特許拒絶査定不服審判
2015-018813
液圧式閉鎖システムを備える飲料用注入ユニット
- 審判番号
- 2015-018813
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2012-545496外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2015年10月19日
- 審決日
- 2016年10月31日
- 公報発行日
- 2017年05月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
- 【請求人代理人】伊東 忠重
- 【請求人代理人】伊東 忠彦
- 【請求人代理人】大貫 進介
- 分類
- P18 .575-Z (A47J) / P18 .121-Z (A47J)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第6項、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2012-545496号「液圧式閉鎖システムを備える飲料用注入ユニット」拒絶査定不服審判事件〔2011年(平成23年)6月30日国際公開,WO2011/077317,平成25年 5月 2日国内公表,特表2013-514852号〕について,次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は,成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は,2010年(平成22年)12月14日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2009年12月21日(IT)イタリア共和国)を国際出願日とする出願であって,平成27年 8月28日付けで拒絶査定がなされ,これに対して,同年10月19日に拒絶査定不服審判が請求され,同時に手続補正がされたものである。
第2 平成27年10月19日にされた手続補正の却下の決定
1 結論
平成27年10月19日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
2 理由
(1) 補正の概要
本件補正は,本件補正前の特許請求の範囲の請求項1である
「飲料を作るための注入ユニットであって、
前記飲料を作るための原料のための座部であり、注入チャンバを形成し、且つ、原料装填位置から注入位置に移動可能である座部を備える可動要素を含み、
前記注入位置では、互いに向き合う熱水分注装置と飲料出口ノズルとの間に前記座部があり、
前記熱水分注装置は、前記注入位置にある前記座部に向かう前記熱水分注装置の閉じ動作を制御する加圧水の第1導管による供給を受けるシリンダ・ピストンアクチュエータを含み、
前記シリンダ・ピストンアクチュエータは、外部シリンダと前記外部シリンダ内を摺動するピストンとを含み、
前記ピストンは、加圧熱水の導管に関連付けられ、且つ、前記ピストンの第1の側に配置される前記注入チャンバの閉鎖面に少なくとも1つの熱水分注開口を備える熱水供給チャンバを含み、
前記ピストンは、ボディを含み、且つ、前記外部シリンダに供給される水が作用する圧力面を定め、
前記圧力面は、前記第1の側の反対側にある、前記ピストンの第2の側に配置され、
前記ピストンには、前記熱水分注開口を閉じるための弁が備えられ、該弁は、前記ピストンが下げられた状態で、前記熱水供給チャンバにおける熱水の圧力の影響によって開き、前記熱水供給チャンバを前記熱水分注開口に流体的に連通させる、
注入ユニット。」を,
「飲料を作るための注入ユニットであって、
前記飲料を作るための原料のための座部であり、注入チャンバを形成し、且つ、原料装填位置から注入位置に移動可能である座部を備える可動要素を含み、
前記注入位置では、互いに向き合う熱水分注装置と飲料出口ノズルとの間に前記座部があり、
前記熱水分注装置は、前記注入位置にある前記座部に向かう前記熱水分注装置の閉じ動作を制御する加圧水の第1導管による供給を受けるシリンダ・ピストンアクチュエータを含み、
前記シリンダ・ピストンアクチュエータは、外部シリンダと前記外部シリンダ内を摺動するピストンとを含み、
前記ピストンは、加圧熱水の導管に関連付けられ、且つ、前記ピストンの第1の側に配置される前記注入チャンバの閉鎖面に少なくとも1つの熱水分注開口を備える熱水供給チャンバを含み、
前記ピストンは、ボディを含み、且つ、前記外部シリンダに供給される前記加圧水が作用する圧力面を定め、
前記圧力面は、前記第1の側の反対側にある、前記ピストンの第2の側に配置され、
前記ピストンには、前記熱水分注開口を閉じるための弁が備えられ、該弁は、前記ピストンが下げられた状態で、前記熱水供給チャンバにおける、前記加圧水の圧力より低い前記加圧熱水の圧力の影響によって開き、前記熱水供給チャンバを前記熱水分注開口に流体的に連通させる、
注入ユニット。」と補正することを含むものである。
(2) 補正の目的
上記補正は,本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である,その影響によって弁が開く「熱水の圧力」について,その大きさを限定し,「前記加圧水の圧力より低い前記加圧熱水の圧力」にする補正であって,本件補正前の請求項1に係る発明と本件補正後の請求項1に係る発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから,特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について検討する。
(3)引用例
