、本願の要件(ii)を満たしません。また、引用文献1に記載されているDCzDBTは、最低三重項励起状態のエネルギー準位と最低一重項励起状態のエネルギー準位との差の絶対値(△Est)が0.297eVであるため、本願の要件(i)を満たしません。」、「引用文献1には、「第1の有機層が、要件(i)及び要件(ii)の少なくとも一方を満たす遷移金属を含まない低分子化合物と、デンドロンを有する燐光発光性遷移金属錯体とを含有する層である」という構成(以下、「構成B」という)について記載も示唆もありません。」と主張し、
同「(4-1)構成A」において、「引用文献1及び引用文献2のいずれにも、本願の構成Aについて記載も示唆もないことから、たとえ当業者であっても、引用文献1及び引用文献2に基づいて、本願の構成Aを導くことはできません。」と主張し、
同「(4-2)構成B」において、「引用文献2の実施例7には、ホスト(H-7)が記載されており、このホスト(H-7)は、△ESTが0.25eV以下である、遷移金属を含まない低分子化合物に相当します。」、「しかし、引用発明1の課題は、電力効率に優れる発光素子を提供すること([0007])であるのに対して、引用発明2の課題は、発光寿命の長い薄膜、及び有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することであり([0014])、課題の共通性がありません。」、「発光素子の分野において、電力効率と発光寿命とは必ずしも比例関係にあるわけではないこと、すなわち、発光寿命に優れるからといって、電力効率に優れるとは限らないということ、そして、電力効率に優れるからといって、発光寿命に優れるとは限らないということは、当業者にとって技術常識です。」、「したがって、引用発明1と引用発明2とは課題の共通性がなく、当業者が、電力効率に関する引用発明1と、発光寿命に関する引用発明2とを組み合わせる動機付けがありません。」、「本願発明の課題は、発光効率が優れる発光素子を提供することである([0005])が、引用文献2の実施例では、ホスト(H-7)以外のホストも用いられており、ホスト(H-7)が他のホストと比較し、発光効率の向上に関連するとは読み取れず、当業者がホスト(H-7)に着目する動機付けがありません。」、「よって、引用文献2の実施例にホスト(H-7)が記載されているからといって、当業者がホスト(H-7)を引用発明1に適用することは容易であるというのは、後知恵であると考えます。」、「以上より、たとえ当業者であっても、引用文献1及び引用文献2に基づいて、本願の構成Bを導くことはできません。」と主張し、
同「(4-3)効果」において、「本願発明は、上記構成A及び構成Bを有することにより、発光効率が優れるという顕著な効果が得られることは、本願明細書の実施例より明らかです(表3~表8)。」、「以上より、本願発明は、引用文献1及び引用文献2からは容易に想到することができず、本願発明の効果は、引用文献1及び引用文献2からは予測できない顕著な効果であることから、引用文献1及び引用文献2に対して進歩性を有します。」と主張する。
(イ) しかしながら、構成Aについては、上記イにおいて相違点1-2について述べたとおりであり、請求人の主張を採用することはできない。
また、構成Bについて、上記アにおいて相違点1-1について述べたとおり、引用文献1及び2に接した当業者であれば、引用発明1のデンドロン構造を有する「燐光発光性化合物3」においても、上記ア(ア)で述べた問題(ホストとからゲストへのエネルギーの移動が抑制されるという問題)が生じることに気付くといえ、また、電力効率に優れる発光素子を提供することを課題とする引用発明1においても、発光寿命(半減寿命)が長いことは望まれる特性であるから、引用文献2の上記ア(ア)の課題解決手段を心得た当業者が、長い発光寿命が得られるように、引用発明1において、フェルスター型ホストとして、引用文献2に具体例として開示されたH-7等のΔEstが小さいTADF材料に着目し、これを採用することは、容易になし得たことである。そして、電力効率に優れる引用発明1に、引用文献2の技術を採用すれば、ホストからゲストへ効率的にエネルギーが移動すること、発光寿命(半減寿命)が長くなることが予測、期待でき、発光効率が優れた発光素子となることは、当業者であれば予測可能なものであって、格別、顕著なものではない。
以上のとおりであるから、請求人の主張を採用することはできない。
オ 引用文献1の実施例10以外に係る発光素子に基づく発明を主引用発明とした場合
(ア)実施例11及び12に基づいて主引用発明を認定した場合
各構成材料からみて、実施例11及び12(【0818】~【0821】、【0825】【表6】)に係る発光素子の発明を主引用発明としても判断は上記(5)と同様である。
(イ)実施例17及び18に基づいて主引用発明を認定した場合
引用文献1の【0857】~【0862】、【0868】【表10】には、例えば、「実施例17」に係る「発光素子17」の発明(以下「引用発明17」という。)が記載されているところ、引用発明17の「正孔輸送層」は「高分子化合物P1」(架橋基の平均数は1.36)を、「発光層」は「DCzDBT/燐光発光性化合物5(75/25)」をそれぞれ含む(当合議体注:「燐光発光性化合物5」は、上記2(1)イ(【0651】)で摘記したとおりである。)。
ここで、本件補正後発明と引用発明17とは、上記相違点1-1及び相違点1-2に加えて、「燐光性発光化合物5」(本件補正後発明の「デンドロンを有する燐光発光性遷移金属錯体」に相当)が、本件補正後発明の「デンドロンを有する燐光発光性遷移金属錯体」の要件を満たさない点で新たに相違する。
しかしながら、引用文献1に記載された発光素子の「第1の有機層に含まれる」「燐光発光性化合物」は、式(1-B)で表される化合物(「燐光発光性化合物5」が該当)に限らず、式(1-A)で表される化合物も想定されているのであって(引用文献1の請求項8、【0093】~【0097】等参照。)、当該新たな相違点は当業者が適宜なし得る材料選択の範囲内の事項といえる。
また、実施例18(【0863】~【0864】、【0868】【表10】)に係る発光素子18に係る発明を主引用発明としても結論は同様である。
(6) まとめ
本件補正後発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 補正の却下の決定のむすび
本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、前記[補正の却下の決定の結論]に記載のとおり、決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
以上のとおり、本件補正は却下されたので、本件出願の請求項に係る発明は、令和4年2月7日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし16に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2」[理由]1(1)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、概略、理由1(進歩性)本願発明は、先の出願前に日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、先の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
(引用文献等一覧)
引用文献1:特開2016-111355号公報
引用文献2:国際公開第2017/119203号
(当合議体注:引用文献1は主引用例であり、引用文献2は、副引用例である。)
3 理由1(特許法第29条第2項(進歩性))について
(1) 引用文献1及び引用発明
引用文献1の記載及び引用発明は、前記「第2」[理由]2(1)及び(2)に記載したとおりである。
(2) 対比及び判断
本願発明は、前記「第2」[理由]2で検討した本件補正後発明から、同1(3)アで述べた限定事項を除いたものである。また、本願発明の構成を全て具備し、これにさらに限定を付したものに相当する本件補正後発明は、前記「第2」[理由]2(3)~(6)で述べたとおり、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
そうしてみると、本願発明は、前記「第2」[理由]2(3)~(6)で述べた理由と同様の理由により、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-012280