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特許拒絶査定不服審判

2016-000669

レーザ加工装置

審判番号
2016-000669
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2011-219810外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2016年01月15日
審決日
2017年01月05日
公報発行日
2017年04月28日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (B23K)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2011-219810「レーザ加工装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年5月2日出願公開,特開2013-78780〕について,次のとおり審決する。

結論

【結 論】 本件審判の請求は,成り立たない。

理由

【理 由】 1.手続の経緯 本願は,平成23年10月4日の出願であって,その主な手続の経緯は,以下のとおりである。 平成27年 3月11日付け 拒絶理由通知 平成27年 4月27日   意見書及び手続補正書提出 平成27年10月19日付け 拒絶査定 平成28年 1月15日   審判請求書提出 2.本願発明 本願の請求項1ないし5に係る発明は,平成27年4月27日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるとおりのものと認めるところ,その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)の記載は以下のとおりである。 「レーザビームをスクライブ予定ラインに沿って照射し,脆性材料基板の表面にスクライブ溝を形成するレーザ加工装置であって, 加工される脆性材料基板が載置されるテーブルと, ガウス型の強度分布を有するレーザビームを出射するレーザビーム出射装置と, 前記スクライブ予定ラインと直交する方向のビーム幅を制御する第1レンズと, 前記スクライブ予定ラインに沿った方向のビーム長さを制御する第2レンズと, 脆性材料基板における前記レーザビームによって加熱された領域を冷却する冷却装置と, レーザビーム及び前記冷却装置を,前記テーブルに載置された脆性材料基板に対して相対的に走査するための走査機構と, を備え, 前記第1レンズ及び前記第2レンズの少なくとも一方は,前記脆性材料基板からの位置及び光軸と直交する方向の位置を所定の位置にしたときに,入射されたガウス型の強度分布を有するレーザビームの強度分布を,脆性材料基板上においてビーム幅方向あるいはビーム長さ方向で一様にする非球面シリンドルカルレンズであり, 前記非球面シリンドリカルレンズを光軸に沿った方向に移動する移動機構,及び前記非球面シリンドリカルレンズを光軸と直交する方向に移動するシフト機構の少なくとも一方をさらに備える, レーザ加工装置。」 3.刊行物の記載事項等 (1)刊行物1の記載事項及び刊行物1発明 平成27年3月11日付け拒絶理由通知で引用した,本願出願前に頒布された刊行物である国際公開第2010/108061号(以下,「刊行物1」という。)には,以下の事項が記載されている。 なお,括弧内は,当該刊行物に係る国際特許出願に基づいて,日本国特許庁長官に提出された翻訳文に係る公表公報(特表2012-521339号公報)における該当箇所である。 ア.「[0002] The present invention relates to laser cutting technology. In particular, the present invention relates to cutting inorganic sheet materials, such as glass sheets, by using laser heating. The present invention is useful in, inter alia, precision scoring of LCD glass substrates. BACKGROUND [0003] Splitting a piece of inorganic material can be accomplished by mechanical equipment and processes, such as wire saw, band saw, and the like. For glass materials, splitting can be effected by mechanical scoring (i.e., forming a scoreline on a surface) followed by bending and splitting. ・・・(中略)・・・ [0004] Laser scoring has been reported as an alternative cutting and scoring technology in lieu of mechanical scoring. A CO 2 laser with a wavelength of about 10.6 μm, when irradiated to an absorbing glass