原査定の拒絶の理由に引用され,本願優先日前に頒布された刊行物である国際公開第2009/093202号(以下「引用例」という。)には,図面と共に次の事項が記載されている。(日本語訳及び下線は当審による。以下同様。)
ア 「fig. 8 is a perspective view of a first embodiment of the
package-handling assembly in a loading position;」(3頁24-25行)
「図8は,装填位置にあるパッケージ操作アセンブリの第1の実施例の斜視図である。」
イ 「fig. 9 is a perspective view of the assembly of fig. 8 in an
infusion position;」(3頁26-27行)
「図9は,注入位置にある図8のアセンブリの斜視図である。」
ウ 「In the following, reference will always be made, as an exam-
ple, to a coffee machine, but this must not be taken as a limiting
example, it being understood that the machine is capable of dis-
pensing any other infusion beverage, starting from single-dose
packages of any desired raw material (including, for example, pow-
der milk, chamomile, tea, etc.).」(4頁8-13行)
「以下では,一例として常にコーヒーマシンに言及するが,これを限定的な例として受け取ってはならず,この装置は任意の望ましい素材(例えば,粉乳,カモミール,茶などを含む)の一回量のパッケージから得られる他の任意の抽出飲料を吐出可能であることが理解される。」
エ 「In the front part, bodywork C has a drawer portion C1 which
may be pulled out, sliding on suitable sliding rails, in order to
allow access to a compartment for the introduction of a single-dose
package. The compartment is slidably mounted in the way which will
be shown further below.」(4頁14-18行)
「前部において,本体構造Cは,一回量のパッケージを導入する区画へのアクセスを可能にするため,適切なスライドレール上を摺動しつつ引出し可能な引出し部C1を有する。該区画は,以下に詳しく示す方法で,摺動可能に据付けられる。」
オ 「The heating and injection assembly 1 is fastened to framework
T, in correspondence of a holding seat V of the coffee package (for
example a capsule) and comprises a heating and injection head 10 and
an overlying actuator in the shape of a pressure piston 12.」(4頁27-31行)
「加熱注入アセンブリ1は,コーヒーパッケージ(例えばカプセル)の保持座Vとともに枠構造Tに固定され,加熱注入ヘッド10及びその上部の圧力ピストン12の形状のアクチュエータからなる。」
カ 「In particular, a series of four small supporting posts lla-lld
are fastened at the bottom to the base of framework T and carry on
the top a connection plate 13. On top of plate 13, four retaining
rod links 14a-14d are fastened which, above, retain a closing plate
15 intended to represent the upper closure of a cylindrical chamber
12a. Inside this cylindrical chamber, as clearly shown in fig. 5, a
double-effect plunger 16 is provided, integral with a stem 17 ex-
tending downwards, running through a hole in plate 13 and protruding
with a threaded end.」(4頁32行-5頁3行)
「特に,4本の小さな支持柱11a-11dの列が,底部において枠構造Tの基部に固定され,上部で結合板13を支えている。板13の上部には,4本の保持ロッドリンク14a-14dが固定されており,円柱チャンバ12aの上蓋を構成するよう意図された閉鎖板15を上方で保持している。この円柱チャンバの内側には,図5に明瞭に示されているように,下方に延び,板13の孔を通り,ネジ端が突き出るステム17と一体型の双作用プランジャ16が配置されている。」
キ 「Plunger 16 preferably consists of a pair of circular plates
