特許拒絶査定不服審判
2023-004129
鋼板用誘導加熱装置
- 審判番号
- 2023-004129
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-221194
- 請求日
- 2023年03月10日
- 審決日
- 2024年01月05日
- 公報発行日
- 2024年03月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】日本製鉄株式会社
- 【請求人代理人】アセンド弁理士法人
- 審判長/審判官
- 審判長 水野 治彦
- 審判官 岩▲崎▼ 則昌
- 審判官 鈴木 充
- 分類
- P18 .121-Z (H05B) / P18 .572-Z (H05B) / P18 .575-Z (H05B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第3項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2018-221194「鋼板用誘導加熱装置」拒絶査定不服審判事件〔令和2年6月4日出願公開、特開2020-87734〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成30年11月27日の出願であって、その手続の主な経緯は、以下のとおりである。
令和 4年 7月21日付け:拒絶理由通知書
同 年 9月22日 :意見書、手続補正書の提出
同 年12月 9日付け:拒絶査定
令和 5年 3月10日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和5年3月10日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和5年3月10日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について
(1) 本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の記載は、以下のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「【請求項1】
鋼板を誘導加熱する鋼板用誘導加熱装置であって、
前記鋼板が内部を通るソレノイドコイルと、
前記ソレノイドコイルの入側に配置され、前記鋼板が内部を通る第1導体短絡リングとを備え、
前記ソレノイドコイルは、
内部を通る前記鋼板の上方に配置され、前記鋼板の板幅方向に延びるコイル上部と、
内部を通る前記鋼板の下方に配置され、前記鋼板の板幅方向に延びるコイル下部と、
前記鋼板の通板方向に見て、内部を通る前記鋼板の左方に配置され、前記コイル上部及び前記コイル下部と繋がっているコイル左部と、
前記通板方向に見て、内部を通る前記鋼板の右方に配置され、前記コイル上部及び前記コイル下部と繋がっているコイル右部とを含み、
前記第1導体短絡リングは、
内部を通る前記鋼板の上方に配置され、前記鋼板の板幅方向に延びる第1リング上部と、
内部を通る前記鋼板の下方に配置され、前記鋼板の板幅方向に延びる第1リング下部と、
前記通板方向に見て、内部を通る前記鋼板の左方に配置され、前記第1リング上部及び前記第1リング下部と繋がっている第1リング左部と、
前記通板方向に見て、内部を通る前記鋼板の右方に配置され、前記第1リング上部及び前記第1リング下部と繋がっている第1リング右部とを含み、
前記第1リング上部では、中央部が、両端部から上方に離れて配置され、
前記第1リング下部では、中央部が、両端部から下方に離れて配置されており、
前記鋼板用誘導加熱装置は、さらに、
前記ソレノイドコイルの出側に配置され、前記鋼板が内部を通る第2導体短絡リングを備え、
前記ソレノイドコイルは、前記第1導体短絡リングと、前記第2導体短絡リングとの間に配置され、
前記第2導体短絡リングは、
内部を通る前記鋼板の上方に配置され、前記板幅方向に延びる第2リング上部と、
内部を通る前記鋼板の下方に配置され、前記板幅方向に延びる第2リング下部と、
前記通板方向に見て、内部を通る前記鋼板の左方に配置され、前記第2リング上部及び前記第2リング下部と繋がっている第2リング左部と、
前記通板方向に見て、内部を通る前記鋼板の右方に配置され、前記第2リング上部及び前記第2リング下部と繋がっている第2リング右部とを含み、
前記第2リング上部では、中央部が、両端部から上方に離れて配置され、
前記第2リング下部では、中央部が、両端部から下方に離れて配置されており、
前記第1導体短絡リングの前記第1リング上部、前記第1リング下部、前記第2導体短絡リングの前記第2リング上部、及び、前記第2リング下部の各々において、
前記中央部の前記板幅方向の長さを長さLCPと定義し、前記両端部の各々の端部の長さを長さLEPと定義したとき、前記長さLCPと前記長さLEPとの比LEP/LCPが2.50以上である、
鋼板用誘導加熱装置。
【請求項2】
鋼板を誘導加熱する鋼板用誘導加熱装置であって、
前記鋼板が内部を通るソレノイドコイルと、
前記ソレノイドコイルの入側に配置され、前記鋼板が内部を通る第1導体短絡リングとを備え、
前記ソレノイドコイルは、
内部を通る前記鋼板の上方に配置され、前記鋼板の板幅方向に延びるコイル上部と、
内部を通る前記鋼板の下方に配置され、前記鋼板の板幅方向に延びるコイル下部と、
前記鋼板の通板方向に見て、内部を通る前記鋼板の左方に配置され、前記コイル上部及び前記コイル下部と繋がっているコイル左部と、
前記通板方向に見て、内部を通る前記鋼板の右方に配置され、前記コイル上部及び前記コイル下部と繋がっているコイル右部とを含み、
前記第1導体短絡リングは、
内部を通る前記鋼板の上方に配置され、前記鋼板の板幅方向に延びる第1リング上部と、
内部を通る前記鋼板の下方に配置され、前記鋼板の板幅方向に延びる第1リング下部と、
前記通板方向に見て、内部を通る前記鋼板の左方に配置され、前記第1リング上部及び前記第1リング下部と繋がっている第1リング左部と、
前記通板方向に見て、内部を通る前記鋼板の右方に配置され、前記第1リング上部及び前記第1リング下部と繋がっている第1リング右部とを含み、
前記第1リング上部では、中央部が、両端部から斜め上方に前記ソレノイドコイルから離れて配置され、
前記第1リング下部では、中央部が、両端部から斜め下方に前記ソレノイドコイルから離れて配置されており、
前記鋼板用誘導加熱装置は、さらに、
前記ソレノイドコイルの出側に配置され、前記鋼板が内部を通る第2導体短絡リングを備え、
前記ソレノイドコイルは、前記第1導体短絡リングと、前記第2導体短絡リングとの間に配置され、
前記第2導体短絡リングは、
内部を通る前記鋼板の上方に配置され、前記板幅方向に延びる第2リング上部と、
内部を通る前記鋼板の下方に配置され、前記板幅方向に延びる第2リング下部と、
前記通板方向に見て、内部を通る前記鋼板の左方に配置され、前記第2リング上部及び前記第2リング下部と繋がっている第2リング左部と、
前記通板方向に見て、内部を通る前記鋼板の右方に配置され、前記第2リング上部及び前記第2リング下部と繋がっている第2リング右部とを含み、
