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特許拒絶査定不服審判

2016-003494

可変透過窓システム

審判番号
2016-003494
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2014-033972外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2016年03月07日
審決日
2017年04月25日
公報発行日
2017年11月24日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (G02F) / P18 .575-Z (G02F)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第17条の2第6項、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2014- 33972「可変透過窓システム」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 5月29日出願公開、特開2014- 98934〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本願は、2007年6月11日を国際出願日とする特願2009-514563号の一部を平成26年2月25日に新たな特許出願としたもの(パリ条約による優先権主張外国庁受理2006年6月9日、米国)であって、同年3月4日に特許請求の範囲が補正され、同年12月8日付けで拒絶理由が通知され、平成27年6月4日に特許請求の範囲が補正され、同年11月5日付けで拒絶査定がされ、これに対して、平成28年3月7日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に特許請求の範囲が補正されたものである。 第2 平成28年3月7日付け手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成28年3月7日付け手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正の内容 本件補正は補正前の請求項1及び請求項2についての補正を含んでおり、補正前の請求項1及び請求項2並びに補正後の請求項1の記載は以下のとおりである(下線は請求人による)。 [補正前の請求項1及び請求項2] 「【請求項1】 平行な離間した関係に配列されて基板の内面間にチャンバを形成する第1及び第2の基板と、 前記第1の基板の前記内面に施された第1の透明電極コーティングと、 前記第2の基板の前記内面に施された第2の透明電極コーティングと、 前記第1の基板の周囲近くの該基板の前記第1の透明電極コーティング上に堆積された第1の銀エポキシの層と、 前記第2の基板の周囲近くの該基板の前記第2の透明電極コーティング上に堆積された第2の銀エポキシの層と、 前記第1の銀エポキシの層と前記第2の銀エポキシの層との間に配置されたプライマリシールと、 前記プライマリシールで囲まれた区域において、前記第1及び第2の透明電極コーティング間に配置されたエレクトロクロミック媒体と、 を含み、素子の透過率を変えるための制御回路に結合されたエレクトロクロミック素子、 を含むことを特徴とする可変透過率窓。 【請求項2】 前記第1の基板と前記第2の基板との間で延びて、前記第1及び第2の銀エポキシの層の一つに取り付けられた銀接触タブを更に含むことを特徴とする請求項1に記載の可変透過率窓。」 [補正後の請求項1] 「【請求項1】 平行な離間した関係に配列されて基板の内面間にチャンバを形成する第1及び第2の基板と、 前記第1の基板の前記内面に施された第1の透明電極コーティングと、 前記第2の基板の前記内面に施された第2の透明電極コーティングと、 前記第1の基板の周囲近くの該基板の前記第1の透明電極コーティング上に堆積された第1の銀エポキシの層と、 前記第2の基板の周囲近くの該基板の前記第2の透明電極コーティング上に堆積された第2の銀エポキシの層と、 前記第1の銀エポキシの層と前記第2の銀エポキシの層との間に配置されたプライマリシールと、 前記プライマリシールで囲まれた区域において、前記第1及び第2の透明電極コーティング間に配置されたエレクトロクロミック媒体と、 前記第1の基板と前記第2の基板との間で延びて、前記第1及び第2の銀エポキシの層の一つに取り付けられた銀接触タブと、 を含む、素子の透過率を変えるための制御回路に結合されたエレクトロクロミック素子を含み、 前記第1及び第2の透明電極コーティングは、少なくとも約2λの光学的厚みで堆積され、ここで、λは、前記エレクトロクロミック素子が最適化される光の波長であることを特徴とする可変透過率窓。」 上記の補正後の請求項1は、補正前の請求項2を請求項1を引用しない形式に書き改めるとともに、補正前の請求項1に記載されている「第1の透明電極コーティング」及び「第2の透明電極コーティング」について、「少なくとも約2λの光学的厚みで堆積され、ここで、λは、前記エレクトロクロミック素子が最適化される光の波長である」という限定を付加したものである。そして、補正前の請求項2及び補正後の請求項1に係る発明の産業上の利用分野及び発明が解決しようとする課題は同一であると認められる。 したがって、上記の補正後の請求項1に係る補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。 そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)、以下検討する。 2 引用例 (1)本願の優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である欧州特許出願公開第1024394号明細書(以下「引用例」という。)には、以下の記載が認められる(日本語訳及び下線は当審による。以下、同じ。)。 