closing sandwich-like a circular gasket 16a intended to seal against
the cylindrical, inner wall of chamber 12a. Alternatively, the
plunger is shaped as a disc having proper thickness which, along the
circumferential perimeter thereof, has a groove within which a to-
roidal gasket is intended to be engaged.」(5頁4-9行)
「好ましくはプランジャ16は,チャンバ12aの円筒状内壁へのシールを意図した環状ガスケット16aをサンドイッチ状に閉鎖する二枚の円形板で構成される。あるいは,プランジャは,その周縁に沿って環状ガスケットの係合を意図した溝を有する,適切な厚みの円板から形成される。」
ク 「The plunger is intended to move within chamber 12a, along the
axis of stem 17.」(5頁10-11行)
「プランジャは,チャンバ12a内をステム17の軸に沿って移動するよう意図されている。」
ケ 「Joints 13a and 15a are connected, through suitable pipes (not
shown), made for example of flexible plastic material, to 3-way
electrovalves, Ev2 and Ev1, respectively, in turn connected to pump
P. Said pump is designed to draw water from the fresh water tank
(not shown) and to send it under pressure to the various electro-
valves.」(5頁28-33行)
「継手13a及び15aが,例えば可撓性を有するプラスチック材料からなる,適した管(図示されていない)を介して,それぞれ三方電気弁Ev2及びEv1に接続され,そしてポンプPに接続されている。該ポンプは,真水タンク(図示されていない)から吸水し,それを圧力下で様々な電気弁に送るように設計されている。」
コ 「Heating and injection head 10 is arranged below piston assem-
bly 12.」(6頁10-11行)
「加熱注入ヘッド10がピストンアセンブリ12の下に配置されている。」
サ 「Thereby, head 10 may be made integral with the movement of
plunger 16, which hence acts as an actuator for head 10. As a matter
of fact, head 10, during the injection of hot water, must be pushed
under pressure towards holding seat V, so as to sealingly lock the
single-dose package and prevent the pressurised hot water from leak-
ing sideways .」(6頁16-21行)
「それに関し,ヘッド10はプランジャ16の動きと一体に作られてもよく,その際プランジャはヘッド10のアクチュエータとして働く。実のところ,ヘッド10は,熱水の注入中,一回量のパッケージをシールしつつロックして,加圧熱水の横漏れを防ぐため,保持座Vの方へ圧力下で押されなければならない。」
シ 「Accordingly, thanks to the specific arrangement illustrated,
wherein head 10 may be easily coupled with and uncoupled from actu-
ator stem 17, according to the invention, head 10 is interchangea-
ble. Thereby it is possible to arrange a series of mostly identical
heads 10, wherein only the shape of compartment 10a changes. In the
peripheral portion of compartment 10a a protruding lip 10b is pro-
vided, intended to cooperate with seat V, which contributes to re-
tain the package and to channel the pressurised hot water to dis-
pensing beak B. In compartment 10a a perimetral sealing gasket 10c,
for example an O-ring, is further arranged.」(6頁29行-7頁2行)
「したがって,ヘッド10が簡単にアクチュエータステム17に結合でき結合解除できる図示の特定配置のおかげで,本発明によれば,ヘッド10は交換可能である。よって,区画10aの形状のみが変化するほかは,ほぼ同一のヘッド10のシリーズを用意することができる。区画10aの周縁部には,座Vと協同することを意図した突出縁10bが設けられており,パッケージを保持し,加圧熱水を吐出注口Bに導くことに貢献する。区画10aには,Oリング等の周辺シールガスケット10cがさらに備えられている。」
