特許異議申立
2015-700320
酸性染毛料組成物及びそれを用いた染毛方法
- 審判番号
- 2015-700320
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2010-157050
- 登録番号
- 特許第5737877号(P5737877)
- 請求日
- 2015年12月17日
- 審決日
- 2017年01月31日
- 公報発行日
- 2017年05月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ホーユー株式会社
- 【権利者代理人】恩田 誠
- 【権利者代理人】恩田 博宣
- 【異議申立人】山下 桂
- 審判長/審判官
- 審判長 大熊 幸治
- 審判官 関 美祝
- 審判官 須藤 康洋
- 分類
- P1651.113-YAA(A61K) / P1651.121-YAA(A61K) / P1651.536-YAA(A61K) / P1651.537-YAA(A61K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第2項第3号、特許法第120条の5第2項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5737877号発明「酸性染毛料組成物及びそれを用いた染毛方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第5737877号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-7〕について訂正することを認める。
特許第5737877号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
1 手続の経緯
特許第5737877号に係る発明は、平成22年7月9日に特許出願され、平成27年5月1日にその特許権の設定登録がなされ、平成27年12月17日に特許異議申立人 山下桂(以下、「申立人」という。)より特許異議の申立てがなされたものである。そして、その後の経緯は以下のとおりである。
平成28年 2月10日付け:取消理由の通知
同年 5月 9日 :訂正の請求、意見書の提出
同年 6月 1日付け:訂正拒絶理由の通知
同年 7月 6日 :意見書の提出
同年 7月22日付け:取消理由(決定の予告)の通知
同年 9月23日 :訂正の請求、意見書の提出
同年12月16日 :特許異議申立人による意見書の提出
2 訂正の適否についての判断
(1)訂正前後の記載
本件訂正請求は、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1-7について訂正することを求めるものであるところ、一群の請求項〔1-7〕ごとに請求するものであるから、特許法第120条の5第4項の規定に適合して請求されたものである。
(2)訂正の内容
平成28年9月23日に提出された本件訂正請求(以下、「本件請求」という。)による訂正の内容は以下のア、イのとおりである。
ア 特許請求の範囲【請求項1】の「下記の成分(A)~(C)を含有し、酸性染毛料組成物の10質量%水溶液のpHが4~6であり、かつ、染毛後の毛髪のpHが5.5~6であることを特徴とする酸性染毛料組成物。
(A)イオン性水溶性高分子化合物1.5~4.5質量%。
(B)有機酸とその塩、及び無機酸とその塩から選ばれる少なくとも一種として構成される緩衝剤0.005~1.5質量%。
(C)酸性染料。」を、
「下記の成分(A)~(C)を含有し、酸性染毛料組成物の10質量%水溶液のpHが4~6であり、かつ、前処理を行っていないpH5.5~6の人毛毛束を染毛処理した場合、染毛後の毛髪のpHが5.5~6である(但し、酸性染毛料組成物がアロエエキス及びモモ葉エキスを併せて配合している場合、又は酸性染毛料組成物の成分(C)が赤色504号及び橙色205号のみからなる場合を除く。)ことを特徴とする酸性染毛料組成物。
(A)イオン性水溶性高分子化合物1.5~4.5質量%。
(B)有機酸とその塩、及び無機酸とその塩から選ばれる少なくとも一種として構成される緩衝剤0.005~1.5質量%。
(C)酸性染料。」に訂正する。
イ 明細書【0007】の「上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明の酸性染毛料組成物は、(A)イオン性水溶性高分子化合物1.5~4.5質量%、(B)有機酸とその塩、及び無機酸とその塩から選ばれる少なくとも一種として構成される緩衝剤0.005~1.5質量%、及び(C)酸性染料を含有し、酸性染毛料組成物の10質量%水溶液のpHが4~6であり、かつ、染毛後の毛髪のpHが5.5~6であることを特徴とする。」を、
「上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明の酸性染毛料組成物は、(A)イオン性水溶性高分子化合物1.5~4.5質量%、(B)有機酸とその塩、及び無機酸とその塩から選ばれる少なくとも一種として構成される緩衝剤0.005~1.5質量%、及び(C)酸性染料を含有し、酸性染毛料組成物の10質量%水溶液のpHが4~6であり、かつ、前処理を行っていないpH5.5~6の人毛毛束を染毛処理した場合、染毛後の毛髪のpHが5.5~6である(但し、酸性染毛料組成物がアロエエキス及びモモ葉エキスを併せて配合している場合、又は酸性染毛料組成物の成分(C)が赤色504号及び橙色205号のみからなる場合を除く。)ことを特徴とする。」に訂正する。
(3)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア 訂正事項アのうち「前処理を行っていないpH5.5~6の人毛毛束を染毛処理した場合、染毛後の毛髪のpHが5.5~6である」点(以下、「訂正事項ア1」という。)について検討する。
訂正事項ア1は、染毛前のpHを特定することによる、その明瞭でない記載の釈明を目的とするものと認められる。