前記第2リング上部では、中央部が、両端部から斜め上方に前記ソレノイドコイルから離れて配置され、
前記第2リング下部では、中央部が、両端部から斜め下方に前記ソレノイドコイルから離れて配置されており、
前記第1導体短絡リングの前記第1リング上部、前記第1リング下部、前記第2導体短絡リングの前記第2リング上部、及び、前記第2リング下部の各々において、
前記中央部の前記板幅方向の長さを長さLCPと定義し、前記両端部の各々の端部の長さを長さLEPと定義したとき、前記長さLCPと前記長さLEPとの比LEP/LCPが2.50以上である、
鋼板用誘導加熱装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の鋼板用誘導加熱装置であって、
前記第1導体短絡リングの幅は、前記ソレノイドコイルの幅±20%以内であり、
前記第1導体短絡リングの前記通板方向に垂直な断面積は、前記ソレノイドコイルの前記通板方向に垂直な断面積±20%以内である、
鋼板用誘導加熱装置。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の鋼板用誘導加熱装置であって、
前記ソレノイドコイルのうち、少なくとも前記コイル左部及び前記コイル右部は可撓導体であって湾曲可能であり、
前記鋼板用誘導加熱装置はさらに、
前記コイル上部と前記コイル下部の間の上下方向の距離を調整可能なソレノイドコイル高さ調整機構を備え、
前記第1導体短絡リングのうち、少なくとも前記第1リング左部及び前記第1リング右部は可撓導体であって湾曲可能であり、
前記鋼板用誘導加熱装置はさらに、
前記第1リング上部及び前記第1リング下部の間の上下方向の距離を調整可能な第1導体短絡リング高さ調整機構を備える、
鋼板用誘導加熱装置。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の鋼板用誘導加熱装置であって、
前記第2導体短絡リングの幅は、前記ソレノイドコイルの幅±20%以内であり、
前記第2導体短絡リングの前記通板方向に垂直な断面積は、前記ソレノイドコイルの前記通板方向に垂直な断面積±20%以内である、
鋼板用誘導加熱装置。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の鋼板用誘導加熱装置であって、
前記第1導体短絡リングの前記第1リング上部、前記第1リング下部、前記第2導体短絡リングの前記第2リング上部及び前記第2リング下部の各々において、
前記通板方向における前記中央部と前記ソレノイドコイルとの間の距離を距離DCPと定義し、前記通板方向における前記両端部の各々の端部と前記ソレノイドコイルとの間の距離を距離DEPと定義し、前記ソレノイドコイルの前記コイル上部と前記コイル下部との間の上下方向の距離を距離Gと定義したとき、
前記第1リング上部、前記第1リング下部、前記第2リング上部及び前記第2リング下部の各々において、前記距離DCP、前記距離DEPと前記距離Gとは次の式(2)及び式(3)を満たす、
鋼板用誘導加熱装置。
DEP/DCP<1.0 (2)
DEP≦1.2×G (3)
【請求項7】
請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の鋼板用誘導加熱装置であって、
前記第2導体短絡リングのうち、少なくとも前記第2リング左部及び前記第2リング右部は可撓導体であって湾曲可能であり、
前記鋼板用誘導加熱装置はさらに、
前記第2リング上部及び前記第2リング下部の間の上下方向の距離を調整可能な第2導体短絡リング高さ調整機構を備える、
鋼板用誘導加熱装置。」
(2) 本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の令和4年9月22日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の記載は、以下のとおりである。
「【請求項1】
鋼板を誘導加熱する鋼板用誘導加熱装置であって、
前記鋼板が内部を通るソレノイドコイルと、
前記ソレノイドコイルの入側に配置され、前記鋼板が内部を通る第1導体短絡リングとを備え、
前記ソレノイドコイルは、
内部を通る前記鋼板の上方に配置され、前記鋼板の板幅方向に延びるコイル上部と、
内部を通る前記鋼板の下方に配置され、前記鋼板の板幅方向に延びるコイル下部と、
前記鋼板の通板方向に見て、内部を通る前記鋼板の左方に配置され、前記コイル上部及び前記コイル下部と繋がっているコイル左部と、
前記通板方向に見て、内部を通る前記鋼板の右方に配置され、前記コイル上部及び前記コイル下部と繋がっているコイル右部とを含み、
前記第1導体短絡リングは、
内部を通る前記鋼板の上方に配置され、前記鋼板の板幅方向に延びる第1リング上部と、
内部を通る前記鋼板の下方に配置され、前記鋼板の板幅方向に延びる第1リング下部と、
前記通板方向に見て、内部を通る前記鋼板の左方に配置され、前記第1リング上部及び前記第1リング下部と繋がっている第1リング左部と、
前記通板方向に見て、内部を通る前記鋼板の右方に配置され、前記第1リング上部及び前記第1リング下部と繋がっている第1リング右部とを含み、
前記第1リング上部及び前記第1リング下部の少なくとも一方では、中央部が、両端部よりも前記ソレノイドコイルから離れて配置されており、
前記鋼板用誘導加熱装置は、さらに、
前記ソレノイドコイルの出側に配置され、前記鋼板が内部を通る第2導体短絡リングを備え、
前記ソレノイドコイルは、前記第1導体短絡リングと、前記第2導体短絡リングとの間に配置され、
前記第2導体短絡リングは、
内部を通る前記鋼板の上方に配置され、前記板幅方向に延びる第2リング上部と、
内部を通る前記鋼板の下方に配置され、前記板幅方向に延びる第2リング下部と、
前記通板方向に見て、内部を通る前記鋼板の左方に配置され、前記第2リング上部及び前記第2リング下部と繋がっている第2リング左部と、
前記通板方向に見て、内部を通る前記鋼板の右方に配置され、前記第2リング上部及び前記第2リング下部と繋がっている第2リング右部とを含み、
前記第2リング上部及び前記第2リング下部の少なくとも一方では、中央部が、両端部よりも前記ソレノイドコイルから離れて配置されており、
前記第1導体短絡リングの前記第1リング上部、前記第1リング下部、前記第2導体短絡リングの前記第2リング上部、及び、前記第2リング下部の各々において、
前記中央部の前記板幅方向の長さを長さLCPと定義し、前記両端部の各々の端部の長さを長さLEPと定義したとき、前記長さLCPと前記長さLEPとの比LEP/LCPが1.20以上である、
鋼板用誘導加熱装置。
【請求項2】
請求項1に記載の鋼板用誘導加熱装置であって、
前記第1導体短絡リングにおいて、
前記第1リング上部の中央部は、前記第1リング上部の両端部よりも前記ソレノイドコイルから離れて配置されており、
前記第1リング下部の中央部は、前記第1リング下部の両端部よりも前記ソレノイドコイルから離れて配置されている、
鋼板用誘導加熱装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の鋼板用誘導加熱装置であって、