ス 「A crosswise hole 22 is intended to house an electric heating
resistance. On the two sides of hole 22, two longitudinal cylindri-
cal cavities 23a and 23b (i.e. having axis parallel to the head dis-
placement axis) are provided, mutually connected by a crosswise
channel line 24. One of the two cavities, 23a, is further connected
with an outlet channel 25 which opens out below in the bottom cen-
tral part of head 10. The other cavity 23b is connected with an in-
let pipe 26, through which pressurised water is conveyed through
intervention of a drink delivery electrovalve Ev3.」(7頁36行-8頁8
行)
「横断孔22は,電気加熱抵抗を収納するよう意図されている。孔22の両側には,相互に横方向流路24で接続された2つの長手方向円柱状空洞23a及び23b(すなわち,ヘッド変位軸に平行な軸をもっている)が配置されている。二つの空洞の一方23aは,ヘッド10の底部中央で下方に開口する出口導管25とさらに接続されている。他方の空洞23bは,飲料供給電気弁Ev3の介入を経て加圧水が運ばれてくる入口管26に接続されている。」
セ 「Outlet channel line 25 preferably opens onto a small central
hole of the head, wherein coupling means (for example a threaded
hole) for an outlet nozzle 29 are provided, said nozzle being capa-
ble of determining the rate of the hot water flow close to the cof-
fee package.」(8頁24-28行)
「出口導管路25は,出口ノズル29への結合手段(例えばネジ切りされた孔)が設けられた,ヘッドの小さい中央孔へ好ましくは開口し,該ノズルはコーヒーパッケージ近傍の熱水流量を決定することが可能である。」
ソ 「Fork slider 30, as can be appreciated in fig. 8, has a sub-
stantially H-shaped plan shape. In the front part of a crossmember
30a there is provided a front fork portion, which supports the hous-
ing seat for a single-dose package C (be it a plastic capsule or a
paper pod) and simultaneously acts as a sliding guide in grooves T1'
and T2'. In the rear part of crossmember 30a, there is defined an-
other rear fork portion which acts as further guiding element.」(9頁14-21行)
「図8から分かるように,フォークスライダー30は本質的にH形の平面形状を有する。横材30aの前部には,前フォーク部が設けられ,一回量パッケージC(プラスチックのカプセルか紙の鞘)の収納座を支持し,同時に溝T1'及び
T2'内の摺動ガイドとしてはたらく。横材30aの後部には,他の後フォーク部が定められ,さらなるガイド要素としてはたらく。」
タ 「The housing seat 60 of package C has a shape matching package
C, so as to retain the package without excessive play. This is par-
ticularly important to ensure that injection head 10 descends on the
package accurately and achieves optimal seal during pressure injec-
tion of hot water.」(10頁21-25行)
「パッケージCの収納座60は,過大な遊びなくパッケージを保持するようパッケージCに沿う形状を有する。これは注入ヘッド10がパッケージ上に正確に下降し,熱水の圧力注入の間,最適なシールを実現することを保証するために特に重要である。」
チ 「At the time when the user pushes a start button, electric mo-
tor M is driven into rotation and pushes slider 30 into the fully
forward position, shown in figs. 8 and 11. Slider 30, progressing