そして、本件明細書には「酸性染毛料組成物のpHは、酸性染毛料組成物の10質量%水溶液のpHが4~6である。酸性染毛料組成物のpHをかかる範囲内に規定することにより、染毛後の毛髪内部のpHを本来の毛髪のpHである弱酸性領域、つまり5.5~6の範囲に維持することができる。」(【0024】 注:下線は当審が付した。)、「表1,2に示される各成分を混合して各実施例及び比較例の酸性染毛料組成物を調製した。得られた酸性染毛料組成物を白髪混じりの人毛毛束に刷毛を用いて塗布し、40℃で20分放置した後、通常のシャンプーにて洗浄し、次いで乾燥させることにより染毛処理毛束とした。かかる染毛処理毛束について、染毛処理後の毛髪内部のpH及び毛髪の感触について評価を行った。」(【0060】)と記載されており、また、【表1】には、染毛後の毛髪内部のpHとして5.6~5.9の値が記載されている。これらの記載から、酸性染毛料組成物による処理前の毛髪のpH、すなわち本来の毛髪のpHは5.5~6の範囲にあり、処理後の毛髪のpHは5.6~5.9、すなわち5.5~6の範囲にあるものといえる。そうすると、訂正事項ア1は、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものといえる。
このため、訂正事項ア1は、特許法第120条の5第2項第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
イ 訂正事項アのうち「(但し、酸性染毛料組成物がアロエエキス及びモモ葉エキスを併せて配合している場合、又は酸性染毛料組成物の成分(C)が赤色504号及び橙色205号のみからなる場合を除く。)」点(以下、「訂正事項ア2」という。)について検討する。
訂正事項ア2は、請求項1に記載した事項の記載表現を残したままで、請求項1に係る発明に包含される一部の事項のみを除外するものである。そして、この除外された後の請求項1は、新たな技術的事項を導入するものではない。そして、訂正事項ア2は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものといえる。
このため、訂正事項ア2は、特許法第120条の5第2項第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 訂正事項イについて検討する。
訂正事項イは、訂正事項アに対応する明細書の当該箇所を、訂正事項アと同様に訂正するものである。
このため、訂正事項イは、特許法第120条の5第2項第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
エ 訂正事項ア及びイは、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことは明らかであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
(4)むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第4項ないし第6項の規定に適合するので、本件請求による訂正を認める。
3 本件発明
本件請求により訂正された訂正請求項1~7に係る発明(以下、「本件発明1」~「本件発明7」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~7に記載された以下の事項によって特定されるとおりのものである。
【請求項1】
「下記の成分(A)~(C)を含有し、酸性染毛料組成物の10質量%水溶液のpHが4~6であり、かつ、前処理を行っていないpH5.5~6の人毛毛束を染毛処理した場合、染毛後の毛髪のpHが5.5~6である(但し、酸性染毛料組成物がアロエエキス及びモモ葉エキスを併せて配合している場合、又は酸性染毛料組成物の成分(C)が赤色504号及び橙色205号のみからなる場合を除く。)ことを特徴とする酸性染毛料組成物。
(A)イオン性水溶性高分子化合物1.5~4.5質量%。
(B)有機酸とその塩、及び無機酸とその塩から選ばれる少なくとも一種として構成される緩衝剤0.005~1.5質量%。
(C)酸性染料。」
【請求項2】
「前記有機酸は、酢酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、グリコール酸、及びピロリドンカルボン酸から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載の酸性染毛料組成物。」
【請求項3】
「前記酸性染毛料組成物中における前記(B)緩衝剤の含有量に対する前記(A)イオン性水溶性高分子化合物の含有量の質量比は、1~750であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の酸性染毛料組成物。」
【請求項4】
「請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の酸性染毛料組成物を用いた染毛方法において、
前記酸性染毛料組成物で染毛処理した後、酸化染料を含有する酸化染毛剤で染毛処理することを特徴とする染毛方法。」
【請求項5】
「前記酸化染毛剤は、酸化染毛剤の10質量%水溶液のpHが7~9.5であることを特徴とする請求項4に記載の染毛方法。」
【請求項6】
「請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の酸性染毛料組成物を用いた染毛方法において、
酸化染料を含有する酸化染毛剤で染毛処理した後、前記酸性染毛料組成物で染毛処理することを特徴とする染毛方法。」
【請求項7】
「前記酸化染毛剤は、酸化染毛剤の10質量%水溶液のpHが7~9.5であることを特徴とする請求項6に記載の染毛方法。」
4 取消理由についての判断
(1)取消理由通知の概要
当審は平成28年7月22日付け取消理由(決定の予告)において、平成28年5月9日に提出された訂正請求書による訂正は認められない旨を通知し、併せて概要以下のとおりの取消理由を通知した。
「本件発明1~7の特許は、特許法第36条第6項第2号、同条同項第1号及び同条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものであり、本件発明1~3の特許は、刊行物1に記載された発明であり同法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