前記第1リング上部又は前記第1リング下部の少なくとも一方では、
前記中央部は、前記両端部よりも前記通板方向に前記ソレノイドコイルから離れて配置されている、
鋼板用誘導加熱装置。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の鋼板用誘導加熱装置であって、
前記第1導体短絡リングの幅は、前記ソレノイドコイルの幅±20%以内であり、
前記第1導体短絡リングの前記通板方向に垂直な断面積は、前記ソレノイドコイルの前記通板方向に垂直な断面積±20%以内である、
鋼板用誘導加熱装置。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の鋼板用誘導加熱装置であって、
前記ソレノイドコイルのうち、少なくとも前記コイル左部及び前記コイル右部は可撓導体であって湾曲可能であり、
前記鋼板用誘導加熱装置はさらに、
前記コイル上部と前記コイル下部の間の上下方向の距離を調整可能なソレノイドコイル高さ調整機構を備え、
前記第1導体短絡リングのうち、少なくとも前記第1リング左部及び前記第1リング右部は可撓導体であって湾曲可能であり、
前記鋼板用誘導加熱装置はさらに、
前記第1リング上部及び前記第1リング下部の間の上下方向の距離を調整可能な第1導体短絡リング高さ調整機構を備える、
鋼板用誘導加熱装置。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の鋼板用誘導加熱装置であって、
前記第2導体短絡リングにおいて、
前記第2リング上部の前記中央部は、前記第2リング上部の前記両端部よりも前記ソレノイドコイルから離れて配置されており、
前記第2リング下部の前記中央部は、前記第2リング下部の前記両端部よりも前記ソレノイドコイルから離れて配置されている、
鋼板用誘導加熱装置。
【請求項7】
請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の鋼板用誘導加熱装置であって、
前記第2リング上部又は前記第2リング下部の少なくとも一方では、
前記中央部が、前記両端部よりも前記通板方向に前記ソレノイドコイルから離れて配置されている、
鋼板用誘導加熱装置。
【請求項8】
請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の鋼板用誘導加熱装置であって、
前記第2導体短絡リングの幅は、前記ソレノイドコイルの幅±20%以内であり、
前記第2導体短絡リングの前記通板方向に垂直な断面積は、前記ソレノイドコイルの前記通板方向に垂直な断面積±20%以内である、
鋼板用誘導加熱装置。
【請求項9】
請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の鋼板用誘導加熱装置であって、
前記第1導体短絡リングの前記第1リング上部、前記第1リング下部、前記第2導体短絡リングの前記第2リング上部及び前記第2リング下部の各々において、
前記通板方向における前記中央部と前記ソレノイドコイルとの間の距離を距離DCPと定義し、前記通板方向における前記両端部の各々の端部と前記ソレノイドコイルとの間の距離を距離DEPと定義し、前記ソレノイドコイルの前記コイル上部と前記コイル下部との間の上下方向の距離を距離Gと定義したとき、
前記第1リング上部、前記第1リング下部、前記第2リング上部及び前記第2リング下部の各々において、前記距離DCP、前記距離DEPと前記距離Gとは次の式(2)及び式(3)を満たす、
鋼板用誘導加熱装置。
DEP/DCP<1.0 (2)
DEP≦1.2×G (3)
【請求項10】
請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の鋼板用誘導加熱装置であって、
前記第2導体短絡リングのうち、少なくとも前記第2リング左部及び前記第2リング右部は可撓導体であって湾曲可能であり、
前記鋼板用誘導加熱装置はさらに、
前記第2リング上部及び前記第2リング下部の間の上下方向の距離を調整可能な第2導体短絡リング高さ調整機構を備える、
鋼板用誘導加熱装置。」
2 補正の適否
本願の願書に最初に添付した明細書の段落【0070】には、「第1導体短絡リング」の「第1リング上部」及び「第1リング下部」に関して、「中央部CPは通板方向RD以外の方向に離れて配置されてもよい。たとえば、図15に示すとおり、中央部CPが両端部EPから上方又は下方(鋼板法線方向ND)に離れて配置されていてもよい。また、図16に示すとおり、中央部CPが両端部EPから斜め上方又は斜め下方に離れて配置されていてもよい。」と記載されており、段落【0096】には、「第2導体短絡リング」の「第2リング上部」及び「第2リング下部」に関して、「中央部CPは通板方向RD以外の方向に離れて配置されてもよい。たとえば、図30に示すとおり、中央部CPが両端部EPから上方又は下方(鋼板法線方向ND)に離れて配置されていてもよい。また、中央部CPが両端部EPから斜め上方又は斜め下方に離れて配置されていてもよい。」と記載されており、段落【0103】には、長さの比「LEP/LCP」と温度の比「TEP/TCP」との関係に関して、「LEP/LCPが2.50以上となれば、LEP/LCPが高くなっても、TEP/TCPはそれほど大きく低減しない。」と記載されている。そして、本願の願書に最初に添付した図面の【図35】には、LEP/LCPが2.50以上であるとき、TEP/TCPがおおむね1.00で一定であることが示されている。
そうすると、本件補正後の請求項1に記載された「前記第1リング上部では、中央部が、両端部から上方に離れて配置され、前記第1リング下部では、中央部が、両端部から下方に離れて配置されて」いること、「前記第2リング上部では、中央部が、両端部から上方に離れて配置され、前記第2リング下部では、中央部が、両端部から下方に離れて配置されて」いること及び「前記長さLCPと前記長さLEPとの比LEP/LCPが2.50以上である」ことは、いずれも本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)に記載された事項である。
また、本件補正後の請求項2に記載された「前記第1リング上部では、中央部が、両端部から斜め上方に前記ソレノイドコイルから離れて配置され、前記第1リング下部では、中央部が、両端部から斜め下方に前記ソレノイドコイルから離れて配置されて」いること、「前記第2リング上部では、中央部が、両端部から斜め上方に前記ソレノイドコイルから離れて配置され、前記第2リング下部では、中央部が、両端部から斜め下方に前記ソレノイドコイルから離れて配置されて」いること及び「前記長さLCPと前記長さLEPとの比LEP/LCPが2.50以上である」ことは、いずれも当初明細書等に記載された事項である。
したがって、本件補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定を満たすものである。