ahead, pushes and brings down door C1 which thereby arranges itself
in an open position. The user can introduce from above the desired
package into seat 60, after which he pushes again the start but-
ton.」(12頁5-11行)
「使用者が開始ボタンを押したとき,電気モータMが回転駆動されて,図8及び11に示されるように,スライダー30を完全に前方位置へ押す。前方へ移動するスライダー30は,ドアC1を押して引き下げ,自身を開放位置に位置付ける。使用者は上方から適切なパッケージを座60に導入でき,その後彼は再度開始ボタンを押す。」
ツ 「The control unit (not shown) after the second pressure of the
button drives motor M into reverse rotation, causing slide 3 to move
backwards (door C1 closes automatically) until package C finds it-
self below injection head 1 (figs. 9 and 12) . In this position mo-
tor M halts and the unit activates pump P and opens electrovalve
Ev1, so that actuator 12 is fed with pressurised water and plunger
16 performs a downward movement. After a preset time t1, electro-
valve Ev3 is opened and pressurised water is introduced into pipe
26, which thus flows out of pipe 25 after having been heated up pro-
perly along the path through head 10.」(12頁12-21行)
「制御部(図示されていない)は,ボタンの二度目の押圧後,モータMを逆回転駆動し,スライド3を逆方向に動かして(ドアC1は自動的に閉まる),パッケージCを注入ヘッド1の下に至らせる(図9及び12)。この位置でモータMは停止し,制御部はポンプPを駆動し電気弁Ev1を開くことにより,アクチュエータ12に加圧水が供給され,プランジャ16は下方への移動を行なう。設定時間t1が経過すると,電気弁Ev3が開かれ,加圧水が管26に導入され,ヘッド10内の経路に沿って適切に加熱された後,管25から流れ出る。」
テ 図1,5-7,9,12も参照すれば,「収納座60」が「加熱注入ヘッド10」の
「区画10a」とともに飲料抽出のための空間を構成すること,「注入位置」において,互いに向き合う「加熱注入ヘッド10」と「吐出注口B」との間に「収納座60」があること,及び「アクチュエータ12」が,少なくとも「円柱チャンバ12a」と「プランジャ16」を含むことが理解でき,また「プランジャ16」の下側に「加熱注入ヘッド10の区画10a」が配置されていることや,「プランジャ16」を構成する二枚の円形板がそれぞれ上側及び下側にあることも理解できる。
ト 上記ア~テに記載の事項を総合すると,引用例には,次の発明(以下
「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「抽出飲料を吐出可能な装置であって,
一回量パッケージCのための収納座60であり,装填位置から注入位置に移動可能である収納座60を支持するフォークスライダー30と,加熱注入ヘッド10,支持柱11a-11d,結合板13,保持ロッドリンク14a-14d,閉鎖板15,及びアクチュエータ12を含み,
注入位置では,互いに向き合う加熱注入ヘッド10と吐出注口Bとの間に収納座60があり,
アクチュエータ12は,円柱チャンバ12aと円柱チャンバ12a内を移動するプランジャ16とを含み,
加熱注入ヘッド10は,加圧水の入口管26に接続された長手方向円柱状空洞23a及び23b並びに横方向流路24と,プランジャ16の下側に配置される加熱注入ヘッド10の区画10aに1つの出口ノズル29への結合手段が設けられた中央孔へ開口する出口導管25とを含み,
プランジャ16は,上側及び下側にある二枚の円形板で構成され,
制御部はポンプPを駆動し電気弁Ev1を開くことにより,アクチュエータ12に加圧水が供給され,プランジャ16は下方への移動を行ない,設定時間t1が経過すると,電気弁Ev3が開かれ,加圧水が入口管26に導入され,加熱注入ヘッド10内の経路に沿って適切に加熱された後,出口導管25から流れ出る,
装置。」
(4)対比
ア 本願補正発明と引用発明との対比
本願補正発明と引用発明を対比すると,引用発明における「抽出飲料」,「一回量パッケージC」,「収納座60」,「装填位置」,「フォークスラ
イダー30」,「吐出注口B」,「円柱チャンバ12a」,「入口管26」,「下
側」,「加熱注入ヘッド10の区画10a」,「出口ノズル29」,「ステム17」及び「上側」「にある」「円形板」は,それぞれ本願補正発明における「飲料」,「飲料を作るための原料」,「座部」,「原料装填位置」,「可動要素」,「飲料出口ノズル」,「外部シリンダ」,「導管」,「第1の側」,「注入チャンバの閉鎖面」,「熱水分注開口」,「ボディ」及び「圧力面」に相当する。