material, can cause the temperature of the exposed area to rise. With or without the assistance of a coolant, the tensile stress caused the thermal gradient resulting from the absorption of the irradiation can lead to the direct splitting of a glass sheet, or the formation of a line of defect ("vent") along which the glass sheet can be split with the assistance of mechanical bending.」 (【0002】 本発明はレーザ切断技術に関する。特に,本発明はガラスシートなどの無機シート材料の,レーザ加熱を使用した切断に関する。本発明は,とりわけLCDガラス基板の精密罫書きに有用である。 【背景技術】 【0003】 1枚の無機材料の分割は,例えば,線鋸,帯鋸などの機械的設備およびプロセスにより達成することができる。ガラス材料では,機械的罫書き(すなわち,表面上への罫書き線の形成)の後に屈曲させて割ることで分割することが可能である。・・・(中略)・・・ 【0004】 機械的罫書きに代わる切断および罫書き技術として,レーザ罫書きが報告されている。約10.6μmの波長を有するCO2レーザを吸収性のガラス材料に対して照射すると,その露出領域の温度を上昇させることができる。補助的に冷却材を使用して,または使用しなくても,その照射の吸収による温度勾配が生じさせる引張応力が,ガラスシートの直接の分割に,あるいは,機械的曲げの助けを借りてガラスシートを分割させることが可能な欠陥(「割れ目」)ラインの形成に繋がり得る。) イ.「[0025] According to a second aspect of the present invention, provided is an apparatus for splitting a glass sheet along an essentially linear scoreline in a surface of the glass sheet, comprising: (A) a laser generator adapted for generating a circular laser beam having a diameter D(CLB) and an energy distribution in S-mode along any diameter thereof; and (B) an optical assembly adapted for converting the circular laser beam into an elongated laser beam having a width W(LB) and a length L(LB) where intercepted by the surface of the glass sheet, an energy distribution in S-mode along the direction of W(LB), and an energy distribution in fiat-top-mode along the direction of L(LB). [0026] In a first embodiment of the apparatus according to the second aspect of the present invention, the apparatus further comprises: (C) a nozzle adapted for delivering a stream of cooling fluid to the area of surface of the sheet to be exposed to the elongated laser beam. [0027] In a second embodiment of the apparatus according to the second aspect of the present invention, the apparatus further comprises: (D) a device for bending and splitting the glass sheet along the scoreline. [0028] In a third embodiment of the apparatus according to the second aspect of the present invention, the optical assembly (B) comprises a first lens adapted for decreasing the dimension of the circular laser beam in the direction of W(LB), and a second lens adapted for (a) increasing the dimension of the beam in the direction of L(LB) and (b) transforming the energy distribution profile from S-mode to flat-top-mode in the direction of L(LB). [0029] In certain specific embodiments of the third embodiment of the apparatus according to the second aspect of the present invention, the first lens is a focusing cylindrical lens, and the second lens is a diverging modified cylindrical lens.」 (【0025】 本発明の第2の態様によれば,ガラスシートをこのガラスシート表面内の本質的に直線状の罫書き線に沿って分割するための装置が提供され,この装置は, (A)円形レーザビームを生成するよう適合されたレーザ発生器であって,この円形レーザビームが直径D(CLB)を有するものであり,かつこのビームの任意の直径に沿ったエネルギー分布がSモードである,レーザ発生器,および, (B)円形レーザビームを細長いレーザビームへと変形させるよう適合された光学アセンブリであって,この細長いレーザビームが,ガラスシートの表面に遮られる位置で幅W(LB)および長さL(LB)を有するものであり,さらにこの細長いレーザビームの,W(LB)方向に沿ったエネルギー分布がSモードであり,かつL(LB)方向に沿ったエネルギー分布がフラットトップモードである,光学アセンブリ, を含む。 【0026】 本発明の第2の態様による装置の第1の実施形態において,この装置は, (C)シート表面の細長いレーザビームに露出される領域に,冷却流体流を送出するよう適合されたノズル, をさらに含む。 【0027】 本発明の第2の態様による装置の第2の実施形態において,この装置は, (D)ガラスシートを罫書き線に沿って屈曲させ,かつ分割する機器, をさらに含む。 【0028】 本発明の第2の態様による装置の第3の実施形態において,光学アセンブリ(B)は,円形レーザビームの寸法をW(LB)方向において減少させるよう適合された第1レンズ,および,(a)ビームの寸法をL(LB)方向において増加させかつ(b)L(LB)方向におけるエネルギー分布のプロファイルをSモードからフラットトップモードに変換させるよう適合された第2レンズ,を含む。 【0029】 本発明の第2の態様による装置の第3の実施形態における特定の具体的な実施形態において,第1レンズは集中性のシリンドリカルレンズであり,かつ第2レンズは発散性の変形シリンドリカルレンズである。) ウ.「[0052] As used herein, "S-mode" means the energy intensity distribution of the laser beam along a given direction is substantially Gaussian. FIG. 3 shows an S-mode distribution along an axis y. An exemplary S-mode would be the TEM00-Mode of a circular CO 2 laser beam along any diameter of the cross-section.」 (【0046】 本書において使用される「Sモード」とは,所与の方向に沿ったレーザビームのエネルギー強度分布が実質的にガウス分布であるものを意味する。図3は,軸yに沿ったSモード分布を示している。例示的なSモードは,円形CO2レーザビームの断面の任意の直径に沿ったTEM00モードであろう。) エ.「[0066] FIG. 3 schematically illustrates the Gaussian energy distribution profile along the width (y axis) of a laser beam according to one embodiment of the present invention. The profile exhibits a maximal intensity Imax(W) along the width and a width W(LB). In the present disclosure, beam width W(LB) is defined as the linear distance in the width direction from the point on one side of the beam having an intensity of Imax(W)e-2 to the point on the opposite side having an intensity of Imax(W)e-2 , where e is Euler's irrational number. ・・・(中略)・・・ [0069] Similarly, FIG. 5 schematically illustrates the flat-top-mode distribution profile along the length (x axis) of a laser beam according to another embodiment of the present invention. 