そして、本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「前記第1リング上部及び前記第1リング下部の少なくとも一方では、中央部が、両端部よりも前記ソレノイドコイルから離れて配置されて」いることを「前記第1リング上部では、中央部が、両端部から上方に離れて配置され、前記第1リング下部では、中央部が、両端部から下方に離れて配置されて」いること(本件補正後の請求項1)及び「前記第1リング上部では、中央部が、両端部から斜め上方に前記ソレノイドコイルから離れて配置され、前記第1リング下部では、中央部が、両端部から斜め下方に前記ソレノイドコイルから離れて配置されて」いること(本件補正後の請求項2)に限定し、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「前記第2リング上部及び前記第2リング下部の少なくとも一方では、中央部が、両端部よりも前記ソレノイドコイルから離れて配置されて」いることを「前記第2リング上部では、中央部が、両端部から上方に離れて配置され、前記第2リング下部では、中央部が、両端部から下方に離れて配置されて」いること(本件補正後の請求項1)及び「前記第2リング上部では、中央部が、両端部から斜め上方に前記ソレノイドコイルから離れて配置され、前記第2リング下部では、中央部が、両端部から斜め下方に前記ソレノイドコイルから離れて配置されて」いること(本件補正後の請求項2)に限定し、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「前記長さLCPと前記長さLEPとの比LEP/LCPが1.20以上である」ことを「前記長さLCPと前記長さLEPとの比LEP/LCPが2.50以上である」こと(本件補正後の請求項1及び請求項2)に限定するものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1及び請求項2に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1) 本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)の請求項1に記載した事項により特定されるとおりのものである。
(2) 引用文献
ア 引用文献の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である特開2013-16341号公報(以下「引用文献」という。)には、以下の記載及び図面がある。(下線は、参考のために当審で付した。以下同様。)
(ア) 「【0001】
本発明は、例えば鉄鋼用熱間圧延ラインのような製鋼ラインに設置され、搬送される被加熱材を連続的に加熱する誘導加熱装置に関する。」
(イ) 「【0004】
一般に、粗圧延された板状の被加熱材1は、テーブルローラ2によって搬送され次工程に送られる間に放熱して温度が低下する。そこで、誘導加熱装置を配置し、誘導加熱装置は、被加熱材1を加熱コイル3の内側に形成される通路内を通過させ、被加熱材1を誘導加熱することにより、搬送中の温度低下を補償している。」
(ウ) 「【0013】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、被加熱材の幅方向の均熱を図るとともに、幅方向中央部・端部の昇温、変熱を含めた幅方向温度制御を達成する誘導加熱装置を提供することにある。」
(エ) 「【0023】
図1は、本発明における第1の実施の形態に係る鉄鋼用ソレノイド型誘導加熱装置を示す斜視図である。図1において、加熱コイル3は、電流が流れる導電部材としての銅管が図3に示す被加熱材1を覆うように複数巻回され、コイル入口側からコイル出口側に被加熱材1が挿通されるようになっている。
【0024】
図1では、被加熱材1の幅方向端部と加熱コイル3の物理的距離の近さによる加熱特性を是正するために、被加熱材1の幅方向の鎖交磁束量を調整するためのコの字型鉄心5と、凸型シールド銅管6とが配置されている。」
(オ) 「【0026】
凸型シールド銅管6は、加熱コイル3の入口側及び出口側(開口部分)に配置され、被加熱材1の幅方向に対して、加熱コイル3に近接する近接部6aと加熱コイル3から遠ざかる遠隔部6bとが形成されてなる。図1に示す例では、シールド銅管6は、被加熱材1の幅方向端部に近接部6aが形成され、被加熱材1の幅方向中央部に遠隔部6bが形成されている。
【0027】
図2は、加熱コイル3の通電方向を一方向に仮定した場合の、加熱コイル3及び凸型シールド銅管6に流れる電流方向と磁束方向を示した上面図である。図3は、加熱コイル3の通電方向を一方向に仮定した場合の、加熱コイル3及び凸型シールド銅管6に流れる電流方向と磁束方向を示した側面図である。なお、図3では凸型シールド銅管6の幅方向端部の効果を明確化するため、幅方向中央部のコの字型鉄心5は図示していない。
【0028】
この例では、凸型シールド銅管6により加熱コイル3と近接する近接部6aが被加熱材1の幅方向端部に形成される。幅方向端部では、加熱コイル3に流れる電流Iaの変化により磁束Φ1が発生し、電流Iaにより凸型シールド銅管6に流れる逆向きの誘起電流Ibが誘起され、逆向きの誘起電流Ibにより磁束Φ2が発生する。このため、被加熱材1の鎖交磁束Φ1,Φ2が図2、図3の円枠部で相殺方向となることで弱まる。
【0029】
一方、加熱コイル3から遠ざかる遠隔部6bは、幅方向中央部に形成されることにより、凸型シールド銅管6に流れる逆向きの誘起電流Ibが被加熱材1の中央部の鎖交磁束量においては影響を及ぼさない。即ち、シールド銅管6に流れる逆向きの誘起電流Ibが被加熱材1の鎖交磁束量に影響を及ぼさない十分な距離を持たせることにより、幅方向中央部では、磁束が幅方向端部よりも効率的に被加熱材1に鎖交され、幅方向中央部の温度は上昇する。即ち、加熱に寄与する鎖交磁束量を被加熱材1の幅方向で調節することにより被加熱材1の幅方向の温度を制御できる。」
(カ) 「【図1】
[図:0001407563000001.jpg]
」
(キ) 「【図3】
[図:0001407563000002.jpg]
」
(ク) 上記(ア)、上記(イ)、上記(エ)の段落【0023】の記載事項及び上記(キ)の被加熱材1の形状から、鉄鋼用ソレノイド型誘導加熱装置によって加熱される被加熱材1には、鋼板が含まれることが明らかである。
(ケ) 上記(エ)の段落【0023】の記載事項から、加熱コイル3の内部を被加熱材1が挿通することが把握される。そして、上記(オ)の段落【0026】の記載事項及び上記(カ)の加熱コイル3と凸型シールド銅管6との位置関係から、凸型シールド銅管6の内部を被加熱材1が挿通し、上記(カ)の左上側及び右下側のいずれか一方が被加熱材1の入口側であり、他方が被加熱材1の出口側であることが把握される。
(コ) 上記(カ)の加熱コイル3の形状及び上記(ケ)から、加熱コイル3は、内部を挿通する被加熱材1の上方に配置され、被加熱材1の板幅方向に延びる部分と、内部を挿通する被加熱材1の下方に配置され、被加熱材1の板幅方向に延びる部分と、被加熱材1の挿通方向に見て、内部を挿通する被加熱材1の左方に配置され、当該上方に配置される部分及び当該下方に配置される部分と繋がっている部分と、被加熱材1の挿通方向に見て、内部を挿通する被加熱材1の右方に配置され、当該上方に配置される部分及び当該下方に配置される部分と繋がっている部分とを含むことが把握される。