また,引用発明の「収納座60」が「加熱注入ヘッド10」の「区画10a」とともに飲料抽出のための空間を構成することは,本願補正発明の「注入チャンバを形成」することに相当し,引用発明の「フォークスライダー30」が
「収納座60」を支持することは,本願補正発明の「可動要素」が「座部」を備えることに相当する。
引用発明において,「加熱注入ヘッド10」,「プランジャ16」,及び「ステム17」を合わせたものは,本願補正発明の「ピストン」に相当する。そして,引用発明の「円柱チャンバ12a」と「加熱注入ヘッド10」,「プランジャ16」及び「ステム17」を合わせたものは,本願補正発明の「外部シリンダと前記外部シリンダを摺動するピストン」を含む「シリンダ・ピストンアクチュエータ」に相当する。
引用発明の「加熱注入ヘッド10」,「支持柱11a-11d」,「アクチュエータ12」,「結合板13」,「保持ロッドリンク14a-14d」,及び「閉鎖板15」を合わせたものは,本願補正発明の「熱水分注装置」に相当する。そして,引用発明の「アクチュエータ12に加圧水が供給され,プランジャ16は下方への移動を行な」うことは,本願補正発明の「シリンダ・ピストンアクチュエータ」が「熱水分注装置の閉じ動作を制御する加圧水の」「供給を受ける」ことに相当する。ここで,引用発明の加圧水の供給が管を通じてなされることは明らかであり,該「管」は本願補正発明の「第1導管」に相当する。
また,引用発明の「長手方向円柱状空洞23a」,同「23b」,「横方向流路24」,及び「出口導管25」を合わせたものは,「加熱注入ヘッド10」内で加圧水のための室を形成しているといえ,「入口管26」に関連付けられると共に,「出口ノズル29」に通じているから,本願補正発明の「熱水供給チャンバ」と,少なくとも「加圧水の導管に関連付けられ,且つ,前記ピストンの第1の側に配置される前記注入チャンバの閉鎖面に少なくとも1つの熱水分注開口を備える熱水供給チャンバ」という点で一致する。
引用発明において「プランジャ16」が「上側」「にある」「円形板」を含んで構成されることは,本願補正発明において「ピストン」が「前記外部シリンダに供給される前記加圧水が作用する圧力面を定め」ること,及び「前記圧力面」が「前記第1の側の反対側にある、前記ピストンの第2の側に配置され」ることに相当する。
そして,引用発明の「抽出飲料を吐出可能な装置」は,本願補正発明の
「飲料を作るための注入ユニット」に相当する。
イ 一致点
したがって,本願補正発明と引用発明とは,以下の点で一致している。
「飲料を作るための注入ユニットであって,
前記飲料を作るための原料のための座部であり,注入チャンバを形成し,且つ,原料装填位置から注入位置に移動可能である座部を備える可動要素を含み,
前記注入位置では,互いに向き合う熱水分注装置と飲料出口ノズルとの間に前記座部があり,
前記熱水分注装置は,前記注入位置にある前記座部に向かう前記熱水分注装置の閉じ動作を制御する加圧水の第1導管による供給を受けるシリンダ・ピストンアクチュエータを含み,
前記シリンダ・ピストンアクチュエータは,外部シリンダと前記外部シリンダ内を摺動するピストンとを含み,
前記ピストンは,加圧水の導管に関連付けられ,且つ,前記ピストンの第1の側に配置される前記注入チャンバの閉鎖面に少なくとも1つの熱水分注開口を備える熱水供給チャンバを含み,
前記ピストンは,ボディを含み,且つ,前記外部シリンダに供給される前記加圧水が作用する圧力面を定め,
前記圧力面は,前記第1の側の反対側にある,前記ピストンの第2の側に配置される,
注入ユニット。」
ウ 相違点
そして,本願補正発明と引用発明とは,以下の点で相違している。
(ア)相違点1
熱水供給チャンバが関連付けられる導管が,本願補正発明では,「加圧熱水」の導管であるのに対し,引用発明では,「加圧水」の導管である点
(イ)相違点2
本願補正発明は,ピストンに熱水分注開口を閉じるための弁が備えられ,該弁が,ピストンが下げられた状態で,熱水供給チャンバにおける,加圧水の圧力より低い加圧熱水の圧力の影響によって開き,熱水供給チャンバを熱水分注開口に流体的に連通させるのに対し,引用発明では,「加熱注入ヘッド10」に「出口ノズル29」を閉じるための弁はなく,常に「出口導管25」が「出口ノズル29」に流体的に連通している点
(5)判断
ア 相違点1についての検討
本願補正発明は,熱水供給チャンバが「加圧熱水」の導管に関連付けられることから,熱水供給チャンバに導入される前の加圧水が加熱されているといえるのに対し,引用発明は,「加圧水が入口管26に導入され,加熱注入ヘッド10内の経路に沿って適切に加熱され」るものであることから,熱水供給チャンバ内で加圧水が加熱されるといえる。すなわち,相違点1は,「加圧熱水」を得るために水を加熱する位置の相違に基づくものである。
しかしながら,飲料を作るための注入ユニットにおいて,引用発明のように,加圧水をピストン内(加熱注入ヘッド10内)で加熱して「加圧熱水」を得る構成のほか,例えば原査定の拒絶の理由に引用された米国特許第5103716号明細書(以下「周知例1」という。)に記載されているように,水をピストン外で加熱して「加圧熱水」を得ておく構成も,周知の技術事項であった(周知例1には,タンク(hot water reservoir 45)に蓄えられた熱水をポンプ(pump 44)で加圧して得た加圧熱水を,内ピストン(inner
piston 29)へ導入する構成が記載されている(4欄51-63行,図1等))。
そして,上記水を加熱する位置の相違により,「加圧熱水」を注入する作用効果において格別な差が生じるものとも認められないことから,どの位置で水を加熱するかは,当業者が適宜設定することのできる設計事項にすぎない。よって,引用発明において,上記周知の技術事項を考慮して,相違点1に係る本願補正発明の構成を採用することは,当業者が容易になし得たことである。