刊行物1:特開2000-344639号公報(甲第1号証)」
(2)取消理由(特許法第36条第6項第2号)についての当審の判断
上記2(2)アで検討したとおり、「染毛後の毛髪のpHが5.5~6である」との規定が「前処理を行っていないpH5.5~6の人毛毛束を染毛処理した場合、染毛後の毛髪のpHが5.5~6である」と訂正されたことにより、染毛前の毛髪のpHが明らかとなった。
そうすると、本件発明1~3、及びこれらのいずれかを引用する本件発明4~7は、特許法第36条第6項第2号の規定を満たすものといえる。
(3)取消理由(特許法第36条第6項第1号)についての当審の判断
本件発明1~3は、係る酸性染毛料組成物において、「前処理を行っていないpH5.5~6の人毛毛束を染毛処理した場合、染毛後の毛髪のpHが5.5~6である」(以下、「訂正特定事項」ということがある。)と特定されたものであるから、訂正特定事項以外の特定事項に関わらず、訂正特定事項が明らかなものである。そして、試験例1~3で使用されている実施例17の酸性染毛料組成物について、本件発明1~3によって、当業者が本件発明1~3の解決しようとする課題である、「酸性染料を含有する酸性染毛料組成物において、毛髪のpH変化に伴う感触の低下及び酸化染毛剤の色調の変色を抑制することができる酸性染毛料組成物を提供すること」(【0006】)を解決すると認識することができるものといえるから、本件発明の詳細な説明の記載から、本件発明1によって、当業者が上記課題を解決できると認識できるものといえる。
そうすると、本件発明1~3、及びこれらのいずれかを引用する本件発明4~7は、特許法第36条第6項第1号の規定を満たすものといえる。
(4)取消理由(特許法第36条第4項第1号)についての当審の判断
上記(3)で検討したとおり、本件発明1~3は、係る酸性染毛料組成物において、訂正特定事項のとおり特定されたものであるから、訂正特定事項以外の特定事項に関わらず、訂正特定事項が明らかなものである。
そうすると、当業者が本件発明1~7を実施するのには過度の試行錯誤を要するとはいえない。
よって、本件の発明の詳細な説明は、特許法第36条第4項第1号の規定を満たすものといえる。
(5)取消理由(特許法第29条第1項第3号)についての当審の判断
ア 甲第1号証(刊行物1)に記載された事項
(ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 (A)下記一般式(1)で示される芳香族アルコール類及びn-ブタノールから選ばれる少なくとも1種以上である染毛助剤と、(B)酸性染料と、(C)水とを含有し、pHが2.0~4.5であることを特徴とする濡れ髪用酸性染毛料。
【化1】
(式中、R1は水素原子、メチル基又はメトキシ基を示し、Xは単結合又は炭素数1~3の直鎖もしくは分岐鎖のアルキレン基もしくはアルケニレン基を示し、Yは水素原子又は水酸基を示し、m及びnは各々0~5の整数である。)
…
【請求項4】 (D)である(A)の溶剤がエタノールである請求項2又は3に記載の濡れ髪用酸性染毛料。
【請求項5】 (A)染毛助剤が、ベンジルアルコール、2-ベンジルオキシエタノール、n-ブタノールからなる群より選ばれる少なくとも1種以上である請求項4に記載の濡れ髪用酸性染毛料。
…」
(イ)「【0019】本発明に用いられる酸性染料としてはタール系色素が用いられ、化学構造から大別すると、ニトロ染料、アゾ染料、ニトロソ染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料、キノリン染料、アントラキノン染料、インジゴ染料が挙げられ、例えば、赤色2号、赤色3号、赤色102号、赤色104号、赤色105号、赤色106号、黄色4号、黄色5号、緑色3号、青色1号、青色2号、赤色201号、赤色227号、赤色220号、赤色230号、赤色231号、赤色232号、橙色205号、橙色207号、黄色202号、黄色203号、緑色201号、緑色204号、緑色205号、青色202号、青色203号、青色205号、褐色201号、赤色401号、赤色502号、赤色503号、赤色504号、赤色506号、橙色402号、黄色402号、黄色403号、黄色406号、黄色407号、緑色401号、緑色402号、紫色401号、黒色401号が挙げられる。酸性色素の本発明に係る染毛剤への配合量は0.2~2.0質量%が望ましい。尚、これら酸性染料は1種又は2種以上を混合して用いることができる」
(ウ)「【0023】本発明に係る濡れ髪用酸性染毛料は酸性であることが主に染毛性の点から必要である。特に、望ましくは、そのままで、又は酸及び必要に応じてその塩類を用いてpHを2.0~4.5に調整することが染毛性の点から必要である。その際、使用される酸としては、クエン酸、乳酸、グリコール酸、酒石酸、酢酸、プロピオン酸、サリチル酸、リンゴ酸、酪酸、コハク酸、グルコン酸等の有機酸又は、塩酸、リン酸等の無機酸の1種もしくは2種以上を任意に用いることができ、更に、必要に応じてそれら酸のナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、トリエタノールアミン塩等の塩類を用いることができる。そして、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水等のアルカリ一種もしくは二種以上を任意に用いることでpHを調整することもできる。それら酸及びその塩類の本発明に係る染毛剤の配合量は、刺激等の面より10.0質量%以下が望ましい。
【0024】pHを調整する際には、弱酸とその塩との組み合わせのような公知の緩衝剤を用いると良い。その時には、頭髪への塗布等によるpH変動を極力抑止するためにも緩衝能は一定値(例えば、0.01グラム当量/l)以上とすることが望ましい。」