」 (【0058】 図3は,本発明の一実施の形態によるレーザビームの,幅(y軸)に沿ったガウス型のエネルギー分布プロファイルを概略的に示したものである。このプロファイルは,その幅の間の最大強度Imax(W)と幅W(LB)とを示している。本開示において,ビーム幅W(LB)は,このビームのうち強度Imax(W)e-2を有する一側部の点から,その対向する側の強度Imax(W)e-2を有する点までの,幅方向における直線距離で定義される。ここでeはオイラーの無理数である。 ・・・(中略)・・・ 【0061】 同様に,図5は,本発明の別の実施の形態によるレーザビームの,長さ(x軸)に沿ったフラットトップモードの分布プロファイルを概略的に示したものである。) オ.「 [0082] In certain embodiments, the laser beam may move along the scoreline relative to the surface of the sheet to be scored, where the exposed area of the surface of the sheet is the total area the laser beam has covered during the laser travel.・・・(中略)・・・ [0084] The high scoring speed is enabled by, inter alia, the long length of the laser beam, the high aspect ratio, and the precise control of the laser intensity distribution in both the length and width directions of the laser beam.」 (【0072】 特定の実施形態においては,レーザビームを罫書き対象のシートの表面に対して罫書き線に沿って動かしてもよく,このときシート表面の露出領域は,レーザの移動中にレーザビームが及んだ全ての領域となる。・・・・・(中略)・・・・・ 【0074】 高速の罫書き速度は,とりわけ,レーザビームの長さが長いこと,高アスペクト比,およびレーザビームの長さ方向および幅方向の両方におけるレーザ強度分布を正確に制御することにより可能となる。) カ.FIG.1には,一般的なレーザ罫書きが図示されている。 キ.FIG.2には,光学アセンブリにより変形されたレーザビームの幅W(LB)及び長さL(LB)が図示されている。 ク.FIG.5には,レーザビームの強度分布がビーム長L(LB)の方向で一様となっていることが図示されている。 ケ.刊行物1発明 上記イ.に示す,第2の態様に係る装置での円形レーザビームは,エネルギー分布が「Sモード」であるところ,上記ウ.に示す記載からみて,Sモードでのエネルギー強度分布がガウス分布であると理解できる。 また,上記イ.に示す,第2の態様に係る装置は,円形レーザビームを光学アセンブリにより,幅W(LB)および長さL(LB)の細長いレーザビームに変形しているところ,「本発明の第2の態様によれば,ガラスシートをこのガラスシート表面内の本質的に直線状の罫書き線に沿って分割するための装置が提供され」(上記イ.)という記載や,「本発明はガラスシートなどの無機シート材料の,レーザ加熱を使用した切断に関する。本発明は,とりわけLCDガラス基板の精密罫書きに有用である」(上記ア.)という記載,並びに上記カ.及びキ.に示す図示からみて,細長いレーザビームの幅W(LB)は,LCDガラス基板の罫書き線と直交する方向の幅であり,長さL(LB)は,LCDガラス基板の罫書き線に沿った方向の長さであると理解できる。 また,「光学アセンブリ(B)は,円形レーザビームの寸法をW(LB)方向において減少させるよう適合された第1レンズ,および,(a)ビームの寸法をL(LB)方向において増加させかつ(b)L(LB)方向におけるエネルギー分布のプロファイルをSモードからフラットトップモードに変換させるよう適合された第2レンズ,を含む」(上記イ.)という記載や,「第1レンズは集中性のシリンドリカルレンズであり,かつ第2レンズは発散性の変形シリンドリカルレンズである」(上記イ.)という記載から,細長いレーザビームの幅W(LB)は,第1レンズにより変換され,細長いレーザビームの長さL(LB)は,発散性の変形シリンドリカルレンズである第2レンズにより変換され,当該第2レンズは,ガウス分布のSモードをフラットトップモードに変換することを理解できる。また,第2レンズが,LCDガラス基板からの所定の位置及び光軸と直交する方向の所定の位置に配置されていることは,技術常識からみて明らかである。 そして,「図5は,本発明の別の実施の形態によるレーザビームの,長さ(x軸)に沿ったフラットトップモードの分布プロファイルを概略的に示したものである」(上記エ.)という記載や,上記ク.の図示からみて,フラットトップモードでは,ビーム長さL(LB)方向の強度分布が一様であることを理解できる。 さらに,「本発明の第2の態様による装置の第1の実施形態において,この装置は,(C)シート表面の細長いレーザビームに露出される領域に,冷却流体流を送出するよう適合されたノズル,をさらに含む」(上記イ.)という記載からみて,第2の態様に係る装置は,LCDガラス基板におけるレーザビームに露出される領域を冷却するノズルを備えることが示されているといえる。 以上の開示や,図面の図示を,技術常識を踏まえて整理すると,刊行物1には以下の発明(以下「刊行物1発明」という。)