イ 相違点2についての検討
飲料を作るための注入ユニットにおいて,ピストンに熱水分注開口を閉じるための弁を設け,該弁が,熱水供給チャンバにおける加圧熱水の圧力の影響によって開き,熱水供給チャンバを熱水分注開口に流体的に連通させる構成は,周知の技術事項であった(例えば,周知例1には,飲料(coffee)を作るための注入ユニットにおいて,ピストン(inner piston 29)に熱水分注開口(orifice of the cavity 39)を閉じるための弁(check valve 46)を設け,該弁が,熱水供給チャンバ(inner cavity 39)における加圧熱水の圧力の影響によって開き,熱水供給チャンバを熱水分注開口に流体的に連通させる構成が記載されており(4欄32行-6欄16行,図3等),原査定の拒絶の理由に引用された米国特許第6510783号明細書(以下「周知例2」という。)には,飲料(coffee)を作るための注入ユニット(machine 10)において,ピストン(block 22及びbushing 19)に熱水分注開口(compart-
ment 65)を閉じるための弁(opening valve means 21a)を設け,該弁が,ピストンが下げられた状態で,熱水供給チャンバ(axial channel 57)における加圧熱水の圧力の影響によって開き,熱水供給チャンバを熱水分注開口に流体的に連通させる構成が記載されている(5欄1行-6欄36行,図1等)ことを参照。)。
引用発明においては,「加熱注入ヘッド10」に「出口ノズル29」を閉じるための弁を設けていないが,「加熱注入ヘッド10」の外部に「電気弁Ev3」が設けられ,それを介して加圧水を導入している(前記(3)ツ)。このような電気弁の開動作により加圧熱水を注入するか,上記周知の技術事項のようにピストンに設けた弁の開動作により加圧熱水を注入するか,あるいは両者を併用するかは,当業者が適宜に選択できる事項といえるから,引用発明に上記周知の技術事項を適用して,「加熱注入ヘッド10」が下げられた状態で,「出口導管25」における加圧熱水の圧力の影響によって熱水分注開口を閉じるための弁が開き,「出口導管25」を「出口ノズル29」に流体的に連通させるよう構成することも,当業者が容易に想到し得たことである。
そして,熱水分注開口を閉じるための弁が開く加圧熱水の圧力を,加圧水の圧力より低くする点については,単なる設計事項にすぎない。すなわち,引用発明において,加圧水の圧力と,加圧水が作用する円形板の面積との積が,「加熱注入ヘッド10」を押下する力となること,及び加圧熱水の圧力とそれが作用する「区画10a」の面積との積が,「加熱注入ヘッド10」を押上する力となることは,当業者にとって明らかであるところ,そのような関係を踏まえて,ピストンが下げられた状態を維持できるように,加圧熱水及び加圧水の圧力を設定することは,当業者が通常の創作能力をもってなし得たことにすぎない。
なお,ピストンが下げられた状態を維持することは,熱水分注開口を閉じるための弁が開く加圧熱水の圧力を,加圧水の圧力より低くすることで実現されるのではなく,上述のとおり,加圧面の面積や,他の加圧要素の有無等にも依存する(例えば,本願補正発明において,本願明細書に記載された実施例のように,加圧水による加圧解除時にピストンが元の位置に戻るようバネを設置した場合には,当該バネによる上方への付勢力が加圧水による押下力を減殺する)。よって,「加圧熱水の圧力」を,「加圧水の圧力より低」くするという本願補正発明の構成自体に,格別の技術的な意義は認められない。
したがって,引用発明において,相違点2に係る本願補正発明の構成を採用することは,上記周知の技術事項を勘案して,当業者が容易になし得たことである。
ウ 本願補正発明の奏する効果について
本願補正発明の全体構成によって奏される作用効果についてみても,引用発明及び周知の技術事項から当業者が予測し得る範囲内のものである。
エ 審判請求人の主張について
審判請求人は,審判請求書において,「引用文献4(当審注:周知例1)は、『check valve 46』が開くと『check valve 46』を備えた『inner
piston 29』が上昇する構成を開示するのみであり、『inner piston
29』が下げられた状態で『inner piston 29』内に備えられた『check
valve 46』が開く構成を開示も示唆もしていません 」,「引用文献4は、本願の請求項1における、ピストンに備えられた『熱水分注開口を閉じるための弁』であって、『前記ピストンが下げられた状態で、前記熱水供給チャンバにおける熱水の圧力の影響によって開き、前記熱水供給チャンバを前記熱水分注開口に流体的に連通させる』弁を開示も示唆もしていません。 」等と主張しているので,この点について検討する。
そもそも引用発明では,「加熱注入ヘッド10」が下降した状態で,相互に連通した「出口導管25」及び「出口ノズル29」から熱水が流れ出すようにしている(前記(3)セ,タ,ツ)。周知例1には,「check valve 46」が開くと「inner piston 29」が上昇する実施例が記載されてはいるものの,周知例1からは,ピストンに設けた熱水分注開口を閉じるための弁が,熱水供給チャンバにおける加圧熱水の圧力の影響によって開き,熱水供給チャンバを熱水分注開口に流体的に連通させることが周知の技術事項であったと認められるのであり(前記イ),引用発明において,熱水を流れ出させる構成として,上記周知の技術事項を採用しても,「加熱注入ヘッド10」が下降した状態を維持すべきことは当然である。よって,審判請求人の上記主張は前記イの相違点2についての判断を左右するものではない。