ア 「[0001] The present invention relates to photochromic and electrochromic devices, solutions for use therein, and uses thereof. Such devices are designed to either photochromic or electrochromic, depending on desired applications, under the influences of illuminated light and/or applied potential. Photochromic devices have been suggested for use as smart windows, as UV protection glasses, as UV radiation detectors or indicators,and light intensity self-adjusting filters. Electrochromic devices have been suggested for use as variable transmission light filters, as smart windows, as mirrors, as UV radiation detectors or indicators, as displays and as sunlight glasses or sunroofs. More particularly, the present invention relates to multifunctional photo- and electrochromic devices and solutions for use therein and uses thereof. …. [0005] If the device is to be used as an electrochromic mirror, one electrode must be a transparent conducting thin layer on a glass substrate such as indium tin oxide (ITO), another electrode is silver or aluminum coated or otherwise coated with a reflecting layer on its opposite side. In the case of light control windows and filters, both electrodes must be ITO-coated glasses so that when the redox pair is colorless, the window would be entirely transparent.」 「[0001] 本発明は、フォトクロミック及びエレクトロクロミック・デバイス、これに使用するための溶液、並びにその使用法に関する。そのようなデバイスは、所望の用途に依存して、照射光及び/または適用電圧の作用下にフォトクロミック及びエレクトロクロミックであるように設計されている。フォトクロミック・デバイスは、スマート・ウィンドウとして、UV保護ガラスとして、UV照射検知器または指示器として、及び光強度自己調節フィルターとしての用途が提案されてきた。エレクトロクロミック・デバイスは、可変透過光フィルターとして、スマート・ウィンドウとして、ミラーとして、UV照射検知器または指示器として、ディスプレ-として、及びサングラスまたはサンルーフとしての用途が提案されてきた。更に特に、本発明は、多機能性フォト及びエレクトロクロミック・デバイス及びこれに使用する溶液並びにその用途に関する。 … [0005] デバイスをエレクトロクロミック・ミラーとして使用する場合、1つの電極はガラス基板上に透明な伝導性薄膜、例えばインジウム錫酸化物(ITO)でなければならず、他の電極は銀またはアルミニウムで被覆され、またはさもなければ第1の電極に相対して配置された反射層で被覆されていなければならない。光制御ウィンドウ及びフィルターの場合、両電極は、レドックス対が無色の時、窓が全体に透明であるようにITOでコーティングされたガラスでなければならない。」 イ 「[0014] The present invention further entails novel electrochromic devices comprising two parallel plates, at least one of which is a transparent sheet, both plates being coated with electric conductive layers such as layers of ITO on their inward faces and an electrochromic medium between the plates. In a preferred embodiment of the electrochromic device a TiO2 thin layer is coated on one of the electrodes, which is preferred an ITO-layer. TiO2 can absorb UV light (< 400nm) and is transparent in the visible spectral region, which reduces the photolysis or degradation of any UV vulnerable solute in the electrochromic solution. The solution stability to UV radiation can be improved. To a certain content, the electron-hole pairs generated by the incoming UV radiation can improve the electrochromic performances. [0015] The present invention can lead to commercial devices like variable transmission light filters, smart windows, displays, mirrors, UV glasses, UV radiation detectors or indicators,and sunlight glasses, sunroofs or filters.」 