(エ)「【0025】本発明の濡れ髪用酸性染毛料には、更に水溶性高分子を配合することができる。水溶性高分子は、染毛剤に粘性を与えることにより、染毛剤を毛髪に塗布し易くするとともに、使用時に染毛剤が皮膚等に垂れ落ちないようにすることを目的として配合されるものであり、その目的を達成する範囲で特に限定されるものではなく、水溶性高分子全般を用いることができるが、例えば、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カチオン化セルロース等のセルロース系高分子、キサンタンガム、グアーガム等の天然多糖類を挙げることができる。更に、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体等のアクリル系共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の合成高分子も挙げられ、これらの中から任意に選択される。また2種以上を組み合わせて用いることができる。水溶性高分子の本発明に係る濡れ髪用酸性染毛料への配合量は0.1~10.0質量%が望ましい。」
(オ)「【0039】
実施例10(ヘアマニキュア)
配合成分 配合量(質量%)
ベンジルアルコール 8.0
フェノキシエタノール 1.0
ジプロピレングリコール 5.0
アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体 1.0
(PEMULEN TR-1)
キサンタンガム 1.2
高重合メチルポリシロキサン 0.2
(5,000,000cs)
高重合メチルポリシロキサン 0.5
(100,000cs)
軽質流動パラフィン 5.0
エデト酸二ナトリウム 0.02
エタノール 24.0
クエン酸 1.0
トリエタノールアミン 適量
赤色504号 0.25
橙色205号 0.05
精製水 バランス
【0040】常法により、上記組成の濡れ髪用酸性染毛料であるヘアマニキュアを調製し(pH4.0)、頭髪を予め水で濡らした後、この染毛剤を塗布し、室温(30℃)で20分間放置後洗い流し、頭髪を乾燥して染毛性及び皮膚染着性を評価した結果、いずれの特性も優れていた。」
(カ)「【0053】
実施例17(ヘアマニキュア)
配合成分 配合量(質量%)
ベンジルアルコール 8.0
n-ブタノール 1.0
ジプロピレングリコール 5.0
アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体 1.0
(PEMULEN TR-1)
キサンタンガム 1.2
高重合メチルポリシロキサン 0.2
(20,000,000cs)
メチルポリシロキサン 2.0
(20cs)
軽質流動イソパラフィン 5.0
エデト酸二ナトリウム 0.02
エタノール 24.0
乳酸 1.0
水酸化ナトリウム 適量
シリル化加水分解ケラチン 0.05
シリル化加水分解シルク 0.05
加水分解コンキオリン 0.05
ハマメリスエキス 0.05
アロエエキス 0.05
モモ葉エキス 0.05
赤色227号 0.05
黄色4号 0.15
精製水 バランス
【0054】常法により、上記組成の濡れ髪用酸性染毛料であるヘアマニキュアを調製し(pH4.0)、頭髪を予め水で濡らした後、この染毛剤を塗布し、室温(30℃)で20分間放置後洗い流し、頭髪を乾燥して染毛性及び皮膚染着性を評価した結果、いずれの特性も優れていた。」
イ 甲第1号証に記載された発明
甲第1号証には、濡れ髪用酸性染毛料(上記ア(ア))の実施例10(上記ア(オ))として、「ベンジルアルコール 8.0、フェノキシエタノール 1.0、ジプロピレングリコール 5.0、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体(PEMULEN TR-1) 1.0、キサンタンガム 1.2、高重合メチルポリシロキサン(5,000,000cs) 0.2、高重合メチルポリシロキサン(100,000cs) 0.5、軽質流動パラフィン 5.0、エデト酸二ナトリウム 0.02、エタノール 24.0、クエン酸 1.0、トリエタノールアミン 適量、赤色504号 0.25、橙色205号 0.05、精製水 バランスからなり、pH4.0であるヘアマニュキュア」の発明(以下、「引用発明1A」という。)が記載されている。(各成分の配合量は質量%である。)
また、刊行物1には、濡れ髪用酸性染毛料(上記ア(ア))の実施例17(上記ア(カ))として、「ベンジルアルコール 8.0、n-ブタノール 1.0、ジプロピレングリコール 5.0、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体(PEMULEN TR-1) 1.0、キサンタンガム 1.2、高重合メチルポリシロキサン(20,000,000cs) 0.2、メチルポリシロキサン(20cs) 2.0、軽質流動イソパラフィン 5.0、エデト酸二ナトリウム 0.02、エタノール 24.0、乳酸 1.0、水酸化ナトリウム 適量、シリル化加水分解ケラチン 0.05、シリル化加水分解シルク 0.05、加水分解コンキオリン 0.05、ハマメリスエキス 0.05、アロエエキス 0.05、モモ葉エキス 0.05、赤色227号 0.05、黄色4号 0.15、精製水 バランスからなり、pH4.0であるヘアマニュキュア」の発明(以下、「引用発明1B」という。)も記載されている。(各成分の配合量は質量%である。)
ウ 引用発明1Aに基づく対比・判断
(ア)本件発明1と引用発明1Aとを対比する。
引用発明1Aの「アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体(PEMULEN TR-1)」及び「キサンタンガム」(合計2.2質量%)が、いずれも水溶性高分子として配合されていること(上記ア(エ))、「PEMULEN TR-1」はアニオン性合成高分子であるのは技術常識であること、及び、本件明細書【0015】でイオン性水溶性高分子としてキサンタンガムが例示されていることからみて、本件発明1の「(A)イオン性水溶性高分子」(「1.5~4.5質量%」)に相当する。
そして、引用発明1Aが、「ベンジルアルコール」、「フェノキシエタノール」、「ジプロピレングリコール」「高重合メチルポリシロキサン(5,000,000cs)」、「高重合メチルポリシロキサン(100,000cs)」、「軽質流動パラフィン」、「エデト酸二ナトリウム」、「エタノール」、「精製水」を含有することは、本件発明1が成分(A)~(C)以外の浸透促進剤、有機溶剤などの種々の成分を含有してもよいものであることからみて(本件明細書【0014】、【0022】~【0038】)、本件発明1との相違点とはならない。