また,審判請求人は,審判請求書において「本書と同時に提出した手続補正書により、『弁』を開く『熱水』の圧力が『熱水分注装置の閉じ動作を制御する加圧水』の圧力よりも低い点を明確にし、『ピストンが下げられた状態』で『弁』が開く構成をより明確にしました」,「この補正により、引用文献4が、本願の請求項1における『前記ピストンが下げられた状態で、前記熱水供給チャンバにおける、前記加圧水の圧力より低い前記加圧熱水の圧力の影響によって開き、前記熱水供給チャンバを前記熱水分注開口に流体的に連通させる』弁を開示も示唆もしていない点がより明確になりました。」とも主張している。しかし,前記イで検討したように,そもそも加圧熱水の圧力を加圧水の圧力より低くしたとしても,必ずしも押下力が押上力を上回るとはいえず,したがって「ピストンが下げられた状態」である保証もないから,審判請求人の上記主張にも理由がない。
さらに,審判請求人は,審判請求書において,「引用文献2(当審注:周知例2)は、注入チャンバを上から押さえ付ける水圧駆動の『block 22』と、『block22』を駆動する冷水とは別の熱水の圧力で開く(『block 22』の外部に設置される)『valve 21a』とを備えた注入ユニットを開示するのみであり(Fig.1参照。)、『block 22』に備えられたバルブを開示も示唆もしていません。 」,「したがって、引用文献2の記載に基づいて本願の請求項1における『前記加圧水の圧力より低い前記加圧熱水の圧力の影響によって開(く)』弁を『ピストン』に設ける技術を周知の技術ということはできないと考えます。」とも主張している。しかし,前記イで認定したように,「ピストン」に相当するのは,周知例2の「block 22」だけでなく,それと一体の「bushing 19」を加えたものである(本願補正発明においても,「ピストン」は,本願明細書及び図面に記載された「ブロック53」だけでなく,それと一体の「メインボディ47C」をも含むものとされている)。よって,周知例2は,加圧熱水の圧力の影響によって開く弁を「ピストン」に設ける技術が周知の技術であることを示す例といえるので,審判請求人の上記主張にも理由がない。
オ まとめ
したがって,本願補正発明は,引用発明及び周知の技術事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
(6)小括
以上のとおり,本願補正発明は,本願優先日前に頒布された刊行物である引用例に記載された発明及び周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。
したがって,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので,本願請求項1~14に係る発明は,平成27年2月4日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~14に記載された事項により特定されるとおりのものである。そして,その請求項1に係る発明は,
「飲料を作るための注入ユニットであって、
前記飲料を作るための原料のための座部であり、注入チャンバを形成し、且つ、原料装填位置から注入位置に移動可能である座部を備える可動要素を含み、
前記注入位置では、互いに向き合う熱水分注装置と飲料出口ノズルとの間に前記座部があり、
前記熱水分注装置は、前記注入位置にある前記座部に向かう前記熱水分注装置の閉じ動作を制御する加圧水の第1導管による供給を受けるシリンダ・ピストンアクチュエータを含み、
前記シリンダ・ピストンアクチュエータは、外部シリンダと前記外部シリンダ内を摺動するピストンとを含み、
前記ピストンは、加圧熱水の導管に関連付けられ、且つ、前記ピストンの第1の側に配置される前記注入チャンバの閉鎖面に少なくとも1つの熱水分注開口を備える熱水供給チャンバを含み、
前記ピストンは、ボディを含み、且つ、前記外部シリンダに供給される水が作用する圧力面を定め、
前記圧力面は、前記第1の側の反対側にある、前記ピストンの第2の側に配置され、
前記ピストンには、前記熱水分注開口を閉じるための弁が備えられ、該弁は、前記ピストンが下げられた状態で、前記熱水供給チャンバにおける熱水の圧力の影響によって開き、前記熱水供給チャンバを前記熱水分注開口に流体的に連通させる、
注入ユニット。」(以下「本願発明」という。)
であるものと認める。
2 引用例
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1,及びその記載事項は,上記第2 2(3)に記載した引用例,及びその記載事項のとおりである。
3 対比・判断
本願発明は,本願補正発明の,その影響によって弁が開く「熱水の圧力」について「前記加圧水の圧力より低い」との限定事項を除いたものである。そうすると,本願発明の発明特定事項を全て含み,さらなる限定を付加したものに相当する本願補正発明が,前記第2 2(5)に記載したとおり,引用発明及び周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も同様の理由により,引用発明及び周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
4 むすび
以上のとおり,本願発明は,本願優先日前に頒布された刊行物である引用例に記載された発明及び周知の技術事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることはできない。
よって,本願は,その余の請求項に係る発明を検討するまでもなく,拒絶すべきものである。
したがって,結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2015-018813