「[0014] 本発明は、2つの平行な電極を含んでなり、その少くとも1つが透明なシートであり、両プレートはその内面が電気伝導相、例えばITO層で被覆され、プレート間にエレクトロクロミック媒体が存在する、新規なエレクトロクロミック・デバイスを更に包含する。エレクトロクロミック・デバイスの好適な具体例において、TiO2薄層が電極の1つ、好適にはITO層に被覆されている。TiO2はUV光(<400nm)を吸収することができ、エレクトロクロミック溶液におけるUVの損傷を受けやすい溶質の光分解または劣化を減じ、可視光領域で透明である。UV照射に対する溶液安定性が改善できる。入ってくるUV照射で発生する電子-ホール対は、ある容量までエレクトロクロミック性能を改善しうる。 [0015] 本発明は、可変透過光フィルター、スマ-ト・ウィンドウ、ディスプレ-、ミラー、UVガラス、UV照射検知器または指示器、及びサングラス、サンルーフまたはフィルターのような商品デバイスを提供することができる。」 ウ 「[0021] The second aspect of the present invention relates to a photo- and electrochromic multifunctional device, which comprises particularly a thin layer (TiO2), which is coated on a ITO glass sheet and contacts directly with the inventious solution. The TiO2 thin layers can be prepared by spin-coating, doctor-blading or screen printing techniques. As a photochromic device, the preferred thickness of the TiO2 layer is 1-3 μm. The preferred process is spin-coating technique. As an electrochromic device, the preferred thickness of the TiO2 layer is less than 1 μm. The preferred process is the sol-gel process. [0022] Figure 5 illustrates a schematic configuration of the photo- and/or an electrochromic device according to the present invention which is a cell into which a photochromic solution 5 of the present invention is filled. The cell comprises a pair of glass sheets 50 and 51 coated with conducting layers 55 and 56, one of the ITO sheet 50 is coated on an inwardly facing surface 56 with a TiO2 thin layer 52 with the thickness of 1-3 μm. Glass sheets 50 and 51 are separated by a spacer 53 with the thickness of 13 μm(e.g. polyamide film). The cell is sealed at its perimeter by peripheral sealant 54. Sealant 54 comprises an epoxy material. [0023] When the cell is intended to be used as an electrochromic mirror, and thus the rear surface of glass plate 51 is coated with a silver reflector layer. If the device were used as an electrochromic window, this reflector layer would be omitted. The conductive ITO layers 55 and 56 are connected to electrical terminal 57 and 58, so that a voltage can be established across the solution located between sheets 55 and 56 in the cell 5. A preferred means is to use a conductive epoxy resin, such as standard commercially available silver epoxy. [0024] In another aspect, the present invention entails a variable transmittance light-filter. The device varies continuously and rapidly in transmittance to light in the visible wavelength range as a function of the potential difference applied between the electrodes of the invention devices.」 「[0021] 本発明の第2の観点は、ITOガラスシート上にコーティングされ且つ本発明の溶液と直接接触する特に薄層(TiO2)を含んでなる、フォト及びエレクトロクロミック多機能性デバイスに関する。