(サ) 上記(オ)の段落【0026】の記載事項、上記(カ)の凸型シールド銅管6の形状及び上記(ケ)から、加熱コイル3の入口側に配置され、被加熱材1が内部を挿通する凸型シールド銅管6は、内部を挿通する被加熱材1の上方に配置され、被加熱材1の板幅方向に延びる部分と、内部を挿通する被加熱材1の下方に配置され、被加熱材1の板幅方向に延びる部分と、被加熱材1の挿通方向に見て、内部を挿通する被加熱材1の左方に配置され、当該上方に配置される部分及び当該下方に配置される部分と繋がっている部分と、被加熱材1の挿通方向に見て、内部を挿通する被加熱材1の右方に配置され、当該上方に配置される部分及び当該下方に配置される部分と繋がっている部分とを含むことが把握される。
そして、当該上方に配置される部分及び下方に配置される部分は、被加熱材1の幅方向端部に加熱コイル3に近接する近接部6aが形成され、被加熱材1の幅方向中央部に加熱コイル3から遠ざかる遠隔部6bが形成されることが把握される。
(シ) 上記(オ)の段落【0026】の記載事項、上記(カ)の加熱コイル3と凸型シールド銅管6との位置関係及び上記(ケ)から、加熱コイル3は、加熱コイル3の入口側に配置される凸型シールド銅管6と、加熱コイル3の出口側に配置される凸型シールド銅管6との間に配置されるものであることが把握される。
(ス) 上記(オ)の段落【0026】の記載事項、上記(カ)の凸型シールド銅管6の形状及び上記(ケ)から、加熱コイル3の出口側に配置され、被加熱材1が内部を挿通する凸型シールド銅管6は、内部を挿通する被加熱材1の上方に配置され、被加熱材1の板幅方向に延びる部分と、内部を挿通する被加熱材1の下方に配置され、被加熱材1の板幅方向に延びる部分と、被加熱材1の挿通方向に見て、内部を挿通する被加熱材1の左方に配置され、当該上方に配置される部分及び当該下方に配置される部分と繋がっている部分と、被加熱材1の挿通方向に見て、内部を挿通する被加熱材1の右方に配置され、当該上方に配置される部分及び当該下方に配置される部分と繋がっている部分とを含むことが把握される。
そして、当該上方に配置される部分及び下方に配置される部分は、被加熱材1の幅方向端部に加熱コイル3に近接する近接部6aが形成され、被加熱材1の幅方向中央部に加熱コイル3から遠ざかる遠隔部6bが形成されることが把握される。
イ 引用発明
上記アから、引用文献には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
<引用発明>
「鋼板を加熱する鉄鋼用ソレノイド型誘導加熱装置であって、
鋼板が内部を挿通する加熱コイル3と、
加熱コイル3の入口側に配置され、鋼板が内部を挿通する凸型シールド銅管6とを備え、
加熱コイル3は、
内部を挿通する鋼板の上方に配置され、鋼板の板幅方向に延びる部分と、
内部を挿通する鋼板の下方に配置され、鋼板の板幅方向に延びる部分と、
鋼板の挿通方向に見て、内部を挿通する鋼板の左方に配置され、当該上方に配置される部分及び当該下方に配置される部分と繋がっている部分と、
鋼板の挿通方向に見て、内部を挿通する鋼板の右方に配置され、当該上方に配置される部分及び当該下方に配置される部分と繋がっている部分とを含み、
加熱コイル3の入口側に配置される凸型シールド銅管6は、
内部を挿通する鋼板の上方に配置され、鋼板の板幅方向に延びる部分と、
内部を挿通する鋼板の下方に配置され、鋼板の板幅方向に延びる部分と、
鋼板の挿通方向に見て、内部を挿通する鋼板の左方に配置され、当該上方に配置される部分及び当該下方に配置される部分と繋がっている部分と、
鋼板の挿通方向に見て、内部を挿通する鋼板の右方に配置され、当該上方に配置される部分及び当該下方に配置される部分と繋がっている部分とを含み、
当該上方に配置される部分及び下方に配置される部分は、鋼板の幅方向端部に加熱コイル3に近接する近接部6aが形成され、鋼板の幅方向中央部に加熱コイル3から遠ざかる遠隔部6bが形成されており、
鉄鋼用ソレノイド型誘導加熱装置は、さらに、
加熱コイル3の出口側に配置され、鋼板が内部を挿通する凸型シールド銅管6を備え、
加熱コイル3は、加熱コイル3の入口側に配置される凸型シールド銅管6と、加熱コイル3の出口側に配置される凸型シールド銅管6との間に配置され、
加熱コイル3の出口側に配置される凸型シールド銅管6は、
内部を挿通する鋼板の上方に配置され、鋼板の板幅方向に延びる部分と、
内部を挿通する鋼板の下方に配置され、鋼板の板幅方向に延びる部分と、
鋼板の挿通方向に見て、内部を挿通する鋼板の左方に配置され、当該上方に配置される部分及び当該下方に配置される部分と繋がっている部分と、
鋼板の挿通方向に見て、内部を挿通する鋼板の右方に配置され、当該上方に配置される部分及び当該下方に配置される部分と繋がっている部分とを含み、
当該上方に配置される部分及び下方に配置される部分は、鋼板の幅方向端部に加熱コイル3に近接する近接部6aが形成され、鋼板の幅方向中央部に加熱コイル3から遠ざかる遠隔部6bが形成されている、
鉄鋼用ソレノイド型誘導加熱装置。」
(3) 対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「鋼板」、「加熱する」及び「鉄鋼用ソレノイド型誘導加熱装置」は、それぞれ、本件補正発明の「鋼板」、「誘導加熱する」及び「鋼板用誘導加熱装置」に相当する。
そうすると、引用発明の「鋼板を加熱する鉄鋼用ソレノイド型誘導加熱装置」は、本件補正発明の「鋼板を誘導加熱する鋼板用誘導加熱装置」に相当する。
イ 引用発明の「内部を挿通する」こと及び「加熱コイル3」は、それぞれ、本件補正発明の「内部を通る」こと及び「ソレノイドコイル」に相当する。
そうすると、引用発明の「鋼板が内部を挿通する加熱コイル3」は、本件補正発明の「前記鋼板が内部を通るソレノイドコイル」に相当する。
ウ 引用発明の「加熱コイル3の入口側」は、本件補正発明の「前記ソレノイドコイルの入側」に相当し、引用発明の「加熱コイル3の入口側に配置され」る「凸型シールド銅管6」は、本件補正発明の「第1導体短絡リング」に相当する。
そうすると、引用発明の「加熱コイル3の入口側に配置され、鋼板が内部を挿通する凸型シールド銅管6」は、本件補正発明の「前記ソレノイドコイルの入側に配置され、前記鋼板が内部を通る第1導体短絡リング」に相当する。
エ 引用発明の「上方」、「板幅方向」、「下方」、「鋼板の挿通方向」、「左方」及び「右方」は、それぞれ、本件補正発明の「上方」、「板幅方向」、「下方」、「前記鋼板の通板方向」、「左方」及び「右方」に相当する。