そうすると、本件発明1と引用発明1Aとは以下の一致点、相違点を有する。
一致点:
「下記の成分(A)を含有することを特徴とする酸性染毛料組成物。
(A)イオン性水溶性高分子化合物1.5~4.5質量%。」
相違点:
a 前者の酸性染毛料組成物は「酸性染毛料組成物の10質量%水溶液のpHが4~6であり」、かつ、「前処理を行っていないpH5.5~6の人毛毛束を染毛処理した場合、染毛後の毛髪のpHが5.5~6である」のに対し、後者の酸性染毛料は「pH4.0」であり、染毛処理前後の毛髪のpHが明らかでない点。
b 前者の酸性染毛料組成物は「(B)有機酸とその塩、及び無機酸とその塩から選ばれる少なくとも一種として構成される緩衝剤0.005~1.5質量%」含有するのに対し、後者の酸性染毛料は「クエン酸 1.0、トリエタノールアミン 適量」含有するものである点。
c 「(C)酸性染料」において、前者の酸性染毛料組成物は「(但し、酸性染毛料組成物がアロエエキス及びモモ葉エキスを併せて配合している場合、又は酸性染毛料組成物の成分(C)が赤色504号及び橙色205号のみからなる場合を除く。)」ものであるのに対し、後者の酸性染毛料は「赤色504号」及び「橙色205号」を用いている点。
(イ)上記相違点について検討する。
相違点aに関し、引用発明1Aの酸性染毛料のpHは4.0であるところ、これが10質量%水溶液のpHにおいて「4~6」であるかは明らかでない。仮にそうであるとしても、引用発明1Aに係る酸性染毛料が「前処理を行っていないpH5.5~6の人毛毛束を染毛処理した場合、染毛後の毛髪のpHが5.5~6である」ことを満たすものとなるかは明らかでない。
このため、本件発明1は引用発明1Aと同一であるということはできない。
エ 引用発明1Bに基づく対比・判断
(ア)本件発明1と引用発明1Bとを対比する。
引用発明1Bの「アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体(PEMULEN TR-1)」及び「キサンタンガム」(合計2.2質量%)が、いずれも水溶性高分子として配合されていること(上記ア(エ))、「PEMULEN TR-1」はアニオン性合成高分子であるのは技術常識であること、及び、本件明細書【0015】でイオン性水溶性高分子としてキサンタンガムが例示されていることからみて、本件発明1の「(A)イオン性水溶性高分子」(「1.5~4.5質量%」)に相当する。
引用発明1Bの「赤色227号」及び「黄色4号」は、本件発明1の「(C)酸性染料」に相当する。
そして、引用発明1Bが、「ベンジルアルコール」、「n-ブタノール」、「ジプロピレングリコール」、「高重合メチルポリシロキサン(20,000,000cs)」、「メチルポリシロキサン(20cs)」、「軽質流動イソパラフィン」、「エデト酸二ナトリウム」、「エタノール」、「シリル化加水分解ケラチン」、「シリル化加水分解シルク」、「加水分解コンキオリン」、「ハマメリスエキス」、「精製水」を含有することは、本件発明1が成分(A)~(C)以外の浸透促進剤、有機溶剤、植物抽出物などの種々の成分を含有してもよいものであることからみて(本件明細書【0014】、【0022】~【0038】)、本件発明1との相違点とはならない。
そうすると、本件発明1と引用発明1Bとは以下の一致点、相違点を有する。
一致点:
「下記の成分(A)、(C)を含有することを特徴とする酸性染毛料組成物。
(A)イオン性水溶性高分子化合物1.5~4.5質量%。
(C)酸性染料。」
相違点:
a 前者の酸性染毛料組成物は「酸性染毛料組成物の10質量%水溶液のpHが4~6であり」、かつ、「前処理を行っていないpH5.5~6の人毛毛束を染毛処理した場合、染毛後の毛髪のpHが5.5~6である」のに対し、後者の酸性染毛料は「pH4.0」であり、染毛処理前後の毛髪のpHが明らかでない点。
b 前者の酸性染毛料組成物は「(B)有機酸とその塩、及び無機酸とその塩から選ばれる少なくとも一種として構成される緩衝剤0.005~1.5質量%」含有するのに対し、後者の酸性染毛料は「乳酸 1.0、水酸化ナトリウム 適量」含有するものである点。
c 前者の酸性染毛料組成物は「(但し、酸性染毛料組成物がアロエエキス及びモモ葉エキスを併せて配合している場合、又は酸性染毛料組成物の成分(C)が赤色504号及び橙色205号のみからなる場合を除く。)」ものであるのに対し、後者の酸性染毛料組成物はアロエエキス及びモモ葉エキスを併せて配合している点。
(イ)上記相違点に関し、上記ウ(イ)で検討したことと同様、本件発明1は引用発明1Bと同一であるということはできない。
オ 甲第1号証全体に基づく判断
甲第1号証からは、係る酸性染毛料が「前処理を行っていないpH5.5~6の人毛毛束を染毛処理した場合、染毛後の毛髪のpHが5.5~6である」と解しうるような記載ないし示唆を見いだすことができない。
このため、本件発明1は甲第1号証に記載された発明(以下、「甲1発明」ということがある。)と同一であるいうことはできない。
さらに、本件発明2~3は、本件発明1を引用して、さらに規定を加えたものであることに鑑みると、同様に甲1発明と同一であるということはできない。
カ 小括
よって、本件発明1~3は、甲第1号証をもって、特許法第29条第1項第3号に該当する発明とはいえない。
5 異議申立ての理由についての検討
申立人の異議申立ての理由は、概要以下のとおりである。
(理由1:本件発明1~7)
請求項1の「染毛後の毛髪のpHが5.5~6である」との規定に関し、pHとは、水溶液中の水素イオン濃度を表すものであり、「毛髪のpH」とは、発明が不明確である。仮に、「毛髪のpH」が毛髪の抽出液のpHを表すとしても、染毛条件、係る抽出液の作製条件、pHの測定条件等が請求項1に具体的に記載されておらず、発明の内容が不明確である。(以上、「理由1a」という。)
また、「染毛後の毛髪のpHが5.5~6である」とは、酸性染毛料組成物の構成を規定するものであるのか、又は、染毛に供される毛髪の構成を規定するものであるのか理解できず、発明が不明確である。(以上、「理由1b」という。)
(理由2:本件発明1~7)