このTiO2薄層はスピンコーティングまたはドクタ-ナイフまたはスクリーン印刷技術で作ることができる。フォトクロミック・デバイスとして、TiO2層の好適な厚さは1-3μmである。好適な方法はスピンコーティング技術である。エレクトロクロミック・デバイスとして、TiO2層の好適な厚さは1μm以下である。好適な方法はゾル-ゲル法である。 [0022] 図5は本発明のフォトクロミック溶液5が満たされたセルである本発明によるフォト及び/またはエレクトロクロミック・デバイスの概略的配置を例示する。このセルは、伝導性層55及び56で被覆された1対のガラスシート50及び51を含んでなる。ITOシート50の1つは、内表面56が厚さ1-3μmのTiO2薄層52で被覆されている。ガラスシート50及び51は、厚さ13μmのスペーサー53(例えばポリアミドフィルム)で隔離されている。セルは外縁シーラント54で周囲がシールされている。シーラント54はエポキシ材を含んでなる。 [0023] セルをエレクトロクロミック・ミラーとして使用する意図のある場合、ガラスプレートの裏表面は銀反射層で被覆される。デバイスをエレクトロクロミック・ウィンドウとして使用するならば、この反射層は省略されるであろう。伝導性ITO層55及び56は、電気的端子57及び58に接続され、セル5のシート55及び56間に位置する溶液を横切って電位が確立される。好適な手段は伝導性エポキシ樹脂、例えば標準的な商業的に入手可能な銀エポキシを用いることである。 [0024] 他の観点において、本発明は、可変透過光フィルターを包含する。本デバイスは、デバイスの電極間に適用される電位差の関数として、可視波長領域における光に対して連続的に且つ迅速に透過率を変える。」 エ 図5は、以下のものである。 「 」 (2)上記(1)ウの[0022]及び[0023]の記載を踏まえて図5を見ると、以下の点が見てとれる。 (ア)ガラスシート50の内面が伝導性ITO層56で被覆されており、ガラスシート51の内面が伝導性ITO層55で被覆されていること、 (イ)外縁シーラント54は、伝導性ITO層55と伝導性ITO層56の間に配置されていること、 (ウ)溶液5は、外縁シーラント54で囲まれた区域において、伝導性ITO層56と伝導性ITO層55間に配置されていること (エ)伝導性ITO層56は、ガラスシート50の周囲近くで電気的端子57に接続され、伝導性ITO層55は、ガラスシート51の周囲近くで電気的端子58に接続されていること、及び (オ)電気的端子57及び58は、ガラスシート50とガラスシート51の間で延びていること。 (3)上記(1)ウの[0023]における「好適な手段は伝導性エポキシ樹脂、例えば標準的な商業的に入手可能な銀エポキシを用いることである。」との記載は、「伝導性ITO層55及び56」と「電気的端子57及び58」を接続するための手段についていうものと解される。 (4)以上のことから、引用例には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「エレクトロクロミック・デバイスを使用したエレクトロクロミック・ウィンドウであって、 前記エレクトロクロミック・デバイスは、内面が伝導性ITO層56で被覆されたガラスシート50及び内面が伝導性ITO層55で被覆されたガラスシート51を含んでなるセルであり、 ガラスシート50及び51は、スペーサー53で隔離され、セルの周囲が外縁シーラント54でシールされ、溶液5が満たされており、 外縁シーラント54は、伝導性ITO層55と伝導性ITO層56の間に配置されており、 溶液5が、外縁シーラント54で囲まれた区域において、伝導性ITO層55と伝導性ITO層56間に配置されており、 伝導性ITO層56は、銀エポキシを用いて、ガラスシート50の周囲近くで電気的端子57に接続されており、伝導性ITO層55は、銀エポキシを用いて、ガラスシート51の周囲近くで電気的端子58に接続されており、 電気的端子57及び58は、ガラスシート50とガラスシート51の間で延びている、 エレクトロクロミック・デバイスを使用したエレクトロクロミック・ウィンドウ。」 3 対比 本願補正発明と引用発明を対比する。 (1)引用発明の「ガラスシート50」及び「ガラスシート51」は、それぞれ本願補正発明における「第1の基板」及び「第2の基板」に相当し、引用発明の「ガラスシート50」と「ガラスシート51」の間の「外縁シーラント54でシールされ」た空間は、本願補正発明の「チャンバ」に相当し、引用発明の「ガラスシート50及び51」は、本願補正発明の「平行な離間した関係に配列されて基板の内面間にチャンバを形成する第1及び第2の基板」に相当する。 (2)引用発明の「伝導性ITO層」は、引用例の[0005]に記載されるように、インジウム錫酸化物(ITO)の層であり、透明な伝導性薄膜であるから、引用発明の「伝導性ITO層56」及び「伝導性ITO層55」は、それぞれ、本願補正発明の「前記第1の基板の前記内面に施された第1の透明電極コーティング」及び「前記第2の基板の前記内面に施された第2の透明電極コーティング」に相当する。 (3)引用発明において、「伝導性ITO層56は、銀エポキシを用いて、ガラスシート50の周囲近くで電気的端子57に接続されて」いることから、「伝導性ITO層56」を「電気的端子57」に接続する「銀エポキシ」は、「ガラスシート50の周囲近くの伝導性ITO層56上に」設けられていることは明らかである。したがって、引用発明における前記「銀エポキシ」と本願補正発明における「第1の銀エポキシの層」は、「前記第1の基板の周囲近くの該基板の前記第1の透明電極コーティング上に設けられた第1の銀エポキシ」である点で共通する。 同様に、引用発明発明における「伝導性ITO層55」と「電気的端子58」とを接続する「銀エポキシ」と本願補正発明における「第2の銀エポキシの層」は、「前記第2の基板の周囲近くの該基板の前記第2の透明電極コーティング上に設けられた第2の銀エポキシ」である点で共通する。 (4)引用発明の「外縁シーラント54」と本願補正発明の「プライマリシール」は、ともに「第1の基板と第2の基板との間に配置されたプライマリシール」といえる。 (5)引用発明のデバイスは「エレクトロクロミック・デバイス」であるから,引用発明の「外縁シーラント54で囲まれた区域において、伝導性ITO層55と伝導性ITO層56間に配置され」た「溶液5」は、引用例の[0014]に記載される「エレクトロクロミック媒体」と認められ、引用発明の前記「溶液5」は、本願補正発明の「前記プライマリシールで囲まれた区域において、前記第1及び第2の透明電極コーティング間に配置されたエレクトロクロミック媒体」に相当する。 (6)引用発明の「電気的端子57及び58」は、本願補正発明における「接触タブ」に相当する。そして、引用発明において、「伝導性ITO層56は、銀エポキシを用いて、ガラスシート50の周囲近くで電気的端子57に接続されており、伝導性ITO層55は、銀エポキシを用いて、ガラスシート51の周囲近くで電気的端子58に接続されており」、「電気的端子57及び58は、ガラスシート50とガラスシート51の間で延びている」から、引用発明と本願補正発明は、「前記第1の基板と前記第2の基板との間で延びて、前記第1及び第2の銀エポキシの一つに取り付けられた接触タブ」を含む点で共通する。 (7)引用発明の「エレクトロクロミック・デバイス」は、引用例の[0024]に記載されるように、「デバイスの電極間に適用される電位差の関数として、可視波長領域における光に対して連続的に且つ迅速に透過率を変える」ものであり、その「電気的端子57及び58」は、デバイスの電極間に電位差を適用するための制御回路に結合されるものと認められるから、引用発明の「エレクトロクロミック・デバイス」は、本願補正発明の「素子の透過率を変えるための制御回路に結合されたエレクトロクロミック素子」に相当し、引用発明の「エレクトロクロミック・ウィンドウ」は、本願補正発明の「可変透過率窓」といえる。 (8)以上のことから、本願補正発明と引用発明は、以下の点で一致する。 [一致点] 「平行な離間した関係に配列されて基板の内面間にチャンバを形成する第1及び第2の基板と、 前記第1の基板の前記内面に施された第1の透明電極コーティングと、 前記第2の基板の前記内面に施された第2の透明電極コーティングと、 前記第1の基板の周囲近くの該基板の前記第1の透明電極コーティング上に設けられた第1の銀エポキシと、 前記第2の基板の周囲近くの該基板の前記第2の透明電極コーティング上に設けられた第2の銀エポキシと、 前記第1の基板と前記第2の基板との間に配置されたプライマリシールと、 前記プライマリシールで囲まれた区域において、前記第1及び第2の透明電極コーティング間に配置されたエレクトロクロミック媒体と、 前記第1の基板と前記第2の基板との間で延びて、前記第1及び第2の銀エポキシの層の一つに取り付けられた接触タブと、 を含み、素子の透過率を変えるための制御回路に結合されたエレクトロクロミック素子、 を含む可変透過率窓。」 (9)一方、両者は、以下の点で相違する。 [相違点1] 本願補正発明においては、第1及び第2の透明電極コーティング上に設けられた第1及び第2の銀エポキシについて、「堆積された」「層」と特定され、かつ、プライマリシールが配置される位置について、「前記第1の銀エポキシの層と前記第2の銀エポキシの層との間に配置され」と特定されているのに対して、引用発明においては、銀エポキシが「堆積された」「層」であるか不明であり、また、外縁シーラント54(プライマリシール)は、「伝導性ITO層55と伝導性ITO層56の間に配置され」ており、銀エポキシと銀エポキシの間には配置されていない点。 [相違点2] 接触タブの材料について、本願補正発明では、「接触タブ」が「銀接触タブ」である、すなわち前記材料は「銀」と特定されているのに対し、引用発明の「電気的端子57及び58」の材料が「銀」であるか不明である点。 [相違点3] 透明電極コーティングについて、本願補正発明では、「前記第1及び第2の透明電極コーティングは、少なくとも約2λの光学的厚みで堆積され、ここで、λは、前記エレクトロクロミック素子が最適化される光の波長である」と特定されているのに対し、引用発明の「伝導性ITO層55」及び「伝導性ITO層56」がそのような光学的厚みで堆積されたものであるか不明である点。 4 判断 上記相違点について検討する。 (1)相違点1について 引用発明において、伝導性ITO層56及び55と、電気的端子57及び58を接続する「銀エポキシ」の適用形態及び「外縁シーラント54」の配置位置は、当業者が適宜に設定し得る設計的事項である。 そして、エレクトロクロミック素子において、各基板の透明電極上に設ける銀エポキシを層状に堆積した形態とすること、及びそのように堆積した銀エポキシの各層の間にエレクトロクロミック媒体のシールを配置することは周知の技術である(例えば、原査定で引用された特表2006-501524号公報には、電極120及び128の各々に(銀で充填したエポキシで形成されることが好ましい)導電シール152を堆積して硬化すること、及びエレクトロクロミック媒体126の非導電シール116(引用発明における「外縁シーラント54」に相当する。)を導電シール152の間に配置する構造が記載されている(【0053】及び図12参照))。 したがって、引用発明において、銀エポキシの適用形態を「堆積された層」とするともに、外縁シーラント54(プライマリシール)を、銀エポキシの層と銀エポキシの層との間に配置するよう変更して、上記相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは、周知の技術に基づいて当業者が容易に想到し得ることである。 (2)相違点2について 引用発明において、電気的端子57及び58の材料は当業者が適宜に選択し得る設計的事項である。 そして、エレクトロクロミック素子の「タブ」の材料として「銀」(silver)を用いることは周知の技術である(例えば、原査定で引用された米国特許第6213602号明細書(第6欄59~65行の「Any suitable wire or metal strip can be used as a tab. …. Typical wire materials include, but are not limited to, nickel, silver, titanium, gold, platinum and copper. 