そうすると、引用発明の「加熱コイル3は、内部を挿通する鋼板の上方に配置され、鋼板の板幅方向に延びる部分と、内部を挿通する鋼板の下方に配置され、鋼板の板幅方向に延びる部分と、鋼板の挿通方向に見て、内部を挿通する鋼板の左方に配置され、当該上方に配置される部分及び当該下方に配置される部分と繋がっている部分と、鋼板の挿通方向に見て、内部を挿通する鋼板の右方に配置され、当該上方に配置される部分及び当該下方に配置される部分と繋がっている部分とを含」むことは、本件補正発明の「前記ソレノイドコイルは、内部を通る前記鋼板の上方に配置され、前記鋼板の板幅方向に延びるコイル上部と、内部を通る前記鋼板の下方に配置され、前記鋼板の板幅方向に延びるコイル下部と、前記鋼板の通板方向に見て、内部を通る前記鋼板の左方に配置され、前記コイル上部及び前記コイル下部と繋がっているコイル左部と、前記通板方向に見て、内部を通る前記鋼板の右方に配置され、前記コイル上部及び前記コイル下部と繋がっているコイル右部とを含」むことに相当する。
オ 引用発明の「加熱コイル3の入口側に配置される凸型シールド銅管6は、内部を挿通する鋼板の上方に配置され、鋼板の板幅方向に延びる部分と、内部を挿通する鋼板の下方に配置され、鋼板の板幅方向に延びる部分と、鋼板の挿通方向に見て、内部を挿通する鋼板の左方に配置され、当該上方に配置される部分及び当該下方に配置される部分と繋がっている部分と、鋼板の挿通方向に見て、内部を挿通する鋼板の右方に配置され、当該上方に配置される部分及び当該下方に配置される部分と繋がっている部分とを含」むことは、本件補正発明の「前記第1導体短絡リングは、内部を通る前記鋼板の上方に配置され、前記鋼板の板幅方向に延びる第1リング上部と、内部を通る前記鋼板の下方に配置され、前記鋼板の板幅方向に延びる第1リング下部と、前記通板方向に見て、内部を通る前記鋼板の左方に配置され、前記第1リング上部及び前記第1リング下部と繋がっている第1リング左部と、前記通板方向に見て、内部を通る前記鋼板の右方に配置され、前記第1リング上部及び前記第1リング下部と繋がっている第1リング右部とを含」むことに相当する。
そして、引用発明の「当該上方に配置される部分及び下方に配置される部分は、鋼板の幅方向端部に加熱コイル3に近接する近接部6aが形成され、鋼板の幅方向中央部に加熱コイル3から遠ざかる遠隔部6bが形成されて」いることと、本件補正発明の「前記第1リング上部では、中央部が、両端部から上方に離れて配置され、前記第1リング下部では、中央部が、両端部から下方に離れて配置されて」いることとは、「前記第1リング上部では、中央部が、両端部から離れて配置され、前記第1リング下部では、中央部が、両端部から離れて配置されて」いることの限りにおいて一致する。
カ 引用発明の「加熱コイル3の出口側」は、本件補正発明の「前記ソレノイドコイルの出側」に相当し、引用発明の「加熱コイル3の出口側に配置され」る「凸型シールド銅管6」は、本件補正発明の「第2導体短絡リング」に相当する。
そうすると、引用発明の「鉄鋼用ソレノイド型誘導加熱装置は、さらに、加熱コイル3の出口側に配置され、鋼板が内部を挿通する凸型シールド銅管6を備え」ることは、本件補正発明の「前記鋼板用誘導加熱装置は、さらに、前記ソレノイドコイルの出側に配置され、前記鋼板が内部を通る第2導体短絡リングを備え」ることに相当する。
キ 引用発明の「加熱コイル3は、加熱コイル3の入口側に配置される凸型シールド銅管6と、加熱コイル3の出口側に配置される凸型シールド銅管6との間に配置され」ることは、本件補正発明の「前記ソレノイドコイルは、前記第1導体短絡リングと、前記第2導体短絡リングとの間に配置され」ることに相当する。
ク 引用発明の「加熱コイル3の出口側に配置される凸型シールド銅管6は、内部を挿通する鋼板の上方に配置され、鋼板の板幅方向に延びる部分と、内部を挿通する鋼板の下方に配置され、鋼板の板幅方向に延びる部分と、鋼板の挿通方向に見て、内部を挿通する鋼板の左方に配置され、当該上方に配置される部分及び当該下方に配置される部分と繋がっている部分と、鋼板の挿通方向に見て、内部を挿通する鋼板の右方に配置され、当該上方に配置される部分及び当該下方に配置される部分と繋がっている部分とを含」むことは、本件補正発明の「前記第2導体短絡リングは、内部を通る前記鋼板の上方に配置され、前記板幅方向に延びる第2リング上部と、内部を通る前記鋼板の下方に配置され、前記板幅方向に延びる第2リング下部と、前記通板方向に見て、内部を通る前記鋼板の左方に配置され、前記第2リング上部及び前記第2リング下部と繋がっている第2リング左部と、前記通板方向に見て、内部を通る前記鋼板の右方に配置され、前記第2リング上部及び前記第2リング下部と繋がっている第2リング右部とを含」むことに相当する。
そして、引用発明の「当該上方に配置される部分及び下方に配置される部分は、鋼板の幅方向端部に加熱コイル3に近接する近接部6aが形成され、鋼板の幅方向中央部に加熱コイル3から遠ざかる遠隔部6bが形成されている」ことと、本件補正発明の「前記第2リング上部では、中央部が、両端部から上方に離れて配置され、前記第2リング下部では、中央部が、両端部から下方に離れて配置されて」いることとは、「前記第2リング上部では、中央部が、両端部から離れて配置され、前記第2リング下部では、中央部が、両端部から離れて配置されて」いることの限りにおいて一致する。
上記ア~クから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「鋼板を誘導加熱する鋼板用誘導加熱装置であって、
前記鋼板が内部を通るソレノイドコイルと、
前記ソレノイドコイルの入側に配置され、前記鋼板が内部を通る第1導体短絡リングとを備え、
前記ソレノイドコイルは、
内部を通る前記鋼板の上方に配置され、前記鋼板の板幅方向に延びるコイル上部と、
内部を通る前記鋼板の下方に配置され、前記鋼板の板幅方向に延びるコイル下部と、
前記鋼板の通板方向に見て、内部を通る前記鋼板の左方に配置され、前記コイル上部及び前記コイル下部と繋がっているコイル左部と、
前記通板方向に見て、内部を通る前記鋼板の右方に配置され、前記コイル上部及び前記コイル下部と繋がっているコイル右部とを含み、
前記第1導体短絡リングは、
内部を通る前記鋼板の上方に配置され、前記鋼板の板幅方向に延びる第1リング上部と、
内部を通る前記鋼板の下方に配置され、前記鋼板の板幅方向に延びる第1リング下部と、
前記通板方向に見て、内部を通る前記鋼板の左方に配置され、前記第1リング上部及び前記第1リング下部と繋がっている第1リング左部と、
前記通板方向に見て、内部を通る前記鋼板の右方に配置され、前記第1リング上部及び前記第1リング下部と繋がっている第1リング右部とを含み、
前記第1リング上部では、中央部が、両端部から離れて配置され、
前記第1リング下部では、中央部が、両端部から離れて配置されており、
前記鋼板用誘導加熱装置は、さらに、
前記ソレノイドコイルの出側に配置され、前記鋼板が内部を通る第2導体短絡リングを備え、
前記ソレノイドコイルは、前記第1導体短絡リングと、前記第2導体短絡リングとの間に配置され、
前記第2導体短絡リングは、
内部を通る前記鋼板の上方に配置され、前記板幅方向に延びる第2リング上部と、
内部を通る前記鋼板の下方に配置され、前記板幅方向に延びる第2リング下部と、
前記通板方向に見て、内部を通る前記鋼板の左方に配置され、前記第2リング上部及び前記第2リング下部と繋がっている第2リング左部と、
前記通板方向に見て、内部を通る前記鋼板の右方に配置され、前記第2リング上部及び前記第2リング下部と繋がっている第2リング右部とを含み、