本件明細書【0060】、【0063】には、「毛髪のpH」について、特定の条件で測定した実施例のみが記載されている。しかし、上述のとおり、請求項1には、染毛条件、係る抽出液の作製条件、pHの測定条件等が具体的に記載されていない。このため、本件発明の詳細な説明に開示された内容を、本件発明1の範囲まで拡張ないし一般化できない。(以上、「理由2a」という。)
また、仮に、「染毛後の毛髪のpHが5.5~6である」が、染毛に供される毛髪の構成を規定するものであれば、染毛に供される毛髪をどのような構成とすれば「染毛後の毛髪のpHが5.5~6である」ようにすることができるのかを発明の詳細な説明の記載から把握することができない。(以上、「理由2b」という。)
仮に、「染毛後の毛髪のpHが5.5~6である」が、酸性染毛料組成物の構成を規定するものであって、酸性染毛料組成物その物自体を意味しているのではないとすれば、本件実施例のみから、他にどのようにすれば「染毛後の毛髪のpHが5.5~6である」酸性染毛料組成物が得られるのかを発明の詳細な説明の記載から把握することができない。(以上、「理由2c」という。)
比較例7の酸性染毛料組成物のpHは3.5、すなわち有効数字1桁ではpH4であり、該組成物は、本件発明1の全ての構成を備えている。しかし、比較例7は、本件発明の効果が得られておらず、本件発明1は、発明の効果を奏さない態様を含むものである。(以上、「理由2d」という。)
(理由3:本件発明1~3)
本件発明1~3は、甲第1号証に記載された発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。(以上、「理由3a」という。)
本件発明1~3は、甲第2号証に記載された発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。(以上、「理由3b」という。)
(理由4:本件発明1~7)
本件発明1~3は、甲第1号証に記載された発明及び周知慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。(以上、「理由4a」という。)
本件発明1~3は、甲第2号証に記載された発明及び周知慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。(以上、「理由4b」という。)
本件発明4~7は、甲第1号証に記載された発明、甲第3号証の記載及び周知慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。(以上、「理由4c」という。)
本件発明4~7は、甲第2号証に記載された発明、甲第3号証の記載及び周知慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。(以上、「理由4d」という。)
<証拠方法>
甲第1号証:特開2000-344639号公報
甲第2号証:特開平7-101841号公報
甲第3号証:特開2005-170838号公報
甲第4号証:特開2003-95896号公報
甲第5号証:特開2002-173418号公報
甲第6号証:特開2002-97121号公報
(1)理由1b、2b、2c、3aについて
理由1b、2b、2c、3aについては、上記4において検討したとおり、これらの理由によって本件発明1~7の特許を取り消すことはできない。
(2)理由1a、2aについて
「毛髪のpH」に関し、申立人が主張するとおり、本件明細書【0063】には特定の条件で測定した実施例が記載されている。そうであれば、本件発明でいう「毛髪のpH」とは係る実施例において記載されたものと解するのが相当である。このため、「毛髪のpH」との規定をもって、発明の内容が不明確であるとはいえず、本件発明の詳細な説明に開示された内容を、本件発明1の範囲まで拡張ないし一般化できないものとはいえず、これらの理由によって本件発明1~7の特許を取り消すことはできない。
(3)理由2dについて
申立人が主張するとおり、pH3.5は有効数字1桁ではpH4となる。しかし、請求項1の「酸性染毛料組成物の10質量%水溶液のpHが4~6」との規定におけるpH「4」とは、例えば、実施例6、11、12、14を参酌すると、「4.0」を意味するものと解するのが相当である。このため、本件発明1は、発明の効果を奏さない態様を含むものとはいえず、この理由によって本件発明1~7の特許を取り消すことはできない。
(4)理由3bについて
ア 甲第2号証に記載された事項(注:○囲みの数字の標記は、例えば「○1」のように示した。)
(ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 (1)カルボキシビニルポリマーと、(2)エチルアルコール,ブチルアルコール,シクロヘキサノール,ベンジルアルコール,フェノキシエタノールの一価アルコール、及び多価アルコールの中から選ばれる一種もしくは二種以上のアルコール類と、(3)染料とを含有することを特徴とする頭髪用酸性染毛料組成物。
…
【請求項4】 カルボキシビニルポリマーの含有量が0.5~15重量%である請求項1記載の頭髪用酸性染毛料組成物。
…」
(イ)「【0004】本発明に用いられるカルボキシビニルポリマーとしては、例えば、カーボポール934、940、941(いずれもグッドリツチ社製商品名)、ハイビスワコー104、105(いずれも和光純薬株式会社製商品名)等が挙げられ、その含有量は0.5~15重量%であり、好ましくは1.0~10重量%である。0.5重量%未満では適度な粘度を付与することができず、また、15重量%を超える場合には、流動性、毛髪へのなじみの点であまり良い効果が得られない。」
(ウ)「【0013】(5)シリコーン類
○1
【0014】
【化1】(CH3)3SiO[(CH3)2SiO]nSi(CH3)3
(nは、3~650の整数)
で表されるジメチルポリシロキサン。
…
○9
【0023】
【化13】
(式中、R1はメチル基または一部がフェニル基を表し、R2はメチル基または水酸基を表す。また、nは3,000~20,000の整数を表す。)で表される高分子シリコーン。」
(エ)「【0043】本発明の頭髪用酸性染毛料組成物に含まれるものとしては、この他に、酸性染料およびpH調整用の酸、場合によってはアルカリ剤が挙げられる。以下、これらの構成物質について説明する。