」)及び同じく米国特許第6010220号明細書(第5欄61~67行の「Any suitable wire or metal strip can be used as a tab. …. Typical wire materials include, but are not limited to, nickel, silver, titanium, gold, platinum and copper. 」)を参照)。 したがって、引用発明において、「電気的端子57及び58」の材料として「銀」を採用し、上記相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは、周知の技術に基づいて当業者が容易に想到し得ることである。 (3)相違点3について 伝導性ITO層を「堆積」されたものとすることは周知の技術である(例えば、上記の特表2006-501524号公報(【0027】)参照)。 また、引用発明の「伝導性ITO層55」及び「伝導性ITO層56」の厚みをどの程度にするかは、当該層のシート抵抗及び光透過性の観点から当業者が適宜決定し得る設計的事項である。 ここで、透明電極のシート抵抗を小さくするために厚みを大きくすることは周知の技術である(例えば、特開2006-31889号公報(【0011】の「透明電極の抵抗を下げるためには,電極層の厚さを大きくする必要…がある。」)、国際公開第2004/098953号(29頁32行~30頁1行の「This low sheet resistance can be achieved by providing thicker layers of conventional materials such as ITO, tin-oxide, zinc-oxide, or combinations thereof. 」(この低いシート抵抗は、ITO、酸化亜鉛、又はその組合せのような従来の材料のより厚い層とすることによって達成することができる。))及び特表2002-525678号公報(【0015】の「低シート抵抗を得るためにフィルムの厚さを14、000Å程度に厚くする必要がある」)を参照)。 そして、本願補正発明における「λ」は、「前記エレクトロクロミック素子が最適化される光の波長」であり、例えば「約500nm」(本願明細書【0087】)に設定され得るところ、上記の国際公開第2004/098953号(30頁1~6行の「If the optical thickness of the coatings is two wave, or above, there are also benefits in the color intensity and color variation that is contributed to the low end reflectance of the associated mirror element when compared to thinner coatings that are not color suppressed thicker layers, approximately two wave or above, provide benefits with regard to manufacturing variances.」(コーティングの光学厚みが2波以上である場合、約2波以上である色抑制されたより厚い層ではないより薄いコーティングと比較すると、関連するミラー要素の低い反射率の一因にされる色強度及び色変化において利点があり、製造上のばらつきに関しての利点をもたらす。))との記載及び上記の特表2002-525678号公報に記載された「14、000Å程度」(1,400nm)という数値からみて、「少なくとも約2λの光学的厚み」は当業者が普通に設定し得る値と認められる。 したがって、引用発明において、「伝導性ITO層55」及び「伝導性ITO層56」について、「少なくとも約2λの光学的厚みで堆積され、ここで、λは、前記エレクトロクロミック素子が最適化される光の波長である」とすること、すなわち上記相違点3に係る本願補正発明の構成とすることは、周知の技術に基づいて当業者が容易に想到し得ることである。 (4)そして、本願補正発明によって当業者が予期し得ない格別顕著な効果が奏されるとは認められない。 (5)したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 よって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 5 小括 以上のとおり、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反する。 よって、本件補正は、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成27年6月4日に補正された特許請求の範囲の請求項1ないし18に記載される事項によって特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2[理由]「1 本件補正の内容」において、[補正前の請求項1]として記載したとおりである。 2 引用例 引用例及びその記載事項は、上記第2[理由]2のとおりである。 3 対比・判断 本願発明は、本願補正発明から、「前記第1の基板と前記第2の基板との間で延びて、前記第1及び第2の銀エポキシの層の一つに取り付けられた銀接触タブ」を含むという限定事項並びに「第1の透明電極コーティング」及び「第2の透明電極コーティング」についての「少なくとも約2λの光学的厚みで堆積され、ここで、λは、前記エレクトロクロミック素子が最適化される光の波長である」という限定事項を省いたものに相当する。 してみると、本願発明と引用発明の相違点は、上記第2[理由]3(9)の[相違点1]のみである。 そして、相違点1については、上記第2[理由]4(1)で検討したとおりであるから、引用発明において、相違点1に係る本願発明の構成とすることは、周知の技術に基づいて当業者が容易になし得ることである。 したがって、本願発明は、引用発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 3.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2016-003494

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