前記第2リング上部では、中央部が、両端部から離れて配置され、
前記第2リング下部では、中央部が、両端部から離れて配置されている、
鋼板用誘導加熱装置。」
<相違点1>
「前記第1リング上部では、中央部が、両端部から離れて配置され、前記第1リング下部では、中央部が、両端部から離れて配置されて」いることに関して、
本件補正発明は、前記第1リング上部では、中央部が、両端部から「上方に」離れて配置され、前記第1リング下部では、中央部が、両端部から「下方に」離れて配置されているのに対して、
引用発明は、当該上方に配置される部分及び下方に配置される部分は、鋼板の幅方向端部に加熱コイル3に近接する近接部6aが形成され、鋼板の幅方向中央部に加熱コイル3から遠ざかる遠隔部6bが形成されているものであり、
「前記第2リング上部では、中央部が、両端部から離れて配置され、前記第2リング下部では、中央部が、両端部から離れて配置されて」いることに関して、
本件補正発明は、前記第2リング上部では、中央部が、両端部から「上方に」離れて配置され、前記第2リング下部では、中央部が、両端部から「下方に」離れて配置されているのに対して、
引用発明は、当該上方に配置される部分及び下方に配置される部分は、鋼板の幅方向端部に加熱コイル3に近接する近接部6aが形成され、鋼板の幅方向中央部に加熱コイル3から遠ざかる遠隔部6bが形成されているものである点。
<相違点2>
本件補正発明は、「前記第1導体短絡リングの前記第1リング上部、前記第1リング下部、前記第2導体短絡リングの前記第2リング上部、及び、前記第2リング下部の各々において、前記中央部の前記板幅方向の長さを長さLCPと定義し、前記両端部の各々の端部の長さを長さLEPと定義したとき、前記長さLCPと前記長さLEPとの比LEP/LCPが2.50以上である」のに対して、引用発明は、当該事項を有しない点。
(4) 判断
ア 相違点1について検討する。
上記(2)ア(オ)の段落【0029】の記載事項から、引用発明の凸型シールド銅管6の遠隔部6bは、加熱コイル3に流れる電流Iaの変化により発生する磁束Φ1に影響を及ぼさないように加熱コイル3から十分な距離を持たせて形成されるものである。
また、引用文献には、遠隔部6bを加熱コイル3との関係でどの方向に距離を持たせるかについて特段の記載はなく、加熱コイル3から十分な距離を持たせて、上記磁束Φ1に影響を及ぼさないのであれば、当該方向について特段の限定はないと解される。
そうすると、引用発明において、遠隔部6bを加熱コイル3に対してどの方向に距離を持たせるかは、凸型シールド銅管6の周囲に設けられた他の部材と干渉しないように当業者が適宜検討する事項といえる。
また、本願の発明の詳細な説明には、「第1導体短絡リング」の「第1リング上部」及び「第2導体短絡リング」の「第2リング上部」において、「中央部が、両端部から上方に離れて配置され」ることと、「第1導体短絡リング」の「第1リング下部」及び「第2導体短絡リング」の「第2リング下部」において、「中央部が、両端部から下方に離れて配置され」ることとに関して、以下のとおり記載されている。
「【0070】
上述の説明では、第1導体短絡リング10の第1リング上部10U及び第1リング下部10Dの中央部CPは、両端部EPよりも通板方向RDに離れて配置されている。しかしながら、中央部CPは通板方向RD以外の方向に離れて配置されてもよい。たとえば、図15に示すとおり、中央部CPが両端部EPから上方又は下方(鋼板法線方向ND)に離れて配置されていてもよい。また、図16に示すとおり、中央部CPが両端部EPから斜め上方又は斜め下方に離れて配置されていてもよい。また、図17に示すとおり、第1リング上部10Uの中央部CPの配置位置と、第1リング下部10Dの配置位置とが異なっていてもよい。」
「【0096】
上述の説明では、第2導体短絡リング20の第2リング上部20U及び第2リング下部20Dの中央部CPは、両端部EPよりも通板方向RDに離れて配置されている。しかしながら、中央部CPは通板方向RD以外の方向に離れて配置されてもよい。たとえば、図30に示すとおり、中央部CPが両端部EPから上方又は下方(鋼板法線方向ND)に離れて配置されていてもよい。また、中央部CPが両端部EPから斜め上方又は斜め下方に離れて配置されていてもよい。また、第2リング上部20Uの中央部CPの配置位置と、第2リング下部20Dの配置位置とが異なっていてもよい。」
そうすると、本願の発明の詳細な説明には、本件補正発明のとおり「中央部が、両端部から上方に離れて配置され」ること及び「中央部が、両端部から下方に離れて配置され」ることによる効果が記載されておらず、当該配置に格別の技術的意義を見いだすこともできない。
したがって、引用発明において、凸型シールド銅管6のうち内部を挿通する鋼板の上方に配置される部分(本件補正発明の「第1リング上部」及び「第2リング上部」に相当)では、遠隔部6bを近接部6aから上方に離間させて配置し、内部を挿通する鋼板の下方に配置される部分(本件補正発明の「第1リング下部」及び「第2リング下部」に相当)では、遠隔部6bを近接部6aから下方に離間させて配置することは、単なる設計的事項の範疇であると解さざるを得ない。
イ 相違点2について検討する。
上記(2)ア(ウ)のとおり、引用発明は、「被加熱材の幅方向の均熱を図る」こと及び「幅方向中央部・端部の昇温、変熱を含めた幅方向温度制御を達成する」ことを課題とするものであるから、引用発明において、均熱或いは所望の温度制御を行うために、近接部6aの鋼板の板幅方向の長さL近接部及び遠隔部6bの鋼板の板幅方向の長さL遠隔部を所望の値とすることが示唆されているといえる。そして、各部の寸法比と所定の機能、性能等とを関連付けることは、例示するまでもなく様々な分野で行われていることを考慮すると、引用発明において、均熱或いは所望の温度制御を行うために、近接部6aの寸法L近接部及び遠隔部6bの寸法L遠隔部を比L近接部/L遠隔部に基づいて最適化することは、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎない。
また、本願の発明の詳細な説明及び図面には、「比LEP/LCPが2.50以上である」ことに関して、以下のとおり記載されている。
「【0102】
図35は、LEP/LCPと、鋼板端部の温度TEPの鋼板中央の温度TCPに対する比(つまり、TEP/TCP)との関係を示す図である。図35は、通板方向RDにおける中央部CPとソレノイドコイル50との間の距離DCPに対する、通板方向RDにおける各端部EPとソレノイドコイル50との間の距離DEPの比(つまり、DEP/DCP)を1.0未満とし、かつ、ソレノイドコイル50のコイル上部50Uとコイル下部50Dとの間の上下方向の距離をGと定義したときに、距離DEPを、距離Gの1.2倍以下とした場合の、ビオ・サバールの式を利用した磁場計算に基づく鋼板温度シミュレーションで得られた図である。
【0103】