【0044】本発明で使用される染料は人体に対して有害な作用を示さない医薬品、医薬部外品および化粧品の着色に使用することが許可されている「医薬品等に使用する事の出来るタール色を定める省令」に掲示されている法定色素が極めて有効で、その配合量は0.001~2.0重量%が望ましい。また、本発明の組成物をリンス兼用の染毛料組成物として使用する場合には、0.001~0.2重量%が適当である。
【0045】本発明で使用されるpH調整用の酸としては、クエン酸,リンゴ酸,酢酸,乳酸,蓚酸,酒石酸,ギ酸,レブリン酸等の有機酸、リン酸,塩酸等の無機酸がある。また、アルカリ剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機アルカリ剤、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、アミノプロパノール等の有機アルカリ剤、アルギニン等の塩基性のアミノ酸がある。配合量は組成物のpHを1.5~4.5になるように配合する。
【0046】また、本発明の染毛料組成物は、本発明の効果を損わない質的、量的範囲内でカルボキシビニルポリマー以外の他の増粘剤も用いることができる。本発明で用いられる他の増粘剤としては、アラビアガム,カラギーナン,カラヤガム,トラガカントガム,キャロブガム,クインスシード(マルメロ),カゼイン,デキストリン,ゼラチン,ペクチン酸ナトリウム,アルギン酸ナトリウム,メチルセルロース,エチルセルロース,カルボキシメチルセルロース(CMC),ヒドロキシエチルセルロース,ヒドロキシプロピルセルロース,PVA,PVM,PVP,ポリアクリル酸ナトリウム,ローカストビーンガム,グアーガム,タマリントガム,ジアルキルジメチルアンモニウム硫酸セルロース,キサンタンガム,ケイ酸アルミニウムマグネシウム,ベントナイト等が挙げられる。」
(オ)「【0062】実施例6
黒色-401号 0.2(重量%)
紫色-401号 0.3
黄色-4号 0.1
ベンジルアルコール 5.0
N-メチルピロリドン 2.0
オクタメチルシクロテトラシロキサン 2.5
ジメチルポリシロキサン 0.5
(前記(5)の○9で示した高分子シリコーンの一般式で、R1およびR2はメチル基、n=10,000)
グリセリン 0.5
ポリオキシエチレン(100)硬化ヒマシ油エステル 1.0
カルボキシビニルポリマー 3.5
クエン酸 適量
キレート剤 適量
精製水 残部
合計 100.0
製法
精製水にN-メチルピロリドンとベンジルアルコールを加え、この中にオクタメチルシクロテトラシロキサンにジメチルシロキサンを溶解し、グリセリンとポリオキシエチレン(100)硬化ヒマシ油エステルの混合物に加えて乳化したものを加える。次いでクエン酸及びキレート剤を加え、この中にカルボキシビニルポリマーを徐々に添加し粘稠液を調製する。この粘稠液に染料の黒色401号、紫色401号、黄色4号を加え、pH3.8~4.1に調整し均一な粘稠液を得た。
【0063】
実施例7(カラーリンスタイプの染毛料)
黒色-401号 0.02(重量%)
紫色-401号 0.03
黄色-4号 0.01
ベンジルアルコール 3.0
N-メチルピロリドン 1.0
オクタメチルシクロテトラシロキサン 3.0
ジメチルポリシロキサン 0.6
(前記(5)の○9で示した高分子シリコーンの一般式で、R1およびR2はメチル基)
ポリオキシエチレン(100)硬化ヒマシ油エステル 0.7
1,3ブチレングリコール 15.0
クエン酸 0.6
カルボキシビニルポリマー 2.0
精製水 残部
合計 100.0
製法
上記の配合量で実施例6と同様にして均一な粘稠液を得た。
…
【0065】
実施例9(カラーリンスタイプの染毛料)
配合
黒色-401号 0.02(重量%)
紫色-401号 0.03
黄色-4号 0.01
ベンジルアルコール 3.0
ジメチルポリシロキサン 0.5
(前記(5)の○9で示した高分子シリコーンの一般式で、R1およびR2はメチル基)
ジメチルポリシロキサン 2.0
(前記(5)の○1で示したジメチルポリシロキサンの一般式で、n=20)
ポリオキシエチレン(40)ステアリルエーテル 1.0
1,3-ブチレングリコール 5.0
クエン酸 0.7
カルボキシビニルポリマー 2.0
アルギン酸ソーダ 1.0
精製水 残部
合計 100.0
製法
上記の配合量で実施例6と同様にして調製し、均一な粘稠液を得た。
【0066】上記実施例6~9は、いずれも耐洗浄性、毛髪への付着性やなじみ、使用感、染着性に優れた染毛料組成物であった。」
イ 甲第2号証に記載された発明
甲第2号証には、カルボキシビニルポリマー0.5~15重量%(上記ア(ア)、(イ)、(エ)、(オ))、組成物のpHを1.5~4.5になる配合量のpH調整用の有機酸又は無機酸(上記ア(エ)、(オ))、酸性染料(上記ア(ア)、(エ)、(オ))を含有する頭髪用酸性染毛料組成物が記載されている。
そうすると、甲第2号証には、次の甲2発明が記載されている。
「下記の成分(A)~(C)を含有し、頭髪用酸性染毛料組成物のpHが1.5~4.5であることを特徴とする酸性染毛料組成物。
(A)カルボキシビニルポリマー0.5~15重量%。
(B)有機酸及び無機酸から選ばれる少なくとも一種として構成されるpH調整用の酸。
(C)酸性染料。」
ウ 本件発明1と甲2発明との対比・判断
(ア)本件発明1と甲2発明とを対比する。
甲2発明のカルボキシビニルポリマーは、本件発明1のイオン性水溶性高分子化合物に相当し、該カルボキシビニルポリマーは、実施例では2.0重量%あるいは3.5重量%使用されている。
甲2発明のpH調整用の酸は、本件発明1の緩衝剤に相当し、該pH調整用の酸は、実施例7、9ではクエン酸が0.6重量%あるいは0.7重量%使用されている。加えて、実施例6の頭髪用酸性染毛料組成物のpHは3.8~4.1に調整されている。
酸性染料において、本件発明1は赤色504号及び橙色205号のみからなる場合を除くものであるが、例えば甲2発明の実施例は、赤色504号及び橙色205号のみからなる場合ではない。
配合量の単位において、本件発明1は質量%、甲2発明は重量%で標記されているが、これらの文言の間に技術的な差異は見いだせない。
そして、本件発明1は酸性染毛料組成物、甲2発明は頭髪用酸性染毛料組成物に、それぞれ係るものであるが、これらの文言の間に技術的な差異は見いだせない。