が開示されていると認められる。 「レーザビームを罫書き予定ラインに沿って照射し,LCDガラス基板の表面に罫書き線を形成する装置であって, ガウス分布を有する円形レーザビームを生成するレーザ発生器と, 前記罫書き予定ラインと直交する方向のビーム幅W(LB)を変換させる第1レンズと, 前記罫書き予定ラインとに沿った方向のビーム長さL(LB)を変換させる第2レンズと, LCDガラス基板におけるレーザビームに露出される領域を冷却するノズルと, を備え, 第2レンズは,前記LCDガラス基板からの位置及び光軸と直交する方向の位置を所定の位置にしたときに,入射されたガウス分布を有するレーザビームの強度分布を,LCDガラス基板上においてビーム長さL(LB)方向で一様にする発散性の変形シリンドリカルレンズである, 装置。」 (2)刊行物2の記載事項及び刊行物2事項 平成27年3月11日付け拒絶理由通知で引用した,本願出願前に頒布された刊行物である特開2010-162583号公報には,以下の技術的事項が記載されている。 ア.「【0001】 本発明は,電子部品などとプリント配線板など(以下,被加工物という)にはんだ付けを行う際に,被加工物の一部を加熱するレーザはんだ付けにおける調整方法,およびレーザはんだ付け装置に関するものである。」 イ.「【0039】 図3(b)に示す構成例では,焦点距離200mmのシリンドリカルレンズ10aと焦点距離150mmのシリンドリカルレンズ10cからなる構成の第2の光学系10を用いている。 【0040】 このときシリンドリカルレンズ10aの母線とシリンドリカルレンズ10cの母線が直交するように配置する。第2の光学系10の全体をZ軸方向(矢印C)に駆動する手段(図示せず)によって,被加工物3との距離を変化させることにより,レーザ光Lの照射形状を変化させ,なおかつシリンドリカルレンズ10aとシリンドリカルレンズ10cとの間隔(矢印D方向)を変化させる駆動手段(図示せず)を設けることにより,被加工物3上のレーザ光の照射形状S2は,1~10mm(x方向)×1~10mm(y方向)の大きさに変化させることができ,被加工物3の形状や熱容量に合わせた,レーザ光の照射形状にすることを可能にした。」 ウ.図3(b)には,第2の光学系全体をZ軸方向に駆動すること,シリンドリカルレンズ10aとシリンドリカルレンズ10cとの間隔を変化させること,及びZ軸が光軸方向であることが図示されている。 エ.刊行物2事項 刊行物2の記載事項を,技術常識を踏まえて整理すると,刊行物2には,以下の技術的事項(以下「刊行物2事項」という。)が記載されていると認められる。 「レーザはんだ付け装置に関して,シリンドリカルレンズ10aとシリンドリカルレンズ10cからなる光学系10の全体を光軸方向に駆動することや,シリンドリカルレンズ10aとシリンドリカルレンズ10cとの間隔を変化させることにより,レーザ光Lの照射形状を変化させること。」 4.対比 本願発明と刊行物1発明とを対比すると,刊行物1発明の「罫書き予定ライン」が本願発明の「スクライブ予定ライン」に相当することは明らかであり,以下同様に,「LCDガラス基板」が「脆性材料基板」に相当し,「装置」が「レーザ加工装置」に相当し,「ガウス分布を有する円形レーザビーム」が「ガウス型の強度分布を有するレーザビーム」に相当し,「生成する」が「出射する」に相当し,「レーザ発生器」が「レーザビーム出射装置」に相当し,「ビーム幅W(LB)」が「ビーム幅」に相当し,「変換させる」ことが「制御する」ことに相当し,「第1レンズ」が「第1レンズ」に相当し,「ビーム長さL」が「ビーム長さ」に相当し,「第2レンズ」が「第2レンズ」に相当し,「レーザビームに露出される領域」が「レーザビームによって加熱された領域」に相当し,「ノズル」が「冷却装置」に相当する。 また,本願発明における「前記第1レンズ及び前記第2レンズの少なくとも一方は,前記脆性材料基板からの位置及び光軸と直交する方向の位置を所定の位置にしたときに,入射されたガウス型の強度分布を有するレーザビームの強度分布を,脆性材料基板上においてビーム幅方向あるいはビーム長さ方向で一様にする非球面シリンドルカルレンズ」であるという事項は,「前記第2レンズは,前記脆性材料基板からの位置及び光軸と直交する方向の位置を所定の位置にしたときに,入射されたガウス型の強度分布を有するレーザビームの強度分布を,脆性材料基板上においてビーム長さ方向で一様にする非球面シリンドルカルレンズ」であることを包含しているところ,刊行物1発明における「第2レンズは,前記LCDガラス基板からの位置及び光軸と直交する方向の位置を所定の位置にしたときに,入射されたガウス分布を有するレーザビームの強度分布を,LCDガラス基板上においてビーム長さL(LB)方向で一様にする発散性の変形シリンドリカルレンズ」であることは,本願発明に包含されている「前記第2レンズは,前記脆性材料基板からの位置及び光軸と直交する方向の位置を所定の位置にしたときに,入射されたガウス型の強度分布を有するレーザビームの強度分布を,脆性材料基板上においてビーム長さ方向で一様にする非球面シリンドルカルレンズ」であることに相当する。 以上から,本願発明と刊行物1発明とは,以下の点で一致及び相違する。 <一致点> 「レーザビームをスクライブ予定ラインに沿って照射し,脆性材料基板の表面にスクライブ溝を形成するレーザ加工装置であって, ガウス型の強度分布を有するレーザビームを出射するレーザビーム出射装置と, 前記スクライブ予定ラインと直交する方向のビーム幅を制御する第1レンズと, 前記スクライブ予定ラインに沿った方向のビーム長さを制御する第2レンズと, 脆性材料基板における前記レーザビームによって加熱された領域を冷却する冷却装置と, を備え, 前記第2レンズは,前記脆性材料基板からの位置及び光軸と直交する方向の位置を所定の位置にしたときに,入射されたガウス型の強度分布を有するレーザビームの強度分布を,脆性材料基板上においてビーム長さ方向で一様にする非球面シリンドルカルレンズである, レーザ加工装置。」 <相違点1> 本願発明は,「加工される脆性材料基板が載置されるテーブル」と,「レーザビーム及び前記冷却装置を,前記テーブルに載置された脆性材料基板に対して相対的に走査するための走査機構」を備えているのに対して,刊行物1発明は,そのようなテーブルや走査機構を備えているかどうか不明な点。 <相違点2> 本願発明は,「前記非球面シリンドリカルレンズを光軸に沿った方向に移動する移動機構,及び前記非球面シリンドリカルレンズを光軸と直交する方向に移動するシフト機構の少なくとも一方をさらに備える」ものであるのに対して,刊行物1発明は,そのような移動機構やシフト機構を備えているかどうか不明な点。 5.相違点についての検討及び判断 (1)相違点1について 刊行物1には,「レーザビームを罫書き対象のシートの表面に対して罫書き線に沿って動かしてもよく」(上記3.(1)オ.)と記載されており,刊行物1発明のレーザビームを脆性材料基板に対して相対的に走査することが示唆されている。 そして,脆性材料基板の表面にスクライブ溝を形成するレーザ加工装置において,脆性材料基板が載置されるテーブルを備えることや,レーザビーム及び冷却装置を,テーブルに載置された脆性材料基板に対して相対的に走査するための走査機構を備えることは,例えば,平成27年3月11日付け拒絶理由通知で提示した,特開2011-67856号公報の段落【0017】,【0029】及び【0030】に示すように,従来周知の技術的事項であるから,刊行物1発明のレーザビームを脆性材料基板に対して相対的に走査するために,従来周知の技術的事項であるテーブルや走査機構を刊行物1発明の装置に付加することは,当業者が容易に想到できた事項である。 (2)相違点2について 刊行物1には,「高速の罫書き速度は,とりわけ,レーザビームの長さが長いこと,高アスペクト比,およびレーザビームの長さ方向および幅方向の両方におけるレーザ強度分布を正確に制御することにより可能となる」(上記3.(1)オ.)との記載があるところ,当該記載のアスペクト比は,レーザビームの幅と長さの比率を意味するから,当該記載は,レーザビームの幅と長さで決定される形状を正確に制御する必要性を示唆しているといえる。 そして,刊行物2事項は,「レーザはんだ付け装置に関して,シリンドリカルレンズ10aとシリンドリカルレンズ10cからなる光学系10の全体を光軸方向に駆動することや,シリンドリカルレンズ10aとシリンドリカルレンズ10cとの間隔を変化させることにより,レーザ光Lの照射形状を変化させること。」というものであり,レーザビームの形状を変化させる具体的手段として,シリンドリカルレンズを含む光学系全体を光軸方向に駆動することや,シリンドリカルレンズの間隔を変化させることが示されている。 刊行物2事項は,レーザはんだ付け装置に関する事項ではあるものの,レーザはんだ付け装置は,被加工物にレーザビームを照射して加熱することではんだ付けを行う装置であるから,レーザビームにより脆性材料を加熱する刊行物1発明の装置と,レーザビームを照射して加熱する技術という点で技術的な共通性があるといえるため,刊行物2事項に接した当業者であれば,はんだ付け装置以外にも,レーザビームを照射して加熱する技術に対して,そのレーザビームの形状を変化させる手段である刊行物2事項の適用を行うことに特段の支障はないといえる。 したがって,刊行物1における,レーザビームの形状を制御する必要性の示唆に基づいて,刊行物1発明の装置のレーザビームの形状を変化させるにあたり,刊行物2事項の適用を試みて,刊行物1発明の装置に,非球面シリンドリカルレンズを光軸に沿った方向に移動する移動機構を付加することは,当業者が容易に想到できた事項である。 (3)作用効果について 相違点1及び2を総合的に勘案しても,刊行物1発明,刊行物2事項及び従来周知の技術的事項から予測できない格別な効果が生じるとはいえない。 6.むすび したがって,本願発明は,刊行物1発明,刊行物2事項及び従来周知の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,本願は拒絶すべきものである。 よって,結論のとおり審決する。

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2016-000669

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  • 2025-013036拒絶査定不服審判 / 2026-08-18 / 原査定取消(特許/登録すべき)加工システム及び検査システム
    共通の審決分類: 121・B23K
  • 2025-013484拒絶査定不服審判 / 2026-07-21 / 原査定取消(特許/登録すべき)はんだ合金、ソルダペースト、プリント回路基板及び電子制御装置
    共通の審決分類: 121・B23K

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