図35を参照して、好ましくは、LEP/LCPが0.46以上であれば、TEP/TCPは1.10以下、つまり、鋼板端部の温度TEPと、鋼板中央部の温度TCPとの差が10%以下になり、板幅方向の温度ばらつきがさらに低減する。さらに好ましくは、LEP/LCPは1.20以上である。この場合、鋼板端部の温度TEPと、鋼板中央部の温度TCPとの差が5%以下(つまり、TEP/TCPは1.05以下)になり、板幅方向の温度ばらつきがさらに低減する。なお、LEP/LCPが2.50以上となれば、LEP/LCPが高くなっても、TEP/TCPはそれほど大きく低減しない。したがって、LEP/LCPの好ましい上限は2.50である。」
「【図35】
[図:0001407563000003.jpg]
」
そうすると、本願の発明の詳細な説明及び図面から、「通板方向RDにおける中央部CPとソレノイドコイル50との間の距離DCPに対する、通板方向RDにおける各端部EPとソレノイドコイル50との間の距離DEPの比(つまり、DEP/DCP)を1.0未満とし、かつ、ソレノイドコイル50のコイル上部50Uとコイル下部50Dとの間の上下方向の距離をGと定義したときに、距離DEPを、距離Gの1.2倍以下とした場合」には、「LEP/LCPが2.50以上」であれば、TEP/TCPがおおむね1.00、すなわち、鋼板端部の温度TEPと鋼板中央の温度TCPとがほぼ等しくなることが把握される。
したがって、本件補正発明の「LEP/LCPが2.50以上」という数値限定は、鋼板端部の温度TEPと鋼板中央の温度TCPとがほぼ等しくなることを示すものであり、それ以上の格別顕著な効果或いは特異な効果を奏するものではなく、格別の技術的意義を有するものではない。
よって、引用発明において、比L近接部/L遠隔部を最適化し、2.50以上とすることは、単なる設計的事項の範疇であると解さざるを得ない。
ウ 本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
したがって、本件補正発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
(5) 審判請求人の主張について
令和5年3月10日に提出された審判請求書において、審判請求人は、本件補正発明の進歩性に関して、以下のとおり主張する。
「これに対し、引用文献1に記載された発明(引用発明1)は、誘導加熱装置であり、加熱コイル3(本願発明1のソレノイドコイルに相当)と、加熱コイル3の入口側及び出口側に配置される凸型シールド銅管6と、コの字型鉄心5と、を備えます。引用文献1の段落[0030]~[0031]に記載されるように、引用発明1において、凸型シールド銅管6のうち本願発明1の中央部に相当する遠隔部6bは、被加熱材1の幅方向に対して、加熱コイル3から遠ざかるように配置されています。引用発明1では、コの字型鉄心5が、加熱コイル3の上下面で且つ被加熱材1の幅方向中央部の位置に配置されます。
ここで、仮に、遠隔部6bがコの字型鉄心5の周囲又はその近傍に配置されていた場合、遠隔部6bによる磁界がコの字型鉄心5に作用することは否めません。そうすると、引用発明1では、遠隔部6bは、コの字型鉄心5に影響を及ぼさないように、加熱コイル3から通板方向に遠ざかっているのが相当と考えられます。このため、引用発明1において、遠隔部6bが通板方向以外の方向に遠ざかっていることは記載も示唆もされていないと言えます。
したがって、本願発明1のような中央部の独特な形状は、引用発明1から想起し得ようもありません。」(第9ページ第22行~第10ページ第9行。以下「主張1」という。)
「また、本願発明1によれば、比LEP/LCPを2.50以上とすることにより、鋼板における板幅方向の温度ばらつきが実質的に生じなくなるという特徴的な効果を得ることができます。この点、引用文献1には、比LEP/LCPについて何も着目されていません。」(第10ページ第10行~第13行。以下「主張2」という。)
審判請求人の主張1について検討する。
「中央部の独特な形状」に関しては、上記(4)アで説示したとおりである。
そして、引用発明において、遠隔部6bを、コの字型鉄心5に影響を及ぼさないように、加熱コイル3から通板方向以外の方向に遠ざけることが技術的に可能であることは、引用文献を見た当業者であれば理解できることである。そうすると、引用発明の遠隔部6bの配置について、図1から看て取れるような、加熱コイル3から通板方向に遠ざかっているもののみと限定的に解する合理的な根拠は見いだせない。
そうすると、引用発明において、遠隔部6bを通板方向以外の方向に遠ざけることに阻害要因が存在するとは認められない。
審判請求人の主張2について検討する。
「比LEP/LCPを2.50以上とすること」に関しては、上記(4)イで説示したとおりである。
「鋼板における板幅方向の温度ばらつきが実質的に生じな」いようにすることは、引用発明が解決しようとする課題であるから、本件補正発明の「特徴的な効果」とはいえない。
よって、審判請求人の主張は、いずれも採用することができない。
3 本件補正についてのむすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし10に係る発明は、令和4年9月22日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2[理由]1(2)の請求項1に記載されたとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、以下のとおりである。
本願発明は、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:特開2013-16341号公報(上記「引用文献」と同一の文献である。)
3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項及び引用発明は、上記第2[理由]2(2)に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、上記第2[理由]2で補正の適否を検討した本件補正発明の「前記第1リング上部では、中央部が、両端部から上方に離れて配置され、前記第1リング下部では、中央部が、両端部から下方に離れて配置されて」いるという発明特定事項を「前記第1リング上部及び前記第1リング下部の少なくとも一方では、中央部が、両端部よりも前記ソレノイドコイルから離れて配置されて」いるという発明特定事項に置換し、本件補正発明の「前記第2リング上部では、中央部が、両端部から上方に離れて配置され、前記第2リング下部では、中央部が、両端部から下方に離れて配置されて」いるという発明特定事項を「前記第2リング上部及び前記第2リング下部の少なくとも一方では、中央部が、両端部よりも前記ソレノイドコイルから離れて配置されて」いるという発明特定事項に置換し、本件補正発明の「比LEP/LCPが2.50以上である」という発明特定事項を「比LEP/LCPが1.20以上である」という発明特定事項に置換したものであるから、本願発明は、本件補正発明の上位概念に相当するものである。
そうすると、本願発明の下位概念に相当する本件補正発明が上記第2[理由]2(4)に記載したとおり、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-004129