そうすると、本件発明1と甲2発明とは以下の一致点、相違点を有する。
一致点:
「下記の成分(A)~(C)を含有し、(但し、酸性染毛料組成物がアロエエキス及びモモ葉エキスを併せて配合している場合、又は酸性染毛料組成物の成分(C)が赤色504号及び橙色205号のみからなる場合を除く。)ことを特徴とする酸性染毛料組成物。
(A)イオン性水溶性高分子化合物1.5~4.5質量%。
(B)有機酸とその塩、及び無機酸とその塩から選ばれる少なくとも一種として構成される緩衝剤0.005~1.5質量%。
(C)酸性染料。」
相違点:
a 本件発明1は、「酸性染毛料組成物の10質量%水溶液のpHが4~6であり、かつ、前処理を行っていないpH5.5~6の人毛毛束を染毛処理した場合、染毛後の毛髪のpHが5.5~6である」のに対し、甲2発明は「頭髪用酸性染毛料組成物のpHが1.5~4.5である」とされ、係る組成物において「10質量%水溶液のpH」や「前処理を行っていないpH5.5~6の人毛毛束を染毛処理した場合、染毛後の毛髪のpHが5.5~6である」ことが明らかでない点。
(イ)上記相違点aについて検討する。
甲2発明の頭髪用酸性染毛料組成物のpHは1.5~4.5であるところ、これが10質量%水溶液のpHにおいて「4~6」であるかは明らかでない。仮にそうであるとしても、甲2発明に係る頭髪用酸性染毛料組成物が「前処理を行っていないpH5.5~6の人毛毛束を染毛処理した場合、染毛後の毛髪のpHが5.5~6である」ことを満たすものとなるかは明らかでない。
そして、甲第2号証からは、係る酸性染毛料が「前処理を行っていないpH5.5~6の人毛毛束を染毛処理した場合、染毛後の毛髪のpHが5.5~6である」と解しうるような記載ないし示唆を見いだすことができない。
このため、本件発明1は甲2発明と同一であるということはできない。
さらに、本件発明2~3は、本件発明1を引用して、さらに規定を加えたものであることに鑑みると、同様に甲2発明と同一であるということはできない。
エ 小括
よって、本件発明1~3は、甲第2号証によって、特許法第29条第1項第3号に該当する発明とはいえず、この理由によって本件発明1~7の特許を取り消すことはできない。
(5)理由4a、4b、4c、4dについて
上記(1)(すなわち上記4)及び(4)で示したとおり、甲1発明、甲2発明とも、本件発明1に係る「酸性染毛料組成物の10質量%水溶液のpHが4~6であり、かつ、前処理を行っていないpH5.5~6の人毛毛束を染毛処理した場合、染毛後の毛髪のpHが5.5~6である」点の記載ないし示唆はない。甲第4~6号証には、酸性染毛料組成物に関する記載ないし示唆はない。甲第3号証には下記(ア)~(エ)のとおり、酸性染毛料組成物に関する記載がある。
(ア)「【請求項1】
(a)直接染料、(b)グリシン及び/又はタウリン、(c)水を含有することを特徴とする染毛用前処理剤組成物。
…
【請求項7】
酸化染毛剤を適用する前に使用するための、請求項1~6のいずれか1項に記載の染毛用前処理剤組成物。」
(イ)「【0007】
本発明は、上記のような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、損傷毛髪に対する染毛均一性、並びに色持ち(堅牢性)を一層向上させることが可能な染毛用前処理組成物を提供することである。
…
【発明の効果】
【0012】
本発明の染毛用前処理剤は、染毛前の毛髪に適用することにより、染毛剤による毛先のかぶり(毛先だけが非常に濃く染まった状態)やむら染まりを良好に抑え、均一に染毛することができる。さらに、染色毛のシャンプー堅牢性を向上させ、退色時の不自然な色味を抑えることができる。」
(ウ)「【0014】
本発明に使用される種々の直接染料は、タール系色素や天然色素などの公知のものが使用でき、1種又は2種以上を併用してもよい。その中でも、…「医薬品等で使用できるタール色素を定める省令」(昭和41年告示、厚生省)により定められた酸性染料等が挙げられる。これら直接染料は、各々単独で、あるいは混合して配合することができる。その配合量は0.001~5.0重量%であり、0.001重量%より少ないと均染性の効果は得られず、また5.0重量%を越えても効果の上昇は期待できない。さらに好ましくは0.005~2.0重量%、最も好ましくは0.01~1.0重量%である。」
(エ)「【0020】
本発明の染毛用前処理剤組成物は、直接染料含有組成物を前処理剤として用いていることにより初めて本発明の効果を得ることができたものである。一方、直接染料を染毛剤へ同時に配合した場合も検討したが良好な結果は得られていない。対象の染毛剤が酸化染毛剤の場合、直接染料を少量で配合することは一般的な技術であるが、これは調色を目的とするもので、本件発明と同様な効果を得ることはできない。また、後処理剤として用いた場合にも効果は得られなかった。既に酸化染毛剤で染毛された毛髪のむら染まりなどの状態を均一にするような効果を本発明の染毛用前処理剤組成物は有していない。」
しかし、上記(ア)~(エ)のみならず、甲第3号証のいずれにも、本件発明1に係る「酸性染毛料組成物の10質量%水溶液のpHが4~6であり、かつ、前処理を行っていないpH5.5~6の人毛毛束を染毛処理した場合、染毛後の毛髪のpHが5.5~6である」点の記載ないし示唆はない。
そして、甲各号証の如何なる記載に基づいても、「前処理を行っていないpH5.5~6の人毛毛束を染毛処理した場合、染毛後の毛髪のpHが5.5~6である」ようにするといった、染毛処理後の毛髪のpHを調整することは、本件出願時の周知慣用技術とはいえず、また、当業者が容易に想到し得ることともいえない。
よって、本件発明1~3は、甲各号証及び本件出願時の周知慣用技術によって、特許法第29条第2項に違反してされたものとはいえず、この理由によって本件発明1~7の特許を取り消すことはできない。
6 むすび
以上のとおりであるから、異議申立ての理由及び当審からの取消理由によっては、本件発明1~7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1~7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2015-700320